疾患・特集

患者が主役のリウマチ治療最前線 チーム・リウマチの診療現場(1)

小説・テレビ・映画でおなじみの「チーム・バチスタ」は、医師や看護師など多くのスタッフがチームワークを組んで困難な循環器疾患に立ち向かっています。これをチーム医療といいますが、リウマチ・膠原病診療でのチーム医療の実際はどうなのでしょうか。世田谷リウマチ膠原病クリニック/東信よしだ内科・リウマチ科で、患者さんに寄り添う「チーム・リウマチ」の診療の現場をレポートします。

「チーム・リウマチ」とは

世田谷リウマチ膠原病クリニックは、個々の患者さんに最適な寛解(症状がおさまっている状態をいいます)、さらにその先を見据えた治療をモットーにしています。患者さん一人ひとりに合ったオーダーメイドの医療を提供することを目標に、日本で初めてのリウマチ・膠原病のクリニックとして2006年に開業しました。
世田谷リウマチ膠原病クリニック/東信よしだ内科・リウマチ科統括院長の吉田智彦先生は高度に進歩したリウマチ・膠原病診療に大切なものとして、有効性(efficacy)と安全性(safety)と安心感(confidence)の3つをあげています。そして、この3つを実現するためにはチーム医療が必要なのです。
「チーム・リウマチ」を成功させる秘訣があります。それは、医師以外に看護師や医療事務職、理学療法士、薬剤師、放射線技師、栄養士などクリニックのすべてのスタッフがチームワークを組んで、患者さんに最も有益な医療を提供するための情報を共有し、他職種の役割を理解したうえで患者さん主体の「チーム・リウマチ」を実践することを挙げています(表)。

表:リウマチ診療の分業化とその役割分担 リウマチ診療の分業化とその役割分担

提供:世田谷リウマチ膠原病クリニック/東信よしだ内科・リウマチ科

医師だけでなく看護師、事務、理学療法士などと連携・役割分担がチーム医療に重要

連携・役割分担がチーム医療に重要

1920年代のアメリカの経営学者のチェスター・バーナードは、組織を「意識的に調整された2人またはそれ以上の人々の活動や諸力のシステム」と定義して、その成功のための条件として「共通目的(組織目的)」「協働意思(貢献意欲)」「コミュニケーション」を示しています*1
これを、チーム・リウマチでは「患者さんに最適、最高の医療を提供することを目的に」、お互いを尊重しチームリウマチのために仕事をして、「最新治療・専門スタッフ・診療連携」を結合し、リーダーシップとスタッフ間、スタッフと患者さんとの間の意思疎通に置き換えています。
チーム・リウマチとは文字どおり、医師・看護師・医療事務にとどまらず、理学療法士・放射線技師・栄養士・臨床検査技師など、さまざまな職種の医療スタッフがチームワークを組んで、適切な診療連携をして「目標達成に向けた治療:Treat to Target*2」を患者さんに提供することです*3
そのためには、各役割を担当するスタッフが強い責任感と高いスキルを持って患者さんに対応することが必須ですが、それぞれのスタッフが他のスタッフの役割を理解しておかなければなりません。

患者さんと深いコミュニケーションを図る

同クリニックでは、患者さん一人ひとりに対する診察時間を十分に確保しています。初診、再診の待ち時間に看護師が丁寧に病歴を伺うことはもちろん、受付の事務スタッフも積極的にコミュニケーションを図っています。
患者さんの多くは女性なので、クリニックの女性スタッフがリウマチ膠原病について問診をすることはもちろんですが、学校生活、仕事の詳細や休日、ほかの病気や治療費などに負担などについて親身になって伺うようにしています。
治療費に関しては、高額な治療薬(生物学的製剤など)に踏み込めるのか、それとも薬剤費を抑えた治療がよいのかどうかについて、患者さんの希望を探るためです。

結婚の予定や妊娠の希望を聞く理由

ときには、彼氏、彼女などパートナーの有無や結婚の予定、妊娠に関する希望も聞きます。
というのは、妊娠を希望しているときは、薬剤によって服用することが胎児奇形、流産のリスクになるものがあるからです。
チーム・リウマチがうまく機能する鍵は、医療スタッフ全員が患者さんの背景、治療内容、思いについて詳しい情報を共有すること、患者さんもスタッフも共通の治療ゴールを目指していくことが重要です。
次回は、ベストの治療を提供できるための鍵となる「情報」として、患者さんの気持ちや生活状況などを聞き取るための工夫について紹介します。

  • *1:組織と管理 飯野春樹監訳・日本バーナード協会訳
  • *2:RA治療では3ヵ月ごとに医師と患者さんが治療目標を決めて、治療効果の達成度を照らし合わせながらゴールを目指していくTreat to targetという治療方針があります。
  • *3:Smolen JS, et al. Ann Rheum Dis. 2010; 69:631-637

監修:吉田智彦先生

吉田智彦先生

所属学会
日本内科学会、日本リウマチ学会、日本臨床リウマチ学会、日本リウマチ学会 リウマチ指導医、日本アレルギー学会、日本糖尿病学会 など
略歴

芝学園(東京都港区)卒業
聖マリアンナ医科大学大学院卒

聖マリアンナ医科大学病院リウマチ膠原病アレルギー内科に入局し同大学病院でリウマチ膠原病の診療にあたりながら、難病治療研究センターに所属して研究に従事しました。
平成10年12月から長野県埴科郡坂城町の父のクリニックで診療をはじめ、
平成12年4月~平成14年3月:日産厚生会玉川病院で診療。
平成17年4月~平成18年5月:児玉経堂病院リウマチ内科で診療。
平成18年6月に世田谷区に日本で初めてのリウマチ膠原病の専門クリニックとして世田谷リウマチ膠原病クリニックを開業いたしました。
現在は、世田谷リウマチ膠原病クリニックと長野県埴科郡坂城町の東信よしだ内科の2施設でリウマチ膠原病診療にあたりながら、全国で講演、学会発表、論文発表、市民公開講座などを行っています。

世田谷リウマチ膠原病クリニック
URL:http://www.setagayariumachi.com/

東信よしだ内科・リウマチ科
URL:http://nagano-riumachi.com/

■関連記事

公開日:2018/12/05