線維筋痛症は、全身を襲う激しい痛みや疲労をはじめ多様な症状が起こる病気です。歌手のレディ・ガガさんが休養を余儀なくされた原因として有名です。患者会のNPO法人線維筋痛症友の会は、会員患者さんを対象に療養生活の実態に関するアンケートを実施しています。調査結果から、就労状況や福祉サービスの利用状況について紹介します。患者会理事長の橋本裕子さんに概説してもらいました。
患者会は、患者さんへのアンケートを2010年から5年ごとに実施しています。その結果は2011年と2016年に「FM白書」(FM:線維筋痛症 Fibromyalgiaの略)で公表しています。
調査結果から、医療費の自己負担の実際や、就労状況、福祉サービスの利用状況などについて、2018年9月30日に開催された線維筋痛症学会(医師などが会員です)の第10回学術集会で発表しました。
橋本さんによると、就労状況に関する調査結果は以下でした。
2011年(回答697人) | 2016年(回答768人) | |
---|---|---|
問題なく働ける | 1.0% | 2.6% |
何とか働いている | 約11% | 約13% |
線維筋痛症患者さんの就労状況に関しては、2011年の調査結果に比べて2016年の調査結果では少し改善していました。しかし、2016年の調査結果で「問題なく働ける」と回答したのは768人中30人未満(2.6%)にとどまっていました。働けない患者さんが圧倒的に多いのが現状です。さらに、障害年金を受けていたのは105人(13%)にとどまっていました。
福祉サービスに関する調査結果で、障害者手帳の所持については以下でした。
2011年(回答697人) | 2016年(回答768人) | |
---|---|---|
所持している | 約19% | 約27% |
所持したい | 約40% | 約28% |
障害者手帳を「所持している」との回答は2011年に比べて2016年の調査で増加していましたが、患者さんからは「何とか制度は利用できているが、今の生活状況では不十分」という声が多く聞かれたとのことです。
取得できた障害者手帳の種類・等級や介護サービスの利用区分と、実際に利用できているサービス内容が患者の実際の暮らしにくさと合致していないのが現状です。
線維筋痛症は、痛みや疲労などの生活上困難な症状は客観的な画像や検査結果で明らかにならないので、現行の福祉サービス制度では障害とみなされにくいのです。
しかし、実際には痛みや疲労は、あらゆる生活動作の障壁です。「客観性の担保」にとらわれ、一人一人の「生きづらさ」を数字や画像のみで捉えることの限界がこの調査結果に示されていると思います。
線維筋痛症患者は痛みや多様な症状により、日常生活、就労でもさまざまな障壁に悩まされています。また、治療に専念するためにも、経済的支援や福祉サービスなどのサポートが欠かせないのです。
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