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乳がん再発の不安を和らげるスマホアプリを開発 名古屋市立大学・SMILEプロジェクト

乳がんは国内の女性で患者数が最も多く、国立がん研究センターの2018年のがん統計予測によると、2018年の罹患数予測は8万6500人、死亡数予測は1万4800人とされています。がんを経験した人にとって怖いのは再発です。そこで、再発の不安を和らげるために、スマートフォンのアプリを使ってサポートする取り組みが実用化できるかどうか検証されています。名古屋市立大学の明智龍男先生らのSMILEプロジェクトを紹介します。

子育てや親の介護、仕事などを抱える「はざま世代」のがん患者さんにサポートが必要

国立がん研究センターがん情報サービスによると、がん経験者さんの10年生存率は56.3%で、多くの患者さんは将来、より良い生活ができることを願っています。
しかし、再発への不安があるとQOLが低下して日常生活に大きく影響します。
女性で患者数が最も多い乳がんは、40~50歳代で発症率が高いといわれています。この世代は、子育てや親の介護、仕事などを抱える「はざま世代」と呼ばれます。
がん再発など病気のことに加えて、家族のことや仕事のことなど、さまざまな不安に悩まされています。少しでも不安がないようにサポートしなくてはいけないところです。

時間が空いたときに携帯しているiPhoneのアプリで心理療法をサポート

再発の不安に対するサポートとして、心理療法でセラピストによる面談などがあります。しかし問題は、1人のがん経験者さんへの面談回数は数多くになること、さらに乳がんの経験者数は膨大なので、サポートするのに限界があることです。
そこで明智先生らは、数多くの乳がん経験者さんの再発不安を軽減するために、スマートフォン(スマホ)のiPhoneのアプリを使って心理療法(精神療法ともいいます)でサポートすることを考案しました。

iPhoneの解決アプリ、元気アプリで再発不安を軽減できるかどうかを臨床試験で検証

明智先生らが考案したアプリは、2つの心理療法から構成されています。問題解決療法のための「解決アプリ」、行動活性化療法のための「元気アプリ」です。

  • 解決アプリ:問題解決療法を学ぶアプリです。生活で困っていることに対して本人の価値観に従って整理し、解決する手助けをするものです。
  • 元気アプリ:行動活性化療法を学ぶアプリです。病気がきっかけになって、活動しなくなったことや、新しく行動しようと思うことにチャレンジするよう促すためのものです。

時間が空いたときに、身近に携帯しているiPhoneを使って心理療法を学びながら、日常生活の困りごとを解決して活動の幅を広げていくことにより、再発への不安を和らげる効果が期待されています。
アプリの実用化に向けて、効果を科学的に検証することが必要です。そこで、乳がん手術後から再発がなく1年以上が経過した20歳から49歳の女性を対象に、臨床試験*1でアプリ活用の効果を検証しています*
臨床試験は、参加者を「すぐにスマホアプリを開始するグループ」もしくは「2ヵ月後からスマホアプリを開始するグループ」に分け、参加した前後のアプリの効果として再発不安を軽減できたのかどうかをグループ間で比較します。
なお、臨床試験の実施期間は、2020年3月31日までです。

明智先生は、臨床試験で有効性が確認されて、がん経験者さんの不安を和らげるサポートとしてアプリを実用化できれば、今後は乳がん以外のがんでアプリを開発していくこと、保険診療で活用できるようにしていきたいと話しています。

■参考

  • *1:新しい治療法が誕生するには、健康な人や患者さんを対象にした臨床試験で効果や安全性などが検証されます。たとえば、保険診療で処方される「新薬」が誕生するには、臨床試験の1つとして治験が行われ、治験の結果から効果や安全性などが厚生労働省で審査されて承認されることが必要です。

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公開日:2019/11/13
監修:名古屋市立大学大学院精神・認知・行動医学教授 明智龍男先生