疾患・特集

どんな運動なら続けられる?アクティブビデオゲームで運動能力を保とう

運動は、健康な人にとっても生活習慣病などに悩む人にとっても重要ですが、続けることは簡単ではありません。どんな運動なら続けられるか、一体、自分はどのくらいの量の運動をすればいいのか、ここでは、このような問題を解くヒントになる研究を紹介したいと思います。

健康を増進させるための新しい運動プログラム

アクティブビデオゲームが、健康を増進させるための新しい運動プログラムとして注目されています。アクティブビデオゲームとは、腕や足、あるいは全身を使って行うコンピュータゲームで、すでにこれで遊んだことがあるという方も多いと思いますし、プログラムの豊富さから今では老若男女を問わずに親しめる状況にあります。定期的に体を動かすことが健康に繋がる点は疑いのないところで、特に、家に閉じこもりがちな高齢者にとっては重要です。

そこで、アクティブビデオゲームを散歩やジョギングなどの運動に置き換えられないかというアイディアが出てきます。
実際に、健康な高齢者を対象にした検討が700件近くも行われており、その中からレベルの高かった18の研究を選んで統合して解析した報告があります*1
これらの研究では、3~20週間にわたって週2~3回、1回あたり40分程度のアクティブビデオゲームを行ったグループと、この間、何もせずに普通に過ごしたグループの運動能力を比べています。運動能力について30秒間に座った状態から立ち上がる動作を何回繰り返せるか(30秒 sit-to-stand)、3mの距離を座った状態から立ち上がって歩き、戻ってくるのにかかる時間(Timed Up and Go)などを使って評価しています。
解析の結果、最初は同じだった30秒sit-to-standの回数が、何もせずに過ごしたグループに比べてアクティブビデオゲームを行ったグループで明らかに増えることがわかりました。

このことは、外に出るのがおっくうな高齢者であってもアクティブビデオゲームで遊べば運動能力が保てる可能性を示していますし、ステイホーム(stay at home)が求められる状況での運動不足解消にも有効だと思います。

高血圧へのゆっくりとした散歩の効果

写真:高血圧へのゆっくりとした散歩の効果

生活習慣病の人は、どのように運動すればよいでしょうか。高血圧は国民病とも言われ、日本人の生活習慣病の代表格ですが、その予防や改善に対するゆるやかな散歩の効果を検討した研究があります*2
時速3kmの歩行を50~60分間続けたときに血圧と心拍数にどのように影響するか、平均年齢が30歳弱の健康な人のグループと同年齢の高血圧一歩手前の人のグループの間で比較した研究です。
その結果、1時間程度のゆっくりとした散歩をした10分後には、どちらのグループとも血圧が下がり、心拍数が減ることがわかりました。また、このようなゆっくりとした散歩を2ヵ月間続けた7人の高血圧患者さんでも同じような効果が得られたと報告されています。

板倉先生ワンポイントアドバイス

運動は健康の維持・増進だけでなく生活習慣の予防と改善にも大切であることが分かっています。それも継続することが必要であり、そのためには楽しく出来ること、体の調子に合わせて無理のない程度の運動でなければ、かえって体の具合が悪くなることもあります。膝が痛くなる場合は軽い運動にしたり、クッション性の良い靴に変えたりなど工夫することも必要です。

■参考文献

  • *1:Taylor LM, et al. J Geratr Phys Ther 2018; 41: 108-123
  • *2:Lu Q, et al. Acta Pharmacologia Sinica 2019; 40: 1119-1126
公開日:2021/03/24
監修:芝浦スリーワンクリニック名誉院長 板倉弘重先生