乳がんは国内の女性で患者数が最も多く、国立がん研究センターの2018年のがん統計予測によると、2018年の罹患数予測は8万6500人、死亡数予測は1万4800人とされています。がんを経験した人にとって怖いのは再発です。そこで、再発の不安を和らげるために、スマートフォンのアプリを使ってサポートする取り組みが実用化できるかどうか検証されています。名古屋市立大学の明智龍男先生らのSMILEプロジェクトを紹介します。 目次 子育てや親の介護、仕事などを抱える「はざま世代」のがん患者さんにサポートが必要 時間が空いたときに携帯しているiPhoneのアプリで心理療法をサポート iPhoneの解決アプリ、元気アプリで再発不安を軽減できるかどうかを臨床試験で検証 子育てや親の介護、仕事などを抱える「はざま世代」のがん患者さんにサポートが必要 国立がん研究センターがん情報サービスによると、がん経験者さんの10年生存率は56.3%で、多くの患者さんは将来、より良い生活ができることを願っています。 しかし、再発への不安があるとQOLが低下して日常生活に大きく影響します。 女性で患者数が最も多い乳がんは、40~50歳代で発症率が高いといわれています。この世代は、子育てや親の介護、仕事などを抱える「はざま世代」と呼ばれます。 がん再発など病気のことに加えて、家族のことや仕事のことなど、さまざまな不安に悩まされています。少しでも不安がないようにサポートしなくてはいけないところです。 時間が空いたときに携帯しているiPhoneのアプリで心理療法をサポート 再発の不安に対するサポートとして、心理療法でセラピストによる面談などがあります。しかし問題は、1人のがん経験者さんへの面談回数は数多くになること、さらに乳がんの経験者数は膨大なので、サポートするのに限界があることです。 そこで明智先生らは、数多くの乳がん経験者さんの再発不安を軽減するために、スマートフォン(スマホ)のiPhoneのアプリを使って心理療法(精神療法ともいいます)でサポートすることを考案しました。 iPhoneの解決アプリ、元気アプリで再発不安を軽減できるかどうかを臨床試験で検証 明智先生らが考案したアプリは、2つの心理療法から構成されています。問題解決療法のための「解決アプリ」、行動活性化療法のための「元気アプリ」です。 ●解決アプリ:問題解決療法を学ぶアプリです。生活で困っていることに対して本人の価値観に従って整理し、解決する手助けをするものです。 ●元気アプリ:行動活性化療法を学ぶアプリです。病気がきっかけになって、活動しなくなったことや、新しく行動しようと思うことにチャレンジするよう促すためのものです。 時間が空いたときに、身近に携帯しているiPhoneを使って心理療法を学びながら、日常生活の困りごとを解決して活動の幅を広げていくことにより、再発への不安を和らげる効果が期待されています。 アプリの実用化に向けて、効果を科学的に検証することが必要です。そこで、乳がん手術後から再発がなく1年以上が経過した20歳から49歳の女性を対象に、臨床試験*1でアプリ活用の効果を検証しています*。 臨床試験は、参加者を「すぐにスマホアプリを開始するグループ」もしくは「2ヵ月後からスマホアプリを開始するグループ」に分け、参加した前後のアプリの効果として再発不安を軽減できたのかどうかをグループ間で比較します。 なお、臨床試験の実施期間は、2020年3月31日までです。 明智先生は、臨床試験で有効性が確認されて、がん経験者さんの不安を和らげるサポートとしてアプリを実用化できれば、今後は乳がん以外のがんでアプリを開発していくこと、保険診療で活用できるようにしていきたいと話しています。 ■参考 SMILEプロジェクト *1:新しい治療法が誕生するには、健康な人や患者さんを対象にした臨床試験で効果や安全性などが検証されます。たとえば、保険診療で処方される「新薬」が誕生するには、臨床試験の1つとして治験が行われ、治験の結果から効果や安全性などが厚生労働省で審査されて承認されることが必要です。 ■関連記事 がん「リンパ浮腫(むくみ)」の対策にリンパケアエクササイズ マンモ+超音波で乳がんを早く発見!生稲晃子さん・乳がん手術5回を乗り越えて 傷病手当金の制度上の社会的治癒、再発、転移とは サバイバー伝授!がんとお金(4) 「ママのバレッタ」、親子でがんを話し合おう 絵本と写真、音楽が奏でるストーリー(2) 乳がん副作用のセルフケア 男性乳がんの会「メンズBC」(2) YouTubeで準リアルタイム配信、がん発覚から入院や退院後の生活まで 乳がん がん 婦人科がん(子宮・卵巣のがん)の発症リスクと治療後のむくみ対策 キャンサーフィットネス・リンパ浮腫患者スクール 乳がん治療後のむくみ対策は肥満解消と運動 キャンサーフィットネス・リンパ浮腫患者スクール 公開日:2019/11/13更新日:2020/09/25 監修:名古屋市立大学大学院精神・認知・行動医学教授 明智龍男先生
「まさか男が乳がん*1になるはずがないと思っていた」と述懐する患者さんがいました。乳がんは女性だけの病気ではありません。男性乳がんの会「メンズBC(Breast cancerの略)」では、ふだん相談できない治療の副作用に関する情報とセルフケアに関して、男性だけでなく女性の患者さんも役に立つ情報が共有されました。 目次 副作用はさまざまで強さも人それぞれ 手足のしびれは「冷やす」ことも対策 爪が割れやすい、はがれやすいかたにはマニキュアがおすすめ 蜂窩織炎(ほうかしきえん)を知っていますか? 副作用はさまざまで強さも人それぞれ 男性の乳がんは実態が明らかになっていないことが課題です。そこで、男性乳がんの会「メンズBC(Breast cancerの略)」が2018年に発足し、会合が催されています。 2018年11月17日に開かれた会合では、女性の乳がん経験者さんや、アドバイザリーとして沢田先生も参加して、副作用への対策など、さまざまな情報が寄せられました。 治療の副作用に関しては、おもに以下の情報が寄せられました。 のぼせやほてり(更年期に見られるホットフラッシュ) 手足のしびれにより歩きにくい、手で紙を取りにくい 蜂窩織炎(ほうかしきえん) 皮膚がかさかさしてかゆい 爪がはがれてくる、割れやすくなる 五十肩みたいな症状が出る 手足のしびれは「冷やす」ことも対策 手足のしびれにより歩きにくい、紙を取りにくいことに関しては、沢田先生によると、何種類かの抗がん剤による副作用の可能性があり、男性では症状が出やすい可能性があるとの話でした。 手足のしびれ対策に関しては、患者さんから生活上の工夫として風呂やカイロで温めることや揉むことで楽になったとの体験談がありました。 また、点滴による抗がん剤投与中に手足を冷やすことも有効な方法として挙げられました。会合に参加していた女性の乳がん経験者さんが、実際に抗がん剤治療を受けるときに手足のクーリング(冷やすこと)を実践していたイラストは下記です。 提供:女性乳がん経験者さん 女性乳がん経験者さんによると、抗がん剤を服用した後に、かゆみがひどくて手先が痺れはじめたそうです。 絵を描く仕事をしているため、絵が描けなくなるのは困ると思い、しびれだけでなくかゆみの予防を調べた結果、手足のクーリングに関する研究発表*2を見つけました。 病院で治療を受ける時にクーリングができるかどうか、先生に相談してみることも一案です。 爪が割れやすい、はがれやすいかたにはマニキュアがおすすめ 更年期に見られるようなホットフラッシュについての話もでました。沢田先生によると、抗がん剤やホルモン治療による副作用の可能性があるとのことです。 また、皮膚がカサカサしてかゆい、爪がはがれたり割れやすくなることに関しては、ホルモン治療や抗がん剤治療の副作用が考えられるとのことでした。 爪の対策としては、マニキュアを塗ることなどが考えられます。 蜂窩織炎(ほうかしきえん)を知っていますか? 患者さんから蜂窩織炎(ほうかしきえん)を発症したとの話がありました。 沢田先生によると、乳がんは全身に広がりやすく、乳がんがリンパ節に転移し、リンパ節切除術を受けた人に、リンパ浮腫というむくみ症状が出ることがあるそうです。 むくみの症状に伴って細菌感染により皮膚の急性炎症が起こるのが蜂窩織炎です。特徴としては、リンパ節の切除手術を受けた側の腕に赤い斑点や広範囲に皮膚の赤み、熱感がみられ、痛みを伴います。時には38℃以上の高熱があるので注意すべきとのことでした。 最後になりますが、注意しなければいけないのは、生活やセルフケアに関しては患者さんが勝手な自己判断で行わないことです。医師に相談することがすすめられます。 次回の「メンズBC」の会合予定:2019年2月16日 https://www.cancernet.jp/190216 *1:乳がんは正式には「乳癌」です。漢字で「癌」と示すのは、身体の表面をおおう上皮組織にできる悪性腫瘍です。ひらがなの「がん」は悪性腫瘍すべてを示すときに用いられます。本記事では「乳がん」に統一しています。 *2:J Natl Cancer Inst. 2018;110(2):141-148 Effects of Cryotherapy on Objective and Subjective Symptoms of Paclitaxel-Induced Neuropathy: Prospective Self-Controlled Trial https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=Effects+of+Cryotherapy+on+Objective+and+Subjective+Symptoms+of+Paclitaxel-Induced+Neuropathy%3A+Prospective+Self-Controlled+Trial ■関連記事 男が乳がんになるとは思わなかった!男性乳がんの会「メンズBC」(1) 女性だけでなく、男性もなる?男性乳がんについて 公開日:2019/01/30更新日:2020/09/25 監修:昭和大学乳腺外科准教授 沢田晃暢先生先生
乳がん*1は、女性だけでなく男性にも存在する病気です。男性の乳がん患者数は全体の0.5%程度ですが、過去10年間の男女比が同等で、女性の乳がん患者数が増加傾向ですので、男性乳がんも増えていると予測されます。しかし、男性乳がんの情報は乏しく、患者さんが困っているのが現状です。そこで、男性乳がんの会「メンズBC(Breast cancerの略)」が発足しました。 目次 男性乳がんの実態が明らかにされていない 男性の乳がんも増加傾向の可能性があり40歳代で発症するケースも 乳がんは男性と女性で違いがある? 男性乳がんの実態が明らかにされていない 男性乳がんは、古代エジプトの外傷手術に関する書物「The Edwin Smith Surgical Papyrus」の中に紀元前3000年には知られていたと記載があります。しかし、国内外ともに研究が進んでいないようです。 日本人医師が男性乳がんに対して診療の参考にする情報は、ほとんどが海外の研究データが基本となっています。 女性の乳がん検診で使用されるマンモグラフィに関しても、女性では診断を補助する定量化ソフトが開発されるほど汎用化されていますが、データが少ない男性には応用することができません。 さらに研究分野においても、女性乳がんを中心に行われ、患者数が少ない男性乳がんでは研究が進んでいません。 たとえば、乳がんの診断に今後応用が期待される、血液検査で悪性の腫瘍を判別する方法や、呼気の臭いでがんの発症を判別する方法などが開発中ですが、対象は女性となっています。 このように、男性乳がんの歴史は古くから知られてはいるものの、詳細な乳がんの実態は明らかにされていないのが現状です。 そこで、「メンズBC」がNPO法人キャンサーネットジャパンの支援で2018年に発足しました。男性乳がんの患者さんのサポートを目的として、今までに会合を4回開催しています。11月17日の会合では、昭和大学乳腺外科准教授の沢田晃暢先生が参加し、男性乳がんを取り巻く環境などを紹介しました。 男性の乳がんも増加傾向の可能性があり40歳代で発症するケースも 沢田先生によると、海外の報告では乳がんの診断年齢は女性でおよそ50歳、男性ではおよそ70歳代で、5年生存率の男女差はないようです*2。昭和大学の患者さんでも、平均の乳がん罹患率は女性53.7歳に対し男性は73.7歳でした。 男性乳がんは女性乳がんよりも高齢の傾向ですが、40歳前半で発症した人もいるので、中高年の病気ともいえます。 日本乳癌学会の年次登録では、2015年に新たに乳がんと診断された患者数は約8万7000人、そのうち男性は560人(0.6%)でした。過去10年間は、男性は毎年0.5%前後と一定ですが、乳がん患者数は右肩上がりの上昇傾向ですので、男性も増加傾向の可能性がありそうです(表)。 表:乳がんと診断された患者数(日本乳癌学会の年次登録) 提供:昭和大学乳腺外科准教授・沢田先生 また、男性乳がん発症の危険因子として、男性ホルモン(アンドロゲン)欠乏による停留睾丸、睾丸委縮、睾丸炎、不妊症、女性ホルモン(エストロゲン)の過剰、高コレステロールや急激な体重増加、肥満(BMI25以上)、女性化乳房などが指摘されています。 乳がんは男性と女性で違いがある? 乳がん患者さんは男性と女性に違いがあるのでしょうか。沢田先生が海外のデータを要約して報告しました。 米国の大規模な患者データベースNCDBとSEER*3を用いて乳がんの男女の違いを検証した研究結果(2018年米国臨床腫瘍学会)によると、一般的に女性では「乳房切除術(全摘)」と「乳房部分切除術(温存)」の生存率は同じですが、NCDBのデータベースから検証した結果、男性では「乳房部分切除」+放射線療法による温存療法のほうが、乳房全摘手術に比べて生存率が高いとのことでした。 また、ホルモン感受性が陽性の男性乳がん患者さんにはホルモン治療として抗エストロゲン薬を服用するケースが一般的ですが、女性よりも副作用が強く現れる傾向にあることが、以前から指摘されています。 今回、米国のSEERというデータベースからは、抗エストロゲン薬の服薬を、副作用のために120日以上内服できなかった患者さんを調査したところ、半数の患者さんで5年間継続できなかったと指摘がありました。 これらの情報がすべて正しく日本人に当てはまるかどうかについては、さらなる検討が必要ではあるものの、海外では男性乳がんの実態を明らかにするために定期的に報告が行われています。しかし、国内での研究は進んでいないのが現状です。次回は、患者さんから寄せられた症状や副作用に関する情報に関して紹介します。 次回の「メンズBC」の会合予定:2019年2月16日 https://www.cancernet.jp/190216 *1:乳がんは正式には「乳癌」です。漢字で「癌」と示すのは、身体の表面をおおう上皮組織にできる悪性腫瘍です。ひらがなの「がん」は悪性腫瘍すべてを示すときに用いられます。本記事では「乳がん」に統一しています。 *2:J Clin Oncol. 2010;28(12):2114-22 *3:SEER:Surveillance Epidemiology and end resultsの略。米国では、地域がん登録に基づくがん診療の評価は、国立がん研究所(NCI)が中心となって1973年からのデータベースを構築しています。 NCDB:National cancer Databaseの略。全国がん登録と全がん協病院共同調査を兼ね備えた質の高いデータベースを1987年から構築しています。米国外科学会のがん部門と米国対がん協会の共同プロジェクトです。 ■関連記事 乳がん副作用のセルフケア 男性乳がんの会「メンズBC」(2) 女性だけでなく、男性もなる?男性乳がんについて 公開日:2019/01/25更新日:2020/09/25 監修:昭和大学乳腺外科准教授 沢田晃暢先生先生
女優の生稲晃子さんは、2011年に乳がんが発覚して再発を繰りかえし、5度の手術を受けました。現在は病気との闘いを公表し、その経験をもとに乳がん早期発見の重要性を訴えています。2018年10月20日の第56回日本癌治療学会の市民公開講座「癌診療の最新情報-変わり始めた癌治療-」の講演内容を紹介します。 目次 人間ドックを受けてマンモグラフィで見つからなかった「しこり」を超音波検査で発見 「生きる」という目標を持つことで不安やつらいことを乗り越える マンモグラフィと超音波検査は2つとも受けるべき! 病気に悩んでいる人、闘っている人に役立ちたいのでカミングアウト 人間ドックを受けてマンモグラフィで見つからなかった「しこり」を超音波検査で発見 生稲晃子さんは、1980年代後半にブレイクした「おニャン子クラブ」の元メンバーで、現在は女優やテレビコメンテータなど幅広く活躍しています。 生稲さんの講演によると、乳がんがはじめて発覚したのは2011年でした。生稲さんは当時、自治体の無料検診を毎年受けていましたが、2010年は検診手続きが遅れてしまい、友人の医師から人間ドックを受けることを勧められて2011年1月に検査を受けました。 人間ドックの検査結果では、マンモグラフィでは異常は見つからなかったのですが、超音波検査でしこりが見つかりました。再検査の結果、悪性の乳がんが発覚しました。 「生きる」という目標を持つことで不安やつらいことを乗り越える 2011年5月頃に最初の手術を受けましたが、その後に再発を繰り返し、2013年末までに合計5回の手術を受けました。放射線治療やホルモン治療も経験しました。 再発・手術により不安でつらい思いをしたうえ、ホルモン治療の副作用などに悩まされてくじけそうになりましたが、生稲さんを支えたのは「生きる」という目標でした。 目標を持てるようになったのは、乳がん発見のきっかけを作ってくれた友人の医師でした。1回目の手術後に友人の医師に会ったところ、「目標ができてよかった」と言われました。「目標?」と聞くと、「生きるという目標だよ」と言ってくれたのです。 生稲さんは、「長く続く人生かもしれない。短い人生かもしれない。だからこそ、1日1日を大切に生きていこう」と目標を持って、闘病しながら家事をすべて自分でこなし、仕事も続けました。 2016年には、病気と闘いながら家事と仕事と両立させていることが評価され、政府の「働き方改革実現会議」の有識者に選ばれるなど、活動の場を広げています。 生稲さんによると、家事や仕事をこなし続けたことで生きている実感を持てるようになり、つらいことや不安から救われた経験があったことから、目標を持つことが重要といいます。 マンモグラフィと超音波検査は2つとも受けるべき! 生稲さんは講演のなかで、より早く乳がんを発見することの重要性を訴えています。前述の友人の医師から次のような話もあったとのことです。 「無料検診や人間ドックを受けずに検査を先に延ばしていたら、あるいはしこりを発見していても放置していたら、最悪の場合、死んでいたのかもしれない」 乳がんの画像検査は、しこりの位置や乳腺の状態によっては、1つの検査ではがんが明確にわかるケース、わからないケースがあります。 早く発見して治療を受けることが重要なので、生稲さんは、乳がん早期発見のためにはマンモグラフィだけでなく、検査費用を負担することもありますが超音波検査も受けることをお勧めしています。 病気に悩んでいる人、闘っている人に役立ちたいのでカミングアウト 生稲さんが闘病経験を公表したのは2015年11月です。 というのは、がんとの5年近くにわたる闘いは孤独でした。がん友といえる知り合いがいなかったので、その時期にありがたかったのはがん患者さんや経験者さんのブログでした。 ブログに励まされたことを振りかえり、自身の経験を公表することで乳がんを早く発見する重要性を理解してもらい、病気と闘う患者さんに役に立てればと思ったからです。 闘病経験の詳細としては、書籍「右胸にありがとう そして さようなら 5度の手術と乳房再建1800日」(光文社)があります。本人のブログもあります。ぜひ、ご参照ください。 生稲晃子さんの書籍「右胸にありがとう そして さようなら 5度の手術と乳房再建1800日」 発行:光文社 定価:1,300円+税 ■関連記事 女子会から読み解く!乳がんと食事との関係 20~22歳の子宮頸がんワクチン有効率を検討 新潟大学・HPV感染調査 がん治療後の後遺症のむくみでお悩みの方のためにリンパ浮腫患者スクールを開講 キャンサーフィットネス 乳がん再発の不安を和らげるスマホアプリを開発 名古屋市立大学・SMILEプロジェクト がん告知で「びっくり退職」はちょっと待った!サバイバー伝授!がんとお金(2) 婦人科がん(子宮・卵巣のがん)の発症リスクと治療後のむくみ対策 キャンサーフィットネス・リンパ浮腫患者スクール 乳がん治療後のむくみ対策は肥満解消と運動 キャンサーフィットネス・リンパ浮腫患者スクール 公開日:2019/01/17更新日:2020/09/25
がん患者会や支援団体の主催で9月16日~11月に予定しているイベントやセミナーを紹介します。血液がんのセミナーや女性がん検診の啓発イベント、がん経験者による音楽ライブや写真展、リレー(走る)イベントなど、さまざまな催しがあります(2018年8月11~12日開催のジャパンキャンサーフォーラムをもとに本記事を作成しました)。 目次 2018年9月16日:「今、ドナーに希望を求めて~あなたの勇気が命を救う~」(神奈川) 2018年9月30日:ピンクリボンフェスティバル2018「なかまcafé♪」 2018年10月20日:がん経験者の音楽ライブ「第6回ドヤフェス」(東京) 2018年10月21日:第11回ピンクリボン大阪2017女性がんの検診啓発~ピンクリボンまつりin大阪~ 2018年10月27日:がんフォト*がんストーリー(東京都) 血液がんのセミナー:2018年10月20日(東京)、10月27日(神戸)、11月17日(名古屋) 2018年11月18日:東京血液がんフォーラム リレー・フォー・ライフ 2018年9月16日:「今、ドナーに希望を求めて~あなたの勇気が命を救う~」(神奈川) 白血病など正常な血液をつくることができない病気は、造血幹細胞移植(骨髄移植・末梢血幹細胞移植・さい帯血移植)によって多くの命が救われています。 そこで、骨髄や末梢血幹細胞を提供するボランティアドナーの重要性を知ってもらうために、神奈川県骨髄移植を考える会の主催でセミナー今、ドナーに希望を求めて~あなたの勇気が命を救う~」は、2018年9月16日に神奈川県で開催されます。 セミナーでは、骨髄移植の最新情報から今後の課題についての医療講演と、骨髄移植を経験した人と骨髄提供を経験した人が語り合うシンポジウムが予定されています。シンポジウムでは、俳優でみずからドナー経験がある木下ほうか氏も登壇する予定です。 詳細はこちら:神奈川骨髄移植を考える会 2018年9月30日:ピンクリボンフェスティバル2018「なかまcafé♪」 乳がんで治療中のかたや、経験者のかた、サポートしている家族や友達のかたなど、ピンクリボンで結ばれた「なかま」が集う憩い場所として、ピンクリボンフェスティバル2018「なかまcafé♪」が2018年9月30日に開催されます。役に立つブースが多く出展され、ミニセミナーも予定されています。 詳細はこちら:ピンクリボンフェスティバル2018 2018年10月20日:がん経験者の音楽ライブ「第6回ドヤフェス」(東京) がん患者さんと、これからがんになる(かもしれない)人に向けて、がんになっても夢を持ってあきらめずに元気に楽しく生きていることを伝えるための音楽ライブのイベント「第6回ドヤフェス」が2018年10月20日に東京都八王子市のMatchVoxで開催されます。 詳細はこちら:ドヤフェス 2018年10月21日:第11回ピンクリボン大阪2018女性がんの検診啓発~ピンクリボンまつりin大阪~ 乳がんや子宮頸がんなど、女性に特有のがんの検診を啓発するために、「第11回ピンクリボン大阪2018女性がんの検診啓発~ピンクリボンまつりin大阪~」(主催:ピンクリボン大阪)が、2018年10月21日に大阪府泉佐野市のりんくうタウン駅周辺で開催されます。 お問い合わせ:特定非営利法人 ピンクリボン大阪 2018年10月27日:がんフォト*がんストーリー(東京都) 「がんになっても人生は楽しめる!」をモットーに、がんと向き合う中で見つけた‘心温まる瞬間’、そこに生きるひとの想いを表した写真と、そのときに感じたストーリーをWebサイトで公開している「がんフォト*がんストーリー」が開催するイベントが、2018年10月27日に東京都台東区の上野桜木坂あたりで開催されます。 当日のイベント中に、国立がん研究センター希少がんセンターに飾るタペストリーを制作する予定です。 詳細はこちら:がんフォト*がんストーリー 血液がんのセミナー:2018年10月20日(東京)、10月27日(神戸)、11月17日(名古屋) 血液がんの白血病、悪性リンパ腫、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、がん以外の再生不良性貧血や特発性血小板減少性紫斑病などの病気や治療に関するセミナー(主催は血液情報広場・つばさ)が開催されます。 急性骨髄性白血病や慢性リンパ性白血病の最新治療に関する講演や、がん経験者による講演などが企画されているセミナーは、2018年10月20日に東京都中央区のフクラシア八重洲で開催されます。 また、白血病や骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、リンパ腫といったさまざまな血液がんに関する公園やQ&Aなどが企画されているセミナーは兵庫県神戸市と愛知県名古屋市(2018年10月27日に兵庫医療大学講義室、11月17日に名古屋第一赤十字病院内ヶ島講堂)で、それぞれ開催されます。 詳細はこちら:特定非営利法人 血液情報広場・つばさ 2018年11月18日:東京血液がんフォーラム リンパ腫などの血液のがんに対する治療は進歩しています。患者さんに適切な情報を届けて、納得してもらったうえで治療を受けることが大切です。そこで、患者会のグループ・ネクサス・ジャパン、国立がん研究センター中央病院、同センター希少がんセンターの共催で、「東京血液がんフォーラム」が、2018年11月18日に国立がん研究センターにて開催されます。セミナーでは、リンパ腫の病気や新しい治療薬、放射線治療、在宅医療などに関する講演が予定されています(事前申し込みが必要です)。 詳細はこちら:グループ・ネクサス・ジャパン リレー・フォー・ライフ がん患者さんやそのご家族を支援することで、地域においてがんと向き合って、がん征圧を目指すために、がん経験者や家族、仲間のかたが夜通し歩くリレーイベント「リレー・フォー・ライフ」が全国で開催されています。 リレーイベントは1985年に、ある医師が「がん患者は24時間、がんと向き合っている」という想いを共有し支援するために、トラックを24時間走り続けて米国対がん協会への寄付を募ったのがきっかけで生まれました。 ともに歩き、語らうことで生きる勇気と希望を生み出したいというイベントは現在、世界約30ヶ国の約6,000ヵ所で開催されています。日本では2018年は50ヶ所で開催される予定です。 関連情報はこちら:公益財団法人 日本対がん協会 公開日:2018/09/07
乳がんは乳房内に発生するがんで、中高年の女性を中心に症状がみられる病気として知られていますが、男性にも発生するケースがあります。男性の乳がんは症例が少なく、あまり知られていないのが現状です。 目次 乳がんとは? 男性乳がんを引き起こしやすい年代と割合 男性乳がんのリスクを高める要因 男性乳がんの治療 知識があれば女性の乳がんより早期発見しやすい男性乳がん 乳がんとは? 乳がんは乳房内に発生するがんで、中高年の女性を中心に症状がみられる病気として知られています。 乳房には、小葉と呼ばれるミルクを作る組織と、乳管と呼ばれる乳頭までミルクを運ぶ管となる組織があります。ほとんどの乳がんは、乳管の壁から発生するといわれています。 乳がんは女性の病気というイメージがありますが、男性にも発生するケースがあります。男性の乳がんは症例が少なく、あまり知られていないのが現状です。 男性乳がんを引き起こしやすい年代と割合 男性乳がんは全乳がん症例の1%前後であり、発症年齢も女性より高齢であると報告されています。国立がん研究センターが出している「2015年の部位別予測罹患数」によると、乳がんの罹患数は、89,400人と予測されています。男性乳がんの割合を1%とすると、日本で一年間に新たに乳がんになる男性は、およそ894人ということになります。 また、男性乳がんの生存率は、女性乳がんの生存率とほぼ変わらないとされています。しかしながら、男性乳がんは女性乳がんに比べて認知度が低い病気であるため、発見が遅くなり病状が進行している恐れがあります。 男性乳がんのリスクを高める要因 男性の乳がんのリスクを高める要因としては、下記のような事項があげられます。 ●放射線に曝されること 日常生活を送っているなかで私達が放射線を浴びる機会は、自然界から浴びるものやレントゲン撮影を行う際に浴びるくらいの少量のものです。しかし、職業柄、放射線を浴びる機会がある場合は、十分な注意が必要といえるでしょう。 ●体内のエストロゲン量の増大 女性らしい体を作るホルモンのエストロゲンですが、実は男性からも微量に分泌されています。このエストロゲンの量が増えることにより、体の女性化が進むことがあります。これが男性乳がんの原因ではないかと言われています。肝硬変など体内のエストロゲン量の増大する疾患がある場合などは注意が必要です。 ●遺伝的要素 女性近親者で乳がんにかかった方が何人かいる場合などがあげられます。乳がんを発症した人の5~10%は、遺伝的に乳がんを発症しやすい体質であると言われています。ただ、ほとんどの人が生活習慣などの環境因子によって発症します。 男性乳がんの治療 男性乳がんの治療は女性の乳がんと同様に行われます。初期治療として、手術で体の中の悪い細胞を取り除きます。ほかの治療法を行うにしても、がん細胞の量を減らしておいた方が、治療の成功確率が高まります。男性乳がんはその発症部位が乳輪乳頭付近になるので、乳房切除術を選択することが多くなります。 最近では、薬物療法(化学療法、ホルモン療法)や放射線療法の技術が進歩しているため、手術と薬物療法、放射線療法を組み合わせて、総合的な治療で乳がんを根絶しようという考え方が一般的になっています。 手術後は、抗がん剤、ホルモン剤などを使って薬物療法が行われます。乳がんが骨・肺・肝臓などの遠隔臓器に転移した場合は、がんの進行を抑え、症状を和らげることで、より長くがんと共存するための治療を行います。 知識があれば女性の乳がんより早期発見しやすい男性乳がん 男性乳がんは、触るとわかるくらいのしこりができるのが特徴です。 男性乳房は女性乳房よりも小さいため、腫瘍(しゅよう)を手で触れて感じやすいとされています。そのため、男性も乳がんになるという認識さえあれば、早期の段階で発見しやすいといえるでしょう。 このような知識にふれておくことで早期発見につながり、男性乳がんのリスクを回避することができます。 また、男性でもマンモグラフィーの受診を受けることができますので、おかしいなと思った場合は、乳腺外科のある病院で相談してみましょう。 ■関連記事 男が乳がんになるとは思わなかった!男性乳がんの会「メンズBC」(1) 乳がん副作用のセルフケア 男性乳がんの会「メンズBC」(2) 公開日:2016/08/22更新日:2020/09/25
乳がん手術により乳房を失った女性の精神的苦痛をやわらげ、QOLの低下を防ぐことが期待できる乳房再建は、全額自己負担でしたが、2013年に保険適用が承認されました。乳房再建の方法やタイミングについて解説します。 目次 健康保険が使える、人工乳房を用いた手術 それぞれ長所と短所がある、2つの乳房再建の方法 乳房再建を行うのは、乳がん手術と同時?手術後? 健康保険が使える、人工乳房を用いた手術 乳がんの手術は、がんのまわりの正常な組織も切除する必要があるため、乳房の一部または全部が失われてしまうことがあります。女性にとって乳房はとても大切なものであり、これを失うことは大きな精神的苦痛を伴います。人工的に乳房を形作る乳房再建は、乳がんの手術を受けた女性のQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)の低下を防ぐことが期待できるものの、その方法の一つである人工乳房を用いた手術の費用は、全額自己負担でした。 その人工乳房の保険適用が、2013年6月に厚生労働省から承認されました。これにより、乳房再建を希望する人の経済的負担が軽くなりました。特定の人工乳房しか保険適用の対象にならないこと、手術は認定を受けた医療機関に限られることなどの制限は残されているものの、人工乳房を用いた手術が、乳がんの治療の一環であると認められた意義は大きいと言えるでしょう。 それぞれ長所と短所がある、2つの乳房再建の方法 乳房再建には、前述の人工乳房を用いた手術を含む2つの方法があり、それぞれに長所と短所があります。 乳房再建の方法 ●自分の組織を使う方法 患者さん本人の、乳房とは別の部位から組織(皮膚、脂肪、筋肉、血管)を移植して、乳房を構成する方法です。主に腹や背中から移植します。元々自分自身の組織なので、外観や手触りが自然であり、人工乳房より早くから保険適用が承認されていました。人工乳房による再建と比べると手術時間が長く、体への負担がかかることや、移植元の部位に手術跡が残ることが難点として挙げられます。 ●人工乳房による方法 組織拡張器(ティッシュ・エクスパンダー)と呼ばれる医療器具を胸の筋肉の下に入れ、皮下組織を乳房の形に膨らませます。膨らんだ後に、シリコン製の人工乳房と入れ替えて縫い合わせます。自分の組織を使う方法と比べて手術時間が短く、乳房切除以外の手術跡は残りません。難点は外観や手触りの自然さでは劣ること、保険適応が限られることなどが挙げられます。 乳房再建を行うのは、乳がん手術と同時?手術後? 乳房再建は、乳がんの手術の際に同時に行われる一期再建と、乳がんの手術とは別の時期に行われる二期再建に分けられます。どちらで行うかは、患者さん自身の考えや、がんの進行度などを考慮して決めることになります。患者さんが納得した上で手術を受けられるように、患者さん、切除手術を担当する外科医、乳房再建を担当する形成外科医が、手術前によく話し合うことが必要となります。 公開日:2013/10/21
乳がんの早期発見のために、マンモグラフィ検診や乳房にしこりがないかを自分でチェックする自己検診はとても重要です。しかし、生活習慣が関係する乳がんは、毎日の食事で予防することができます。乳がんと食事の関係を、女子会のシーンから読み解いてみましょう。 目次 乳がん予防のためにも、お酒はほどほどに 野菜はたくさん、肉は控えめに。大豆食品は? 「食べ過ぎたかな?」と思ったら、運動でカバーを! 乳がん予防のためにも、お酒はほどほどに 女性において、新たにがんにかかった人を部位別でみたときに、もっとも多いのは乳がんです。早期発見のために、40歳以上の人に推奨されているのが、年に一度のマンモグラフィ検診。40歳未満の人は、乳房にしこりがないかを自分でチェックする自己検診を、定期的に行うことが勧められています。 これらの定期的な検診はとても重要ですが、生活習慣が関係する乳がんは、毎日の食事で予防することができます。女性同士、楽しく話をしながら食事をする女子会でも、少し気をつけてみませんか? お酒 ~発症リスクを高めるものの、適量であれば飲んでも大丈夫!~ 話が弾んで、ついついお酒が進んでしまう女子会。お酒は、乳がんの発症リスクを高めるのでしょうか?種類や量によって、リスクは抑えられるのでしょうか?その答えとして、お酒は種類を問わず、飲んだ量に比例して乳がんの発症リスクを高めるのは、ほぼ確実です。発症リスクを高めることにはならないと言われている量は、ワインならグラス2杯(200mL)、ビールなら中ジョッキ1杯(500mL)、日本酒なら1合(180mL)程度。適度な量をスマートに飲むのが、お酒との賢い付き合い方です。 おつまみ ~乳製品に発症リスクはなし!でも、食べ過ぎはリスクを高めうる肥満の恐れあり~ ワインなどのお酒と、一緒にいただくことが多いチーズ。牛乳やヨーグルトなども含め、乳製品と乳がんの発症との間に、明らかな関連はありません。ただし、乳製品は多くの脂肪を含むため、食べ過ぎると、閉経後の女性の乳がんの発症リスクを確実に高める肥満になる恐れがあります。料理の味付けに、バターや生クリームなどが使われていることも。直接的なリスクがないからといって油断せず、食べすぎには気をつけましょう。 野菜はたくさん、肉は控えめに。大豆食品は? 野菜料理 ~閉経後の乳がんの原因となる肥満を防ぐために、野菜をたくさん食べよう~ 閉経後の女性の、乳がんの発症リスクを確実に高める肥満の予防に、野菜は欠かせません。不足しがちなので、意識的にたくさん食べましょう。 野菜とともに料理に使われることがある、豆腐や味噌、納豆、湯葉、おから、煮豆などの大豆食品は、乳がん予防への期待をもたれているものの、乳がんの発症リスクを下げるという結論には至っていません。とはいえ、良質のタンパク質とカルシウムを摂れるため、適度な摂取が勧められます。 大豆食品に含まれるイソフラボンは、更年期症状の軽減が期待される成分として、サプリメントなどで人気ですが、やはり乳がんの発症リスクを下げる証拠はありません。 肉料理 ~サラダや付け合せの野菜も食べて、バランスのとれた栄養摂取を!~ 欧米と比較すると少ない、日本の乳がん患者。この差は、肉を中心とした高タンパク・高脂肪の欧米的な食生活と、あまり肉を食べてこなかった和食文化との違いによるものだという説があります。現代の日本では多くの家庭で、欧米化された食事が好まれています。この傾向が、日本における乳がん患者の増加と関係があるとも言われています。閉経後の女性の、乳がんの発症リスクを確実に高める肥満を防ぐためにも、肉だけでなくサラダや付け合せの野菜も食べ、バランス良く栄養を摂りましょう。 「食べ過ぎたかな?」と思ったら、運動でカバーを! デザート ~肥満は乳がんの発症リスクを高める可能性があるため「甘いものは別腹」はNG~ 「食後の甘いものは別腹!」という声はよく聞かれますが、食べすぎには要注意。閉経後の女性では、肥満は乳がんの発症リスクを確実に高めることがわかっています。一方、閉経前の女性では反対に、肥満が乳がんの発症リスクを下げることは、ほぼ確実と言われています。しかし、糖尿病や心臓病など、生活習慣病の発症においては、肥満は大きな原因の一つ。乳がん予防に限らない、健康的な生活という観点からは、閉経前の女性も、肥満に気をつけるのは大切なことです。 定期的な運動でリスクは抑えられる!高たんぱく・高脂肪の食事を避けるのも大切 食べ過ぎたときはもちろんのこと、できれば日頃から、定期的に運動をしましょう。閉経後の女性において、定期的な運動が乳がん発症リスクを下げることは、ほぼ確実。閉経前の女性では結論が出ていないものの、肥満の予防にはなります。激しいスポーツをする必要はないので、汗ばむ程度のウォーキングなどを始めてみてはいかがでしょうか。 乳がんの予防に欠かせないのは、結局は生活習慣病と同じく、バランスの良い食生活と、運動の習慣です。高たんぱく・高脂肪の食事は避けて、定期的な運度を続けましょう。 ■関連記事 マンモ+超音波で乳がんを早く発見!生稲晃子さん・乳がん手術5回を乗り越えて 20~22歳の子宮頸がんワクチン有効率を検討 新潟大学・HPV感染調査 がん治療後の後遺症のむくみでお悩みの方のためにリンパ浮腫患者スクールを開講 キャンサーフィットネス 乳がん再発の不安を和らげるスマホアプリを開発 名古屋市立大学・SMILEプロジェクト がん告知で「びっくり退職」はちょっと待った!サバイバー伝授!がんとお金(2) 婦人科がん(子宮・卵巣のがん)の発症リスクと治療後のむくみ対策 キャンサーフィットネス・リンパ浮腫患者スクール 乳がん治療後のむくみ対策は肥満解消と運動 キャンサーフィットネス・リンパ浮腫患者スクール 公開日:2014/08/25更新日:2020/09/25
乳がんや卵巣がんのほとんどは細胞に起きる異常であり、子どもへと遺伝されることはありませんが、乳がんと卵巣がんの約1割は、遺伝子の異常によって発症すると考えられています。これらの「遺伝性乳がん・卵巣がん」の特徴を解説します。 目次 乳がん・卵巣がんの約1割は遺伝性 リスクを知ることができる遺伝カウンセリング・遺伝子検査 今後も議論が必要となる、がん予防としての乳房・卵巣切除 乳がん・卵巣がんの約1割は遺伝性 女性のがんとして知られる乳がんや卵巣がんのほとんどは、乳腺や卵巣の限られた範囲内の細胞に起きる異常であり、子どもへと遺伝されることはありません。しかし、乳がんと卵巣がんの約1割は、BRCA1とBRCA2という親から受け継がれた遺伝子の、どちらかの異常によって発症すると考えられています。これは「遺伝性乳がん・卵巣がん」と呼ばれ、次のような特徴があります。 遺伝性乳がん・卵巣がんの特徴 (1)40歳未満の若い年齢において乳がんを発症する (2)家系内に複数の乳がん、卵巣がん患者が認められる (3)片方に乳がんを発症後、反対側の乳がんあるいは卵巣がんも発症する場合がある 出典:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター リスクを知ることができる遺伝カウンセリング・遺伝子検査 自分が遺伝性乳がん・卵巣がんである可能性を知る方法として、遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査があります。遺伝カウンセリングでは、カウンセラーに家族の病歴などを伝え、それをもとにリスクや病気に関する情報の提供を受けることができます。相談の結果、リスクが高いと判断された場合、遺伝子検査を勧められることもあります。遺伝子検査は採血により行われ、前述のBRCA1とBRCA2という遺伝子に異常がないかを調べます。 なお、遺伝カウンセリングや遺伝子検査を行っている医療施設は限られているため、まずは近くに実施しているところがあるかを調べる必要があります。納得したうえで受けるためには、医療施設に問い合わせ、費用なども含めて情報を集めておきましょう。 今後も議論が必要となる、がん予防としての乳房・卵巣切除 遺伝子検査の結果、遺伝性乳がん・卵巣がんが疑われると、予防が勧められることがあります。医療施設を受診し、遺伝性乳がん・卵巣がんの予防を行う場合、その方法としてタモキシフェン(抗エストロゲン薬)の服用があります。ただし、乳がんや卵巣がんを発症していない人が予防としてタモキシフェンを服用する場合は、治療の場合とは異なり保険適用外であるため、全額が自己負担となります。 海外では、予防のために乳房や卵巣の切除が行われることがあります。日本でも、各医療施設内の倫理委員会の承認を経たうえで実施した例はあるものの、保険適用外のため全額自己負担であることに加え、異常のない乳房や卵巣を切除することに対する心理的な抵抗もあり、一般的に行われているとは言えません。国内ですでに実施している、あるいは実施を計画している医療施設を中心に実施のルール作りが進められていますが、倫理的な面も踏まえ、社会全体で議論が活発に行われる必要があります(2013年6月現在)。 ■関連記事 20~22歳の子宮頸がんワクチン有効率を検討 新潟大学・HPV感染調査 なぜ今注目されている?子宮頸がん 女子会から読み解く!乳がんと食事との関係 卵巣の病気セルフチェック!女性ホルモンと卵巣の深い関係 子宮の病気も早期発見が肝心! 婦人科がん(子宮・卵巣のがん)の発症リスクと治療後のむくみ対策 キャンサーフィットネス・リンパ浮腫患者スクール 公開日:2013/06/17
自分で見つけられる唯一のがん「乳がん」 乳がんはすでに他人事ではない。食生活の欧米化や出産年齢の高齢化といったライフスタイルの変化に伴い、患者数は年々増加。今や女性の20人に1人がかかっているといわれているのだ。しかし、乳がんは自分で見つけられる唯一のがんとも言われている。ほんの少しの変化にも気がつくよう、乳がんセルフチェックを習慣づけたい。さらに「乳がん年齢」とも言われている40歳を過ぎたら年に一度のマンモグラフィ検診は欠かさずに。 早期発見によって治療の選択肢が拡大 がんと聞くと、今でも「=死」と連想する人が多い。しかし、乳がんに関しては、ステージ1までの早期の段階で発見できれば、その5年生存率は90%を超える※。早く見つけて適切な治療を行えば、もはや怖い病気ではない。 しかも乳がんは治療法の選択肢が多く、手術、放射線治療、ホルモン療法、化学療法などから、ステージやホルモン感受性をはじめとする患者自身の状態はもちろん、治療後の生き方も踏まえた治療の組み合わせ、選択が可能となってきている。さらにごく早期の乳がんであれば、女性にとって大切な乳房や、リンパ節を残す手術への可能性もひらける。リンパ節を残すことができれば、術後の生活や後遺症への不安も大幅に減らすことができるのだ。 ※一般にがんの完治は、5年生存率がひとつの目安となるが、進行が遅い乳がんの場合、10年間、再発や転移が見つからなければ完治という10年生存率を目安としている。 主な乳がんの治療法 ●外科手術 現在行われている主なものとしては、「乳房温存手術」と「乳房全摘手術」がある。乳房温存手術は、しこりを含め、乳房の一部分を切除する方法で、手術後には放射線照射か術後化学療法を行うケースが多い。乳房全摘手術は、乳房全部と、ごく早期の乳がんを除き、わきの下のリンパ節も切除する。 ●放射線治療 外科手術でがんを切除した後、再発を予防するために行われるのが一般的。そのほか、骨転移などがある場合、痛みをやわらげるためにも使われる。 ●薬物療法 ホルモン療法、化学療法、分子標的療法と大きくわけて3種類あり、患者ごとにホルモン感受性やHER2の発現状況などを評価したうえで、治療法が選択される。ホルモン療法は、エストロゲンががん細胞の成長に影響している「ホルモン依存型」の患者に適用される。化学療法は、術前にがんの縮小や再発・転移の予防を目的として行われる「術前化学療法」と、手術後の再発・転移予防を目的として行われる「術後化学療法」がある。また、新しい薬物療法である分子標的療法は、乳がん細胞の表面にあるHER2タンパクと呼ばれるタンパク質に対して、狙い撃ちできる療法だ。HER2タンパク、あるいはHER2遺伝子を過剰に持つ乳がんの治療に使われる。 リンパ節を残せるか?「センチネルリンパ節生検」 乳がんの治療の基本は手術でがんを取り除くことにある。古くは乳房すべてとわきの下のリンパ節、乳腺の下の胸筋まで切除するハルステッド法という方法がとられていた。しかし、切除範囲を狭くして、できるだけ機能を残すための手術方法の研究が進み、現在は、乳房温存手術の適応も拡大している。さらに最近では、がんのある場所に最も近いリンパ節(センチネルリンパ節)にがんの転移がなければ、そこから先のリンパ節に転移はないとみなし、切除しなくても良いという選択肢も出てきた。現在も研究が進められているが、このセンチネルリンパ節生検によって、術後の後遺症であるリンパ浮腫に悩む患者を減らせる可能性が広がったのだ。 乳がん治療の新たな可能性とは? 乳がんは、外科手術によってがんを取り除くことが治療のベースであり、乳房の一部に残る傷を避けることはできなかった。しかし近年では、ごく早期で見つかったがんの場合、保険適用外ながら、一部で内視鏡や超音波などを使った治療法も実施されている。こうした治療法の登場によって、乳房の形を崩すことなくがんを死滅させることができる可能性も出てきたのだ。 気になる乳房再建手術とは? 乳房再建手術とは、切除した乳房の代わりに、形成外科手術によって、乳房をつくるもの。 お腹や背中の筋肉など、体の一部を移植する方法と、シリコンなどの人口乳房を挿入する方法がある。保険適用外。 標準的な治療においても、術後化学療法の再発予防効果や、早期乳がんにおけるホルモン療法の有効性の確立など、乳がん治療に関する研究開発は日々成果を挙げている。ただし、こうした幅広い選択肢は、早期がんに限られているのが実情である。早期発見によって、その幅を広げるのは自分自身なのだ。 公開日:2007年9月18日
日本の乳がんの患者数は年々増加傾向にあり、その原因は女性ホルモンと深い関係があると言われている。女性なら知っておきたい乳がんになりやすい傾向を紹介する。 目次 乳がん患者は増えている 乳がんになりやすいのはこんな人 乳がん検診で早期発見を! 乳がん患者は増えている 世界的に見ると、乳がん患者の数は、地域や国によって数に開きがある。日本を含む東アジアは、過去をさかのぼって見ても、欧米の、特に白人と比べれば少ない。とはいえ、国内の乳がん患者および乳がんによる死亡者は年々増加傾向にあるため、決して油断はできない状態にある。 乳がんになりやすいのはこんな人 乳がんは、女性特有の病気というイメージが強い。実際には、男性にも乳腺はあるので、まれにではあるが、男性も乳がんにかかることがある。しかし、女性ホルモンと深い関係があるため、やはり女性での発症が圧倒的に多い。乳がんになりやすい条件のいくつかも、女性ホルモンとの関係で説明することができる。 乳がんになりやすい条件 ●初経年齢が早い ●閉経年齢が遅い ●出産したことがない ●最初の出産年齢が遅い ●授乳したことがない ●閉経後に肥満になる …など 女性ホルモンのひとつ「エストロゲン」は、初潮とともに女性の体に分泌されるようになり、以後閉経までの間、月経のたびにエストロゲンを中心としたホルモン周期が始まる。しかし、何らかの原因でホルモンのバランスが崩れてエストロゲンが過剰になると、乳腺の上皮細胞が異常に増殖し、乳がんの発生を促してしまう。 つまり、月経がある期間が長ければ長いほど、女性ホルモンが作用している期間が長くなるため、リスクが大きくなるといえる。 そのほかに、お酒を習慣的に飲む人や、母親や姉妹、娘など、家族が乳がんの患者である人も、発症する可能性が高いといわれている。 乳がん検診で早期発見を! 乳がんは、まだあまり進行していない段階で治療すれば、高い確率で死亡を防ぐことができる。日本では、早期発見のための取り組みとして、「がん検診無料クーポン」や、がんについてやさしく解説した「検診手帳」が、一定年齢の女性に配布されている。配布される内容は各自治体によって異なるので、乳がん対策の第一歩として、まずは自分が暮らす自治体のがん検診担当窓口に問い合わせてみると良いだろう。 公開日:2003年9月22日
乳がんは自分で検査でき、早期発見につながりやすい。自分で簡単にできる「乳がん」チェックや、定期検診で行う検査を紹介。もし、しこりを見つけたら「乳腺外科」もしくは近くの病院に相談して専門医を紹介してもらおう。 目次 乳がんの早期発見はまず「自己検診」 自分で「乳がん」チェック! やっぱり定期検診も利用しよう しこりに気がついたら? どのくらいなら「早期発見」? 乳がんの早期発見はまず「自己検診」 乳がんの治療率は、ほかの部位のがんと比べて高いことが明らかにされている。その理由のひとつに、自分で検査ができるため、早期に発見されやすいことが挙げられる。痛みを感じるよりしこりに気がつくことのほうが多く、実際に病院を訪れる人のほとんどが「自分で胸にしこりがあることに気がついた」という。 自分で「乳がん」チェック! 女性ホルモンが安定するときが望ましいので、月経がある人は月経後1週間前後がよい。すでに閉経している人は、日にちを決めて(毎月1日や、自分の誕生日の日など)チェックする習慣にしてもよいだろう。 CHECK!裸になって鏡の前に立ち、自分の胸をしっかり見てみよう ●左右の乳房の大きさ、形に違いはないか ●両手を上げたり下げたりしてみて、へこみやひきつれはないか CHECK!仰向けに寝て腕を上げ、胸を触ってみるとさらによく分かる ●乳房を触ってみて、しこりがないかどうか。乳房を上から押さえるように触るとよい。しこりは、胸ポケットに小石を入れ、服の上から触ったときのような、こりっとした感触がある ●乳頭をつまんでみて、乳頭がただれたり血がでないかどうか やっぱり定期検診も利用しよう 自己検診を行っていても、なかなか気がつかないことや見落としはあるため、定期検診を受けることはとても大切。人間ドックや保健所、病院などで行っている定期検診を積極的に受けよう。 検診では通常、医師の質問に答える「問診」と目で見る「視診」、実際に触れる「触診」が行われる。そこで異常があると、乳房レントゲン検査などの精密検査が行われる。マンモグラフィや超音波検査は、触診だけのときよりも乳がんの発見に効果的だといえる。 しこりに気がついたら? 自己検診でしこりに気がついたからといって、すべてが乳がんというわけではない。とくに、30歳以上の女性にできやすい乳腺症などは素人には判断のつきにくい良性のしこりの場合もある。 いずれにせよ、しこりやちょっとした乳房の異変に気がついても、「乳がん」と診断されるのが怖くて、なかなか病院に行かないという人もいる。しかし、万が一、しこりが悪性のものだった場合は、早期治療が大切。しこりを見つけたらできるだけ早く病院へ行こう。 どのくらいなら「早期発見」? 早期発見といわれるのは、一般的にしこりの大きさが2cm以下のもの。しかし、乳がんの場合はしこりだけではなくリンパ節への転移があるかどうか、また遠隔への転移があるかどうかも判断基準とされる。しこりの大きさにかかわらず、とにかく「あれ?」と思ったらすぐに病院での診察を受けよう。 早めに専門医を受診しよう 病院へ行く場合には、乳腺を専門とする医師に診てもらうのがよい。「乳腺外科」という診療科目がある病院があればそれが望ましい。もしくはがん検診センターなどを受診しよう。もしどの病院に行けばよいのか分からない場合には、かかりつけの医師や近くの産婦人科に相談して紹介してもらうのもよいだろう。 公開日:2003年9月22日
美と健康の救世主!?…女性の場合 肌のうるおいやハリを保ち、美しさを保つとされ、化粧品にも使われている大豆イソフラボン。実際、大豆イソフラボンを摂ると、メラニンの生成を抑える効果があるなど、美しさへの貢献度は高いようだ。 また、健康面でも注目度は高い。更年期障害による顔のほてりといった諸症状の改善をはじめ、閉経後の女性に多い骨粗しょう症の緩和、さらには乳がんの発生を抑制するはたらきがあるとされ、熱い期待を集めている。 なかでも乳がんについては、日本女性2万人を対象にした調査で、大豆イソフラボンを多く摂ったグループの乳がん発生率は、他のグループに比べて約54%も少なかったという驚くべき結果も報告されている。 通風や男性特有のがんにも効果!?…男性の場合 女性の美と健康への効能が大きく取り沙汰され、女性だけのものといったイメージが強いが、男性の健康に対しての効果が今、見直されてきている。 そのひとつが、前立腺肥大・前立腺がんの抑制効果だ。これはご存知の通り、男性特有の病気で、ホルモン依存性のがんといわれている。これに対して、女性ホルモンと似たはたらきをする大豆イソフラボンが効果を発揮し、発生を抑制するというのだ。 また、患者の90%以上が男性とされる痛風も、大豆イソフラボンを積極的に摂ることで抑制されるのではないかといわれている。 生活習慣病の分野でも熱い期待 高血圧、動脈硬化、がん…。男女の別なく増え続ける生活習慣病の治療と予防の現場でも今、注目を集めているのが大豆イソフラボンだ。 このキッカケとなったのは、日本では女性の更年期障害や骨粗しょう症などが比較的軽く、心筋梗塞などの心臓疾患も少なく、世界一の長寿国であることから、欧米の医学者が日本の伝統食を研究しはじめたことにあるとされている。そして1999年には、米国のFDA(食品医薬品局)が『大豆たんぱく質は心臓病の予防に役立つ』という健康表示を承認。大豆の、ひいては大豆イソフラボンの健康への効果が脚光をあびることになったのだ。 その後、高血圧やコレステロールなどに関するさまざまな研究成果が発表され、生活習慣病の予防のためにも、大豆イソフラボンを積極的に摂る生活が薦められている。なかでも現段階で、効果のほどが着目されているのが、コレステロールと血圧に対する影響。 脂質などの摂り過ぎによって、血液中のコレステロール値が高い状態が長く続くと、動脈硬化などの疾患を招きがち。ところが、大豆イソフラボンを1日約40mg摂る生活を4週間続けたところ、グラフのようにコレステロール値を低く抑えることができたと実験でも実証されている。 また、同様の実験では、血圧も変化。血圧を低く抑えることができることがわかっている。 今後ますます研究がすすめば、さらに大豆イソフラボンの生活習慣病への好影響が実証されていくのかもしれない。