疾患・特集

喘息を上手にコントロール

喘息は予期し得ぬ急激な発作で命を失ってしまうこともある。喘息発作の予防法をご紹介。

喘息は「命に関わることもある病気」

わが国の喘息死亡率の推移(総数) グラフ:わが国の喘息死亡率の推移(総数) 厚生労働省「人口動態統計」より

厚生労働省の人口動態統計によると、1950年ごろに喘息死亡率はピークを迎えていたが、戦後の医学の進歩により、喘息死は激減した。ところが、1976年ごろから横ばい状態となり、そのまま推移していて、1995年に喘息で亡くなった人は、約7,000人いるとの報告がある。

なぜ、喘息死が起こったのかを調べてみると、「適切な受診の遅れ」「予期し得ぬ急激な悪化」「患者や家族の判断の誤り」などが原因に挙げられている。つまり、喘息は日ごろから病気についての正しい知識を持ち、適切な処置をすれば、重篤な状態にはなりにくい病気であるということだ。

喘息の発作が起こり、急激に大発作に悪化した場合、救急車を呼ぼうと思っても、体を動かすのが困難で電話までたどり着けなかったり、誰かを呼ぼうと思っても声が出せず、そのまま窒息死してしまうケースが典型的な喘息死である。

喘息は死につながる病気だと心得ておこう。

喘息は治らない病気なの?

喘息が治る病気なのかどうかという認識は、医者によってかなり違っている。ただ、喘息は高血圧や糖尿病のように慢性疾患のひとつであり、完治するというよりは上手にコントロールして発作が起きないようにする、発作が起きたときに適切な対処をする病気であるという考え方をされることが多いようだ。

入院が必要なほど喘息発作の症状が重い患者の場合には、簡単な薬を使用することで日常生活に支障なく暮らせるようになれば大きな進歩になる。いかに喘息をコントロールするかは、主治医とよく相談しよう。

喘息をコントロールする主な方法

発作が起こりそうなとき、あるいはいつも気管支を健康な状態にしておくために予防する方法もある。実際に症状が出たときに使用される薬などのうち安全なものは、症状が出ないときでも正しく使う方法が取られている。

薬を有効活用しよう

ステロイド剤 副腎皮質ホルモンを化学的に合成してつくった薬。吸入、経口、注射などがある。ステロイドが効かない喘息はない、といわれるほど喘息には効果のある薬だが、経口ステロイド剤は、副作用として高齢者やとくに女性の場合は、骨粗しょう症が起こる確率が高くなることもある。また、副腎という内臓を傷める危険性もあるため、使用は必要最低限に抑えるようにすること。使用上の注意を守れば副作用の心配は少なく、吸入ステロイド剤などは効果的なコントローラーになる。
抗アレルギー薬 Ⅰ型アレルギー反応に関わる化学伝達物質の遊離を抑えたり、作用を弱めたりする薬。古くからあるのはインタールだが、最近はトロンボキサン拮抗薬やロイコトリエン拮抗薬、サイトカイン阻害薬などがある。
気管支拡張薬 気管支平滑筋に作用して気管支を拡張させ、気流を確保する薬。作用の違いにより、キサンチン誘導体(=テオフィリンなど)や交換神経刺激薬(=β2刺激薬)、副交感神経遮断薬(=抗コリン剤)などがある。

環境をきれいにしよう

そもそもアレルギーを起こすアレルゲンを身の回りから取り除くのが最も有効な予防法だ。すべてのアレルゲンを取り除く環境にすることは難しいかもしれないが、努力することで減らすことはできる。

ダニ
ダニ
ダニが好むじゅうたんを取り除いてフローリングにする、もしくは毛の短いじゅうたんにする。
布団についたダニは、布団を丸洗いするか、よく天日に干す。ただし、干した後、布団をたたくとダニの死骸が布団の中に入りこんでしまうので、干した後は布団に掃除機をかけてダニの死骸を吸い取るとさらによい。
また、こまめに掃除し、たんすや電化製品の後ろも掃除するようにすること。
ちなみに、気管支喘息の発作が秋に多いのは、梅雨から夏にかけて繁殖したダニが気温・湿度が低下する秋ごろに死んで、その死骸がアレルゲンになるからだとも言われている。
カビ
カビ
カビが最も好むのは湿度。とくに、風呂場や台所、風通しの悪い和室の畳などは適度な湿気があるため、栄養がなくても繁殖する。日ごろから風通しをよくし、水回りもよく乾燥させるようにしよう。
ペット
ペット
ペットを飼う人口は増えているものの、ペットの毛などがアレルゲンになっていることもある。その場合は残念だが、ペットを飼うことをやめよう。

できれば禁煙をしよう

喫煙が直接喘息の原因になるという証拠はほとんどないが、喫煙は気道炎症を起こしたり、血中総IgE値を上げたりするという報告がある。また、喫煙者は非喫煙者より気道が過敏になっているとの調査結果もある。できれば禁煙したい。