わが国では成人の3人に1人、じつに3,000万人以上が高血圧に該当しているという。高血圧はただ血圧が高いことが問題なのではなく、長い間、高い圧力を血管にかけ続けることで、さまざまな問題を起こします。高血圧の原因や症状や、予防のための気になる情報をご紹介します。
運動は、健康な人にとっても生活習慣病などに悩む人にとっても重要ですが、続けることは簡単ではありません。どんな運動なら続けられるか、一体、自分はどのくらいの量の運動をすればいいのか、ここでは、このような問題を解くヒントになる研究を紹介したいと思います。 目次 健康を増進させるための新しい運動プログラム 高血圧へのゆっくりとした散歩の効果 板倉先生ワンポイントアドバイス 健康を増進させるための新しい運動プログラム アクティブビデオゲームが、健康を増進させるための新しい運動プログラムとして注目されています。アクティブビデオゲームとは、腕や足、あるいは全身を使って行うコンピュータゲームで、すでにこれで遊んだことがあるという方も多いと思いますし、プログラムの豊富さから今では老若男女を問わずに親しめる状況にあります。定期的に体を動かすことが健康に繋がる点は疑いのないところで、特に、家に閉じこもりがちな高齢者にとっては重要です。 そこで、アクティブビデオゲームを散歩やジョギングなどの運動に置き換えられないかというアイディアが出てきます。 実際に、健康な高齢者を対象にした検討が700件近くも行われており、その中からレベルの高かった18の研究を選んで統合して解析した報告があります*1。 これらの研究では、3~20週間にわたって週2~3回、1回あたり40分程度のアクティブビデオゲームを行ったグループと、この間、何もせずに普通に過ごしたグループの運動能力を比べています。運動能力について30秒間に座った状態から立ち上がる動作を何回繰り返せるか(30秒 sit-to-stand)、3mの距離を座った状態から立ち上がって歩き、戻ってくるのにかかる時間(Timed Up and Go)などを使って評価しています。 解析の結果、最初は同じだった30秒sit-to-standの回数が、何もせずに過ごしたグループに比べてアクティブビデオゲームを行ったグループで明らかに増えることがわかりました。 このことは、外に出るのがおっくうな高齢者であってもアクティブビデオゲームで遊べば運動能力が保てる可能性を示していますし、ステイホーム(stay at home)が求められる状況での運動不足解消にも有効だと思います。 高血圧へのゆっくりとした散歩の効果 生活習慣病の人は、どのように運動すればよいでしょうか。高血圧は国民病とも言われ、日本人の生活習慣病の代表格ですが、その予防や改善に対するゆるやかな散歩の効果を検討した研究があります*2。 時速3kmの歩行を50~60分間続けたときに血圧と心拍数にどのように影響するか、平均年齢が30歳弱の健康な人のグループと同年齢の高血圧一歩手前の人のグループの間で比較した研究です。 その結果、1時間程度のゆっくりとした散歩をした10分後には、どちらのグループとも血圧が下がり、心拍数が減ることがわかりました。また、このようなゆっくりとした散歩を2ヵ月間続けた7人の高血圧患者さんでも同じような効果が得られたと報告されています。 運動は健康の維持・増進だけでなく生活習慣の予防と改善にも大切であることが分かっています。それも継続することが必要であり、そのためには楽しく出来ること、体の調子に合わせて無理のない程度の運動でなければ、かえって体の具合が悪くなることもあります。膝が痛くなる場合は軽い運動にしたり、クッション性の良い靴に変えたりなど工夫することも必要です。 ■参考文献 *1:Taylor LM, et al. J Geratr Phys Ther 2018; 41: 108-123 *2:Lu Q, et al. Acta Pharmacologia Sinica 2019; 40: 1119-1126 公開日:2021/03/24 監修:芝浦スリーワンクリニック名誉院長 板倉弘重先生
夜になっても血圧が下がらない夜間高血圧をはじめとした隠れ高血圧(仮面高血圧)、ふだんは正常血圧でも医療者の前で血圧があがってしまう白衣高血圧は、しっかりと血圧を測定しないと見逃されやすいので注意が必要です。オムロン ヘルスケア・メディア向けオンラインセミナー(2020年9月3日)で、帝京大学衛生学公衆衛生学講座の浅山敬先生が講演した内容を紹介します。 目次 早朝や夜間に血圧が高くなる仮面高血圧、医療者の前で血圧が上がる白衣高血圧 男性では飲酒はリスク、起床直後の血圧が上げる可能性あり 夜間の血圧が高いと脳卒中による死亡率が高いので注意しよう 早朝や夜間に血圧が高くなる仮面高血圧、医療者の前で血圧が上がる白衣高血圧 浅山先生の講演によると、高血圧になると血管に本来不要な圧が長くかかり続けることで血管の壁が傷つけられ、血管の弾力性がなくなって固くなる動脈硬化などの障害が起こりやすくなります。放置すると脳卒中や心筋梗塞、狭心症、心不全、腎不全、認知症などを発症しやすくなります。 高血圧を早く見つけることが重要ですが、測定場所や方法によって基準が異なります。診察室と家庭内で測定した血圧の基準は違いますし、昼間と夜間でも違います(表)。 表:血圧の測定方法別の高血圧の診断基準 家庭血圧は、朝の起床時や就寝前など毎日同じ時間帯を決めて、安定した状態で測定します。日間の血圧値の違いや白衣高血圧・仮面高血に関して詳しい情報を把握できます。 自由行動下血圧は、24時間自由行動下血圧ともいわれます。医師の指導により自動血圧計を身につけて睡眠時も含めて24時間の血圧変動を詳細に記録する方法です。 出典:2020年9月3日開催「夜間高血圧」メディア向けオンラインセミナーでの浅山先生の講演資料 高血圧そのものはきわめて高くならない限り、通常は自覚症状・苦痛をもたらしません。だからこそ、見逃がしを防ぐために血圧をしっかりと測定することが大事です。また、診察室血圧と家庭血圧の組み合わせで、白衣高血圧と仮面高血圧を見付けることができます。 白衣高血圧は、ふだんの血圧は正常でも診察室や検診など不慣れな場所で血圧が高くなることをいいます。医師や看護師などが着ている白衣が病名の所以です。 仮面高血圧は隠れ高血圧として知られており、早朝高血圧、昼間高血圧、夜間高血圧のタイプ別にリスク因子が挙げられています(図1)。 図1:仮面高血圧(早朝・昼間・夜間高血圧)の病態とリスク因子 出典:2020年9月3日開催「夜間高血圧」メディア向けオンラインセミナーでの浅山先生の講演資料 男性では飲酒はリスク、起床直後の血圧が上げる可能性あり 早朝高血圧に関してですが、1980年代に鉄道の運転士さんを対象とした研究結果では、朝一番では運転中も血圧が高いことが指摘されています(佐藤牧人ら.脈管学.1988)。 また、男性では飲酒直後は血管が拡張するので血圧が下がる一方、翌朝の起床直後では血圧が上昇することを指摘する研究結果があります(図2) 図2:飲酒と血圧との関係 出典:2020年9月3日開催「夜間高血圧」メディア向けオンラインセミナーでの浅山先生の講演資料 夜間の血圧が高いと脳卒中による死亡率が高いので注意しよう 夜間の血圧は、健康な人では昼間よりも10%~20%低いのですが、下がる度合いによって4タイプに分かれます。研究結果では、就寝中の血圧が高い人は脳卒中による死亡率が高いと指摘されています(図3)。 図3:夜間降圧度と脳卒中による死亡率との関連(大迫研究) 出典:2020年9月3日開催「夜間高血圧」メディア向けオンラインセミナーでの浅山先生の講演資料(研究論文:Am J,Hypertens.1997;10:1201) 脳・心血管の病気のリスクとして高血圧に注意すべきです。脳卒中(脳梗塞・脳出血など)は死亡率が近年はそれほど高くなくなった一方、患者さんの数自体は増えています。 つまり、脳卒中の後遺症に苦しむケースが多くなっているのです。要介護の原因では、脳卒中が多くを占め、入院が長くなって費用負担も増大するなど、経済的にも多くの問題が生じています。 最後に繰り返しとなりますが、早朝や夜間に血圧が上がる仮面高血圧は、医療機関に受診したとき以外のところで知らず知らずのうちに発症するので、早く発見するためにもふだんから血圧測定を心がけましょう。 ■関連記事 高血圧 公開日:2020/10/28 監修:帝京大学衛生学公衆衛生学講座准教授兼University of Leuven客員教授 浅山敬先生
「塩分の摂りすぎは、血圧に注意」といわれますが、それだけではなく動脈硬化、糖尿病、脳卒中や心筋梗塞、腎臓病など、さまざまな病気に関わっています。そこで、簡単に塩分の摂取状況を把握できる塩分チェックシート(作成:製鉄記念八幡病院)をご紹介します。自分がどれくらいの食塩を摂取しているのかチェックしましょう。 目次 塩分チェック点数14点以上は要注意 病気を悪化させない1日の塩分摂取の目標は6g未満 塩分チェック点数14点以上は要注意 塩分の摂りすぎは高血圧の発症や悪化に関わりますが、高血圧により動脈硬化や糖尿病も悪化しますし、動脈硬化や糖尿病は脳梗塞、心筋梗塞などの原因になります。また、塩分の摂りすぎは胃がんや骨粗鬆症、尿路結石などのリスクになるとの指摘もあります。 そこで、福岡県北九州市の製鉄記念八幡病院では、「あなたの塩分チェックシート」(表1)を作成して、患者さんに塩分チェックをしてもらい、点数をもとに栄養指導をしています。 塩分チェックの結果、35点満点のうち合計点数が14点以上だと塩分の摂取量は多めと考えられますので、減塩の工夫が必要になります。 表1:あなたの塩分チェックシート 参考文献:血圧 2013;20:1239-1243 Hypertens Res 2016;39:879-885 出典:「あなたの塩分チェックシート」(社会医療法人 製鉄記念八幡病院提供) 病気を悪化させない1日の塩分摂取の目標は6g未満 生活習慣病を持っている人は病気を悪化させないために、1日の塩分は6g未満に抑えるようにと言われます。 食事には、どのくらい塩分が含まれているのでしょうか。「あなたの塩分チェックシート」には、ふだん食べているものに含まれている塩分量が紹介されています。 参考文献:血圧 2013;20:1239-1243 Hypertens Res 2016;39:879-885 出典:「あなたの塩分チェックシート」(社会医療法人 製鉄記念八幡病院提供) 塩分チェックシートは、簡単に評価できるものです。医療機関では、塩分が多い食品を控えることや食習慣の改善など栄養指導の参考に用いられています。 塩分チェック点数が高く、健康診断で生活習慣病に関わる血圧や脂質、血糖値、腎機能などが要注意の人は、食生活を見直して減塩を工夫することを考えましょう。 公開日:2019/04/3 監修:社会医療法人製鉄記念八幡病院
高血圧は男性の病気と思われがちですが、妊娠時や更年期における女性特有の高血圧があるのを知っていますか?女性に特有な主な高血圧症状を紹介します。 目次 高血圧は男性だけにあらず! 妊娠して血圧が上がる「妊娠高血圧症候群」 35歳頃まで低血圧だった人でも更年期になると… 高血圧は男性だけにあらず! 高血圧の患者さんと聞くと、一般的に中年の男性をイメージする人が多いのではないでしょうか。確かに30代から50代頃までは、高血圧と診断される割合は男性のほうが高いようです。ところが、年齢が上がるにつれて高血圧の女性の割合は高くなっていき、65歳を超える頃には男性と同程度にまでなってしまいます。 ほかにも、高血圧に関して、女性には男性に見られない特徴や、特有の高血圧が存在します。 妊娠して血圧が上がる「妊娠高血圧症候群」 女性に特有のものとして、妊娠している時期の高血圧が挙げられます。これらは「妊娠高血圧症候群」と総称され、元から血圧が高かった女性が妊娠した場合とは区別されます。程度が軽ければ、通常は薬による治療は行わず、出産後に元に戻ることが多いようです。ただし、重症の場合には脳や心臓に影響を及ぼしかねないので、血圧を下げる薬を投与して治療を行う必要があります。 妊娠高血圧症候群 ●妊娠高血圧 妊娠する前までは正常だった血圧が、妊娠20週を過ぎてから高くなった状態。 ●妊娠高血圧腎症 妊娠高血圧により腎臓が正常にはたらかなくなり、尿中にたんぱく質が漏れ出すたんぱく尿が見られるようになった状態。 ●子癇(しかん) 妊娠20週を過ぎてから初めてけいれん発作が起きた状態。 ●加重型妊娠高血圧腎症 次の3つの場合があります。 妊娠20週より前から高血圧で、20週を過ぎてたんぱく尿が見られるようになった状態 妊娠20週より前から高血圧とたんぱく尿が見られ、妊娠20週を過ぎてどちらか片方でも悪化した状態 妊娠20週より前からたんぱく尿が見られ、20週を過ぎてから高血圧になった状態 なお、元から高血圧の人が妊娠した場合、軽症の妊娠高血圧と同程度に血圧が保たれていれば、出産に差し障りはありません。ただし、糖尿病を合併している人や肥満の人、35歳以上の人などは、産科医と高血圧の専門医に相談するのが望ましいとされています。 35歳頃まで低血圧だった人でも更年期になると… 更年期を迎えてから高血圧になる女性は多いようです。驚くべきことに、35歳頃まで低血圧と言われていた人でさえ例外ではなく、更年期に急に血圧が上昇して、高血圧と診断されるのも珍しくはありません。 急に血圧が上がる原因として考えられているのは、体重の増加やホルモンバランスの変化、精神面の影響などです。これらに対しては、血圧を下げる薬のほかに、ホルモン補充療法や向精神病薬などによる治療が行われることもあります。 このように、たとえ現在は問題がなくても、女性は妊娠時や更年期に突然高血圧になることがあります。中年の男性だけの問題だとは思わず、日頃から自分の血圧に関心を持つようにしましょう。 公開日:2011/02/21
外食や市販の弁当はほどほどに できあいのものより、手作りの料理のほうが塩分の調節がしやすいことは、誰もが理解できるでしょう。しかし、いくら頭ではわかっていても、なかなか理想どおりにはいかないのが現実。家事に追われる人や、1日のほとんどを会社で過ごす人の中には、3食のいずれか、場合によっては3食すべてを外食や市販の弁当ですませている人もいます。このような食習慣は、味つけなどを自分で調節するのが難しく、1日6g 未満という、日本高血圧学会が勧める1日の塩分摂取目標量を超えやすいようです。 会社には手作りの弁当を持っていくなどして、できるだけ外食や市販の弁当を食べる機会を減らすことが望ましいです。また、みそ汁の具は食べても汁は残すことや、塩分を排出させるはたらきがある、カリウムが豊富な野菜の多いメニューを選ぶことなども、有効な手段だと言えます。 管理栄養士からのアドバイス カリウムが豊富な野菜として、ほうれん草や里芋、枝豆、竹の子などがあります。果物ではバナナやキウイなどが豊富で、干しあんずや干しブドウなどのドライフルーツには特に多く含まれています。ただし、腎臓の病気の治療を受けている人の中には、主治医の先生からカリウム量を制限されている人がいます。そのような方は、これらの食品を食べすぎないようご注意ください。 活用していますか?栄養成分表示 コンビニの弁当やスーパーマーケットの惣菜を買うときに活用してほしいのが、パッケージに書かれている栄養成分表示です。その中でも、減塩を心がける人にはナトリウムに注目しましょう。ナトリウムが多ければ、それは塩分が多いことを意味します。栄養成分表示を見てみると、それほどボリュームがないサンドイッチであっても、意外にも多くのナトリウムが含まれていることに気づかされるでしょう。どれを食べるか悩んだときは、ナトリウムができるだけ少ないものを選ぶことを心がけることが大切です。 なお、厳密に塩分量を知りたい場合は、以下の計算式を用いれば導き出すことができます。 ナトリウム(mg)× 2.54 ÷ 1,000 = 塩分(g) ナトリウム(mg) = 塩分 約 (g) ※ナトリウム量がgで表示されている場合は1,000をかけてください。 例:1.5g ⇒ 1,500mg 例:ポテトチップス(1袋85g)の場合、ナトリウム313mg×2.54÷1,000=約0.8g意外にもポテトチップスは塩分が少なめ! 添加物や原材料に配慮した食品をそろえるコンビニのナチュラルローソンでは、塩分やカロリーを低く抑えた弁当や惣菜が発売されています。だしやハーブをうまく使って作られているため、減塩ができるだけでなく、味わいの面でも満足できる仕上がりとなっています。 管理栄養士からのアドバイス コンビニのレジの横で売られているおでんは、寒い時期はどのお店でも大人気のようですが、注意が必要です。ちくわやはんぺんなどのねりものは、意外にも多くの塩分が含まれているのです。さらに、しょう油などの汁で煮込む分、塩分もプラスされます。食べすぎに注意して、煮汁は飲まずに残しましょう。 慎重に選びたい外食のメニュー お腹はすいているけれど、時間があまりないのでどんぶりものですませたい…。そう思ったときに、迷わず牛丼を選んでしまう人は、塩分を摂りすぎている危険度が高いかもしれません。どんぶりものの具はご飯のおかずにするために、ほとんどの場合は濃く味つけがされており、なかでも牛丼は塩分が高めです。同じどんぶりものなら、親子丼や天丼を選ぶほうが、塩分は少なくてすみます。牛丼を食べる場合は、「つゆだく」と呼ばれる汁の増量や大盛りは避け、付けあわせの定番となっている紅しょうがは食べないようにしましょう。可能であれば、栄養バランスの面からも、どんぶりものより定食を選びたいものです。 管理栄養士からのアドバイス 日本高血圧学会は、1日の塩分摂取目標量を6g 未満にすることを勧めていますが、ラーメンのスープを飲み干すと、1杯で6g を軽く超えてしまいます。ラーメンに限ったことではなく、うどんやかけそばも、汁には塩分がいっぱい。もりそばのつゆも、そば湯を加えれば薄まるものの、飲み干してしまえば結局はすべての塩分を摂取することになります。麺類の汁はすべて飲まず、残すようにしてください。 ■関連記事 塩分チェックシートを活用して減塩! 心筋梗塞など急病で入院した人は塩分に注意 病態栄養学会の報告から
塩分の摂りすぎが招く高血圧 塩分は人が生きていくうえで重要であり、料理の味付けにも欠かせない。しかし、過剰な摂取は高血圧につながってしまう。高血圧になると、動脈硬化が進行して、やがて脳梗塞などの脳の病気や、心筋梗塞などの心臓の病気が引き起こされることがある。また、腎臓への負担も大きくなるため、腎不全などが起きることもある。 体内に溜めこまれた塩分を減らすには、2つの方法がある。1つは減塩で、もう1つは塩の排出(脱塩)。この2つを意識した生活を送れれば、体内の塩分を減らすことができる。高血圧を予防するために、まずは毎日の食生活を見直してみよう。 管理栄養士からのアドバイス 高血圧の人は、脳卒中や心筋梗塞だけでなく、糖尿病などにもなりやすいといわれています。高血圧と糖尿病を合併することで、病気のリスクはますます高くなります。また、高血圧は自覚症状がなく、知らず知らずのうちに進行してしまうため、「サイレントキラー」とも呼ばれています。手遅れにならないように、予防の第一歩として、まずは減塩に取り組みましょう。 調味料は塩分ひかえめのものを! 料理をするうえで、塩を減らすためのポイントになるのが調味料。ほとんどの和食で使うことになるしょう油は、できるだけ減塩しょう油を選ぶようにしたい。 しょう油の大さじ1杯分の塩分は、濃い口しょう油が約2.6g なのに対し、減塩しょう油は約1.4g なので、約50%カットできることになる。だし汁で割った「だしわりしょう油」と呼ばれるタイプは約1.2g で、さらに多くの塩分カットが可能。 しょう油のほかにもソースやみそ、めんつゆなどにも減塩タイプのものがあるので、それらを積極的に利用したい。誤解している人が多いのが、薄口しょう油の塩分量。色は濃い口しょう油より薄いが塩分は多く、大さじ1杯で約2.9g あるので、できればひかえたほうが良い。 大型スーパーマーケットのイトーヨーカドーでは、2011年2月に「減塩生活はじめよう~減塩+塩分排出で“体内減塩化”~」と題するフェアが調味料の売り場などで実施された※。期間中は「減塩+塩排出レシピ」を紹介する冊子が配布されたほか、試食も行われた。ここでは、通常のものと比べて塩分がひかえめ、塩の排出に役立つなど、「減塩+塩排出」に貢献する商品やサービスなどに「減塩マーク」がつけられた商品を紹介。このマークは今後幅広く使われていくので、見つけたら注目してみよう。 実施店舗:大森店(東京都)、武蔵小金井店(東京都)、三郷店(埼玉県) 管理栄養士からのアドバイス 塩分を減らすのは良いことですが、おいしくなくては食事が楽しめません。そこでおすすめなのが、豊かな風味をもつ食材を取り入れること。バジルなどのハーブや、こしょうなどの香辛料、しょうがなどの香味野菜のほか、レモンやゆずなどのかんきつ類をうまく使えば、塩分を減らしてもおいしく、料理の幅も広がります。アーモンドやごまなどを使っても、香ばしさを生かしたおいしい料理が作れます。 知らずしらず塩分の摂りすぎに…。食事の「当たり前」を見直そう 塩分はほとんどの食材に含まれている。そのため、塩辛いものを食べていなくても、結果的に摂りすぎていることが多い。実際に日本人は、平均で1日に約11g もの塩分を摂っている。気づかないうちに塩分を摂りすぎてしまうのを防ぐには、食べるものだけではなく、自分では当たり前だと思い、特に意識していなかった食べ方にも気を配ろう。 例えば梅干を食べるときは、まるごと1個を食べることが当たり前のように考えられがち。しかし、半分を残せば、約1g の塩分を減らすことができる。1g というとごくわずかなように思いがちだが、日本高血圧学会が勧める1日の塩分摂取目標量が6g 未満であることを考えると、1g の意義はとても大きい。 ケチャップやソースなどの調味料で味を調整する場合、やはり当たり前のように料理そのものにかける人は多いが、その習慣も見直したい。料理にかけるよりも、小皿などに入れた調味料に料理をつけて食べるほうが、摂取量は少なくなる。 このように、当たり前だと思っていた習慣を少し変えるだけで、塩分の摂取量を減らすことができる。一つひとつは小さなことだが、それらを積み重ねることが、減塩を成功させるコツだと言えるだろう。 管理栄養士からのアドバイス 摂りすぎてしまった塩分を排出させるはたらきがあるカリウムは、積極的に摂りたい栄養素です。野菜にはカリウムが多く含まれていますが、水に溶けるため、煮たり茹でたりすると減ってしまいます。メニューにサラダを加えて、できるだけ野菜は生で摂りましょう。 カリウムは果物にも多く含まれているので、食後のデザートとして果物を摂るように心がけるのも良いでしょう。 ■関連記事 塩分チェックシートを活用して減塩! 心筋梗塞など急病で入院した人は塩分に注意 病態栄養学会の報告から
デリケートな血圧の「敵」とは? 血圧はとてもデリケートで、変化しやすい。例えば朝と午後の違う時間帯に測るだけで数値は異なるし、クシャミや咳をしただけでグンと上がることもある。ちょっとしたことがきっかけとなって上がったり下がったりするため、血圧を上げないようにするには日常生活での十分な注意が必要だ。 とくにやっかいなのは、冬の寒さだ。気温が低くなると交感神経が緊張して血管収縮を起こし、血圧が上がりやすくなる。冬になると心筋梗塞などの発作を起こして救急車で搬送される患者が多いというが、それも寒さから血圧が上がるのが原因だ。 重大な事態に陥るのを防ぐためにも、冬の高血圧はとくに注意が必要だ。 高血圧あれこれポイント! 東京都内で心臓救急に携わる医療機関の団体「東京都CCUネットワーク」に1982~1994年の間、急性心筋梗塞で搬送された患者を調べたところ、発症が最も多かったのは12月。ついで3月、1月だったという。 こんなシーンにご注意! 日常生活の中で、血圧を不意に上げてしまう危険性はあちこちに潜んでいる。とくに次のようなシーンでは急激な温度差が発生しやすく、血圧を上げやすい。 ●入浴時、脱衣所で服を脱ぐとき ●夜中などにトイレに行くとき ●上着をはおらずに庭やベランダに出るとき ●暖房の効いた車から降りて、寒い駐車場を歩くとき 家の中は場所によって温度差が発生している。とくに玄関や浴室、トイレは居間などにくらべ室温が低い場合が多いので、脱衣場に小さなヒーターを置くなど、なるべく保温につとめるようにしよう。また、室内が暖かいときはうっかりそのまま外に出てしまいそうだが、冬の外気は健康な人でさえ心臓が締め付けられるように感じるものだ。面倒でも上着やマフラーなどで防寒を怠らないようにしよう。 今日からスタート!冬を快適に乗り切る術 高血圧患者のほとんどは遺伝体質とともに食習慣や運動不足、ストレスがからみあって高血圧を発症するとされている。寒さ対策のほか、生活全般についても注意が必要だ。 高血圧患者の場合、1日に摂る食塩は6g未満が理想的だが、外食やコンビニ食品ではあっという間に6gに達してしまう。例えばかけそば1杯の塩分量は約3.3g。外食する際にはメニューの選択には注意し、麺類の汁やソース類はなるべく残すなどの工夫をしよう。家庭で調理をするときはもちろん、「薄味」が基本だ。 また、寒いからといって家にばかり閉じこもっていると運動不足を招く。室内でもできる運動器具を購入するなどして、なるべく体を動かすことを習慣にしよう。これらの対策は、やれば確実に血圧を下げてくれる。今日からすぐにスタートしよう!
ひっそりと忍び寄る、高血圧 わが国では成人の3人に1人、じつに3,000万人以上が高血圧に該当しているという。周囲には「血圧が高め」という人が必ずいるし、高齢者になると血圧の話題が挨拶がわりだったりする。良くも悪くも私たち日本人は、高血圧にとてもなじみがあるのだ。 しかし血圧が上がったところで、自分自身で気付くことはめったにない。たいていは健康診断や、別の病気で医療機関を受診した際に指摘されて知ることになる。というのも、血圧が高くて体のどこかが痛む、機能が低下するといった日常生活の不都合がほとんどないからだ。 では血圧が高いと、何がいけないのだろうか?体にはどのような悪影響を及ぼすのだろうか? 高血圧あれこれポイント! 収縮期血圧(上の血圧)で140mmHg以上、拡張期血圧(下の血圧)で90mmHg以上が続けば高血圧と診断される。運動をした直後や緊張している状態で測って「たまたま高かった」というのは高血圧ではない。 なぜいけない?高血圧 血圧が高くて問題なのはズバリ、動脈硬化を引き起こすこと。高血圧が続くと、その圧力に耐えようとして動脈の血管壁が厚くなり、血液の通り道が狭くなってしまう。するとコレステロールなどの脂質がたまりやすくなり、さらに通り道は狭くなって血圧も上昇する。 この悪循環を放っておくと動脈硬化はひどくなり、いつしか脳や心臓の病気を引き起こしてしまう。ここが高血圧の怖いところなのだ。 現在、日本人の死因の第1位は悪性新生物(がん)だが、2位 心疾患、3位 脳血管疾患と、いずれも動脈硬化が引き起こす病気。たかが高血圧とあなどるなかれ。私たちの将来の健康を左右する、重大なファクターなのである。 知ってる?高血圧には2種類ある 高血圧には2種類あることをご存知だろうか?ひとつは腎臓病など病気のせいで高血圧になる「二次性高血圧」。残るひとつは「本態性高血圧」と呼ばれるものだ。 「本態性」とは原因がわからないという意味。原因こそ不明なものの多くは「遺伝」と「生活習慣」がかかわっていることが判明しており、高血圧患者の9割以上はこの「本態性高血圧」だ。親から受けついだ素因のほか、食べ過ぎ、飲み過ぎ、塩分摂り過ぎなどの食習慣、運動不足やストレスがからみあって高血圧を発症すると考えられている。 「二次性高血圧」の場合は、原因となる病気を治療することで改善されるが、「本態性高血圧」の場合は生活習慣を見直すなどして、きっちりとした血圧管理につとめなくてはならい。
ただ食塩を減らして、塩気ない生活をするのだけが高血圧対策ではありません。ナトリウムを腎臓から尿中に追い出す作用がある「カリウム」が多く含まれる食べ物で、おいしく高血圧対策をしましょう。カリウムの豊富な食べ物をご紹介します。 目次 ナトリウム追いだし大作戦! 秋はカリウムも豊作! ナトリウム追いだし大作戦! ただ食塩を減らして、塩気ない生活をするのだけが高血圧対策ではありません。もっと積極的に対処しましょう。そのためには、カリウム、カルシウム、マグネシウムをバランス良く摂取することが大切と言われています。 なかでもカリウムに注目。カリウムには細胞内にたまってるナトリウムを腎臓から尿中に追い出す作用があります。しかし、日本人はカリウムの摂取量が国際的に見ても少なく、これもまた高血圧が多い理由となっています。 カリウム摂取の注意点 人工的な錠剤などでの摂取は失われやすいので、野菜などから摂る 調理によって失われやすい 煮込む・ゆでるなどの時は、できれば汁ごと食べる 腎不全の人は高血圧でも、むしろカリウム摂取は控える 秋はカリウムも豊作! 食欲の秋には、カリウムが多く含まれる旬の食べ物がいっぱいあります。カリウムの「ゆでたりすると失われやすい」という短所は逆手にとりましょう。生や簡単な調理で良いというのは、むしろ作る人にはうれしいものです。 以下の調理方法を参考にして、さっそく今日からお試しください。 秋のおやつのお殿様!さつまいも ●丸ごと「蒸し」いも・「焼き」いも スイートポテトなど「凝った」ものもステキですが、皮ごとの方がカリウムが逃げません。しかも、この方が楽! ●みそ汁 汁に流れたカリウムも残さず摂取できます。 秋のおやつのお姫様!栗 ●ゆで栗 栗と言えば「栗ご飯」を思い出しますが、ハッキリ言って作るのは面倒くさいですよね。せっかく作っても、せいぜい1食分です。ならば、丸ごとそのままゆでてしまいます。ナイフで2つに割ってスプーンですくって食べられますので、手間がかからないうえカリウムも逃げません。 鍋だけが出番ではない!春菊 ●おひたし 多めのお湯でサッとゆでるのがコツです。ケチってお湯が少ないと時間がかかってしまい、たくさんカリウムも失われたうえ、まずくなります。だしを効かせて減塩おひたしにしましょう。 ●和え物 意外にマヨネーズ和えなども合います。胡麻やカラシの風味で減塩になります。 デザートは生の果物で ●柿 柿はとてもカリウムの多く含まれる果物なので、ぜひ秋の食卓に! ●りんご 柿に比べると、カリウムの量は少ないが、とにかく手軽に食べられます。 ●バナナ 秋が旬ではありませんが、1年中食べられ、しかもカリウムもたっぷりです。 1年中大活躍!必殺技の乾燥わかめ ●味噌汁 味噌汁のお碗にあらかじめ乾燥わかめを入れ、そこにできあがった味噌汁をつぎます。乾燥わかめの最適な戻し時間は3分なので、食卓に運ばれる頃にはちょうどよい具合になります。これぞ3分で用意できるカリウム食です。 ●サラダ わかめは和・洋・中すべての味つけに合います。特にサラダには加えやすいので、ぜひ一緒に摂りましょう。
高血圧の予防・改善の食事で、まず取り組みたいのは、食塩を減らすことです。減塩の食事を続けていると、最初のうちは味気なくても、次第に味・うまみを感じられるようになります。今回は役に立つ減塩のコツをご紹介します。 目次 「塩味ばっかり」から「豊かな味覚」へ 役立つ!減塩のコツ 「塩味ばっかり」から「豊かな味覚」へ 高血圧の予防・改善の食事で、まず取り組みたいのは、食塩を減らすことです。日本人は「塩食い人種」と言われるほど、しょっぱいもの好き。塩気がないと「まずい」気がしてしまう人も多いようです。 しかし、実際に減塩の食事に成功した人の話では「最初は味気ない気がしたが、慣れると素材が本来持っている味・うまみがわかるようになった」と言います。 さらに食品の栄養バランスを考え、色々なものを食べるようになったり、多彩な調味料を使うようになり、「味」の豊かさはむしろ広く深くなっていくものなのです。 役立つ!減塩のコツ ●和食の時は、しょうゆか味噌味で しょうゆや味噌には塩以外の風味があり、同じ塩分でも食塩だけの時よりおいしく感じることができます。注意したいのは「薄口しょうゆ」です。減塩ではなく「薄口」との表示があるものは、塩分量はむしろ「濃口」より多いこともあります。 ●酸味を活用! レモンやゆず、すだち、お酢などの酸味を使って味を整えます。これらを使えば食塩を含まずに、サッパリと「オトナ」の味となります。 ●素材が勝負! 新鮮な素材を食べましょう。素材が新鮮ならば、そのものに十分な「味」があり、調味料が少なくてもおいしいものです。新鮮な刺身などはベッタリしょうゆをつけてしまっては、むしろ「もったいない」かも。 ●温度が味をつくる 暖かいものは暖かいうちに、冷たいものは冷たいまま、食べ物が一番引き立つ温度で食べるようにします。暖かいものが冷めると舌に感じる味が少なくなるため、さらにしょうゆや塩をかけたくなるものです。 ●しょうゆやソースは小皿にとって しょうゆやソースなどを使う場合、食べ物に直接かけると、どうしても量が多くなってしまいます。一度小皿にとって、そこにつけるようにすると塩分を抑えられます。 ●減塩の調味料を使う 最近はしょうゆだけでなく、味噌やソースなどにも「減塩」の調味料が増えているので、積極的に活用してみてはどうでしょうか? ●味噌汁はだしをきかせて、具だくさんに! だし汁を濃いめに使うと、それで「うまみ」を感じるため味噌は少なめに使いましょう。具はたくさんにし「汁」をあまり飲まないようにします。洋風のスープも同様です。 ●「こく」のある味わい ゴマ、くるみ、のりなど、風味と「こく」のあるもので味をつけます。栄養的にも体に良いです。調理方法でも、少しこげめをつけて香ばしくすると満足できる味になります。 ●香辛料の達人に 「香り」が味をより引き立てるので、塩気がなくても、とてもおいしく感じます。またハーブなどは、ヨーロッパでは薬として使われるほど、色々な効果があります。鉢で育ててみるのも楽しいかも。 ●塩分は一点集中! 一品に重点的に塩分を使い、ほかのおかずは無塩食にします。コレでも満足感が得られます。 ●外食より内食 焼き肉、お寿司など外食の定番ものも、家で減塩にして作ってみます。外で食べる酢飯や、焼き肉のたれなどは、かなりの食塩が含まれています。家で作れば「高血圧に悪いから」と我慢しないでも、それらをおいしく食べることができます。 ●外食の時は定食派に 定食は、栄養のバランスもとりやすく、工夫しだいで減塩にもなります。刺身はワサビをきかせて、しょうゆを減らします。焼き魚には、しょうゆをかけないようにします。フライもなるべくソースをかけず、カラシやレモンで。味噌汁の汁は残すことなどができます。丼などの1品ものは、すべて食べてしまうため、どうしても塩分の調節がしにくくなります。 ●「表味」テクニック! 味覚は舌にのせた瞬間で大きく左右されます。そこで表面にだけ塩味をきかせる「表味」のテクニックを使いましょう。炒め物や焼き物は、調理の最後に塩や調味料を加えます。煮物は、まず「だし」でしっかり煮込み味をつけてから、最後の仕上げに塩やしょうゆを加え、表面に味をつけるようにします。 ●漬物は盛り鉢で出さない 漬物は本来、高血圧の人にはおすすめできません。しかし自家製の減塩に努めた漬物なら、たまには食べたいもの。その時、盛り鉢で出してしまうと、ついつい食べすぎてしまうので、小皿にとって食べるようにします。自家製漬物は、酸味を足して上手に減塩しましょう。
高血圧の予防・改善の一番の目玉は、塩分摂取量のコントロールにあります。食塩1gとは、具体的にはどのくらいの量なのでしょうか?目安をご紹介します。 目次 高血圧になる前から、塩分量チェック! 食塩1gってどのくらい? 高血圧になる前から、塩分量チェック! 体質によって、塩分が血圧の上昇に影響しやすいタイプの人と、影響しにくいタイプの人がいます。影響を受けやすい人だけが高血圧になっているかというと、そうでもありません。高血圧の人に占める2つのタイプの割合は、さほど変わらないようです。そしてもちろん、影響を受けやすいタイプの人でも、きちんと生活習慣の改善を行えば確実に効果があります。 日本高血圧学会がすすめる「1日6g未満」を目標に、減塩に努めましょう。 食塩1gってどのくらい? 食塩1gとは、具体的にはどのくらいの量なのでしょうか?主な調味料に含まれる食塩の量は以下の通りなので、これらをトータルして考えた食事をしましょう。 覚えておくと便利な塩分量の計り方 塩を指でひとつまみ=約0.3g しょうゆ差しで小皿に半円を描く=約1g 塩 1cc小さじ1/5 しょう油 5cc小さじ1 減塩しょう油 10cc小さじ2 甘味噌 20g大さじ1 辛味噌 10g小さじ2 ドレッシング 60g大さじ4 バター 50g大さじ4 マヨネーズ 40g大さじ2小さじ2 ケチャップ 30g大さじ2 ウスターソース 10g小さじ2 ■関連記事 塩分チェックシートを活用して減塩! 心筋梗塞など急病で入院した人は塩分に注意 病態栄養学会の報告から
高血圧の予防・改善の基本は、生活習慣を変えることにあります。「血圧を上げない・下げる生活」は「生活の質の向上」につながります。血圧コントロールにより得られることをご紹介します。 目次 血圧コントロールはライフコントロール 血圧をコントロールすると得られること 血圧コントロールはライフコントロール 高血圧の予防・改善の基本は降圧剤ではなく、あくまでも生活習慣の改善にあります。生活習慣は長年しみついているものだけに、それを変えるとなると、とても大変なことに感じられるかもしれません。食事の改善は、粗食に耐えるイメージですし、今までしていなかった運動をするのも…。しかし実は、「血圧を上げない・下げる生活をする」というのは生活の質が向上することなのです。 血圧をコントロールすると得られること ●さまざまな病気を避けて通れる! 高血圧の予防・改善は、心不全、脳卒中、腎臓障害など、さまざまな病気の予防にかなりの効果が認められています。正常血圧と高血圧では、心臓病の発生率が2倍違うとも言われています。 ●寝たきりの可能性が減り、豊かな老後が送れる 医療の高度化などにともない、脳卒中で死亡する人は年々少なくなっています。しかしそれに代わり、新たな問題も出てきました。一命はとりとめたものの、その後、寝たきりになってしまうケースが多くなっているのです。事実、日本では脳卒中が寝たきりの主な原因のひとつです。寝たきりは防げても、長期のリハビリに努めなくてはならない場合もあります。せっかくの人生の締めくくりが台無しになってしまうかもしれません。豊かな老後は、まずは高血圧の予防・改善から始まるのです。 ●色々なものが味わえるようになる 高血圧の食事というと「粗食」と思いがちですが、控えるのは塩分や油分などになります。基本的にはバランスのとれた色々な栄養を摂取した方が良いので、食品数としては、むしろ豊かになるとも考えられます。考えてみれば、今までの偏りがちだった食事の方が、よっぽど貧しい食事だったのではないでしょうか?多彩な食品を味わい健康になる、新時代のグルメになるのです。 ●運動の喜びを再発見できる! 高血圧のために仕方なしに始める散歩?しかし、人間はもともと体を動かすことが気持ち良いように作られています。最初は「病気のためだから仕方ない」で始めたとしても、継続するうちに楽しいことに変わっていくはずです。そして健康になれるなら良いことづくめです。 ●スタイルも良くなる 肥満は高血圧とセットになると大変危険なため、お医者さまにも改善を求められるはずです。減量はツラそうに思えます。しかし考えてみると、これはチャンスでもあります。 高血圧を改善する生活習慣を続ければ、肥満も解消されて、しかも得られるのは健康だけではありません。スタイルも良くなり、家族や友達、同僚も「かっこよくなったね」と言ってくれるはず。
高血圧とは、具体的に何で、どんな悪影響があるのか、意外に知らないのではないでしょうか?高血圧の基準と、高血圧を招く生活習慣についてまとめました。 目次 どこからが高血圧? 高血圧を招く生活習慣 どこからが高血圧? 「最近、血圧が高くて…」という会話はよくされますが、具体的に高血圧とは何で、どんな悪影響があるのか、意外に知らないのではないでしょうか? そもそも血圧とは、血液が流れる時に血管を押し広げる圧力のこと。体は常に血液を必要としているので、いつでも血管を流れていますが、たくさん流れて押し広げる力が最も強い時(最大血圧)と、最低限の血液だけが流れていて押し広げる力が最も弱い時(最小血圧)とがあります。この血圧が慢性的に、正常より強くなってしまった病気のことを「高血圧」といいます。 日本ではWHO(世界保健機関)にならって高血圧の基準を次の通りとしています。 しかし、最大か最小の一方だけが高めの、例えば最大135mmHg・最小90mmHg以上の場合も高血圧となります。特に注意すべきは最小血圧が高い高血圧の場合で、いわゆる悪性高血圧の原因となっています。 また、境界高血圧にいる人も油断は禁物です。計った時に緊張やストレスで、一時的に境界域になってしまった場合と、高血圧に進んでいく過渡期つまり高血圧予備軍の場合とがあります。予備軍の人がこのままの生活習慣を続けていけば、間違いなく高血圧となってしまいます。 高血圧を招く生活習慣 「塩分を摂りすぎると高血圧になる」とはよく聞きますが、高血圧はただそれだけでなる単純な病気ではありません。次に挙げるような、さまざまな生活習慣が長年積み重なって、高血圧が作りだされていきます。 遺伝的体質 高血圧の原因となる中で最もウエイトが大きいと考えられている要素です。 両親とも高血圧の場合、その子供も高血圧になる可能性は60%。片方の親だけの場合は30%と言われています。しかし遺伝するものはあくまで「体質」であって「高血圧という病気」ではありません。生活習慣で予防・改善していけば、発病の危険を免れることもできます。逆に、体質的には大丈夫な人でも生活習慣が悪ければ、高血圧に陥ることもあります。 食塩の摂りすぎ 日本人は特に、食塩の摂りすぎによる高血圧が多いようです。 この食塩に対しても、同じ量をとっているにも関わらず、血圧がひどく上がってしまう人と、そうでもない人がいます。しかし食塩の影響を受けにくいからと言って多量の食塩を摂り続ける人と、影響は受けやすいが食塩を控えている人では、当然結果が違ってきます。 肥満 肥満はすべての生活習慣病の原因となります。 肥満度が大きい人ほど、高血圧の人も増えていきます。しかし逆に、肥満の人が減量をすれば、それだけ高血圧も確実に改善してきます。また高血圧で肥満の場合は降圧剤が効きにくく苦労することが多いようです。 寒さ 血圧は寒さに敏感です。 暖かいところから寒いところへ行くと、急激に血圧が上がりやすく、しかも高血圧の人ほど、寒さによる血圧への影響を受けやすいのです。日本の家は冬場、リビングとトイレの温度が違ったり、脱衣場所が寒かったりと高血圧の人には危険がいっぱいです。 ストレス ストレスは血圧にかなりの影響があります。 ストレスの大きさが、そのまま血圧の高さとなってしまいます。しかし、ストレスのない人生なんて考えられません。ヒトはストレスを受けたら次はリラックスと、上手に休むことで毎日をおくっているものです。しかし、ストレスが慢性的になり、リラックスはできないでいると、血圧も高いままで下がらなくなってしまいます。ストレスと言えば人間関係や仕事などが浮かびますが、実は「乱れた生活習慣」も現代の慢性ストレスの原因です。偏った食生活や、不規則な睡眠、運動不足はじわじわと高血圧を作っていくのです。 性格 実は「高血圧になりやすい性格」というのもあります。 せっかち・イライラしやすい・忙しいのが好き・並んで待てない・挑戦的・食べるのが早いなどの性格の人は、自分でストレスを作りやすく、そのため高血圧となりやすいようです。いわゆる家庭そっちのけで仕事一筋、趣味もないタイプが危険です。「のんびりできる」というのも能力のうち。少しずつでもリラックス法を会得してみましょう。
高血圧にならないための生活習慣をご紹介します。もし当てはまる項目が少なければ、生活習慣の改善を始めましょう。 目次 血圧は計るのが難しい 高血圧にならないための生活習慣 血圧は計るのが難しい 血圧は1日の中でも時々刻々と変わっていき、1日中同じ血圧ということはありません。また、「血圧を計るぞ!」という緊張で上がってしまうことさえあるデリケートなものです。 身近になった血圧計ですが、そういった意味でも、ちゃんと計るのは意外と難しいことです。そこで、1日の中で、正しい方法で何度も計ってみることが大切です。特に毎日同じ時間に計り、比較してみましょう。そして少しでも疑問があれば専門医に診てもらい、血圧チェックの指導を受けましょう。 高血圧にならないための生活習慣 もし、下の項目に5つ以下しか当てはまらないなら、生活習慣の改善を始めてみましょう。また、いまは血圧は正常値という人も、当てはまるのが5つ以下なら、予防のためにもまずは1つだけでも改善していきましょう。 たばこは吸わない 飲みすぎない(2日続けての休肝日がある) 散歩やスポーツなどを定期的にする 栄養バランスの良い食事を心がける 朝食は毎日食べる 緑黄色野菜、果物、根菜をよく食べる 平均で9時間以下の仕事時間とする 平均で毎日7~8時間眠る(満足のいく睡眠をとっている) 半年前と比べ、体調は悪くなっていない 毎日の生活に満足している
高血圧という病気は、あまりにも一般的になりすぎてしまったため「年をとれば誰でもなるもの」という印象があるかもしれません。ですが、高血圧は、ある日、突然死をもたらす病気を引き起こす恐ろしい病気です。 目次 高血圧はがんより怖い? サイレントキラー=高血圧 高血圧の恐ろしい特徴 高血圧はがんより怖い? 高血圧という病気は、あまりにも一般的になりすぎてしまったため「年をとれば誰でもなるもの」という印象が強いかもしれません。そのため、「がんなどと違って高血圧で死ぬことはない」と思いがちです。しかし、実は高血圧によって死に至ることもあります。 このグラフの通り、日本人の死因のうち、がんに次ぐ心疾患、脳血管疾患はいずれも高血圧によってもたらされることが多いようです。 ●脳血管疾患とは? 脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など ●心疾患とは? 心肥大、心不全、心筋梗塞など サイレントキラー=高血圧 高血圧が恐ろしいのは、気配を感じさせずに静かに忍び寄り、ある日、突然死をもたらす病気を引き起こすという点にあります。 高血圧は中程度まで進んでいても、それをハッキリと教えてくれる自覚症状というものは何もありません。むしろ高血圧体質の人の方が活動的で頑張りのきくことが多く、まさか自分がある日、倒れるなど思いもしません。けれども一度発病すると、脳血管疾患や心疾患は命取りになりやすいため、サイレントキラー(沈黙の殺人者)と呼ばれています。運良く一命をとりとめたとしても、長いリハビリが必要になったり、寝たきりになったりすることがあります。 高血圧の恐ろしい特徴 高血圧とは、何年、何十年もの時間をかけ進行していく生活習慣病です。 高血圧が長く続き、血管に圧力がかかり続けると、弾力が失われる動脈硬化が起こり、血管がボロボロになっていってしまう。ボロボロになった血管は、そう簡単には修復しないため、長く患うこととなります。 血圧が高いと、心疾患などの合併症の発生率が正常血圧の人より高くなります。 血圧が高いのに食事に注意しないままでいると、注意する人に比べ命を落とす割合が高まります。 特に高血圧とは関係がないと思われる病気でも、高血圧と複合的に重なると死亡率が高まってしまいます。
高血圧はただ血圧が高いことが問題なのではなく、長い間、高い圧力を血管にかけ続けることで、さまざまな問題を起こします。高血圧が進行していく様子を見てみましょう。 目次 高血圧の進み方 高血圧からこんな病気に! 高血圧の進み方 高血圧はただ血圧が高いことが問題なのではなく、長い間、高い圧力を血管にかけ続けることで、さまざまな問題を起こします。じわじわと進行していく病気なのです。 その様子を見てみましょう。 血管が狭くなったり、しなやかな弾力を失ったり、心臓からの血液量が増えると血圧が上昇します。一時のストレスなどで血管が狭くなった場合は、血圧調整機能がはたらき、リラックスすれば元に戻ります。 しかし、いつとはなしに上がっていき、慢性的に血圧が高いままでいると「高いのが普通」と体が認識してしまい、高血圧が維持されてしまいます。 血管の変化 かかってくる高い圧力に対抗しようと、血管の壁が厚くなります。結果として血管は狭くなり、より血圧も高くなってしまいます。 狭くなった血管にはコレステロールなどがたまりやすくなります。しだいに血管が盛り上がり、中は狭くなり、そのため血圧もより上昇します。 コレステロールや中性脂肪などが血管の中にたまると、血管の質そのものがボロボロともろくなります。弾力性がなくなり硬くなった血管は狭くなっていき、血圧はさらに上昇します。 心臓の変化 高い血圧に打ち勝って血液を体の隅々まで送るため、心臓の筋肉が肥大(心肥大)します。心肥大が進んでしまうと心臓のポンプとしての力は弱まってしまい、血液を全身に送るのが難しくなってしまいます。 高血圧からこんな病気に! 高血圧を放っておくと、死に至るさまざまな合併症が引き起こされることがあります。次の図の通り、血管がつまったり破れたり、動脈が硬くなったりするという大問題が、人間にとって極めて大切な脳や心臓などで起こってきます。
高血圧の予防・改善には塩分を控えめにとよく聞ききますが、塩は本来人間に必要なミネラルの1つです。なぜ塩分がいけないのでしょうか、そのメカニズムについてご紹介します。 目次 問題はナトリウム・オーバー? 塩で血圧が上がる原因 問題はナトリウム・オーバー? 高血圧の予防・改善には塩分を控えめにとよく聞きますが、塩は本来人間に必要なミネラルの1つです。それがなぜ、塩から高血圧になると言われているのでしょうか? 実はまだ研究中で、確実な原因は突き止められていません。しかし、以下のような原因が考えられています。 塩で血圧が上がる原因 体の中の浸透圧 塩辛いものを食べると、後々まで喉がかわいて水が飲みたくなります。コレは浸透圧を一定に保とうと、体が水分を要求するサイン。人間の体の中の体液は塩分(ナトリウム)のパーセンテージが決まっているのです。しかしそれを超える塩分を摂取してしまうと、その濃度を薄めようとするため、水分が欲しくなります。 余分な塩分と水分を摂れば体液(血液)が増えます。心臓や血管には一定の容量があるため、その中の血液が増えすぎてしまうと、血管を押し広げ、血圧も上がってしまいます。 ナトリウムと交感神経 食塩の中のナトリウムは、血管を収縮させるはたらきをする交感神経を緊張させます。 必要以上のナトリウムを摂取すれば、血管を縮めるはたらきが活発になってしまい、血圧も高くなります。その状態が続き、血管に余計なストレスがかかり続け、高血圧を悪化させます。 血管に入るナトリウム 摂りすぎたナトリウムは、血管の壁の細胞の中に直接入り込みます。 血圧が高くなっている人の血管というのは傷がつきやすく、ナトリウムも入り込みやすくなります。入り込んだナトリウムは、さらに血管を狭くします。 血管の壁というのは、実は筋肉でできています。そしてナトリウムには、筋肉を収縮させるはたらきもあります。例えば、焼き魚の身は塩を振ってから焼くとしまるが、これはその原理によるものです。ナトリウムが血管に侵入すると、筋肉でできた血管は収縮し、血圧は上がることになります。 汗をかかなくなった現代人と塩 本来人間には、尿や汗によって余分なナトリウムを体外に出し、調節する仕組がそなわっています。汗をかいてこそ、ちょうど良い体の塩分濃度になります。 厳しい肉体労働をする人たちは汗を多くかき、ナトリウムの排出も活発すぎるため、塩をなめながら作業をしないと体がもたないほどです。しかし現代では、労働でそれほどの汗をかく人は少なくなり、汗による塩分調節はできなくなっています。そのため塩分は、うまく排出されることなく過剰となり、高血圧の原因となっています。 ■関連記事 塩分チェックシートを活用して減塩! 心筋梗塞など急病で入院した人は塩分に注意 病態栄養学会の報告から
血圧検査は、高血圧だけではなく脳卒中や心臓病、腎臓病などのいろいろな生活習慣病の疑いを発見するものです。血圧検査による高血圧、低血圧の基準と、それぞれの場合の改善方法を考えます。 目次 血圧検査とは 血圧検査は生活習慣病チェックのNO.1 血圧検査の結果からわかること 健康な血圧をつくろう 血圧検査とは いまや日常的な検査・血圧。高血圧=悪いことというイメージは定着しています。しかし、問題は高血圧だけではありません。それによって引き起こされる病気、あるいは高血圧を引き起こしている病気があるのです。 ●高血圧が引き起こす病気 →脳・心臓・腎臓の病気 ●血圧異常を作り出していると思われる病気 →本態性高血圧、老人性高血圧、動脈硬化、大動脈閉鎖不全症、バセドウ病 こんな症状があったら… ●拡張期血圧(最低血圧)が上昇している →脳卒中や心臓病、腎臓病などのいろいろな生活習慣病 ●収縮期血圧(最高血圧)と拡張期血圧(最低血圧)の差がありすぎる、もしくは、無さすぎる →大動脈の硬化など ●収縮期血圧(最高血圧)が低すぎる →低血圧症など 血圧検査は生活習慣病チェックのNO.1 血液は血管内を満たし、その時一定範囲内の力で血管の壁を外に向かって押しています。心臓が収縮し、血液が送り出されるときが、その圧力がもっとも高くなる最高血圧です。心臓が拡張し血液をその中にため込むときが、その圧力がもっとも低くなる最低血圧です。考えてみると、高い血圧の方が、より力強く血液をすみずみに押し出すのだから、良いようにも思えます。しかし実際には常に「ほどほど」であることが健康な証拠なのです。 自分の血管壁にかかる健康な時の血圧を知っておくと、その数値からズレた時、高血圧症、動脈硬化、大動脈瘤、心筋梗塞、脳出血などのいわゆる生活習慣病の発見・診断に有効となります。 血圧検査の結果でわかること ※注:検査の数値はあくまでも「めやす」です。自分の結果が正常値になかったからといって、すぐにその病気であるとは限りません。正常値自体も医療機関によりバラつきがあります。不安があれば必ず、詳しく調べるようにしましょう。 分類 収縮期血圧(最高血圧) - 拡張期血圧(最低血圧) 低血圧100以下かつ60以下 至適血圧120未満かつ/または80未満 正常血圧120~129かつ/または80~84 正常高値血圧130~139かつ/または85~89 高血圧140以上かつ/または90未満 単位:mmHg 参考:高血圧治療ガイドライン2014より作成 ※低血圧についてはWHO世界共通基準より作成 健康な血圧をつくろう ●高血圧 動物性脂肪、塩分など食生活に十分注意します。体を動かし、よく眠ります。熱い風呂は避けましょう。医師の指示に従い生活改善をします。 ●正常高値血圧 不摂生がすぐ高血圧に移行する危険ゾーンです。肥満、たばこ、ストレス、塩分の摂りすぎなどに十分に注意します。 ●正常 血管は年齢とともに老化するものです。今は大丈夫でも今後を考え、栄養・運動・休養に留意します。 ●低血圧 本人に症状がなければ特に問題はありませんが、あれば受診し、医師の指示に従います。体をなるべく動かしましょう。
違う薬を組み合わせることが多い高血圧症 血圧を調節するメカニズムは複雑で、1種類の薬だけでは使用量が増え、副作用が起こりやすいため、高血圧症の治療には作用機序の違う薬を組み合わせて使うことが多い。 大きく分けると、降圧剤とは心臓からの血液量を減らすか、血管を広げるかして高い血圧を下げる薬だと言える。 代表的なものとして、心臓が1回に送り出す血液量(心拍出量)を減らすβ遮断薬や利尿薬がある。 神経末端から分泌されるノルアドレナリンという化学物質は、β受容体に結合してさまざまな作用を起こす。特に心臓に多く分布するβ1受容体は、ノルアドレナリンが結合すると、心拍数が増加する。β遮断薬は、この結合を妨害するはたらきをもつ。 一方、末しょう血管を拡張させることで血圧を下げる薬もある。体内の血圧を上げる物質であるアンジオテンシンを作る酵素(ACE)のはたらきを妨害して、血圧を下げるACE阻害薬、アンジオテンシンIIという物質のはたらきを抑えるARB、血管の筋肉の収縮にかかわるカルシウムイオンが血管壁の平滑筋細胞へ流入するのを防ぎ、血管をゆるめるカルシウム拮抗薬、末しょう血管や神経末端にあるα受容体(血管収縮に関わる)を妨害するα遮断薬などがある。 軽い場合は1剤で使われる 軽い高血圧症には、β遮断薬、ACE阻害薬、ARB、カルシウム拮抗薬、利尿剤が1剤で使われる。 程度が重ければ、2剤を併用するか、α遮断薬や上記以外の薬などが用いられる。
習慣化したい自分の体のチェック 健康維持には予防やセルフケアが欠かせません。近年その重要性が強く指摘されています。自分の体をチェックする習慣をつけたいものです。 最近では、家庭で簡単にできる検査器具も市販されています。例えば、高齢者などで血圧をひん繁に測定する人におすすめなのがデジタル自動血圧計です。血圧は日内変動があり決まった時間に測定しなければなりません。手軽に測れるのは便利です。 正しい方法での血圧測定を 血圧を測るときは正しい方法で行うことが必要です。10~15分の安静後に深呼吸をしてから測定する、食事直後やたばこ・コーヒー・アルコール摂取後は測らない、暖かい部屋で測る、腕を締めつけない服装で測るなどを守りましょう。 そして、家庭で測定した血圧はあくまでも目安として考えるべきです。基本的には健康時の体調チェックとして使うにとどめ、必要な場合はやはり専門の病院を受診するようにしましょう。
白衣高血圧といわれたことがありますか 普段の血圧がほぼ正常なのに、医者の前で測る時だけ血圧が高くなる人がいます。 診察室の雰囲気や白衣を着た医師と話をすることで知らず知らずに緊張していて、そのために血圧が高くなってしまうのです。 このような人は本当の高血圧患者ではありませんが、ストレスによって血圧が上昇しやすいタイプで、遺伝的な体質や食生活などの生活スタイルの要素によっては高血圧の発症予備軍となりやすいのです。 緊張と高血圧の関係 血圧を上げるのは交感神経の興奮ですが、緊張しやすい人、周囲の刺激に敏感に反応しやすい人は交感神経もすぐに興奮します。 このような人がストレスの多い環境に長く暮らしていると、高血圧発症の可能性が高くなるのです。 外国の数十年にわたる調査では、試験前に緊張する人はそうでない人よりも高血圧の発症頻度が高い、という報告もあります。 同様のストレスを受けていても高血圧になる人とならない人がいるという差には、ストレスに対する反応性の違い、つまりストレス耐性も一つの重要な要素と考えられるのです。
心臓病や脳血管障害に影響 大阪・国立循環器病センター腎臓内科の木村玄次郎氏らによって、本態性高血圧患者を食塩感受性と非感受性に分けて、重い心臓病や脳血管障害の発生頻度を比べた結果が、医学雑誌の「ランセット」350巻9093号(1997年)に報告された。 食塩感受性の判定は、1週間の低食塩食(0.5g/日)、引き続いて1週間の高食塩食(14.5g/日)にした時に、血圧が10%以上変化するものとしている。 食塩の感受性を判定した時点で何ら合併症がなかった156人のうち、62人が食塩感受性、94人が非感受性という結果となった。 平均で7年間追跡したところ、心臓の左室肥大は食塩感受性グループでは38%に認められたが、非感受性グループでは16%とちょうど半分。重い心臓病や脳血管障害が1年間に起こる確率を計算したところ、食塩感受性グループでは100人当たり4.3人だったが、非感受性グループでは2.0人と、これも半分以下だった。 腎臓、心臓、脳血管を障害する 食塩感受性の患者では、腎臓の糸球体の出口にある血管が狭くなっているため、血液は糸球体に流れてくる際に出にくくなり、血圧が高くなるという特徴が見られた。 また、腎臓の障害を表す微小アルブミン尿も見られたという。 この結果から、食塩感受性高血圧は、腎臓に早期に障害を与えるばかりでなく、心臓や脳血管に障害を与える可能性が高まることが推測される。 食塩を取ると血圧が上がるタイプの高血圧患者は、より厳重な管理が必要だと言えるだろう。
腎臓のナトリウム排せつ機能との関係 食塩を取ると血圧が上がりやすく、減塩すると血圧が下がりやすい人の性質を食塩感受性といい、日本人の本態性高血圧患者の多くが食塩非感受性といわれている。このような食塩に対する反応の違いは、主として腎臓のナトリウム排せつ機能と密接に関係している。 腎臓からどんどんナトリウムが尿の中に出ていく食塩非感受性の人と比べ、食塩感受性の人は、ナトリウムがなかなか排せつされないので、体の中にたまってしまう。 ナトリウムは水をひきつける性質を持っているので、その分、腎臓からの水分の排せつ量も減って、体内に水がたまる。こうして体をめぐる血液量が増えて、心臓は大量の血液を動かすために速く大きく拍動し、血圧が上昇することになる。 原因の一つは遺伝 食塩感受性が生じる原因として、まず遺伝があげられる。 両親のいずれかが、食塩感受性の高血圧だと、子供も同じ傾向を示すケースが多い。体内の血圧上昇物質であるアンジオテンシンIIが作られるのを助けるアンジオテンシン変換酵素の遺伝子と、食塩感受性の遺伝子が関連しているという研究報告もある。 アンジオテンシン変換酵素の遺伝子には、いくつかのサブタイプがあり、特定のタイプを持つ人は食塩感受性になりやすい。 食塩感受性を左右するのは遺伝だけではなく、年齢、性、肥満度、腎臓病の有無、糖尿病の合併なども影響する。高齢である、女性である、肥満である、腎臓病がある、糖尿病があるという人の方が、食塩感受性は高まると考えられている。 また、ストレスも影響するといわれている。
段階的に減塩を進める 濃い味に慣れている人が、いきなり薄味にすると、味気なく感じて食欲がなくなることや、嫌になってすぐに挫折してしまうことがある。 最終的に目標の摂取量にするまでに3ヵ月くらいの時間をかけ、徐々に減らしていくことが成功のコツだと言える。 しばらく食事日記をつけてみるのも一つの方法で、自分の食習慣のどこに改善の余地があるのかが見えてくる。 塩分以外の調味を工夫する それまで主に塩分に頼っていた味付けを、他の調味方法で補うという手もある。 例えば焼き魚に、しょう油の代わりにかんきつ類の絞り汁を利用するというような工夫をすると良い。 かんきつ類のほかにも、酢やショウガ、シソ、ミョウガ、セロリ、ニンニクなどの香味野菜、こしょう、山椒、わさび、ごまなどの香辛料、タイム、ミント、セージ、バジルなどのハーブをうまく利用することで、味にアクセントと広がりを出すことができる。 市販のだしには塩分が含まれていることが多いので、昆布やカツオ節、干しシイタケなどから天然のだしを取るようにしよう。独特のうまみが薄味の物足りなさをカバーしてくれるだろう。 外食も上手に利用する 1日3食すべて手作りで、という食生活は難しいもの。 外食をする際には、どんぶりものより定食を選ぶ、みそ汁や漬物は残す、しょう油やソース、塩などを極力かけないで食べる、そばやラーメンのつゆは残す、などの方法で、塩分を上手に減らすことが可能。 早食いの人はゆっくり味わって食べるようにすると、薄味でも満足がいくようになる。 血圧を下げる効果のある食品を活用する 栄養素でいうと、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどにナトリウムを体内から排せつする作用がある。これらの栄養素が多く含まれた食品を、減塩と並行してできるだけ取るようにすると、より降圧効果が期待できる。 カリウムが多く含まれるのは野菜、海藻類、芋類、大豆、果物など。牛乳などの乳製品にはカルシウム、種実類や緑黄色野菜にはマグネシウムが豊富に含まれている。 新鮮な食材と旬の材料を選ぶ 新鮮な食材、そして旬の材料は、素材の味が生きていて、濃い味付けを避けることができる。 例えば露地栽培のトマト、脂ののった初秋のサンマ、甘味を増した冬のネギなどは、調味料がなくてもおいしく食べることができる。 ■関連記事 塩分チェックシートを活用して減塩! 心筋梗塞など急病で入院した人は塩分に注意 病態栄養学会の報告から
低塩食と減塩食の違いは? 低塩食と減塩食ともに厳密に定義されているわけではありません。1日の食塩5g以下を低塩というか減塩というかは、人によりさまざまです。一般的には、減塩よりも低塩の方が、より制限が厳しいと考えられています。 厚生労働省の「健康づくりのための食生活指針」や第4次改定日本人の栄養所要量では、生活習慣病の予防のためには、食塩は1日10g以下が望ましいとされています。現在の日本人の食塩摂取量は12~13g/日ですから、2~3gの減塩は必要というわけです。 食塩と血圧の関係は、古くから研究されてきた 食塩感受性試験では、1日約0.5gという低塩食を1週間続けて血圧の変化を見ます。10%以上下がれば、食塩感受性の可能性が高くなります。 試験は、さらに高食塩食を1週間続け、血圧の変化を見ます。この場合の高食塩とは、1日約14.6gです。食塩を多く取った場合も10%以上上昇すれば食塩感受性とみなされます。食塩感受性の正確な診断は、低塩食、高塩食のいずれの場合も10%以上血圧が変化する時、確定されます。 食塩と血圧に関しては、長い研究の歴史があります。 日本では、1965年(昭和40年)頃は平均で1日19.2gぐらい取っていました。 1985年(昭和60年)頃になって、ようやく12~13g程度に下がってきました。食塩の摂取量が多い地域では、血圧の高い人が多く、脳卒中が多発していたため、減塩運動が続けられ、12~13gに減ってきたわけです。 当時の研究で、食塩をほとんど取らない地域の調査も行われました。 アマゾンのヤノマモ・インディアンは1日0.1g以下、ニューギニア原住民は1g以下でした。彼らの血圧は、ほかの食塩摂取量の多い地域の住民に比べて明らかに低く、このことが高血圧の改善に減塩指導がなされた根拠になっています。
T男さん(52歳)の場合 それまで健康上何も問題がないと思っていたT男さんが、血圧が高いと指摘されたのが1年前。真面目な性格で、奥さんにも協力してもらい、すぐに減塩を始めた。 医師には1日の塩分摂取量はとりあえず10gを目標にと言われたが、もう少し少なめの方が良いのではないかと思い、目標を8gに設定し、医師に言われた次の日から実行し始めた。 8gの減塩食は、それまで食べていたものと比べると物足りなく感じたが、体のためと思い、我慢して続けた。ところがだんだんストレスがたまっていってしまった。 塩分を制限する一方で、もともと好きだった甘いものを頻繁に食べるようになった。料理を作ってくれる奥さんには申し訳ないと思い、家では奥さんが風呂に入っている間などにこっそり隠れて食べた。会社ではお茶の時間に、これまで全く食べないか、せいぜい食べても1つだったまんじゅうなどを、2つ3つと食べるようになっていた。 会社帰りに我慢ができなくなると、喫茶店に寄ってなんとなく後ろめたい気持ちを抱きながらコーヒーと一緒にケーキを食べることもあった。 3ヵ月もすると、血圧は多少下がったが、体重が5kg、半年後には8kg増えていた。 無理な減塩がストレスの原因に このように、急激で無理な減塩は、ストレスの原因にもなる。T男さんの真面目な性格が災いしてしまったと言える。 高血圧の原因は塩分の取り過ぎ以外にもさまざまな要因が絡み合っている。ストレスや肥満も要因の一つなので、減塩をしながら、上手にほかの要素もコントロールしていくことが重要になる。T男さんの場合、徐々に塩分を減らし、慣れていく方法を取った方が良かったと考えられる。
Y男さん(45歳)の場合 Y男さんは、メーカーの営業マン。2年前、健康診断で血圧が高いと注意を受け、食生活と運動療法の指導を受けた。 ところがすぐに単身赴任になり、職場環境や生活環境の変化もあり、なかなか自分の生活に気を回すことができなくなって、元の生活に戻ってしまった。 次の年の健康診断で、さらに血圧が上昇していることが判明。薬を利用する前に、自己管理をすることを決心したものの、単身赴任で、完璧な減塩食を作ることができないため、細かい工夫をすることにした。 減塩のために行った工夫 朝食は、パンに付けていたバターを減塩バターに、インスタントのコンソメスープを牛乳に替え、余裕がある時は果物も食べるようにした。 昼の外食はそれまで、かつどんや天どんなどのどんぶり物か、忙しいときは立ち食いそばだったのを、定食を食べるようにした。時間のない時は、会社の近所の弁当屋で幕の内弁当を買ってきて食べている。 その際にも、定食ではみそ汁は半分残し、塩分の多そうなおかずは少しだけ食べ、その代わりにおひたしや酢の物、ヒジキなどの一品料理をプラスするようにした。 夕食はつきあいで飲みに行くことも多いが、その際にも、食べるつまみの種類を工夫し、塩分の少ないものを取るように心掛けた。 せっかちな性格のせいもあり早食いだったが、落ち着いて味わって食べるように気を付けると、早く食べた時より満足感が得られることにも気付いた。 さらに、運動をするように言われたため、営業の際に歩いて行ける場所には車を使うことをやめ、自宅から駅まで自転車を利用していたのも、15分歩くようにした。この方法は運動のための時間が取れないために考え出した。 血圧はほぼ正常値に 1年を経過した現在、血圧はほぼ正常値にまで下がっている。Y男さんは、次のように感想を語った。 「主治医が、完璧を目指さなくてもいい、自分のペースで工夫をするようにと指導してくれたことが良かったのだと思います。生活を見直す機会にもなりました」
10年間で半減に成功 山梨県では1979年(昭和54年)に初めて行われた県民栄養調査で、一人当たりの1日の食塩摂取量が16.6gであることが分かりました。 県内の死因別死者数でも、塩分の取り過ぎと関係が深いといわれる脳血管疾患がトップを占めていました。 そこで同年の内に、県と、県医師会がタイアップして減塩運動をスタートさせました。 50世帯を1グループとして、それぞれに研修を積んだ栄養改善推進員が一人ずつ割り当てられ、保健婦、栄養士と連携し、各家庭の味付けを指導しました。 料理の講習会や家庭訪問を繰り返し、みそ汁の塩分濃度を測る塩分濃度計と血圧計を持って、減塩の必要性を説いて回りました。 1軒が納得して薄味を実践するようになると、「あそこの家でもできたのだから」とグループ全体が同調していきました。 その結果、総務庁の家計調査で、1980年には1世帯当たりの塩の年間消費量が6.6kgと、全国で4番目に多かったものが、1990年代前半には全国平均値の3.1kgにまで減少しました。地道な運動が成果を上げるという好例でしょう。
乾燥みそは生みその2倍の塩分 最近はコンビニエンスストアやスーパーなどで、熱湯を注ぐだけで、みそ汁になる、即席みそ汁が販売されています。具も多種類にわたり便利なものです。 しかし、生みそではなくフリーズドライのみそを使った即席みそ汁には、注意が必要です。そこで使用されている乾燥みそには、普通の生みそより多くの塩分が含まれているからです。 淡色辛みそ(信州みそなど)の塩分が12.4%なのに対し、乾燥みその塩分は 23.9%、生みその約2倍の塩分が含まれています。 同じ一杯のみそ汁でも、知らずに2倍の塩分を取ってしまうことになります。これは、乾燥みそを作る工程で、塩を多く利用するためです。 味の面では実際に口にした時、2倍辛いとは感じないので注意が必要です。
市販のだしは成分を確認する必要あり 大半の食品にはエネルギー、脂質、炭水化物、ナトリウムといった“標準栄養成分表”が記されています。この表示中のナトリウムを「=塩分」と思っている方も多いのでは? 実はナトリウムは食塩相当量に換算する必要があります。 ナトリウム(mg)×2.54÷1000=食塩相当量(g) つまりナトリウム1gで塩分2.54gに相当します。また、一般的な市販のだしの素に含まれているグルタミン酸ナトリウム1gにはナトリウム0.12gが含まれており、塩分に換算すると0.31gに。 塩分を調整する必要がある人は、市販のだしを選ぶ際にも、成分表示を確かめる習慣をつけるとよいでしょう。 手作りのだしがおすすめ だしは、できれば手作りすることをおすすめします。 コンブやカツオ節、なまりぶし、干しシイタケ、干しエビ、ニボシなどから、うま味たっぷりのだしを取ることができます。 カルシウムやマグネシウムなどの血圧低下作用を持つミネラルも摂取できます。 コンブとカツオ節などのように、組み合わせるとうま味が増す材料もあり、塩分を控えた物足りなさを補うことができます。大量に作って冷凍保存することも可能です。
バターは1.9%、マーガリンは2%の塩分 バターには特別に表示がなくても、1.9%の塩分が含まれています。マーガリンの塩分含有率は2%です。 ですから、調味料としてバターを使う時ばかりでなく、既にバターが含まれた食品にも相当の塩分が含まれていると考える必要があります。 バター、マーガリン共に、減塩、または無塩のものも市販されています。 パンにも食塩は含まれているので、バターやマーガリンをたっぷり塗ったトーストなどは、高血圧の人は避けるようにしましょう。
高血圧と動脈硬化は一体の関係 動脈は、平滑筋や結合組織からなり、弾力性に富み、少々血液量が増えても、膨張することで十分に耐えることができます。 しかし老化や、コレステロール・中性脂肪が増加し、血液中の成分が動脈に蓄積すると、動脈が変質することがあります。これが動脈硬化です。 動脈硬化と高血圧とは一体の関係にあります。 高血圧のため常に動脈に強い圧力がかかると、動脈壁に傷が発生し、この傷から血液中の脂肪分が浸透して、動脈硬化を起こします。また、動脈硬化が進むと、血管が狭くなるので、血液の流れが悪化します。 それを改善しようと、心臓が拍動を強め、そのため血圧が上昇します。 こうして、さらに動脈硬化を進行させ、悪循環をもたらします。 動脈硬化には3種類ある 動脈硬化には病理学的に見て、細(小)動脈硬化(血管壊死性動脈硬化)、粥状硬化(アテローム硬化)、中膜硬化の3種があります。それは単独、あるいは同時に発生します。 なかでも、粥状硬化が、高血圧と深い関係にあります。 粥状硬化は、比較的太い動脈に発生する動脈硬化です。粥状の固まり(アテローム)が動脈壁に発生します。アテロームの発生した動脈の内腔は狭くなり、このため血流が滞り、血圧が上昇します。 またアテロームの発生した部分の動脈は上昇した血圧に耐え切れず、破れて出血を起こすこともあります。粥状硬化の発生しやすい部位は、脳、心臓、下肢などです。
虚血性心疾患は高血圧が関係 心臓は、表面を取り巻く冠状動脈から血液の供給を受けて活動している。 高血圧などで血流が悪化し、十分な血液が供給されなくなることではたらきが鈍くなる状態を虚血性心疾患と呼ぶ。 虚血性心疾患には狭心症と心筋梗塞とがあり、いずれもその発生に高血圧が大きく関係している。狭心症は、動脈硬化、あるいは冠状動脈の一部のスパスム(縮み)によっても発生する。 心筋梗塞は、冠状動脈に動脈硬化が起こり、血流が悪化して詰まってしまい、心筋が壊死する状態。狭心症を経て心筋梗塞に進展するケースが多い。 また、虚血性心疾患にはならなくても、高血圧の状態でいること自体が心臓の機能に過重な負担をかけ、心臓の左室肥大から心不全が起こる危険性もある。
高血圧が引き起こす脳の合併症 高血圧による脳の合併症として、脳卒中が発生することがある。 脳卒中とは、脳内の動脈に動脈硬化が発生し、破れて出血したり、詰まったりするというような障害が生じた状態を指す。 障害が生じた部位に関係する脳のはたらきの欠損や低下が起きることで、さまざまな症状が現れる。 脳卒中には、脳梗塞、一過性脳虚血発作(TIA)、可逆性虚血性神経障害(RIND)、脳出血、くも膜下出血、高血圧性脳症などがある。 認知症の原因になることも 高血圧によって、脳の血管に梗塞などの障害が生じると、認知症が引き起こされることもある。脳血管性認知症というタイプで、アルツハイマー型、レビー小体型とともに「三大認知症」と呼ばれることもある。
動脈硬化は進むと悪循環 高血圧による合併症には、狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患、脳こうそく、脳出血、くも膜下出血などの脳卒中など生命にかかわるものが少なくありません。また、動脈硬化も発症、進行し、深刻な合併症につながっていくケースもあります。 動脈硬化は、進行するに従い、血圧が上昇し、また血圧が上昇することによってさらに動脈硬化が進むという悪循環に陥りがちです。 初期発見が大切 動脈硬化や合併症が発症してしまうと、健康な状態に戻すことはできにくいため、高血圧を初期のうちに発見し、治療を始めることが必要です。 また既に動脈硬化や合併症の発症後でも、高血圧の状態を改善することで、生命にかかわる危険を大幅に減少できると世界各国のデータは示しています。
すでに血圧の高い人 軽症(最高血圧140 ~159mmHg 、最低血圧90~99mmHg、臓器の病変なし)の場合は1日6~8g。ただし自覚症状もなく、日常生活に支障がないケースでは、8~10gで良いといわれています。 中等症(最高血圧160 ~179mmHg 、最低血圧100~109mmHg、心臓肥大、網膜動脈狭さく、たんぱく尿あり)の場合は1日5~6gが基本です。 重症(最高血圧が180mmHg 以上、最低血圧110mmHg以上、心不全、網膜の出血・浮しゅ、狭心症・心筋梗塞を伴う)になると、1日3~5gに制限しなければなりません。この制限では、食塩を含む加工品を取ると、調味料としてはほとんど使用できなくなります。 特に日本人では長く続けることは不可能に近く、医師の指導を受けながら、浮しゅが抑制され、尿量が増加、血圧の低下が見られれば5g程度まで増やしていくのが現実的です。 食塩感受性の高い人 食塩感受性が高い人(salt-sensitive)の場合は、同じ量の食塩を取っても、感受性のない人と比べると、血圧がすぐに敏感に反応し、上昇します。血液の検査で、この感受性の有無を調べることは可能ですが、現在はまだ研究段階で一般化されていません。 一般の病院に2週間ほど入院して減塩食と通常食を1週間ずつ取り、感受性の有無を調べる方法がありますが、これも現状では保険がきかず、医療機関でも、実施しているところはごくわずかです。 一般的には、厚生労働省が現在摂取目標としている男性:8g未満、女性7g未満という基準を守るのが良いでしょう。 食塩感受性のない人 食塩感受性のない人(non-salt-sensitive)の場合は、腎臓のナトリウム排せつ機能が正常にはたらくため、余分な塩分を取っても、4~5日で排せつされてしまいます。その意味では摂取に厳しい制限を設ける必要はありません。 ただし、塩分の多いものを取り過ぎると、主食が進み、食べ過ぎを招く可能性があるため、肥満の予防のためにも、基本的な注意は必要です。
調味料として食塩を使用しなくても、市販の食品を食べることで、知らないうちに塩分を摂取していることがあります。 塩分が多い市販の食品には下記のようなものがあります。 主な食品に含まれる塩分量 食品名 数量 塩分含有量 食パン 一斤6枚切り1枚、60g 0.8g うどん(乾) 100g 1.0g 冷麦(乾) 100g 1.0g インスタントラーメン 1袋、85g 1.0g ウインナソーセージ 3本、45g 1.0g ロースハム 1枚、20g 0.6g シシャモ(国産、生干し) 3尾、45g 0.5g シラス干し 小さじ1、10g 1.2g タラコ(生) 小1/4 腹、25g 1.7g イクラ(筋子) 大さじ1、15g 1.5g ツナ缶(フレーク、油漬) 40g 0.5g はんぺん 1枚、100g 0.8g 蒸しかまぼこ 3切れ、30g 0.8g スライスチーズ(プロセスチーズ) 1枚、20g 0.6g 粉チーズ(ナチュラルチーズ:パルメザン) 大さじ1、6g 0.2g たくあん 2切れ、20g 1.4g キュウリのぬか漬け 小皿1、35g 0.1g ラッキョウの甘酢漬け 20g 0.5g 味付けのり 5枚、3g 0.2g 出典:科学技術庁資源調査会編「四訂 日本食品標準成分表」より
ごはん165g マグロとイカの刺身 ・材料 マグロ赤身60g、イカ20g、青シソの葉1枚、大根20g、わさび少々、しょうゆ小さじ1 ・作り方 イカは皮をむいて表面に包丁の目を入れる。内側を上にしてシソの葉を乗せて巻き、7~8mmの厚さに切る。器に刺身を盛り、千切りにした大根をそえ、わさびとしょうゆで食べる。 うの花いため ・材料 おから40g、むきエビ20g、ネギ10g、ニンジン10g、サラダ油小さじ3/4、砂糖小さじ1、しょうゆ小さじ1/3、だし汁1/4カップ ・作り方 むきエビは背わたを取り、さっとゆでる。ネギは小口切り、ニンジンは千切りに。鍋に油を熱し、ネギ、ニンジンを炒め、おからを加える。砂糖、しょうゆ、だし汁を加え味をからめ、エビを加えて混ぜながらいり煮にする。 シュンギクの磯辺巻き ・材料 シュンギク60g、のり1枚、しょうゆ小さじ1/2、だし汁大さじ1と1/3 ・作り方 シュンギクはゆでて水に取り、水気を絞る。巻きすにのりを広げ、シュンギクを手前に置いて巻き、食べやすい大きさに切る。だし汁で割ったしょうゆをかける。 ゆばの汁わん ・材料 生ゆば5g、だし汁3/4 カップ、塩0.5g、うす口しょうゆ小さじ1/2、ミツバ少々 ・作り方 生ゆばはさっと湯どおしし、鍋にだし汁を煮立て、塩とうす口しょうゆで味を調える。おわんにゆばを入れて汁を注ぎ、刻んだミツバを散らす。
以下では、でき上がり1カップ分の材料を紹介する。 ごまドレッシング ・材料 サラダ油 1/2カップ、酢大さじ2、減塩しょう油大さじ1、砂糖少々、すりごま大さじ1、練りごま大さじ1 ・作り方 ごま以外の材料を、よくかき混ぜ合わせる。後からすりごまと練りごまを加えてよく合わせる。すりごまを作る場合も、でき合いを使う場合も、弱火でさっといった方が、香ばしさが出る。 おろしドレッシング ・材料 サラダ油 1/2カップ、酢大さじ2、減塩しょう油大さじ1、砂糖少々、大根(すりおろしたもの)1/4カップ、ショウガ汁小さじ1、一味とうがらし少々 ・作り方 サラダ油、酢、しょう油、砂糖をよく混ぜ合わせる。すりおろした大根は、水気を軽く切る。すべての材料を混ぜ合わせる。 オニオンドレッシング ・材料 サラダ油 1/2カップ、酢大さじ2、減塩しょう油大さじ1、玉ネギ(すりおろしたもの)大さじ1と1/2 、マスタード少々、こしょう少々、セージ・パプリカ各少々 ・作り方 サラダ油、酢、しょう油、砂糖をよく混ぜ合わせる。すりおろした玉ネギは軽く水分を絞る。全部の材料を混ぜ合わせる。 シソ ドレッシング ・材料 サラダ油 1/2カップ、酢大さじ2、減塩しょう油大さじ1、青ジソの葉2枚 ・作り方 青ジソの葉はみじん切りにする。シソ以外の材料をよく混ぜ合わせる。最後にシソを入れて、ざっと混ぜる。 ユズ ドレッシング ・材料 サラダ油 1/2カップ、酢大さじ2、減塩しょう油大さじ1、砂糖少々、ユズ1/2個、酒小さじ1 ・作り方 ユズの皮を細かい千切りにし、残りの身から絞り汁を取る。すべての材料を混ぜ合わせる。 キュウリ ドレッシング ・材料 サラダ油 1/2カップ、酢大さじ2、減塩しょう油大さじ1、砂糖少々、キュウリ1/2本 ・作り方 キュウリはすりおろして軽く水を絞る。すべての材料を混ぜ合わせる。 ■関連記事 塩分チェックシートを活用して減塩! 心筋梗塞など急病で入院した人は塩分に注意 病態栄養学会の報告から
酸味・辛味・香味をプラス 減塩を成功させるためには、単に塩分を減らすだけではなく、味付けに工夫をするとうまくいく。塩分を減らし、酸味や香味、辛味などを適度にプラスすることで、薄味になった分を補うことができる。 例えば、それまで大根おろしとしょう油で食べていた焼き魚も、レモンやユズ、スダチ、カボスなどかんきつ類の絞り汁をかけると、しょう油がなくても、香りと酸味で十分おいしく食べられる。 塩分少なめの薄味で食べられる料理として、酢の物もある。二杯酢、三杯酢以外にも、木の芽酢やごま酢など、中身にひと工夫すると、バリエーションも広がる。 酢は、成分や値段だけではなく、味で選ぶと食もすすむことになり、塩味に頼らない調理が可能になる。 普通の酢は、基本的に米をはじめとした穀物類を原料にしているが、リンゴなどの果実を使ったものもあり、色々試してみると良いだろう。
降圧薬の種類 降圧薬には、大別して、利尿薬、β遮断薬、α遮断薬、ARB、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、カルシウム拮抗薬、血管拡張薬などがある。 また血圧の上昇に精神的な要因が大きくかかわっている場合に抗不安薬を使用することや、血中の総コレステロールや中性脂肪が多いタイプには、動脈硬化の発症・進行防止のため、脂質代謝改善剤を投与することもある。 種類が変われば、効果の仕組みが変わる 降圧薬は、種類によって血圧を下げる仕組みが異なり、高血圧の程度、年齢、性別、また内臓疾患や血液異常の有無などにより選択される。 通常の場合、医師は、まず第一選択薬として必要最小限の量を処方して、様子を見る。血圧の低下が見られなかった場合は、第一選択薬の増量、あるいは他の降圧薬への変更または併用を選ぶことになる。 定期的に血圧をチェックしよう 高血圧には、複数の要因が複雑に絡み合っている場合が多いため、あるメカニズムを抑制すると、ほかのメカニズムが反動で強くはたらき、うまく降圧効果を得られない場合がある。 降圧薬を使用し始めたら、定期的に受診して血圧をチェックし、効果的に降圧作用が得られているかどうか判断する必要がある。
日本人の多くは食塩非感受性 人間は、血圧が塩分に敏感に反応するタイプと、反応しないタイプに分けることができる。前者が食塩感受性(salt-sensitive)、後者が食塩非感受性(nonsalt-sensitive)で、日本人の多くは後者だと言われている。 高血圧になった人の多くも食塩非感受性で、こういったタイプの人は、いくら塩分を減らしても、それだけでは高血圧症を好転させることは難しい。 食塩感受性と食塩非感受性の仕組み 食塩感受性の人は、腎臓からのナトリウム排せつ機能に異常が生じ、ナトリウムが体内に蓄積し、その結果、血圧が上昇する。 一方、食塩非感受性の人は、腎臓のナトリウム排せつ機能が正常にはたらくので、体内に入った余分なナトリウムは排せつされやすいため、血圧への影響は少ない。 このことから、食塩非感受性の人が高血圧の治療で減塩治療を行っても、効果が現れにくく、無理をして極端に塩分を落とすと、塩分不足や栄養不足のため、かえって無気力になったり疲れやすくなったりする可能性がある。 特に夏場などは、発汗によって大量の塩分が失われるため、注意が必要となる。
WHOが5g程度、厚生労働省では10g以下 人間には、塩分を摂っても血圧に影響しない食塩非感受性と、血圧が塩分に敏感に反応する食塩感受性の2つのタイプがあります。 日本人を例にあげれば、塩分を摂っても問題のない人が全体の6割、塩分が影響するのは残りの4割といわれています。一概に、血圧を上昇させる食塩の量を出すことはできません。 ただし、例えばWHO(国際保健機関)では、1日の摂取量を5g程度にすべきだとしています。日本の厚生労働省では男性:8.0g未満、 女性:7.0g未満を目標としています。 日本人は歴史的にも食塩の摂取量は多い 日本人は、歴史的に見ても、民族としてかなり食塩の摂取量が多い方です。国民栄養調査の成績によると、昭和41~46年(1966~1971年)まで、全国平均1人1日当たり、17~18g摂取していたと推測されています。 またさかのぼり、昭和26~27年に福田篤郎らが行った秋田県の農村における高血圧調査では、農民の293人の24時間蓄尿によって、成人1人当たり1日平均26.3gの食塩摂取量を測定し、同時に高血圧者も多いことを明らかにしています。 平成7年でも国民栄養調査によると、日本人は平均で、厚生労働省が目標よりもかなり多い、13.2gの塩分を摂取しています。 個人によって塩分に対する感受性が違うとはいっても、塩分も取り過ぎない方がいいのは事実です。特に、味の好みは幼いころに培われるものなので、子供のころから薄めの味付けに慣れておくことが大事です。
血圧は1日のうちでも変化する 血圧は終日一定の状態を維持しているわけではありません。1日のうちでも上がったり下がったり変化をします。これを血圧の日内変動といいます。 朝起きてから、精神的または肉体的に活動が活発になるにつれて、徐々に血圧は上昇します。夕方近くになると低下の傾向を示し、夜眠りに入り、午前3時ごろが一番低いのが一般的です。 ですから、自分の正確な血圧の状態を知るためには、毎日同じ時間に測ることが求められます。違う時間帯に測っていたのでは、条件が違い、正確な血圧の状態を知ることはできません。 なお、昼間血圧が高く、夜低い人をディッパー型、逆に昼間より夜間の方が血圧が高い人を、ノンディッパー型の高血圧と呼んでいます。後者は、血圧のリズムが乱れてしまった重症例に多いパターンです。 ■関連記事 塩分チェックシートを活用して減塩! 心筋梗塞など急病で入院した人は塩分に注意 病態栄養学会の報告から
体液中のナトリウムが不足すると 食塩自体は、直接エネルギー源とはならないが、人体に必要な無機質の一つ。体液に、ナトリウムイオン(Na+)及び塩素イオン(Cl-)という形で溶けていて、他の物質では置き換えることができない。 ナトリウムは、血しょうと細胞外液中の主要なミネラルとなっている。 人体の組織内外の体液、そして細胞の浸透圧を一定に保つはたらきをするほか、神経や筋肉のはたらきの調整、食物の消化(胃酸)に関してはたんぱく質の溶解とアミラーゼを活性化させるはたらきをしている。 そのため、体液中のナトリウムが不足すると、筋肉のけいれんが起きたり、血圧が下がりすぎたり、時には意識障害が起きたりすることもある。 体内のナトリウムの量は、自然に調整されている 体内では、ナトリウムの摂取が少ないと、一般的にはホルモンのアルドステロンが分泌され、腎臓でナトリウムの排せつを抑制し、再吸収が促される。逆にナトリウム摂取が多いと、過剰分は尿の中に排せつされる。 このような形で、体内のナトリウムの量(塩分バランス)は、かなり幅広い摂取量にわたって正常な水準を維持している。 しかし例えば、激しい運動による発汗は、この作用の範囲を超えることがある。暑さの厳しい時に激しい運動をすると、大量の発汗が起きるが、10l(リットル)の汗をかくと、体内からおよそ30gの食塩が失われてしまう。このような状態では非常に口がかわき、水を補給すると、血液が薄められる。 運動中は腎臓機能が抑制されているため、筋肉からナトリウムが奪われ、この結果、筋肉の浸透圧が低下し、筋肉中に水が浸入し膨張する。 この状態がひどくなると、筋肉に猛烈な痛みを感じ、熱けいれんと呼ばれる、けいれんが起きることがある。このような状態を避けるためには、水を飲むのと一緒に適量の食塩を補給する必要がある。 ■関連記事 塩分チェックシートを活用して減塩! 心筋梗塞など急病で入院した人は塩分に注意 病態栄養学会の報告から
有酸素運動は有効 運動療法は、高血圧の予防だけでなく、治療にも適用されています。 治療の際にも、減塩と栄養バランスの整った食事の摂取を中心とした食事療法と、運動療法で十分な効果が上がらない場合に、薬物療法を加えるのが一般的です。 さまざまな運動のなかでも、高血圧の予防や治療には、体内に大量の酸素を取り入れながら行われる有酸素運動が有効です。 有酸素運動とは、ウォーキング、水泳、ジョギング、ストレッチ、サイクリングなどです。これらの運動を日常生活の中にうまく組み入れ、続けていくことで効果が得られます。 治療の一つとして運動を取り入れる場合は、体の状態に応じて適切な運動をする必要があるため、医師にあらかじめ相談する方が良いでしょう。
高血圧の6つの誘因 高血圧には複数の誘因が絡み合っていることが多いため、食事だけでは防ぐことができないケースが多くあります。 誘因として、食事、つまり塩分の取り過ぎを含め、以下のような6つが明らかになっています。 体質の遺伝 日米の調査を合わせてみると、両親がそろって高血圧だった場合はその子供の約60%、5人のうち3人は高血圧になる、また両親のどちらかが高血圧の場合は約30%、3人の子供のうち1人は高血圧になるという結果が出ています。 食塩の取り過ぎ 肥満 特に中年以降の内臓肥満は、糖の代謝を抑えたり、血中のインシュリンを高めたり、コレステロールや中性脂肪を上昇させて、血圧の上昇をもたらしたり、動脈硬化を促進します。動脈硬化が進むと、血管が狭くなって血圧はさらに上昇します。 精神的・肉体的なストレス ストレスが掛かり、交感神経のはたらきが活発になると、カテコラミンなどの血圧を上げるホルモンが分泌されます。 寒さに対する不十分な対策 皮膚が冷たい空気に触れると、体温の下降を防ぐため交感神経がはたらき、カテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)が血液中に送り出されます。その結果、血管が収縮、血管抵抗が増し、血圧が上がります。 A型といわれる性格 闘争的で、せっかちなA型行動パターンの人は、交感神経のはたらきが活発になり血圧が上昇しやすいのです。なお、ここでいうA型は、血液型とは関係ありません。
白衣性高血圧 病院や診療所で血圧を測ってもらうと高血圧だといわれるが、自宅で測ると正常な範囲を示すというケースがかなりあります。
水銀血圧計とデジタル血圧計 家庭用の血圧計は、薬局、医療器具専門店、デパート健康用品売場などで手に入れることが可能です。 種類としては、大別して、医師が使用しているものと同じ水銀血圧計と、デジタル自動血圧計の2種類があります。 デジタル自動血圧計には、手の指で測るもの、手首で測るもの、上腕で測るものなど、幾つか種類があります。 測定数値の正確さでいえば、水銀血圧計に軍配が上がりますが、デジタル血圧計は、価格も安いうえに、重量が軽く、手軽さの面で利用価値は高いでしょう。 測定する際の注意 測定する際には、以下のことに注意します。 1日に1、2回、決まった時間に測る 血圧は1日のうちでも変動するため、時間を決めて測ることで、正しい血圧の状態が把握できます。 測る腕と姿勢は同じに 右腕であれば右腕と決めて測ります。腕に、まひやこわばりなどがあるときは、障害のないほうの腕で測ります。 また、測定の際には、座っていても寝ていてもいいのですが、いつも同じ姿勢で測るようにします。姿勢によって10~20mmHgの値の違いが出ることがあるからです。 寒い部屋で測らない 寒い場所では、血管が収縮し、血圧が上昇します。 寝不足や過労など体調の悪い時は避ける 食後1時間以上経ってから測る 直前の喫煙やコーヒーは避ける 腕を締めつけた状態で測らない
高血圧と違い、血圧が低い状態には、それほど心配はいりません。 最高血圧が100mmHg以下、最低血圧が60mmHg以下を低血圧症といい、原因別に、症候性低血圧症、本態性低血圧症、起立性低血圧の3種に分類されています。 本態性低血圧症 遺伝的体質が原因といわれ、低血圧症のほとんどがこのタイプです。特別な合併症が起こるようなこともなく、どちらかというと長生きをするといわれ、血圧を高くする治療も必要ありません。 起立性低血圧 急に立ち上がったり、長時間立ち続けたりした場合に、上半身の血圧が低下し、立ちくらみやめまいを起こすものです。 多くは原因不明ですが、自律神経の不調などが原因で起こる場合もあります。 症候性低血圧症 大動脈弁狭さく症、心筋梗塞などの心臓病、甲状せん機能低下症、アジソン病などのホルモン系の疾患、栄養不足、寝たきりの状態などによって起こるものです。 治療により原因を取り除けば、血圧も正常に戻ります。 ■関連記事 貧血と低血圧はどう違う? 女性が「冷え性」になりやすいのは、どうして?
うすくちしょうゆは色が薄く塩分が高い しょうゆには、大きく分けて「こいくち」「うすくち」「たまり」の3種類があります。 こいくちしょうゆとは普通のしょうゆのこと。うすくちしょうゆとは、塩分が少ないのではなく、色が薄いしょうゆのことです。ちなみにたまりは、塩分はこいくちと同じで、若干のとろみがあり、寿司のつけじょうゆなどに使われます。 こいくちしょうゆと、たまりしょうゆの塩分は15%、うすくちしょうゆの塩分は16.3%です。 うすくちしょうゆは、塩分を多くして、熟成に時間をかけたもので、香りや味が淡泊なのがその特徴です。 そのため、煮物などの調理の際に使用すると、色や味が余り付かず、使い過ぎてしまう傾向があるため、注意が必要です(食塩含有量は四訂日本食品標準成分表より)。 また「減塩」と表示されたしょうゆの塩分は、8.4 %です。こいくちの約半分の量です。
つまみには塩分が多い お酒は百薬の長といわれるぐらいですから、適量であれば問題はありません。しかし対象がどんな病気であっても、飲み過ぎは体に良くありません。 お酒を飲む場合、アルコールそのものより、一緒に食べるつまみに問題があります。 お酒のつまみには、塩分を多く含むものが多いからです。 塩辛、さつま揚げ、ししゃも、みそ田楽、もつの煮込み、くんせいなどの乾きもの、バターピーナツ、チーズなどです。 塩をなめながら日本酒を飲むなどという人もいるぐらいです。お酒の量に注意することはもちろんですが、つまみの塩分にもかなり気を付ける必要があります。
まだ取り過ぎている塩分 食塩の摂り過ぎ量の目安は、1日10g以下です。 国民栄養調査によると、戦後しばらくはその2.5倍も摂っていました。その後、次第に減ってきてはいますが、現在は12~13g位で、まだ塩分は取り過ぎています。 塩分を取り過ぎると、高血圧になりやすいと考えられています。高血圧は脳出血や心不全をもたらし、動脈硬化を促進します。動脈硬化が進むと、脳こうそくや狭心症、心筋梗塞を引き起こす危険性が高まります。 また、塩辛い食品の取り過ぎは胃がんを起こしやすくします。さらに食塩の取り過ぎは、カルシウムの排せつを促す作用もあります。 腎臓機能が不十分な時に塩分を取り過ぎると、体液量が増えてむくみ、腎臓のはたらきを悪化させます。 減塩の方法あれこれ 塩分の取り過ぎを抑制するには、徐々に薄味に慣らしていくことです。塩の代わりに、酢やレモン、カボス、スダチなどの果実の酸味を利用するようにします。 生野菜には、食塩の害を阻止するカリウムが多く含まれています。 また、漬物はなるべく一夜漬けや浅漬けにして、食塩を減らすようにします。加工食品にも塩分が多く含まれているので、取り過ぎないことです。 ■関連記事 塩分チェックシートを活用して減塩! 心筋梗塞など急病で入院した人は塩分に注意 病態栄養学会の報告から