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診断を求めてさ迷う患者さん 線維筋痛症友の会アンケート結果(3)

線維筋痛症は、激しい痛みや疲労をはじめ多様な症状が起こる病気ですが、客観的な画像や検査結果で明らかにできないケースが多く、診断を求めてさ迷う患者さんが多いと言われています。実態について、患者会のNPO法人線維筋痛症友の会が患者さんを対象に行ったアンケート結果を紹介します。患者会理事長の橋本裕子さんに概説してもらいました。

診断までの期間は1年以上が大半、複数の医療機関を受診しているのが現状

2018年9月30日に開催された日本線維筋痛症学会第10回学術集会で、橋本さんは2010年から5年おきに患者会が患者さんを対象に実施している調査の結果を発表しました。
橋本さんによると、多くの患者さんは仕事ができなくて経済的に困難な状況にあること、現行の福祉サービス制度に限界があることなど、さまざまな問題に直面していることがわかりました。

2016年の調査では、「診断までの期間や受診した医療機関数」について聞きました。
それによると、線維筋痛症の診断は発症してから6ヵ月以上の期間が必要なのですが、1年以内に診断された患者さんは全体の約23%に過ぎないことがわかりました。10年以内を合計して約56%。それ以上の長い時間が診断に必要であった者が半数近くでした。
受診機関数でみると、1ヵ所目の受診機関で診断されたのはわずかに約6%、2ヵ所目で診断されたのは約11%でした。
橋本さんは「患者数に比べると、受け入れる医療機関が少ないことが裏付けられる数字です」と指摘しています。

非薬物療法は敷居が高い

線維筋痛症は痛みや疲労をはじめ多様な症状がありますので、それぞれの症状に適した治療が必要になります。非薬物療法を利用している患者さんは少なくないのですが、2016年における利用状況は回答者全体の約19%(143人)でした。
一方、「非薬物的療法を受けたいが受けられない」という回答が多かったのです。高いニーズはあっても、実際に治療を受けている患者さんは少ないのが現状でした。
また、医師が診療の際に参考にする線維筋痛症診療ガイドラインでは、有酸素運動やストレッチが有効と推奨されていますが、リハビリテーションを受けられる患者さんは少なく、認知行動療法やカウンセリングを健康保険で受けることも制度上、難しいのが課題です。

「生きづらさ」を改善した社会環境をつくってほしい
アンケート結果を踏まえて橋本さんのコメント

線維筋痛症は複雑な病態ですので、一人一人の患者さんの発症原因、症状があまりにも多様です。単一の治療法では対応が難しく、日々変化する症状や薬の副作用などに細かく対応していくのは現状の医療体制では困難と言わざるを得ません。
さらに追い討ちをかけるように、福祉サービス制度では障害とみなされず、仕事もできなくなって患者さんの療養生活は経済的に厳しい生活を強いられているのです。
一人一人の「生きづらさ」は、客観的な画像検査や検査結果で数字や画像のみで捉えることができないので診断にさ迷う患者さんが非常に多く、現行の診療や福祉サービスに限界があることをこの調査結果が物語っているのではないでしょうか。
患者さんの実態を把握してもらい、病気を持ちながらも生きていく社会的存在として、経済活動を行う人間として、生きていくのによりよい環境をつくらなければ、「生きづらさ」の課題は解決されません。

  • *線維筋痛症友の会は、療養生活の状況についてアンケートを5年ごとに実施しており、その結果は2011年と2016年に「FM白書」(FM:線維筋痛症 Fibromyalgiaの略)で公表しています。

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公開日:2019/02/15
監修:NPO法人線維筋痛症友の会 理事長 橋本裕子さん