2015年12月から実施が義務化される企業におけるストレスチェックについて詳しく解説します。うつ病などの発見ではなくストレスを自覚し職場の改善につなげる、というストレスチェックの目的をしっかり理解しましょう。 目次 2015年12月から、ストレスチェックの実施が企業の義務に 目的はうつ病などの発見ではなく、ストレスを自覚してもらい、職場の改善につなげること 企業側に求められるのは、できるだけ多くの人が受けられるようにする制度づくり 2015年12月から、ストレスチェックの実施が企業の義務に 仕事にストレスはつきものですが、度を越すと心身の健康が損なわれてしまいます。企業に勤める人々が過度のストレスにより、メンタルヘルスの不調を訴えることは、長らく問題視されてきました。厚生労働省はストレスチェックの実施をたびたび奨励しましたが、導入したのはごく一部の企業だけです。対策が講じられないまま、職場のストレスによる精神障害(うつ病の発症など)の労働災害(労災)の請求数のみならず、自殺者数も年々増加の一途をたどりました。この危機的な状況を受けて、ストレスチェックとその結果に応じた面接指導の義務化が、2014年6月に公布された労働安全衛生法の改正に盛り込まれ、2015年12月から実施されることとなりました。 精神障害に係る労災請求・決定件数の推移 ストレスチェックは健康診断と同じように、少なくとも年に1回行われます。ストレスチェックの企画や結果の評価を行う実施者になれるのは、企業内または企業が健康診断と同様に委託した外部機関(健康診断機関、メンタルヘルスサービス機関、健康保険組合、病院・診療所など)の、(1)医師(産業医)、(2)保健師、(3)一定の研修を終えた看護師や精神保健福祉士などです。調査票の回収やデータの入力などの補助作業は、実施者の指示の下で、産業保健スタッフや事務職員などが行います。実施者から面接指導が必要と判断された従業員には、医師による面接指導が行われます。 「ストレスチェックの義務化」とは、ストレスチェックを行う体制を整える、企業側の義務を指します。従業員にとって、ストレスチェックを受けることは義務ではありません。これは、うつ病患者などはストレスチェックを受けること自体が精神的な負担となる恐れがあり、希望しない人が強制的に受けさせられることがないようにするための配慮だと考えられます。ストレスチェックが義務づけられるのは従業員50人以上の企業で、これは産業医の選任が義務づけられているのと同じ規模です。50人未満の企業は、できるだけ実施することが求められる努力義務として定められます。人数の基準は事業所ごとのものなので、企業の全従業員が50人以上であっても、支店や店舗などの人数が50未満であれば、その事業所では義務ではなく努力義務となります。なお、企業が実施するストレスチェックの対象となるのは常勤の社員であり、派遣社員の場合は派遣元で実施されます。 目的はうつ病などの発見ではなく、ストレスを自覚してもらい、職場の改善につなげること うつ病などの精神疾患を発見することは、ストレスチェックと面接指導の主な目的とはされていません。主な目的とされているのは、本人にストレスを自覚してもらうのとともに、従業員のストレスの程度を企業が把握し、職場環境の改善へとつなげ、メンタルヘルスの不調を予防することです。 ストレスチェックの実施に関わった人には守秘義務があり、結果を本人の同意なしに企業に伝えてはならないことになっています。実施を外部機関に委託し、産業医がストレスチェックに関与していないのであれば、本人の同意なく、外部機関から産業医にストレスチェックの結果が伝えられることはありません。ストレスチェックの結果によって、従業員が解雇、減給、降格、不利な配置転換などの不利益をこうむることは避けなければなりません。そのため、人事に関する権限をもつ人(社長、人事部長など)が、ストレスチェックの実施者を補助する作業(調査票の回収、データの入力など)に関わることは禁じられています。 医師による面接指導を行う場合はストレスチェックとは異なり、本人の同意がなくとも、企業は実施した医師から結果を知らされることになっています。これは、企業は必要に応じて、従業員の健康を維持する必要があるためです。 企業側に求められるのは、できるだけ多くの人が受けられるようにする制度づくり ストレスチェックは、質問項目が書かれた用紙やWebシステムなどを用いて回答する、チェックシート形式で行われます。質問項目は、実施する医師や保健師などのアドバイスを受けたそれぞれの企業が決めますが、以下(1)~(3)の内容は必ず含まれていなければなりません。 ストレスチェック質問項目の必須内容 (1)仕事のストレス要因 職場における労働者の心理的な負担の原因に関する項目 ・非常にたくさんの仕事をしなければならないか ・時間内に仕事が処理しきれないか …など (2)心身のストレス反応 心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目 ・イライラしているか ・ひどく疲れているか …など (3)周囲のサポート 職場でともに働く従業員から受ける支援に関する項目 ・上司に気軽に話ができるか ・職場の同僚が頼りになるか …など ※ストレスチェックの結果から面接指導が必要とされるのは、以下の基準を満たす人です。 ●上記(2)に該当する質問項目の合計点数が高い人 ●上記(2)に該当する質問項目の合計点数が一定の点数で、かつ上記(1)(3)に該当する質問項目の合計点数が著しく高い人 具体的な質問項目は、厚生労働省の委託研究によって開発された「職業性ストレス簡易調査票」の使用が推奨されています。「職業性ストレス簡易調査票」は上記の3つの内容を含む、57個の質問項目から構成されるチェックシートです。質問項目数を23個に絞った簡略版もあり、これらの回答結果を点数化して、ストレスの度合いを評価します。厚生労働省の「ストレスチェック制度実施マニュアル」では、「職業性ストレス簡易調査票」を受けた20万人のデータに基づいて作成された、素点換算表が公表されています。 この表とストレスチェックの結果を照らし合わせることで、ストレスの度合いが確認できますが、あくまでも目安の一つであり、基準は企業ごとに定められます。企業内で統一する必要もなく、事業所や職種によって異なる基準が定められる場合もあります。企業によっては、医師や保健師などの面接結果も踏まえて評価が行われる可能性もあります。評価の結果を従業員に伝える際は、点数化された数値だけでなく、レーダーチャートなどで図表化することが望ましいとされています。 従業員がストレスチェック後に面接指導を希望しても、50人未満の企業は産業医の選任が義務づけられていないため、面接指導をスムーズに受けられない可能性があります。そのため、全国の各都道府県に1ヵ所ずつ設置されている産業保健総合支援センターなどと連携して、ストレスチェック後の面接指導が受けられるような制度の整備が予定されています。 従業員にとっては義務ではないため、ストレスチェックを受けなくとも法律違反にはなりませんが、できるだけ受けるのが望ましいことは言うまでもありません。企業側には、できるだけ多くの従業員が受けられるような制度を整えることが求められます。 公開日:2015/05/18
PTSDとは、生死にかかわるほどの恐ろしい体験などが、心の傷やストレスとなり、何度も思い出されておびえ続けるようになる病気。発症の原因と対処法について紹介します。 目次 PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは? 同じ地震を体験しても、発症のきっかけは人それぞれ 「自分はPTSDかもしれない…」と思ったら PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは? 大きな地震やそれに伴う火災、津波などは、体のケガだけでなく、精神疾患を引き起こすきっかけにもなります。その代表的な精神疾患として、PTSDが挙げられます。 PTSDとは、生死にかかわるほど恐ろしいできごとの体験あるいは目撃が、トラウマと呼ばれる心の傷やストレスとなり、そのできごとが何度も思い出されて、恐怖におびえ続けるようになる病気のことです。常に緊張しているため眠れなくなる、イライラする、突然悲しみに襲われて情緒が不安定になるなどの症状がみられ、特に子どもの場合は成長にも影響を及ぼすと考えられています。 自然災害以外では、交通事故や暴力の被害、虐待などがきっかけとなることがあります。 同じ地震を体験しても、発症のきっかけは人それぞれ 被災した状況が人それぞれ異なるように、PTSDになったきっかけも、その人が置かれた状況によって異なります。大きな地震の場合、主に次のように分類することができます。 地震におけるPTSDの主なきっかけ ●地震が発生したときの体験・目撃 強い揺れの体感や、家がきしむ大きな音や爆発音、泣き叫ぶ声を聞いたこと、自宅が倒れたり、地震の後に発生した津波で流されたりする様子、火災の炎やケガを負った人などのショッキングな光景などが記憶に残り、トラウマとなります。 ●避難した後の生活 避難所では、余震へのおびえや、家族の消息が確認できない不安、集団生活でプライバシーを十分に保てず落ち着かない状況などが、大きなストレスとなります。避難所から出ても、仮設住宅などの引っ越した先での慣れない生活もまたストレスとなります。 ●被災による心情的な影響 家族を助けられなかったことや、自分だけが生き残ったことに対して自分を責める気持ち、家族や生活の基盤を失った喪失感、まわりの人からの同情などが心の傷となります。また、十分に援助をしてくれていないと感じられるまわりの人への怒りが、大きなストレスとなることもあります。 …など 「自分はPTSDかもしれない…」と思ったら PTSDを発症した人が回復するためには、つらい思いを自分だけで抱え込もうとせず、人に話を聞いてもらうことが大切となります。家族や友人など身近な人に話せない場合は、自治体や支援団体などが設けている電話相談窓口の利用が望ましいです。避難所などでは、救護班の中にカウンセラーのスタッフがいることもあります。 ほかの精神疾患である不安障害やうつ病を合併している可能性もありますので、精神科や心療内科で専門医に診てもらうのも良いでしょう。 公開日:2011/04/04
時代変われば症状も変わる!? 特定の職業に従事したり、職場環境によって罹りやすい病気は、「職業病」としてひとくくりにされることが多いが、その症状や病気にはさまざまなものがある。2005年に問題となったアスベストによる健康被害も職業病の代表的なもの。このときは中皮腫や肺がんなどの病気を患った多くの人が労災認定を受けた。一昔前までは、こうした労災認定に至るほどの職業病といえば、その9割が製造業や建設業で、作業中の事故がほとんどであった。 しかし、近年では、労働の質、環境の変化によって職業病にも変化がみられるようになってきた。ここ数年増えているのがIT化の急速な進展によるVDT(Visual Display Terminals)症候群や、デスクワークの増加による首、肩、腰の痛みなど。以前の職業病と比べて特別な疾患やケガではなく、一般的な症状、病気であることが特徴だ。 これって「職業病」?労災認定は受けられる? 病気や各症状の原因が仕事によるものであれば、労災認定を受けることで、医療費の給付を受けることができる。 労災保険給付内容 労災保険給付(<>内は通勤災害の給付) 概要 療養補償給付<療養給付> 療養の給付は治療を受けるときに本人や会社が申請を行う。療養費用の支給は、治療を受けた後に本人や会社が申請を行う 休業補償給付<休業給付> 療養のために働けず、賃金を受けないときに本人や会社が申請を行う 障害補償給付<障害給付> 障害が残ったとき本人や会社が申請を行う 傷病補償年金<傷病年金> 政府により支給が決定される 介護補償給付<介護給付> 介護が必要になったときに本人や会社が申請を行う 遺族補償給付<遺族給付>・葬祭料<葬祭給付> 労働者が死亡したときに遺族などが申請を行う 労災保険給付までの流れ しかし、アスベストによる健康被害のような明らかなものに比べ、肩こりや腰痛、目の疲れといった症状は仕事のみが原因とは言い切れず、その証明が難しいという現状も。たとえば仕事中に、重い荷物を持ち上げて、突発的に腰痛が起きたような場合は認定されやすく、日々の疲労の蓄積による腰痛は認められにくいというのだ。だとすれば、つらい症状に悩む前に「予防」することが大切になる。 急増する「職場のうつ」への対応 また最近急激に増加しているのが、労働環境の変化による「職場のうつ」だ。実際に精神障害を理由に労災申請を行う人も年々増加している。とくに長時間労働など、仕事そのものの過酷さに加えて、人間関係が形成しにくくなっている環境が「職場うつ」を増やす原因だといわれている。それは、周囲の変化に気づきやすい小規模の事業所に比べて、大きな事業所ほどメンタルヘルス上の理由によって休業する労働者が多いことからも言えるだろう。 こうした心の健康は、普段から上司や同僚、産業医に相談し、自分ひとりで溜め込まないことが大切だ。気にかかることがあるなら、早めにかかりつけ医やメンタルへルス外来などを設けている病院で相談しよう。医師と話すことで、自分でも気づかなかった心の病に気づいたり、気持ちが軽くなることもある。 職場では、何でもひとりで抱え込む「完璧主義者」になりすぎず、たまにはガス抜きをすることも必要だろう。そして、さまざまな人が、さまざまな役割を持つ職場だからこそ、日ごろからお互いの健康を気にかける、ほんの少しの配慮や声がけを心がけたい。 公開日:2007年8月20日
OA化に伴い、肩こり・腰痛・腱鞘炎・眼精疲労・精神的なストレスなど体の不調を訴える人が増えています。不調を放っておくと深刻な病気が隠れていることもありますので、注意しましょう。 あなたは大丈夫?こんな不調 OA(オフィス・オートメーション)化によって、現在仕事に従事する多くの人がパソコンに接するようになってきた。それに伴い、さまざまな身体的、精神的不調を訴える人が増えているという。 肩こり 主な原因は筋肉の疲労と緊張による血行不良にある。肩や首の筋肉はもともとこりやすいものだが、重たい頭を支えたり肩甲骨や腕を吊り下げているため、同じ姿勢をとり続ける長時間のパソコン作業では、特に血行不良を起こし、こりになってしまう。 ●こんなときは病院へ! 安静にしていても痛い、腕や手がうまく動かない、小指などの手先が部分的にしびれるなどの症状があるときは整形外科で検査してもらおう。頚椎(けいつい)のヘルニアの可能性がある。 腰痛 長時間のパソコン仕事で起こる腰痛の場合は筋・筋膜性腰痛という。 ●こんなときは病院へ! 安静にしていても痛い、痛みが長引く、運動や姿勢に関わらずいつも痛い、突然痛むようになったなどの症状があるときは整形外科へ。胃潰瘍、十二指腸潰瘍や腎盂炎、尿管結石、卵巣などの婦人科系疾患など、内臓の病気を伴っている場合もある。 腱鞘(けんしょう)炎 キーボードを叩き続けることで手指に負担をかけてしまい、腱(筋肉の一端)と、腱鞘(腱を包み込むもの)との間の滑らかな動きが障害され、痛みを伴った状態を腱鞘炎という。人差し指・中指・薬指によくみられ、指を屈伸させるとばね仕掛けのように動き痛みを伴うタイプと、手の付け根の内側=橈骨(とうこつ)茎状突起が腫れて痛むタイプがある。 ●こんなときは病院へ! 休養をとっても痛みがひかない場合はすぐに整形外科へ。ひどい場合は手術の必要もあるので、とにかく早めに治療を始めることが肝心。 眼精疲労 パソコンの画面を見続けているとまばたきが減り、涙の量が足りなくなってしまうことでドライアイになってしまう。 ●こんなときは病院へ! たかが疲れ目と放置してはいけない。目を休ませても目の疲れがとれないようなら専門医に相談を。アレルギー性の結膜炎、白内障や緑内障といった病気が隠れているケースもあるのだ。 精神的なストレス OAによる体の不調がきっかけで抑うつや不安などをおぼえたり、OA機器に過度にのめりこんでしまうことで職場でのコミュニケーションが不十分になり、対人関係がうまくいかなくなってストレスがたまるということもある。 ●こんなときは病院へ! 精神的なストレスは体に現れる不調を伴うことが多い。長引く疲労やだるさがあったり、気力の低下、理由もなく憂鬱になったり悲しくなる、人に会いたくないなどの症状が続くようなら、ぜひ、一度専門医を訪ねてみよう。 公開日:2002年10月21日
お腹が痛い、といっても病気ではないものもあります。今回は特に膨満感と、ストレス性腹痛である過敏性腸症候群についてご紹介します。 目次 病気のチェックの後で お腹が張ったような感じ「膨満感」があるなら 腸は心の窓=ストレス性の腹痛があったら 病気のチェックの後で こんなにある腹痛を伴う病気で病気をチェックしてみただろうか?「どうも胃があやしい」など思い当たるものがあるなら、すぐにでも病院へ。また、「思い当たるものはないが、腹痛はたびたびある」という場合も病院へ。腹痛が何度も繰り返し起きる場合や、痛みが悪化していくような場合は、やはり何らかの病気が隠れている可能性が高い。受診して、検査してもらおう。 余談だが、信頼できる医師にめぐり合うのは、なかなか難しい。日頃から病院へ行く習慣を身につけて、信頼できる医師や相性の良い医者を探しておくことは、私たちの自己防衛手段のひとつなのかもしれない。特に、ストレス性の腹痛の場合は、もともと神経質な性格の人に多く見られるうえに、身体データ的には異常がなく、病名が特定されにくい。そのため、医師への不信感が芽をふきやすいのだとか。 これでは、治るものも治りにくい。日頃から信頼できる医師を探し、調子の悪いときはいつでも気軽に受診することを私たちも心がけたい。 お腹が張ったような感じ「膨満感」があるなら 膨満感…わかるようでわからないような不思議な言葉だが、症状としては、お腹が張ったような感じや、ガスがたまっているような感じを伴う腹部の不快感、ということができるだろう。 病気ではないとはいえ、気持ちのいい状態ではない。主な原因は、以下の「膨満感の主な原因」に示す通り。また、便秘などで膨満感を感じることもある。特に注意したいのが、胃腸の機能低下だ。疲れはたまっていないだろうか。不規則な生活や暴飲暴食で、胃腸を弱らせていないだろうか。 普段の生活を見直しつつ、「膨満感を抑えるポイント」を参考に、少しでも改善していこう。 膨満感の主な原因 ●でんぷん類の食べ過ぎ ●食事などのときに、空気を飲み込む量が多い ●疲れなどで胃腸の機能が一時的に低下している 膨満感を抑えるポイント ●でんぷん類を減らす ●ガスを発生させやすい炭酸飲料やビールを避ける ●栄養バランスの良い食事と、規則正しい生活で胃腸の機能が正常に戻るのを助ける ●胃腸のはたらきを助けるクスリを服用する ちなみに、膨満感そのものは病気ではないが、頻発する場合は、胃炎の可能性もあるので、気になるようなら受診することをオススメしたい。 腸は心の窓=ストレス性の腹痛があったら 幼い頃、「お腹が痛い」というと、お母さんが「時計と反対まわりに」お腹をさすってくれ、痛みがやわらいだ思い出はないだろうか。「腸は心の窓」ともいわれ、精神的な影響を受けやすい臓器なのだ。 特に胃は、神経性胃炎をはじめ、胃潰瘍なども「ストレスに対しての身体的反応の結果」とされ、病気の背景には生活環境や性格などが大きく関与しているといわれている。 また、こうした精神的な影響からくる腹痛に「過敏性腸症候群(IBS)」というものがある。簡単に説明すると、精神的な不安やストレスから自律神経が乱れ、腸の運動や分泌機能が過敏になって便通異常を起こすもの。主な症状としては、「過敏性腸症候群の診断基準」にあるように、腹痛とともに便通異常を伴う。また、おならが頻発するといったことも。ひどくなると、通勤途中、各駅ごとにトイレに駆け込むといったケースもあるほどに悪化する。 過敏性腸症候群の診断基準 以下のいずれかが3ヵ月以上繰り返す。 ●腹痛が、排便によって軽快する ●腹痛+排便頻度の変化を伴う(トイレへよく行く) ●腹痛+便性状の変化を伴う(便秘、下痢、もしくは便秘と下痢を繰り返す) 過敏性腸症候群で伴わない症状 ●体重はほぼ減少しない ●便に血は混じらない ●リラックスしているときや、就寝中は腹痛が起きない 胃腸の器官そのものの病気と違う点は、「過敏性腸症候群で伴わない症状」にある通り、体重の減少といった症状が出ないこと。一説には、消化器科を受診する患者のおよそ半数近くが過敏性腸症候群だというほど多い症状にも関わらず、身体データ的には異常がないため、医師による病名の特定がなかなか進まず、ひとりで悩むことが多いのが現状のよう。 また、病名が特定されても、敵はストレス。そう簡単にはおさまってはくれない。この点は、自覚しておく必要がある。つまり、ストレスと向き合い、生活を見直すなりして、ストレスと上手につきあっていくこと。また、症状も劇的におさまることはほとんどないため、少しずつ気長に治していくつもりでいることが大切なのだ。 「お腹が痛い」とひと口に言っても、程度によってはかなりの痛みや苦しみを伴うストレス性の腹痛。ぜひ、次のような点に注意しながら、少しずつ快方へ進んでいってもらいたい。 生活で気を付けたいこと ●食事 栄養バランスの良いものを。また、便秘のときは水分と食物繊維を積極的に摂り、下痢のときは水分を積極的に摂る。アルコールや香辛料は控える。おならが頻発する場合は、食物繊維を控える。 ●トイレ習慣 食後など、毎日一定の時間にトイレに行く習慣をつける。 ●ストレスとの付き合い まず、腹痛や便通の異常がストレスによるものだと自覚することから。そうして、ストレスを感じたときに、症状が悪化するかどうかチェックを。ストレスと症状の関係がわかったら、生活の見直しや自分なりのリラックス方法を。また、物事において完璧主義になり過ぎず、気楽さをもつ習慣を身につけていくのも効果的。 ストレス解消のためのリラックス法も参照しよう。 公開日:2002年10月15日
実は、人はストレスがまったくない環境では、生活ができないそうです。でも、過度なストレスは心だけでなく、体に悪影響を与えます。ストレスが体に与える悪影響と、ストレスと関係の深い病気についてご紹介します。 目次 ストレスのない人はいない ストレスを感じると、体はどうなる? ストレスが体に与える悪影響 ストレスのない人はいない 「あなたはストレスを感じていますか」と聞かれたら、なんと答えるだろうか。 「毎日ストレスだらけで、まいってるよ」という人もいれば、「ストレスなんて感じたことないよ」という人もいる。だが、ここで問題。ストレスのない人はいるのだろうか。 さまざまな刺激がなにもない(いわゆるストレスがなにもない)部屋で過ごす実験をしたところ、体温調節機能は低下し、暗示にかかりやすくなり、挙句の果てには幻覚・妄想まで起こってしまったそう。 心と体のバランスを保つには、適度なストレスは必ず必要であり、ストレスがまったくない人はいないのである。 ストレスを感じると、体はどうなる? ストレスとは、専門的に言えば「寒冷、外傷、疾病、精神的緊張などが原因になって体内で起こる非特異的な防御反応」のこと。わかりやすく言えば、人には、ホメオスタシス(恒常性の維持)と呼ばれる体を常に一定の安定した状態にするはたらきがある。 これのおかげで、寒さや精神的な緊張によって乱された体内の変化を元に戻してくれるのだ。このときの体内に起こる変化や、それを元に戻そうとする反応などをひっくるめて「ストレス」と呼んでいる。そして、そのストレスの原因となる刺激を「ストレッサー」と呼んでいるのだ。 ストレスが体や心に与える影響は? ストレスが体や心に与える影響と深く関係しているのが、自律神経。自律神経とは、自分の意志とは無関係に心臓や胃腸、血管などの内臓を支配し、その機能を調節しているものだ。ストレスとの関係は、 体になにか刺激が加えられると、脳下垂体を通して副腎皮質ホルモンが分泌される。 ↓ このホルモンが自律神経を仲介役として各器官に作用し、刺激が体に与える影響を最小限にしようとする防御反応がはたらく。 ↓ でも、ストレッサーによる刺激が一定の限度を超え長く続くと、体内での防御体制が破壊され、心拍の増加や血圧の上昇など、体内に変化をもたらす。 ↓ この状態が長く続くと、食欲の低下、筋肉の緊張、疲労感、不眠、イライラ、憂うつなどいわゆる「ストレス反応」となって現れる。 ストレスが体に与える悪影響 「病は気から」とも言われるように、過度なストレスは、心だけでなく体にかなり悪影響を与える。以下の病気は、ストレスと関係が深いものだ。 ストレスと体調の密接な関係 ●神経性胃炎(胃神経症) イライラや精神的な緊張が続くと、胃の痛みや胃もたれなどの症状が出てくる。内視鏡やX線検査でも特に胃に異常が認められない場合、神経性胃炎や胃神経症などと診断される。 ●胃・十二指腸潰瘍 神経性胃炎と並ぶ、代表的なストレス症のひとつ。精神が極限状態に置かれると「一晩で胃に穴があく」と言われるほど、消化器機能は精神状態に左右される。ストレス症としての胃・十二指腸潰瘍は、治っても再発しやすく、軽視してはいけない。 ●過敏性腸管症候群 長期間にわたって下痢と便秘を繰り返したり、腹痛や腹部の膨満感が続く病気。緊張したり食事をするとすぐに腹痛を伴う便意を催す「神経性下痢」、細く小さな便やコロコロした固い便が少しずつ出る「けいれん性便秘」、また便秘と下痢を繰り返す場合などがある。 ●自律神経失調症 人には交感神経と副交感神経という二つの自律神経があり、これらのはたらきによって呼吸、循環、消化などの機能が調節されているが、このバランスが崩れると自律神経失調症と言われるさまざまな症状が現れる。めまいや立ちくらみ、のぼせや冷えなど原因のわからない全身の不定愁訴がある場合、この病気だと診断されることがある。 公開日:2002年1月15日
ストレスでいっぱい!ビジネスマンの日常生活 クライアントに叱られ、部下に手を焼き、上司からは責められる…。ビジネスマンの日常はストレスでいっぱいだ。 2005年4月、財団法人社会生産性本部メンタル・ヘルス研究所が発表した調査(*1)によると、回答したうちの68.7%の労組が「組合員のここ3年間の『心の病』が増加している」とし、組合規模が大きいほど増加の割合が多い傾向にあった。 原因は「職場の人間関係」(30.4%)、「仕事の問題」(18.6%)など。メンタルヘルスを低下させる要因として一番多かったのが「コミュニケーションの希薄化」(49.9%)だった。 最も多い年齢層は30代で、2003年に行った同様の調査時の40代から移行していた。このことについて同研究所では、「人員削減で中高年が減り、責任が重くなってきたためではないか」と分析している。 また、こんな報告もある。独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の職業意識調査(*2)によると、役職別・ストレスを感じる割合でトップだったのは課長(69.3%)。次いで係長(68.2%)、部長(61.7%)、平社員(57.7%)と続き、役員(54.9%)が最低だった。社員に比べると身分が安定し、報酬も高いという役員の立場を考えれば、まあ、納得の結果といえるかも。サラリーマンはツライよ…そんなタメイキが聞こえてきそうだ。 多くの日本人が「不安遺伝子」を持っている!? ストレスを抑制する脳内物質のひとつに「セロトニン」があり、セロトニンの運搬役を「セロトニントランスポーター」という。このトランスポーターにはいくつかの遺伝子型があり、そのタイプによってセロトニンの運搬量とストレスの受け止め方が違ってくるという説がある。短い遺伝子を持っていると、セロトニンの再取り込み機能が低く、不安傾向との相関関係があるのではないかというのだ。昔から「日本人はプレッシャーに弱い」などといわれてきたが、日本人の多くはストレスに弱い、いわば“不安遺伝子”タイプなのだとか。それに対してラテン系の人種にはストレスに強い“楽天遺伝子”タイプを持っている人が多いそう。 もちろんこれはひとつの仮説であり、ストレスは考え方や、日々の習慣などから上手にかわすことができるようになるもの。どうか、ご安心を!
平常心を保つには…? 私たちは日々何かを考え、怒ったり、笑ったり、喜んだり、悲しんだり、さまざまな感情を味わっている。このとき、脳内では神経細胞のネットワークがフル回転し、無数の信号のやりとりが行われている。信号の受け渡しには「神経伝達物質」と呼ばれる生体内物質が使われているが、信号が伝わる速さは秒速50センチメートルから120メートル、時速にすると423キロメートルともいわれ、タイムラグを感じることはない。 神経伝達物質は百種類以上あるともいわれるが、現在はっきりと確認されているのは25種類程度。代表的なものに、アセチルコリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニン、GABAがあり、これらの脳内伝達物質が絶妙のバランスで保たれているとき、私たちは「平常心」でいることができる。 ●アセチルコリン…目覚め、学習、睡眠に関わる ●ノルアドレナリン…目覚め、集中力、積極性、痛みの喪失に関わる ●ドーパミン…快感&陶酔に関わる ●セロトニン…満足、満腹、眠気に関わる ●GABA…脳の興奮を鎮める GABAは脳の“なだめ役 神経伝達物質のうち、ノルアドレナリンやドーパミンなど、脳を興奮させるアクセルとしてのはたらきをもつものと、GABAのように脳の興奮を抑えるブレーキとしてはたらいているものがある。 アクセルチームが優勢になり過ぎるとストレスを招き、心臓がバクバクしたり、感覚が冴えたり、ささいなことで過剰に反応してしまったりすることもある。このように「フンガー!」と興奮した脳を「ヨシヨシ」となだめてやるのがブレーキチームの役割で、GABAはその代表選手ともいえる存在だ。 GABAのリラックス作用について、こんなデータがある。 水、テアニン、GABAを摂取したときの脳波を調べ、リラックスしているときに出るa波の出現量を比較すると、テアニンとGABAで優位に増えていることがわかった。さらに各成分でb波の出現量とa波の出現量を比較してリラックス効果を調べたところ、GABAで最も高まっていることがわかった。
GABAで吊橋の恐怖が和らいだ!? GABAの正式名称はガンマ‐アミノ酪酸といい、玄米やキムチなどの発酵食品に含まれている成分だ。血圧コントロールや、肝臓や腎臓などのはたらきに関わることがわかっている。 さらに、GABAはストレス緩和とも関係があるとみられているため、最近ふたたび注目を集めている。 2002年2月、静岡県立大などがこんな実験を行っている。風の強い日に「高所恐怖症」を自認する20~50代の男女8人に、歩行者用の吊橋としては日本最長という奈良県十津川村の「谷瀬のつり橋」を渡ってもらい、唾液に含まれる免疫物質の分泌量を測定した。これは、人がストレスを感じると免疫機能が下がるという生理現象を利用したもので、そのまま渡った場合は唾液に含まれる免疫物質の分泌量が3~4割低下したが、1時間前にGABAの粉末1gを飲んで渡った場合には最大でも1割しか下がらなかったという。このことからGABAにあるストレス緩和作用がつきとめられ、研究結果は日本農芸化学会や、一部新聞でも発表された。 GABA+カフェイン=脳リフレッシュ! お疲れモードの頭をシャキッとさせる飲み物といえば、コーヒーだろう。適度なカフェインには脳を覚醒させ、リフレッシュさせる作用がある。 さて、このカフェインに先ほどのGABAを組み合わせると、ストレスにどう働きかけるのだろうか。 静岡県立大学などが健康な男性被験者19名に試験飲料を摂取させ、精神負荷を与え、試験飲料摂取前、摂取30分後、摂取60分後に唾液を採取し、唾液中のストレス指標(CgA)を測定するという実験をおこなった。 その結果、水摂取に対してGABA無配合コーヒー摂取は唾液中CgA量を低下させ、コーヒーそのものにもリラックス効果があることが示唆された。さらにGABAを配合する事により、GABA無配合コーヒー摂取に比べ、30分後の唾液中CgA量が有意に低下し、GABA配合コーヒーにはより高いリラックス効果がある事が示された。 【GABA+コーヒー】は、最強のストレス緩和コンビといえそう。仕事中のブレイクタイムに上手に利用したい。
睡眠が確保できないことによる心身への影響、ストレスによって睡眠を阻害するホルモン、生活&睡眠リズムを整えるためのポイントについて紹介。 目次 最近、生活リズムが乱れていませんか? ストレスがあると眠れなくなる理由 生活&睡眠リズムを整えるための5つのポイント 眠れない人へ…「バレリアン」と「ギャバ」ってなに? 最近、生活リズムが乱れていませんか? 睡眠を十分にとらないでいると、脳の機能が低下してちょっとしたストレスにも弱くなり、また集中力がなくなって日常生活にも支障が生じてしまう。そもそも睡眠は1日フル回転で働いてくれた脳を、ゆっくり休ませるために必要な行為。したがって、睡眠時間を極端に少なくすると脳のはたらきが乱れてしまい、自律神経やホルモンのバランスも乱れ、心身に不調を生じさせてしまう。 ストレスがあると眠れなくなる理由 ストレスを感じていると、いつもより眠気を感じるのに、いざ眠ると「眠りが浅い」「熟睡感が得られない」とお悩みの方も多いだろう。これは、ストレスを受けたときに分泌される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)というホルモンのせい。このホルモンには外敵から身を守るために睡眠を抑制して体を緊張させるはたらきがあるため、分泌されると深い睡眠を得ることができない。しかも矛盾したことに、このホルモンの“分解”は睡眠中に行われるため、強いストレスが続いていると分解に要する時間を確保するために“眠りたい欲求”が高まってしまう。そのため、ストレスがかかると眠気はあっても熟睡できないという、すっきりしない状況に陥ってしまうのだ。したがって、この状況を克服して深い睡眠を得るためには、ストレスをうまく解消し、ACTHの過剰な分泌を防ぐことが必要なのである。 生活&睡眠リズムを整えるための5つのポイント 休日も平日と同じ起床・就寝時間を守ろう 毎朝の出勤があるため平日には睡眠時間を守ることができても、休日はどうだろう?休日に生活リズムの乱れがあると、休日明けの出勤日にすっきり目覚めることができず、疲れを招くこともある。 満腹の状態で寝るのは避けよう 朝食や昼食は毎日だいたい同じ時間にとっていても、残業の影響などで夕食の時間がまちまちになってしまうことが多くないだろうか?しかし、深夜に急いで夕食をかき込み、満腹のまま寝てしまうと、質のよい睡眠を得られなくなってしまう。 寝る前のカフェイン、アルコールは控えて 食事の後のコーヒーや紅茶などのカフェイン類は格別、という方も多いだろう。しかし、カフェインは覚醒作用が強いため、よく眠れない人は夜遅くの飲用は控えたほうが無難。また、アルコールを「寝酒」として利用している方も多いだろうが、アルコールを飲むと寝つきはよくなるが、睡眠のリズムに狂いを生じさせるために熟睡できず、翌日疲れやすくなってしまう。 太陽の光で体を目覚めさせよう 朝日を全身に浴びて眠気を解消する電気を消して部屋を真っ暗にすると眠気が訪れるのは、睡眠ホルモンともいわれる「メラトニン」が分泌されるため。このホルモンの分泌は光と関係しているため、暗くなると分泌が高まるが、逆に明るくなると分泌が抑えられる。したがって、朝すっきり目覚めるためにはまずカーテンを開け、太陽の光を全身に浴びて眠気を解消することが大切なのだ。 朝食はかならずとろう 朝食は起床後なかなかエンジンのかからない体にエネルギーを与え、体を活動モードに切り替えるために必要なものである。とくに、朝にはすぐにエネルギーに変換される栄養をしっかりとることが大事。パンやご飯などの炭水化物と、糖分をたっぷり含む果物はエネルギー補給のためにも必ずとろう。ただし、食べ過ぎると体のエネルギーが消化にばかり集中してしまい、脳がうまくはたらかなくなるので、ほどほどを心がけて。 眠れない人へ…「バレリアン」と「ギャバ」ってなに? ヨーロッパでは、眠れない人は「バレリアン」というハーブを古くから利用していた。バレリアンは和名では「西洋カノコ草」とも呼ばれるヨーロッパ~西アジア原産のオミナエシ科の植物である。バレリアンがよく利用されていたのは、GABA(ギャバ)のはたらきと関係するため。ギャバといえば、最近は発芽玄米などでよく名前を聞くようになったが、ギャバ不足も気にしてみてはどうだろうか。 発芽玄米の登場で注目されるGABA(ギャバ) 公開日:2004年5月31日
同じ状況にあっても、ストレスの感じ方は人によって異なる。では、ストレスをためやすい人は、心や行動にどんな特徴があるのだろうか?ストレスをためがちな人にみられる5つのパターンをあげてみたので、自分の心や行動を振り返ってみよう。 目次 仕事や家事、育児などに追われ、なかなかゆっくり休めない 悩みを家族や友人に話さず、内にためがちである 几帳面で融通がきかないとよく言われる 責任感が強く、何事も徹底してやらないと気がすまない 自分なりの気分転換法をもっていない 緊張を感じたら、腹式呼吸でリラックス! 仕事や家事、育児などに追われ、なかなかゆっくり休めない 例: 残業続きで帰宅は毎日深夜、土日も仕事が頭から離れない 夜遅くまで家事や育児で手一杯で自分の時間をまったくもてない 息抜きの時間がなく、フル回転で仕事や家事、育児をこなしていると、いずれ心身が疲弊し、いままでどおりにこなせなくなってしまう。これは、休みなく機械を回しつづけていると、いずれモーターが焼きつき、動きがストップしてしまうのと同じ。 1日ですべてのことをこなそうとせず、周りの人の協力も得ながらマイペースで取り組んでいこう。 悩みを家族や友人に話さず、内にためがちである 例: 悩みを話すのは弱い人間と思っている 人に頼ったら負けと思っている ついつい自分に鎧を着せ、大切な人に心を開く機会を失ってはいないだろうか?悩みを自分の中だけにためこんでいると、ストレスがますますつのってしまうことになる。 話すだけでも気持ちが楽になったり、大きな悩みが小さなことに思えてくることもある。自分が信用できる人に悩みを打ち明けることで、心の中のもやもやを早めに解消していこう。 几帳面で融通がきかないとよく言われる 例: 何気ない会話のなかで、「~しなくちゃならない」「~すべきだよ」という言葉を使う とても几帳面で仕事や約束事もきっちりこなす反面、一定の秩序が保たれていないと不安になってしまう。そのため、臨機応変に物事を捉えることができず、ストレスをためこみやすくなりがち。 ひとつの思考パターンにがんじがらめになっていると、柔軟な考えが浮かばず、自分を追い込むことにもなりかねない。ひとつのことに執着して出口が見えなくなっているときには、ほかの面から捉えることができないか、さまざまな方向から考えてみるよう心がけてみよう。 責任感が強く、何事も徹底してやらないと気がすまない 例: 仕事熱心で手抜きが許せない 細かいことまで徹底してやらないと気がすまない 仕事が生きがいで、どんなに残業しても苦にならないため、休むことなく目の前の仕事に取り組むことができるが、ちょっとしたミスなどをきっかけとして一気にやる気をなくしてしまうこともある。また、責任感が強いために失敗したことが許せず、いつまでたってもその失敗が心に残り、自分を責めてしまうこともある。 真面目で熱心、責任感が強いという性格は長所である。ただ、ストレスをためこみやすい傾向にあるので、熱心に取り組んでいるときこそ、冷静に自分を見つめる目をもつことも必要である。 自分なりの気分転換法をもっていない 例: 気晴らしや趣味がない 休日をどう楽しんだらいいかわからない 自分なりの気分転換法をもっていないと、人生がつまらなく思えたり、生きることに意味を見出せなくなることもある。また、仕事と私生活の境界があいまいで、休日にも仕事のことばかり考えていると、ストレスはなかなか解消されず、疲れがたまりやすくなってしまう。 「気分転換法」というと、何か特別な趣味を見つけなければならないのだろうかと思う人も多い。しかし実は、ちょっとしたことでも十分に気分は転換できる。例えば、月に1回でも友人と会っておいしく食事をしたり、鉢植えを買ってきて窓辺やベランダに並べてみてはどうだろう?このように、特別な準備をしなくても、ちょっとした工夫で気分をリフレッシュすることは可能なのだ。自分なりの楽しみ方を見つけて、ストレスをためない生活を心がけていこう。 緊張を感じたら、腹式呼吸でリラックス! 心身にストレスがかかると緊張状態が続き、呼吸が浅くなってしまう。呼吸が浅いと、全身に酸素が行き渡らなくなり、リラックスしたくても深いリラクセーションが得られなくなってしまう。そこで、緊張を感じたら、体の中心から深い呼吸をする「腹式呼吸」を実践してみよう。この呼吸法のいいところは、場所を選ばずどんなときでもできること。方法はかんたん。いすにゆったり腰を掛け、おなかをふくらませながら鼻からたっぷり息を吸い込んだら、おなかをへこませて口からゆっくり息を吐き出す。これを何度かくり返すと、緊張がほぐれてリラックスできるのだ。 呼吸法~鼻とお腹で、ゆったり深~く 公開日:2004年5月31日
男性の7割、女性の8割がストレスを感じている現代。ストレスを放っておくと、神経系、内分泌系、免疫系のはたらきに影響し、健康にも影響するという内容について紹介。 目次 7割の男性、8割の女性がストレスを感じている ストレスがあると健康に影響する理由 ストレス反応は受け手の状態によって変わる 7割の男性、8割の女性がストレスを感じている 環境やライフサイクルの変化、仕事・家庭の問題や複雑な人間関係など、私たちの一生はストレスの要因であふれている。厚生労働省の調査によると、ふだんの生活でストレスを感じている人は、なんと男性で76.9%、女性で84.2%にものぼっているのだ(平成14年国民栄養調査結果による)。 科学技術の普及やライフスタイルの変化により、たしかに現代の生活は便利で快適になった。しかしその反面、新しい知識に対応するために精神的・時間的な負担が増えたり、人間関係が希薄になったことにより、ひとりで悩みを抱えてしまう人も増えている。また、不安定な社会や経済も“将来への不安”という新たなストレスの種を撒き散らし、私たちの生活を脅かす要因となっているのだ。 ストレスがあると健康に影響する理由 ところで、ストレスが続いて血圧が上がったり、風邪をひきやすくなったり、女性の場合は月経が止まってしまった、という経験をお持ちの方も多いのではないだろうか。このように、ストレスは心ばかりでなく体調の悪化にも大きく影響する。 そもそも人間の体は、神経系、内分泌系、免疫系という3つのシステムが互いに連携を取り合うことによって健康が保たれている。しかし、外部からストレスという刺激が加わると、神経系のうちの自律神経は各器官にストレス刺激に対応した反応をはたらきかけ、内分泌系は内分泌腺にはたらきかけてホルモンを血中に分泌させて体のバランスを保とうとする。例えば、ストレスがかかると心拍数や血圧が上がるのは、身に迫る危険に対抗するために自律神経が調整した結果であり、また、月経周期に異常があらわれるのはストレスの影響に反応して、女性ホルモンの分泌に乱れが生じたためなのである。 さらに、免疫機能にも乱れが生じる。免疫系はウイルスや細菌をはじめとする異物の侵入から体を守るための防御機能を司るシステムであるため、このシステムが正常にはたらかないと、風邪や食中毒の感染症にかかりやすくなったり、アレルギーやがんなどの病気を引き起こすことにもなりかねない。 ストレス反応は受け手の状態によって変わる さてここまで見てきて、心身の不調を防ぐためにはストレスのない状態をつくることが必要なのでは?と思う方も多いだろう。しかし、人間が生きている以上、ストレスから完全に逃れることはできない。例えば、気温の寒暖差、入学、就職などのライフイベントなどの出来事もストレスの要因となるからだ。 では、生きている以上ストレスから逃れられないのであれば、その影響でほとんどの人が心身を病んでしまうだろうか?もちろん、現実にはそんなことはない。なぜなら、同じ状況でストレスを受けても、その影響を受けやすい人と受けにくい人がいるからである。それはストレスに対する対処の能力があるか否かの違いからくる。生きている以上避けられないのがストレスとのお付き合い。そのため、ストレスに心身が振り回されないよう、毎日の生活を工夫していくことが必要になるのだ。 公開日:2004年5月31日
ストレスそのものは悪いものではありません。要は、そのストレスに対する適応力があるかどうかの問題です。さて、あなたや周りの人は、ストレスに強いでしょうか? 目次 ストレスに負けやすい4つのタイプ 「ストレスたまりやすい度」を行動面でチェック! ストレスに負けやすい4つのタイプ ストレスに対する適応力が欠けやすい人は、おもに4つのタイプに分けられるようです。たまりにたまると、極度のストレス状態や病気につながる危険性も高いので、気をつけましょう。 1. まじめで几帳面な人 完全主義者で責任感も強く、努力家です。人から頼まれたら断れず、全部自分で背負い込みがち。でも、適当なところで妥協するなんて死んでもできません。しかも、少しでもうまくいかないと落ち込んでしまいます。ストレスに負けやすい人の中で、最も多いタイプでしょう。 2. がんこで厳格な人 何事においても、他人の失敗が許せません。人がミスをするとすぐ怒り、それがストレッサーとなってストレス状態を引き起こします。「キミはこんな計算もできないのか。ダメだね」「私の言うとおりにやればいいんだ」などと頭ごなしに言う人は、このタイプでしょう。 3. 内向的でおとなしい人 イヤなことでもはっきり断れない…。仕事が終わってまっすぐ家に帰りたいときでも、飲みに誘われると断れず、お腹一杯でも残しては悪いからと全部食べてしまう…。そして、あとから、くよくよ悩んだり自己嫌悪に陥ったり…。ストレスがたまらないほうがおかしいでしょう。 4. 取り越し苦労の多い人 あれは大丈夫かな、これはうまくいくかな、などとついあれこれ心配してしまいます。結局「なんだ、心配することなかったんだ」と取り越し苦労だったことがわかっても、またすぐあれこれ気になり始め、心の休まる暇がありません。こういう人は、常に不安というストレッサーにおびやかされているようです。 「ストレスたまりやすい度」を行動面でチェック! 以下のチェックは、アメリカで3,000人以上を対象に行った調査の結果によるものです。こういうタイプの人は、動脈硬化が主な原因である心臓病にかかる比率が、反対のタイプの人に比べて2~3倍であることがわかったといいます(動脈硬化はストレスが原因となって起こることが多い)。ストレスに負けないためには、こうした行動をなるべく減らすのが秘訣かもしれません。 ストレスがたまりやすい性格・行動パターン 話すとき、特別に強調する必要がなくても、ある言葉にアクセントをおいて強調する たえず動き回り、食事のスピードも速い 物事がなかなか進まないと、じれったくなる 「食べながら仕事」「運転しながらひげそり」など、2つ以上のことを並行してやることが多い 会話のとき、自分が興味ある話題が出ると、いつまでもそれに固執して話しつづける 何もしていないのに罪悪感を感じることが多い 日常的な事柄には興味を示さない モノを「所有する」ことに価値をおく 計画を立てるとき、より少ない時間の中により多くのことを盛り込もうとする 自分と同じような行動パターンの傾向をもつ人(この13の項目に当てはまるタイプの人)に対しては、挑戦的な気持ちになる 特徴的な仕事や神経質なクセがみられる 物事がうまくいくと、他人よりも自分の力のおかげだと思う 自分や他人の行動力を、質より量で評価する
どのような仕組みによって、私たちはストレス状態におちいってしまうのでしょうか。そして、それを放置すると、どんな事態が待ちうけているのでしょうか。 目次 なぜストレスが心や体に影響をおよぼす? 恐竜絶滅の原因はストレスだった!? ストレスが原因で起こりやすい病気 なぜストレスが心や体に影響をおよぼす? 自律神経という言葉を、聞いたことがあるでしょう。自分の意志とは無関係に、心臓や胃腸、血管、内分泌腺、汗腺などの内臓を支配し、その機能を調節しているものです。ストレッサーに対しては、この自律神経が仲介役となって、体内で「防衛体制」が整えられています。ところが、ストレッサーによる刺激が度を超すと、その「防衛体制」は破壊されてしまい、心拍の増加、血圧の上昇、筋肉の緊張などの変化があらわれます。 そして、この状態がそのままさらに続くと、疲労がたまり、病気にもかかりやすくなるのです。 恐竜絶滅の原因はストレスだった!? 人類が誕生するはるか以前、地球の王者は恐竜でした。しかし、その恐竜は、約7000万年前に絶滅してしまいました。その絶滅の原因が「ストレス」である、とする有力な説があります。つまり、こういうことです。 彗星の接近や火山活動などの天変地異により、気温は急激に変化しました。同時に、周りには、食べたこともないような新種の植物が生い茂り、哺乳類という新しいライバルが出現します。こうしたいろいろなストレスに見舞われた結果、恐竜は健康のバランスをくずしてしまいました。そして、殻が異常なほど薄い卵ばかりを生むようになって、子孫が育たなくなってしまった、というのです。 ストレスは、病気を引き起こすだけでなく、生物の種を絶滅させてしまうほどの威力を秘めています。そして、現代社会に生きる人間は、恐竜と同じような環境の変化に立たされています。たかがストレス、とあなどってはいけません。 ストレスが原因で起こりやすい病気 おもな体の病気・心の病気をざっと紹介しましょう。これらを治すには、原因となっているストレスを取り除くことが必要不可欠です。 ●神経性胃炎 イライラや精神的緊張が続くと、胃が痛んだり、ムカムカすることが多くなります。もともと胃のはたらきが悪い人に起こりやすい症状ですが、胃が丈夫な人でも、仕事が忙しくて食事が不規則、タバコを吸って夜中まで酒を飲んでいる、そして寝不足…という人は、要注意です。 ●胃・十二指腸潰瘍 原因の40~60%が、精神的な要因に関係しているといわれています。受験生・管理職・締めきりに追われる新聞記者などによく見られます。たえず緊張して周囲に気を使いながら、一生懸命仕事をこなそうとするがんばり屋さんは要注意です。 ●過敏性大腸炎 症状は、長期にわたって下痢と便秘を繰り返す、腹痛が続くなど。朝、会社や学校に行く時間になるとお腹が痛くなる、試験や面接の前に急に便意をもよおす、というのもこの症状のひとつです。 過敏性腸症候群ってどんな病気? ●自律神経失調症 検査しても異常は認められないのに、めまい・立ちくらみ・激しい動悸や胸痛・のぼせ・冷えなど、原因がわからない症状が続きます。 ●虚血性心臓病 心臓をとりまく冠状動脈(ストレスの影響を受けやすい)に、動脈硬化などの病気が起こると、心臓の筋肉に循環している血流が減少したり途絶えたりすることによって起こるものです。狭心症、心筋梗塞などがこれにあたります。最近は、働き盛りの30代40代にも心筋梗塞が増えているといいます。几帳面で仕事熱心な人ほど、注意が必要です。 ●心臓神経症 虚血性心臓病のような症状があるのに、心臓そのものは健康で異常が見られない、という場合です。「自分は心臓病では…」という不安感から起こったり、「病気になればつらい仕事からも逃げられる」といった具合に、無意識のうちに病気によって現実逃避しようとしているケースもあるようです。 ●円形脱毛症 朝、鏡を見たら、10円玉のような大きなハゲが…。円形脱毛症にストレスが大きく関係していることは有名です。痛みはありませんが、美容上、とくに女性はショックが大きいようです。重症になると、頭髪全部が抜け落ちたり、体毛まで失われる場合もあります。 ある日突然、円形脱毛症になったら ●ノイローゼ 漠然とした危機感や死を予想して、急に動悸・冷や汗・ふるえなどの症状が起こる 「不安神経症」、悩みや葛藤があったとき、欲求や願いが満たされない時に無意識に病気に逃げ込んでしまう「ヒステリー」、生き生きした人間らしい感情がわいてこない「難人症」などがあります。 ●統合失調症 楽観的・攻撃的な「そう」状態と、そのまったく逆の「うつ」状態という2つの波が反復して押し寄せる病気です。 いない人の声が聞こえる~統合失調症という病気 ●精神分裂病 幻覚・妄想があったり、突然暴れ出したと思うと一点を見つめて動かなくなったり…。ここまでくると、精神科などでの専門的な治療が必要です。
ストレスは、とかく悪者として扱われがちですが、ストレスはなくても困るようです。「人生のスパイス」と表現されることさえあります。そもそもストレスって、一体何なのでしょうか。 目次 「ストレスがまったくない人」は存在する? 「ストレス」とは、一体何? ストレスゼロだと人間はどうなるか? 「ストレスがまったくない人」は存在する? 現代社会はストレス社会といわれます。調査によれば、全体の55%の人が「精神的疲労やストレスを感じている」とも。とくに多いのが20代後半の女性で、70%超だそうです。 では、残りの人はストレスがまったくないのかというと、そういうわけでもありません。あまりにも忙しすぎて、自分がくたびれていることに、気づいていないだけかもしれないのです。「あーストレスたまる」「肩こった」と弱音を吐いてばかりいる人のほうが、適当に休みをとったりペースダウンしたりするので、あまり大きな病気にはならないかもしれません。むしろ「ストレスなんてたまっていないよ。元気元気!」という人のほうが、頑張りすぎて、ある日突然大きな病気としてあらわれる危険性を秘めています。 自分のストレスに早く気づいて、それを少しでも解消することが大切です。 「ストレス」とは、一体何? ストレスとは、医学的にいうと「なんらかの刺激が体に加えられた結果、体が示したゆがみや変調」のこと。そして、その原因となる刺激のことを「ストレッサー」といいます。 ゴムボールを指で押すと、ボールはゆがんだ状態になります。これが「ストレス」です。そして、押している指が「ストレッサー」ということになります。指を離せば、ボールは元の丸い形に戻ります。しかし、いつもいつも抑えつけていたら、ゆがんだままとなります。体も同じことです。 ストレッサーは、大きくは4つに分けられます。 ●物理的ストレッサー 高温や低音による刺激、放射線や騒音による刺激など。 ●化学的ストレッサー 酸素の欠乏・過剰、薬害、栄養不足など。 ●生物的ストレッサー 病原菌の侵入など。 ●精神的ストレッサー 人間関係トラブル、精神的な苦痛、怒り・不安・憎しみ・緊張など。 このうち、「ストレスがたまっている」と感じる人を悩ませている原因のほとんどは、最後の精神的ストレッサーです。しかも、これは複雑で、解決も困難です。 ストレスゼロだと人間はどうなるか? アメリカの心理学者が、ある面白い実験をおこないました。 ストレス(刺激)がまったくない部屋で過ごすと、人間はどうなるかを調べたのです。結果は、以下の通りでした。 ●体温調節機能の低下 気温の変化に合わせ、汗を出したり鳥肌を立てたりして体温を調節するはたらきが、にぶくなります。 ●暗示にかかりやすくなる 何か指示されると、間違った指示であろうとそれに従い、「もう立っていられない」と言われると、言葉通りに足の力が抜けてしまいます。 ●幻覚・妄想 刺激(ストレス)から隔離してマインドコントロールし、社会的に問題になった例も多いようです。 つまり、体と心のバランスを保つためには、適度なストレスが必要です。
学生時代とは大きく生活環境が変わった新入社員。この時期は、抑うつ状態に陥りやすいそうです。あなたの周りの新入社員は大丈夫ですか?暖かく厳しく見守っていきましょう。 目次 現実に適応できない 無気力になるかと思いきや、攻撃的な性格に!? 「六月病」と呼ばれる状態にならないためには 現実に適応できない 新入社員研修が終わり、職場の配属となって1ヵ月余りが経った6月頃、朝起きるたびに吐き気や腹痛に襲われ、遅刻や欠勤を繰り返す…。そういった症状が、希望に燃えて新生活を始めたはずの新社会人に現れるのが、五月病ならぬ、いわゆる「六月病」です。六月病も五月病と同様の俗称であり、医学的に認められた病名ではありません。その正体は、生活が急変したことによるストレスが原因の適応障害だと考えられています。 主な症状として次のようなものがあります。 ●ノイローゼ(特にうつ状態)、不眠、不安、パニックなどの神経症 ●胃痛、食欲不振、肩凝り、頭痛、めまい、吐き気などの心身症 無気力になるかと思いきや、攻撃的な性格に!? 六月病と聞くと、うつ状態や無気力、不安感、焦燥感といった、どちらかと言えば、心身ともに弱っている印象を受けるかもしれません。しかし、適応障害であれば、乗り物の無謀な運転やケンカ、物を破壊する行為など、むしろ言動が激しくなるという一面もあります。 症状を抑えるには、ストレスの元となっているものから距離をとることが有効となります。場合によっては、薬物療法や心理療法などが必要となることもあります。 「六月病」と呼ばれる状態にならないためには 俗に「六月病」と呼ばれる状態になるのを防ぐために大切なのは、現実をあるがままに見つめ、明るく素直に順応することです。新しい環境に早く慣れるように努力し、失敗をしながら仕事を覚えるくらいの楽な気持ちで毎日を過ごすようにすれば、ストレスも少なくてすむでしょう。そのためには、経験豊かな上司、同僚の温かくも厳しい目が必要となります。 ■関連記事 うつ病をFacebookから診断できる? 西川伸一先生ブログ・論文ウォッチから 疲れやストレスを感じたら体内時計をリセット!うつ病学会が自己管理のコツを紹介 うつ病に良い栄養は葉酸や鉄分 うつ病は過敏性腸症候群や善玉菌が関係あり うつ病、統合失調症など精神疾患が生活習慣改善により予防できるケースも
カテコラミンの補助作用を示すコルチゾール ストレス反応におけるコルチゾールの作用は、血圧上昇、血糖上昇、心収縮力の上昇、心拍出量の上昇などがあり、これらはカテコラミン補助作用ともいえるものです。 コルチゾールの分泌はカテコラミンの刺激でさらに高まるという、正のフィードバックの関係もあり、急性のストレス反応時にはその相互作用で一気にemergency reactionが燃え上がるのです。 複雑なフィードバックの網の中にあるコルチゾール ところがその一方で、コルチゾールは間接的に交感神経を鎮めてカテコラミンの暴走を抑えようとする負のフィードバック機構でもあるのです。 また、一般にコルチゾールは免疫力を低下させるのですが、反対に感染ストレスなどで免疫反応が活性化するとコルチゾールの分泌が刺激されるという、免疫との相互作用があることも分かっています。 慢性ストレスとコルチゾール このようにコルチゾールは、ストレッサーの刺激によって動き始める幾重ものフィードバックの中で、促進と抑制の影響を受けたり与えたりしています。これが、精神、免疫、内分泌への複雑な情報ネットワークに影響して、ストレス反応を多様なものにします。 従って、ストレス刺激が慢性化した場合は、コルチゾールの慢性的な影響がストレス反応に大きく反映するようになるのです。
あなたの中にある、2つの刺激伝達経路 ストレッサーの刺激は、まず大脳皮質で知覚され、視床下部に伝えられた後、次の2つの経路に分かれます。 大脳皮質-視床下部-交感神経-副腎髄質→カテコラミン分泌 大脳皮質-視床下部-下垂体-副腎皮質→コルチゾール分泌 この、カテコラミンとコルチゾールが、さまざまなストレス反応のきっかけとなる重要な物質なのです。 カテコラミンは緊急のストレス反応の主役 カテコラミンはアドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンといった物質の総称で副腎髄質や交感神経、脳細胞から分泌されることが知られています。交感神経や副腎髄質から分泌されるカテコラミンは、このうちのアドレナリンとノルアドレナリンです。 これらは、胸の高鳴りや血圧上昇、発汗、血糖上昇、覚せい、血液凝固系の高進などの変化をもたらします。 心臓や脳、筋肉への酸素やエネルギー供給を増加させたり、けがをした場合に出血を最小限にとどめるために適した変化で、これはもともとは敵や獲物に出会った瞬間にすばやく戦闘(もしくは逃避)態勢をとるために備わっている急性の反応(emergency reaction)なのです。カテコラミンは、このために闘争ホルモンとも呼ばれます。
ストレス耐性は、人間性の総合評価 ストレス耐性を決定する諸要素(情動、認知、社会的支持、対処行動 )の特徴を詳しく調べれば、ストレス耐性を知ることができるわけです。 これらの要素を検討するためには、厳密には性格、育った環境、親との関係、教育レベル、対人関係や生活環境、職種などを調べなくてはなりませんが、これは複雑な心理テストや膨大な質問項目による調査を必要とします。これでは、あまりに実用的ではありません。 そこで、簡便なストレス耐性チェックリストが色々考案されています。 あなたのストレス耐性度は? 表1はその一つで、冷静さ、陽気さ、 積極性といった性格から、人とのつきあい方や物事の考え方などを20項目でチェックできるようになっています。 このほかに、表2のような生活健康調査表で、いらだち度、対処行動から行動、心理、身体にどれくらいストレス反応が表れているかを調べる方法などがあります。 表1 ストレス耐性度チェック 各質問であてはまるレベルを選び、20問の数値を合計してください。 めったにない たまに しばしば いつも 1 冷静な判断ができる 1 2 3 4 2 陽気である 1 2 3 4 3 自分の考えを表現する 1 2 3 4 4 喜びにあふれている 1 2 3 4 5 他人の喜びを重視する 4 3 2 1 6 ポジティブシンキングをする 1 2 3 4 7 他人をねたむ 4 3 2 1 8 行動的だ 1 2 3 4 9 他人を非難する 4 3 2 1 10 他人のいいところを見つける 1 2 3 4 11 柔軟性がある 1 2 3 4 12 手紙にすぐ返事を書く 1 2 3 4 13 気さくだ 1 2 3 4 14 真実に立ち向かう 1 2 3 4 15 思慮深い 1 2 3 4 16 ものごとに感謝する 1 2 3 4 17 多くの友達がいる 1 2 3 4 18 家庭不和 4 3 2 1 19 仕事がきつい 4 3 2 1 20 趣味を持っている 1 2 3 4 40点以下:ストレス耐性が低い 50点以上:ストレス耐性が高い (桂 1988) 表2 生活健康調査票 1) ライフイベント尺度 大きな生活上の変化 現代のストレス度 現在感じているストレス度 いらだち事尺度 日常感じているいらだち事 2) ストレス対処行動 ストレスがかかった時の対処行動 3) 社会的支持 ソーシャルサポートとなる対人関係 4) 行動反応 食行動、生活行動様式 心理反応 心理的症状 身体反応 身体的症状 出典:「心身医」1996年8月
「心臓病でいつか死ぬのでは」と思っていませんか 身近に心臓疾患で急死した人がいたり、心臓病の症状に詳しかったり、健康診断などで心電図に関して再検査になったり、といった条件が重なる場合があります。 人によっては自分が心臓疾患だと無意識に思い込み、動き・息切れや胸の痛みなどの発作を起こしてしまうことがあります。 心臓そのものには異常がないにもかかわらず、心臓に関連した症状を訴えるこのような症状を、心臓神経症といいます。 心臓は大切な臓器ですから、わずかなことでも心配になります。その不安が幾つかの条件で増幅された結果、このような症状が起きてくるのです。 神経症のあれこれ 心臓神経症に限らず、神経性○○病といわれるものは同じような原因で起きていると考えられます。 そのような症状になる人の多くは、自分の体の変調に過敏になりやすい性格傾向があるといわれます。 その性格が、身体への不安ストレスを増幅しがちになるのですから、このような症状に悩む人は、その不安が新たなストレスになって悪循環が深まってしまわないうちに、心理面の相談にも乗ってくれる医師に受診することが望まれます。
リビドーの低下を嘆く前に 慢性ストレスが及ぼす性的な影響は少なくありません。 ストレスにさらされると女性では無月経、男性ではリビドーの低下やインポテンツなどの症状が起こりやすくなります。 これは卵巣や精巣といった性せんの機能がストレス反応で障害されるためなのです。性的な能力の低下を年齢的な運命とあきらめる前に、ストレスの影響がないか見直すべきかもしれません。 男らしさ、女らしさが消える ストレス反応の中で視床下部-下垂体系の反応は、副腎皮質からコルチゾールの分泌を促しますが、これが卵巣や精巣に直接作用して、女性ならエストロゲン、プロゲステロン、男性ならテストステロンといった性ホルモンの分泌を抑えます。 また下垂体からの黄体形成ホルモンや卵胞刺激ホルモン分泌が低下するために卵胞、精子の形成、発育が低下することも考えられます。 これは、男女の性徴を際立たせる機能全般が低下することを意味します。現代の少子化現象や男女のユニセックス化の背景には、現代社会の過剰なストレスによる男女の性機能の低下が関与している可能性があるのです。
白衣高血圧といわれたことがありますか 普段の血圧がほぼ正常なのに、医者の前で測る時だけ血圧が高くなる人がいます。 診察室の雰囲気や白衣を着た医師と話をすることで知らず知らずに緊張していて、そのために血圧が高くなってしまうのです。 このような人は本当の高血圧患者ではありませんが、ストレスによって血圧が上昇しやすいタイプで、遺伝的な体質や食生活などの生活スタイルの要素によっては高血圧の発症予備軍となりやすいのです。 緊張と高血圧の関係 血圧を上げるのは交感神経の興奮ですが、緊張しやすい人、周囲の刺激に敏感に反応しやすい人は交感神経もすぐに興奮します。 このような人がストレスの多い環境に長く暮らしていると、高血圧発症の可能性が高くなるのです。 外国の数十年にわたる調査では、試験前に緊張する人はそうでない人よりも高血圧の発症頻度が高い、という報告もあります。 同様のストレスを受けていても高血圧になる人とならない人がいるという差には、ストレスに対する反応性の違い、つまりストレス耐性も一つの重要な要素と考えられるのです。
最近、趣味・し好が変わったら 自覚されにくい慢性ストレスですが、生活を注意深く観察するとそのサインは色々な形で現れているものです。 感情の起伏が弱くなった、せっかちになった、いつも焦りを感じている、といった精神面の変化で現れることもありますし、お酒や喫煙の量が増えたり食欲不振や過食などの食行動の変化、さらには肩凝りや頭痛、下痢や便秘などの不定愁訴といった体の変調として現れることもあります。 今まで興味を持っていた遊びが面白く感じなくなったり、一つのことに過剰に熱中し、睡眠や食事まで犠牲にするようになるといった趣味の変化にも、慢性ストレスが関係していることがあります。 生活習慣病との関連 「生活習慣病」という言葉をしばしば耳にすると思います。これは厚生労働省の指導によって平成8年から成人病の新しい呼称として取り入れられたものです。 糖尿病などは、食事やし好品、睡眠状態、職場の環境、運動の習慣などを含めた生活スタイルによって発症が左右されることが明らかになっています。 このような生活スタイルは、意識、無意識にかかわらずストレスの存在でずいぶん左右されます。 ストレス関連疾患は、ストレスによる血圧や血管、糖代謝などへの直接の影響に加えて、ストレスによって変化した生活スタイルによって二次的に起こる場合もあるのです。
自由な視野で、周りを見ていますか 昇進すれば、たいていの人は喜びます。家族も喜んで、ささやかなお祝いの品が食卓を飾るかもしれません。しかし、本当にそういう反応はあなたの正直な気持でしょうか。 環境が突然変化した時、「今はこういう状況のはずだ」という意識が働いて、その鋳型に自分の認識や行動を当てはめてはいませんか? こういう認識のパターンをスキーマといいます。 現実を自分のスキーマに当てはめて認識することは、新しい環境に対してある程度のシミュレーションができていることになるので、瞬間的には適応が楽になります。 しかし、これでは自分の置かれた状況に正直に反応しようとする心の部分と認識との間に矛盾が起きて、それがストレス因子になる危険性があるのです。 過剰適応の日本人に多いパターン 日本人は、進学でも就職でも周囲の期待に応えて頑張る人が多いといわれます。 一見、自分自身の定めた目的に向かっているようで、実は自分でも気付かずに親や企業の意向を反映していることが少なくないのです。そのため、自分自身の現実に直面することがやや苦手で、よろいのように築き上げたスキーマで対応しようとしがちです。 ところが、変化に富む現代社会に柔軟に対応していくには、それでは無理があるのです。 昇進は喜ばしいこと、だからうれしいに違いない、というような決め付けをしていませんか?
ゆでガエルの怖さ カエルを熱いお湯に入れるとびっくりして飛び出しますが、水からゆっくり煮ていくと熱くなるのに気付かずに逃げるきっかけを失い、最後にはゆで死んでしまう、というたとえ話があります。 感覚は、少しずつ慣らしていくと、どんどんまひしていくことを表現したもので、ストレスに関してもこれは当てはまります。 仕事上の失敗や新たに生じた不満などは、はっきり自覚される急性ストレスです。自覚できない程度の軽い疲れや責任の重さなどは、長い時間をかけて静かにたまっていく慢性的なストレス反応です。 感情の起伏が乏しくなっていたら 不満や怒りを感じないから不快ストレスはない、という人がいます。その中には本当にストレス耐性が高く、ほとんどの刺激を快ストレスとして受け止めている人も確かにいます。 しかしその一方で、自覚されない慢性ストレスのために生き生きした感情の起伏が弱くなっている場合もあるのです。 最近あまり腹が立たない、そのかわりうれしいこともあまりない、というような、刺激に対して鈍感になっているような場合は要注意です。 まずは自分の中に慢性ストレスがたまりつつある、ということを自覚すること、それがストレス解消の第一歩となります。
ストレスはない、と回答したのは4割 ビジネスマンの6割は職場で何らかのストレスを感じている、といいます。 ということは、残る4割はストレスを感じていない、ということになります。この中には、自分の中に起きているストレス反応に気付いていない、という人もいると考えられます。 昇進や成功なども場合によってはストレスに ストレス反応はマイナスな事件から起こるものだ、という先入観があると、自分のため込んでいるストレスに気付くのが遅れる場合があります。 昇進や仕事上の成功・報償、私生活では結婚や入学など、一見プラスの事象でも環境の変化という点では新しい適応が求められているわけですから、不適応になって過剰なストレス反応を起こす可能性があるのです。 こういう場合では、まさかこんなうれしいことでストレスがたまるはずはない、という思いがストレスを認識するきっかけを失わせ、ストレス反応がうっ積しやすくなってしまうのです。
気分転換も適量が大切 ストレスのほとんどは仕事から来るもの、と思ってはいませんか? だから、ストレス解消のために気分転換が大切、というのは間違いではありません。 しかし、気分転換のやり方によっては、それもまたストレスになることがあります。 ストレッサーは自然の中にもある アウトドアというと健康的なイメージですが、野外にはストレッサーがたくさんあります。紫外線は細菌消毒に使われるほどの威力を持ち、細胞の遺伝子を傷つけ、皮膚の老化や発がんの誘因にもなります。 ウインタースポーツやマリンスポーツで時に感じる寒冷、また、高温多湿もストレスの元です。 もちろん、これらのスポーツや野外活動は心身のリフレッシュに大変効果のあるものです。紫外線を避ける工夫や、運動量や時間を適度に抑えるなどの注意を払ったうえで、ぜひ生活に取り入れてほしい気分転換です。
心臓・血管への影響 怖いのは、慢性的なストレスで心身の疲れがたまっている時に急性ストレスが追い打ちをかける場合です。 慢性ストレスが続くと、免疫力の低下や動脈硬化など、身体の老化現象が起こりやすくなります。 そこに急性ストレスが加わると、急激な血圧上昇や血液の凝固などの変化に身体が耐えきれず、急性心不全や心筋梗塞の発作が起きやすい状態になるのです。 人ごとではない悲劇 過労死は、「過重労働が誘因となって心臓死などを発症し、永久的労働不能や死亡に至った状態」と定義されます。 具体的な事例を見ると、過重労働という慢性的なストレス状態にある人が突発的な事故に出あった時に、死に至る発作を起こすことが多いのです。 例えば、常にノルマに追われて緊張が続いていた人が、ある日大切な書類を紛失したことに気付いた途端、心筋梗塞を起こした、また、時間外労働が数年続いていた人が、大きなプロジェクトを終わらせて、ほっとした途端に急性心不全で倒れた、というものなどです。 緊張の持続の後で急にほっとするのも、ある意味で急性のストレスになるので、休息の取り方にも気を付けなくてはなりません。
太陽のリズム、取り入れていますか? 私たちの体は、1日24時間の環境変化に合わせてホルモンの分泌量や免疫力、気分の調子まで変化します。これは太陽が昇って活動が始まり、太陽が沈んで休息するという自然の動きに適した変化です。 この変化のリズムが乱れると、ホルモンも精神状態も免疫も調子がおかしくなってきます。これは、生体にとって大きなストレスなのです。 特に睡眠と覚せいは、私たちの生活リズムのメトロノームのようなものです。睡眠時間がばらばらだったり睡眠不足が続くと、そのために体全体の規則正しいリズムが乱れてしまうのです。 血圧から心筋梗塞まで影響する睡眠不足 睡眠不足は生体リズムの乱れだけでなく、交感神経の過剰興奮などさまざまな面でストレス反応を引き起こす要素になります。 例えば、高血圧の症状が睡眠不足によって悪化するのも、不眠→交感神経の活性化が関係していると考えられています。 また、急性心筋梗塞で入院した人を調べた結果、睡眠不足が発症の引き金であることを示した調査結果もあります。太陽のリズムに逆らわない規則正しい生活で、十分な睡眠を取ることが不快ストレスをためないための大きなポイントなのです。
もし、極限の状況を経験したら 1995年(平成2年)1月の阪神・淡路大震災はまだ記憶に新しいものです。大勢の人が味わった衝撃と恐怖は、ストレスとしてその後の健康に微妙な影響を及ぼしています。 震災後、心筋梗塞患者の数が増えたことが、救援に当たった医師によってしばしば指摘されていますし、高血圧患者の状態が悪化した、という声も聞かれます。 このほかにも、ソ連・タシケントの大地震(1966年)、アメリカ・ワイオミングの大洪水(1972年)、オーストラリアの森林火災(1983年)、三原山噴火(1986年)、サンフランシスコの大地震(1989年)、北海道南西沖地震(1993年)などで、災害が誘因となって血圧上昇を起こす人が増えたという報告があります。 人災で有名なものには、湾岸戦争の時にイスラエルで心筋梗塞患者が急増したという報告があります。 これほど、生命が脅かされるショックや恐怖は、その後何年にもわたって健康に影響を与えるのです。 環境の変化や不安がストレスを増強 災害のストレスは避けようがありません。せめて、災害後にやってくる生活環境の変化や将来への不安などによるストレスを軽減するように、物心両面でのサポートが重要になってきます。社会的にもサポート体制を整え、個人レベルでもできる範囲のお手伝いをする心構えは持ちたいものです。
月曜日、午前10時の怪 突然死が多発する時間帯というものがあります。午前10時前後がそれで、急性脳梗塞の発症もこの時間帯に集中しています。 体の日内リズムを見極めて その原因には、生体の日内リズム(サーカディアニリズム:日周性)が関係しています。 起床時、私たちの体は活動を始めるために交感神経が興奮し、血圧上昇や心拍数の増加、血糖値の上昇などの反応が起こります。一種のストレス反応ともいえるもので、その反応のピークが起床後3、4時間後の午前10時前後なのです。 これは、一般的には快ストレスなのですが、慢性的なストレスで疲れをためている人にとっては、リスクファクターともなり得ます。ここにさらに、不意の緊張や衝撃などの刺激が加わった時、ストレス反応の針が極端に振れてしまうことがあるのです。 また、月曜日は休日の翌日ということで、余計にストレスを感じやすい状況にあり、特に発作を起こしやすいという指摘もあります。
ストレスが付く言葉を、いくつ知っていますか? 職場に関連したものだけでも、労働ストレス、テクノストレス、ノルマストレスといった言葉は、もう身近なものになっています。最近はリストラストレスという造語にドキッとさせられるご時世です。 サラリーマンの6割がストレスを感じている サラリーマンを対象にした意識調査では、30歳代後半、または係長、主任クラスの約60%が「仕事でストレスや疲れを感じた」(連合総研97年調査)、新入社員でも同様に約60%が「日常的にストレスを感じる」(産業能率大学97年調査)と回答しました。つまり、職場にいる10人に6人は何らかのストレスを感じていることになります。 とはいっても、ストレスとは何か? なぜ、ストレスを感じることがいけないのか? という問題になると、はっきり答えられる人はそのうちの何人でしょう? ストレスは本当に悪玉か? 例えば、大きな問題として過労死との関連があげられます。1988年(昭和63年)に開設された「過労死110番」には、開設後3年間で2000件(1997年6月まで4385件)の相談が寄せられていますし、脳血管事故や心臓疾患にあった人の労災認定の請求も年々多くなっています。 ストレスの多い仕事に従事している人が心臓病や動脈硬化、がん、自己免疫疾患、糖尿病などになりやすいという調査データは確かにあります。しかし、だからといって、ストレスがこれらの疾患を引き起こす仕組みがはっきりと解明されたわけではありません。そして、同じ様なストレス条件下にいても、全くの健康体でいる人もいれば、健康を損ねる人もいて、ストレスと疾患の関連を論じるのは一面的な見方ではできないのです。 むしろ、自分の周りのストレスを気にし過ぎて、神経質になってしまう方が余程のストレスになりますし、それとは別に、適度なストレスは生活を活性化させるカンフル剤にもなります。 ストレスを毛嫌いして避けるのではなく、ストレスのことをよく知って、健康に響かせないような付き合い方をしていくのが、現代人のストレス対処法といえるでしょう。
不安や恐怖も使いよう 「勝利の秘けつは、恐怖を感じることだ」と言った格闘家がいますが、これもストレス反応の一種を活用した考え方といえます。 大きな失敗をした時など、ぞっとした経験はありませんか。このような緊急ストレス時に分泌されるものの内、ノルアドレナリンには恐怖や不安などの感覚を強める作用があります。精神状態とストレス反応が関連していることを示す一つの事例といえるでしょう。 修行を積んだ格闘家なら、ノルアドレナリンをカンフル剤として活用することも簡単なのかもしれません。 免疫にも影響するストレス 代表的なストレス疾患にはぜんそくや、発がんなど、免疫機構の異常や低下が関与している疾患が少なからずあります。配偶者の死などの強度のストレスを感じている人を調べると、免疫をつかさどる細胞の活性が落ちている、といった調査結果もあります。 また、風邪やインフルエンザの感染がストレス反応のきっかけとなる場合もあります。この場合は、免疫反応が活性化することで視床下部や下垂体に刺激が伝わり、その結果コルチゾールの分泌高進が起こることが考えられています。 これらのことからも、精神-免疫-内分泌の密接な関係をうかがい知ることができるのです。
生産性に影響するストレス ストレスの快、不快は仕事の能率にも影響します。図のように、ストレス強度がaのレベルではストレスをかけるほど生産性は向上していきます。ところが一定のレベルを超えbになると、効率は一気に低下します。しばしば問題になる過労死、突然死はbの状態が進んでいった場合に起きやすいのです。 ストレス反応の主役を務める2つのホルモン ストレス反応には、カテコラミンとコルチゾールという2つのホルモンが大きなはたらきをします。これらは本来、ストレッサーの攻撃に対して体を防御するために分泌されるもので、体の機能を色々な形で調節する力を持っています。不快ストレスの場合はこれらのホルモンの影響が過剰な形で現れてしまうのです。 過剰な形とは、免疫系統の乱れ、動脈硬化や血栓の形成、性せんホルモン低下による無月経やインポテンツなどを始めとした生命活動全般にわたる影響です。これが再び、ストレス疾患の原因にもなるのです。
快ストレスを感じていますか 適度なストレスは交感神経系を目覚めさせ、判断力、行動力を高めます(緊急時反応)。セリエ(Selye)も「ストレスは人生のスパイスだ」と言っています。 この適度なストレスを快ストレス(eustress)、それに対して過剰で慢性的なストレスを不快ストレス(distress)ともいいます。ぴりっと味付けの聞いた人生を明るく過ごすために、快ストレスを上手に取り入れたいものです。 不快ストレスの正体とは 私たちの生活の中の不快ストレスには、家族や親友の死、けが、時には結婚のような環境の変化による急性ストレスと、夫婦間の不和、時間外労働の連続、リストラの心配など、じわじわと数ヵ月、数年間も続く慢性ストレスの2つがあります。 これら日常生活にある不快ストレスの程度を定量化した試みもあります(アメリカ精神医学会編)。アメリカと日本では文化や民族性の違いがあるので、この尺度が私たちの生活に全面的に当てはまるとはいえませんが、私たちの生活にあるストレスを知る一つの目安になるでしょう。 心理・社会的ストレスの強さ尺度(成人用) コード 用語 ストレスの例 急激に起こった事象 持続的環境 1 なし 急激に起こった事象で、障害に関連性があると思われるものはない 持続的環境で、障害に関連性があると思われるものはない 2 軽度 男(女)友達との破綻:入学または卒業:子供が家を離れる 家族間のけんか:仕事の不満:犯罪多発地域で居住 3 中等度 結婚:別居:失職:退職:流早産 夫婦間の不和:深刻な経済的問題:上司とのトラブル:未婚の親となること 4 重度 離婚:第1女の誕生 職なし状態:貧困 5 極度 配偶者の死:重大な身体疾患の診断:婦女暴行の犠牲 自分または子供の重い慢性疾患:身体的または性的虐待の継続 6 破局的 子供の死:配偶者の自殺:壊滅的な自然災害 人質としての拘束:強制収容キャンプの体験 7 情報不十分、または状態不変 - -
正しい闘争本能がありますか? 映画ジュラシック・パークでも描かれていたように、地上の生命は恐竜よりも太古の昔から弱肉強食の中で暮らしてきました。 ただし、常に強いものが勝つというわけではありません。 動物には敵に出会った瞬間、「闘うべきか、逃げるべきか」(Fight or Flight)という判断をする本能が備わっています。 敵を威嚇しながら、瞬間に自分にとっての有利、不利の状況を判断し、機敏に行動する、という反応です。 この本能は、形を変えて人間にもあるのですが、動物と違って、人間の闘うべき敵は一瞬で結果が出るというものではないのです。 そこが、現代がストレス社会と呼ばれるゆえんかもしれません。 緊急時反応は長引かせない こういう緊急の刺激は、大脳皮質→青斑核→視床下部→交感神経→副腎髄質へと伝えられて、副腎髄質からのカテコラミン分泌という一連の反応が起きます。 こうなると気がたかぶって興奮状態になり、血管は収縮して血圧が上がり、血中のコレステロールが高くなる、といった、状態になります。 動物の場合なら、敵と対峙するのは長くても数分で、闘うにしても逃げるにしても結論はすぐ出ます。 ところが人間の場合、特に時間外労働やノルマに追われる生活を続けていると、このような緊急時反応をずっと続けていることになってしまうのです。 まさに、24時間闘っている、という状態です。これでは、緊急時反応が続いてオーバーヒートになってしまいます。 人と競争し、ノルマと闘い、逃げるわけにもいかないという責任感。 これらの刺激が重大なストレッサーになってあなたのストレス反応をマイナスのものにしようとしているのです。
あなたを守るホメオスタシスを知っていますか? ストレスは、人間だけが感じているものではありません。およそ、この地上に生きている生命体はみな、ストレスと無関係では暮らせないのです。 生命は、刻々変化する外界の環境に対して生体を安定した状態に維持しようとする仕組みを持っています。これを、ホメオスタシス(恒常性)といいます。 このホメオスタシスは、ほ乳類のような高等動物では図のような神経-免疫-内分泌(ホルモン) の相互作用で維持されています。 例えば寒さを感じた時、交感神経が働いて末しょうの血管を収縮させ体外への熱の放散を防ぐ一方で、甲状せん刺激ホルモンの分泌が増えて代謝を促す甲状せんホルモンが産生され、体内では熱が産生されます。ちょうど防寒設備を整えたうえに、燃料を燃やしている居心地の良い部屋を作るわけです。このような反応は、体温低下を抑えて活動量や免疫力の低下を防ぐことにもつながります。 20世紀に生まれたストレス このような外界の刺激に対する生体の反応を「ストレス」というのです。この言葉は、1935年にセリエ(Selye)という研究者が初めて使ったもので、もともとは物体に力を加えることで生じるゆがみを意味する言葉でした。また、このようなストレスを起こさせる刺激は「ストレッサー」と名付けられました。 現代社会で私たちが日常的にストレスと呼ぶもの、つまりノルマや疲労、人間関係、睡眠不足などなどは、正確にはストレッサーというのが正しいのです。