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子宮頸がん-症状、ワクチンや検診などの予防対策、治療について詳細解説

子宮頸がんとは、子宮の入り口部分に生じるがんです。初期には自覚症状がほとんどないため、気づいたときにはすでに進行している可能性もあります。子宮頸がんの原因やワクチンと検診などの対策、症状について解説しますので、ぜひお役立てください。

写真:三輪綾子先生(THIRD CLINIC GINZA 院長)

■この記事の監修医師

THIRD CLINIC GINZA 院長
三輪綾子 先生

日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
一般社団法人 予防医療普及協会 理事
HelCのアドバイザリーボード

子宮頸がんとは

イメージ:子宮頸がん

子宮頸がんとは、子宮の入り口の「子宮頸部(しきゅうけいぶ)」にできるがんです。子宮の入り口に近いところに発生するため、診察や検査がしやすく、比較的発見しやすいという特徴があります。

初期に発見、治療すれば予後が良いがんですが、初期にはほとんど自覚症状がないため、自分で気づきにくいのも子宮頸がんの特徴です。進行すると治療が難しくなるだけでなく、治療後に後遺症が残る場合もあります。早期発見・早期治療のためには、定期的に検診を受けましょう。

子宮頸がんの患者の傾向・死亡率

年間約1万人の女性が子宮頸がんに罹患し、約3,000人が死亡しています。死亡率は0.3%程度(10万人あたり300人程度)です。

子宮頸がんの患者全体の数は2000年代から再び増加傾向にあり、死亡者数は右肩あがりに微増しています。子宮頸がんの発症は主に20~50代で、ピークは30代後半です。最近は性交渉の低年齢化により20~30代の人の発症が増えています。なお、子宮頸がんは妊娠、子育て期の世代に発症するので「マザーキラー」とも呼ばれています。

子宮頸がんの原因

子宮頸がんの原因のほとんどはウイルス感染

子宮頸がんの原因の9割以上は、ウイルス感染といわれています。子宮頸部にハイリスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)が持続感染すると、一部の人が前がん病変(がんの前の状態)を経てがんに進行していくと考えられています。

※ハイリスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)とは?

HPVには現在、100種類以上の型があることがわかっています。
このうち、少なくとも 15 種類(HPV16, 18, 31, 33, 35, 39, 45, 51, 52, 56, 58, 59, 68, 73, 82)は、ヒトの子宮頸がんからそのDNAが見つかっており、これらは特に「ハイリスク型HPV」と呼ばれています。
海外の報告によると、HPV16型とHPV18型は子宮頸がんの約7割の発生に関わっていると推定されています。

性交渉で多くの人がウイルスに感染

HPVの感染経路は性交渉がほとんどです。HPVはありふれたウイルスであり、性交渉を持った女性は誰でも感染する可能性があります。また、一生のうちに何度でも感染する可能性があります。一般女性のHPV感染率の調査結果によると、女性の約4人に1人がHPVに感染していました。性交渉をする女性の8割以上が生涯50歳までに一度は感染するとの推計が報告されています。

ハイリスク型HPVに感染しても、必ず子宮頸がんに進行するわけではありません。HPVに感染しても9割の人は免疫力により自然に排除されます。ただし、自然に排除されず持続的に感染した状態になってしまうと、数年から数十年かけてその細胞ががん化していくことがあります。HPVに感染した人のうち1%が子宮頸がんに進行すると言われています。

子宮頸がんを予防する方法は、2種類の組み合わせ

  • 1. HPVワクチン:HPVの感染予防
  • 2. 細胞診(検診):異変(前がん病変)の早期発見

子宮頸がんを予防するためには、二段階の対策が必要です。
まず一つ目は、原因をできる限り排除すること。つまり、原因となるウイルスの感染予防です。HPV感染予防には性交渉前にワクチン接種することが効果的です。

二つ目は、前がん病変の段階での早期発見です。定期的にがん検診を受診することが、子宮頸がん予防・早期発見に不可欠といえるでしょう。

子宮頸がんへの対策1:HPVワクチン

子宮頸がんの予防策として、HPVへの感染を予防するHPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)の接種があります。HPVワクチンの接種により、HPVの中でも子宮頸がんを起こしやすいとされているHPV16型とHPV18型の感染を防ぐことが可能です。HPV16型とHPV18型の感染を防げれば、子宮頸がんの原因となるHPV感染の5~7割を防ぐことができます

HPVワクチンについては、次の記事で詳しく解説しています。2022年現在、小学校6年生~高校1年生相当の女子を対象に公費によりワクチン接種を受けることができます。接種スケジュールや公費接種の対象外の方の接種方法についても紹介していますので、ぜひご覧ください。

子宮頸がんへの対策2:定期検診

子宮頸がんの対策として、定期検診は極めて大切です。厚生労働省は、子宮頸がん検診については20歳以上を対象に2年に1回の受診を推進しています。検査項目は、問診と視診、子宮頸部の細胞診と内診です。

早期発見・早期治療につなげるためにも、20歳以上の女性は2年に1回、子宮頸がん検診を受診しましょう。

子宮頸がんの初期は無症状がほとんど

子宮頸がんは初期には自覚症状がほとんどないため、日頃から体調の変化に気を配ることが大切です。もし症状が出た場合、進行がんが疑われますが、次のようなものがあります。思い当たる症状があればすぐに婦人科を受診しましょう。

  • 月経期間ではないのに出血がある
  • 性交時に出血がある
  • おりものに血が混じる
  • 茶褐色、黒褐色のおりものが出る
  • おりものの量が極端に多い
  • 尿や便に血が混じる
  • 尿が出にくい
  • 足腰、下腹部が痛い

また、上記以外に気になる症状がある場合も、様子を見るのではなく、なるべく早く婦人科を受診することが大切です。症状が出始めた日や続いている日数などを記録しておくと、より正確な診断につなげることができます。

子宮頸がんのステージ

子宮頸がんの治療方針を決定するときに重要なのが、がんの進行状況です。子宮頸がん診断後、がんがどのくらい進行しているのかを表すステージ(進行期)が決定されます。現在、子宮頸がんの進行期分類では、国際産婦人科連合(FIGO)の新FIGO進行期分類(2018年改訂)を用いています。

図:がんの進行(上皮)

Ⅰ期

Ⅰ期は、がんが子宮頸部にのみ存在する状態です。Ⅰ期はⅠA期とⅠB期に分類され、さらにⅠAは2つ、ⅠBは3つに分類されます。

ⅠA期では、病変が肉眼で確認できません。病理組織検査でのみがんが診断できます。浸潤の深さが3mm未満の場合はⅠA1期、浸潤の深さが3mmを超え5mm未満である場合はⅠA2期に分類されます。

ⅠB期まで進行すると、病変が肉眼で確認できます。病変の大きさが2cm未満である場合はⅠB1期、2cm以上4cm未満である場合はⅠB2期、病変の大きさが4cmを超える場合はⅠB3期と分類されます。

Ⅱ期

Ⅱ期は、がんが腟または子宮傍組織に広がっているが、限定的である状態です。がんが腟だけに広がっている状態はⅡA期、子宮傍組織に広がっている状態はⅡB期に分類されます。そして、ⅡA期はさらに2つに分類されます。

ⅡA期では、病巣の大きさが4cm未満の場合はⅡA1期、病巣の大きさが4cmを超える場合はⅡA2期です。

なお、Ⅰ期やⅡ期の時点までに発見できれば、外科手術による治療が可能です。ただし、状況によっては放射線治療も併用します。

Ⅲ期

Ⅲ期は、がんが腟または子宮傍組織に広がっている状態です。Ⅲ期は3つに分類され、がんが腟下1/3にまで達している状態はⅢA期、骨盤壁にまで達している状態はⅢB期です。がんの大きさや広がっている範囲を問わず骨盤リンパ節/傍大動脈リンパ節への転移が認められる場合はⅢC期となります。

Ⅲ期までがんが進展すると手術は難しく、同時化学放射線療法が行われます。

Ⅳ期

Ⅳ期は、がんが膀胱や直腸に広がる、または肺や骨盤外リンパ節などに遠隔転移している状態です。がんが膀胱や直腸の周辺組織に広がった状態はⅣA期、肺や肝臓、骨盤外リンパ節などの離れた組織に遠隔転移した状態はⅣB期と分類されます。

Ⅳ期は、同時化学放射線療法が主な治療です。また、ⅣB期では症状緩和を目的とした化学療法(抗がん剤)が行われます。

子宮頸がんの治療方法

子宮頸がんの治療方法はステージによって異なります。Ⅰ期あるいはⅡ期の段階で発見できれば手術が可能ですが、Ⅲ期以降に進展した状態で発見した場合は放射線治療や化学療法が主な治療です。ステージごとの治療方法や特徴について解説します。

ステージごとの治療方法

 外科手術放射線抗がん剤
Ⅰ期-
Ⅱ期-
Ⅲ期-
Ⅳ期-
  • ※上記の表は一般的なもので、患者さんの状況に応じて異なる可能性があります。

治療方法ごとの特徴

がんの進行状態に応じて、手術療法、放射線療法、薬物療法を行います。それぞれ単独で行うこともあれば、組み合わせて行うこともあります。また、患者さんの状況によっても、治療方法は異なります。

手術療法(外科手術)

手術療法とは、手術でがん化した細胞を摘出する治療法です。がんの進行状況によって、子宮を全摘出する方法や子宮を一部温存する方法などさまざまな手術の種類があります。手術の種類によっては、子宮の全摘出に加え、腟の一部や卵巣まで広範囲に摘出します。

前がん病変からⅠB1期までで将来妊娠を希望する場合は、子宮を一部温存する方法が選択可能か医者に相談してみましょう。また、手術後は一定の割合で合併症が起こります。手術後の合併症には、リンパ浮腫(むくみ)や排尿のトラブル、便秘、腸閉そくなどがあります。

放射線療法

放射線療法とは、放射線をに照射し、がん細胞を死滅させたり、痛みなどの症状を緩和する方法です。骨盤の外から照射する外部照射、直接病巣を照射する腔内照射、放射性物質を腫瘍に直接挿入する組織内照射があります。子宮頸がんでは、ステージにかかわらず放射線治療を行うことが可能です。手術後に再発リスクを低下させるために行われることもあります。

放射線療法は、施術後に疲労感や食欲不振、感染症に感染しやすくなる、皮膚症状などが出てくる場合もあります。

薬物療法(抗がん剤)

薬物療法とは、がん細胞の増殖を抗がん剤の投与により抑える方法です。放射線療法と併用して行う化学放射線療法を行うことが多くなっています。主な副作用として、吐き気や脱毛などがあります。近年では、吐き気に対して予防薬を使えるようになり、身体的な負担を軽減しやすくなってきました。

定期的な検査で、子宮頸がんの予防と早期発見を目指そう

子宮頸がんは早期発見・早期治療が可能な病気です。比較的初期に発見できれば、手術によりがん化した細胞を摘出でき、また子宮を温存することが可能な場合もあります。一方、がんが周辺組織にまで広がっている場合は、放射線療法や薬物療法で治療を行います。子宮頸がんは初期の段階では自覚症状がほとんどないので、定期的に検査を受けましょう。

子宮頸がんの原因の約9割は、ハイリスク型ヒトパピローマウイルス(HPVウイルス)への感染といわれています。HPVウイルスに感染しているか自宅で調べられるキットもありますので、医療機関での子宮頸がん検診を定期的に受けることが大切ですが、検診の機会を逃した方や何らかの理由で検診受診が難しい方はこれらのキットも有効活用して、子宮頸がんの早期発見にお役立てください。

この記事の監修医師
三輪綾子先生からのメッセージ

写真:三輪綾子先生(THIRD CLINIC GINZA 院長)

子宮頸がんは治る病気だと思っていた、という患者さんも多くありません。早期で発見できれば完治も可能ですが、進行してしまうと他のがん同様、抗がん剤や放射線での治療が必要になります。
そのためにはワクチン+検診が不可欠です。
他人事とは思わずにしっかり予防に取り組みましょう。

公開日:2022/09/14