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腎臓は沈黙の臓器、慢性腎臓病(CKD)かどうかチェックしよう

腎臓は、肝臓や膵臓と同じように沈黙の臓器といわれています。最近は透析や末期腎不全になる患者さんや、腎臓の病気に関連して脳卒中や心筋梗塞・心不全などになる人が増加しています。高齢になると、年をとるにつれて腎臓のはたらきが落ちやすいといわれていますが、問題なのは働き盛りの世代で腎機能が低下している人が増えていることです。腎臓の機能低下や腎臓の病気を少しでも早く発見することが重要です。社会人のかたは腎機能のはたらきを調べることができる推算糸球体ろ過速度(eGFR)をチェックしましょう。

尿をつくるフィルター役の糸球体のろ過量を調べよう

慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)とは、慢性的に腎臓の機能が低下している状態のことをいいます。IgA腎症やネフローゼ症候群、リウマチ関連の病気のループス腎炎、糖尿病性腎症といった原因や病態が異なるさまざまな病気を包括してCKDと総称しています。
日本腎臓学会のCKD診療ガイドライン2018(医師が参考にするものです)によると、日本人のCKD患者数は約1,330万人、成人約8人に1人はCKDであることが推定されています。
また、糖尿病、肥満や高血圧といった生活習慣病を合併していると、腎機能の低下を加速させるので、特に働き盛りの世代では注意が必要です。
透析や末期腎不全、脳卒中や心筋梗塞・心不全を発症するリスクとなる病気ですので、腎機能のはたらきが低下しているかどうかを早く発見して早く適切な治療を受けてもらうことが推奨されています(参考:メタボ以上に怖い!?CKD(慢性腎臓病)とは?)。
腎臓の機能が低下しているかどうかは、血清クレアチニン値という健康診断の検査項目と年齢、性別から、ろ過して尿をつくるためのフィルター役となる糸球体のろ過量(推算糸球体ろ過量:eGFR)で調べられます
ガイドラインによると、eGFRは腎臓のはたらきやCKDを調べる指標として推奨されています。CKDの重症度は原疾患(病気)、腎機能、蛋白尿・アルブミン尿に基づく下記のCGA分類で評価します(CGA分類のCrはクレアチニンの略語です)。

計算してみよう!eGFR*1

  • ※算出された結果については、ご自身で判断せず、対応などを含め医師に相談しましょう。
年齢 (半角数字)
※対象年齢は18歳以上です。
性別
血清クレアチニン(Cr.) mg/dL(半角数字)
※小数点以下2桁まで入力してください。

あなたのeGFR値は

CGA分類

■CKDの重症度分類(CKD診療ガイド2012)*2

原疾患 蛋白尿区分 A1 A2 A3
糖尿病 尿アルブミン定量(mg/日)
尿アルブミン/Cr比(mg/gCr比)
正常 微量アルブミン尿 顕性アルブミン尿
30未満 30~299 300以上
高血圧
腎炎
多発性膿胞腎
腎移植
不明
その他
尿蛋白定量(g/日)
尿蛋白/Cr比(g/gCr比)
正常 軽度蛋白尿 高度蛋白尿
0.15未満 0.15~0.49 0.50以上
GFR区分
mL/分/1.73m2
G1 正常または高値 90以上      
G2 正常または軽度低下 60~89      
G3a 軽度~中等度低下 45~59      
G3b 中等度~高度低下 30~44      
G4 高度低下 15~29      
G5 末期腎不全 15未満      

重症度は原疾患・GFR区分・蛋白尿区分を合わせたステージにより評価する。CKDの重症度は死亡、末期腎不全、心血管死発症のリスクを緑のステージを基準に、黄、オレンジ、赤の順にステージが上昇するほどリスクは上昇する。

(KDIGO CKD guideline 2012を日本人用に改変)

  • 注:わが国の保険診療では、アルブミン尿の定量測定は、糖尿病または糖尿病性早期腎症であって微量アルブミン尿を疑う患者に対し、3ヵ月に1回に限り認められている。糖尿病において、尿定性で1+以上の明らかな尿蛋白を認める場合は尿アルブミン測定は保険で認められていないため、治療効果を評価するために定量検査を行う場合は尿蛋白定量を検討する。

■CKD診断基準(以下のいずれかが3ヵ月を超えて存在)

腎障害の指標 アルブミン尿(AER≧30mg/24時間;ACR≧30mg/gCr)
尿沈渣の異常
尿細管障害による電解質以上やそのほかの異常
病理組織検査による異常
画像検査による形態異常
腎移植
GFR低下 GFR<60mL/分/1.73m2

AFR:尿中アルブミン排泄率、ACR:尿アルブミン/Cr比

(KDIGO CKD guideline 2012)

出典:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018(日本腎臓学会)

  • *1:GFRは血清クレアチニン(Cr)値、性別、年齢から日本人のGFR推算式*3を用いてeGFRとして算出します。
    eGFR creat(mL/分/1.73m2)=194×血清クレアチニン(Cr)値(mg/dL)-1.094×年齢-0.287
    女性の場合には×0.739
  • *2:日本腎臓学会編.CKD診療ガイド2012,東京医学社,2012.
  • *3:Matsuo S, et al. Am J Kidney Dis 2009;53:982‒92.

糖尿病が悪化して、腎不全や透析に移行することに注意

慢性腎臓病(CKD)は進行すると末期腎不全になり、さらに悪化すると透析に移行する場合があります。透析患者数も増加傾向にあり、日本透析医学会統計調査の2016年末時点における年次調査の結果(4,336施設の回答)では透析患者数は32万9,609人でした。
透析患者さんの病気で4割を占めていたのが糖尿病腎症でした。
問題なのは、末期腎不全にいたる前に脳卒中や心筋梗塞・心不全などになる人が増えていることです。
そこで、最近では糖尿病かつCKDの患者さんや、糖尿病腎症の患者さんを大きなカテゴリーで包括した「糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease:DKD)」という病名が提唱されています。

次回はDKDについて紹介します。

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公開日:2019/02/04
監修:芝浦スリーワンクリニック 名誉院長 板倉弘重先生