腎臓には、血液中の老廃物を取りのぞく、体内の水分量を調節するといった役割があります。こうした働きが十分に果たせなくなってしまうのがCKD(chronic kidney disease)「慢性腎臓病」です。日本のCKD患者は約1,330万人にのぼり、成人の8人に1人といわれています。病気が進行すると透析治療による生涯にわたる通院、服薬、食事制限といった様々な制約が必要になります。CKDは、早期に原因を発見して治療を行えば、腎臓の機能が低下するのを抑えられ、改善も期待できます。
特定健康診査(通称 メタボ健診)は、2008年にサポート体制も考慮して開始されました。当初は内臓脂肪型肥満による動脈硬化症の予防を主目的として開始しました。その後、動脈硬化の原因となる糖尿病や高血圧症と腎臓機能障害が深く関わっていることがわかってきました。最近ではメタボ健診のなかで腎臓機能障害を早期に発見し、総合的に動脈硬化症の発症や進展を予防することが求められています。一方、メタボ健診で実施される項目では早期の腎臓機能障害を見逃している危険性があります。回復の見込みがある段階で腎臓のダメージを知るにはどうしたらいいのでしょうか。三宅紀子先生にお話をうかがいました。 監修:三宅紀子先生(順天堂大学医学部附属順天堂医院臨床検査科・八潮駅つばめクリニック院長) 目次 そもそもメタボ健診は何のため? メタボの悪役は増やしすぎた「内臓脂肪」 内臓脂肪との会話 メタボ健診で引っかかったらどうする? 尿検査で問題なくてもメタボの人は安心できない メタボ健診ではわからないL-FABPを測っておこう L-FABP検査キットで陽性だったときにすべきこと L-FABPを測定することで生活習慣改善努力の成果も判定できる そもそもメタボ健診は何のため? 「メタボ」は「メタボリック症候群」の通称です。メタボリック、すなわち生命維持に必須な代謝に支障のある状態がメタボリック症候群です。メタボリック症候群は内臓脂肪型肥満が原因です。内臓脂肪とは皮下脂肪と異なり、「自分では触ることができない脂肪」です。 日本人は人類のなかでも飢餓に耐える遺伝子を保有する人種であることが知られています。アメリカ合衆国にはこの遺伝子と類似する遺伝子を保有する人種が在住します。アメリカ合衆国のライフスタイルのなかで彼らは糖尿病発症率がきわめて高く、狭心症や急性心筋梗塞の発症例が多いことが知られるようになりました。 類似する遺伝子を有する日本人もアメリカと同様なライフスタイルになりつつある状況下で、糖尿病、狭心症、急性心筋梗塞患者数が増加し続ける状況を何とか回避したい、という切迫したいことを目的に開始されたのが「メタボ健診」です。 遺伝的素因に加え、内臓脂肪型肥満になると高血圧、高血糖、脂質代謝異常がみられる頻度が高くなります。高血圧症、糖尿病、脂質異常症は動脈硬化症の発症や進展の主な原因です。動脈硬化症により狭心症、急性心筋梗塞、脳梗塞など生命にかかわる疾患を発症します。 メタボ健診が実施され、これらの疾患は腎臓機能障害の原因となる一方、腎臓機能障害がこれらの疾患を重症化することがわかってきました。メタボ健診はメタボの状態にある人を検査でいち早く見つけ、見つけたメタボの状態をよくするための生活習慣の変更や治療をできるだけ早く始めることを目的にしています。 職場でメタボ健診を勧めるのは、みなさんがいつまでも健康で働けるようにという会社の願いがあるからだと思います。さらに、「メタボ」は「すこしお腹回りが増えた」くらいのこと、と思いがちです。しかし、これがみなさんやご家族などに将来的に負担をかける原因となってしまうことのないように、「メタボ健診」をきちんと受けるようにしましょう。 メタボの悪役は増やしすぎた「内臓脂肪」 メタボの要になるのは、みなさんが触ることができない内臓脂肪です。内臓脂肪は肝臓などの臓器およびその周囲に貯蔵される脂肪で、空腹時のエネルギー供給源として重要です。脂肪細胞数は成長期でほぼ決定されます。内臓肥満とはそれぞれの脂肪細胞の一つ一つの脂肪量が増加した状態です。一日のなかで空腹時が十分ある場合やエネルギー消費に対するエネルギー消費のバランスが取れている場合、内臓脂肪量は維持されます。十分にお腹がすいた状態で適量の食事を心がければ内臓脂肪肥満は防げます。高度な知能を持ったとはいえ、人は動物です。必要な時に必要なエネルギーを得て、十分な休養をすることが動物の基本ですが、飽食で便利な移動手段があり、仕事に追われて運動する時間がないと内臓脂肪は着実に増え続けます。内臓脂肪が増加するとエネルギー代謝が異常となり、さらに肥満を誘導する原因となり、糖尿病発症や脂質異常症の原因となります。また、内臓脂肪量が増加すると内臓脂肪から生命維持に有害なさまざまな成分が血液中に流れ込みます。これらは高血圧症を重症化させ、悪性腫瘍や関節炎などの発症や進展にも関与することがわかってきました。 内臓脂肪との会話 おいしい食べ物、飲み物が手軽に手に入り、これらの情報が簡単に入手できる魅惑的な時代です。また、仕事で疲れ、運動は面倒になってしまいがちです。これが、内臓肥満を着実に増やしているのです。 また、ストレス食いも大きな原因となります。「ストレスを食べることで解消する」のは脳からの指令です。脳のエネルギー源は糖分(ブドウ糖)です。ストレスがあると脳は糖質の要求が増加し、ついつい飲み食いが増えてしまうのです。脳との「つきあい」が大切です。ストレスがあれば、早期にこれを解消する方法を見つけることが大切です。好きな音楽や読書などの趣味の時間を少しでも確保することで早期の内臓脂肪貯蓄は回避しましょう。疲れた時こそ、外の空気を感じ、体を動かすことですっきりすることができます。糖質(ブドウ糖)を利用するために膵臓からインスリンが分泌されますが、内臓肥満によりインスリン作用が障害され、これが内臓脂肪貯蓄の増加を助長します。これを防ぐために毎日体重を測定し、脂肪細胞が増えている危険性を早期に知る必要があります。 メタボ健診で引っかかったらどうする? メタボは放置するととんでもないことになりますから、健診で引っかかったらすぐに正しい行動を取りましょう。食事をみなおしたり、運動したり、体重を落として内臓脂肪を減らすことです。 日本では、メタボ健診で健康リスクありと判定された人が特定保健指導を受けられる仕組みになっています。特定保健指導とは、医師、保健師、管理栄養士などによるメタボ改善のための専門的なサポートのことです。 このサポートを受けるための手続きは簡単で、あなたが加入している医療保険の問い合わせ窓口に連絡すれば受診の方法を案内してくれます。また、会社によっては受診の案内状をあなた宛に送ってくれるところもあります。いずれにしても、その案内に従って受診し、対応してくれる専門スタッフのサポートを受けるようにしましょう。 尿検査で問題なくてもメタボの人は安心できない 日本のメタボ健診とその後のサポート体制はとても良くできたシステムですが、メタボ健診開始時には腎臓障害とメタボリック症候群との関連性が十分に解明されていませんでした。しかし、内臓脂肪肥満が腎臓障害の原因となり、「慢性腎臓病」発症に深く関わっていることが提唱されるようになりました。 慢性腎臓病は特殊な病気ではありません。高血圧症、糖尿病、脂質異常症が腎臓を障害します。腎臓にはさまざまな機能がありますが、デトックスのための主要臓器です。デトックス障害は生命維持に必要なさまざまな機能に支障をきたし、メタボと深く関わりのある狭心症、急性心筋梗塞、脳梗塞を代表とする動脈硬化性疾患の危険性を高めます。 メタボ健診では、尿検査や血清クレアチニンやeGFR(糸球体ろ過率)で異常があった場合に腎障害の可能性と診断されます。しかし、これらに異常がない場合でもメタボ健診で異常を指摘された場合に、早期の腎臓障害が存在する可能性があります。なぜなら、メタボ健診での慢性腎臓病についての検査項目は尿タンパク(アルブミン)、血清クレアチニン、eGFR(糸球体濾過率)だけでは早期腎臓障害が見逃されていることがあるからです。 健康を維持するために腎臓はきわめて重要な臓器です。メタボと診断された場合や最近体重や腹囲が増加傾向である方は早期腎臓障害を知ることが大切です。 メタボ健診ではわからないL-FABPを測っておこう では、回復の見込みがある段階で腎臓のダメージを知るにはどうすればいいのでしょうか。 実は、血管や臓器も黙ってサイトカインにやられているわけではなく、L型脂肪酸結合タンパク(略号L-FABP;エルファブ)という物質を出して対抗します。しかも、L-FABPはまだ腎臓のダメージが小さく、何らかの手を打てば回復できる段階から放出されてきて、尿の中にも増えてきます。火事に例えると、L-FABPは小火(ぼや)を知らせる煙です。予め煙探知機を備えておけば警報が鳴り、大火事になる前に火を消すことができるのと同じで、尿の中にL-FABPが出てきたらすぐに手を打つ。そうすれば、慢性腎臓病という大火事を防ぐことができます。 慢性腎臓病にとっての煙探知機が、「L-FABP」です。L-FABPは病院で検査できますが、自分で測定できる検査キットもあります。自分で簡単にできる尿検査で、あなたが慢性腎臓病を発症するリスクを持っているかどうかを知ることができます。メタボ健診で分からない、L-FABPを測定しましょう。L-FABPは測定するタイミングで出方が違ったりしません。いつ測ってもいいのです。 L-FABP検査キットで陽性だったときにすべきこと L-FABPの検査キットで陽性判定が出たらどうしたらいいでしょうか。煙探知機の警報が鳴ったら火元に向けて消火器を噴射しますよね。検査結果が陽性になったということは、「このままでは慢性腎臓病になってしまうぞ」という警報が鳴ったのと同じです。そのときに行うべきことは、 (1)生活習慣の改善 (2)医療機関への相談 です。これはメタボ健診で引っかかったときと同じです。 (1)は自己流でもいいのですが、できれば管理栄養士や理学療法士などによる専門的なアドバイスを受けることを勧めます。 (2)については、かかりつけ医がある人は、まずそこで相談し、必要に応じて専門の医療機関を紹介してもらうのが良いと思います。かかりつけ医がない場合は、職場の産業医の先生に相談するか、腎臓内科を専門とする医師のいる医療機関を探して相談することを勧めます。 L-FABPを測定することで生活習慣改善努力の成果も判定できる 生活習慣改善のために自分で決めたこと、専門のスタッフや医師に受けたアドバイスを守ればメタボの悪さの要である内臓脂肪が減り、腎臓のはたらきも良くなるはずです。努力して良くなったかどうかを知りたくありませんか? L-FABPの自己検査キットは、陽性、つまり、将来的に慢性腎臓病を発症するリスクがあるかどうかがわかるだけでなく、線の色が濃いか薄いかで腎臓のダメージの程度が大まかにわかります。 まず、検査後のテストスティックをスマートフォンで撮影するなどしておきましょう。そして、生活習慣の改善や治療を始めてから一定の期間が経過したら、もう一度自己検査キットで測定します。そのときのテストスティックの線の色を前の検査のときの写真と比べてみてください。判定窓のTのところの線の色が前回よりも薄くなっていれば成果が上がっていることになります。 恐らく1ヵ月間、初期段階の人が生活習慣の改善に取り組めば明らかな変化が生じると思います。早く成果を知りたいという方は1ヵ月ぐらい経ったときに、着実に成果を知りたいという方はもう少し長い間隔を開けて検査し、前回のテストスティックの写真と線の色の濃さを比べてみるといいと思います。 公開日:2022/04/01
低たんぱく食などの食事療法が必要でも、患者さんにとっては「食べたい」気持ちをそう簡単に抑えられません。ご当地食材や郷土料理を病院給食に取り入れている徳島赤十字病院は、県民に愛される「金時豆」入りのバラ寿司を低たんぱくレシピとして提供して患者さんに満足してもらっています(第22回日本病態栄養学会学術集会のレシピコンテスト「地域の伝統を生かした腎臓病食」をもとに本記事を作成しました*)。 目次 医療機関が地域の食材を使っておいしく美しいオリジナルレシピを考案 患者さんの「おいしいものを食べたい」という思いを大切にしたい カレー風味フィッシュカツ、ハモの天ぷら、そば米汁は徳島の大好物メニュー 自慢の一品は金時豆入りバラ寿司 徳島県民に愛される金時豆 レシピを通じて患者さんが退院後も栄養管理に気をつけることにつながる 医療機関が地域の食材を使っておいしく美しいオリジナルレシピを考案 日本病態栄養学会では、医師や栄養学の医療関係者が一堂に会する学術集会が毎年開催されています。そのなかで、「地域の特色を生かしたオリジナルレシピ」を病院が考案して応募し、試食会とプレゼン発表を経て審査されるコンテストがあります。 2019年1月に開催された第22回日本病態栄養学会年次学術集会のレシピコンテストのテーマは、1日(3食)の総エネルギー量1800kcal、たんぱく質50g、食塩6gとした「地域の伝統を生かした腎臓病食」でした。 応募されたレシピには、患者さんや家族などが家庭で調理して楽しく食べてもらい、より健康になってもらいたいとの病院スタッフの熱い思いが込められています。 今回のレシピコンテストから、徳島赤十字病院の取り組みについて紹介します。 患者さんの「おいしいものを食べたい」という思いを大切にしたい 徳島赤十字病院は、小松島市にあります。同市は、太平洋と瀬戸内海が交わる海域に面しているうえ、自然に恵まれているので、海の幸だけでなく山の幸が豊富です。 患者さんは、低たんぱくや減塩といった栄養指導を受けていても、「おいしいものを食べたい」と思うのは当たり前ですし、地元の食べ慣れた食材やメニューを好みます。 そこで、患者さんの気持ちを大切にし、徳島県民に愛される食べ物をベースに病院給食を提供しています。ご当地食材と郷土料理をベースに考案した低たんぱく・減塩なレシピ1日3食〔総エネルギー(カロリー)量1816kcal、たんぱく質50.0g、食塩6.0g〕を紹介します。 朝の献立:フィッシュカツサンド、彩りサラダフルーツヨーグルト ■フィッシュカツサンド ポイント★小松島市発祥といわれる徳島県民のソウルフード「カツ天」 ■材料(1人分) 低たんぱくパン50g、無塩バター5g、レタス10g、胡瓜10g、フィッシュカツ30g、マヨネーズ10g ■作り方 低たんぱくパンは軽くトーストして厚みを半分に切り、無塩バターを塗る。 レタスは一口大に切り、胡瓜は薄切りにする。フィッシュカツは焼いて三等分する。 パンに2をはさみ、マヨネーズをかける。 ■彩りサラダ ■材料(1人分) カリフラワー40g、ベビーリーフ8g、ミニトマト25g、ノンオイルフレンチドレッシング10g ■作り方 ゆでたカリフラワー、4等分にしたミニトマト、ベビーリーフを盛ってドレッシングを添える。 ■フルーツヨーグルト ■材料(1人分) 無糖ヨーグルト70g、砂糖8g、りんご20g、みかん缶詰15g ■作り方 無糖ヨーグルトと砂糖を混ぜておく。 りんごは皮をむいていちょう切り、みかん缶詰めは一口大に切り、ヨーグルトと混ぜる。 昼の献立:自慢の1品「金時豆入りバラ寿司」、ほうれん草のごま和え、なすと豆腐の揚げ浸し ■金時豆入りバラ寿司 ■材料(1人分) 低たんぱくご飯180g、金時豆(乾燥)10g、ラメ4g、ちくわ15g、たけのこ15g、干ししいたけ2g、人参15g、こんにゃく15g、グリンピース5g、卵8g、砂糖5g、サラダ油1g、だし汁適量、しょうゆ1.5g、すし酢(塩1g、酢15g、砂糖10g) ■ほうれん草のごま和え ■材料(1人分) ほうれん草60g、ごま1g、しょうゆ1.5g ■なすと豆腐の揚げ浸し ■材料(1人分) 木綿豆腐50g、片栗粉6g、なす50g、サラダ油10g、だし汁適量、みりん3g、しょうゆ3g、ねぎ3g ■作り方 木綿豆腐は3~4㎝角に切り片栗粉をまぶして揚げる。 なすは乱切りにして素揚げにする。 だし汁に調味料を入れてひと煮立ちしたら、木綿豆腐となすを漬けてネギをかざる。 夜の献立:ごはん、ハモの天ぷら、胡瓜もみ、そば米汁 ■ごはん(1人分) ごはん … 200g ■ハモの天ぷら ポイント★ハモは漁獲量・漁獲金額とも全国トップクラスで「小松島市推奨の魚」 ■材料(1人分) ハモ200g、天ぷら粉15g、ベーキングパウダー少々、サラダ油15g、青じそ1枚、ソース5g ■作り方 天ぷら粉にベーキングパウダーを加えて水でといておく。 骨切したハモに薄く打ち粉(分量外)をし、1をつけて揚げ油で揚げる。青じそも1をつけて揚げる ■胡瓜もみ ■材料(1人分) 胡瓜60g、カットわかめ1.5g、人参10g、砂糖3g、酢5g、しょうゆ1g ■作り方 胡瓜は小口切りにして塩もみして軽く水洗いし絞っておく。人参は千切りにしてゆでる。カットわかめは水で戻しておく。胡瓜、人参、わかめを調味料で和える。 ■そば米汁 ポイント★そば米汁は徳島県祖谷地方の郷土料理でぷちぷちした歯ざわり ■材料(1人分) だし汁120g、そば米10g、板こんにゃく10g、人参10g、しいたけ10g、ねぎ3g、しょうゆ4g ■作り方 そば米はゆでておく。 こんにゃく・人参は千切り、ねぎは小口切りにする。 だし汁に醤油を入れて煮立て、2を入れひと煮する。 ゆでたそば米を入れてネギをかざる。 カレー風味フィッシュカツ、ハモの天ぷら、そば米汁は徳島の大好物メニュー 徳島赤十字病院医療技術部栄養課の栄原純子さんによると、徳島県民に親しまれた食材を取り入れたメニューです。朝の献立はカレー風味のフィッシュカツ、昼は甘い金時豆入りのバラ寿司、夜は特産物の高級魚ハモの天ぷら、郷土料理「そば米汁」です。 フィッシュカツは、小松島市発祥といわれる徳島県民のソウルフードです。魚のすり身にカレー粉などの香辛料を入れてパン粉をまぶして揚げたもので、「カツ天」の愛称で親しまれています。低たんぱくパンを使ってサンドイッチにしました。 ハモの天ぷらに関しては、漁獲量・漁獲金額とも徳島県が全国トップクラスの「小松島市推奨の魚」を取り入れました。同院の病院給食でも人気です。 そば米汁は、徳島県祖谷地方の郷土料理です。そば米とは、そばの実を塩ゆでして殻をむき、乾燥させたもので、昔からそば米を入れたすまし汁や、雑炊として食べられていました。現在は県全域で食べられており、ぷちぷちした歯ざわりが大人気です。 自慢の一品は金時豆入りバラ寿司 自慢の一品は、金時豆入りバラ寿司(五目寿司)です。以下はレシピの作り方です。 レシピ:金時豆入りバラ寿司 ■材料(2人分) 低たんぱくご飯360g、金時豆(乾燥)20g、ザラメ8g、ちくわ30g、たけのこ30g、干ししいたけ4g、人参30g、こんにゃく30g、グリンピース10g、卵16g、砂糖10g、サラダ油2g、だし汁適量、しょうゆ3g、すし酢(塩2g、酢30g、砂糖20g) ■作り方 すし酢をつくる ・塩、酢、砂糖を混ぜる 金時豆を煮る ・金時豆は流水で洗い、豆の3倍量の水に1晩つけてもどす。 ・鍋に湯を沸かして金時豆を入れ、沸騰直前までは強火にし、アクが出てきたら弱火にしてアクを丁寧にすくいとる。ふたをして静かにゆでる。 ・豆が指でつぶせるくらいの堅さになったら砂糖を1/3ずついれて煮る。 寿司の具をつくる ・ちくわは小口切り、たけのこ・戻した干ししいたけ・人参・こんにゃくは千切りにしてだし汁と醤油で炊く。 ・グリンピースはゆでる。 ・卵は砂糖を入れて混ぜ、サラダ油を熱したフライパンで焼き、錦糸卵を作る。 バラ寿司をつくる ・低たんぱくご飯をレンジで加熱し、熱いうちに1のすし酢を混ぜる。 ・ちくわ、たけのこ、しいたけ、人参・こんにゃくとご飯を混ぜる。 ・錦糸卵、グリンピース、金時豆をのせる(金時豆は混ぜてもよい)。 徳島県民に愛される金時豆 県外から来た人はみんな「お寿司に甘い金時豆が入っているの?!」とびっくりしたような顔をしますが、スーパーの総菜売り場のバラ寿司にはほぼ例外なく金時豆が入っています。金時豆が入っていないと、売れないといっても過言ではありません。 さらに、徳島県は関西風のお好み焼にも甘く煮た金時豆がたっぷり入ります。それほど金時豆は徳島県民に愛されている食べ物なのです。 甘い金時豆がなぜ愛されているのでしょうか。徳島県は昔から塩づくりがさかんでした。塩づくりをする人は、甘いものを食べたくなる。そんなことから金時豆を食べる習慣があり、徳島県民に愛されているという話があります。 栄原さんは、実は県外の出身です。金時豆入りバラ寿司をはじめて見たときには驚きましたが、それも一瞬。いまでは「このバラ寿司以外は考えられません」とのことです。 レシピを通じて患者さんが退院後も栄養管理に気をつけることにつながる 患者さんは、入院中は栄養管理に気をつけていても、在宅になれば元通りの食生活になってしまうケースがあります。 そこで、地元の方はやはり地元の食べ慣れたメニューや食材を好むので、徳島赤十字病院では普段から地元の人に好まれる郷土料理やご当地食材を病院給食のメニューに取り入れています。 低たんぱくな食事でも味を付けるなどの工夫を凝らした病院給食を食べて、よりおいしくなることを理解した患者さんは、「これは食べてもいい」という安心感と、食べてもよい食事量(適量)の確認ができます。 つまり、患者さんに病院給食を食べてもらう「体験学習」を通じて、栄養管理について理解してもらうようにしています。 体験学習で学んだ患者さんが退院して在宅になったとしても、低たんぱくなレシピを自宅の食事メニューに取り入れることにつながることが期待できます。 最後になりますが、栄原さんら徳島赤十字病院のスタッフは、食事療法が必要な患者さんが「食べたい」気持ちを大切にして、上手に食べるレシピの調理方法を患者さんとともに考えていきたいと、日々がんばっています。 *:⽇本病態栄養学会は、医師、栄養学研究者、管理栄養⼠が⼀堂に会し、病気の研究と患者さんのためになる栄養療法の開発を⽬指しています。毎年、学術集会が開催されており、名物セッションのレシピコンテストがあります。 2019年1⽉に開催されました第22回⽇本病態栄養学会年次学術集会(会⻑:横浜市⽴⼤学⼤学院医学研究科分⼦内分泌・糖尿病内科学教授・寺内康夫先⽣)のレシピコンテスト「地域の伝統を⽣かした腎臓病⾷」では、全国から33病院の応募があり、予選を勝ち抜いた15病院のレシピが試⾷会、プレゼン発表などを経て審査されました。 ■関連記事 北海道の「真鱈」で減塩・低たんぱくな味噌焼き 病院おすすめ・ご当地食材で腎臓にやさしいレシピ(1) 大阪庶民の味「お好み焼き」が減塩・低たんぱくな腎臓病食 病院おすすめ・ご当地食材で腎臓にやさしいレシピ(2) 名古屋名物「小倉ホットケーキ」はくせになる腎臓病食 病院おすすめ・ご当地食材で腎臓にやさしいレシピ(3) 千葉の太巻き祭り寿司は低たんぱく 病院おすすめ・ご当地食材で腎臓にやさしいレシピ(4) 健診で見逃されて腎不全や透析?糖尿病性腎臓病(DKD)に注意 腎臓は沈黙の臓器、慢性腎臓病(CKD)かどうかチェックしよう 公開日:2019/06/21 監修:徳島赤十字病院医療技術部栄養課 栄原純子さん
低たんぱく食に物足りなさを感じる患者さんのために、千葉県の順天堂大学附属浦安病院は千葉で採れた新鮮な野菜や海の幸をいかした病院給食を提供しています。自慢の1品は「太巻き祭り寿司」です(第22回日本病態栄養学会学術集会のレシピコンテスト「地域の伝統を生かした腎臓病食」をもとに本記事を作成しました*)。 目次 医療機関が地域の食材を使っておいしく美しいオリジナルレシピを考案 地産地消をモットーに四季折々の「千葉の恵み」をいかす ホンビノス貝、かぶ、春菊、チーバベリー(いちご)、ゆず、「ふなっしー」の梨など使用 自慢の1品は「太巻き祭り寿司」、花模様や動物の図柄に思わず微笑む料理 「お寿司は食べられないと思っていたけど、こうすればみんなと一緒に食べられる!」 食べることは生きるための活力です 医療機関が地域の食材を使っておいしく美しいオリジナルレシピを考案 日本病態栄養学会では、医師や栄養学の医療関係者が一堂に会する学術集会が毎年開催されています。そのなかで、「地域の特色を生かしたオリジナルレシピ」を病院が考案して応募し、試食会とプレゼン発表を経て審査されるコンテストがあります。 2019年1月に開催された第22回日本病態栄養学会年次学術集会のレシピコンテストのテーマは、1日(3食)の総エネルギー量1800kcal、たんぱく質50g、食塩6gとした「地域の伝統を生かした腎臓病食」でした。 応募されたレシピには、患者さんや家族などが家庭で調理して楽しく食べてもらい、より健康になってもらいたいとの病院スタッフの熱い思いが込められています。 今回のレシピコンテストから、千葉の食文化を大切にしながら患者さんに喜ばれるメニューを開発している順天堂大学附属浦安病院のレシピについて紹介します。 地産地消をモットーに四季折々の「千葉の恵み」をいかす 順天堂大学附属浦安病院は、東京ディズニーランドがある千葉県浦安市に位置します。浦安市は、いまやベッドタウンですが、かつては漁業の町として栄えていました。 千葉県は三方を海に囲まれ、温暖な気候と肥沃な土地に恵まれています。全国でも有数の農林水産王国なので、ピーナッツだけでなく、全国順位の高い品目が目白押しです。 同院は地産地消をモットーに、四季折々の新鮮な野菜の甘みや海産物の旨みをいかした病院給食を提供しています。薄味でもおいしく、香りや色彩、盛り付けにもこだわり、患者さんに「千葉の恵み」を食べる喜びを感じてもらえるよう工夫を重ねています。 千葉県で採れた新鮮野菜や海産物の素材をいかした1日3食のレシピを紹介します。総エネルギー(カロリー)量1846kcal、たんぱく質50.3g、食塩5.8gです。 朝の献立:ホンビノス貝のクラムチャウダー、かぶのフレンチサラダ、フルーツヨーグルト ■ホンビノス貝のクラムチャウダー ポイント★ホンビノス貝は千葉で一年中採れる貝で、実はハマグリよりもお手頃な価格です。里芋を加えることで小麦粉などを使用せず、とろみをつけました。 ■材料(1人分) ホンビノス貝40g(身)、水50g、白ワイン5g、里芋50g、人参20g、玉葱30g、マッシュルーム10g、ベーコン5g、バター5g、食塩0.2g、牛乳60g、パセリ1g ■作り方 鍋に白ワイン、水、貝(3%の食塩水に漬けて砂ぬき)を入れて貝が開くまで加熱し、ゆでた貝は殻から身を外し、茹で汁は取っておきます。 鍋にバターを溶かして、カットしたベーコン(5mm幅)、人参と玉葱(10~15mm角)、マッシュルーム(スライス)を炒めた後、茹で汁、水、里芋、調味料を入れて蓋をし、野菜に火が通るまで煮ます。 殻を取った貝を入れてひと煮立ちさせた後、牛乳を入れてひと煮立ちさせます。 器に盛り、仕上げにパセリを添えます。 ■かぶのフレンチサラダ ポイント★かぶは生産量日本一です。 ■材料(2人分) かぶ60g きゅうり10g りんご10g 干しぶどう5g ドレッシング(植物油5g、穀物酢4g、玉葱/りんご0.2g、食塩0.2g、白こしょう0.01g) ■作り方 かぶはいちょう切り、きゅうりは小口切りにして塩をふっておき、りんご(皮付)はいちょう切りにして水に漬けます。 りんご、玉葱をすりおろし、調味料を合わせてドレッシングをつくります 水気を切って塩を洗ったかぶときゅうり、いちょう切りしたりんご、レーズンをドレッシングとあわせて仕上げます。 ■フルーツヨーグルト(1人分) いちご(チーバベリー) … 30g キウイフルーツ ……… 20g プレーンヨーグルト … 30g 砂糖 …………………… 2g ■朝食分の栄養価 総エネルギー ……… 488kcal たんぱく質 ……… 14.9g 食塩 ……………… 2.2g 昼の献立:自慢の1品「太巻き祭り寿司」、さんが焼き、菜の花のピーナッツ和え、梨のジュレ ■太巻き祭り寿司(2人分) 低蛋白1/25ごはん … 200g しそジュース ……… 25g 焼き海苔 …………… 3.4g 笹の葉 ……………… 1枚 (寿司酢) 砂糖 ……… 5g 穀物酢 …… 25g 食塩 ……… 0.6g (薄焼き卵) 鶏卵 ……… 15g 植物油 …… 1g ■さんが焼き ポイント★さんが焼きも千葉県の郷土料理のひとつです。 ■材料(1人分) あじ60g(正味)、葱20g、しょうが3g、味噌4g、みりん1g、植物油2g、しその葉2g、春雨7g、植物油5g、はじかみ5g ■作り方 あじは三枚におろし、皮をはぎ、葱、しょうがはみじん切りにカットして調味料を合わせ、包丁でたたいて小判型に形成し(2個)、油を引いたフライパンで焼きます。春雨は175℃の油で器型に揚げます。 皿に春雨の器、しそを敷いて盛り付けます。また、しその葉を巻いてから焼くこともできます。 ■菜の花のピーナッツ和え ポイント★千葉県といえば落花生(ピーナッツ)!まろやかな味わいに仕上げました。 ■材料(1人分) 菜の花60g、ピーナッツ4g、砂糖2g、醤油3g、出汁2g ■作り方 菜の花は軸の硬いところを取り除き3-4cmにカットし、茹でて冷水に取る。 ピーナッツはすり鉢かミルサーで荒砕きにして調味料を合わせ、水気を絞った菜の花を和える。 ■梨のジュレ ポイント★妖精「ふなっしー」で有名な梨を使ったデザートです。 ■材料(1人分) 梨(新高)60g、水-A10g、ゼラチン2g、水-B70g、砂糖7g、レモン汁2g、ミントの葉1g ■作り方 梨は皮をむいて8mm角にカットする。ゼラチンをふやかす(水-Aを使用)。 鍋に水ーB、砂糖、梨を入れ、梨が透明になるまで煮る。その後、ふやかしたゼラチンを入れて沸騰させないようにして溶かす。 ■昼食分の栄養価 総エネルギー ……… 706kcal たんぱく質 ……… 22.3g 食塩 ……………… 2g 夜の献立:低たんぱくごはん、野菜たっぷり餃子、春菊と菊花和え、ゆず釜 ■低たんぱくごはん(1人分) キッセイゆめ1/25無洗米 … 200g ■野菜たっぷり餃子 ポイント★餃子は家族みんなで包んだりホットプレートで焼いたりすることのできるメニューです。ご飯にバウンドさせれば、低たんぱくご飯もおいしくいただけます。 ■材料(1人分6個) 豚挽き肉35g、水4g、キャベツ35g、ニラ5g、長ネギ5g、レンコン10g、しょうが3g、餃子の皮36g(6枚)、植物油5g、餃子のたれ(醤油3g、ごま油1g、ラー油1g、食塩0.2g、黒こしょう0.1g) ■作り方 豚挽肉と水を肉が白くなるまで混ぜておき、みじん切りにしたキャベツ・ニラ・長ネギ・しょうが、荒みじんにしたレンコン(2~3mm角にカット)を調味料と合わせて混ぜ合わせます。 6等分にし、餃子の皮で包み、ホットプレートに油をひいて焼きます。 ■春菊と菊花和え ポイント★春菊も千葉で収穫量の多い野菜のひとつです。ほろ苦い香りが食欲増進につながります。菊の花の黄色をアクセントにします。 ■材料(1人分) 春菊60g、食用菊5g、醤油3g、出汁7g ■作り方 春菊は軸の硬いところを取り除き3~4cmにカットして茹でます。 菊の花は酢を入れた湯で茹でた後、水気を絞って調味料を加えます。 ■ゆず釜 ポイント★千葉では自宅でゆずを植えている家庭が多いので、この実を器に利用したゆず釜をメニューに加えました。 ■材料(1人分) 大根50g 人参10g、ゆず1個、ゆずの皮1g、合わせ酢(砂糖3g、食塩0.3g、穀物酢5g、出汁5g、ゆず果汁5g) ■作り方 大根と人参はせん切りにし、塩をふります。 ゆずはへたの部分(上1~1.5㎝)をカットし(蓋として使用)中身をくりぬき、器にします。中身からゆず果汁を絞り、底の皮を少し剥き千切りにします。 合わせ酢をつくり、水で塩を洗った大根・人参と合わせてゆずの器に盛り、千切りのゆずの皮を飾ります。 ■夕食分の栄養価 エネルギー ……… 652kcal たんぱく質 ……… 13.1g 食塩 ……………… 1.6g ホンビノス貝、かぶ、春菊、チーバベリー(いちご)、ゆず、「ふなっしー」の梨など使用 順天堂大学附属浦安病院栄養科の高橋徳江さんによると、朝食のクラムチャウダーには、千葉で一年中採れる貝でハマグリに似た大粒で味の濃いホンビノス貝を使っています。実はハマグリよりも価格はお手ごろです。 国内2位の生産量を誇る里芋を加えてとろっと感をだしました。チャウダーにぴったりです。 かぶのフレンチサラダのかぶも千葉県で生産量が多い野菜です。 フルーツヨーグルトには、千葉県で開発されたいちご(チーバベリー)を使っています。大粒で果汁がたっぷり、甘味に加えて程よい酸味があります。 昼の献立は、太巻き寿司に使用したのりや、さんが焼きのアジも千葉の海の恵み、菜の花やピーナッツ、梨(妖精ふなっしーで有名です)は地元で安く手に入る食材です。 夜の献立に関しては、餃子のあんに使用したキャベツやレンコン、春菊、大根や人参も生産量が上位の食材です。 餃子は、家族みんなで楽しみながら包み、ホットプレートを使用しながら焼くのはいかがでしょうか?家族の会話もきっと弾むはずです。 ゆず釜に関しては、千葉ではゆずを自家栽培している家庭が多いので活用してもらいたいとの思いからです。 自慢の1品は「太巻き祭り寿司」、花模様や動物の図柄に思わず微笑む料理 千葉県の郷土料理の1つに太巻き寿司があります。寿司の芯を花、文字などさまざまな絵柄を巻き、きれいな花模様やかわいい動物の図柄に思わず微笑んでしまう料理です。 冠婚葬祭や行事、地域の集まりのときには「祭り寿司」、「飾り寿司」とも呼ばれるほど、ごちそうとして振る舞われることが多く、千葉県内の学校では行事食として提供されることもあるそうです。 高橋さんからは「同院でも、県民の日や創立記念日に行事食として提供していますし、小児科で提供している給食のなかでは大好評のメニューのひとつです」との話がありました。 レシピ:太巻き祭り寿司 ■材料(2人分) 低蛋白1/25ごはん200g、しそジュース25g、寿司酢(砂糖5g、穀物酢25g、食塩0.6g)、薄焼き卵(鶏卵15g、植物油1g)、焼き海苔3.4g、笹の葉1枚 ■作り方 寿司飯を作る ・桃色の御飯は低蛋白米1合に対し、しそジュース55ml+水125ml、白御飯は低蛋白米1合に水180mlで炊く。 ・炊き上がった白御飯、桃色御飯各100gに対して合わせておいた寿司酢15mlを合わせる ポイント★桃色は身体にやさしいしそジュースを使用しており、病院食にぴったりです。 寿司を巻く ・海苔は1枚を横4等分にカットしたものを5枚と、カットしていないもの1枚用意する ポイント★千葉県は海に面している地域があります。海苔も特産品のひとつです。 ・卵を溶き、薄焼き卵を焼く 白酢飯を150gと60g用意する。桃色酢飯は38gを5つ用意する(2人分) カットした海苔1枚に桃色酢飯38gで細巻きを5本作る。簀巻きに細巻き5本、中央に薄焼き卵を置き、桃の花の形を作る カットしていない海苔の上下2cmほどをあけて白酢飯150gを広げ、中央に⑦をのせて簀巻きで巻き、大きい海苔の合わせ部分に残りの酢飯を広げて巻く 8当分にカットして盛り付ける(1人分は4つ) 「お寿司は食べられないと思っていたけど、こうすればみんなと一緒に食べられる!」 順天堂大学附属浦安病院の自慢の1品「太巻き祭り寿司」を実際に作った調理担当者によると、通常のごはんより低蛋白米は粘りが少ないため、このように細工をしてもごはんの粒がつぶれにくく作りやすいとの話です。 通常、低たんぱくご飯は食べにくいと患者さんからいわれますが、「太巻き祭り寿司」は千葉の特産である海苔の香ばしさと甘酸っぱい酸味のある寿司飯で食欲がアップしているようで喫食率100%です。患者さんから以下のような声が聞かれています。 「低たんぱくご飯とは思えないくらい美味しい」 「お寿司なんてもう食べられないと思っていました。でも、こうすれば、みんなと一緒に食べられるのね!」 「家族と一緒に作ったら楽しそう。どの食材も身近に手に入るものだから、自宅でもできそうだわ」 患者さんの声は、スタッフの喜びとやりがいとなっています。献立や作り方などの問い合わせも多く、スタッフが栄養に関するお話をするきっかけとして役立っています。 食べることは生きるための活力です 低たんぱく食に対し、患者さんからよく聞かれる声として、以下のようなものがあります。 「お肉やお魚が小さくて悲しくなる。もうちょっと食べるのはダメ?」 「低たんぱく御飯って、そもそも食べにくいんですよね」 「味が薄いと物足りなくて」 そこで、高橋さんら同院栄養科のスタッフは、「低たんぱく御飯をもっと美味しく食べられれば、たんぱく質食品を増やせて、継続しやすくなる!」、「千葉で採れた新鮮な野菜や海産物で素材の味を活かそう!」、「ハレの日や家族揃った日に、食べたいメニューを取り入れよう!」と考え、千葉の食文化を大切にしたレシピを患者さんに提供しています。 最後に、高橋さんからのメッセージです。 たんぱく質を抑えるために、千葉で採れた旬の野菜や海の幸を増やしたレシピで満足感を高めるように努めています。食べることは、生きるための活力です。栄養科スタッフは、「お・も・て・な・し」の心と、豊富な地元の食材と食文化を大切にしながら、患者さんに喜ばれるメニューの開発と食事作りに日々励んでいます。 *:⽇本病態栄養学会は、医師、栄養学研究者、管理栄養⼠が⼀堂に会し、病気の研究と患者さんのためになる栄養療法の開発を⽬指しています。毎年、学術集会が開催されており、名物セッションのレシピコンテストがあります。 2019年1⽉に開催されました第22回⽇本病態栄養学会年次学術集会(会⻑:横浜市⽴⼤学⼤学院医学研究科分⼦内分泌・糖尿病内科学教授・寺内康夫先⽣)のレシピコンテスト「地域の伝統を⽣かした腎臓病⾷」では、全国から33病院の応募があり、予選を勝ち抜いた15病院のレシピが試⾷会、プレゼン発表などを経て審査されました。 公開日:2019/06/12 監修:順天堂大学附属浦安病院栄養科 高橋徳江さん
腎臓の病気だけどパンが食べたい。しかし、たんぱく調整食品の食パンでトーストを作ると、食べているうちに固くなり食べにくくなることがあるようです。そこで、北医療生活協同組合北病院(愛知県名古屋市)では、ふわふわとしたケーキのような食感がある名古屋名物「小倉ホットケーキ」を考案しました(第22回日本病態栄養学会学術集会のレシピコンテスト「地域の伝統を生かした腎臓病食」をもとに本記事を作成しました*)。 目次 医療機関が地域の食材を使っておいしく美しいオリジナルレシピを考案 主食をたんぱく質調整食品に置き換えることで副菜を多くだせることが特徴 自慢の一品は小倉ホットケーキ、バター・小倉あんのコラボとふわふわ食感にコツあり レシピ:小倉ホットケーキ 自宅で小倉ホットケーキを作って食べる高齢患者さんも多く人気 医療機関が地域の食材を使っておいしく美しいオリジナルレシピを考案 日本病態栄養学会では、医師や栄養学の医療関係者が⼀堂に会する学術集会が毎年開催されています。そのなかで、「地域の特色を生かしたオリジナルレシピ」を病院が考案して応募し、試食会とプレゼン発表を経て審査されるコンテストがあります。 2019年1月に開催された第22回日本病態栄養学会年次学術集会のレシピコンテストのテーマは、1日(3食)の総エネルギー(カロリー)量1800kcal、たんぱく質50g、食塩6gとした「地域の伝統を生かした腎臓病食」でした。 応募されたレシピには、患者さんや家族などが家庭で調理して楽しく食べてもらい、より健康になってもらいたいとの病院スタッ フの熱い思いが込められています。 今回のレシピコンテストから、北医療生活協同組合北病院が考案したレシピについて紹介します。 主食をたんぱく質調整食品に置き換えることで副菜を多くだせることが特徴 北医療生活協同組合北病院は、愛知県の中心部、名古屋市にある病院です。同院でだしている腎臓病食は1日3食とも主食をたんぱく質調整食品にしているので、副菜が多いのが特徴です。 常食に近い食事として患者さんから喜ばれているレシピを紹介します。 3食1人前で総カロリー1809.4kcal、たんぱく質50.1g、塩分5.43g、脂質72g、炭水化物234.8gです。 朝の献立:自慢の1品「小倉ホットケーキ」、野菜サラダ、コーヒー、コアヨーグルト ■小倉ホットケーキ(1人分) グンプンのT.Tホットケーキミックス … 50g サラダ油 ………… 5g 卵 ………………… 30g 炭酸水 …………… 30mL サラダ油 ………… 5g 小豆餡(粒餡) … 15g バター(有塩) … 5g ■野菜サラダ(1人分) レタス …………… 20g きゅうり ………… 15g ミニトマト ……… 15g ゆで卵 …………… 30g フレンチドレッシング … 5g ■コーヒー(1人分) コーヒー(抽出液) ■コアヨーグルト(1人分) コアヨーグルト … 1個 ■朝食分の栄養価 エネルギー ……… 560kcal たんぱく質 ……… 12.6g 脂質 ……………… 27g 炭水化物 ………… 64.2g 食塩 ……………… 0.83g 昼の献立:ごはん、豚肉のしょうが焼き、ブロッコリーのポン酢和え、コンソメスープ ■ご飯(1人分) ゆめご飯1/25 … 140g ポイント★低たんぱくのパックご飯を温めた後、粗熱が取れるまでふたの部分を下にしてご飯を蒸らしておく。 ■豚肉のしょうが焼き(1人分) 豚肉の仕込み:豚肉をバットに広げておき、酒、濃い口しょうゆ、すりおろした生姜、にんにくを混ぜ合わせたたれに5分程度漬け込んでおきます。 豚肉肩ロース … 50g 酒 ……………… 4g 濃口醤油 ……… 5g すりおろし生姜 … 2g にんにく ……… 1g サラダ油 ……… 10g 玉葱 …………… 50g ピーマン ……… 30g 千切りキャベツ … 30g 千切り人参 …… 3g ■ブロッコリーのポン酢和え(1人分) ブロッコリー …… 50g ポン酢 …………… 5g すりごま ………… 0.5g ■コンソメスープ(1人分) コンソメ ………… 2g 水 ………………… 150mL こしょう ………… 0.1g 乾燥パセリ粉 …… 0.2g ■昼食分の栄養価 エネルギー ……… 516kcal たんぱく質 ……… 13g 脂質 ……………… 21g 炭水化物 ………… 68.4g 食塩 ……………… 1.98g 夜の献立:味噌煮込み風うどん、天むす、フルーツの盛り合わせ ■味噌煮込み風うどん(1人分) 味噌煮込みうどん:1人用の土鍋に水150mlとだし入り味噌を入れ、強火で10分茹でたたうどん、椎茸、鶏肉、油揚げを加えて中火にかけ、肉と椎茸に火か通ったら卵を割り入れ、ほうれん草を加え再び蓋をして加熱します。 そらまめ食堂たんぱく質調整うどん 乾麺 … 60g 水 ………………… 150mL だし入り赤味噌 … 15g みりん …………… 5g 冷凍ほうれん草 … 20g 生しいたけ ……… 30g 油揚げ …………… 10g 鶏もも肉 ………… 30g 卵 ………………… 60g ポイント★低たんぱくうどんは、必ず茹でた後に水で洗う(でんぷん臭が抜け、コシが出て美味しくなります)。 ■天むす(1人分) ご飯 ……………… 70g えび ……………… 15g から揚げ粉 ……… 2g サラダ油 ………… 5g 焼き海苔 ………… 3g ■フルーツの盛り合わせ(1人分) オレンジ ………… 30g 種なし巨峰 ……… 30g リンゴ …………… 30g ■夕食分の栄養価 エネルギー ……… 733.4kcal たんぱく質 ……… 24.5g 脂質 ……………… 24g 炭水化物 ………… 102.2g 食塩 ……………… 2.62g 自慢の一品は小倉ホットケーキ、バター・小倉あんのコラボとふわふわ食感にコツあり 自慢の1品は名古屋名物の「小倉ホットケーキ」です。 北医療生活協同組合北病院栄養科の片山郁乃さんによると、腎臓病の患者さんも普通のパンと同じようにたんぱく質調整食パンをトーストにして食べたいと思っている人が多いのですが、これらのパンは冷めると固くなって食べられないケースがあるそうです。 患者様から冷めても軟らかく、さらに保存ができればといった要望があったため、パンのかわりにホットケーキミックスを使うことを考えました。 考案する際に意識した点は、冷めても固くならず、高齢者でも食べやすいうえ作り方は簡単、1食あたり100円以下になるようにしました。 さらに、ただのホットケーキでは面白くないということで、以下のような工夫を凝らしました。ポイントは3点です。 ■名古屋名物の小倉トースト風 小倉トーストは大正10年に考案されました。この時代はハイカラブームで、当時の喫茶「満つ葉」でバタートーストをメニューに加えたところ、客がトーストにぜんざいを浸して食べていました。そこで、トーストに小倉餡をのせて提供したのが始まりとされています。 90年以上たった今でも老若男女を問わず人気が高い名古屋の名物です。 ■小倉ホットケーキを毎日食べたくなるくらいのくせになるおいしさ バターと小倉あんの配合を1:3にしています。バターと小倉あんのコラボレーションとふわふわ食感のケーキが口の中で溶けあい、食べるたびにすっきりとした甘さが楽しめるように工夫しました。 ■スポンジケーキのようなふわふわ感 ふわふわとしたスポンジケーキのような食感を出すポイントは炭酸水です。 ホットケーキミックスのベーキングパウダーには、重曹と酒石酸(炭酸ガスの出るもの)が含まれており、水を加えると両成分が反応し、炭酸ガスが生じて生地が膨張します。 そこで、生地に加える水の代わりに炭酸水を入れました。ベーキングパウダーから生じるガスと、炭酸水に含まれる炭酸ガスが混ざることで、さらに膨張します。膨らむ成分を余分に加えたことで、ふわふわ感のある食べやすいケーキを実現させました。 レシピ:小倉ホットケーキ ■材料(2人分) グンプンのT.Tホットケーキミックス100g、サラダ油10g、卵60g、炭酸水60mL、サラダ油10g、小豆餡(粒餡)30g、バター(有塩)10g ■作り方 ケーキ型をつくる ・アルミ箔を70cmの長方形の長さに切り、2つ折りにして35cmの長さにする。 ・35cmの長さのアルミ箔を4cm幅になるようにテープ状に折る。 ・35cmのテープで直径10cmのケーキ型の枠を作り、外れないようにホッチキスで止めておく。 生地をつくる ・作ったケーキ型の枠の内側にサラダオイルを塗っておく。 ・サラダ油と卵、炭酸水をよく混ぜ合わせたうえで、ホットケーキミックスを加えてよく混ぜ合わせる。 ケーキを焼く ・ケーキ型の枠を深めのテフロン加工のフライパンもしくはホットプレートに入れ、弱火にかけ温めておく。 ・枠から流れ出ないように生地を1/3程度枠の中に入れ、弱火のまま少し加熱してから残りの生地を入れ、蓋をして10~15分焼く。 ・表面の生地に流動性がなくなったらケーキを裏返し、蓋をして3分ほど中に火が通るまで焼く。 ★ホットケーキミックスに加える水の代わりに炭酸水を加える事がポイント! ホットケーキの型枠は、目玉焼きの型枠でも代用できます。生地は約2倍程度膨らむため、目玉焼きの枠を使う場合は、生地の量を加減してください。 自宅で小倉ホットケーキを作って食べる高齢患者さんも多く人気 たんぱく質調整食品の食パンでトーストを作ると、食べているうちに固くなってしまうとの話を聞くことがあります。そこで、同院はパンの代用として、軟らかくてケーキのような食感のホットケーキミックスを使った献立を考えました。 ポイントは、バターと小倉あんの配合比率と、炭酸水を加えることです。 小倉ホットケーキはトーストではありませんが、スポンジケーキのような食感で、冷めてもおいしく食べられ、高齢者に人気があるメニューのひとつです。 小倉ホットケーキを作って食べている高齢患者さんから片山さんに以下の逸話があります。 家族と朝食を食べていたとき、孫が小倉ホットケーキを食べている患者さんを見て、「わたしも、おじいちゃんとおなじものが食べたい」と泣かれてしまい、困ってしまったと笑いながらエピソードを話されたそうです。 同院の腎臓病食は、主食を3食ともたんぱく質調整食品にしているところが特徴です。片山さんら病院スタッフは、今後も食事療法を楽しんでいただくために、たんぱく質調整食品を使った名古屋名物レシピを考案していきたいとしています。 *:⽇本病態栄養学会は、医師、栄養学研究者、管理栄養⼠が⼀堂に会し、病気の研究と患者さんのためになる栄養療法の開発を⽬指しています。毎年、学術集会が開催されており、名物セッションのレシピコンテストがあります。 2019年1⽉に開催されました第22回⽇本病態栄養学会年次学術集会(会⻑:横浜市⽴⼤学⼤学院医学研究科分⼦内分泌・糖尿病内科学教授・寺内康夫先⽣)のレシピコンテスト「地域の伝統を⽣かした腎臓病⾷」では、全国から33病院の応募があり、予選を勝ち抜いた15病院のレシピが試⾷会、プレゼン発表などを経て審査されました。 ■関連記事 腎臓は沈黙の臓器、慢性腎臓病(CKD)かどうかチェックしよう 徳島県民に愛される「金時豆入りバラ寿司」を低たんぱくアレンジ 病院おすすめ・ご当地食材で腎臓にやさしいレシピ(5) 健診で見逃されて腎不全や透析?糖尿病性腎臓病(DKD)に注意 公開日:2019/05/22 監修:北医療生活協同組合北病院栄養科 片山郁乃さん
腎臓食は、病期により食塩制限やたんぱく質の調整が必要とされ、「食べたいものが食べられない」といった声が聞かれます。そこで、関西電力病院(大阪府)では、大阪人が幼いころから慣れ親しみ、こよなく愛する「お好み焼き」を病院給食として提供しています(第22回日本病態栄養学会学術集会のレシピコンテスト「地域の伝統を生かした腎臓病食」をもとに本記事を作成*)。 目次 医療機関が地域の食材を使っておいしく美しいオリジナルレシピを考案 患者さんが楽しめる病院給食をモットー 自慢の一品:大阪の庶民の味「お好み焼き」、濃縮だし汁、花かつお、とろろ芋に一工夫 レシピ:お好み焼き お好み焼きのソースは15gで十分、塩分管理にもつながる 医療機関が地域の食材を使っておいしく美しいオリジナルレシピを考案 日本病態栄養学会では、医師や栄養学の医療関係者が一堂に会する学術集会が毎年開催されています。そのなかで、「地域の特色を生かしたオリジナルレシピ」を病院が考案して応募し、試食会とプレゼン発表を経て審査されるコンテストがあります。 2019年1月に開催された第22回日本病態栄養学会年次学術集会のレシピコンテストのテーマは、1日(3食)の総エネルギー(カロリー)量1800kcal、たんぱく質50g、食塩6gとした「地域の伝統を生かした腎臓病食」でした。 応募されたレシピには、患者さんや家族などが家庭で調理して楽しく食べてもらい、より健康になってもらいたいとの病院スタッフの熱い思いが込められています。 今回のレシピコンテストから、関西電力病院が実際に給食として患者さんに提供しているレシピについて紹介します。 患者さんが楽しめる病院給食をモットー 関西電力病院は、大阪府の北西部にある病院です。同院の栄養管理室では、患者さんが楽しめるようなメニューを取り入れることを病院給食のモットーとしています。 今回、減塩・低たんぱく質かつエネルギーをアップして食べやすい腎臓病食として朝・昼・夜のレシピを考えました。 1日の総カロリー量1783kcal、たんぱく質48g、食塩5.9g、脂質69.1g、炭水化物239gです。 朝の献立:パン、トマト煮、サラダ、果物、紅茶 ■パン(1人分) ロールパン ……… 80g ジャム …………… 145g マーガリン ……… 6g ■トマト煮(1人分) トマト煮:鶏もも肉は20gの大きさにカット、玉ねぎはくし切り、人参は乱切り、キャベツはざく切りにして軽く炒め、コンソメ、ダイストマト、水を入れて煮ます。 鶏もも肉 ………… 40g 玉ねぎ …………… 20g ニンジン ………… 20g キャベツ ………… 40g コンソメ ………… 1g ダイストマト缶 … 20g 水 ………………… 30g ■サラダ(1人分) レタス …………… 30g アスパラ ………… 20g カリフラワー …… 20g トレビス ………… 10g シーザードレッシング … 10g ■果物(1人分) オレンジ ………… 80g ■紅茶(1人分) 紅茶の葉 ………… 1.8g お湯 ……………… 150g ■朝食分の栄養価 エネルギー ……… 531kcal たんぱく質 ……… 19.7g 脂質 ……………… 19.4g 炭水化物 ………… 69.3g 食塩 ……………… 1.1g 昼の献立:自慢の1品「お好み焼き」、焼きナス、海藻サラダ、果物 ■お好み焼き(1人分) 小麦粉 …………… 40g とろろ芋 ………… 30g 卵 ………………… 30g 濃縮だし汁 ……… 50g※ キャベツ ………… 100g 葱 ………………… 5g 豚バラスライス … 30g 花鰹 ……………… 1g お好みソース …… 15g マヨネーズ ……… 12g ■焼きナス(1人分) 焼きなす冷凍 …… 25g おろし生姜 ……… 1.5g 濃縮だし汁 ……… 15g※ 糸かつお ………… 0.5g ■海藻サラダ(1人分) きゅうり ………… 20g レタス …………… 15g 海藻ミックス …… 1g 焙煎ごまドレッシング … 15g ■果物(1人分) りんご …………… 40g キウイ …………… 40g ■昼食分の栄養価 エネルギー ……… 567kcal たんぱく質 ……… 14.4g 脂質 ……………… 29.1g 炭水化物 ………… 61.1g 食塩 ……………… 2.4g 夜の献立:ごはん、天ぷら、天つゆ、炊き合わせ、春雨サラダ ■ごはん(1人分) 米飯 ……………… 180g ■天ぷら(1人分) エビ ……………… 32g 蓮根 ……………… 20g 南瓜 ……………… 15g しいたけ ………… 10g オクラ …………… 10g 天ぷら粉 ………… 18g 植物油 …………… 18g ■天つゆ(1人分) 濃い口醤油 ……… 2g みりん …………… 4g 濃縮だし汁 ……… 40g※ 大根おろし ……… 10g ■炊き合わせ(1人分) にんじん ………… 20g たけのこ ………… 15g 濃口醤油 ………… 1g みりん …………… 2g 濃縮だし汁 ……… 30g※ 絹さや …………… 6g ■春雨サラダ(1人分) 春雨サラダ:ボウルに酢、三温糖、濃口醤油、ごま油を入れ、細切りにしたニンジン、ほうれん草、錦糸卵、茹でた春雨を和えます。 はるさめ ………… 10g 人参 ……………… 10g ほうれん草 ……… 10g 錦糸卵 …………… 5g 酢 ………………… 5g 三温糖 …………… 3g 濃口醤油 ………… 2g ごま油 …………… 1g ■夕食分の栄養価 エネルギー ……… 685kcal たんぱく質 ……… 13.9g 脂質 ……………… 20.6g 炭水化物 ………… 108.6g 食塩 ……………… 1.8g ※:濃縮だし汁は、水1000mLを沸騰させ、顆粒だし(だしの素)13gを入れる。お好み焼き1人前につき濃縮だし汁50g、焼きナスは15g、天つゆは40g、炊き合わせは30gを使用します。 写真提供:関西電力病院栄養管理室 坂口真由香先生 自慢の一品:大阪の庶民の味「お好み焼き」、濃縮だし汁、花かつお、とろろ芋に一工夫 腎臓病食は、食塩制限とたんぱく質の調整に伴って、味付けが物足りなくなりがちです。そこで、関西電力病院では患者さんに食事を楽しんでもらうために、食いだおれの街・大阪の庶民に好まれている「粉もの」のお好み焼きを病院給食として提供しています。 お好み焼きのルーツは、安土桃山時代に千利休が茶会で頻繁にだしていたといわれる「麩の焼き(ふのやき)」とされています。明治時代は東京でもんじゃ焼き、どんどん焼きが派生し、大正時代には広島と大阪でお好み焼きへとアレンジされて現在にいたります。 関西電力病院において患者さんに提供しているお好み焼きへのこだわりは以下の3つです。 濃縮だし汁:通常よりも2倍濃いだし汁を使用しているので、お好み焼きの生地にもしっかりと味が乗ります。ソースが少なくても味を楽しめます。 花かつお:豚バラ肉が隠れるよう、肉の上に散らして焼くことで、火が肉に直接通ることを避けられるので、肉がしっとり柔らかく仕上がり、味に深みを出すことができます。 とろろ芋:小麦粉と同量にすることで、ふっくらと軟らかく仕上がります。 レシピ:お好み焼き ■材料(2人分) 小麦粉80g、とろろ芋60g、卵60g、濃縮だし汁100g、キャベツ200g、葱10g、豚バラスライス60g、花かつお2g、お好みソース30g、マヨネーズ24g ■作り方 濃縮だし汁を作る ・水1000mlを沸騰させ、顆粒だし(だしの素)13gを入れる。お好み焼き1人前あたり濃縮だし50g使用、2人分は100g お好み焼きの具を作る ・キャベツは3㎜幅の千切りにする。ねぎは小口切りにする。 ・濃縮だし汁、小麦粉、とろろ芋、卵、キャベツとねぎを入れて混ぜる。 お好み焼きを焼く ・セルクルに1人前ずつ2を入れ、その上に5㎝幅にカットした豚バラをのせる。 ・豚バラが隠れるよう全体に花かつおを散らす。(花鰹により、豚バラに直接火が通るのを防ぐため、肉が軟らかく仕上がります) ・かつお節面を下にして両面に焼き目をつける*。 *:関西電力病院では、100食を調理するので、温度180℃、湿度20℃に設定したスチームコンベクションオーブンで13分焼きます。 仕上げる ・両面に焼き目がついたら、皿に盛る。ソース、マヨネーズを塗って完成。 お好み焼きのソースは15gで十分、塩分管理にもつながる 関西電力病院栄養管理室の坂口真由香さんによると、腎臓病食はたんぱく質の調整のために肉や魚が少なくなりがちですし、塩分も制限しないといけませんが、その一方でエネルギー(カロリー)の確保が重要とのことです。 そこで、1日3食のうちの1食を「お好み焼き」とすることによって、“なんと言うことでしょう!“、2食はたんぱく質を含む食材を使いやすくなります。 また、お好み焼きは少量の豚バラ肉によって満足感が得られますし、ソースでしっかり味付けできる点で味にインパクトを与えます。栄養面でも豚バラ肉とマヨネーズの脂質により、エネルギー(カロリー)アップを図ることができる利点もあります。 ただ、お好み焼きはソースを使うので食塩の摂取が過剰になりがちです。 関西電力病院では、1食あたりのソース量は15gです。味付けは十分で、患者さんの満足度は高いので、ソースの適正量がわかりますし、1日の献立を通して食塩の配分を理解することにもつながります。 最後になりますが、大阪名物「お好み焼き」は、食べ応えがあり、ソースのインパクトで味にメリハリをつけることができます。 調理のコツとしては、濃縮だし汁、花かつお、とろろ芋を取り入れて一工夫を凝らすこと、エネルギー量を確保しながらも、食塩の制限と共にたんぱく質の調整もできます。 同院では、患者さんが地元の味を楽しんでもらえるような病院給食を提供するために、日々努力しています。 *:日本病態栄養学会は、医師、栄養学研究者、管理栄養士が一堂に会し、病気の研究と患者さんのためになる栄養療法の開発を目指しています。毎年、学術集会が開催されており、名物セッションのレシピコンテストがあります。 2019年1月に開催されました第22回日本病態栄養学会年次学術集会(会長:横浜市立大学大学院医学研究科分子内分泌・糖尿病内科学教授・寺内康夫先生)のレシピコンテスト「地域の伝統を生かした腎臓病食」では、全国から33病院の応募があり、予選を勝ち抜いた15病院のレシピが試食会、プレゼン発表などを経て審査されました。 その結果、関西電力病院の自慢の1品「お好み焼き」のレシピ作品で最優秀賞に輝きました。 公開日:2019/05/20 監修:関西電力病院栄養管理室 坂口真由香さん
塩分の摂りすぎは、生活習慣に関わる心臓の病気や脳卒中、腎臓病などを悪化させるため、注意しましょう。そこで、塩分の摂りすぎを簡便に評価できる塩分チェックシート*1があります。実際に医療機関で活用している福山市民病院(広島県)の川崎祐子先生が心臓の病気で入院中の患者さんをチェックした結果、点数が高いのは心筋梗塞など急病で入院し、BMIが高く食習慣の改善ができておらず、減塩指導が必要な患者さんだったことを、第22回日本病態栄養学会年次学術集会*2で報告しました。 目次 塩分チェックシートと食事摂取量などをあわせて総合的に評価すると有用 心筋梗塞など急に入院した患者さんやBMI高い人は食生活の見直しと減塩! 塩分チェックシートと食事摂取量などをあわせて総合的に評価すると有用 川崎先生によると、福山市民病院で心臓の病気で入院している患者さん100人(心不全35人、急性心筋梗塞21人、狭心症16人、不整脈16人など)のチェック点数*3と、肥満(BMI25以上)、病気、年齢や性、身長などとの関係性を調べました。 まず、患者背景に着目して調べると、平均点数が高いのは男性(男性15.1点、女性12.3点)、肥満(肥満15.8点、肥満でない13.3点)でした。 また、塩分チェック点数が高くなる特徴としては年齢が若いこと、身長が高いこと、BMIが高いことが分析からわかりました。 このことから、塩分チェックシートと食事摂取量などともふまえて総合的に評価して、患者さんに栄養指導をすると、より効果的なことが考えられました。 心筋梗塞など急に入院した患者さんやBMI高い人は食生活の見直しと減塩! 心臓の病気ごとにグループ分けして、塩分チェックの点数の平均点を見ると、塩分多めと考えられて減塩の工夫が必要とされるレベル(14~19点)にあった病気は、心不全(平均14.9点)と急性心筋梗塞(17.2点)の患者さんでした(図)。 図:心臓の病気別の塩分チェック点数 心不全 14.9±4.9 AMI:急性心筋梗塞17.2±5.4 狭心症13.3±3.8 不整脈10.9±6.0 その他12.8±3.1 図の提供:福山市民病院・川崎祐子先生 そこで、急性心筋梗塞とそれ以外の心臓の病気でグループ分けして調べると、急性心筋梗塞の患者さんでは年齢が若くBMIが高いという特徴があり、塩分チェック点数が高いことから、減塩も含めた栄養指導が重要なことがわかりました。 川崎先生によると、心筋梗塞など急な心臓の病気で入院した人は、食習慣が改善できていない状態でBMIが高いことや塩分摂取量が多い可能性があるので、栄養状態に注意していく必要性がわかりました。 また、患者さんの減塩指導は重要ですが、病院内での栄養指導の時間が限られています。そこで、塩分チェックシートは簡便で有用な評価ツールであることが、今回の検討からわかりました。 今後、年齢や体格(身長、BMIなど)、食事の摂取状況を総合的に評価したうえで、塩分チェックシートを活用していきたいとの話でした。 *1:塩分チェックシートは、簡便に評価できるものです。医療機関では、塩分が多い食品を控えることや食習慣の改善など栄養指導の参考に用いられています。 チェック点数35点満点のうち、14~19点は、塩分摂取量が多めで減塩の工夫が必要、20点以上は塩分がかなり多く基本的な食生活の見直しが必要との目安になっています。 参考文献:血圧 2013;20:1239-1243 Hypertens Res 2016;39:879-885 出典:「あなたの塩分チェックシート」(社会医療法人 製鉄記念八幡病院提供) *2:第22回日本病態栄養学会年次学術集会(会長=横浜市立大学・寺内康夫先生)は2019年1月に開催されました。医師や管理栄養士、薬剤師など医療従事者が最新の研究成果や臨床上の課題について発表しました。 *3:患者さん100人の背景は以下です。 男性69人、女性31人、平均年齢71歳、平均身長161cm、平均体重61kg、平均BMI23.3でした。 塩分チェックシートの結果は平均点数14.2点でした。 レベル1~2の平均レベル以下は46人、塩分とりすぎと考えられるレベル3(14~19点:塩分多めと考えられ、減塩の工夫が必要)は38人、レベル4(20点以上:塩分はかなり多いと考えられ、基本的な食生活の見直しが必要)は16人でした。 公開日:2019/05/15 監修:福山市民病院(広島県)栄養管理科 川崎祐子先生
減塩、低たんぱくの食事はおいしくないといわれますが、ちょっとした工夫でおいしくさま変わりします。北海道の血液透析が中心の病院H・N・メディック北広島のスタッフがご当地食材を生かしたレシピを3食作りました。自慢の1品は夕食の「真鱈の味噌焼きホワイトソース~山わさび風味~」です(第22回日本病態栄養学会学術集会のレシピコンテスト「地域の伝統を生かした腎臓病食」をもとに本記事を作成しました*)。 目次 じゃがいも、豚丼、ラーメンサラダ、真鱈のレシピでたんぱく質50g、塩分5g 自慢の1品は「真鱈の味噌焼きホワイトソース~山わさび風味~」、低エネルギー量で味わいが淡白なので調理に工夫 レシピ:真鱈の味噌焼きホワイトソース~山わさび風味~ 食事も治療の一環、患者さんとおいしいレシピを考える じゃがいも、豚丼、ラーメンサラダ、真鱈のレシピでたんぱく質50g、塩分5g H・N・メディック(https://www.hnmedic.jp/)は、北海道の札幌市と北広島市にあります。腎臓の病気の患者さんや透析患者さんの病院です。 今回、H・N・メディック北広島では、北海道の食材を多くとりいれ、揚げ物が苦手でも、ちょっとした工夫でエネルギーアップをしながら食べやすい朝・昼・夕のレシピを考えました。3食1人前で総カロリー1804kcal、たんぱく質50g、塩分5gです。 朝の献立:北海道が生産量日本一の「じゃがいも」を使ってお手軽に作れる「ポテトサラダのロールパンサンドウィッチ」 ポイント★味がしまる練りがらし ■ポテトサラダのロールパンサンドウィッチ(1人分) ロールパン … 50g じゃがいも … 50g 玉ねぎ ……… 3g きゅうり …… 3g にんじん …… 3g マヨネーズ … 26g 練りがらし … 0.6g パセリ ……… 0.2g ■朝食分の栄養価 エネルギー … 449kcal たんぱく質 … 6.6g 食塩 ………… 1.1g 昼の献立:十勝地方の名物「豚丼」と、北海道発祥の「ラーメンサラダ」 ポイント★旨みをいかした調理法とアルコールをとばしたみりん ■豚丼(1人分) 米飯 …………… 200g 豚肉(ロース)… 60g 強力粉 ………… 3g 油(焼く油) … 5g 長ねぎ ………… 4g 小ねぎ ………… 2g (豚丼のたれ) 濃口醤油 ……… 5g みりん ………… 8g 上白糖 ………… 4g 日本酒 ………… 3g 水 ……………… 40g ■ごまドッレシング(1人分) ごまドッレシング ……… 13g みりん ……… 4g ■昼食分の栄養価 エネルギー … 728kcal たんぱく質 … 22.2g 食塩 ………… 1.3g 夜の献立:自慢の1品「真鱈の味噌焼きホワイトソース~山わさび風味~」 ポイント★家族皆で楽しく美味しく食べられる特別感のある献立 ■真鱈の味噌焼きホワイトソース(1人分) 真鱈 ………… 55g (合わせ味噌の調味料) 淡色辛味噌 … 5g みりん ……… 3g 上白糖 ……… 3g 日本酒 ……… 2g (ホワイトソース) 牛乳 ………… 25g 強力粉 ……… 2.5g 無塩バター … 2.5g コンソメ …… 0.5g 上白糖 ……… 0.1g 白こしょう … 0.1g ローリエ …… 0.1g 玉ねぎ ……… 20g 油(焼く油) …… 5g プロセスチーズ … 5g 生パン粉 …… 3g 山わさび …… 3g クレソン …… 10g ■夕食の栄養価 エネルギー … 627kcal たんぱく質 … 21.2g 食塩 ………… 2.6g 写真提供:医療法人社団H・N・メディック北広島・栄養部 朝の献立のポテトサラダに関しては、練り辛子を使用して味をしめるという工夫をこらしました。マヨネーズも使ってエネルギーアップにつながるようにしました。 昼の献立の豚丼に関しては、豚は強力粉をまぶして焼くことにより、少ない調味料でもタレがよく絡みます。味付けには、減塩しょうゆではなく、うまみの強い濃い口しょうゆを使うことで、ご飯がすすむ一品にしあげました。 一般的な調味料でも使用量に気をつけることや、うまみを大事にすることで、塩分を抑えることができます。 ラーメンサラダに関しては、ゴマドレッシングを使っています。アルコール分を飛ばした、みりんを加えることで、水っぽくならずに減塩ができます。 この方法は、いろいろなドレッシングや調味料を使うときにも役立ちます。 自慢の1品は「真鱈の味噌焼きホワイトソース~山わさび風味~」、低エネルギー量で味わいが淡白なので調理に工夫 自慢の1品は、家族みんなで楽しみながら特別感を感じられる夜の献立「真鱈の味噌焼き~ホワイトソース山わさび風味~」です。 北国の代表的な魚は「真鱈」です。冬なら鍋物によく使われるもので、鮮度がよければ刺身もおすすめです。ただ、真鱈はエネルギーが非常に低く、鍋や刺身では調味料やしょうゆを多く使いますし、塩分も多めになってしまいます。 そこで、調理法を工夫してエネルギーをアップさせました。 淡泊な味わいの真鱈を味噌漬けにして焼き、コクを出すためにホワイトソース、チーズを乗せ、さらに食感のアクセントとしてパン粉をのせて、オーブン焼きで仕上げました。 最後の風味付けに、山わさびをすった物を使用しています。すべて、北海道の自慢の食材を使用した一品です。 また、主菜をバターライスにすることや、副菜にニンジンのマリネを組み合わせることもエネルギーアップの工夫です。 レシピ:真鱈の味噌焼きホワイトソース~山わさび風味~ ■材料(2人分) 真鱈 110g、合わせ味噌の調味料(淡色辛味噌 10g、みりん 6g、上白糖 6g、日本酒 4g)、ホワイトソース(牛乳 50g、強力粉 5g、無塩バター 5g、コンソメ 1g、上白糖 0.2g、白こしょう 0.2g、ローリエ 0.2g)、玉ねぎ 40g、油(焼く用)10g、プロセスチーズ(ピザ用)10g、生パン粉 6g、山わさび 6g、クレソン 20g ■作り方 下処理 ・真鱈を分量に切り分ける。 ・さかじお*(分量外)で洗った後、真水で洗い水気をしっかりと切る。 ・ボウルに味噌、みりん、上白糖、日本酒を入れ、よく混ぜ合わせてから真鱈を漬ける(冷蔵庫で1日漬け込む)。 ホワイトソースを作る(今回は材料を合わせて火にかけるだけの簡単な方法を使います) ・鍋に牛乳、強力粉、バター、コンソメ、上白糖、白こしょう、ローリエを入れ、よく混ぜながら火にかける。ひと煮立ちしたら、ザルでこし冷ます。 玉ねぎを輪切りに切る。フライパンに油を熱し、玉ねぎを焼く。 真鱈を焼く(オーブンは220℃に温めておく) ・漬けこんだ真鱈をクッキングシートをひいた鉄板に置き、220℃のオーブンで焼く(真鱈はこの後に再度加熱するので、火の入りすぎに注意する)。 仕上げる ・鉄板にクッキングシートをひき、焼いた玉ねぎ、焼いた真鱈、ホワイトソース、チーズ、パン粉の順に乗せ、焼き色がつくまで再度オーブンで焼く。 ・表面がいい色に焼きあがったら、器に盛り付け、クレソンを飾り、すりおろした山わさびをふりかける。 *:H・N・メディック北広島では、酒、塩、水を混ぜたもので生魚を洗うことにより生臭みがとれる調理法として使用しています。 食事も治療の一環、患者さんとおいしいレシピを考える 世間では病院給食はおいしくないといわれますが、H・N・メディック北広島の柴田周吾さんは「栄養成分を制限してもおいしい食事はできます」といいます。 本人は、以前に病気で入院した経験があり、そのときの病院食に不満を感じて「これでは、病気が治らない」と思うほどでした。 食事は、病院から一方的に提供するものではなく、調理のコツなど食事に関して患者さんと会話して、楽しくおいしく食べることも治療の一環として大事にしています。 第22回日本病態栄養学会年次学術集会 http://www.eiyou.or.jp/gakujutsu/22th 学術集会のレシピコンテスト http://www.eiyou.or.jp/gakujutsu/22th/recipe.html 医療法人社団H.N.メディックのホームページ「透析と食事」 https://www.hnmedic.jp/news/news20190404.html *:日本病態栄養学会は、医師、栄養学研究者、管理栄養士が一堂に会し、病気の研究と患者さんのためになる栄養療法の開発を目指しています。毎年、学術集会が開催されており、名物セッションのレシピコンテストがあります。 2019年1月に開催されました第22回日本病態栄養学会年次学術集会(会長:横浜市立大学大学院医学研究科分子内分泌・糖尿病内科学教授・寺内康夫先生)のレシピコンテスト「地域の伝統を生かした腎臓病食」では、全国から33病院の応募があり、予選を勝ち抜いた15病院のレシピが試食会、プレゼン発表などを経て審査されました。 ■関連記事 健診で見逃されて腎不全や透析?糖尿病性腎臓病(DKD)に注意 腎臓は沈黙の臓器、慢性腎臓病(CKD)かどうかチェックしよう CKD(慢性腎臓病) 公開日:2019/05/08 監修:記事監修:医療法人社団H・N・メディック北広島(北海道)栄養部
糖尿病合併症のひとつで、腎不全や透析導入の原因として問題となる「糖尿病腎症」をご存知ですか?この病気は悪化すると蛋白尿(たんぱく尿)が増加するという典型的な特徴があります。ところが、蛋白尿が増えなくても腎臓の機能がすでに低下しているケースが多いと言われています。そこで、「糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease:DKD)」という病気が最近は提唱されています。 目次 国内の透析患者さんの約4割が糖尿病と腎臓病の合併患者 糖尿病で腎臓が悪化している人の多くがアルブミンや蛋白尿が増えず 尿細管の機能の異常を早期に発見することも手 糖尿病患者さんは血糖、血圧、腎臓のはたらきに気をつけましょう 国内の透析患者さんの約4割が糖尿病と腎臓病の合併患者 高齢になると年をとるにつれて腎機能が低下していきますが、働き盛りの世代で腎機能が低下していると、高齢になる前に透析や末期腎不全、脳卒中や心筋梗塞・心不全になる可能性があります。 糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病や、糖尿病合併症の糖尿病腎症などは、腎機能低下を加速化させるので注意しないといけません。 そこで、慢性腎臓病(CKD)が提唱されており、腎臓のはたらきを定期的に調べることが推奨されています。 腎臓のはたらきに関しては、細い毛細血管が毛糸の球のように丸まったような糸球体で体内の老廃物など「有害」な物質がフィルターのようにろ過されますが、腎機能が悪くなると、体内で必要な「有益」物質である蛋白が少しずつ尿のなかに漏れるようになります。 たとえば、糖尿病腎症によって腎臓の機能が悪くなる経過を見ると、高血糖の状態が長く続くことによって細い血管に覆われた糸球体が傷害されてフィルター機能が悪くなります。ろ過されるべき物質がろ過されず、通常はろ過されない蛋白が尿中に入り込みます。 具体的には、糖尿病を発症してしばらくして、蛋白の一部を占めるアルブミンという物質がごく少量含まれる尿(微量アルブミン尿)が現れ、増加していきます。 そして、さらに病気が進行して、多くのアルブミンが含まれる顕性アルブミン尿または持続的な蛋白尿が見られる段階では、腎機能を評価する指標となる糸球体のろ過速度(GFR)が低下して腎不全や透析にいたると言われています。 しかし、糖尿病腎症でもアルブミン尿や蛋白尿が見られず、GFRの低下が先行して腎不全や透析、さらに脳卒中や心筋梗塞、心不全などになる患者さんが多く、問題になっています。 日本透析医学会統計調査の2016年末時点の年次調査の結果(4,336施設の回答)では、透析患者数は32万9,609人で、最も多い原疾患は糖尿病腎症で38.8%を占めていたのです。 糖尿病で腎臓が悪化している人の多くがアルブミンや蛋白尿が増えず 最近の研究では、 日本人2型糖尿病患者3,297人を対象にした研究では、腎機能が悪化しているとされる検査値の推算GFRが軽度以下に低下していた患者506人のうち約半数の262人が正常アルブミン尿でした*1。 米国で1988~2014年の26年間で2型糖尿病患者におけるアルブミン尿の有病率は有意に減少していましたが、検査値の推算GFRが軽度以下の患者さんの割合は有意に増加していました*2。 と報告されており、これらの研究結果からCKD(慢性腎臓病)診療ガイドライン2018年版では、アルブミン尿や蛋白尿が見られる糖尿病腎症になる前段階から腎機能が悪化していることを早く発見するために、糖尿病腎症を含む病気の概念として「糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease:DKD)」が提唱されました。 糖尿病性腎臓病(DKD)の概念 DKDは典型的な糖尿病性腎症に加え,顕性アルブミン尿を伴わないままGFRが低下する非典型的な糖尿病関連腎疾患を含む概念である.さらに糖尿病合併CKDは,糖尿病と直接関連しない腎疾患(IgA腎症,PKDなど)患者が糖尿病を合併した場合を含む,より広い概念である(糖尿病性腎症,DKD,糖尿病合併CKDは現時点で厳密に鑑別することは必ずしも容易ではなく,境界は破線で示した). 出典:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018(日本腎臓学会) 尿細管の機能の異常を早期に発見することも手 腎臓は、糸球体でろ過され、尿細管でろ過した物質の99%が再吸収されて、残りを尿として排出させる機能を持っています。 糸球体の状態を把握するのに、健康診断の尿検査による血清クレアチニン値を用いて計算できる推算糸球体ろ過速度:eGFRなどが指標になります。 最近は糖尿病腎症の患者さんの多くに微量アルブミン尿や蛋白尿が見られないので、尿細管の機能の異常が早期から起こることが言われており、尿細管の機能障害を発見できる検査キットも注目されています。 この検査キットは、糖尿病性腎症の患者さんを対象とした研究では、病気の悪化に伴って検査値は高く、尿中の微量アルブミンが認められていない患者さんのグループでは健康な人のグループに比べて検査値が高いとの報告があります*3 *4。 板倉弘重先生のワンポイントアドバイス 糖尿病患者さんは血糖、血圧、腎臓のはたらきに気をつけましょう 糖尿病腎症は、糖尿病を発症してから10年以上たってから微量のアルブミン尿が見られはじめます。その後に、蛋白尿の出現、GFRの低下という経過がいわれていました。一方、DKDはアルブミン尿や蛋白尿の変化が見られずにGFRの低下が先に起こるものもあります。 尿細管の機能異常が発症早期から起こることが注目されていますし、GFR低下よりも早く見られる異常なので、糖尿病の患者さんは腎臓のはたらきを日ごろから検査しましょう。 また、糖尿病性腎臓病には、糖尿病とともに高血圧が関わっているので、血糖コントロール状態や血圧に気をつけて生活習慣の改善に努めるべきです。ただし、特に65歳以上の患者さんは低血糖に注意して血糖コントロールをしましょう。 *1:Yokoyama H, et al. Nephrol Dial Transplant 2009;24:1212‒9. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18984626 *2:Afkarian M, et al. JAMA 2016;316:602‒10. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27532915 *3:Nakamura, T. et al. Diabetes Care 2005; 28(11): 2728-2732 http://care.diabetesjournals.org/content/28/11/2728 *4:Nielsen, S.E. et al. Diabetes Care 2009; 32(9): 1684-1688 http://care.diabetesjournals.org/content/32/9/1684 ■関連記事 腎臓は沈黙の臓器、慢性腎臓病(CKD)かどうかチェックしよう 徳島県民に愛される「金時豆入りバラ寿司」を低たんぱくアレンジ 病院おすすめ・ご当地食材で腎臓にやさしいレシピ(5) 公開日:2018/12/28 監修:芝浦スリーワンクリニック 名誉院長 板倉弘重先生
腎臓は、肝臓や膵臓と同じように沈黙の臓器といわれています。最近は透析や末期腎不全になる患者さんや、腎臓の病気に関連して脳卒中や心筋梗塞・心不全などになる人が増加しています。高齢になると、年をとるにつれて腎臓のはたらきが落ちやすいといわれていますが、問題なのは働き盛りの世代で腎機能が低下している人が増えていることです。腎臓の機能低下や腎臓の病気を少しでも早く発見することが重要です。社会人のかたは腎機能のはたらきを調べることができる推算糸球体ろ過速度(eGFR)をチェックしましょう。 目次 尿をつくるフィルター役の糸球体のろ過量を調べよう 糖尿病が悪化して、腎不全や透析に移行することに注意 尿をつくるフィルター役の糸球体のろ過量を調べよう 慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)とは、慢性的に腎臓の機能が低下している状態のことをいいます。IgA腎症やネフローゼ症候群、リウマチ関連の病気のループス腎炎、糖尿病性腎症といった原因や病態が異なるさまざまな病気を包括してCKDと総称しています。 日本腎臓学会のCKD診療ガイドライン2018(医師が参考にするものです)によると、日本人のCKD患者数は約1,330万人、成人約8人に1人はCKDであることが推定されています。 また、糖尿病、肥満や高血圧といった生活習慣病を合併していると、腎機能の低下を加速させるので、特に働き盛りの世代では注意が必要です。 透析や末期腎不全、脳卒中や心筋梗塞・心不全を発症するリスクとなる病気ですので、腎機能のはたらきが低下しているかどうかを早く発見して早く適切な治療を受けてもらうことが推奨されています(参考:メタボ以上に怖い!?CKD(慢性腎臓病)とは?)。 腎臓の機能が低下しているかどうかは、血清クレアチニン値という健康診断の検査項目と年齢、性別から、ろ過して尿をつくるためのフィルター役となる糸球体のろ過量(推算糸球体ろ過量:eGFR)で調べられます。 ガイドラインによると、eGFRは腎臓のはたらきやCKDを調べる指標として推奨されています。CKDの重症度は原疾患(病気)、腎機能、蛋白尿・アルブミン尿に基づく下記のCGA分類で評価します(CGA分類のCrはクレアチニンの略語です)。 計算してみよう!eGFR*1 ※算出された結果については、ご自身で判断せず、対応などを含め医師に相談しましょう。 年齢 歳(半角数字) ※対象年齢は18歳以上です。 性別 男性 女性 血清クレアチニン(Cr.) mg/dL(半角数字) ※小数点以下2桁まで入力してください。 あなたのeGFR値は CGA分類 ■CKDの重症度分類(CKD診療ガイド2012)*2 原疾患 蛋白尿区分 A1 A2 A3 糖尿病 尿アルブミン定量(mg/日)尿アルブミン/Cr比(mg/gCr比) 正常 微量アルブミン尿 顕性アルブミン尿 30未満 30~299 300以上 高血圧腎炎多発性膿胞腎腎移植不明その他 尿蛋白定量(g/日)尿蛋白/Cr比(g/gCr比) 正常 軽度蛋白尿 高度蛋白尿 0.15未満 0.15~0.49 0.50以上 GFR区分mL/分/1.73m2 G1 正常または高値 90以上 G2 正常または軽度低下 60~89 G3a 軽度~中等度低下 45~59 G3b 中等度~高度低下 30~44 G4 高度低下 15~29 G5 末期腎不全 15未満 重症度は原疾患・GFR区分・蛋白尿区分を合わせたステージにより評価する。CKDの重症度は死亡、末期腎不全、心血管死発症のリスクを緑のステージを基準に、黄、オレンジ、赤の順にステージが上昇するほどリスクは上昇する。 (KDIGO CKD guideline 2012を日本人用に改変) 注:わが国の保険診療では、アルブミン尿の定量測定は、糖尿病または糖尿病性早期腎症であって微量アルブミン尿を疑う患者に対し、3ヵ月に1回に限り認められている。糖尿病において、尿定性で1+以上の明らかな尿蛋白を認める場合は尿アルブミン測定は保険で認められていないため、治療効果を評価するために定量検査を行う場合は尿蛋白定量を検討する。 ■CKD診断基準(以下のいずれかが3ヵ月を超えて存在) 腎障害の指標 アルブミン尿(AER≧30mg/24時間;ACR≧30mg/gCr)尿沈渣の異常尿細管障害による電解質以上やそのほかの異常病理組織検査による異常画像検査による形態異常腎移植 GFR低下 GFR<60mL/分/1.73m2 AFR:尿中アルブミン排泄率、ACR:尿アルブミン/Cr比 (KDIGO CKD guideline 2012) 出典:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018(日本腎臓学会) *1:GFRは血清クレアチニン(Cr)値、性別、年齢から日本人のGFR推算式*3を用いてeGFRとして算出します。 eGFR creat(mL/分/1.73m2)=194×血清クレアチニン(Cr)値(mg/dL)-1.094×年齢-0.287 女性の場合には×0.739 *2:日本腎臓学会編.CKD診療ガイド2012,東京医学社,2012. *3:Matsuo S, et al. Am J Kidney Dis 2009;53:982‒92. 糖尿病が悪化して、腎不全や透析に移行することに注意 慢性腎臓病(CKD)は進行すると末期腎不全になり、さらに悪化すると透析に移行する場合があります。透析患者数も増加傾向にあり、日本透析医学会統計調査の2016年末時点における年次調査の結果(4,336施設の回答)では透析患者数は32万9,609人でした。 透析患者さんの病気で4割を占めていたのが糖尿病腎症でした。 問題なのは、末期腎不全にいたる前に脳卒中や心筋梗塞・心不全などになる人が増えていることです。 そこで、最近では糖尿病かつCKDの患者さんや、糖尿病腎症の患者さんを大きなカテゴリーで包括した「糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease:DKD)」という病名が提唱されています。 次回はDKDについて紹介します。 ■関連記事 徳島県民に愛される「金時豆入りバラ寿司」を低たんぱくアレンジ 病院おすすめ・ご当地食材で腎臓にやさしいレシピ(5) 健診で見逃されて腎不全や透析?糖尿病性腎臓病(DKD)に注意 公開日:2019/02/04 監修:芝浦スリーワンクリニック 名誉院長 板倉弘重先生
CKD(慢性腎臓病)とは、加齢と塩分の多い食事、喫煙などによって腎機能が失われ、末期腎不全へと移行してしまうと透析療法が必要となります。糖尿病、肥満や高血圧といった生活習慣病を合併していると、腎機能低下を加速させるので、注意が必要です。 目次 腎機能の低下が心疾患を招く なぜ慢性腎臓病(CKD)が注目されているのか 治療が可能になったことも注目される理由 腎機能の低下が心疾患を招く 近年、CKD(慢性腎臓病)が注目されているのをご存じですか? この病気は、3ヵ月以上に渡り、 ・腎臓病であることを示す所見がある(尿タンパク陽性など) ・糸球体ろ過量が60mL/min未満で腎機能が低下した状態 が続くもの。腎機能が失われ、末期腎不全へと移行してしまうと透析療法が必要となります。腎機能低下の主な原因として、加齢と塩分の多い食事、喫煙などが挙げられますが、糖尿病、肥満や高血圧といった生活習慣病を合併していると、腎機能低下を加速させるので、注意が必要です。なかでもよく知られているのが糖尿病で、その3大合併症のひとつである糖尿病性腎症は、透析導入の原疾患の第1位となっています。 ※CKDはchronic kidney diseaseの略 CKD予備軍の推計 糸球体ろ過量(mL/min/1.73m2) 人数(×1000人) % 60以上 83,929 81.3 50~59 15,080 14.6 18.7 40~49 3,424 3.3 30~39 559 0.5 15~29 160 0.2 15未満 40 0.1 ※透析導入患者は除く(日本腎臓学会 CKD対策委員会疫学ワーキンググループ) おさらい◎腎臓の機能とは? 腎臓は、横隔膜の真下に左右に一対ある臓器で、大きさは握りこぶし程度。その形からよく「そら豆」に例えられます。 体液量の維持 体内のナトリウム量に応じて、体液の質・量のバランスを取る 血液浸透圧の調整 血液と細胞とで行われている栄養分や老廃物のやりとりを調整 体内の酸性度の調整 血液を弱アルカリ性に保つ 老廃物の選別 体内の老廃物をろ過し、尿として排出 血圧の調整 腎臓がつくるホルモンによって血圧などを調整 なぜ慢性腎臓病(CKD)が注目されているのか ※「CKD診療ガイド(日本腎臓学会編)」より引用 CKDが高い注目を集めるようになった背景として、動脈硬化による心疾患や脳卒中、感染症などのリスクが高まることが挙げられます。 心疾患を引き起こす原因として、メタボリック・シンドロームが知られているが、CKDもこれと同じ、あるいはそれ以上に心疾患のリスクを高めるということがわかってきました。 また、末期腎不全に移行すれば、透析導入が必要なことは既出の通りです。現在透析患者は全国に約27万人おり、新導入患者は年間約3万6000人にものぼっています(2007年12月 日本透析医学会)。右肩上がりの透析患者増に歯止めをかけることが、医療費抑制のためにも急務な課題となっているのです。 治療が可能になったことも注目される理由 しかし、それだけではありません。慢性腎臓病の治療が可能になってきたことも、この病気に注目が集まっている理由です。 CKDの治療は、主治医や管理栄養士と相談しながら、塩分の少ない食事(1日6g未満)、タンパク質、水分、カリウムの摂取制限といった食事面の管理を行うことが基本となります。 さらに肥満の解消、禁煙など、生活習慣の改善を行いながら、高血圧や糖尿病といった原疾患の治療や腎臓機能を保護するための薬を服用していきます。 ただし、CKDは初期の段階では自覚症状がないので、定期的に検査を受け、早期発見に努めましょう。 ■関連記事 腎臓は沈黙の臓器、慢性腎臓病(CKD)かどうかチェックしよう 徳島県民に愛される「金時豆入りバラ寿司」を低たんぱくアレンジ 病院おすすめ・ご当地食材で腎臓にやさしいレシピ(5) 健診で見逃されて腎不全や透析?糖尿病性腎臓病(DKD)に注意 公開日:2008/09/08
尿に異常があった場合、腎臓・膀胱・前立腺などの病気の疑いが考えられます。代表的なものをまとめてご紹介します。 目次 腎臓に関係する病気 尿路に関する病気 前立腺に関する病気 尿検査で早期発見! 腎臓に関係する病気 急性腎炎 腎臓に炎症の起こる病気。腎臓内部で血液の老廃物をろ過する器官のはたらきが低下する。 血尿、たんぱく尿、尿量の減少、むくみなど。場合によっては、発熱や咽頭痛を伴う場合も。 慢性腎炎 急性腎炎の発病後、尿たんぱくや高血圧が1年以上続いているものか、急性腎炎でなくても尿の異常が1年以上続く病気。 高血圧、むくみ、たんぱく尿など。進行すると徐々に腎不全に陥るので要注意。 ネフローゼ症候群 腎糸球体(血液の老廃物を濾し取る機能のある腎臓内の器官)の障害によって起こる病気。 高度のたんぱく尿、低たんぱく血症、高脂血症、むくみなど。慢性化しやすく、症状も軽くなったり重くなったりする。 腎不全 腎機能が急激に低下した状態。慢性腎不全と急性腎不全があり、大半の慢性腎不全は慢性腎炎や糖尿病性腎症などから移行する。 皮膚の紫斑やかゆみ、けいれん、呼吸困難、心不全、嘔吐、など。腎機能が低下すると、尿毒症になる恐れがあり、透析が必要になる。 尿路に関する病気 尿路感染症 尿路(腎臓の腎盂、尿管、膀胱、尿道)の器官に炎症を起こすのが尿路感染症。とくに女性は尿道が短く、菌が入りやすいためかかりやすい。 腎盂炎は、高熱、腰や背中の痛みが特徴。膀胱炎の場合は、頻尿、残尿感、排尿後の不快感が特徴。 腎・尿路結石 腎臓、尿管、膀胱、尿道の尿路に石のようなかたまり(結石)ができる病気。 腎結石より尿管結石のほうが激しく痛む。特に側腹部や腰から背中にかけての部分が激しく痛み、血尿が起こる。結石が尿管にひっかかった場合には、手術が必要。 前立腺に関する病気 前立腺肥大症 男性だけにある前立腺は、尿道を取り囲むような位置にある。その前立腺が加齢とともに肥大して尿道を圧迫してさまざまな障害が起こる病気。 尿道が圧迫されると、尿がちょろちょろとしか出ず、排尿回数が増え残尿感がある。さらに進行すると尿閉といって尿がまったく出なくなることもあり、その場合には手術が必要。 尿検査で早期発見! 日本では、検尿のシステムがかなり確立されており、集団検診のときに検尿が行われる。腎臓病などは自覚症状がないまま進行してしまい、吐き気などの症状が出てきた時にはかなり悪化していることもあるからだ。 現在、腎臓病が進行すると透析以外の治療がなく、莫大な医療費がかかるだけでなく本人の心理的苦痛を増やすことにもなりかねない。そこで、この検診を受けて早期発見することがとても重要なのである。 検尿が行われるのは? 新生児のときの検診 幼児のときの検診 学校での検診 職場での検診 地域での検診 老人の検診 ■関連記事 腎臓は沈黙の臓器、慢性腎臓病(CKD)かどうかチェックしよう 徳島県民に愛される「金時豆入りバラ寿司」を低たんぱくアレンジ 病院おすすめ・ご当地食材で腎臓にやさしいレシピ(5) 健診で見逃されて腎不全や透析?糖尿病性腎臓病(DKD)に注意 公開日:2001年5月7日
昨今話題となったメタボリック・シンドローム同様、将来重い病気を引き起こす恐れのある「CKD(慢性腎臓病)」。healthクリックでは1月26日~2月22日にかけて、CKDに関する意識調査を行いました。719名の方から回答を頂きましたので、その結果を報告いたします。ご協力ありがとうございました。 ■調査の概要 実施期間/2009年1月26日~2月22日 有効回答者数/719名 内訳/男性:307名、女性:406名、無回答:6名 年代/10代:8名、20代:81名、30代:215名、40代:194名、50代:136名、60代:68名、70代:13名、80代:2名、無回答:2名 CKDという病気を知っているのは、10人に1人 「あなたはCKDという病気を知っていますか?」の問いに対し、「知っている」と回答したのは719名中69名で、約10%という結果となった。男女別で差はみられず、各年代における認知率にも大きな開きはみられなかった。CKDの認知率の低さが浮き彫りになった形だ。 さらに、「CKD がメタボリック・シンドロームと同様に心疾患のリスクを高めることを知っているか」の問いに対しては「知らない」が85%と、認知率の低さを裏付ける結果となっている。 CKDってどんな病気? CKDの早期発見に重要な検査の現状 自覚症状に乏しいCKDを早期発見する1つの方法として、蛋白尿などの尿異常を発見する尿検査がある。 そこで「自宅で尿検査をしたことがありますか?」という質問をしてみたところ、「ある」とする回答は約9%に留まり、家庭における尿検査はまだ浸透していない現状であることが分かった。 医療機関での検査、健康診断での検査を活用していくことが望まれる。 CKDの進行防止につながる家庭血圧の測定状況 CKD患者は腎不全や透析に移行しやすいだけでなく、心血管系疾患も発症しやすい。そのため、日ごろから高血圧予防のために血圧を測定するなどの習慣が望ましいとされる。 そこで「家庭に血圧計はありますか?」と聞いたところ、半数が所有している結果となった。 一方、「家庭で血圧をはかりますか?」の問いに対し、「はかっている」は22%。所有している人の半数も活用できていないことから、医師はCKD治療にあたって血圧測定の重要性を患者にきちんと説明する必要があると考えられる。 なお、血圧測定を行っている人の詳細を見ると、20 代(11%)、30 代(16%)、40 代 (21%)、50 代(29%)、60 代(43%)、70 代(47%)、80 代(100%)と、年代とともに血圧を測定する習慣のある人が増加しているのが特徴的だ。 また、「はかっている」「過去にはかっていたがやめた」と回答した人に、家庭でいつ血圧を測定するかを質問したところ、「決まっていない」とする人がもっとも多かった。血圧は変動しやすいものであるため、日本高血圧学会も家庭内で測定する場合には朝・晩 2 回の実施を推奨している。こちらもあわせて啓発していく重要性が感じられた。 CKDと診断されたことがある人の現状 「あなたはCKDにかかっていると言われたことがありますか?」の問いに対し、「ある」とする回答は719名中15名で、2%という結果となった。 詳細は男性8名、女性7名、年代別では20代2名、 30代2名、40代3名、50代5名、60代1名、70代1名、80代1名となっている。 そのうち、かかりつけ医や腎臓専門医に定期的に通院している人は約80%。通院しない人の理由としては、「症状がない」「時間がない」となっている。また、CKDの治療の一環として重要とされる食事指導を管理栄養士から受けている人は53%。受けていない理由としては「症状がない」「必要がない」「何も言われていない」などが挙げられている。 CKDは初期の段階ではほとんど自覚症状が出ないため、定期的に尿の検査を行うことで、病気を早期発見することが大切だ。また、CKDにかかったとしても、腎臓機能が低下して透析を受ける段階にまで進行しないよう、定期的な通院を続け、適切な栄養・生活指導を受けることが重要とされている。 いまわが国における推定CKD患者数は約1,330万人を超え、500人に1人が透析患者とされている。われわれの健康を脅かすCKDという新しい疾患群について正しい知識を身につけ、適切な治療を受けることが重要と考えられる。
日本腎臓学会理事長 槇野先生に、CKDの基礎知識やその対策についてのお話をお伺いしました。 あなたがもしCKDになったら… ―― どのような人が CKD になりやすいのでしょうか? 糖尿病や高血圧といった生活習慣病を抱える人がなりやすいといえます。これらがある人は、ぜひ定期検査を受けてほしいですね。そのほか、脂質異常症や、肥満、喫煙習慣もCKD発症を高める原因になるといわれています。そうした生活習慣がなくても、腎臓の機能は30歳をピークに加齢とともに低下していくので、高齢者はCKDの可能性が高くなります。また、家族にCKD患者がいる人、他の病気で消炎鎮痛薬を常用している人、感染症、尿路結石、膠原病といった病気がある人は、なりやすい要素を持っているといえます。 これらの人は、だいたい半年に1度のペースで尿検査と血液検査を受け、CKDになっていないかどうかを調べることが大切です。CKDの初期は自覚症状に乏しいため、定期的な検査が重要になります。 ―― 自覚症状がない、というのが怖いのですが、早期発見のためにどんな検査をするのですか? 慢性腎臓病は、腎臓の機能がかなり低下するまで、ほとんど自覚症状が現れないというやっかいな特徴があります。そのため、むくみなどの自覚症状が現れたときには、透析を避けられない状態にまで腎臓の機能が悪化しているケースも少なくありません。こうした事態を防ぐためには、定期的に検査を受け、早期発見に努めることが重要です。 定期検査では、「尿検査」で尿中のタンパク量、血尿の有無、「血液検査」で血清クレアチニン値を調べ、腎臓の機能をチェックしましょう。タンパク質は腎臓が健康に機能していれば尿中に排泄されませんので、尿タンパク量は腎臓の働きが低下をみる指標として重要です。また、クレアチニンの値からは腎臓がどのくらいきちんと働いているかを示す糸球体ろ過量(GFR)の予測推定値(eGFR)が分かります。 CKDのなかで最も多いのが、糖尿病性腎症という糖尿病から起こるものです。糖尿病の人は、微量アルブミン尿も合わせて、定期検査で調べることをお勧めします。微量アルブミン尿は、タンパク尿やeGFRの低下よりも早く検査結果に異常が現れるので、CKD発見の手立てとして非常に役に立ちます。また、尿の色味などに異常がないか、朝起きて一番の尿の状態をセルフチェックするのもいいでしょう。最近は、市販の尿検査用の試験紙で尿中のタンパクの有無も確認できます。 尿の色が茶色くなったり、赤みがかっている、30秒以上たっても尿の泡立ちが消えないなどの異常があったら、受診してください。 ―― もし、CKDと診断されたら… まずは、かかりつけ医の先生に相談して治療を行いましょう。慢性腎臓病の具体的な治療方法は、生活習慣の改善、食事療法、薬物投与です。病気の進行の度合いによって、専門医による治療が必要になることも出てきます。
日本腎臓学会理事長 槇野先生に、CKDの基礎知識やその対策についてのお話をお伺いしました。 ■お話手 岡山大学大学院医歯学総合研究科 教授 槇野 博史 先生 ■ご略歴 1975年4月に岡山大学医学部卒業。その後、同大学助手、米国ノースウェスタン大学医学部客員助教授、岡山大学医学部内科学 第三講座助教授を経て1996年4月より現職。日本腎臓学会理事長ほか1医学会役職多数。 CKDの基礎知識を深めよう ―― CKDとは、どんな病気ですか? CKD(chronic kidney disease)は、「慢性腎臓病」という病気です。腎臓には、血液中の老廃物を取りのぞく、体内の水分量を調節するといった役割があります。こうした働きが十分に果たせなくなってしまうのが慢性腎臓病です。 といっても、新しく発見された病気というわけではありません。これまで腎臓の病気は、慢性糸球腎炎、糖尿病性腎症など、原因や状態によってそれぞれの病名で呼ばれていました。これらを病気ごとに呼ぶのではなく、1つの病気として大きくとらえたのが「CKD=慢性腎臓病」なのです。 CKDは(1)タンパク尿が出ている、(2)腎臓がどのくらいきちんと働いているかを示す糸球体ろ過量(GFR)※が健康な人の60%未満に低下している=60mL/分未満という2項目のいずれか、あるいは両方が3ヵ月以上続くものとされています。 ※糸球体ろ過量(GFR): 1分間に糸球体がろ過できる血液の量を示す値。腎臓の機能の程度の指標になる。 ―― CKDという言葉は、最近、雑誌や新聞などでも取り上げられているのを見かけます。なぜ、注目され始めたのでしょうか? 最近の研究で、腎臓の機能の低下は心筋梗塞や脳梗塞、脳卒中などの心血管疾患(CVD)を起こす危険が高まることがわかってきました。高血圧を合併すると、その危険性はさらに高くなります。近年は「メタボリックシンドローム」が注目されていますが、CKDも同じくらい、もしくはそれ以上に、心筋梗塞や脳梗塞、脳卒中などの重大な病気につながる生活習慣病として注目されています。 一方で、治療の進歩により、CKDは治療が可能になってきました。早期に原因を発見して治療を行えば、腎臓の機能が低下するのを抑えられますし、改善も期待できます。そのためにも、わかりやすい診断指標を用いたCKDの定義を導入し、普及させて国民の健康維持につなげていこうという動きが広がっています。 いま、日本のCKD患者は約1,330万人にのぼり、成人の8人に1人といわれています。そのうち、病気が進行し透析治療を受けている人の数は2006年末時点で約27万人※と、国民の500人に1人という計算になります。透析患者数は増加の一途をたどっていますが、透析は、生涯にわたる通院、服薬、食事制限といった様々な制約が必要になり、その人のQOLを大きく損なうだけでなく、国民医療費にも大きな負担です。今や透析にかかる医療費は、年間1兆円を超え、国民総医療費の約4%を占めるまでになっているのです。こうした事態に待ったをかけるために、取り組みが始められています。2007年には厚生労働省が重点的に取り組むべき課題の1つに取り上げられ、戦略研究がスタートしました。 ―― 腎臓病の戦略研究(FROM-J)の概要を教えてください。 腎臓病の戦略研究は、正式名称を「かかりつけ医/非腎臓専門医と腎臓専門医の協力を促進する慢性腎臓病患者の重症化予防のための診療システムの有用性を検討する研究」(FROM-J :Frontier of Renal Outcome Modification in Japan)といいます。 CKDは8人に1人と患者数が多いので、腎臓専門医だけで診ていくことはできません。そのため、かかりつけ医と協力していくことが大切です。 この研究は、かかりつけ医がCKD診療ガイドにもとづいて腎臓専門医と連携を図って診療を行うことが、CKDの重症化予防に有効なシステムかどうかを検証するものです。 具体的には、CKDガイドによる治療に加え受診促進支援や栄養・生活指導などの患者さんへの介入を行う場合と、介入を行わない場合とで受診の継続率やCKDの進行率、かかりつけ医と腎臓専門医との連携率に差が出るかどうかを評価していきます。 2007年から5年にわたって行い、透析導入患者を5年後に予測される導入患者数から15%減らすことを目標としています。 ―― CKD対策には何が大切ですか? CKDの進行を抑えるために重要なのは、何と言っても血圧のコントロールです。CKDは高血圧を引き起こしやすく、高血圧も腎臓内部の血管を傷つけCKDを悪化させます。CKDと高血圧は一緒に起こりやすく、また、お互いを悪化させるという悪循環を引き起こします。そして、この2つが重なると、心血管疾患(CVD)を起こす危険がさらに高まります。だからこそ、毎日自宅で血圧を測定し、医師のチェックを受けながら適正な範囲にコントロールしていくことが大切なのです。 また、腎臓に過度な負担をかけないような食事の管理、適度な運動、禁煙といった生活習慣の改善が、CKDの予防や進行を遅らせる重要なカギになります。
尿のもと(原尿)は腎臓で作られる 1日に排せつされる尿量は成人で約1.5L(0.8~1.9L)です。これは飲水量、気温、発汗量、精神状態などでかなり変動します。夜間は昼間より少なく1/3~1/4になります。 血液中の老廃物をろ過して尿を作るのは腎臓です。ここで尿のもと(原尿)が作られます。 血液成分を一定にするはたらき 1日に作られる原尿の量はなんと約180L(ほぼドラム缶1本分)にもなります。それなのに、なぜ尿として排せつされるのは原尿の100分の1程度になってしまうのでしょうか。 原尿は腎組織の皮質にある糸球体に続く尿細管を流れていくうちに、水分とそこに溶けている物質(溶質)の一部は再び血液に吸収されます。 一方で、吸収された物質の一部はもう一度尿細管から排せつ・分泌されるという複雑なシステムになっています。そのため、原尿の量は大幅に減るというわけです。 この複雑な処理を行うおかげで、老廃物や取りすぎた物質を体外に捨てて、体に必要なものを適量だけ取り戻し、血液成分を一定にすることができるのです。 ■関連記事 腎臓は沈黙の臓器、慢性腎臓病(CKD)かどうかチェックしよう 徳島県民に愛される「金時豆入りバラ寿司」を低たんぱくアレンジ 病院おすすめ・ご当地食材で腎臓にやさしいレシピ(5) 健診で見逃されて腎不全や透析?糖尿病性腎臓病(DKD)に注意
たんぱく質と腎臓の関係 口から入ったたんぱく質は胃で胃液によって消化されペプトンという物質に分解されます。 さらに小腸では、さまざまな酵素がはたらき、ポリペプチドからオリゴペプチドという形になり、最終的にはアミノ酸となって肝臓へ運ばれます。 肝臓で必要な形のたんぱく質に再合成されますが、その際、アミノ酸の窒素成分の一部がアンモニアとなり、大部分は尿素サイクルによって毒性の少ない尿素に変換されて腎臓を経て排せつされます。 尿毒症の危険性 ところが腎臓が弱いと、この排せつが十分でなくなり、尿素が体内に蓄積されていきます。これが毒性を示すまでになると尿毒症になり、生命を脅かしかねません。そのため、腎臓が弱い人は尿素の源になるたんぱく質の量を制限し、尿素の量を少なくしなければならないのです。 また、最近ではたんぱくを過剰に取ると、腎臓の糸球体という血液ろ過装置が障害されることも分かってきました。糸球体には血液を送る動脈と、そこから血液が出ていく動脈がありますが、たんぱくを過剰に取ると糸球体から出る動脈が収縮して糸球体そのものが高血圧になり、障害されるとされています。
たんぱく質制限で病気の進行を防ぐ 腎臓は体内に生じた不要物質(尿たんぱくの老廃物など)を体外に排出し、血液や体液の組成や量を一定に保つはたらきをしています。このはたらきに障害が起きてくると、それらが排出されず、体内に蓄積され、尿毒症などを起こします。 最近では、たんぱく質を取り過ぎると、腎臓の糸球体に障害が生じることが分かってきました。このため、たんぱく質を制限することは、慢性腎不全の食事療法の基本になります。たんぱく質を制限することで、病気の進行を防ぐことができるのです。 急性糸球体腎炎の初期の場合は、たんぱく摂取量を1日30~50gに制限します。慢性になると、1日60~70gで、長期間続ける必要があります。 ネフローゼ症候群の場合は、食塩の摂取量によっても変わってきます。食塩の摂取量が1日3gの場合には、たんぱく摂取量は1日70g。1日6gの場合は1日80~90gで、妊娠中毒症を起こした場合は、1日100gを取ります。 低栄養状態に要注意 低たんぱく食事療法によって、かえって筋肉量、脂肪量が減少し、低栄養状態をきたすことがあります。いくら腎臓病でもある程度の良質のたんぱく質が必要です。必要以上にたんぱく質を制限するとかえって全身が弱まってしまいます。カロリーの摂取不足にも気を付けることが大切です。