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全身の激しい痛みで寝たきり状態を経験、患者さんに伝えたいこと 医療者が線維筋痛症患者になって思うこと(3)

線維筋痛症は、全身の激しい痛みや疲労など多く症状があります。闘病25年以上のCさんに、寝たきり状態になったときのこと、つらい状況を打破して行動を起こしたことなどを振り返ってもらいました。さらに医療者の経験があるCさんから、医療者の立場をふまえて患者さんにメッセージを残していただきました。

オーバーワークとストレスが重なって病状が悪化

Cさんの闘病は10歳ころから25年以上になります。治療を受けられる医療機関を探し、ドクター・ショッピング状態に陥った経験があります(参考記事:10歳から原因不明の強い痛み、25年にわたる闘病記 医療者が線維筋痛症になって思うこと(1)全身の激しい痛みでドクター・ショッピング、抜けだすきっかけは? 医療者が線維筋痛症患者になって思うこと(2))。
20代後半の時期に、線維筋痛症の専門医による治療を受けられるようになりましたが、この病気は症状がよくなるときもあれば、何かのきっかけで悪化する病気といわれています。
Cさんは、20代後半の時期は勤めていた医療機関でチームをまとめる立場にあり、夜遅くまで後輩の指導をするなどオーバーワークとストレスが重なり、病状が悪化しました。

光で眼が痛くなることや音で耳が痛くなるなどの症状に悩むことも

オーバーワークとストレスにより、全身の痛みがひどくなるだけではなく、ある音がすると耳の奥が細い棒でつつかれたような痛みや、光に過敏になって眼が痛くなること、全身の筋肉の痙攣など、数多くの症状に悩まされました。
外にでると太陽の光はもちろん、信号灯や自動車のブレーキランプ、ハザードの点滅、家のなかでは室内の照明をつけると、眼があけられなくなるほどの痛みが走りました。白い壁や白い皿が照明に反射したときにも同じようなことが起きました。
家のなかでは部屋を暗くするなど工夫できますが、外出時は自然や相手があってのことなのでセルフコントロールに苦労しました。
外出時や家のなかでもサングラスを使っていましたが、耳に床ずれ(褥瘡:じょくそう)ができ、サングラスのフレームが耳に当たると激痛が走るので装着できなくなりました。
セルフコントロールがうまくいかずQOL(生活の質)が低下して、閉じこもったような生活になっていきました。

社会保障の手続きを断られるなどドクター・ハラスメント的な扱いを受ける

専門医のところに通院していました。病状が悪化していていたときのことですが、医師からは「手のほどこしようがない」と突き放されるように言われました。
また、障害年金や障害者手帳などは、患者さんにとっては重要な手続きで、申請書類には医師の記載事項があります。訪問ヘルパーや通院介助などの障害者福祉サービスを受ける足掛かりにもなります(障害年金と障害者手帳は別の制度なので、等級は異なる場合があります。注意してください*)。
そこで、医師にお願いしたところ、なぜか断られてしまいました。
その後、別の医師のところで障害者手帳や障害年金の手続きができるようになり、社労士さんに相談すると、障害年金はさかのぼって150万円ほど受給できるとのことでした。
そこで、前述の「手のほどこしようがない」と言われた医師のところに受給手続きの問い合わせをしました。しかし、また断られたのです。
患者を突き放すような態度や、行政サービスの手続きを2回も断ったことなど、ハラスメント的な扱いを受けた当時のことを、Cさんは以下のように振り返っています。

医師への信頼はなくなり、「専門医なのに救済してもらえないなら、どうすればいいんだろう」と追い詰められていきました。「手のほどこしようがない」と言われて、それ以上の治療をしてもらえなかったときは、絶望感しかありませんでした。

寝たきりで真っ暗な地下の穴でじっとして先行きがわからない状態

30歳代前半のとき、オーバーワークとストレスがピークになって、激痛で動けなくなりました。自分で食べられない、自分で用が足せない、寝返りもできない寝たきり状態でした。
光に過敏になっていたので、家の中では目が痛くて照明もつけられず、カーテンも開けられません。暗い部屋でひっそり閉じこもっているような感じでした。
半年間ほど大変つらい思いをしました。Cさんによると、寝たきり状態のときは出口のない真っ暗な地下の穴にじっとしていて、先行きが見えない状況だったとのことでした。

行動を起こすことで状況が好転

寝たきり状態になってしばらくすると、体調は万全とはいえないなか、できる範囲で行動を起こすことにしました。 行動に移したのは、前述のドクター・ハラスメント的な扱いを受けて困窮した経験がバネになったこともありますが、救済してくれる医師と出会って、追い詰められた状況を打破して出口を見つけ、将来への見通しを持ちたいとの強い思いがあったからです。
寝たきり状態にもかかわらず、情報収集して自分でリハビリプログラムを立てて実行しました。このころは、朝から晩まで休憩をはさみながら何時間もリハビリをしていました。予後予測もできない状態で根気よく取り組みました。
やっと、寝たきり状態から少し動けるようになるまで回復したときに、線維筋痛症に関する講演があることを聞きつけて参加しました。講演を聞いて、その医師のところに通院することにしました。
その医師が現在の主治医です。さまざまな症状に応じて治療法を提案してくれますし、社会保障の申請手続きも協力してくれます。
現在、Cさんは病気のつらい症状を何とかしようと努力してくれる医師や関係者のおかげで心強くなって将来に向けて希望が湧いており、病気の症状は改善傾向にあります。
医療職の経験があり実情をわかったうえで医療者と患者さんに向けて以下のコメントです。

線維筋痛症は専門医がいますが、そこへたどり着くまでが困難だという課題があります。やっと出会えたとしても、専門医はまだまだ少ないので、患者さんはそこに頼らざるを得ず、簡単に主治医を変えることはできません。
本来、医療職と患者は対等であるべきと考えますが、これらの事情により医師に遠慮したり、気を遣う患者さんは少なくないのが現状です。
その状況を、医療者には知っていただきたいのです。例えば、医師から「つらいことをメモにまとめてきてください」と言ってもらえるだけでも、患者は希望を見いだすのです。

救済してくれるところは必ずあるので「できることから、できることを、できるときに」

最後になりますが、10歳から痛みとつきあいながら25年以上になるCさんは、同じような境遇にあるかた、また原因不明の病気でつらい思いをしているかたにメッセージを残していただきました。

線維筋痛症は近年、徐々にその認知度が上がってきました。しかし、いまだに家庭や学校、職場などで理解が得られないケースをよく聞きます。 患者さんに伝えたいのは、「あなたは1人ではない」ということです。いまは情報が多く、医療機関や患者会なども増えています。情報収集して病状やつらい状況を理解し、寄り添ってくれるところがあります。
救済してくれるところは必ずありますので、「できることから、できることを、できるときに」行動してみてください。何か1つでも希望があれば、つらい状況から抜け出す出口となる光、今後の見通しが見えてくると思います。
この記事を通して、私の経験が少しでもお役に立てれば幸いです。

  • *:障害年金と障害者手帳について 障害年金と障害者手帳は申請する窓口ならびに審査機関が異なります。障害者手帳の等級と障害年金の等級は同じではありません。認定や等級などについては、それぞれの機関で決められることになります。障害者手帳がなくても障害年金を申請することはできます。

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公開日:2019/11/20