疾患・特集

関節リウマチを誤解している!

適切な治療をしなければ、関節の痛みや変形が進み、寝たきりになることもある関節リウマチ。それだけに、適切な早期診断・早期治療・治療の効果を評価することが重要となる。そのような医療現場に勤め、「我々は、人生を救う診療科にいると思っています。」と話す岸本先生に、治療の現場から見た関節リウマチについて伺った。

お話を伺った先生:聖路加国際病院 アレルギー・膠原病科 岸本暢将先生

関節リウマチは本当に増えている?

―― 関節リウマチの患者さんが増えていると感じますか?

岸本先生:
平成17年厚生科学審議会疾病対策部会の報告では、日本には関節リウマチの患者さんが約60~70万人いるとされています。しかし、全国的な規模での調査は難しく、はっきりと患者数が増えたとは言いにくいのですが、実際に診療をしていて、患者さんが増えていることを実感しています。一般的に発症しやすいと言われる30歳~40歳代の患者さんはもちろん、地域によっては50歳代や65歳以上の患者さんも多いようです。

―― なぜ、増えているのでしょうか?

岸本先生:
以前と比べ、関節リウマチに対する医師や患者さんの意識・自覚・気づき[awareness]が高まったことがあげられます。 新しい関節リウマチ薬とも言われる生物学的製剤が承認されたり、以前よりも早期診断・早期治療の必要性が重視されるなど、関節リウマチの治療は著しく変わりました。それに伴い、医師を対象とした勉強会も増えたのです。 また、医療技術の進歩で、血液検査や画像検査などの精度が向上したことも手伝って、関節リウマチを診断する技術も高まってきたのです。

―― 患者さんの病気に対する意識は、なぜ高まってきたのですか?

岸本先生:
さらに、さまざまなメディアを通して多くの情報が入ってくる現代では、患者さんが関節リウマチのことを知る機会も増えました。患者数の増加には、このようなことが関係していると考えられます。実際に、テレビの健康番組で関節リウマチが取り上げられた翌日は、受診する患者数が増えるんですよ。

誤解している!?「関節リウマチ」のこと

―― 30~40歳代女性での発症が多いようですが、治療薬の影響で妊娠ができなくなるのでは…というような不安をもつ人もいるのではないですか?

岸本先生:
確かに、病気による症状だけでなく、置かれている社会的な立場や生活的な環境によって、患者さんはさまざまな悩みを抱えています。治療中に妊娠・出産ができるかを心配している患者さんも多く、最近のリウマチ学会でも話題となっています。関節リウマチ薬の中には、胎児に影響を与える可能性のある薬や、精子を減らす薬もあります。しかし、そのような薬を避けたり、妊娠を希望する3ヵ月前に中止したりなど、計画妊娠をすることによって、妊娠・出産が可能となります。実際に、私が担当している患者さんの中にも、妊娠している方がいますよ。

―― 計画妊娠中に、症状が悪くならないのですか?

岸本先生:
理由は分かっていませんが、妊娠中の患者さんのうち妊娠中だけ一時的に関節リウマチの症状が改善する方が3分の2もいて、妊娠中は薬を中止できることが多いんです。
治療のために妊娠できなくなるかもしれないと不安に思い、受診しないというのは間違いです。関節リウマチが悪化すると、炎症が強くなって妊娠しにくくなりますし、関節の変形が進行すれば、赤ちゃんを抱けなくなることもあるのですから。

―― 関節リウマチの治療は、「費用が高い」というイメージがありますが…。

岸本先生:
確かに治療の中には、1ヵ月に4~5万円ほどかかるものもあります。ただ、高額だといって治療をしないことが、結果的にその人にとって大きな不利益につながることもあることを知ってほしいと思います。