秋の時期に、鼻水やくしゃみなどが長引くときがあります。原因として、秋に特有の花粉や、部屋のホコリ(ハウスダストといいます)が考えられます。ハウスダストにはダニの死骸が多く含まれる時期なので注意が必要です。 目次 秋はハウスダストにダニが多く含まれているのでアレルギーを起こしやすい 根治も期待できるアレルゲン免疫療法があります 秋はハウスダストにダニが多く含まれているのでアレルギーを起こしやすい 秋に鼻水やくしゃみなどのアレルギー性鼻炎を起こすことがあります。原因としては、空き地や河川敷などに生える雑草の花粉のほか、部屋のホコリ(ハウスダスト)がります。ハウスダストに関しては、ダニとの関係があります。というのは、秋以降は夏に増えたダニが死にますが、死骸や糞がハウスダストに多く含まれてしまうからです。 根治も期待できるアレルゲン免疫療法があります ダニが原因のアレルギー性鼻炎には、掃除を徹底するなど生活環境を改善するほか、症状に悩んでいる人は医療機関で花粉症と同じような治療を受けることができます。 治療に関しては、アレルギー原因物質(アレルゲン)を主成分の薬剤を少しずつ摂取し、免疫をつけて自身の体質を変えるアレルゲン免疫療法があり、根治の可能性があります。 その1つとして舌に薬剤(錠剤)を置く舌下免疫療法というものを、同療法の認定医師がいる医療機関で受けられるようになりました。 ダニによるアレルギー性鼻炎のほかにスギ花粉症の患者さんも治療を受けられます。ただ、効果が現れるまで数ヵ月間かかりますし、数年間にわたり毎日継続する必要があります。希望する人は医師によく相談しましょう。 長引く鼻水の原因はダニアレルギー?日医大・大久保公裕先生に聞く スギ花粉症の根治も期待できる舌下の錠剤による治療が可能に 公開日:2018/09/27 監修:日本医科大学大学院医学系研究科頭頸部感覚器科学分野教授 大久保公裕先生
花粉といえば春のスギ、ヒノキが思い浮かびますが、年間を通してさまざまな花粉が飛んでいます。秋の時期に風邪をひいたと思っていたら、実は花粉症だったという人は少なくありません。秋に注意すべき花粉を紹介します。 目次 秋は空き地や河川敷、畑などに生える雑草の花粉が飛びます 道端、公園やグラウンド、畑、河川敷などの身近な場所に生えています 風邪と花粉症の症状には違いがあります 秋は空き地や河川敷、畑などに生える雑草の花粉が飛びます 秋の時期にも花粉は飛散します。秋に花粉症になってしまうのは、スギやヒノキといった木(木本といいます)の花粉ではなく、空き地や畑、河川敷などに生えている雑草など草(草本といいます)の花粉がおもな原因となります。 鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版では、地域ごとにどの時期にどんな花粉が飛散するのかがわかる花粉カレンダーがあります。 道端、公園やグラウンド、畑、河川敷などの身近な場所に生えています 秋に飛散する草本の花粉はおもに、イネ科のススキやキク科のブタクサやヨモギ、アサ科のカナムグラなどです。 医師などが診療の際に参考にする鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版によると、飛散しやすいエリアは東北、関東、関西、九州が挙げられています。 おもな生育場所は、道端、公園やグラウンド、畑、河川敷などの身近な場所です。なお、春のスギやヒノキの花粉は広範囲に飛散しますが、秋に草本の花粉が飛散する距離は数100mなので、近づかないだけでも防御策になります。 自然豊富な自宅の近くを歩いていて鼻水やくしゃみ、目のかゆみなどがでてくる場合は、草本の植物による花粉が飛散しているのかもしれませんので注意しましょう。 風邪と花粉症の症状には違いがあります 風邪と花粉症との違いとして、花粉症では次のような特徴がみられます。 鼻水が透明っぽい くしゃみが頻発する 鼻水やくしゃみといった症状が1週間以上続く 晴れた日や風が吹いた日に症状がでてくる 花粉によるアレルギー性鼻炎である花粉症では、上記のような症状の特徴を把握し、外出時は眼鏡やマスクによる防御、家では服についた花粉を取り払うことや、室内の掃除を徹底しましょう。治療に関しては医療機関の医師の先生に相談しましょう。 参考:花粉症環境保健マニュアル2014年1月改訂版(環境省)、鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版 公開日:2018/09/25 監修:日本医科大学大学院医学系研究科頭頸部感覚器科学分野教授 大久保公裕先生
日本では約2人に1人がアレルギー疾患にかかっており、子供のアレルギー疾患も身近です。アレルギー検査にはいくつか種類があり、それぞれの検査方法を組み合わせてアレルゲンの特定を行うことが重要です。 目次 アレルギーはかかりやすい病気 血液検査とは 皮膚テストとは 食物除去試験・食物経口負荷試験とは アレルギーはかかりやすい病気 平成23年8月厚生科学審議会疾病対策部会リウマチ・アレルギー対策委員会の報告書によると全人口の約2人に1人が何らかのアレルギー疾患に罹患していることから、アレルギー疾患はより身近になっていることがわかります。 皮膚科、耳鼻科、小児科で行っている検査は、血液検査、皮膚テスト、除去・誘発テスト(食物除去試験・食物経口負荷試験)などがあります。いずれも検査方法を組み合わせてアレルゲンの特定を行うことが重要です。 血液検査とは 血液を注射器などで採血し検査をします。検査結果が分かるのは採血してから3~7日ほどです。注射を怖がる子供に対して、医療機関によっては指先やかかとから2,3滴ほどを採血して検査する方法も行っています。 アレルギー反応の数値として注目するのは、IgEの数値です。正常値は、1歳未満:20 U/ml以下、1-3歳:30 U/ml以下、4-6歳:110 U/ml以下、7歳以上:170 U/ml以下です。この数値が基準値より高ければアレルギーを起こす準備ができている、または起こしている可能性が高いと言えます。 特異的IgE検査(RAST) この検査は多くのアレルギー物質に対しての血液中のIgEの数値を調べますが、食物アレルギーに対してはあまり信用できる結果は得られないそうなので、参考程度にとどめておくことが賢明です。 皮膚に対してのアレルギー物質のダニ、ハウスダスト、花粉、カビ、動物などに対しては、ある程度信用できるIgE数値の検査結果がわかります。 非特異的IgE検査(RIST) アレルギーの原因を特定する検査ではなく、年齢ごとに決められた正常なIgE数値を参考にアレルギー体質の強さを検査する方法です。非特異的IgEは、全ての特異的IgE抗体の総和で示されます。 こちらも年齢と共に正常値は増加します。正常値は170IU/ml以下で、乳幼児は30IU/ml以下です。この数値が高いからと言って、アレルギー症状がひどくなるとは限りません。あくまでもアレルギー症状を起こす可能性を示す数値ということを理解しておきましょう。症状の程度を知るためには、ほかの検査をします。 ヒスタミン遊離試験 食物アレルギーやアトピー性皮膚炎に関してはヒスタミン遊離試験で信用できる検査結果を得られるようですが、検査できる項目は少ないです。 例えば、卵白、牛乳、小麦、蕎麦、ピーナッツ、エビ、カニ、ゴマです。またヒスタミン遊離試験はアトピー性皮膚炎の原因のひとつであるヒト汗抗原、カンジダ、ヤケヒョウダニのアレルギー数値を調べることができる検査方法でもあります。 数値がクラス分けされており、判定は陽性、擬陽性、陰性となっています。 皮膚テストとは アレルギーにも即時型アレルギーと遅延型アレルギーがあります。即時型アレルギーは、抗原が作用してから15分~12時間くらいの短時間で反応するアレルギーで、せまい意味で「アレルギー」という場合、多くはこの即時型のアレルギーを指します。遅延型アレルギーは、抗原を体内に取り込んで半日から数日たって反応がおこるアレルギーで「化粧品かぶれ」、「うるしかぶれ」などは、遅延型アレルギーに分類されます。 即時型アレルギーを調べる方法は、プリックテストとスクラッチテストがあります。アレルゲン液を前腕屈側や背中の皮膚に一滴落として、皮膚表面に小さな傷を付け反応をみます。 傷自体に反応することがあるため、比較対照として生理食塩水を使用しその反応と比較します。検査時間も15分~と短いため、取り入れやすい検査方法です。 皮膚テストの中に遅延型アレルギーを調べるためのパッチテストがあります。多くのアレルゲンを一度に検査できるため、手軽に行われています。健常皮膚に48時間アレルゲンを貼付し湿疹などが出ていないかを判定します。 食物除去試験・食物経口負荷試験とは 食物アレルギーの確定診断には必要な検査といえます。血液検査や皮膚テストで確定できないアレルギーの原因を特定します。 食物除去試験の検査方法は、まずは原因となる可能性のある食物を食事から抜いた後、1~2週間完全に食べないようにして(完全除去)、症状(主に湿疹や胃腸症状)がおさまるかどうかをみます。 食物経口負荷試験は、アレルギーが疑われる食品を分割摂取させて症状の出現を観察するという方法です。食物アレルギーの最も確実な診断法ですが、アナフィラキシーのような重篤な症状を伴う危険性があるということは理解しておかなくてはなりません。リスクを伴うので、医師の監視下で行うことが望ましいとされています。 ■関連記事 秋はダニとハウスダストにも注意しましょう 公開日:2016/10/24
アレルギー性鼻炎といえば毎年春の花粉症が思いだされますが、ダニが原因となるアレルギー性鼻炎をご存知でしょうか。春や秋の季節の変わり目に自宅でくしゃみや鼻水がひどくなってしまう方はダニアレルギー性鼻炎かもしれません。日本医科大学大学院頭頸部・感覚器科学教授の大久保公裕先生にダニアレルギー性鼻炎の効果的な対策について聞きました。 目次 梅雨の時期や台風が来たときに要注意 舌下免疫療法の錠剤に注目 数年間継続すると治療を中止した後でも効果が長期持続する報告あり 梅雨の時期や台風が来たときに要注意 ダニは、湿度が高い環境を好みます。室内の温度や湿度が高まる梅雨の時期や、台風が来たとき、ダニは繁殖しやすいと言われています。また、近年は隙間のない気密性の高い住宅が多くなり、ダニが繁殖しやすい環境になっていることが指摘されています。 ダニアレルギー性鼻炎は、生きたダニだけでなく、その死骸や糞に曝露されることによっても発症します。 実は、秋のアレルギーに関しては原因としてダニが最も多く存在することが指摘されています。ダニアレルギー疾患としては、喘息や鼻炎が知られています。 大久保先生によると、対策に関しては室内の掃除をこまめにすることや、掃除、空気清浄機や防ダニシーツ、布団カバーの使用といった生活環境を改善することが重要とのことです。 患者さんは花粉症ほど強く訴えないようです。ダニに曝露される量は花粉ほどではないために、くしゃみや鼻水などの症状は花粉症ほどひどくならない、あるいはダニアレルギー自体の認知度がいまだに低いことが考えられます。 舌下免疫療法の錠剤に注目 ダニアレルギー性鼻炎に対し、医療機関で受ける治療としては花粉症と同様の経口の抗アレルギー薬のほか、アレルゲン免疫療法があります。 アレルゲン免疫療法は、経口の抗アレルギー薬のように症状を一時的に抑えるという対称療法ではありません。アレルギーの原因物質(アレルゲン)を主成分とした薬剤を少しずつ摂取し、免疫つけることによって自身の体質を変えていく治療法です。 以前から皮下注射がありましたが、2015年に舌下免疫療法を医療機関で受けられるようになりました。舌下免疫療法は2014年にスギ花粉に対する舌下のエキス製剤が保険適用として認可されたのが初めてで、2015年にはダニアレルギー性鼻炎に対して舌下の錠剤が保険適用として承認されました。また、小児に関しては2018年3月から保険適応となりました。 なお、花粉症に関しては2018年5月に舌下の錠剤が承認されることになりました。 数年間継続すると治療を中止した後でも効果が長期持続する報告あり 患者さんは、舌下免疫療法の認定医師から処方されて治療を受けることができます。舌下錠剤の使用法は、舌の下に薬剤を置いて溶解するまで保持した後に飲み込み、その後は5分後まではうがいや飲食を避けるというものです。治療開始以降から薬剤に含まれるアレルゲンの量を多くしていくことにより、免疫をつけて体質を変えていきます。 舌下免疫療法は、ダニに曝露されてもアレルギーを発症しにくくなる効果が期待できます。数年間にわたって服用したほうがよいと言われています。というのは、舌下免疫療法を数年間にわたって継続することにより、治療を中止した後でも長期にわたって効果が持続するという報告もあります。 国民病といわれているアレルギー性鼻炎ですが、花粉症もダニアレルギー性鼻炎も患者さんによっては根治が可能な方もいます。ただ、服用は毎日ですので、治療を継続するための自己管理は患者さん自身が工夫することが必要です。医療機関の医師などに相談することも重要です。 年中にわたって鼻炎に悩んでいるあなたにはダニアレルギーかもしれません。生活環境の改善もあわせてダニアレルギーに対する舌下免疫療法を受けることも手かもしれません。 ■関連記事 秋はダニとハウスダストにも注意しましょう 公開日:2018/06/04 監修:日本医科大学大学院 頭頸部・感覚器科学 教授 大久保公裕先生
育て中のパパ、ママにとって、お子さんのアレルギーについて気がかりな人は多いのではないでしょうか。一口にアレルギーといっても、その症状や原因はさまざまです。ここでは、小児によく見られる症状や原因をご紹介します。 目次 原因や症状を理解しておきましょう アレルギーのさまざまな症状 アレルギーのさまざまな原因 原因や症状を理解しておきましょう アトピー性皮膚炎や、気管支ぜんそくといった言葉は、子育て中のパパ、ママなら、よく耳にするものですね。これらは、アレルギー症状の一種で、近年急速に増えてきた花粉症もこのようなアレルギー症状の代表的なもののひとつです。 小児の場合、こういったアレルギーの症状が成長に伴って変化して現れることがあり、「アレルギーマーチ」と呼ばれています。最近では、このアレルギーマーチの進行も早くなっていて、1歳の時点で複数のアレルギー症状が現れてしまうお子さんもいます。 このように、パパ、ママにとって、とても気がかりなアレルギー。一口にアレルギーといっても、その症状や原因はさまざまです。ここでは、小児によく見られる症状や原因をご紹介します。 アレルギーのさまざまな症状 アトピー性皮膚炎 アトピー性皮膚炎は、小児の年齢によって症状が異なります。生後2~3ヵ月から1歳ころのお子さんの場合は、顔や頭、耳にジクジクとした湿疹が出て、耳の付け根が切れてしまう「耳切れ」という状態になることもあります。2~10歳ころのお子さんになると、反対に乾燥した湿疹が出るようになり、かゆみも伴います。 気管支ぜんそく アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を吸い込んだ時に、気管支にアレルギー反応がおこり、気道が狭くなることによっておこる症状です。「ゼイゼイ」「ヒューヒュー」と苦しそうな呼吸をしていたり、慢性的に咳をしていたりする場合は、医師に相談してみましょう。 アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎 くしゃみや鼻水、鼻づまり、目のかゆみや充血といった症状が現れます。風邪かな?と思うような症状ですが、長く続くようならアレルギーを疑った方がいいかもしれません。 アレルギーのさまざまな原因 食物 いわゆる「食物アレルギー」の3大アレルゲンは、鶏卵、牛乳、小麦といわれています。しかし、このほかにもアレルゲンとなるものには、そばやピーナッツ、甲殻類、果物、豆類など、多くのものがあります。 小児のうちは消化機能が発達していないため、これらの食物にアレルギー反応を起こしていても、成長に伴ってアレルギーが出なくなることもあります。 ダニ、ハウスダスト、ペットの毛 目に見えないダニやハウスダストも、アレルギーの原因となる場合があります。こまめに掃除をする、風通しをよくするといった工夫で予防することもできます。また、ペットの毛もアレルゲンとなりますので、定期的にシャンプーをして清潔な状態を保つようにしましょう。 花粉 近年、発症年齢が低年齢化してきている花粉症。花粉症の原因となる植物には、スギ、ヒノキ、シラカンバ、ハンノキ、クリ、ヨモギなど、非常に多くの種類があります。症状が現れる時期が限られているなら、いずれかの花粉が原因となっているかもしれません。病院の検査で、原因を特定すれば対処もしやすいですね。 公開日:2016/05/23
アトピー性皮膚炎などのアレルギー対策として注目されている乳酸菌。外用薬の適正使用と、乳酸菌の効果について解説します。 目次 全国民の半数がアレルギー アトピー性皮膚炎の外用薬は適切に塗布 腸内環境を整える乳酸菌 乳酸菌を継続して摂取する 検証データなどの医学的根拠を確認する 自分に合った乳酸菌を 全国民の半数がアレルギー 花粉症など、アレルギーは外部から異物が体内へ入ってきたことで、私たちの体の防衛機能である免疫反応の誤作動、あるいは過剰反応により起きます。日本では全国民の半数が何らかのアレルギーを抱えているとされ、診療科として「アレルギー科」を掲げている医療機関も増えています。 アトピー性皮膚炎の外用薬は適切に塗布 アトピー性皮膚炎もそんなアレルギーの一つ。原因は未解明で、その患者数は2014年の厚生労働省のデータによると、推定総患者数は45万6千人余りとなっています。アトピー性皮膚炎の治療は主に免疫を抑制するためのステロイド系などの外用薬が用いられます。 ステロイド外用薬は薬効の強さ別に5段階に分かれ、使用は適切な強さの薬を適切な期間、適切な場所に塗布しなければなりません。世の中には皮膚が黒くなる、体の中に蓄積してしまうなどといった根拠のない噂も流布していますが、むしろ医師の指示に従わず、中途半端な量を使用すると、副作用が出やすくなる傾向があります。 腸内環境を整える乳酸菌 このようなアトピー性皮膚炎に対する治療は、痒みなどの皮膚症状を抑えるための対症療法になります。アトピー性皮膚炎を含めて、アレルギーに悩まされている人にとっては、体の内側からアレルギーが起きなくするようにしたいものです。 そんなアレルギーの根本的な対策として注目されているのが乳酸菌。乳酸菌とはその代謝機能により、乳酸を作り出す細菌のことをいいます。乳酸菌は古来より、漬け物やチーズなど、世界中の発酵食品に用いられていますが、近年は研究が進んで、アレルギー症状を改善するとされている乳酸菌も見つかっています。 乳酸菌を継続して摂取する 私たちの腸内は、さまざまな種類の細菌が無数に生息しています。この腸の中の細菌のバランスが崩れると、健康を損ねると考えられていて、乳酸菌にはそのバランスを整える機能が期待されています。現時点では、「L-55」「L-92」などの乳酸菌が、アトピー性皮膚炎などのアレルギー症状を緩和するとされています。 そして、これら乳酸菌による効果は対症療法とは違い、アレルギー全般、多くの人が悩まされている花粉症などにも効果が期待できます。もちろん、これらには即効性はありません。乳酸菌は継続して摂取することで、腸内を改善しようとするものなのです。 検証データなどの医学的根拠を確認する ただ、こういった健康情報というものは無数に存在し、そのなかには根拠が不明なものもあるので、情報を闇雲に信じ込むと、期待通りの効果がないだけでなく、体によくない影響があるかもしれません。 体質を改善し、体の内側からアレルギー症状を改善しようというのですから、逆に悪化させるようでは本末転倒です。ぜひ、その製品が謳っている効果のエビデンス(医学的根拠)を確認してください。 皮膚科医師で、金沢大学医薬保健研究域医学系皮膚科学教室の竹原和彦教授は、アトピー性皮膚炎患者の気持ちにつけ込んだ商法を「アトピービジネス」と呼び警鐘を鳴らしていて、特にアトピーで悩んでいる人は注意が必要です。 自分に合った乳酸菌を アレルギーを体質から改善したいと考えるからのであれば、これらの乳酸菌を摂ることが一つの方法となります。自分の体質や好みに合った乳酸菌はどれなのか、それぞれ試してみるのもよいのではないでしょうか。 ■関連記事 うつ病は過敏性腸症候群や善玉菌が関係あり 公開日:2016/04/04
花粉症を含むアレルギー性鼻炎と喘息は実は密接な関係があります。離れた場所にある2つの器官の病気が関連しているのはなぜでしょうか?答えは、どちらも気道で起きる病気というところにあります。「アレルギー性鼻炎」と「気管支喘息」の患者が注意しなくてはならないことなどをご紹介します。 目次 花粉症を含むアレルギー性鼻炎と気管支喘息の関係 ひと続きの気道の病気という考え「One airway,one disease」 患者の側からできること アレルギー性鼻炎と気管支喘息の患者はコレに注意 花粉症を含むアレルギー性鼻炎と気管支喘息の関係 春になると悩まされる人が多い花粉症は、季節性のアレルギー性鼻炎のひとつです。花粉症とともに通年性のものも含め、アレルギー性鼻炎の患者は年々増えており、2008年現在、国民の39.4%がアレルギー性鼻炎である(*1)といいます。これは、10年前と比べると約10%上昇したことを示しています。さらに2009年には、大規模な全国実態調査「SACRA(サクラ)サーベイ」によって、成人の喘息患者のうちアレルギー性鼻炎を合併している人が67.3%にのぼることが推定されると報告されました(*2)。 症状が鼻に現れるアレルギー性鼻炎と、気管支に現れる喘息。一見、関わりがなさそうな2つの病気ですが、実は切っても切れない関係にあります。海外で行われた調査(*3)において、喘息患者の60~78%がアレルギー性鼻炎との合併があると報告されています。また、日本国内で2005年に行われた調査(*4)においても、成人の喘息患者のうち、アレルギー性鼻炎との合併がある人が48%を占めるといいます。さらに、どちらかが発症してその治療をしないと、もう一方も引き起こされ、お互いが悪化する可能性があることが明らかになっています。 参考:大田健 第59回日本アレルギー学会秋季学術大会2009年10月29-31日(秋田) 演題番号MS19-#2 ひと続きの気道の病気という考え「One airway,one disease」 離れた場所にある2つの器官の病気が関連しているのはなぜでしょうか。その答えは、どちらも気道で起きるというところにあります。鼻やのどなどは上気道、気管支や肺などは下気道と総称されます。これらは離れた場所にあるものの、ひと続きの空気の通り道となっています。そのうえ、2つの病気は原因となるアレルゲンや、炎症が起きる過程も共通しています。 このことから、アレルギー性鼻炎も気管支喘息も、気道というひとつの器官の病気であるととらえる「One airway,one disease」という考えが、近年医療関係者の間では広まっているといいます。 患者の側からできること 気管支喘息だけでなくアレルギー性鼻炎の症状もきちんと医師に伝えられれば、別々の病気ではなく、ひとつの病気として治療を行うことができます。そのためには、両方が同じ病気だという認識を患者の側ももつ必要があるでしょう。どちらかにかかっている人は、もう一方の可能性があることも意識して、適切な治療法でしっかりコントロールするようにしましょう。 花粉症の患者も人ごとじゃない! アレルギー性鼻炎と気管支喘息の患者はコレに注意 2つの病気は、ひと続きの気道の病気だという認識をもちましょう 放っておくとお互いが悪化するので、すぐに治療しましょう どちらか一方の診察の際、もう一方を治療中であれば治療法が変わる可能性があるので、治療中であることを医師にきちんと伝えましょう *1 鼻アレルギー診療ガイドライン2009 *2 大田健 第59回日本アレルギー学会秋季学術大会2009年10月29-31日(秋田)演題番号 MS19-#2 *3 Grossman J Chest 1997;111:11S-16S. *4 赤澤晃他 気管支喘息の有病率・罹患率およびQOLに関する全年齢階級別全国調査に関する研究2005年度版 公開日:2010/03/01
「毛虫やウルシに触れて皮膚がかぶれた」「赤ちゃんがオムツにかぶれてしまった」、これは「接触皮膚炎」という病気です。日常生活の中で身近に潜んでいる「接触皮膚炎」について、どれだけ理解していますか?正しく診断をして治療と予防をするためには原因を知ることが必要です。 目次 日常に潜む皮膚の病気の正体は? 接触皮膚炎の2つのタイプを知る 接触皮膚炎は心がけしだいで予防可能 日常に潜む皮膚の病気の正体は? ハイキングをしていた時に「毛虫やウルシに触れて皮膚がかぶれた」という話や、赤ちゃんが「オムツにかぶれてしまった」という話を聞いたりすることがありますが、これはある物質が皮膚に触れたことによって起こる「接触皮膚炎」という病気です。 物質に触れた部分の皮膚にはかなり強いかゆみ、赤み、湿疹などがあらわれます。これらの症状は他の人にうつる心配はありませんが、すぐに消えるものからひどく腫れて水ぶくれができるものまで、その程度は人によってさまざまです。 接触皮膚炎の2つのタイプを知る 接触皮膚炎には2つのタイプがあります。これは炎症が起こるしくみによって分けられています。正しく診断をして治療を行い、そのあと予防するためにも、まずはこのタイプの違いを知り、次に原因を知ることが必要です。 タイプ 刺激性接触皮膚炎 アレルギー性接触皮膚炎 しくみ ・原因となる物質が触れたことにより直接皮膚に炎症を起こす ・原因となる物質の毒性の強さによって症状の強さが決まる ・誰にでも起こる可能性がある ・原因となる物質に触れたことにより体の免疫システムが反応し、皮膚に炎症を起こす ・原因となる物質の毒性の強さと症状の強さは相関しない ・原因となる物質にアレルギーのある人に起こる 原因 日焼け止め、脱毛クリーム、パーマ液、強力な石けんや洗剤、便や尿が分解されてできるアンモニアなど ウルシ・サクラソウ・銀杏などの植物、ゴム製品、金属製品、抗生物質、化学繊維など 接触皮膚炎の原因を知るための手段として有効なのが、「パッチテスト」という検査です。原因と考えられる物質を塗ったシールを患者さんの皮膚に2日間ほど貼り、その下にかゆみ、赤み、湿疹などの症状が出るかどうかを調べるものです。このとき、どのような状況で症状が出たのか、原因と考えられるものは何なのかを伝えておくと原因究明の役に立ちます。 接触皮膚炎は心がけしだいで予防可能 治療としては炎症を起こしている皮膚にステロイド薬を塗ったり、重症の場合には抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬を服用したりします。 しかし原因となる物質に直接触れないようにすることが、接触皮膚炎の1番の「治療」であり「予防」につながります。 明日からは次のポイントに心がけ、接触皮膚炎を予防しましょう。 心がけたいポイント ●長袖の服や手袋など、皮膚を保護する衣類を身につける ●原因となる物質を身につけない ●原因となる物質に近寄らない ●触れてしまった場合には、すぐに水で洗い落とす 公開日:2008/06/02
新築住宅に引越したとたん、体調がおかしくなった――室内にいるだけで、頭痛や吐き気などに襲われる病気「シックハウス症候群」が広がっている。特定の化学物質に接触し続けることで起こる「化学物質過敏症」のひとつで、最悪の場合、がんや肺炎に発展して死に至ることも…。恐るべき現代病の謎に迫ってみよう! 目次 米国発のシックハウス症候群 犯人はホルムアルデヒド!? うつ病に似た症状が出現! 化学物質から身を守れ! 米国発のシックハウス症候群 シックハウス症候群は、家やビルから出る化学物質で起こる病気。微量の化学物質で症状があらわれる化学物質過敏症と違い、大量の室内汚染物質によって発症する。 始まりは1980年代のアメリカ。当時、エネルギー不足が問題となっていたことから、気密性が高く、冷暖房費が安く上る「省エネビル」が次々に建てられていた。ところが、そこで働く人々がめまいや吐き気などの不調を訴えるように。日本でも同じような住宅やビルが建ちはじめると、同様のトラブルを抱える人が増えてきた。 犯人はホルムアルデヒド!? シックハウス症候群の原因は、気密性を追求した建築方法ばかりではない。最近の建物に使われている、建材や内装材も大きな要因だ。ビニルクロス、合板製フローリング、ビニルシートなどの素材はいろいろな化学物質を発生させる。このうち揮発性の高いものが空中を漂い、室内を汚染してしまうのだ。 悪玉化合物として有名なのが、「ホルムアルデヒド」。これを水溶液状にしたものは、「ホルマリン」と呼ばれており、標本を漬けるための防腐剤としてもよく知られるところ。つまり、ホルムアルデヒドに汚染された室内は、防腐剤が空中に広がっているのと同じ状態ということになる。そう考えると恐ろしくなるが、実際、ラットによる実験では、ホルムアルデヒドの発がん性も認められている。 それにもかかわらず、安価なホルムアルデヒドは建材や家具、壁紙の接着に広く使用されてきた。ただし現行の建築基準法では、ホルムアルデヒドによる被害を防ぐため、以下のような措置がとられている。 ●ホルムアルデヒドを発散する内装建材には、使用禁止や、使用面積の制限を実施 ●家具からの発散を防ぐため、原則としてすべての建築物に機械換気設備を設置 ●機械換気設備を設ける場合には、天井裏、床下、壁内、収納スペースなどから居室へのホルムアルデヒドの流入を防ぐ ホルムアルデヒド以外にも原因物質がたくさん! ●建材の接着剤や塗料に…トルエン キシレンベンゼン ●家やビルの土台に…木材保存材 ●クロス・フローリングの加工に…可塑剤(かそざい) ●シロアリ駆除の際に…防蟻剤 うつ病に似た症状が出現! シックハウス症候群による症状は、頭痛や吐き気ばかりではない。まさに体中にトラブルが発生する可能性がある。とくに多いのは、慢性的な疲労感や、思考力・注意力・意欲などの低下、イライラや睡眠障害など。いずれも、更年期障害やうつ病、心身症などでよく見られるため、誤解されやすい。引越しやリフォーム後にこうした症状が現れた場合は、シックハウス症候群を疑ったほうがよいだろう。 シックハウスによるトラブル ●自律神経のトラブル…発汗異常、手足の冷え、易疲労性(疲れやすい) ●精神のトラブル…不眠、不安、うつ状態、不定愁訴 ●末梢神経のトラブル…のどの痛み、渇き ●消化器のトラブル…下痢、便秘、悪心 ●眼のトラブル…結膜の刺激的症状 ●循環器のトラブル…心悸亢進(ドキドキする、息苦しい)など ●免疫のトラブル…皮膚炎、喘息、自己免疫疾患 化学物質から身を守れ! ホルムアルデヒドなどの化学物質にどのくらい汚染しているか、調べる方法はあるのだろうか?千葉大大学院医学研究院では、血液中の化学物質量を調べる実験をおこなっている。近い将来、安価な負担額ですむ簡易測定法を取り入れ、シックハウス症候群などの治療に生かす方針だ。自宅で自己チェックする場合は、「鼻や喉に刺激があるか」「頭痛や倦怠感を覚えるか」などがめやすとなる。 もちろん、予防も大切。家やビルは、換気されていなければ密閉された空間だ。日常の大半を過ごす室内の空気環境は、私たちの生活にとって非常に大切なもの。住宅などを建てる際は、有害な建材の使用をなるべく避け、引越し後は頻繁に空気の入れ替えをしたい。 換気の4ヵ条 ●窓やドアは頻繁に開けよう ●室内空気を汚染するものはもちこまない ●窓を閉め切った場合は換気扇を回す ●給気口はできるだけ開けた状態に 新築・リフォームの4ヵ条 ●できれば自然素材、無垢材を使ってもらう ●有機溶剤を使用した接着剤や塗料の使用は避けるようにする ●合板・塩化ビニールクロスの使用は避けるようにする ●通風、換気へ配慮した設計をしてもらう 公開日:2005年8月29日
不幸にも金属アレルギーを起してしまった場合はすぐに原因となったアクセサリーの使用をやめること。気になる人は皮膚科でパッチテストを受けようなど、金属アレルギーの治療法と予防法を紹介する。 目次 金属アレルギーを起こして、かぶれてしまったら? 金属アレルギーを予防するために 金属アレルギーを起こして、かぶれてしまったら? 不幸にも金属アレルギーを起こしてしまった場合には、まずはその金属の使用を中止すること。ただし、革なめしの過程で使用される6価クロムによる皮膚炎などは、見た目には金属が含まれていないため、すぐには金属アレルギーだと気がつかないこともある。金属でなくても、接触している部分が皮膚炎を起こしたときには、すぐに使用をやめて皮膚科を受診しよう。 皮膚科では、副腎皮質ホルモン外用剤(ステロイド外用剤)を処方されることが多く、薬を塗れば1~2週間で症状は治まる。しかし、一度金属アレルギーになるとほぼ一生治らないため、その後はずっと金属と接触するのを避けるか、使用条件を考えなければならない。 金属アレルギーを予防するために 実際に、自分が金属アレルギーだと気がつくのは、アクセサリーを使用していてなんらかの症状が出始めてからのことが多い。しかし、金属と接触している部分がかぶれたり、かゆみがあるなどの症状が出たら、初期段階で皮膚科を受診すれば、ひどくなることを避けられる。自分が金属アレルギーかどうか疑わしい場合には、まず病院へ行こう。 皮膚科でパッチテストを行う パッチテストとは、ニッケル、コバルト、クロム、銀、金などの金属の検査薬をつけたシールを背中や腕に貼り、しばらく時間がたった後の反応を検査するもの。アレルギー反応がない場合には何も変化しないが、アレルギー反応を起こす金属の部分だけ赤くなり、陽性反応を示す。陽性反応が出たら、その金属は使わないほうがよい。 汗をかくときには、外しておく 金属による接触皮膚炎は、汗と接触した部分の金属がイオン化して起こりやすいため、運動をする前は外したり、夏場の使用は避けるなど、使用上の工夫をしよう。 購入するアクセサリーに気配りを 商品によっては、「ニッケルフリー」「ノンニッケル」などの表示があったり、使用している金属が明記されているものがある。アクセサリーを購入する場合には、どんな金属が使用されているのか確認しよう。また、ファーストピアスには、金属アレルギーを起こしにくい純チタンが表面コートされている商品や金属ではないセラミック製や樹脂製などの商品が開発されているので、あけた穴が上皮化するまではこういった素材のアクセサリーを使おう。 アクセサリーは直接肌につけるものなので、常に清潔にしておくこと。とくに、ファーストピアスは、傷口に直接ピアスが触れるので、手入れや消毒を怠らないように。
夏といえば「蚊」。そのかゆさに苦労させられている人も多いだろう。蚊に刺されないための予防法と対処法を紹介。 目次 蚊に刺されると、なぜかゆい? 蚊に刺されやすいタイプって? かゆ~い!でも、掻いちゃダメ!どうして? 化膿してしまったら皮膚科へ行こう 蚊に刺されると、なぜかゆい? 外に出たら蚊に刺されずにはいられない。それが夏というものだ。ところで、 なぜ、蚊に刺されるとかゆいのだろうか? 人の血液は空気に触れると固まる性質がある。しかし、それでは蚊にとって不都合なため、唾液を注入する。蚊の唾液には凝血を防ぐ物質や痛みを和らげる物質が含まれているのだ。唾液が入ると皮膚でアレルギー反応を起こすため、人はかゆみを感じる、というわけだ。 蚊ってこんな生き物 日本には100種類くらいの蚊がいるが、その中でも人を刺すのは「ヒトスジシマカ」と呼ばれる体が黒と白のシマシマ模様の蚊(やぶ蚊とも言われる)か、赤みがかった「アカイエカ」と呼ばれるものがほとんど。また、人を刺すのは雌だけ。これは、普段なら蚊は花の蜜や果汁、木の樹液などを餌にしているのだが、産卵期の雌は高たんぱくの栄養源が必要となるため、人などの血を吸うのだ。 蚊に刺されやすいタイプって? 同じ場所にいるのに、いっぱい刺される人と、あまり刺されない人がいるような気がするが、蚊に刺されやすいタイプというのはあるのだろうか? 一説によると、血液型がO型の人は刺されやすいと言われている。確かにこれまでの研究で、O型の人が他の血液型の人より刺されやすい、という結果が報告されている。それは、O型の血液の赤血球の表面についている血液型物質が花の蜜と非常に近いからだというのだ。 しかし、実際には蚊に刺されやすいかどうかは他の要素も大きく関係するため、O型でも刺されにくい人もいれば、その他の血液型でもよく刺される人もいる。 また、蚊は人が吐き出す二酸化炭素をキャッチしてより濃度が高いほうへ近寄って行く性質がある。そのため、お酒を飲んだ後は呼気の中の二酸化炭素が増えているので、より刺されやすくなる。 そのほか、汗っかきな人、体温が高い人も刺されやすいとか。ちなみに、子供は大人より体温が高いケースが多いため、子供のほうが刺されやすい。 ただし、これらはあくまでも「それ以外の人は刺されない」というわけではないので、悪しからず。 かゆ~い!でも、掻いちゃダメ!どうして? 蚊に刺された所を掻くのはなんとも言えない快感がある。しかし、実際には掻けば掻くほどさらにかゆくなり、ついには掻きむしってしまうことがある。まさに悪循環。大人でもかゆみを我慢するのはストレスになるほどだから、ましてや幼い子供ならなおさら。 では、なぜ、かゆいときに掻いてはいけないのだろうか。 それは、ひどく掻き過ぎると皮膚炎を起こしてしまうから。さらに、掻き壊した皮膚から細菌が入ると化膿したりして治りが悪くなる。子供の場合、蚊に刺された所を掻いているうちにとびひ(伝染性膿痂疹)になり、それがさらに火事の飛び火のごとく、数日であっという間に広がってしまうことがあるのだ。とびひは感染しやすいため、夏にはプールや水泳を禁止されて悲しい思いをすることもある。 かゆくても掻いてはいけない。かゆい所を流水や氷でしっかり冷やせば、かなりかゆみは治まる。また、市販されているかゆみに貼るシールを利用するのも手。幼い子供なら、爪を短く切っておくことも忘れずに。 化膿してしまったら皮膚科へ行こう 皮膚の炎症がごく限られた部分でほかに特別な症状が見られない場合には、市販薬の塗り薬などで様子をみてもよい。しかし、それでも炎症が治まらなかったり、範囲が広がってきた場合には、その薬を塗るのはやめて、皮膚科へ行こう。判断に迷う場合にも、念のため、病院へ行っておこう。 皮膚科での治療は塗り薬が基本で、症状によっては内服や注射、点滴などがある。 塗り薬(外用薬)には、副腎皮質ホルモン(ステロイド)外用薬、抗ヒスタミン薬などがよく使われる。 ●副腎皮質ホルモン外用薬 ステロイドには抗炎症作用がある。副作用が強いと思われ、敬遠されがちだが、広範囲、あるいは長期間使用を避けるなど、使用方法を間違わなければ効果の高い薬だ。 ●抗ヒスタミン薬 ヒスタミンとは、体内でかゆみのもとになる物質であり、抗ヒスタミン薬はかゆみを抑える薬。ちなみに、外用薬としてではなく、内服薬あるいは注射などでヒスタミンを使用すると、ねむくなったりのどが渇くなどの副作用があるため、車の運転をする人は注意しよう。 症状に合わせて外用薬や内服薬を処方してもらえるので、たかが虫刺されと思わず、病院へ足を運んでみよう。 公開日:2003年8月25日
喘息は予期し得ぬ急激な発作で命を失ってしまうこともある。喘息発作の予防法をご紹介。 目次 喘息は「命に関わることもある病気」 喘息は治らない病気なの? 喘息をコントロールする主な方法 喘息は「命に関わることもある病気」 わが国の喘息死亡率の推移(総数) 厚生労働省「人口動態統計」より 厚生労働省の人口動態統計によると、1950年ごろに喘息死亡率はピークを迎えていたが、戦後の医学の進歩により、喘息死は激減した。ところが、1976年ごろから横ばい状態となり、そのまま推移していて、1995年に喘息で亡くなった人は、約7,000人いるとの報告がある。 なぜ、喘息死が起こったのかを調べてみると、「適切な受診の遅れ」「予期し得ぬ急激な悪化」「患者や家族の判断の誤り」などが原因に挙げられている。つまり、喘息は日ごろから病気についての正しい知識を持ち、適切な処置をすれば、重篤な状態にはなりにくい病気であるということだ。 喘息の発作が起こり、急激に大発作に悪化した場合、救急車を呼ぼうと思っても、体を動かすのが困難で電話までたどり着けなかったり、誰かを呼ぼうと思っても声が出せず、そのまま窒息死してしまうケースが典型的な喘息死である。 喘息は死につながる病気だと心得ておこう。 喘息は治らない病気なの? 喘息が治る病気なのかどうかという認識は、医者によってかなり違っている。ただ、喘息は高血圧や糖尿病のように慢性疾患のひとつであり、完治するというよりは上手にコントロールして発作が起きないようにする、発作が起きたときに適切な対処をする病気であるという考え方をされることが多いようだ。 入院が必要なほど喘息発作の症状が重い患者の場合には、簡単な薬を使用することで日常生活に支障なく暮らせるようになれば大きな進歩になる。いかに喘息をコントロールするかは、主治医とよく相談しよう。 喘息をコントロールする主な方法 発作が起こりそうなとき、あるいはいつも気管支を健康な状態にしておくために予防する方法もある。実際に症状が出たときに使用される薬などのうち安全なものは、症状が出ないときでも正しく使う方法が取られている。 薬を有効活用しよう ステロイド剤 副腎皮質ホルモンを化学的に合成してつくった薬。吸入、経口、注射などがある。ステロイドが効かない喘息はない、といわれるほど喘息には効果のある薬だが、経口ステロイド剤は、副作用として高齢者やとくに女性の場合は、骨粗しょう症が起こる確率が高くなることもある。また、副腎という内臓を傷める危険性もあるため、使用は必要最低限に抑えるようにすること。使用上の注意を守れば副作用の心配は少なく、吸入ステロイド剤などは効果的なコントローラーになる。 抗アレルギー薬 Ⅰ型アレルギー反応に関わる化学伝達物質の遊離を抑えたり、作用を弱めたりする薬。古くからあるのはインタールだが、最近はトロンボキサン拮抗薬やロイコトリエン拮抗薬、サイトカイン阻害薬などがある。 気管支拡張薬 気管支平滑筋に作用して気管支を拡張させ、気流を確保する薬。作用の違いにより、キサンチン誘導体(=テオフィリンなど)や交換神経刺激薬(=β2刺激薬)、副交感神経遮断薬(=抗コリン剤)などがある。 環境をきれいにしよう そもそもアレルギーを起こすアレルゲンを身の回りから取り除くのが最も有効な予防法だ。すべてのアレルゲンを取り除く環境にすることは難しいかもしれないが、努力することで減らすことはできる。 ダニ ダニが好むじゅうたんを取り除いてフローリングにする、もしくは毛の短いじゅうたんにする。 布団についたダニは、布団を丸洗いするか、よく天日に干す。ただし、干した後、布団をたたくとダニの死骸が布団の中に入りこんでしまうので、干した後は布団に掃除機をかけてダニの死骸を吸い取るとさらによい。 また、こまめに掃除し、たんすや電化製品の後ろも掃除するようにすること。 ちなみに、気管支喘息の発作が秋に多いのは、梅雨から夏にかけて繁殖したダニが気温・湿度が低下する秋ごろに死んで、その死骸がアレルゲンになるからだとも言われている。 カビ カビが最も好むのは湿度。とくに、風呂場や台所、風通しの悪い和室の畳などは適度な湿気があるため、栄養がなくても繁殖する。日ごろから風通しをよくし、水回りもよく乾燥させるようにしよう。 ペット ペットを飼う人口は増えているものの、ペットの毛などがアレルゲンになっていることもある。その場合は残念だが、ペットを飼うことをやめよう。 できれば禁煙をしよう 喫煙が直接喘息の原因になるという証拠はほとんどないが、喫煙は気道炎症を起こしたり、血中総IgE値を上げたりするという報告がある。また、喫煙者は非喫煙者より気道が過敏になっているとの調査結果もある。できれば禁煙したい。
アクセサリーをしている首のあたりやピアスで耳がかゆくなったりしたことはないだろうか?それは金属アレルギーかもしれない。金属アレルギーがどのようなものか、どんな金属がアレルギーを引き起こすのかを紹介する。 目次 ピアスやネックレスでかぶれたことありませんか? どんな金属でアレルギーを起こすの? 歯科金属でもアレルギーは起こるの? ピアスやネックレスでかぶれたことありませんか? アクセサリーや日常に使っている金属をつけていて、かゆくなった経験はないだろうか。とくに、冬場は気にならなかったのに、汗をかく夏になったらなんだかかゆくなってきた、なんてこともあるのではないだろうか。だったらそれは、金属アレルギーかもしれない。 人の体内には、カルシウムやカリウム、ナトリウム、鉄、マグネシウム、亜鉛など多数の金属元素が含まれている。これらは欠乏すると体にさまざまな悪影響を与えるため、人体には必須の金属でありながら、皮膚と接触することで拒絶反応を起こし、かぶれなどの症状をもたらすことがある。これが、金属アレルギー(アレルギー性接触皮膚炎)だ。 金属アレルギーは、繰り返し同じ金属を使用しているうちに溶け出した金属イオンが体内に入りこみ、免疫のはたらきで異物だと記憶され、次に同じ金属に触れたときにアレルギー反応を起こしてしまう。また一度なると一生続くため、なかなか厄介なもの。 とくにトラブルが多いアクセサリーはピアス。ピアスは皮膚に直接穴をあけるため、より接触部分と反応を起こしやすい。 どんな金属でアレルギーを起こすの? 昭和62年に東京都済生会中央病院皮膚科で金属パッチテストを274人の患者さんに行った結果では、アレルギーの頻度のいちばん高かった金属として、水銀。次にニッケル、コバルト、スズ、パラジウムの順。 アクセサリーによく使われる金属として、最も多いのはニッケルだ。 アクセサリーなどに使われる金属 ●ニッケル:Ni ニッケルは、加工しやすくてさびにくく、しかも安いこともあって金メッキの下に使われることが多い。イヤリングやネックレス、指輪、ブレスレット、メガネのフレームなどさまざまな金色装飾品に使われている。 しかし、汗の中の塩素イオンはニッケルを溶け出させる作用が強いため、汗によってニッケルイオンが溶け出し、皮膚炎を起こす原因になるのだ。また、ニッケル加工されたアクセサリーは表面に変色や腐食などの変化がないため、アクセサリーが原因で皮膚炎を起こしたことに気がつかないことも多い。 ●クロム:Cr クロムには3価(Cr3+)と6価(Cr6+)があり、アレルギー性クロム皮膚炎を起こすのは、6価クロム。しかし、クロムメッキやクロム合金が汗に溶け出すのは3価クロムのため、皮膚炎は通常認められない。ただし革製品では、なめしの過程で6価クロムを使用することがあり、時計のバンドや皮手袋など、汗をかく部分と接触して湿疹を起こすことがある。 ●金:Au 金は溶けにくい性質があるので、アレルギーを起こすことはほとんどないと言われている。しかし、そうは言ってもまったく溶けないと言うわけではなく、最近は金を用いたピアスで皮膚炎を起こすケースもある。ピアスは直接皮膚の真皮と接触するため、金が溶け出しやすくなり、耳たぶがかぶれたりするのだ。 ちなみに、「ホワイトゴールド」という金属がアクセサリーに使われることがあるが、これは金、ニッケル、銅、亜鉛などの成分による合金で、その表面にパラジウムやロジウムなどのメッキが施されている。 歯科金属でもアレルギーは起こるの? 虫歯になったときなど、歯の治療にも金属は使用される。とくに、口の中は唾液によって金属が溶けてイオン化することがあり、アレルギー反応を起こすことがある。症状としては、歯肉炎や口唇炎、また舌炎などの炎症や味覚異常、歯や歯肉の変色、さらに全身の湿疹などの症状がでることもあるようだ。ただし、アクセサリーなどによる接触皮膚炎に比べれば、その頻度は少ない。 歯科用合金としてよく使われアレルギーを起こしやすい金属には、アマルガム合金や銀合金などがあるが、アマルガム合金は最近はあまり使われていない。一方、インプラント(人工歯根)の材料に使われるチタンはアレルギーを起こしにくいと言われている。もし、もともとアレルギー体質で、アクセサリーなどで金属アレルギーを起こした経験があるのなら、事前にパッチテストを行い、使える金属、使えない金属を歯科の先生と相談することが得策。 また、金属ではなくセラミックなどを使用する治療もあるが、ほとんどの場合保険が適用されないため、治療費がかかる。 万が一、歯科金属によってアレルギーが起こったら、その原因となった金属を取り除き、別のものに取りかえることがいちばん望ましい。
夏に多い虫刺されの中でも、とくに注意したいのが蜂。蜂に刺されると、呼吸困難に陥り、死に至ることも。虫刺されの予防法と対処法を紹介。 目次 知っておきたい!蜂から身を守る方法 蜂に襲われないためには? 蜂に刺されてしまったら? ブヨ、ダニ、毛虫にも気をつけて 予防の基本は肌を露出しないこと 知っておきたい!蜂から身を守る方法 夏はキャンプや山登り、川遊びなどアウトドアが楽しい季節。普段の生活から離れて違った経験ができるのは、アウトドアならではの快感だろう。しかし、楽しみと背中あわせに、多くの危険も潜んでいる。そのひとつが「虫刺され」で、痛みやかゆみなどの不快な思いをさせられてしまう。なかでも、蜂は命に関わる場合もあるので注意が必要となる。 一般に、人を刺して問題となるのは、攻撃性の強いスズメバチ科の蜂。特に8月から10月は、被害が最も多くなる時期で、野山に限らず、都市でも多くの被害が報告されている。 蜂と聞くと、その鋭い毒針で刺され、毒が回って死に至ると思う人も多いかもしれない。しかし、毒そのものが、直接命に関わることはない。 最も怖いのは、アナフィラキシーと呼ばれるショック症状。蜂の毒に過敏に反応するアレルギーを持った人は、くしゃみやじんましんなどの症状が出ることがあり、ときに呼吸困難や血圧低下などを起こし、危険な状態になることもある。アナフィラキシーショックは極めて短時間で起こるので、少しでも様子がおかしいと感じたら、救急車を呼ぶなど速やかに対処するようにしよう。 しかし、こうした反応を示す人は、蜂毒アレルギーの人に限られる。一般には、刺された所が激しく痛み、赤く腫れあがるというのが、蜂に刺された場合の主な症状として挙げられる。 蜂に襲われないためには? 蜂は、ある一定の距離以上近づくと襲ってくるため、蜂の巣を見つけたらまずは近づかないこと。もし、蜂が近くに来ても、追いかけたり腕を振り回したりせず、じっとしておこう。むやみに動くと蜂は攻撃されたと思い、興奮して威嚇してくる。余計に刺されてしまわないために、蜂を刺激しないことが大切だと言える。 また、蜂は黒い色を好むという傾向がある。そのため、髪の毛や目などを襲ってくることがあるので、頭を隠すように低い姿勢を取ろう。黒や花柄の服も標的になりやすいので、避けた方がよい。 さらに、蜂は匂いのするものを攻撃する性質がある。香水や匂いのキツイ化粧品、整髪料などの使用を避けよう。 蜂に刺されてしまったら? 毒液は水に溶けやすいため、蜂に刺されたら、まず傷口を流水でよく洗い流し、傷口から毒を絞り出そう。口で吸った場合、毒は必ず吐き出すようにすること。そして、ステロイドを含有したかゆみ止め軟膏(ステロイド軟膏)を塗って病院で診てもらおう。 蜂に刺されたら、アンモニア水やおしっこをかけるとよいという考えもあるようだが、蜂の毒は中性に近く、アンモニアで中和するのは効果がないと言われている。 ブヨ、ダニ、毛虫にも気をつけて 蜂のほかにも、刺されると厄介な虫がいる。これらの虫は野山に多いのはもちろんだが、どんな虫がどこにいるのか、刺されたときはどう対処すればよいのかを覚えておこう。 ブヨ ●どんな虫? ブユ(蚋)ともいう。体長3~5ミリ程度の黒い虫。ブヨの幼虫は小川や渓流で発育し、メスの成虫が吸血する。 ●刺されたときの特徴 刺されたときはちくっとした痛さで、蚊に似ている。しかし、蚊のかゆみが30分程度で治まっていくのに対し、ブヨのかゆみや痛みは徐々にひどくなっていく。刺されてから2~3日は刺された所が腫れあがり、熱を持つほど。人によっては頭痛や発熱が起きることもある。1週間ほど、かゆみと痛みとの戦いになる。 ●対処法 早めにかゆみ止めの軟膏(ステロイド軟膏など)を塗るとよい。特に、子供の場合掻きむしってしまうと、そこから細菌が入り、化膿して二次感染を起こす原因となる。かゆみがひどい場合には、皮膚科などでかゆみ止めの内服薬を塗り薬と併せて処方してもらうと楽になる。熱を持っているときには、冷やすとかゆみや痛みが和らぐこともある。 ダニ ●どんな虫? ダニの生息域は実にバラエティに富んでいて、家の中だけでなく、藪の中にもいる。 ●刺されたときの特徴 ダニの口は鋭くとがっているため、皮膚に食い込んでくることもあり、かなりやっかいだと言える。ダニの中でも野山にいるマダニは、人に食いつくとなかなか離れず、発見が遅れると頭部が体内に残って化膿してしまうこともある。 ●対処法 食いついているのを発見したら、無理やり取らず、ピンセットや毛抜きで咬器が残らないように取り除くこと。咬まれた後、数日から数週間後に発熱・発疹・下痢などの症状が現れた場合は、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)などの感染症の恐れがある。早めに病院を受診して、ダニに咬まれたことを医師に伝えよう。 毛虫 ●どんな虫? 蛾やその幼虫である毛虫にも毒を持ったものがいて、どこにでも生息している。身近な所では、サザンカや椿の木につくチャドクガの幼虫(毛虫)に刺されやすいので要注意。 ●刺されたときの特徴 毛虫の毒のある毛や、毒蛾のりん粉に触ると、ひりひりとしてだんだん強いかゆみを感じるようになる。触った所がぷつぷつと赤く腫れるのが特徴。また、毛虫や毒蛾を見かけなくても、毛やりん粉が風で飛ばされ、洗濯物などにつき、それを着たときに刺されることもある。 ●対処法 刺されたら、流水で洗い流すかテープなどを当てて毒針毛を除く。そして、早めにかゆみ止めのステロイド軟膏などを塗る。 予防の基本は肌を露出しないこと ちょっとくらい刺されても仕方がないと、甘く考えないようにしたい。かゆいとついつい掻いてしまい、そこから細菌が入って化膿してしまうこともある。備えあれば憂いなしと思い、予防するに越したことはない。 ●長袖・長ズボン 肌の露出部分が多ければ、それだけ刺される確率も高くなる。夏はつい露出の多い服を着がちだが、野外で遊ぶときにはできるだけ長袖・長ズボンを着用しよう。これだけでもかなり効果がある。 ●帽子・手袋 帽子や手袋も虫よけには効果的。さらに、顔の前に垂らす網がついているタイプのものなら顔の虫よけもできる。 ●虫よけのスプレーやティッシュ 外に出る前に防虫剤を肌の露出部分にかけておくと、ブヨや蚊を避けられる。ただし、スプレータイプは顔に直接かけると目や口に入ってしまうので、一度手のひらにかけてから顔に塗るようにしよう。顔や幼い子供には、より使いやすい虫よけティッシュを利用するのもよいだろう。 公開日:2003年8月25日
花粉症やアトピー性皮膚炎といったアレルギー症状に悩む人は多い。日本ではアレルギー予備軍が急増中とも言われ、誰にとっても他人事ではない問題だ。 都立駒込病院アレルギー膠原病科の猪熊茂子先生に、日本におけるアレルギーの現状やアレルギー対策について教えてもらった。 目次 大アレルギー時代の到来!? 年齢に応じてアレルギーも変わる「アレルギーマーチ」 食物アレルギーに負けるな! 大アレルギー時代の到来!? アレルギーとはご存知「免疫の異常反応」のこと。体内に侵入した異物を排除するためのシステムを「免疫」と呼ぶが、本来の免疫機能が過剰にはたらき、人体に悪い影響を及ぼしてしまう状態が「アレルギー」なのだ。 「免疫」と「アレルギー」は本来同じもの 免疫機能は皮膚と粘膜に現れるが、大きく4つに分類できる。狭義の「アレルギー」はI型だが、一般には、Ⅰ型とⅣ型を指す場合が多い。 免疫機能の分類 即時型 ほんの数分で症状が現れる Ⅰ型 ぜんそく、じんましん、アレルギー性鼻炎、アナフィラキシー・ショック*、多くのアトピー性皮膚炎 遅発型 8~15時間後に症状が現れる Ⅱ型 多くの薬物アレルギー、自己免疫性溶血性貧血、重症筋無力症、不適合輸血など Ⅲ型 血清病の腎炎、関節炎、糸球体腎炎、SLEの腎炎、過敏性肺炎など 遅延型 24~48時間後に症状が現れる Ⅳ型 ツベルクリン反応、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎の一部 アナフィラキシー・ショック…薬剤や昆虫の毒などによって起こる全身性の強いショック症状 今日の日本では、花粉症やぜんそくなどのアレルギー疾患にかかりやすい体質の若者が年々増加中と言われているが、猪熊茂子先生は、 「1980年代の終わり頃を境に、確かにアレルギーの患者さんが変化したように思います。それまではぜんそくで入院する方が多かったのですが、ぜんそく治療が進歩して、替わりにアトピー性皮膚炎などを含むほかのアレルギーの患者さんが増えてきました。日本で特にアレルギー予備軍が急増しているような印象があるのは、日本の衣食住環境が、劇的に西欧化したからではないでしょうか」と言う。 「アレルギーが多くなってきたことの背景には食事の問題と住環境の問題、大気汚染の問題が考えられます。食事で言えば油の摂取の仕方とたんぱく質が原因になっていることがわかっているし、住環境についてはダニの問題ですね。日本人にとってはダニのかけら(死がい)がアレルギーを引き起こす大きな要因なのです。マンションのように密閉され、エアコンで常時25℃前後に設定された部屋は、実はダニにとってもとても住みやすい環境なんです。布団やソファ、カーペットなどダ二のすみかも十分ありますしね。また、ディーゼルエンジンの排出ガスもアレルギーに悪影響を及ぼすことがわかっています」 「戦後の短い時間の中で、日本はがらっと生活環境が変わってしまいました。西欧化と言いますが、ヨーロッパなどの国々では長い間こうした環境に住み慣れているのに対し、日本人の場合は環境の変化によるアレルギーの増加が目立っているようです」 アレルギー疾患有症率 全国調査におけるアレルギー疾患有症率(%) ■乳幼児(0~5歳) ぜんそく・ぜん鳴 アトピー性皮膚炎 アレルギー性鼻炎 アレルギー性結膜炎 何だかのアレルギー疾患 男 19.810.28.62.530.8 女 15.710.45.22.925.8 全体 17.910.36.92.728.3 ■小・中学生(6~15歳) ぜんそく・ぜん鳴 アトピー性皮膚炎 アレルギー性鼻炎 アレルギー性結膜炎 何だかのアレルギー疾患 男 12.37.122.610.635.3 女 8.57.916.211.529.9 全体 10.47.519.51132.6 ■16歳以上 ぜんそく・ぜん鳴 アトピー性皮膚炎 アレルギー性鼻炎 アレルギー性結膜炎 何だかのアレルギー疾患 男 4.51.720.611.328.2 女 4.11.923.316.732.8 全体 4.31.82214.230.6 出典:厚生省アレルギー総合研究事業研究班・厚生省長期慢性疾患総合研究事業アレルギー疫学の研究より(1992~1996) 年齢に応じてアレルギーも変わる「アレルギーマーチ」 アレルギーマーチ 赤ちゃんの時には卵や牛乳で腹痛・下痢などの消化器症状や湿疹など皮膚症状を起こし、2~3歳になってからはさらに花粉症などのアレルギー性鼻炎にかかる…。このように年齢に応じて発症するアレルギー(Ⅰ型)が変わっていく様子を「アレルギーマーチ」という。ただ、ひとつひとつの症状がどんどん重くなっていくことはなく、ひとつの症状が改善したら、次の症状が出るケースが多い。 アレルギーマーチからわかることは、年齢が上がるにつれてアレルギーの原因物質が食物たんぱく質からダニやハウスダストへ、さらに花粉へと変化していくことだ。 「生まれたばかりの赤ちゃんは外へ出ることがあまりないですよね。最初にさらされる異物は何かというと食物なんです。腸管の壁がまだ未成熟で丈夫でないうちは、食餌(しょくじ)性のアレルギー反応を起こしやすいと考えられます。年齢とともに変化するアレルギーマーチですが、もちろん途中で治っていく方もいます」 「ただ、アレルギーは体質の問題。アレルギー体質であれば、いつかは発症してしまう可能性が高いのです。それまでアレルギーと無縁に過ごしてきた人でも、40歳を過ぎてぜんそくで入院、なんてこともあるんですよ。リンパ球が抗原と何度も接触を繰り返し、できたIgE抗体がある水準まで蓄積されたときが発症のスタンバイ。私たちの気付かないうちに、ひそかにアレルギーはやってくるのです」 食物アレルギーに負けるな! 特定の食物が原因となる食物アレルギーもⅠ型アレルギーのひとつ。アレルギー物質は多種多様で、牛乳、卵、魚類、エビやカニといった甲殻類、米、小麦、そば、大豆、乳製品などなど、ほとんどの食物にアレルギーを起こす可能性がある。 こうした食物にはたんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルといったさまざまな物質が含まれているが、アレルゲンとなるのはある種のたんぱく質だけである。食物が消化される過程でたんぱく質は胃や腸などで小さく分解されるが、未消化のまま体に吸収されるたんぱく質もあり、これがアレルゲンとなってしまうのだ。腸管を通して吸収された食物たんぱく質(アレルゲン)は血液によって体のいろいろな場所に運ばれ、アレルギー症状を起こすことになる。 食物アレルギーの症状 「食物アレルギーは時にアナフィラキシー・ショックと呼ばれる危険な全身症状を引き起こすことがあるので、決して軽んじてはいけません。今では知識が普及してきましたが、やはり自分で『何を食べたら症状が出た』といった記録をつけておき、いつも食品表示をチェックすることを心がけることが大切です。原因がどうしてもわからず、繰り返し症状が出ているようなときは、抗アレルギー剤を飲んだり、発作が始まったときに注射をして抑える薬も出ています」 ■猪熊茂子先生 都立駒込病院アレルギー膠原病科部長。第15回日本アレルギー学会春季臨床大会会長。東京大学医学部卒業後1981年から都立駒込病院にて勤務。獨協医科大学医学部非常勤講師、東京大学医学部講師、昭和大学客員教授を兼任。 専門は膠原病、慢性関節リウマチ、血管炎・気管支喘息、アナフィラキシー、薬剤性障害など。
「体質だから仕方ない…」と諦めがちなアレルギーのこと。国の取り組みやステロイド剤の使い方などについて、猪熊先生に質問してみた。 目次 アレルギーを誘発しやすい油ってどんなものですか? 今後さらにアレルギー患者が増えそうですが、日本は国を挙げて対策をとっているのですか? 食物アレルギーについて、いろいろある栄養素のうちたんぱく質が原因となるのはなぜ? ステロイド剤の使用について、不安も多いが医師の指示に従えば本当に大丈夫? アレルギーを誘発しやすい油ってどんなものですか? 「リノール酸系の油とアレルギーとの関連性が指摘されています」 リノール酸系の油とはべに花油やコーン油といったもの。動物性油脂が高コレステロールの原因だと言うことで敬遠された時期があり、その反動でべに花油やコーン油といった植物油が多く使われることになりました。小さいお子さんがよく口にするようなスナック菓子や揚げ物がこうした油で作られていては、アレルギー予備軍の子どもたちはどうしても増えてしまいますよね。ただ、リノール酸の油が体に悪いということではありません。油分は体にとって必要なものですが、動物性脂肪、リノール酸、α-リノレン酸(シソ油、魚油など)からまんべんなく摂るように心がけてください。どれかひとつだけを摂っていればいいというものではないのです。 今後さらにアレルギー患者が増えそうですが、日本は国を挙げて対策をとっているのですか? 「各省庁で研究費をつけるなどして取り組んでいるようです」 気管支ぜんそくやアナフィラキシー(全身性の強いショック症状)は生命に関わることもあります。気管支ぜんそくによる死亡は減ったとは言え、年間数千人に及びます。また、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎はそれぞれ全人口の10%前後の患者さんがいると言われ、ほかにはない罹患率なんです。国としても医療費削減のために大いに取り組むべき課題として認識していると思います。アレルギー問題を解決するには、食事と住環境の両面から取り組む必要があり、厚生労働省・文部科学省・環境省・農林水産省などで研究費をつけて取り組んでいます。また、東京都でもディーゼルエンジン問題を積極的に取り上げています。 食物アレルギーについて、いろいろある栄養素のうちたんぱく質が原因となるのはなぜ? 「もともと日本人の腸はでんぷん消化型にできていて、西欧人ほどたんぱく質消化力が強くないことに原因があるのではないかと考えられます」 たんぱく質がアレルギーの原因となるには、ある程度の分子量が必要です。胃や腸で十分に消化されているのであれば、アレルゲンとなることはありません。日本人は本来農耕民族で、穀物やイモを消化するのに都合のよい長い腸を持っています。その日本人が、急に高タンパク・高カロリーの西欧型食生活に切り替わってしまったことで、今日さまざまな変調を来たしているようです。大腸がんが増えたのもこのためと言われていますが、食物アレルギー増加についても無縁ではないように思います。 ステロイド剤の使用について、不安も多いが医師の指示に従えば本当に大丈夫? 「お医者さんの指示に従って使えば、とてもいい薬ですよ!」 ステロイド剤は、人類が獲得した薬の中でも抗生物質などと並んで最重要なもののひとつに確実に入ります。ステロイドは私たち自身が毎日体内で作っている物質です。副腎(ふくじん)という臓器から分泌されるホルモンで、体内の代謝にも関わりますが、まずは体のリズムを作る、しゃんとさせるなどのはたらきがあり、体内で起きている炎症を軽くする作用があることが知られています。また、医師のほうでもステロイド剤をどう使えば副作用が少なく、効果的に使えるかといった知識が蓄積されています。ですからお医者さんの指導に基づいて使えば、こんなにいい薬はないと思いますよ。 ただし、いくつか注意があります。まず「ケチらない」こと。必要なだけの量を十分使ってください。次に、「勝手にやめない」こと。ステロイド剤は、一定期間使ったらあとは緩やかに量を減らしていく漸減(ぜんげん)するという原則があります。そして「効かなかったら他の療法に切り替える」こと。いずれも素人判断ではなく、きちんとお医者さんと相談しながら使うことが大切です。 アレルギー・アトピーの薬ってどんなもの? 長く医療の現場に携わっている猪熊先生によれば、「アレルギーの要因は食生活、住環境など多岐に渡っていて、どれかひとつに原因があるというものではありません」とのこと。「また、寄生虫や細菌感染の発症率が非常に低下するに伴い、アレルギーのような病気が増えてきているという説もあります。社会の疾病(しっぺい)構造が大きく変わりつつあることも、無視できない要因ですね」。今後の日本では、どうしてもアレルギーとの関わりが大きな問題になりそう。私たち自身で正しい知識を持って、うまくつき合っていく方法を考えたいものだ。 ■猪熊茂子先生 都立駒込病院アレルギー膠原病科部長。第15回日本アレルギー学会春季臨床大会会長。東京大学医学部卒業後1981年から都立駒込病院にて勤務。獨協医科大学医学部非常勤講師、東京大学医学部講師、昭和大学客員教授を兼任。 専門は膠原病、慢性関節リウマチ、血管炎・気管支喘息、アナフィラキシー、薬剤性障害など。
ダニの種類は50万種類以上。チリダニやツメダニなどが人体に悪影響を与えます。高温・多湿を好むため、夏は爆発的にダニが増える時期です。 目次 ダニはアレルギーのもと! ダニってどんな生き物?ダニの繁殖条件 30匹が1万匹に! 家屋の代表的なダニたち ダニはアレルギーのもと! ダニは、カビとともに、アレルゲン(アレルギー症を発症させる原因となるもの)になり得るものです。 ダニそのものだけでなく、ダニの糞や死骸などは、アレルギー性鼻炎やぜんそくの原因に、またツメダニと呼ばれる刺咬性のあるダニが刺したときの分泌物(唾液)は、アレルギー性皮膚炎を発症させるもととなります。 特に、アレルギー性ぜんそくは、80%以上ダニが原因であるといわれています。 小さい子がいる家庭や、アレルギー症の人には、ダニは天敵なのです。 ダニってどんな生き物?ダニの繁殖条件 さて、ダニとはどんな生き物なのでしょうか? 生物学的分類では、クモの親戚です。ただし、クモや昆虫は、頭、胸、腹が分かれている(クモの頭と胸は一緒)のに対し、ダニは部位ごとに分かれておらず、ひとつしかありません。 ダニの体長は100~1000マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリ)、幅50~200マイクロメートルです。人間の肉眼で見える大きさは100マイクロメートルまでだといわれているため、家の中にダニがいても、見つけることはほとんどできません。 ダニは次のような条件で繁殖します。 ダニの繁殖条件 ●温度…20~30度 ●湿度…60%以上 ●栄養源…カビ、他のダニ、人のフケ、食べ物など ●繁殖期…6~10月。6~7月に増殖が始まり、8月にピークを迎える 30匹が1万匹に! ケナガコナダニを夏と同じ条件(温度25℃、湿度75%)で水やエサを十分に与えたところ、30匹が10週間で1万匹に増えたという実験結果があります。おもしろいことに、冬を想定した温度・湿度では、いくらエサや水分があっても、30匹が10週間後には半減してしまったそうです。 ダニの種類によっては条件さえそろえば、2週間ほどで卵から成虫に育つといわれています。やはり、夏は爆発的にダニが増える時期なのです。 家屋の代表的なダニたち ダニの種類は50万種類以上。そのうち、家屋で検出されるものは100種類ほど。それには、次のようなものがあります。 知ってる?ダニのいろいろ ●チリダニ科 家屋に生息するダニの中で、圧倒的に多いのがこのチリダニ(科)。なかでも、コナヒョウヒダニとヤケヒョウヒダニが多い。チリダニは人のフケやアカ、食品クズを栄養源とする。畳やじゅうたんなどの床表面近くやベッド、布団などの寝具にいる。 ●イエササラダニ科 カビを主食とするダニ。カビの生える場所、とくに畳やござなど、ワラやイグサで作られた畳床で繁殖する。梅雨どきから夏に大量発生する。 ●ツメダニ科 人を刺したりかんだりするダニ。ミナミツメダニやクワガタツメダニなどが、これに分類される。人を刺したときに、代わりに唾液腺の分泌物質を注入する。それがアレルゲンとなる。刺されるとかゆさが1週間ほど続き、皮膚が赤くもりあがる。 ●コナダニ科 ケナガコナダニもカビを食べて繁殖する。スナック類を床に寝転んで食べたり、食べ物を床に放置しておくと、食品とともに体内に入り、アレルギーの原因になりやすい。 ●ニクダニ科 イエニクダニ、チリニクダニ、サヤアシニクダニなど。家屋から検出される。とくに、魚介類の乾燥物や干物を好む傾向がある。比較的低温(15度くらい)を好み、繁殖するため、11月~3月に現れることがある。 公開日:2015年7月21日
カビや細菌、ウィルスなどは、普通は「汚いバイキンだ!」といわれる嫌われもの。しかし、実は自然界の掃除屋としての大切なはたらきがあり、人体に悪影響を与えるものばかりではない。身近にいるカビをみてみよう。 目次 「カビ」ってなに? こんなものまでがカビ!? カビが好む条件は? 「カビ」ってなに? カビや細菌、ウィルスなどは、単独の細胞が集合した原生生物に分類される。そしてこれらの微生物は、普通は「汚いバイキンだ!」といわれる嫌われもの。しかし、実は自然界の掃除屋としての大切なはたらきがある。 なかでもカビは、強力な酵素によってものを腐らせ分解しながら、ほかの生物にとって欠かせない栄養分を供給し、環境浄化に一役買っているのだ。そのはたらきをうまく利用したのが、みそやパンなどの発酵食品である。また、医薬品の分野でも青カビからペニシリンを作るなど、貢献しているのだ。 ちなみに、生物学的には細菌とカビは違うもの。例えば、増殖のしかたでは、細菌が細胞分裂によって増殖するのに対し、カビは細胞が糸状に伸び、たくさんの胞子を空気中に飛び散らせてあっというまに増殖してしまう。 こんなものまでがカビ!? 4万種類以上もあるといわれているカビ。あまりに多くてまだ不明なものも多いようだ。ただ、前述のように、人体に悪影響を与えるものばかりではない。身近にいるカビをいくつか挙げてみよう。 カビのいろいろ ●クラドスポリウム…主に浴室やトイレなどのタイルの目地にいる、黒い斑点状のカビ。高温、低温、乾燥、防カビ剤に強く、家屋のいたるところで繁殖する。アレルギーの原因になりやすい ●ペニシリウム…青カビとも呼ばれるカビ。抗生物質の「ペニシリン」を生産したり、ブルーチーズというチーズを発酵するのにも使われる ●アスペルギルス…コウジカビとも呼ばれる。ミソやしょう油などの発酵に使われる ●アルテルナリア…ススカビとも呼ばれる、灰緑色のカビ。空中で浮遊しやすく、アレルゲン性も高いため、吸いこむと気管支ぜんそくや過敏性肺臓炎の原因になる ●ワレミア…乾燥を好む、小豆色のカビ。じゅうたんや畳、またはようかんなどの甘い食べ物で見かける カビが好む条件は? カビは一部のものを除いて好気性菌(空気が存在しないと生きていけないもの)であり、植物のような葉緑素がないので自活できず、栄養のあるものに寄生して繁殖する。 その栄養とは、食べ物だけではなく、ガラス窓やタイルなどについた手垢などの汚れでもいいのだ。つまり、いたるところにカビが好む栄養が存在するため、どこにカビが生えてもおかしくはない。 カビが好む条件 1. 栄養…有機物であれば、食品類に限らず、ほこりや汚れなどなんでもOK 2. 温度…多少カビの種類によって異なるが、最も活発なのは20~30℃ 3. 水分…室内の湿度が、70~90%程度が大好き 4. 酸素…カビの胞子が発芽するためには必ず酸素が必要
カビがアレルギーの原因になるメカニズムはわかっていないことも多いが、カビによるアレルギー反応の症状として、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性ぜんそく、そして水虫もカビの一種である。 目次 カビはアレルギーの原因だ! 水虫もカビ!? コンタクトレンズにもカビが生える カビはアレルギーの原因だ! 本来、人間の体にはさまざまな有害物質から身を守るための機能が備わっている。その免疫作用によって無害になるはずの物質が、なんらかの原因によって人体に有害となってあらわれ、さまざまま障害を起こすのがアレルギーである。 なぜ、カビがアレルギー症の原因になるのか、そのメカニズムは非常に複雑でまだ分かっていないことも多い。普通、カビなどが体内に入ると体が感知して、それを排除しようとするために抗体ができ、カビによる害が体内に広がるのを阻止するはたらきをする。ただそのはたらきが体にマイナスに出てしまった場合、さまざまな炎症を起こしたりすると考えられている。アレルギー反応は、皮膚や呼吸器、消化器などで炎症反応を起こしやすいのだ。 カビによる主なアレルギー反応と症状 ●アレルギー性鼻炎 鼻の粘膜に抗原抗体反応が起こって発症する。症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなど。ひどくなると頭痛、目の充血、涙が出る、などの症状を伴うことも ●アレルギー性結膜炎 目の結膜にアレルゲン(カビなど)が付いて発症する。症状は、赤くはれる、充血、かゆみ、目やにや涙が止まらない、目の痛みなど ●アレルギー性皮膚炎 皮膚に炎症や湿疹が起こり、かゆみ、赤斑などが発生する。食品や薬品なども原因となるが、ダニ・カビもアレルゲンとなる。アトピー性皮膚炎の原因物質としてもカビやダニは注目されている ●アレルギー性ぜんそく 気管支の収縮によって気道が狭くなったり、炎症を起こしたりして発症する。80%以上はダニに起因しているともいわれているが、カビやペットの毛などが原因になることも 水虫もカビ!? 水虫は、皮膚に白癬菌(はくせんきん)と呼ばれるカビが生える病気で、正式には汗疱状白癬といい、ひどくなると爪にまでカビが生えるようになる。 カビが皮膚の内部にはびこり、ケチラナーゼという酵素を出して皮膚の角質などを栄養にしてどんどん増えていく。そして、菌糸がどんどん深くもぐっていってしまうのだ。治療をすると、表面のかゆみや痛み、ただれが引き、治ったかのように思うが、かなり深いところまでもぐっているので、気候がカビの好都合な条件になったり、ヤド主の体力が弱まると、また登場してくる。 水虫になったら、皮膚科にかかり、徹底的に治しておくことが大切だ。 コンタクトレンズにもカビが生える コンタクトレンズでも、とくにソフトレンズは吸水性が高く、含水率は30~80%程度。だから、目の中にある脂肪やたんぱく質がつきやすく、カビや細菌が住みつきやすい。 コンタクトレンズにつくカビは、クラドスポリウム菌、アルテルナリア菌、セロファスポリウム菌など。健康な人の涙には、リゾチームという物質が存在し、目をカビや病原菌から守っているが、コンタクトレンズの手入れを怠ると、角膜が感染症を起こすことになる。そういった意味では、これからは使い捨てレンズが主流になるのでは?
日本は比較的湿度の高い国である。とくに、梅雨どきから夏にかけては高温多湿になり、カビが繁殖する絶好のチャンス!できるだけカビを生やさないためのポイントと、生えてしまったときの退治法をご紹介しよう。 目次 日本の風土はカビ好み!? カビが生えてしまったときの退治法 日本の風土はカビ好み!? 日本は比較的湿度の高い国である。とくに、梅雨どきから夏にかけては高温多湿になり、カビが繁殖する絶好のチャンス!加えて、現代の住宅は、鉄骨、コンクリートなどの建材が使われ、従来の木造家屋に比べて吸湿性が低くなってきている。さらに、どんなに注意深く暮らしていても、カビは空気のような存在でいたるところにうようよしているため、完全にシャットアウトするのは難しい。 そこで、できるだけカビを生やさないためのポイントをおさえておこう。 カビを防ぐ最も重要なポイントは、湿度を下げて水分を与えないこと カビは湿度65%以下だと発育が困難になる。家の湿度が高くなる原因は、気象条件、立地、生活に伴う水蒸気の発生、などが考えられる。「梅雨なんてイヤだ!」と思っても、それは自然現象なのでしかたがない。あとはいかにして湿度を低く保つかが問題だ。 ●梅雨の晴れ間は、室内の空気の入れ替えをしたり、換気をすること ●濡れた衣類や傘などを室内に持ち込まないこと ●除湿機を置いたり、除湿剤、すのこなどを使って湿度を上げないこと ●浴室の水蒸気を部屋に持ち込まないようにすること(浴室と部屋の境の戸を開けたままにしない) ●料理をする時には、換気扇を必ず回すこと 温度を利用してカビの繁殖を防ぐ 一般にカビの胞子は、45℃以上で死滅するといわれている。手軽なのは天日干し。晴れた日には、カーペットや布団などを太陽に当て、加熱乾燥しよう。 また、家庭用の布団乾燥機でも同じような効果が得られるので利用しよう。 結露を防ぐ 結露というと、夏場よりも低温乾燥しやすい冬に起こりやすい傾向がある。冬はカビが生えにくい自然環境だが、暖房設備がととのった現代では窓や壁に結露を起こしやすく、それがカビを生やす原因となる。 建築上の問題も関与するところではあるが、結露を起こしやすい壁には家具をピッタリ置かない、換気を十分にして窓ガラスに結露を発生させない、などの工夫が必要だ。 カビが生えてしまったときの退治法 ●畳 畳の表面に生えたカビは、漂白剤や消毒アルコールでふき取る。塩素系の漂白剤は、有毒な塩素ガスを発生させることがあるので、使用する場合は換気に注意し、ゴム手袋をはめること。また、最後に固く絞った水ぞうきんで畳を拭き、漂白剤などが残っていないようにしよう。 ★さらにポイント!⇒ 畳の内部に繁殖したカビは表面を拭くだけでは退治できないので、畳を外に出して天日干しするか、畳の片側を上げて畳の裏に扇風機で風を送るなどして退治する。 ●カーペット 床からはがせるカーペットなら、天日干しをするのがいちばん。でも、動かせないようなカーペットなら、まめに掃除機をかけ、固く絞った水ぞうきんでふき取ること。とくに、食べこぼしにはワレミアというカビが付きやすいため、こまめにふき取るようにする。 ★さらにポイント!⇒ はがせないカーペットの場合、カビが大量に発生してしまったら大変!一度はがして断熱材を床下に引いたり、湿気と結露防止の工事を行って本格的に改善しないとカビ退治は難しいのだ。 ●水回り 水まわりのカビ退治は、漂白剤で退治する。とくに風呂のタイルの目地や浴槽のカビには、スプレーを用いてカビの部分にかけ、たたくようにしてふき取る。 ●寝具 布団などの寝具にもカビの胞子がついて繁殖することがある。天日干しして表面をブラッシングすればかなりカビが減らせる。また、布団に掃除機をかければかなり内部の胞子が吸引されるが、掃除機から胞子が飛び散ることもあるので、作業をする場合には、窓を開け排気口を外に向けるようにしよう。
目次 アレルギー=免疫異常の病気 アレルギーは連鎖する アレルギー=免疫異常の病気 アレルギーは、病気の中でも「個性的」な病気だ。 その原因や発症が複雑で、ひとりひとり異なり、確実な原因やアレルゲンが特定できないこともめずらしくない。しかしそのなかでも多く見られる、現代日本の主な三大アレルギーは以下の通りだ。 花粉症 それまで何のアレルギーもなかった人が、突然発症することが激増している現代的なアレルギーのひとつ。花粉がアレルゲン*となる。 アトピー性皮膚炎 日本の生活環境の激変により、特に子どもたちの間で増えている。食物アレルギーと重なることが多いが、正確なアレルゲン*が特定しにくい。 気管支ぜんそく 「ぜんそく」は、かつては特定の工業地域や幹線道路ぞいに発症することが多かったが、日本全体の大気汚染と、アレルギー体質の人の増加によって、日本人に「一般化」してきている。 *アレルゲン:アレルギーを引き起こす原因となるもので、確認されているものだけで200近くある。花粉、ダニの死骸、ホルムアルデヒドなどの代表的なものだけでなく、寒さなどもアレルゲンとなる。 こうしたアレルギーに共通するのは「体を守るために備わった免疫機能が、あるアレルゲンに対して過剰にはたらいてしまう」ことで起こる病気ということだ。本来、免疫がはたらくのは「体に害のあるもの」がターゲットなのだが、アレルギー体質の人では「日常に一般的にある、毒性がない・強くないもの」もターゲット=アレルゲンとなってしまうのだ。 アレルギーは連鎖する アレルギーで心配なのは「体質だから仕方ない」とあきらめきってしまうと、新たな症状に進行することがあるということだ。 注:アレルギー体質の人が必ず進行するということではない。 1.「アレルギー性鼻炎」は多くのアレルギー体質の人が持つ症状だ。単なる鼻水・鼻づまりと考え、軽く扱われやすいが、あらゆるアレルギーの下地となりやすい。鼻水など「目に見える形」で出ていなくても、神経質になってイライラしたり、集中力がない、などの症状が出ている場合も、アレルギー性鼻炎の可能性がある。 2.「アトピー性皮膚炎」対策は、根気のいるものなので「どうせ体質で治らないんだから」といった態度になってしまいがち(無理もないことですね…。)神経質になるのも良くないが、そこから気管支ぜんそくに移行しやすいということも考え「悪くしない」よう注意したい。 3. 気管支ぜんそくが進行すると、吸引する薬なども必要となり、日常の活動も制限されやすくなる。こうなる前に、なんとか手を打とう!
日本人の3人に1人が発症しているというアレルギー。遺伝以外の原因で、アレルギー体質となる人が激増していると指摘されている。 目次 3人に1人は「アレルギー」!? 皮膚トラブルを起こす赤ちゃんの増加 日本人がアレルギー体質に変化した? 3人に1人は「アレルギー」!? 厚生労働省が行った「保健福祉動向調査」によると、なんらかのアレルギー症状を発症しているのは、なんと約3人に1人だった。東京都内では80%を超える家庭で、アレルギー症状のある人が家族にいると答えている。しかもさらに「まだ発症していないがアレルギー体質の人」もいるとすると現代では、日本人の過半数がアレルギー体質になっているとも考えられる。「自分はアレルギー体質だとは思っていなかった」ような人たちが次々と発症し、実際、激増している花粉症などは右肩上がりを続けている。 花粉症患者の増加グラフ 皮膚トラブルを起こす赤ちゃんの増加 アレルギーで心配なのは「体質だから仕方ない」とあきらめきってしまうと、新たな症状に進行することがあるということだ。 注:アレルギー体質の人が必ず進行するということではない。 「赤ちゃん」と言えば「おもちのようなツルツルの肌」というイメージがある。しかし、最近そうしたことにも異変が!?乳幼児全体の6~7割がザラザラした肌になってきているというのだ! 事実、グラフのように発疹が多くなっている。原因はアレルギーばかりではないが、こうした肌質はアトピーなどに陥りやすい。 日本人がアレルギー体質に変化した? かつては「アレルギー体質」は主に「遺伝」の側面から考えられていた。しかしあまりに急増で、それでは説明がつかない…。そこで特に戦後数十年の間に日本に起こった生活習慣や環境によって、体質そのものが変化し始めていると指摘されている。 具体的には、食生活、住宅、公害、ストレスなど。しかし今のところ、はっきり「コレが原因!」と言えるものは解っていない。
アレルギーで大切なのは「自分で勝手に判断しない」こと。専門のお医者さんと、大切な3つの側面から良くしていこう! 目次 見えないけれど…アトピーは皮膚のバリアが壊れやすい アレルギーにはトリプル・パンチ! 見えないけれど…アトピーは皮膚のバリアが壊れやすい アレルギーは最近、一般にひろく知られるようになり「私は○○アレルギーで…」なんて話もよく聞くようになった。しかし、それは本当に専門医に検査・診断してもらい、確認した結果だろうか?アレルギーで一番イケナイことは自分で勝手に「コレは○○アレルギーだ」と決めつけることだ。 こんなコトしてませんか? ケース1:卵や魚介などを食べて、具合が悪くなったので、それをアレルゲンと判断。自分で「それを食べなければいい」と決めた ⇒特に育ちざかりの子どもの場合、栄養の偏りが心配される。 まずはそれが本当に原因なのかの確認第一! ケース2:春になったら鼻水が出るようになった。「コレは花粉症だ」と思い、薬局で薬を買って春の間はずーっと使っている ⇒風邪や別のアレルギーかもしれないのに、売薬を買って対処しても仕方ない。 一般的にはあまり強くないとは言え、売薬での副作用もありうる。 アレルギーにはトリプル・パンチ! アレルギーには、主に図にある3つの側面から治療をする。 アレルギーは「体質」によるところも多いため、「完治」ということは多くの場合、難しい。主な目的は「症状を抑える・悪化させない」になる。しかし一方、アレルギーは症状さえおさまればいい病気でもある。 また「気長に取り組む」ことが肝心で、根気が必要にもなるが、一方で「自分自身で改善できる」ことも多いため、ほかの病気より薬、お医者さん頼みの治療から脱することも可能だ。 だから、特にアトピーの子どもを持つお母さん!あまり難しく考えたり、深刻にならないで。 アレルゲンの除去 まずはアレルゲン=「アレルギーを誘発するもの」から、体を遠ざけるのが、アレルギー治療の基本中の基本!ダニなどの場合、ゼロにすることは不可能だが、「この数なら体は大丈夫」というところまで減らせれば、大きな効果がある。 ダニはあらゆるアレルギーの敵! 生活習慣の改善 免疫も含め体の「強さ」を支えるのは、やっぱり生活習慣!同じアレルゲンでも、体調によって「アレルギー症状が出ない」「出ても軽くてすむ」ということが確認されている。体の「地盤がため」もしっかりやろう。 アレルギー対策「生活習慣」編 症状の緩和 アトピーで皮膚が炎症を起こしただれている、花粉症のあまり鼻水が止まらず生活もままならないなどの場合、まずは激しい症状を薬などでしずめる必要がある。また、そこまで悪くなる「きっかけ」を減らすために、日々の「お手入れ」も大切だ。 アレルギー対策「スキンケア」編 アレルギー・アトピーの薬ってどんなもの?
ダニは色々なアレルギーの「下地」になりやすいと言われている。まだアレルギーでない人も予防の意味で、まずは「布団」からダニ退治するコツを実践してみよう。 目次 ダニー君のホームステイ先はここ! できるコトから始めてみよう ~ダニ-君、布団から追放キャンぺ-ン~ ダニー君のホームステイ先はここ! ダニは、あらゆるアレルギーの「下地」になりやすいと言われている。つまり、あまりたくさんダニに囲まれ続けると、色々なアレルギーが発症しやすくなるのだ! 従って、まだアレルギーを発症していない人も、「予防」の意味でダニー君(ダニ)には注意したい。 ●好きな環境 気温20~30℃、湿度60%以上エアコンの普及などで、ますますダニ-君にとって「居心地の良い家」が増えている ●困ったところ その死骸やフンがアレルギーを誘発!つまり問題は「生きている」ダニ-君ではないのだ ●好きな食べ物 ホコリに含まれている髪の毛、フケ、あか(たんぱく質もの)ホコリのある所には、ダニー君がいると見て間違いない ダニ-君の「お気に入り」場所★ベスト5 第1位 食卓の椅子(ソファー) 第2位 ぬいぐるみ 第3位 じゅうたん・カーペット 第4位 布団・マットレス 第5位 押し入れ できるコトから始めてみよう~ダニ-君、布団から追放キャンぺ-ン~ 上のランキングを見ると、まず椅子・ソファーが気になるが、ここでは特に「布団」についてポイントを上げてみる。というのも、布団は一日の中で、一番長い時間接触しているところだからだ。また無意識に「ポリポリ」かいているのも、布団の中が一番多いはず。ベスト5すべてにとりかかる前に、まずは布団から! まずは掃除機! アトピーなどの場合、布団はたたくと逆に死骸・フンが浮き出てきて「逆効果」ということもある。掃除機の先に、布団用の「アトピーローラー」などをつけて、床と同じようにお掃除(できれば表・裏とも)!ただし、あまり神経質にならないで。2週間に1回でも効果が確認されている。 黒い袋カバーに入れて干す 「黒」は熱を吸収する色。これに入れて干した布団は温度が上がり、ダニー君がいなくなりやすい。黒のビニール袋で作ってもよし、最近では通販などでも気軽に買える。始めはちょっと面倒だが、できれば習慣づけてしまおう! 忙しいときには「包む」ではなく「上からかぶせる」でも、ちょっと効果がアップする。 ダニー君のとの関係は「水に流す」 特に「アレルゲン」として指摘されているのは、ダニー君の「フン」なのだが、これは水で流れてしまう。ならばシーツや枕カバー(なるべく平織りのもの)、寝巻きをこまめに洗うだけでも効果アップ! 「丸洗い」できる物を選ぼう! ダニー君退治には、布団を「買う」段階からもこだわりたい。できるだけ「丸洗い」できる物を購入し、洗濯機で洗ってしまった方が、掃除機をかけるよりラクかもしれない。特に「パイプ枕」などはオススメだ。注意するのは、防ダニ「加工」のもの。薬剤などが使用されている可能性があるので確認すること。
アレルギーも「体調」や「ストレス」に大きく左右される。これらを整えて、アレルギーを発症させないようにしよう! 目次 「体調」を常にキープするには…生活改善実践 ストレス解消はアレルギー解消にも! 「体調」を常にキープするには…生活改善実践 アレルギーの人には… アレルギーも「体調」で大きく左右される。基本の身体が生活習慣で良く保たれ、「体調」が良ければ、アレルゲンに接触しても症状が出ないことだってあるのだ。 アレルギーではない人には… 逆にアレルギーのなかった人が、体調の悪いときにアレルゲンと接触し、そこから発症してしまった!ということもある。アレルギー予防の意味でも、毎日の楽しい生活のためにも体調は常にキープ! ●睡眠は忙しい現代でないがしろにされがちだが、規則正しい深い眠りは、実は生活習慣の最も基本! ●疲労をためない。疲労は免疫力の低下や自律神経の変調をもたらす。こうしたことは案外、肉体疲労などより、体調を崩しやすい原因だ。 ●普段から、鼻で呼吸できる、軽い有酸素運動を!自律神経のはたらきを良くし、アレルギー反応をおさえやすくなる。ある調査によると、口呼吸から鼻呼吸へ変えただけでアレルギーが改善したというケースもある。 ●一定のリズムをもって、体にストレスを与えない、ためない生活をする。ストレスもアレルギーの発症や悪化に確実につながるので、上手にストレス解消。 ●辛い食べ物、アルコールなどの刺激物はほどほどに。たんぱく質などはとりすぎるとアレルギー体質になるとも言われている。 ●たばこはかなりの刺激物だ。アトピーの子どもの前で親がたばこをプカプカ…なんていうのは、あまりオススメできない。 ストレス解消はアレルギー解消にも! ストレスは実は、アレルギーの影の大物犯人。現代のストレス社会を乗り越えるためにも、その中でアレルギーを発症・悪化させないためにも、ストレス解消・リラックス方法は現代人の必須科目だ! 心のストレスには…「笑う生活」 複雑な人間・社会関係の現代では、心のストレスもたまりがち…。しかし心の状態は、アレルギーと深く関わる「免疫」にも影響する。事実、ストレス解消となる「笑い」は免疫力をアップし、自律神経を活性化すると確認された。逆に精神的にショックなことがあると、著しく免疫力がダウンすることも分かっている。 体のストレスには…リラックス方法と運動 体へのストレスもアレルギーと深く結びついている。「ためない」で上手く解消しよう! 体の疲れには、まずは「ほぐす」「しずめる」=リラックスが大切だ。しかし例えば「一日中デスクに座りっぱなし」などの場合は、逆に運動不足が、体へのストレスとなってしまっている。現代日本では、むしろ後者の方が深刻かもしれない。適度な運動は、自律神経を整え、筋肉の緊張をほぐし、その後「ゆったり」できるようになる。 ストレスについて知っておこう いろいろなストレス解消法
肌の「ガサガサ」から始ってしまうアトピーもある。そうなる前に、体もしっかりスキンケアしよう! 目次 「肌荒れ」から始ってしまうアレルギーもある 「肌荒れを起こさない」工夫をしよう! 「肌荒れ」から始ってしまうアレルギーもある アレルギーの人には アトピーなどでは肌が荒れると、これまでのかゆいのが更に悪化することがよくある。またせっかく症状が落ち着いていたのに、何かのきっかけで一度ひっかいてしまった後、ひどい状態に進行してしまった…なんてことも。 アレルギーではない人には アトピーでなくても、冬などに一度ひっかき始めてしまったら止まらなくなって、肌がかさぶたに…なんて経験がある人も多いのでは?「かく」と細かい傷が皮膚につき、そこからホコリや菌が侵入するためだ。 これらを防ぐためにも、「肌荒れを起こさない」工夫をしよう! ここでは主に「体」のスキンケアを扱うので、顔についてはこちらへ。 スキンケアの3つの基本STEPを押さえよう 注:ただし顔にアトピーが出ている人は避けてください。 「肌荒れを起こさない」工夫をしよう! 上手に傷つけずに洗う お風呂に入るとナイロンタワシやタオルで「ゴシゴシ」!あかもよく落ちる気がして気持ちいいようだが、しかし現代人の皮膚が弱ってきている原因のひとつに「洗いすぎ」が問題視されている。そもそも人間の角質は、不要な分は「石けん」の泡だけで十分に落とすことができる。ゴシゴシする必要はないのだ。強くこすれば、それだけ皮膚に傷がつきやすく、アレルギーを誘発しやすくなる 皮膚の水分を逃さない 肌荒れ防止には「保湿」とよくいうが、アトピーが出てない段階でクリームやワセリンをこまめに塗るのは結構、面倒だ。そこで入浴剤!「保湿効果」のあるものは、お風呂を上がってからつけるクリームより50倍も肌への浸透率が良いというデータもある。ただし、すでにひどいアトピーが発症している場合は避けること。また量をケチると効果は半減!きちんと表示通りに入れよう! 水滴をとる アナタが敏感なお肌なら、お風呂あがりに、景品のタオルでは頂けない。タオルの吸水量は多いが、表面のデコボコが意外に刺激となる。一番良いのは日本の知恵「手ぬぐい」。吸い取る量は少ないが、水分はサッと取れ、平織りなので刺激も少ない。しっかり絞って干せば翌日には乾くので、海外旅行などにもオススメの逸品。 「保湿」ケア 顔を洗ったり、オフィスで乾燥するときにはローションや乳液をつけるのに、体はほっぽらかし…では、やっぱりガサガサに。お風呂あがりや「乾燥するなぁ」と思ったら、ぜひ乳液を!ただしすでに「ただれ」「かさぶた」などがある所には、クリーム状のものは禁止。そのときは軟膏を使用すること。
アレルギーの薬にはステロイド剤、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤などがある。しかしそれを効果的に、安全に使うには、医師との信頼関係も大切となる。 目次 一番の「薬」はお医者さんとの「信頼関係」 「良いお医者さん」は自分で作ろう 一番の「薬」はお医者さんとの「信頼関係」 アレルギーは「ひとりひとりで違う」病気なので、薬の使い方も実は、とてもデリケートなものだ。「どんな強さのものを」「どのくらいの量」「回数」「どんな使い方」で使用するのか?が判明するのに時間がかかるものなのだ。色々試し、確認しながら進めていく。その間、まず何より大切なのは「お医者さんとの信頼関係」。 「効く」薬を使っても、信頼関係がなければ治らないと言っても良いくらいだ。アレルギーは、医師と患者が力を合わせなければ「最善」の道はなかなか見つからない。そもそも、しかりつけたり脅すようなことを言う、ろくに相手をしてくれないような医師なら、始めから通院は考えものだが、多くは「良いお医者さん」になってくれる。そのためのコツについてはこちら! ステロイド剤ってどんな薬? アレルギー薬の中でも有名なのがこの「ステロイド剤」。副腎皮質ホルモンを合成したもので、特に「炎症」には劇的に効き、2~3日で効果が出始める。しかし「効く」分、依存症や副作用が取りざたされ、同時に「怖い薬」というイメージがある。しかし怖いのはステロイド剤そのものではなく、「使い方」を誤ってしまうこと。そのためにも医師との信頼関係が重要なのだ。 ケース1:アトピーでステロイド軟膏をもらったが、副作用が怖いので「1日3回」と言われたが、1回しか塗らなかった。 →改善しないため長期間使うことになり、結局塗った量は増えてしまった。あるいは医師はもっと強いステロイド剤に変えることになった。 ケース2:ステロイド軟膏を続けていたが、いつになれば止められるのか不安になり、塗るのを止めたらリバウンドして、余計ひどくなった。 →段階的に弱いステロイド剤に変えている途中だったのに、結局もとの強いステロイド剤に戻ってしまった。 ステロイド剤は「ずーっと(しかも強いまま)使う」薬ではない。最初の「ひどい状態」をしずめる「スタートダッシュ」に使うのだ。したがって、短期間のうちにしずめる一番効果的な量・回数が考えられている。それを素人判断で変える前に、まずは「相談」してみよう! 抗ヒスタミン剤ってどんな薬? アレルギーの症状は、「アレルゲンが来た!」という信号となる化学伝達物質のヒスタミンなどが末梢神経に近づき、それが脳に伝わって、初めて出る。そこで、抗ヒスタミン薬でヒスタミンに先回りして末梢神経に密着し、ヒスタミンが近づけないようにガード。すると信号が脳へ伝わらないために発症しないのだ。これは速効性のある「かゆみ止め」に使われる。 抗アレルギー剤ってどんな薬? ヒスタミンそのものが作られたり、放出されるのをおさえる薬。現在、花粉症では、一般的に使われている。アトピーなどでは、かゆくて眠れないときなどに内服で使用する。 「良いお医者さん」は自分で作ろう アレルギー治療で一番良いのは通いやすい「近所の専門医」。しかしそこの医師が、何だかそっけなかったらどうしよう…?「良い医者がいない」とはよく聞くが、診察を受けている側にも「やる気のある態度」が見えなければ、医師もそっけなくなるのは当たり前。むしろ多くの医師は、積極的に質問すれば「この人は治そうという意志があるんだな!」と感じ、積極的に関わってくれるはず。「薬の説明もされなかった」とよく聞くが、その薬を渡されたときに、まず「どんな薬ですか?」と尋ねてみただろうか?医者を「良く」も「悪く」もしているのは、患者の態度にも理由があるのだ。 上手にお医者さんにかかるコツ 1. そのときの診療の目的や質問などはメモに書き出していく(ただし、あまり多くては時間も足りないので1回につき1つに絞って) 2. これまでの状態・経過・取り組んだことの記録などを提示する(カンタンなものでもOK!) 3. 自分で取り組んでみたいことなどは、事前に相談してから 4. 改善しても、勝手に薬と通院を止めないで状態を見せていく
アガリクス茸は本当に効くの?大人になればアトピーは治るの?など、アレルギーやアトピーのギモン、お答えします! 目次 アレルギー体質かどうかは、どうやって調べるの? アレルギーは遺伝するの? アレルギーだと、もう卵や牛乳はダメなの? かゆければ、やっぱり「アトピー」? 大人になるとアトピーは治るの? アガリクス茸などがアレルギーに良いってホント? アレルギー体質かどうかは、どうやって調べるの? 一般的には、病院などで、血液中のアレルギー抗体値(IgE抗体値)を計測して調べる。IgEとは、異物が体に入ってきたときに迎え撃つ武器のひとつで、血液中に多くある(抗体値が高い)ほど、アレルギー反応を起こしやすい=アレルギー体質と考えられる。ただし、アレルギー抗体値(IgE抗体値)が正常値でもひどい症状の場合もあり、逆に抗体値が1万を超えるような(正常では200)人でも無症状の場合もあり、すべてを抗体値だけでは測りきれない部分がある。 アレルギーは遺伝するの? 残念ながら、遺伝的な要素は大きく、両親ともアレルギー体質の場合、ほぼ100%その子どももアレルギー体質と言われている。しかし「体質」なだけで、病気そのものが遺伝するわけではない。子どもが必ず発症するとは限らないのだ。そのためにもダニなどのアレルゲンの除去や、生活習慣改善で「予防」しよう! アレルギーだと、もう卵や牛乳はダメなの? 食べて悪化するようなら止めるべきだが、血液検査(IgE抗体値)では、たまごにアレルギー反応が陽性に出ていても、食べて大丈夫な場合もある。アレルギーでの「食」の基本は、色々なものを少しずつバランス良くが理想的。やみくもに食品排除に走ると、少ない種類のものばかり食べるようになって、かえってそちらにアレルギーが出てしまうこともある。 かゆければ、やっぱり「アトピー」? 皮膚の場合、アトピーやアレルギーでなくても一時的に季節の変わり目などで、猛烈にかゆくなるということもある。特に赤ちゃんの場合、水分が多く「皮脂」が少ないので、意外に皮膚バリアが弱く、カンタンにかゆくなるもの。まずは決めつけず、皮膚バリアを補うスキンケアをしながら、冷静に状況を観察した上で、おさまらないようなら専門医で検診を。 大人になるとアトピーは治るの? 小さい子どものアトピーは、消化や免疫、皮膚などの機能が、まだしっかり安定していないことから起きているケースがほとんどなので、それらが発達してくる5~17歳までに治まるというケースはよくある。しかし根本的にアレルギー体質である場合、これを治すことはできない。したがって大人になれば仕事や家庭で忙しく、そうしたストレスからまた再発ということもある。幼児期にアトピーだった人は、遺伝子に「良い生活習慣で、ストレスをためない生活をしなさい」と言われている人なのだと肝に銘じよう! アガリクス茸などがアレルギーに良いってホント? 青魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)や、きのこのβ-Dグルカンなど、「健康食品」への関心は最近ますますヒートアップしている。普通の食品で、しかも特に日本の伝統食が「効く」というのは喜ばしいことだ。しかし、アレルギーは基本的に「○○(だけ)で治る!」というものではない。そうした効果をうたった食品や、治療方法には十分気をつけよう!
新築のマンションや一戸建てが危ない! 最近、建材や家具から発散するホルマリンなどによる空気汚染が原因といわれる「シックハウス症候群」が増えています。 主な症状としては、新築のマンションや一戸建てに入居した人が、目がちかちかしたり、気分が悪くなったりするというものです。 シックハウス症候群は、「化学物質過敏症」の1つです。 化学物質過敏症は、 1980年代後半になって欧米で指摘され始めた現代病で、微量の化学物質に反応して、目の痛み、頭痛、全身のけん怠感、不眠などの症状を起こします。 原因としては 人工的に作り出される化学物質の増加 ビル・住宅の気密性の向上 ストレスの増加 などが考えられていますが、まだ実態はよくわかっていません。 予防するには…? シックハウス対策として、国立公衆衛生院では「新築後、半年は換気をこまめにしたり、床材や家具をはがしてホルマリンの少ないものに代えるのも重要」としています。
運動誘発は薬剤で予防できる 運動した時に発生し、30~40分後に自然に治まる発作を「運動誘発性ぜんそく」といいます。非発作時の治療が適切でなく、ぜんそくの管理がきちんとされていない場合に起きやすい症状です。 この場合は、気管支の炎症を抑えて発作が起きないようにする非発作時の治療を適切に行うことに主力を向けます。適切な治療でぜんそくが緩解すると、運動で誘発されることもなくなってきます。 適切な治療をしていても運動するとぜんそくが起きる、あるいは普段は発作がなく運動した時だけぜいぜいいう場合には、運動前に薬剤を使用すると、たいていは予防できます。 特に普段全く発作がない子の場合は、気管支に炎症はないと考えられるので、発作を薬で厳重に予防する必要はありません。 また、トレーニングと十分なウォーミングアップをすることによっても、運動誘発性ぜんそくの予防に効果があります。 トレーニングで発作が次第に消失 普段適切な治療を行っている場合には、運動誘発性ぜんそくがあっても、運動やスポーツを避ける必要は全くありません。 トレーニングをすることにより、一定の運動を行うのに必要な換気量が減少し、より激しい運動をした時にだけぜんそくが起きるようになります。このようにして、ぜんそく症状が出現しないことを目標として運動、スポーツを行うことは、ぜんそくの治療訓練としても非常に効果があります。 自分の好きな運動、スポーツに積極的に参加することはむしろ望ましく、特に水泳はランニングなどに比べ運動誘発性ぜんそくが起こりにくいので、この目的には最適といえます。
人口の3~4%がぜん息 アレルギーは遺伝的な体質と、アレルギーが標的とする器官の過敏性により生じます。しかし、それだけでは説明できないことが増えてきました。例えば、ぜん息は、かつては人口の1%ほどだったのが現在では3~4%に増えています。 仮にアレルギーそのものは遺伝子によるものだとしても、アレルギー疾患の発病には環境の影響が大きいと考えられています。 新しい食品、食品添加物の増加、ダニなどが繁殖しやすい居住環境、ペット、大気汚染などがアレルギーの病気を増やす原因になっています。 肥満者に多いアレルギー疾患 食生活の影響がもっとも強いのではとの指摘もあります。まず、着色剤や防腐剤など人体にとって未知の物質が体内に取り込まれるようになったことが一つ。また、栄養状態がよくなり肥満が増えたことも原因の一つではないかと考えられています。 肥満者と正常体重のグループを比較すると、肥満グループにアレルギー疾患が多いという調査もあります。