雨が降る前には古傷が痛むという話を耳にすることがあると思います。なかにはご自身で体験されている方もいらっしゃるかもしれません。その真偽やいかに。ここでは、「天候は体調に影響するか」をテーマに行われた比較的新しい研究を紹介したいと思います。 目次 気温や湿度が体調に影響を及ぼすことは明らか 天候の影響を受ける病気についての研究 板倉先生ワンポイントアドバイス 気温や湿度が体調に影響を及ぼすことは明らか 聖路加国際病院公衆衛生大学院の研究グループは、4,500人を超える日本人の患者さんについて気温や湿度などの気象因子と体調の関係を調べています*1。その研究結果によれば、気温の上昇に明らかに影響される症状は関節痛、頭痛、筋肉痛、湿疹、疲労、興奮/不安、逆に、気温の低下に影響される症状は咳、喉の痛み、寒気、普通の風邪、こむら返りでした。湿度の影響では、上昇で悪化するのは関節痛、頭痛、こむら返り、疲労、低下で悪化するのはくしゃみ、寒気でした。咳や寒気などの風邪症状が寒くなれば悪化するのは常識として理解されていると思いますが、痛みについて気温が高いほど、湿度が高いほど悪化することはあまり知られていなかったかもしれません。また、この研究では男性よりも女性の方が気候による体調への影響を受けやすいこと、65歳以上の高齢者は65歳未満の若年者よりも低温や高湿度の影響を受けやすいことも報告されています。 天候の影響を受ける病気についての研究 特定の病気について天候の影響を調べた研究がありますので、いくつか紹介したいと思います。 関節リウマチについて、多くの医師は気候に影響されると考えています。それが事実かどうかを研究したMohammed First University(モロッコ)の研究者は、論文のタイトルに「Myth」(神話)という言葉を使っています。ウイットを感じます。この研究は、117人の関節リウマチ患者さんを対象に、季節と気温/湿度が症状とどのように関係したかを調べたものです。その結果、冬の気温と湿度が関節の腫れと痛みに影響し、夏は最低気温と気圧が関節の痛みに関係することがわかりました*2。降雨の関節痛や腰痛への影響を調べた研究もありますが、関係はなさそうというのが結論でした*3。 アンケート調査を使った歯周病の患者さんに起きる急性症状と天候の関係についての研究もあります。その研究では時間あたりの気圧の急激な低下、1日の平均気温が急性症状の発生に関係するという結果が得られました*4。また、片頭痛についての研究では、温暖な季節には湿度が高い日に、寒い季節では自動車の排ガスなどが原因の微粒子状汚染物質が多い日に発作が起こるとされています*5。高齢の心血管疾患患者さんは、猛暑の日に救急搬送されるリスクが高まることが報告されています*6。 気管支喘息については大気汚染との関係が常識化していますが、韓国の2つの大学病院でその他の気象因子に関する研究が行われました。その研究では、風の強い日や湿度が低い日に救急外来を受診する気管支喘息患者さんが増え、霧が出た日には少ないと報告されています*7。 天候の影響は体だけにとどまらないようです。ポーランドで行われた研究では、精神科病院に入院中の患者さんは、低気圧やフェーン現象の日に身体拘束が必要な攻撃的行動を起こすこと、気温が高い日、湿度が低い日には攻撃性が増すことが報告されています*8。 ヒトは生命活動を維持するために、体内で熱を発生させ体温を一定に保とうとしています。環境温が上がると熱の溜まらないように調整し、環境温が下がると熱の産生を増やさなければなりません。恒に外界の変動を感知し、体内の調整を行っています。 体内に炎症が発生すると、それを治すために発熱します。疼痛、腫脹も起こります。外界の変動は炎症による症状に影響することが考えられます。 ヒトは体内の水分量も一定に保とうとして常に働いています。外界の湿度と温度の変化に応じて、意識して体内の調節機構を補助してあげるとストレスは軽減されるでしょう。 * *1:Lee M, et al. Int J Environ Res Public Health 2018; 15(8): 1670 *2:Azzouzi H, et al. Pain Res Manag 2020. 2020:5763080 *3:Jena AB, et al. BMJ 2017; 359: j5326 *4:Saho H, et al. Int J Environ Res Public Health 2019; 16(17): 3070 *5:Li W, et al. Environ Int 2019; 132: 105100 *6:Li M, et al. Int J Environ Res Public Health 2019; 16(12): 2119 *7:Lickiewicz J, et al. Int J Environ Res Public Health 2020; 17: 9121 *8:Lickiewicz J, et al. Int J Environ Res Public Health 2020; 17: 9121 公開日:2021/02/26 監修:芝浦スリーワンクリニック名誉院長 板倉弘重先生
オンラインの患者さんサポートは、新型コロナの影響により不安と孤独に陥った患者さんを勇気づける機会として、交流を深める機会として役立ちます。潰瘍性大腸炎・クローン病、線維筋痛症、リウマチの患者さんへの支援活動について紹介します。 目次 潰瘍性大腸炎・クローン病の患者さんは就労と通院診療が課題 きんつう相談室:癒しのLINEスタンプ「猫妖精ぴあにゃん」を発表 関節リウマチの痛みと天候・運動との関連からサポート 潰瘍性大腸炎・クローン病の患者さんは就労と通院診療が課題 潰瘍性大腸炎やクローン病(炎症性腸疾患:IBD)は、20~30歳代の働き盛りで発症しやすく就労が課題です。そこで、オンラインの「Gコミュニティ」は、5月11~20日に新型コロナウイルス感染症の影響についてアンケートを実施しました。 ユーザー149人(患者さん、家族など)の回答を見ると、9割近くがコロナウイルス感染症に対して不安を抱えており、不安の要因は外出や公共の交通機関の利用(それぞれ3割)、薬の服用が7割近く(多くの患者さんは免疫を抑制する薬を服用しています)などでした。 また、いままでの通院スタイルではなく、オンライン診療(遠隔診療)を希望する人の割合が7割近いことがわかりました。通院へのサポート、就労へのサポートが必要です。 調査結果の詳細(Gコミュニティ) きんつう相談室:癒しのLINEスタンプ「猫妖精ぴあにゃん」を発表 線維筋痛症や痛み・疲労のカウンセリングルーム「きんつう相談室」に生活に役立つ読者投稿が寄せられています。 熊本県で患者団体スマイルハートを運営する加藤マサヨさんからは、手で握る力が弱いので生活の工夫として、キャップオープナーやお風呂で体や紙を洗うときに使うブラシなどを紹介してくれました(詳細はブログ)。 また、患者さんたちがみなさんに言い表したいこと、コミュニケーションを「ゆるり」と取り持つことをイメージした癒しのLINEスタンプ「猫妖精ぴあにゃん(ぴあにゃんはピアカウンセリングのピアが由来)を有償で提供しています。 LINEスタンプは、イラストレータの山岸史さんが制作したもので8個あります。スタンプ8個ワンセットが120円で、ポイントでも購入できます。プレゼントもできます。 LINEスタンプ「猫妖精ぴあにゃん」 猫妖精ぴあにゃんLINE STORE 関節リウマチの痛みと天候・運動との関連からサポート 関節リウマチは、痛みやこわばりなどの症状は天候に影響されやすいと言われています。そこで、順天堂大学膠原病内科学講座の研究グループは、日常生活の中で自分の症状把握をサポートするアプリ「リウマジョイ」を開発しました。 アプリを用いて、利用者の日々の体調、痛み、こわばり、その日の天候や、前日の歩行数などをタッチ画面で簡単に記録すると、関節痛とその日の気圧、前日の歩行数の変化がグラフ表示され、日々の症状の変化を把握できるようにしています。治療薬の内服や注射を忘れないよう、カレンダーやお知らせ機能も備えています。 また、手のひらを撮影すると、人差し指と薬指の長さが測定され(2D/4D比といいます)、その結果から胎生期の性ホルモン量が推定されて、予測される優れた資質や身体的特徴をお知らせする機能もあります(順天堂大学プレスリリース)。 新型コロナの影響により2020年春以降、コロナ感染への不安を持ちながら通院するケースや、患者さんには者さんは少なくないのが現状です。 そこで、不安を和らげて、同じ境遇にあるかた同士でつながりを深めてもらうために、オンラインでサポートする取り組みが活発になっています。ぜひとも活用しましょう。 ■関連記事 潰瘍性大腸炎・クローン病の患者さんが就職後の活躍を見据えた働き方のヒントとは?Gコミュニティ 痛みと疲労に悩む人に役立つ医師&患者会セミナー 全身の激しい痛みで寝たきり状態を経験、患者さんに伝えたいこと 医療者が線維筋痛症患者になって思うこと(3) 公開日:2020/10/07
関節リウマチ患者さんの治療効果が不十分で手足の動きが困難になると、ふだんの生活で歩くことや、家事、仕事、歩くことなど日常生活に支障が起こりやすくなります。そこで、世田谷リウマチ膠原病クリニック/東信よしだ内科・リウマチ科は、医師、看護師などからなる「チーム・リウマチ」のスタッフは、患者さんが生活上で困難に感じていることを理解するために擬似体験をしています。 目次 患者さんの体のツラさや大変さを疑似体験で実感 患者さんの体のツラさや大変さを疑似体験で実感 世田谷リウマチ膠原病クリニック/東信よしだ内科・リウマチ科のチーム・リウマチは患者さんの気持ちがわかるように、看護師や事務職などの女性スタッフが患者さんとコミュニケーションを深めていますし、問診表を工夫しています(関連記事:患者が主役のリウマチ治療最前線、リウマチ治療のキーは「情報」)。 治療に関しては、患者さんがリウマチの治療薬を服用するときや、サプリを摂るときなどに副作用などの注意点をチェックシートで理解できるようにしています。 妊娠を控えた患者さんには風疹や麻疹のワクチン接種の有無を聞きとりして、安全かつ安心な医療を提供するようにしています(関連記事:リウマチ治療で注意すべき薬剤の飲み合わせ)。 また、クリニックでは患者さんに親身に対応できるよう、スタッフが関節リウマチ患者さんの身体状況を体験できるグローブ、肘、膝などの装具を実際に着用して患者さんの体の様子を実感する体験をしてから患者さんに対応するようにしています。 提供:世田谷リウマチ膠原病クリニック/東信よしだ内科・リウマチ科 疑似体験をした医師、看護師、理学療法士、医療事務スタッフ、臨床検査技師、放射線技師、栄養士などは、関節リウマチ患者さんの体のツラさ、大変さを知ることができます。 椅子からのしゃがみ立ち、お会計のときのお財布の開け閉め、衣服の脱ぎ着やトイレの動作、クリニック内の歩行など、患者さんの生活上の困難さをスタッフ全員がわかることができれば、「患者さんに寄り添う治療」を提供できるようになるのです。 「チーム・リウマチ」は、クリニックのすべてのスタッフが患者さんに最も有益な医療を提供するための情報を共有し、他職種の役割を理解したうえで、患者さん一人ひとりに合ったベストの医療を提供するために日々奮闘しています。 監修:吉田智彦先生 所属学会 日本内科学会、日本リウマチ学会、日本臨床リウマチ学会、日本リウマチ学会 リウマチ指導医、日本アレルギー学会、日本糖尿病学会 など 略歴 芝学園(東京都港区)卒業 聖マリアンナ医科大学大学院卒 聖マリアンナ医科大学病院リウマチ膠原病アレルギー内科に入局し同大学病院でリウマチ膠原病の診療にあたりながら、難病治療研究センターに所属して研究に従事しました。 平成10年12月から長野県埴科郡坂城町の父のクリニックで診療をはじめ、 平成12年4月~平成14年3月:日産厚生会玉川病院で診療。 平成17年4月~平成18年5月:児玉経堂病院リウマチ内科で診療。 平成18年6月に世田谷区に日本で初めてのリウマチ膠原病の専門クリニックとして世田谷リウマチ膠原病クリニックを開業いたしました。 現在は、世田谷リウマチ膠原病クリニックと長野県埴科郡坂城町の東信よしだ内科の2施設でリウマチ膠原病診療にあたりながら、全国で講演、学会発表、論文発表、市民公開講座などを行っています。 世田谷リウマチ膠原病クリニック URL:http://www.setagayariumachi.com/ 東信よしだ内科・リウマチ科 URL:http://nagano-riumachi.com/ ■関連記事 患者が主役のリウマチ治療最前線 チーム・リウマチの診療現場(1) リウマチ治療のキーは「情報」 チーム・リウマチの診療現場(2) リウマチ治療で注意すべき薬剤の飲み合わせ チーム・リウマチの診療現場(3) リウマチのツラさを擬似体験 チーム・リウマチの診療現場(4)最終回 関節リウマチ闘病記 出産後に発症~痛みと闘いながらの家事・育児~(30代・女性) 関節リウマチ闘病記 病気と仲良く、うまく付き合う(50代・女性) もしかして、私も関節リウマチ?受診のタイミングはいつ? 公開日:2018/12/26
関節リウマチ患者さんが治療を受けるときは、服用、併用する薬剤には十分な注意が必要です。薬剤の効果を弱めるサプリメントや、妊娠を希望する場合に服用できない薬剤があります。世田谷リウマチ膠原病クリニック/東信よしだ内科・リウマチ科の医師、看護師など多職種のスタッフからなる「チーム・リウマチ」の取り組みから、治療内容や注意点を患者さんと共有する方法について紹介します。 目次 抗リウマチ薬開始チェックシートを通じて患者さん、医療スタッフともに理解を深める 青汁やセサミンはリウマチ治療薬の効果を弱めることがあります 患者さんは「妊活」は注意、風疹・麻疹のワクチンを接種できない薬剤あり 理学療法士が加わるリウマチパス 生物学的製剤の治療開始時にもチェックシートで注意点を確認 抗リウマチ薬開始チェックシートを通じて患者さん、医療スタッフともに理解を深める 患者さんが診断された後、抗リウマチ薬*1の飲み薬(経口剤ともいいます)のメトトレキサート(製品名はリウマトレックス、メトレートなど)を中心に治療が開始されます。 その際に、抗リウマチ薬チェックシートを用います(表1)。これは、患者さんと医療スタッフともに治療内容を理解するためのものです。 表1:抗リウマチ薬(メトトレキサート)内服前チェックシート 用法・用量・内服方法について 寛解が導入されるまで増量していくことについて 効果を実感する期間について 口内炎、消化器症状、空咳、脱毛、リンパの腫脹などの副作用について 血球減少、肝障害、腎障害、間質性肺炎、悪性リンパ腫などの副作用について 副作用予防の葉酸内服の必要性について 青汁やセサミン、マルチビタミンなどサプリの摂取がMTXの効果を減弱させること 感冒、インフルエンザなど感染症、手術などのトラブル時に休薬すること 歯科、他院を受診するときは必ずお薬手帳持参、情報提供書を持参すること 休薬したからと効果がすぐに減弱はしないこと 服薬可否の判断がつかないときは電話あるいは受診すること 生ワクチン(風疹・麻疹など)の接種は禁忌であること 患者本人、配偶者の妊娠希望のついての聞き取りと計画的に妊娠する必要があること HAQ(身体機能障害の評価)、身体計測、リハビリテーションの必要の有無について 年 月 日 説明者 : 患者氏名 : 提供:世田谷リウマチ膠原病クリニック/東信よしだ内科・リウマチ科 青汁やセサミンはリウマチ治療薬の効果を弱めることがあります 写真はイメージです治療開始に向けて、まず担当医からメトトレキサート服薬の説明を行われます。その後、医師の説明と重なりますが、看護師から患者さんへ内服する必要性をしっかりお話します。 患者さんに合った内服方法を確認しながら、寛解が導入するまで状態を見ながら増量すること、効果が出るまで4~6週間かかることを説明します。また、患者さんが自覚し得る症状として出現する口内炎、むかむか感・空咳、脱毛などの副作用について、しっかりお話しします。 そして、ほかの血球減少・肝機能障害・腎機能障害のリスクは担当医が定期的に採血検査で確認していくことを説明します。 葉酸などのサプリメントや栄養補助食品では、青汁・セサミンなど摂っているかたも多くいますが、これはメトトレキサートの効果が減弱させてしまいます。このため、葉酸を含むサプリメントの摂取は中止するようにお話ししています。 もし、患者さんがサプリメントの内服を希望する場合は「容器の後ろの成分を読んでから飲んでください」「成分などが判らない時はサプリメントをお持ちください」と説明しています。 患者さんは「妊活」は注意、風疹・麻疹のワクチンを接種できない薬剤あり そして、同クリニックでは妊娠計画や妊娠希望の有無なども丁寧に聞き取りをしています。 あまり周知されていませんが、メトトレキサートなどで治療中のかたには生ワクチンの接種は禁忌であることもお伝えします。つまり、風疹、麻疹ワクチンの接種はできません。 治療開始時に妊娠計画、妊娠希望を聞き取ることによって、のちのち患者さんからもパートナーができたとき、結婚したときの報告など、相談しやすい環境を提供できるようになりました。 妊娠適齢期で、特にメトトレキサート内服開始となる患者さんには、妊娠希望時から1ヵ月間休薬し、生理が来て2度目の生理がきたら妊娠可能とお話ししています。 理学療法士が加わるリウマチパス 抗リウマチ薬開始チェックシートの最後にある日常生活上の身体機能評価(HAQ*1)をチェックして、理学療法士による身体測定をします。 身体測定で問題がなければ、患者さんは生活指導を受けるのみですが、もしも、身体測定で問題あればリハビリを導入して患者さんの生活動作改善、筋力UP、関節保護と可動域の改善などを目的としてリハビリテーション実施します(表:リウマチ診療の分業化とその役割分担)。 表:リウマチ診療の分業化とその役割分担 最後に心配ごと・不安なことがある場合は、同クリニックにいつでも電話連絡するようにお話して、安心感を持ってもらいます。 生物学的製剤の治療開始時にもチェックシートで注意点を確認 治療の第一段階となるメトトレキサートを服用しても効果が不十分だった場合には、関節リウマチの発症や悪化の原因となる体内の物質(腫瘍壊死因子(TNF)-α、インターロイキン(IL)-6やT細胞などのサイトカインといいます)をターゲットにした生物学的製剤*2あるいは分子標的薬の適応となります。 このときも同様にチェックシート(表2)を使用して、治療を受ける時の注意点を、患者さんも医療スタッフも確認します。 表2:生物学的製剤導入チェックリスト 生物学的製剤の必要性、製剤名、治療費用について 皮下・点滴など投与方法・投与間隔・通院間隔について 生物的製剤の増量、減量、変更の可能性について 効果を実感するまで期間について 感冒、インフルエンザ、帯状疱疹、結核、間質性肺炎、血液障害、悪性腫瘍、肝炎など副作用について 感冒、インフルエンザ、帯状疱疹など感染症、手術などのトラブル時には休薬すること 歯科、他院を受診するときは必ずお薬手帳持参、情報提供書を持参すること 休薬したからと効果がすぐに減弱はしないこと 投与可否の判断がつかないときは電話あるいは受診すること 生ワクチン(風疹・麻疹など)の接種は禁忌であること 患者本人、配偶者の妊娠希望のついての聞き取りと計画的に妊娠する必要があること HAQ(身体機能障害の評価)、身体計測、リハビリテーションの必要の有無について 年 月 日 説明者 : 患者氏名 : 提供:世田谷リウマチ膠原病クリニック/東信よしだ内科・リウマチ科 治療においては、患者さんが体を動かせるようになるためのリハビリテーションなどがあります。クリニックのスタッフは、ある方法を使って患者さんの気持ちがわかるようにしています。次回は、患者さんになり切る工夫について紹介します。 *1:抗リウマチ薬は病態にかかわる免疫の異常を改善させて病気の進行を止める薬です。疾患修飾性抗リウマチ薬とも言われます。 *2:生物学的製剤は病気にかかわる腫瘍壊死因子(TNF)やインターロイキン(IL)-6などが体内で活性することを抑制する薬です。点滴注射や皮下注射、自己注射があります。 監修:吉田智彦先生 所属学会 日本内科学会、日本リウマチ学会、日本臨床リウマチ学会、日本リウマチ学会 リウマチ指導医、日本アレルギー学会、日本糖尿病学会 など 略歴 芝学園(東京都港区)卒業 聖マリアンナ医科大学大学院卒 聖マリアンナ医科大学病院リウマチ膠原病アレルギー内科に入局し同大学病院でリウマチ膠原病の診療にあたりながら、難病治療研究センターに所属して研究に従事しました。 平成10年12月から長野県埴科郡坂城町の父のクリニックで診療をはじめ、 平成12年4月~平成14年3月:日産厚生会玉川病院で診療。 平成17年4月~平成18年5月:児玉経堂病院リウマチ内科で診療。 平成18年6月に世田谷区に日本で初めてのリウマチ膠原病の専門クリニックとして世田谷リウマチ膠原病クリニックを開業いたしました。 現在は、世田谷リウマチ膠原病クリニックと長野県埴科郡坂城町の東信よしだ内科の2施設でリウマチ膠原病診療にあたりながら、全国で講演、学会発表、論文発表、市民公開講座などを行っています。 世田谷リウマチ膠原病クリニック URL:http://www.setagayariumachi.com/ 東信よしだ内科・リウマチ科 URL:http://nagano-riumachi.com/ ■関連記事 関節リウマチ闘病記 出産後に発症~痛みと闘いながらの家事・育児~(30代・女性) 関節リウマチ闘病記 病気と仲良く、うまく付き合う(50代・女性) リウマチのツラさを擬似体験 チーム・リウマチの診療現場(4)最終回 もしかして、私も関節リウマチ?受診のタイミングはいつ? 公開日:2018/12/21
関節リウマチや膠原病(こうげんびょう)の診療において、世田谷リウマチ膠原病クリニック/東信よしだ内科・リウマチ科は、テレビや小説の「チーム・バチスタ」のように多職種のスタッフが「チーム・リウマチ」を組んで、患者さん主体の医療を提供しています。治療の重要な鍵として患者さんの背景に踏みこんで気持ちをくみとることを大事にしているため、情報収集に工夫を凝らしています。 目次 看護師や事務などすべてのスタッフが患者と積極的にコミュニケーションを図る 正確に経過と不安を聞き取きとってコンプライアンスを確認する問診票 「先生に伝えたいことはありますか?」 大切なのは服薬への抵抗感を聞き取ること 看護師や事務などすべてのスタッフが患者と積極的にコミュニケーションを図る 世田谷リウマチ膠原病クリニック/東信よしだ内科・リウマチ科では、医師、看護師、事務スタッフ、理学療法士、臨床検査技師、栄養士など多職種のスタッフが診療に関わっています。 たとえば、患者さん一人ひとりに対して看護師や事務スタッフなどが積極的にコミュニケーションを図り、病気のこと、ふだんの生活などについて親身になって伺い、患者さんに応じた治療内容について理解してもらえるよう、さまざまな取り組みをしています。 学校や仕事、休日の過ごし方、ほかの病気があるかどうか、治療費などの負担などについても伺うようにしています。 正確に経過と不安を聞き取きとってコンプライアンスを確認する問診票 表:問診票 提供:世田谷リウマチ膠原病クリニック/東信よしだ内科・リウマチ科 クリニックでは、関節リウマチ患者さんがクリニックを受診した際、診察室に入る前に待合室で問診票(表)に書いてもらうことにしています。そこで、問診の精度を高めるために工夫しています。 問診票は、前回受診時からこれまでのお身体の具体や変化を伺うことはもちろんですが、下記についても伺います。 「特に先生に伝えたいことをご記入ください」 「余っている薬がありますか?」 「必要な薬がありますか?」 最近では、少し面白い試みとして、下記についても聞いています。 「最近楽しかったことを教えてください」 「最近自分のために購入した一番高いものはなんですか?」 「最近大笑いしたことはなんですか?」 「先生に伝えたいことはありますか?」 患者さんが問診票に記載して、看護師がその内容が電子カルテに入力した後に、患者さんは診察室へ入ります。 「特に先生に伝えたいことをご記入ください」に記載された内容を医師が問いかけることにより、これまで患者さんが緊張して診察室で先生へ伝えられなかったこと、言えなかったことを伝えられることに役立っています。 また、「余っている薬がありますか?」との項目があることにより、もし処方された薬剤が余っている場合には、患者さんのコンプライアンス、認知症状の有無などはもちろん、服薬への抵抗感の聴き取り、副作用の早期発現にも役立っています。 大切なのは服薬への抵抗感を聞き取ること もし、診察で患者さんに服薬コンプライアンスが低いと感じれば、診察後にスタッフが患者さんに対して服薬することの必要性などを丁寧に説明します。 認知症が疑われる場合には認知機能の精密検査を行い、患者さんに応じた治療に変更することもあります。 大切なのは服薬への抵抗感を聞き取ることです。これにより、患者さんの服薬への恐怖、不安や患者さんが微妙に感じている副作用を察知することがあります。 聞き取りの際に服薬に恐怖や不安を感じている場合には、スタッフはそれを取り去るために面談をします。 また、早期の副作用の出現が心配される場合には医師へそのむねを伝え、重篤化することを防ぎます。 チーム・リウマチは、患者さんと一体となって治療ゴールを目指しています。そこで、次回は治療を受ける際に飲み合わせなどにおける注意点について紹介します。 監修:吉田智彦先生 所属学会 日本内科学会、日本リウマチ学会、日本臨床リウマチ学会、日本リウマチ学会 リウマチ指導医、日本アレルギー学会、日本糖尿病学会 など 略歴 芝学園(東京都港区)卒業 聖マリアンナ医科大学大学院卒 聖マリアンナ医科大学病院リウマチ膠原病アレルギー内科に入局し同大学病院でリウマチ膠原病の診療にあたりながら、難病治療研究センターに所属して研究に従事しました。 平成10年12月から長野県埴科郡坂城町の父のクリニックで診療をはじめ、 平成12年4月~平成14年3月:日産厚生会玉川病院で診療。 平成17年4月~平成18年5月:児玉経堂病院リウマチ内科で診療。 平成18年6月に世田谷区に日本で初めてのリウマチ膠原病の専門クリニックとして世田谷リウマチ膠原病クリニックを開業いたしました。 現在は、世田谷リウマチ膠原病クリニックと長野県埴科郡坂城町の東信よしだ内科の2施設でリウマチ膠原病診療にあたりながら、全国で講演、学会発表、論文発表、市民公開講座などを行っています。 世田谷リウマチ膠原病クリニック URL:http://www.setagayariumachi.com/ 東信よしだ内科・リウマチ科 URL:http://nagano-riumachi.com/ ■関連記事 関節リウマチ闘病記 出産後に発症~痛みと闘いながらの家事・育児~(30代・女性) 関節リウマチ闘病記 病気と仲良く、うまく付き合う(50代・女性) リウマチのツラさを擬似体験 チーム・リウマチの診療現場(4)最終回 もしかして、私も関節リウマチ?受診のタイミングはいつ? 公開日:2018/12/07
小説・テレビ・映画でおなじみの「チーム・バチスタ」は、医師や看護師など多くのスタッフがチームワークを組んで困難な循環器疾患に立ち向かっています。これをチーム医療といいますが、リウマチ・膠原病診療でのチーム医療の実際はどうなのでしょうか。世田谷リウマチ膠原病クリニック/東信よしだ内科・リウマチ科で、患者さんに寄り添う「チーム・リウマチ」の診療の現場をレポートします。 目次 「チーム・リウマチ」とは 医師だけでなく看護師、事務、理学療法士などと連携・役割分担がチーム医療に重要 患者さんと深いコミュニケーションを図る 結婚の予定や妊娠の希望を聞く理由 「チーム・リウマチ」とは 世田谷リウマチ膠原病クリニックは、個々の患者さんに最適な寛解(症状がおさまっている状態をいいます)、さらにその先を見据えた治療をモットーにしています。患者さん一人ひとりに合ったオーダーメイドの医療を提供することを目標に、日本で初めてのリウマチ・膠原病のクリニックとして2006年に開業しました。 世田谷リウマチ膠原病クリニック/東信よしだ内科・リウマチ科統括院長の吉田智彦先生は高度に進歩したリウマチ・膠原病診療に大切なものとして、有効性(efficacy)と安全性(safety)と安心感(confidence)の3つをあげています。そして、この3つを実現するためにはチーム医療が必要なのです。 「チーム・リウマチ」を成功させる秘訣があります。それは、医師以外に看護師や医療事務職、理学療法士、薬剤師、放射線技師、栄養士などクリニックのすべてのスタッフがチームワークを組んで、患者さんに最も有益な医療を提供するための情報を共有し、他職種の役割を理解したうえで患者さん主体の「チーム・リウマチ」を実践することを挙げています(表)。 表:リウマチ診療の分業化とその役割分担 提供:世田谷リウマチ膠原病クリニック/東信よしだ内科・リウマチ科 医師だけでなく看護師、事務、理学療法士などと連携・役割分担がチーム医療に重要 1920年代のアメリカの経営学者のチェスター・バーナードは、組織を「意識的に調整された2人またはそれ以上の人々の活動や諸力のシステム」と定義して、その成功のための条件として「共通目的(組織目的)」「協働意思(貢献意欲)」「コミュニケーション」を示しています*1。 これを、チーム・リウマチでは「患者さんに最適、最高の医療を提供することを目的に」、お互いを尊重しチームリウマチのために仕事をして、「最新治療・専門スタッフ・診療連携」を結合し、リーダーシップとスタッフ間、スタッフと患者さんとの間の意思疎通に置き換えています。 チーム・リウマチとは文字どおり、医師・看護師・医療事務にとどまらず、理学療法士・放射線技師・栄養士・臨床検査技師など、さまざまな職種の医療スタッフがチームワークを組んで、適切な診療連携をして「目標達成に向けた治療:Treat to Target*2」を患者さんに提供することです*3。 そのためには、各役割を担当するスタッフが強い責任感と高いスキルを持って患者さんに対応することが必須ですが、それぞれのスタッフが他のスタッフの役割を理解しておかなければなりません。 患者さんと深いコミュニケーションを図る 同クリニックでは、患者さん一人ひとりに対する診察時間を十分に確保しています。初診、再診の待ち時間に看護師が丁寧に病歴を伺うことはもちろん、受付の事務スタッフも積極的にコミュニケーションを図っています。 患者さんの多くは女性なので、クリニックの女性スタッフがリウマチ膠原病について問診をすることはもちろんですが、学校生活、仕事の詳細や休日、ほかの病気や治療費などに負担などについて親身になって伺うようにしています。 治療費に関しては、高額な治療薬(生物学的製剤など)に踏み込めるのか、それとも薬剤費を抑えた治療がよいのかどうかについて、患者さんの希望を探るためです。 結婚の予定や妊娠の希望を聞く理由 ときには、彼氏、彼女などパートナーの有無や結婚の予定、妊娠に関する希望も聞きます。 というのは、妊娠を希望しているときは、薬剤によって服用することが胎児奇形、流産のリスクになるものがあるからです。 チーム・リウマチがうまく機能する鍵は、医療スタッフ全員が患者さんの背景、治療内容、思いについて詳しい情報を共有すること、患者さんもスタッフも共通の治療ゴールを目指していくことが重要です。 次回は、ベストの治療を提供できるための鍵となる「情報」として、患者さんの気持ちや生活状況などを聞き取るための工夫について紹介します。 *1:組織と管理 飯野春樹監訳・日本バーナード協会訳 *2:RA治療では3ヵ月ごとに医師と患者さんが治療目標を決めて、治療効果の達成度を照らし合わせながらゴールを目指していくTreat to targetという治療方針があります。 *3:Smolen JS, et al. Ann Rheum Dis. 2010; 69:631-637 監修:吉田智彦先生 所属学会 日本内科学会、日本リウマチ学会、日本臨床リウマチ学会、日本リウマチ学会 リウマチ指導医、日本アレルギー学会、日本糖尿病学会 など 略歴 芝学園(東京都港区)卒業 聖マリアンナ医科大学大学院卒 聖マリアンナ医科大学病院リウマチ膠原病アレルギー内科に入局し同大学病院でリウマチ膠原病の診療にあたりながら、難病治療研究センターに所属して研究に従事しました。 平成10年12月から長野県埴科郡坂城町の父のクリニックで診療をはじめ、 平成12年4月~平成14年3月:日産厚生会玉川病院で診療。 平成17年4月~平成18年5月:児玉経堂病院リウマチ内科で診療。 平成18年6月に世田谷区に日本で初めてのリウマチ膠原病の専門クリニックとして世田谷リウマチ膠原病クリニックを開業いたしました。 現在は、世田谷リウマチ膠原病クリニックと長野県埴科郡坂城町の東信よしだ内科の2施設でリウマチ膠原病診療にあたりながら、全国で講演、学会発表、論文発表、市民公開講座などを行っています。 世田谷リウマチ膠原病クリニック URL:http://www.setagayariumachi.com/ 東信よしだ内科・リウマチ科 URL:http://nagano-riumachi.com/ ■関連記事 関節リウマチ闘病記 出産後に発症~痛みと闘いながらの家事・育児~(30代・女性) 関節リウマチ闘病記 病気と仲良く、うまく付き合う(50代・女性) リウマチのツラさを擬似体験 チーム・リウマチの診療現場(4)最終回 もしかして、私も関節リウマチ?受診のタイミングはいつ? 公開日:2018/12/05
乾癬(かんせん)は皮膚の病気を発症した後に関節の病気(乾癬性関節炎といわれます)を発症するケースが多いといわれています。アトピー性皮膚炎や関節リウマチと思って受診したら、実は乾癬であったとの話もあります。 目次 鑑別と見極めのコツとは 関節リウマチと思って受診したら乾癬性関節炎だった 検査のリウマトイド因子陰性、アキレス腱の炎症や胸肋鎖関節の痛みなどから鑑別 医師に乾癬の可能性を相談することも手 鑑別と見極めのコツとは 乾癬性関節炎は皮膚と関節に自己免疫の異常による炎症が起こります。皮膚症状が先行して発症し、その後に関節炎を発症するケースを多く認めます。 子どものころや過去に皮膚科でなにかしらの皮膚炎と診断されていた患者が、成人になって関節炎を発症して、関節リウマチや膠原病を疑ってリウマチ科を受診したときに、はじめて乾癬性関節炎と診断されたケースもあるようです。 日本リウマチ学会専門医の世田谷リウマチ膠原病クリニック/東信よしだ内科・リウマチ科の吉田智彦先生によると、アトピー性皮膚炎の既往歴がある患者が関節リウマチを疑われて受診したけど、実は乾癬による皮膚疾患に関節症状を合併する乾癬性関節炎だったというケースや関節リウマチとして診断、治療されている症例が、実は足や臀部に乾癬を合併していて乾癬性関節炎だったというケースを経験しています。 吉田先生に乾癬性関節炎を見極めるポイントについて聞きました。 関節リウマチと思って受診したら乾癬性関節炎だった 世田谷リウマチ膠原病クリニックと東信よしだ内科・リウマチ科は、関節リウマチや膠原病などリウマチ性疾患に特化したクリニックです。関節炎ということで乾癬性関節炎患者も診療しています。 吉田先生によると、若いころに乾癬の既往がある患者が、40~50歳代で関節炎を発症したので関節リウマチと思ってクリニックを受診したケースを、最近でも数例を経験しているとのことです。 ただし、これら数例に聞いたところ、以前に受診した皮膚科ではアトピー性皮膚炎や脂漏性湿疹と診断されており、乾癬の診断がついていなかったのです。 検査のリウマトイド因子陰性、アキレス腱の炎症や胸肋鎖関節の痛みなどから鑑別 吉田先生が関節症状を訴える患者を関節リウマチと乾癬性関節炎を見極めるポイントとして皮膚所見の有無と、関節リウマチに特異的な検査のリウマトイド因子や抗CCP抗体が陰性なことと、付着部炎の診断を挙げています。 リウマトイド因子は医療機関に依頼すれば血液検査で調べることができます。健康診断や人間ドックでもオプションで受けることができます。 付着部炎というのは、腱や靭帯が骨に付着する部分の炎症です。関節リウマチは滑膜炎という関節自体の炎症に対して、乾癬性関節炎は付着部に炎症が起きるので鑑別することは可能です。 吉田先生は、関節リウマチと乾癬性関節炎を鑑別する際にアキレス腱(付着部)の炎症があることや、前胸部にある胸肋鎖関節を押すと痛みがあること、特有の爪の異常などを鑑別(見極め)のポイントとして挙げています。 医師に乾癬の可能性を相談することも手 皮膚疾患の診断においては乾癬と他の皮膚疾患との鑑別が難しいことが挙げられます。乾癬なのに、アトピー性皮膚炎や湿疹、脂漏性皮膚炎や白癬と間違ってしまうケースがあります。 乾癬は皮疹が好発するのは耳、髪の生え際、後頭部、手の爪、ひじ、膝、下腿、臀部であること、関節炎というのは実は腱や靭帯が骨に付着する部分の炎症としての付着部炎ということを患者も知っておくべきでしょう。 もっと早期に乾癬を発見して治療を受けることが重要です。そして、関節痛があるときは乾癬性関節炎かもしれないのでリウマチ膠原病の専門医に相談することも必要ではないでしょうか。 監修:吉田智彦先生 所属学会 日本内科学会、日本リウマチ学会、日本臨床リウマチ学会、日本リウマチ学会 リウマチ指導医、日本アレルギー学会、日本糖尿病学会 など 略歴 芝学園(東京都港区)卒業 聖マリアンナ医科大学大学院卒 聖マリアンナ医科大学病院リウマチ膠原病アレルギー内科に入局し同大学病院でリウマチ膠原病の診療にあたりながら、難病治療研究センターに所属して研究に従事しました。 平成10年12月から長野県埴科郡坂城町の父のクリニックで診療をはじめ、 平成12年4月~平成14年3月:日産厚生会玉川病院で診療。 平成17年4月~平成18年5月:児玉経堂病院リウマチ内科で診療。 平成18年6月に世田谷区に日本で初めてのリウマチ膠原病の専門クリニックとして世田谷リウマチ膠原病クリニックを開業いたしました。 現在は、世田谷リウマチ膠原病クリニックと長野県埴科郡坂城町の東信よしだ内科の2施設でリウマチ膠原病診療にあたりながら、全国で講演、学会発表、論文発表、市民公開講座などを行っています。 世田谷リウマチ膠原病クリニック URL:http://www.setagayariumachi.com/ 東信よしだ内科・リウマチ科 URL:http://nagano-riumachi.com/ ■関連記事 関節リウマチ闘病記 出産後に発症~痛みと闘いながらの家事・育児~(30代・女性) 関節リウマチ闘病記 病気と仲良く、うまく付き合う(50代・女性) リウマチのツラさを擬似体験 チーム・リウマチの診療現場(4)最終回 もしかして、私も関節リウマチ?受診のタイミングはいつ? 公開日:2018/09/20
古野さん(仮名) 55歳女性・薬剤師、名古屋在住(発症年齢30歳) 取材場所までオートマ車を運転してきたという古野さんだが、調子が悪い日はハンドルを切る動作がツラいときもあるという。しかし、 「家にこもっているだけだと気が滅入るでしょ。病気を発症してから長く経つので、自分の体調と相談しながら、仕事をしたり趣味を楽しんだりして、夫と二人で暮らしてますよ。」 と、関節リウマチが発症してから25年経った現在の生活について話してくれた。 ※症状・治療・経過などには個人差があります。 インタビュアー:healthクリック編集部(取材日:2009年10月初旬) 働くときは「病気と仲良く」という気持ちで ―― 仕事をされているそうですが、ご職業は何ですか? 古野さん: ドラッグストアの薬剤師で、接客業をしています。朝のこわばりがあって朝はスムーズに動けないんですが、夕方には調子が良くなってくるので、普段は16時から21時まで働き、土日だけ朝から働くようにしています。 ―― 立ち仕事だと、からだがツラくないですか? 古野さん: 私は、右膝に一番ひどい症状を抱えているので、立っていると、きつく感じるときもありますよ。だけど、あまり重い荷物を持つような作業がないので、合間をみて座ったりしながら、日々「病気と仲良く」という気持ちで働いています。 若いときは、この病気になってとても嫌で周囲には知らせていなかったけど、40代~50代になったら、病気のことを周囲の人にも話せるようになりました。 情報交換の場を大切に ―― 病気について、患者さん同士でも話し合う場をもっていますか? 古野さん: 昔は、通院している大学病院の待合室で情報交換していました。長い待ち時間の間に話をして友達になったり、体調について相談すると結構いいアドバイスがもらえることもあって、楽しかったですね。今は予約制になったので、同じ病気をもった患者さんにもなかなか会えなくなりました。 ―― 「日本リウマチ友の会」などの患者会に参加することはないのですか? 古野さん: 関節リウマチは膠原病のひとつなので、私は「膠原病友の会」に参加しています。そこで催される勉強会、食事会、運動を兼ねた日帰り温泉などに行ったことがありますが、そういう場所で情報交換するのもいいと思いますよ。患者さんの家族が同伴できる催しもあるので、一緒に参加すれば家族にとっても関節リウマチを理解する、いい機会になると思います。 病気になっても考え方しだいで生活は変わる ―― 趣味を楽しんでいると伺いましたが、具体的にどのような趣味をおもちですか? 古野さん: 野菜作りに挑戦したり、同じ年代の人が集まって気軽に楽しみ、あまり動かなくてもプレイできる卓球をしています。昔、体調が良かったときは、毎日卓球の練習をして、試合に出たこともあるんですよ。今はさぼり気味で、週に1回通う程度ですが。 ―― からだは大丈夫なんですか!? 古野さん: 大丈夫です。「自分がどれくらい動くと、体調がどうなるか」ということが、だんだんと分かってきましたから。症状には個人差があると思いますが、同じ病気をもつ友達の話を聞いていても、「今日頑張ったら明日は休む」というようにコントロールしているようです。 ただ、「病は気から」と、体調が悪いのに無理することには反対です。「体調がいいからこそ、やる気が出てくる」のだと思います。 ―― 今回は取材にご協力いただき、本当にありがとうございました。最後に、ユーザーの方へのメッセージをお願いします 古野さん: 私は「病気になってマイナスなことしかない」と思うのは嫌だから、「この病気になったことによって友達が増えた」とか「同じ病気の方にアドバイスができる」などと考えるようにしています。 実際、ドラッグストアで働いていても、腰が痛いと言っているお客さんの気持ちが、病気になる前よりも理解できるようになりました。 以前、患者会の催しに参加したときに、昔よりも随分若い人が増えたなと感じたのですが、そういう若い人達にも、前向きな考えをもって関節リウマチと向き合ってほしいですね。 ■関連記事 関節リウマチ闘病記 出産後に発症~痛みと闘いながらの家事・育児~(30代・女性) リウマチのツラさを擬似体験 チーム・リウマチの診療現場(4)最終回 もしかして、私も関節リウマチ?受診のタイミングはいつ?
自助具は、関節の痛み・変形・破壊を予防したり、関節リウマチによって困難となった日常生活をサポートしてくれるが、間違った使い方をしては意味がないという。そこで、代表的な自助具とその使用方法を伺った。 また、見た目を気にする女性のために工夫している点、購入時のポイントなども紹介してもらった。 お話を伺った先生: 社団法人 日本作業療法士協会 作業療法士 鴻井 建三先生、古田 崇浩先生 (右側より)鴻井 建三先生、古田 崇浩先生 日常生活をサポートする、こんな自助具がありました。 靴下・ストッキングが履きやすくなる(ソックスエイド) 股関節が痛いとき、なるべく股関節に負担をかけずに靴下を履けるようにする自助具。素材が固いと靴下を装着しにくいため、シート部分がやわらかい素材を選ぼう。また、シートの足に接する面は滑りやすく、床に接する面は滑りにくい素材にすると履きやすい。ストッキングが履けるものも市販されている。 ソックスエイドの使い方 (1)ゴムが取り付けられた柔らかいシート状の素材 (2)シートに、靴下を装着する (3)装着された靴下に足を入れる (4)ゴムを引っぱると靴下が上がり、履くことができる 手をいたわりながら暮らす 「物」を握ると、小指側に大きな力(負担)がかかる。 関節リウマチの患者さんでこの状態が続くと指の関節が小指側に曲がってしまうこと(尺側偏位:しゃくそくへんい)があるため、手の指・手首への負担を減らし、変形を予防する自助具。 家事だけでなく、いつまでも趣味を楽しむためにも手をいたわろう。 <一例> 包丁 スコップ <直角包丁の使い方> グリップが直角になっているため、手首の力を使わず、肩と肘を前後に動かすことで、切れる。 手の指・手首への負担を減らすことができる。 毎日のヘアケア・ボディケアのために 持ち手が長いブラシ! 肩関節への負担を減らす自助具。肩が痛くてお風呂で背中が洗えない、櫛でブラッシングできないときなどに便利。このように持ち手が長く作られている自助具は、到達(リーチ)を補うという意味で、リーチ系の自助具と総称される。 オシャレ好きな女性のために スプリントを装着した様子 関節リウマチでは、指先が白鳥の首のような形状に変形すること(スワンネック変形)があるため、関節を固定して変形を予防したり矯正したりする。このような目的で使われる道具は装具(そうぐ)と呼ばれ、肘から手先の関節において使用する装具のことを、スプリントと総称する。 海外ではこのような形状の指輪を作っている。日本でも、女性の作業療法士が、白い部分にアクリル絵の具でネイルアートのようにデザインを施すなど、工夫している施設があるのだとか。 関節を少しでも休ませるために テーピングしている様子 仕事中や仕事後に腫れやすい関節に医療用のテープを巻き、できるだけ関節を安静に保って、痛みや腫れを軽減するテーピングも有効な手段のひとつ。 白色のテープが一般的だが、見た目が気になる女性のために肌色のテープもある。また、皮膚がかぶれる人には、アレルギーがでないテープを使うことも。 自助具の使用・購入のポイント こうして使おう できることやできないことには個人差があるので、自分に必要な自助具は何か、正しい自助具の使用方法、装具(スプリント)やテーピングを活用した関節の保護法などを身につけておこう。関節の症状が悪化する前に、自助具を楽しみながら使用しておくと、徐々に習慣化され、正しく使えるようになることもあるのだとか。 購入前に相談を 専門の介護グッズとして市販されている自助具もあるが、100円ショップの安くて軽い素材などを工夫して作業療法士が作ってくれることもある。また、装具(スプリント)やテーピングも、作業療法士が専門的な立場から相談にのってくれるので、作業療法士のいる病院を受診することも心に留めておこう。
公的制度の種類 公的制度の中には、医療保険制度や医療費控除のように関節リウマチの患者さんの生活や治療を支援してくれる制度がある。ここでは、利用できるおもな公的制度について紹介しよう。 ただし、支援を受けるためには、申請手続きを行い対象者であると認められることが必要だ。また、関節リウマチの患者さんであっても、病気の重症度や生活状況によって受けられない制度があったり、同じようなサービスを受ける際に優先される制度などがあるので、各窓口や治療している医療機関に確認してみよう。 利用できる公的制度 監修:社会福祉士 岡田尚子氏 高額療養費 同じ病院や診療所で支払った1ヵ月(月の1日から月末まで)の医療費の一部が自己負担限度額(住民税課税状況により限度額が3段階に分かれる)を超え高額になった場合、医療費の一部を後で払い戻し、経済的負担を軽減する。 対象者:健康保険に加入している70歳未満の被保険者および被扶養者 問合せ:各保険者(居住地の市区町村役場や共済組合、健康保険組合など) 限度額適用認定証 高額療養費を後から払い戻されるのではなく、「限度額適用認定証」の発行により、自己負担限度額のみを病院の窓口に支払う制度。これにより、高額療養費の立替払いが不要となる。 対象者:健康保険に加入している70歳未満の被保険者および被扶養者 問合せ:各保険者(居住地の市区町村役場や共済組合、健康保険組合など) 高額療養費貸付制度 高額療養費が支給されるまでに時間がかかるため、支給予定金額の8割ほどを無利子で貸付し、経済的負担を軽減する。 対象者:健康保険に加入している70歳未満の被保険者および被扶養者 問合せ:各保険者(居住地の市区町村役場や共済組合、健康保険組合など) 特定疾患治療研究事業 (難病患者の医療費の助成制度) 後遺症を残したり、原因の究明・治療などの調査研究が必要な特定の病気の場合、医療費の一部または全額を、国と都道府県が援助する事業。 対象者:特定疾患治療研究事業の対象となる病気(2009年8月現在、悪性関節リウマチなど45疾患)をわずらい、治療中で医療費の自己負担がある方 問合せ:最寄りの保健所 高額介護合算療養費 医療保険の一部負担金と介護保険の利用者負担の額の年間(8月~翌年7月)合計額が一定の限度額を超えた場合、超えた額が還付される。 対象者:医療保険の一部負担金と介護保険の利用負担の合計額が一定の限度額を超えた方。 問合せ:各保険者(居住地の市区町村役場や共済組合、健康保険組合など) 介護保険制度(介護保険法) 介護が必要な高齢者や、その可能性が高い人を40歳以上の国民の保険料で支える制度。訪問看護、福祉用具の貸与や購入費の支給、また介護施設への入所サービスなどを受けられる。 対象者:通常65歳以上で日常生活において介護が必要な方(第一号被保険者)※慢性関節リウマチ患者さんでは、40歳以上であれば対象となる(第二号被保険者) 問合せ:居住地の市区町村役場 障害者自立支援法 障害者や障害児が、現在の地域で生活していけるよう、就労を進め自立を支援する制度。障害の程度に応じて、障害に係る公費負担医療や、身体機能や生活能力の自立訓練、自助具の交付や購入の補助、訪問介護、施設へのショートステイなどのサービスが利用できる。 対象者:身体障害者、知的障害者、精神障害者、障害児※サービスを利用するには障害者手帳を有している必要がある。 問合せ:居住地の市区町村役場 障害年金制度 病気やケガにより「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」に規定された障害だと認定された場合、障害の程度に応じた手当金が支給される。 対象者:国民年金または厚生年金を一定期間納付しており、「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」に規定された障害のある方 ※20歳未満の規定もあり 問合せ:厚生年金:社会保険事務所,国民年金:市区町村役場,共済年金:各共済組合 身体障害者手帳 上記、障害者自立支援法におけるサービスや各種の手当・年金の支給、旅客運賃の割引など、障害のある方が、医療的・社会的・経済的なサービスを受けるために必要となる 対象者:各法に定める程度の障害に該当する方 問合せ:居住地の市区町村役場や福祉事務所 難病患者等居宅生活支援事業 関節リウマチおよび難病の患者さんが、生活の質を保ちながら自宅で暮らしていけるよう支援する事業。日常生活用具給付、一時的な医療施設への短期入所、ホームヘルパーの派遣などのサービスがある。 対象者:難治性疾患克服研究事業(臨床調査研究分野)の対象となる病気(2009年8月現在130疾患)および関節リウマチの患者さんで、自宅療養が可能だが、介護サービスが必要な方 ※老人福祉法、障害者自立支援法、介護保険法などの対象であれば除外される 問合せ:居住地の市区町村役場 ■関連記事 関節リウマチ闘病記 出産後に発症~痛みと闘いながらの家事・育児~(30代・女性) 関節リウマチ闘病記 病気と仲良く、うまく付き合う(50代・女性) リウマチのツラさを擬似体験 チーム・リウマチの診療現場(4)最終回 もしかして、私も関節リウマチ?受診のタイミングはいつ?
関節リウマチになると、全身の炎症や治療薬の副作用によって、骨がもろくなることがあります。そのため、食事は、カルシウムを多く含んだ食品をとることが重要で、その吸収を高めるビタミンDも効果的です。BMIが25以上の場合は食生活の見直しが必要になります。 目次 骨を丈夫にするために。カルシウムとビタミンDを積極的に取ろう バランスの良い食事で体重管理を。BMIが25以上なら見直しが必要 サプリメントの活用法。ただし過剰摂取には注意が必要 薬と食事の組み合わせ。医師に相談し適切に取り入れよう 骨を丈夫にするために。カルシウムとビタミンDを積極的に取ろう 関節リウマチの患者さんは、全身の炎症や治療薬である副腎皮質ホルモン(ステロイド薬)の副作用によって、骨密度が減って骨がもろくなることがあります。そのため、日頃の食事では、カルシウムを多く含んだ食品を積極的に摂取しましょう。カルシウムが強化された低脂肪牛乳など、栄養強化食品を上手に取り入れることも効果的です。 ビタミンDは、カルシウムの吸収を促してくれるので、カルシウムと一緒に摂取しましょう。ビタミンDのような脂溶性ビタミンは熱に強いため、加熱調理にも向いています。 リンは、通常、カルシウムとともに骨の成分になっています。ただし、過剰に摂取するとカルシウムの吸収を妨げてしまいます。普通の食材にも含まれていますが、保存料に含まれていることが多いため、カップ麺や加工食品などの食べすぎには注意するとよいでしょう。 どんな食材に多く含まれている?(一例) ビタミンD 干しシイタケ さんま さば 鮭 カルシウム 牛乳 ごま 煮干し ひじき バランスの良い食事で体重管理を。BMIが25以上なら見直しが必要 標準体重[BMI]を調べてみよう! BMIチェックはこちら BMIが25以上なら、普段の活動レベルに合わせたエネルギー摂取量を見直す ■1日に必要なエネルギー摂取量(kcal) 女性 活動レベル※ 低い普通高い 30~40歳代 1,7002,0002,300 50~60歳代 1,6501,9502,200 70歳以上 1,3501,5501,750 男性 活動レベル※ 低い普通高い 30~40歳代 2,2502,6503,050 50~60歳代 2,0502,4002,750 70歳以上 1,6001,8502,100 出典:厚生労働省 日本人の食事摂取基準 [2005年版] より作成 ※活動レベル 低い:座った状態が中心の生活 普通:デスクワーク中心の仕事、通勤・家事などでの移動、軽い運動 高い:移動・立ち仕事が中心、活発な運動 栄養バランスを考える 1日に必要なエネルギー摂取量が分かったら、図のPFCバランスに従って「タンパク質(プロテイン:P)」「脂肪(ファット:F)」「炭水化物(カーボ:C)」の三大栄養素を配分し、食事をしましょう。 例)BMIが25以上で、活動レベルが普通の42歳A子さんのPFCバランス 1日に必要なエネルギー量=2,000 kcal タンパク質:300 kcal(75g)、脂肪:500 kcal(55g)、炭水化物:1,200 kcal(300g) (※1gあたりのカロリーは、タンパク質・炭水化物:4kcal、脂肪:9kcal ) サプリメントの活用法。ただし過剰摂取には注意が必要 日常生活では、不足しがちな栄養素をサプリメントで摂取する方法もあります。ただし、過剰に摂取すると、治療薬の効果を弱めたり、体に害を与える栄養素もあります。例えば、ビタミンDの過剰摂取は、血液中のカルシウム濃度を高め、高カルシウム血症を引き起こすことがあるため注意が必要です。 サプリメントを試したいときは、まず、医師や薬剤師などに相談するようにしましょう。 薬と食事の組み合わせ。医師に相談し適切に取り入れよう ビタミンの一種である葉酸は、レバーやほうれん草などに多く含まれ、赤血球や細胞をつくりだすはたらきをしています。実は、抗リウマチ薬のなかには、葉酸のはたらきを阻害する薬があり、医師が葉酸製剤を処方していることがあります。ただし、過剰に摂取すると薬の効果を弱めてしまうため、葉酸を多く含む食品をバランスよく取り入れるのは良いのですが、サプリメントなどで葉酸を摂る場合は、事前に医師に相談しましょう。 ■関連記事 関節リウマチ闘病記 出産後に発症~痛みと闘いながらの家事・育児~(30代・女性) 関節リウマチ闘病記 病気と仲良く、うまく付き合う(50代・女性) リウマチのツラさを擬似体験 チーム・リウマチの診療現場(4)最終回 もしかして、私も関節リウマチ?受診のタイミングはいつ?
関節リウマチのおもな症状 主婦の病気と呼ばれることのある「関節リウマチ」を知っているだろうか。 関節リウマチは、関節のつなぎ目部分を覆っている滑膜という薄い膜に炎症が起こり、関節の痛み、腫れ、変形といった症状が現れて、関節の機能が徐々に障害されていく病気だ。 人には、体内に侵入してきた有害な物質を攻撃して排除し、からだを守ろうとする免疫というシステムが備わっている。 関節リウマチは、このシステムに異常が起こり引き起こされるが、なぜ異常が起こるのか、その原因は未だはっきりしていない。 フランスを代表する印象派の画家ルノワールも、関節リウマチを患っていた一人。左手が変形していながらも絵を描き続けていたことは有名な話だ。 関節リウマチのおもな症状 関節の症状 痛み、腫れ、朝のこわばり 関節を動かしにくい 関節が変形する 関節の骨や軟骨が破壊される 関節以外にみられる症状 肺炎、血管炎、胸膜炎 皮膚がただれる(皮膚潰瘍) 皮膚の下に、3cm以内程度のかたまりができている(皮膚結節) からだがだるい、貧血、微熱 …など 30代~50代の働き盛りの女性に多い病気 日本には、関節リウマチの患者さんが約70万人いると推定され、なかでも、女性患者さんの数は男性の約4倍にものぼる。また、高齢者の病気だとイメージしている人もいるが、実は、30代~50代の働き盛りの女性に発症することが多い病気なのだ。主婦の病気と言われるのは、こうしたことが理由となっている。 関節リウマチは、進行すると日常生活に支障をきたすようになる。女性にとっては、関節の変形のためにネックレスや指輪ができない、人前に出たくないなど、外見上の悩みにつながることもある。また、肺や心臓などに炎症が現れたり、重篤な患者さんでは寝たきりになってしまうこともあるのだ。 さらに、これまでは、治療によって痛みや腫れなどの症状を和らげることはできるが、風邪のようにすっかり治ることのない「怖い病気」というイメージが強かった。 しかし、近年の研究や新しい治療薬の開発、承認により、関節リウマチの治療に新しい展望がみえはじめた。 公開日:2009年7月13日
関節の痛み・腫れ・変形・破壊、体のだるさなどの症状が現れ、日常生活に支障をきたすことがある関節リウマチ。それだけに、日常生活をサポートしてくれる作業療法が占める役割は大きい。近年、関節リウマチの薬物治療が進化したことに伴って、作業療法の現場でも変化がみられているという。その現状を、作業療法士の鴻井先生に伺った。 お話を伺った先生:社団法人 日本作業療法士協会 鴻井建三先生 劇的に変化した作業療法 ―― 薬物治療の進化によって作業療法に変化があったといわれていますが、具体的にどのような変化があったのですか? 鴻井先生: 以前は、関節が破壊されて手術が必要になるような重症の患者さんを対象に、日常生活で困難な動作を自助具でサポートする作業療法が中心でした。ところが、最近は、症状がそれほど悪化していない患者さんを対象に、進行を防ぐ自助具を使った作業療法を行うことが中心になってきています。 ―― 症状がそれほど進行していない患者さんを対象に作業療法が行われるようになった理由は何ですか? 鴻井先生: 近年、抗リウマチ薬に加え生物学的製剤も使われるようになって、関節リウマチの炎症がコントロールでき、症状が進行していない患者さんが増えたことが理由です。これによって、関節が破壊されていない時期に作業療法を行う重要性も認識され始めました。 「それでは遅い」となる前に ―― 症状が悪くなってから作業療法をするのだと思っていました。 鴻井先生: 「ノドが乾いたときにはもう遅い」という熱中症と同じで、それでは遅いんです。 関節を家に例えた場合、関節リウマチは関節の炎症なので、家が火事を起こしているようなものだと例えられます。火を止めなければ、いずれ家は壊れてしまう。これは、関節リウマチの治療をせずに放っておくと、関節が変形し破壊されていくことと似ています。できるだけ早い段階で対策を取り、関節を保存しなければなりません。 ―― 具体的に、作業療法はどのようなことを担っているのですか? 鴻井先生: 瞬時に力を入れたり重いものを持ったりして関節に大きな負担をかけ続けると、関節の痛み・変形・破壊を引き起こしてしまいます。そこで、負担をかける姿勢や動作は何かを教え、自分の場合どういう動作で痛みが現れるのかも意識してもらいます。また、関節の状態を習慣的に観察してもらい、痛みや腫れなどの異常にすぐ気づけるようになってもらうなど、予防策を教育・指導しています。 普段の生活がキーポイントに! ―― 患者さんは指導された予防策を実行できていますか? 鴻井先生: 症状が悪くなり日常生活に困っている患者さんは、積極的に予防策を実行してくれます。しかし、痛みなどがコントロールされている患者さんは、悪化を予防する必要性があると理解されていても、予防策を日常的に実行することが難しいようです。気がついたときには、関節に大きな負担がかかるため控えた方がよい動作を行っているんです。 ―― 控えるといっても普段よく行う動作ですが、どうすれば… 鴻井先生: 関節に大きな負担がかかる動作は、旦那さんをはじめ家族が代わりに行っているという患者さんが多いようです。しかし、シングルマザー、一人暮らし、家族・職場の人が協力してくれないなど、家庭や仕事の状況によっては、協力が得られない患者さんもいます。そういう時は、自助具を使ったり、少しでも負担がかからない動作方法をアドバイスしています。 例えば、仕事中や仕事後に腫れやすい関節にテーピングをすると、関節で炎症を起こす物質が悪さをしないように圧迫してくれます。寝る前に腫れているところがあれば、今日頑張りすぎた証拠。薬をしっかり飲み、寝るときにテーピングや手を休めるスプリントを使い、手を安静にしてあげれば、翌日はだいぶ楽になります。 控えた方がよい動作 布団を干す 重い荷物を持つ ゴミを出す 調理 パソコン操作 など ―― 最後に、ユーザーの方へのメッセージをお願いします。 鴻井先生: 患者さんの中には、薬でコントロールできているからと活動量を増やした結果、一気に症状が悪くなったという人もいます。薬で症状をコントロールできても、頑張りすぎたり適切な予防策をとらないと、症状を悪化させることがあることを知ってもらいたいです。 作業療法では、患者さんが生活の中で見直すべき点が分かります。しかし、症状が軽い場合、作業療法を受ける機会が少ないのが現状です。信頼できる医師に症状をコントロールしてもらったら、自分に合った関節の保護法やトレーニング法を学んで、ぜひ実施して欲しいと思います。
田中さん(仮名) 35歳女性・主婦、東京在住(発症年齢 35歳) 初対面では、まったく関節リウマチの患者さんだと感じさせない田中さんだが、昨年8月に第1子を出産し、3ヵ月後から体調不良を感じ始めた。 「関節リウマチという病気のことは知っていましたが、健康だった自分が、この年齢で関節リウマチになるとは思っていませんでした。」とこれまでの経験を話してくれた。 ※症状・治療・経過などには個人差があります。 インタビュアー:healthクリック編集部(取材日:2009年8月末) 持病の「腰痛」や「産後」という状況が、受診のタイミングを逃すことに… ―― 始めは、どのような症状が出たのですか? 田中さん: 最初は、手の関節、膝、かかと、アキレス腱などに痛みを感じました。 でも、ママ友から「産後は赤ちゃんを抱くなどして、筋肉痛であちこち痛いよ」と聞いていたので、てっきり私も産後の症状なのだろうと思っていたんです。 また、「産休・育休で会社を休み、体がなまっているのでは?」と言われれば、痛みを我慢して運動量を増やすこともありました。 ―― すぐに病院へ行きましたか? 田中さん: すぐには行かず、まずは、もともと腰痛で通っていた整骨院へ行ったり鍼治療を受けたりしました。 しかし、まったく症状の改善がみられず、日を追うごとに痛みは増して、朝目が覚めても起き上がれないほどになったんです。 今年の4月、内科と外科の症状を診てくれる医院を受診して、ようやく関節リウマチであると分かり、医師からは「なぜ最初から病院を受診しなかったんだ!」と怒られました。 現在は、自宅から近く、リウマチ専門医がいる大学病院に通っています。 ―― リウマチ専門医に通い始めて、症状は改善しましたか? 田中さん: 抗リウマチ薬を服用し始めたので、だいぶ改善しました。実は、関節リウマチだと分かってからも、母乳で育てたかったので、担当医と相談し、子どもが離乳食となる1歳までは薬を服用していませんでした。 服用し始めたのは、3週間ほど前になります。 ―― 抗リウマチ薬の服用によって、症状はどのように変わったのでしょうか? 田中さん: 服薬前は、痛みが天候に大きく左右され、低気圧が近付く天気の悪い日は、本当にひどい状態でした。服の着替え、髪や背中を洗うといった日常の動作ができないんです。 アゴの関節が痛むと、食事をするのも苦痛でした。また、手の痛みで包丁が握れず調理ができない、洗濯バサミがつかめず洋服のシワが伸ばせないなど、家事のひとつひとつがきつかったですね。 抗リウマチ薬を服用し始めるとき、効果が出るまでには2ヵ月くらいかかると説明されていましたが、服薬後の現在は関節の腫れがひき、痛いながらもなんとか手を動かすことができるようになりました。 ―― お子さんの世話も大変だったでしょうね。 田中さん: 痛みがあっても子どもは待ってくれません。マッサージや温めるなど、痛みを和らげる対策もあるんですが、そうした対策を行う時間なんてありませんでした。 服薬後は、なんとか子どもの世話もできるようになり、今はだいぶ楽になりました。 2世帯住宅なので、義父母の協力を得ることができたことも、だいぶ助けになったと思います。 この病気になって、初めて「こんなに大変なんだ、こんなこともできないんだ」と知った。 ―― 家事や子育てなど、家族の協力は重要ですね。 田中さん: そうですね。無理をすると関節の炎症が激しくなって、翌日や翌々日に余計に痛みが強くなるんです。家族が病気のことを理解し、大変だろうと協力してくれると、体だけでなく精神的にも楽になります。私自身、関節リウマチになって初めて、「こんなに大変なんだ、こんなこともできなくなるんだ」と知りました。 ―― 確かに、精神的な負担も大きいですよね。 田中さん: 私の場合、関節リウマチの初期で関節の変形などもなく、見た目だけでは病気だと気づかれません。痛みは私にしか分かりませんから、それまで行っていた子どもの世話や家事ができないと「サボっている、育児放棄している」と捉えられるかもしれない。そう思うと、ストレスを感じていました。もちろん、見守る家族にとってもストレスだったかもしれません。 ―― 経済的な負担もあると聞きますが… 田中さん: 今、薬代だけで月に6千円、検査代も加えると1万円くらいの治療費が毎月かかります。子どもが小さい分、この額は負担が大きいと感じています。なので、次回、受診したときには、公的な制度などを医師に相談しようと思っているところです。 ―― 今回は取材にご協力いただき、本当にありがとうございました。最後に、ユーザーへのメッセージをお願いします。 田中さん: 私の場合、産後の症状とリウマチの症状が似ていたために、きちんと受診するまでに時間がかかってしまいました。もっと早く受診していれば、痛みに苦しむ生活がこんなに続くことはなかったと後悔しています。 また、関節の腫れや痛みがひどくなると、オシャレな靴や洋服を身につけたいという気力がなくなったり、友達と会うのが億劫になったりと、楽しみが減っていくことも感じます。この記事を読み、もしかしてと思った方には、なるべく早く病院を受診してほしいと思っています。 最後に、現在は関節リウマチの薬が進歩し、完治はしなくても、それに近い状態になる人もいると聞いています。しかし、もっともっと治療が進歩していくことを願っています。 ■関連記事 関節リウマチ闘病記 病気と仲良く、うまく付き合う(50代・女性) リウマチのツラさを擬似体験 チーム・リウマチの診療現場(4)最終回 もしかして、私も関節リウマチ?受診のタイミングはいつ?
関節リウマチの治療は進歩しているものの、病気とは長いつきあいになる。進行を抑える薬物治療の他に患者さん自身で気をつけることを伺った。 お話を伺った先生:聖路加国際病院 アレルギー・膠原病科 岸本暢将先生 関節リウマチと向き合うためには ―― 関節リウマチを予防することはできるのですか? 岸本先生: 原因がはっきりしていないだけに、今のところ予防策はありません。 そのため、できるだけ早期に適切な診断と治療を受けるようにしなければなりません。 また、症状を悪化させず、それまでと変わらない生活を送り続けるためにも、医師としっかり話し合い、治療の効果があるかどうかを見極めてもらって、必要なときには治療内容を変更してもらうことも大事でしょう。 病院によっては、「リウマチ教育入院」を行って、医師だけでなく、栄養士、薬剤師、理学療法士、作業療法士、メディカルソーシャルワーカーなどが、いろいろな角度からみた患者さんの情報を共有して、その患者さんにあった包括的な治療を提供するところもあります。 ―― そのほかに注意することはありますか? 岸本先生: 欧米では、関節リウマチの患者さんは、心臓病になる危険性が高いと言われています。その危険性は、糖尿病を持つ人や自分の年齢より5~10歳年上の人と同程度だとも言われています。 そのため、関節リウマチの患者さんも糖尿病や高血圧の患者さんと同じように、栄養バランスのよい食事を摂ることが勧められます。 また、全身に炎症があることで、骨密度が減ったり、副腎皮質ホルモン(ステロイド薬)の副作用で骨が弱くなりやすいため、年に1度は骨密度を量るようにしましょう。 骨を丈夫にするために、必要であればカルシウムやビタミンDが処方されます。過剰摂取を避けるためにも、サプリメントや漢方を試したいと思ったときには、相談してほしいですね。 ―― 最後に、ユーザーの方へのメッセージをお願いします。 岸本先生: 私は、患者さんに「関節リウマチは、完治まではしないが治る病気だ。」と話しています。 関節リウマチの治療は変わりました。関節の変形が起こり、治りにくく怖い病気だというイメージを捨ててください。 もし、関節リウマチだったとしても、現在では、関節の変形を起こさないよう、進行しないよう、全力で治療しています。また、主婦である、一家の大黒柱であるなど、その患者さんが背負っている「人生を救う」ために総括的に診ていきます。 関節リウマチの危険性があると思ったときには、ぜひ、早期診断・早期治療を受けてください。
「もしかして、私も関節リウマチ?」と思っても、すぐに受診するべきかどうかを判断することは難しい。そこで、今回は関節リウマチの自覚症状や受診するタイミング、受診時に医師に伝えた方がいいポイントを伺った。 お話を伺った先生:聖路加国際病院 アレルギー・膠原病科 岸本暢将先生 受診するのはこんなとき ―― 初めて病院を受診する人には、どんな自覚症状があるのですか? 岸本先生: 「手の指がむくんで指輪がぬけない、腫れぼったい、指がしびれる」という自覚症状があり、「もしかしたら…」と関節リウマチを疑って診察に来る人が多いですね。しかし、大半の方は、糖尿病、手を使い過ぎている、変形性関節症といった患者さんで、関節リウマチの患者さんではありません。 ―― そうなると、受診するタイミングが分かりづらいのですが、どうすればいいのでしょうか? 岸本先生: 例えば、朝、手がこわばってコーヒーカップの持ち手が握りづらいなど、朝のこわばりの症状が30分以上続いたり、手の指がむくんでいるのではなく、明らかに腫れているといった状態が、タイミングと言えます。 アメリカリウマチ学会では、関節リウマチを診断するための基準を設けていますが、この基準は、関節リウマチになって8年以上経過した患者さんを元に、20年前につくられました。そのため、この基準に当てはまったときには、かなり症状が進行していることが多いため、注意が必要です。そこで、2009年の10月に開催されるアメリカリウマチ学会で、早期に診断するための診断基準へと変更される予定です。 オランダには、「関節リウマチの診断基準は満たさないものの、確かに関節が腫れていてリウマチに近い状態である人」を早期診断することを目的とした「早期関節炎クリニック」があります。そこでの基準は、2つ以上の関節が腫れていて、朝のこわばりが30分以上持続しているというものです。 ヨーロッパの他の地域では、明らかに1つ以上関節が腫れていて、朝のこわばりが30分以上持続していれば、関節リウマチの危険性を疑うところもあるようです。 リウマチ科が近くにない。どうすれば? ―― リウマチ科が近くになく、専門医でない先生に診察してもらうことも多いと思います。その場合、伝えておいた方がよいことはありますか? 岸本先生: リウマチ専門医でなくても、次のような3つのポイントをしっかり伝えると、関節リウマチが疑われる場合は必要な検査を行い、専門医を紹介してくれるでしょう。 医師に伝えたい症状のポイント 朝のこわばりの有無と持続時間 関節の腫れについて 関節の痛みについて ―― 関節リウマチの血液検査に「リウマトイド因子」の有無を調べる検査がありますが、 陰性[無し]であれば関節リウマチではないと安心していいのですか? 岸本先生: 安心はできません。関節リウマチの早期では、リウマトイド因子が陰性なのに関節リウマチであることが多く、逆に、高齢の場合、関節リウマチでなくても陽性になることが多いからです。 医師は、さまざまな検査結果、患者さんの訴えや症状、炎症の具合などを総合的に判断して診断しています。血液検査は、関節リウマチを診断する補助的な検査であると思っておいてください。 ―― 早期診断だけでなく、早く治療を開始し、治療の効果を見極めることも重要だと伺いましたが、どのように見極めるのですか? 岸本先生: 患者さんにとって適切な時期に適切な治療を行うために、患者さんの状態や治療の効果を見極めることを「評価する」と言っており、DAS(ダス)スコアという統一された指標を使って行うことができます。 DASスコア(Disease Activity Score) 関節リウマチの悪化度を把握する指標のこと。患者さんの訴え、関節の腫れ、圧迫したときの痛み、血液検査[炎症の程度をみるCRPや赤沈]の4項目によって、総合的に評価することができる。 近くにリウマチ専門医がいないのであれば、極端な話にはなりますが、最初の診断をするときと治療の評価をすることが多い3ヵ月ごとに専門医を受診するようにし、それ以外での体調の管理は、かかりつけ医に診てもらうというように、医療連携をとることも可能です。 また、日頃の体調を管理したり、診察時に医師に症状の変化を伝えるためのツールとして、リウマチダイアリーなども役立ちます。毎日記録しなくても、1ヵ月に1回、3ヵ月に1回など、診察や治療の評価を受けるときだけ記録するという方法でもかまいません。 ■関連記事 関節リウマチ闘病記 出産後に発症~痛みと闘いながらの家事・育児~(30代・女性) 関節リウマチ闘病記 病気と仲良く、うまく付き合う(50代・女性) リウマチのツラさを擬似体験 チーム・リウマチの診療現場(4)最終回
適切な治療をしなければ、関節の痛みや変形が進み、寝たきりになることもある関節リウマチ。それだけに、適切な早期診断・早期治療・治療の効果を評価することが重要となる。そのような医療現場に勤め、「我々は、人生を救う診療科にいると思っています。」と話す岸本先生に、治療の現場から見た関節リウマチについて伺った。 お話を伺った先生:聖路加国際病院 アレルギー・膠原病科 岸本暢将先生 関節リウマチは本当に増えている? ―― 関節リウマチの患者さんが増えていると感じますか? 岸本先生: 平成17年厚生科学審議会疾病対策部会の報告では、日本には関節リウマチの患者さんが約60~70万人いるとされています。しかし、全国的な規模での調査は難しく、はっきりと患者数が増えたとは言いにくいのですが、実際に診療をしていて、患者さんが増えていることを実感しています。一般的に発症しやすいと言われる30歳~40歳代の患者さんはもちろん、地域によっては50歳代や65歳以上の患者さんも多いようです。 ―― なぜ、増えているのでしょうか? 岸本先生: 以前と比べ、関節リウマチに対する医師や患者さんの意識・自覚・気づき[awareness]が高まったことがあげられます。 新しい関節リウマチ薬とも言われる生物学的製剤が承認されたり、以前よりも早期診断・早期治療の必要性が重視されるなど、関節リウマチの治療は著しく変わりました。それに伴い、医師を対象とした勉強会も増えたのです。 また、医療技術の進歩で、血液検査や画像検査などの精度が向上したことも手伝って、関節リウマチを診断する技術も高まってきたのです。 ―― 患者さんの病気に対する意識は、なぜ高まってきたのですか? 岸本先生: さらに、さまざまなメディアを通して多くの情報が入ってくる現代では、患者さんが関節リウマチのことを知る機会も増えました。患者数の増加には、このようなことが関係していると考えられます。実際に、テレビの健康番組で関節リウマチが取り上げられた翌日は、受診する患者数が増えるんですよ。 誤解している!?「関節リウマチ」のこと ―― 30~40歳代女性での発症が多いようですが、治療薬の影響で妊娠ができなくなるのでは…というような不安をもつ人もいるのではないですか? 岸本先生: 確かに、病気による症状だけでなく、置かれている社会的な立場や生活的な環境によって、患者さんはさまざまな悩みを抱えています。治療中に妊娠・出産ができるかを心配している患者さんも多く、最近のリウマチ学会でも話題となっています。関節リウマチ薬の中には、胎児に影響を与える可能性のある薬や、精子を減らす薬もあります。しかし、そのような薬を避けたり、妊娠を希望する3ヵ月前に中止したりなど、計画妊娠をすることによって、妊娠・出産が可能となります。実際に、私が担当している患者さんの中にも、妊娠している方がいますよ。 ―― 計画妊娠中に、症状が悪くならないのですか? 岸本先生: 理由は分かっていませんが、妊娠中の患者さんのうち妊娠中だけ一時的に関節リウマチの症状が改善する方が3分の2もいて、妊娠中は薬を中止できることが多いんです。 治療のために妊娠できなくなるかもしれないと不安に思い、受診しないというのは間違いです。関節リウマチが悪化すると、炎症が強くなって妊娠しにくくなりますし、関節の変形が進行すれば、赤ちゃんを抱けなくなることもあるのですから。 ―― 関節リウマチの治療は、「費用が高い」というイメージがありますが…。 岸本先生: 確かに治療の中には、1ヵ月に4~5万円ほどかかるものもあります。ただ、高額だといって治療をしないことが、結果的にその人にとって大きな不利益につながることもあることを知ってほしいと思います。
関節の機能が徐々に障害される関節リウマチでは、リハビリテーションも重要だ。 日常生活に不便を感じていない状態であっても、リハビリテーションを毎日続けることによって、関節の動きや筋力の低下、変形を防ぐことができる。また、血行を促すため、痛みをやわらげる効果も期待できるのだ。 医師や理学療法士などの指導のもと、患者さんの状態に合ったリハビリテーションを行うことが基本だが、無理なく、マイペースでできる運動を自分で行うことも勧められている。 仕事中でもできる「おすすめエクササイズ」 無理をせずに3回~10回行ってみよう。 手 手のひらを開き、親指以外の指だけを、じゃんけんの「グー」と 「パー」のように閉じたり開いたりする。 手首を反対の手でつかみ、そこを軸にして曲げたり、戻したりする。 肘と反対の手でつかみ、そこを軸にして曲げたり、おろしたりする。 足 1. 椅子に座る。 2. 両方のかかとを一緒に上げたり下ろしたりする。 3. 両方のつま先を一緒に上げたり下ろしたりする。 4. 両方の足首を外側と内側に回す。 太もも 1. 椅子に座る。 2. 片方の足をゆっくり上げ、その状態をキープする。(5 - 10秒) 3. 足をゆっくり降ろし、反対の足を同様に行う。 首 1. 前を見たままあごをひく。その状態をキープする。(3秒) 2. ひいたあごを元に戻す。 3. 首を上に向かってひきあげるように伸ばす。
関節リウマチの手術の種類 関節リウマチの症状が進行していくと、痛みが強くなったり、関節の動きが悪いために日常生活の中であたりまえに行っていた行動ができなくなることがある。たとえば、手の関節が障害されると、食事、洗面、歯磨きなどの動作ができなくなっていく。足の場合では、歩行が困難になってくることもあるのだ。 このような状態を改善するため、また、薬の効果がみられないときなどには、タイミングをみて手術を勧められることがある。 手術の種類 滑膜切除術 薬物治療を行っても滑膜の炎症がおさまらないときに、滑膜を取り除いて、炎症や関節の破壊が悪化することを防ぐ手術。 関節固定術 関節の骨が破壊されて変形し骨がズレやすい場合、医療用の金具などで骨と骨を固定し、安定させる手術。 人工関節置換術 骨の破壊により関節のはたらきを失ってしまった場合、その部分を取り除き、人工の関節に置き換える手術。 腱縫合 腱は、筋肉の先端で骨にくっついている部分。滑膜の炎症によって、指を伸ばすはたらきをする筋肉の腱が弱くなり切断された場合に、再びつなぎ合わせる手術。 手術を受ける前のポイント 手術の必要性や、手術によるデメリットを医師と十分話し合っておきましょう。 手術を行うことによってどの程度症状が改善されるのか 手術の危険性(感染や出血などの合併症)には、どのようなことがあるか 入院期間について 入院および手術にかかる費用について 公開日:2009年7月13日
関節リウマチ 治療薬の種類 これまで、関節リウマチにより骨や関節が破壊されるスピードは、発症直後が遅く、年月が経つにつれて早くなると考えられていた。また、関節リウマチになっても寿命には影響しないと認識されていた。そのため、薬物療法でも、副作用の少ない薬から使い始め、治療効果が得られなければ強い薬へと段階的に変更していたのだ。 しかし、近年、関節が破壊されるスピードは発症後3年~4年の間が早いことや、関節リウマチになると平均寿命が10年近く短くなることが分かった。このことから、関節リウマチと診断された段階で、高い治療効果を期待できる抗リウマチ薬を中心とした薬物治療をなるべく早く行うことが勧められるようになった。 さらに、最新の治療薬として数種類の生物学的製剤が開発され、日本でも2004年以降に認可されるようになった。これにより、痛みや腫れをやわらげることを目的としていた治療から、骨や関節の破壊を防ぐ治療へ、さらに骨や関節の破壊を修復し、治すことを目的とした治療へと移り変わってきたのだ。 公開日:2009年7月13日
「もしかして、私は関節リウマチかもしれない」と思っても、診察や検査への不安があると受診に至らないことがある。 少しでも早い診断と治療のためにも、診察・検査についての理解を深めよう。 診察 患者さんの動作や関節の腫れ、痛み、動き具合など、関節リウマチの症状を確認するために医師による視診や触診が行われる。 また、問診を行って、朝のこわばり、痛み、日常生活への支障、貧血やだるさといった症状の有無や程度が確認される。いつから症状を感じ始めたか、朝のこわばりの持続時間などの自覚症状を、きちんと医師に伝えるようにしよう。 検査 おもに以下のような検査を行い、それぞれの結果や診察の結果をふまえ、総合的に関節リウマチであるかどうかを診断する。 血液検査 赤沈 体内で炎症が起きているかどうかを調べる。風邪や肺炎など、あらゆる炎症に反応するため、関節リウマチを診断するためには、さらに詳しい検査が必要。血沈(けっちん)とも呼ばれる。 CRP(C反応性タンパク) 体内の炎症、組織や細胞の急激な破壊が起きているかどうかを調べる。感染症や悪性腫瘍などの病気でも反応するため、関節リウマチを診断するためには、さらに詳しい検査が必要。 RA反応 血液中には、体内に入ってきた有害物質から、からだを守るIgGというタンパク質がある。関節リウマチ患者さんの8割からは、IgGを有害物質と勘違いし攻撃するリウマトイド因子が検出されるため、これを調べる検査。関節リウマチの診断として有用だが、2割の患者さんからは検出されないため注意が必要。 関節エックス線検査(レントゲン検査) 手および症状のある関節にエックス線をあてて撮影する。骨のもろさ、関節の変形、破壊されている骨の有無や程度などを調べる。 尿検査 腎臓の機能に障害が起きたときに尿中に検出される、尿タンパクや尿糖などを調べる。腎臓の機能が悪いと、関節リウマチの薬が服用できないことがある。 関節液検査 症状のある関節に注射器を刺し、抜き取った滑液の色、粘り、成分を調べる。関節リウマチの場合、黄色透明な滑液が白く濁り、粘り気が低下する。また、炎症が起きたときに現れるタンパク質などが検出される。 診察・検査を受けるときのポイント ●診察時に医師を目の前にした途端、言いたいことが言えない人もいます。そういう人は、問診表に症状を詳しく記入しておいたり、伝えたいことや尋ねたい用件を紙に書いて手元に用意しておくとよいでしょう。 ●関節の状態をきちんと診察してもらうためにも、着脱しやすい洋服を着ていきましょう。女性の場合、タンクトップやキャミソールであれば着用可能なこともあるかもしれません。看護師や医師に確認してみましょう。 ●検査によっては、健康診断のように検査前の食事を抜く方がよい場合があります。今回紹介した検査であれば、検査前に食事をしていてもかまいません。ただし、糖尿病などの患者さんの場合、食事の影響を受ける採血を行うこともあるかもしれません。不安があれば、診察を受けに行く病院に前日までに連絡をし、確認をとっておきましょう。 公開日:2009年7月13日
症状をチェックしてみよう! 次のうち4つ以上が当てはまれば、関節リウマチが疑われる。ただし、更年期障害や多発性筋炎などの病気でも関節リウマチと似た症状を引き起こすことがある。そのため、自己判断せず、リウマチ科などで専門医の診察を受けることが重要だ。 □ 6週間以上にわたり、朝のこわばりが1時間以上持続している □ 6週間以上にわたり、関節が3ヵ所以上腫れている □ 6週間以上にわたり、手や指の関節が腫れている □ 6週間以上にわたり、左右対称に同じ部位の関節が腫れている □ 手のレントゲン写真の結果、異常がある □ 皮膚の下に、3cm以内程度のかたまり(皮下結節)ができている □ 血液検査でリウマトイド因子が検出され、リウマチ反応の結果が陽性だった アメリカリウマチ学会(ACR)の診断基準より作成(2009年7月記事作成) 公開日:2009年7月13日