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婦人科がん(子宮・卵巣のがん)の発症リスクと治療後のむくみ対策 キャンサーフィットネス・リンパ浮腫患者スクール

がん治療が終わった後に悩まされる後遺症にリンパ浮腫(むくみ)があります。根治療法がないため、正確な知識を持つこととセルフケアが重要です。キャンサーフィットネスのリンパ浮腫患者スクールから、婦人科がん(子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん)の発症リスクやリンパ浮腫対策に関するがん研究会有明病院・宇津木久仁子先生の講義を紹介します。

がん治療後のリンパ浮腫(むくみ)に関する専門医の講義を理解してセルフケア!

がん転移*1を防ぐためのリンパ節を取り除く手術などによって、体内のリンパ液の流れが悪くなることがあります。婦人科がん(子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん)では、治療後にむくみ(リンパ浮腫)が下腹部や足(下肢)に起こることがあります*2。 根治的な治療法がないため、家事や仕事などに影響し、長年悩みがつきない後遺症ですが、医療のサポートも十分ではありません。毎日のセルフケアが悪化させないために重要なことはわかっているので、患者さんが安心してセルフケアができることが大事です。
そこで、キャンサーフィットネス(代表理事:広瀬眞奈美さん)は専門医15人の講義とQ&A、参加者の座談会などを盛り込み、リンパ浮腫についてあらゆることが学べるリンパ浮腫患者スクールから婦人科がんの講義を紹介します(スクールは年間12回・20講座、2020年度スケジュール PDF

婦人科がんは罹患・死亡数とも右肩上がりで増えている

がん研究会有明病院健診センター検診部長/リンパ浮腫治療室長/婦人科の宇津木久仁子先生の講義から、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんの特徴、標準治療(ゴールドスタンダードの治療)、リンパ浮腫の留意点を紹介します。

宇津木先生によると、2017年の女性の推定罹患数で最も多いのは乳がん(9万人弱)で、子宮がんは第5位(約2万8000人)です。卵巣がんは1万人以上と言われています。
2017年の推計死亡数のうち乳がんは第5位(約1万4000人)で、子宮がんは6700人、卵巣がんは4800人とされています(国立がん研究センターがん情報サービスのがん統計の報告)。いずれのがんも罹患・死亡数とも右肩上がりで増えています。

子宮頸がんは20~30歳で増加傾向、検査で早く見つけるべき

子宮頸がんは、20~30歳代の女性で増加傾向にあります。

■子宮頸がんの特徴

  • おもな原因:性交渉によるヒトパピローマウイルス(HPV)感染
  • リスク:妊娠、出産回数が多い
  • 予防:若い時期から検診(検査)を受ける、ワクチン接種

子宮頸がんの手術適応は、がんになる前段階の高度異形成・上皮内がん(異形成は軽度:CIN1、中等度:CIN2、高度異形成・上皮内がん:CIN3)からです。
治療は、高度異形成・上皮内がん(CIN3)では手術、がんと診断されたステージⅠ以降では病態によって子宮全摘術とリンパ節廓清術、放射線や化学療法(抗がん剤)が選択されます。
ステージⅠに移行する前の異形成の段階で早く見つけられれば、体に負担が少ない手術を受けられる可能性があります。異形成の実数は、がん罹患数の2倍以上といわれています。もちろん、その数字はがん罹患数に含まれておらず、ワクチンを接種していない人は検査をして早期発見することが大切です。

子宮体がんは肥満、高血圧、糖尿病、妊娠出産歴なし、月経不順に注意

子宮体がんに関しては、がんの前段階(異型子宮内膜増殖症)は全体の1割を占め、こちらも早期発見が重要となります。

■子宮体がんの特徴

  • おもな原因:エストロゲン(閉経後でも肥満があると脂肪細胞からエストロゲンが産生されるので注意しましょう)
  • おもな症状:閉経後の不正出血
  • リスク:肥満、高血圧、糖尿病、妊娠・出産歴なし
  • 予防:動物性の脂肪をとりすぎない

治療は、子宮体がんの前段階の異型子宮内膜増殖症から手術適応となり、ステージⅠ以降はリンパ節廓清や負担の大きい手術、化学療法や放射線などが選択肢になります。

卵巣がんはサイレントキラー、腹水や腹膜播種が問題

卵巣がんは、排卵による卵巣の傷や子宮内膜症から起こるケース、遺伝性のものがあります。遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)は卵巣がんでは5~15%といわれています。
おもなリスクとしては、妊娠・出産歴がないことや動物性脂肪の摂取、ストレスが挙げられています。問題は、発見されにくく、病気の進行が速いことです。
卵巣が破けて腹水がたまることや、おなかにあるがん細胞が体内に散らばる腹膜播種が問題で、サイレントキラーと言われています。
治療は、子宮全摘術や両側付属器切除術、化学療法(抗がん剤)などが選択肢になります。

リンパ浮腫は治療後1年以内の発症が多い、早く気づくことが重要

婦人科がんの治療後に悩まされる症状は、おもに排尿障害とむくみ(リンパ浮腫)です。 リンパ浮腫に関しては、手術(リンパ節郭清術術)後はもちろん、手術と放射線治療(骨盤への照射など)の後は特に発症する人が多く、手術と化学療法(抗がん剤)の後に発症するケースもあります(リンパ浮腫診療ガイドラインでタキサン系の薬剤が関与する可能性が指摘されています)。
リンパ節を取り除く手術などにより、子宮の周辺にある鼠経(そけい)リンパ節から骨盤リンパ節や傍大動脈リンパ節に流れていたリンパ液が流れにくくなると言われています。
子宮頸がんの所属リンパ節は骨盤リンパ節、子宮体がんと卵巣がんでは骨盤リンパ節と傍大動脈リンパ節が関わるとされています。
最初にリンパ浮腫が起こりやすいのは下腹部や陰部、太ももの内側といわれています。また、ひざ周囲やすね、足にも広がっていきます。

リンパ節をとる手術を受けるのは患者さん自身です。医師の説明を理解すること、医療スタッフなども含めて相談し、自分で納得して手術を受けることが重要です。

リンパ浮腫に関する自己学習とセルフケアが大事、何かおかしいと思ったら相談しよう

保険診療では、リンパ浮腫指導管理料は入院中に1回の指導が認められています。
しかし、リンパ浮腫は治療後1年以内の発症が半数以上といわれますし、治療後1年以上経った後も発症するケースもあります。いま、患者さんができることとしては、自分で学習して、理解したうえでセルフケアをすることです。
何かおかしいと思ったら、すぐに専門の医療スタッフなどを含めて相談しましょう。
リンパ浮腫対策のポイントは以下です。早く気づくことが重要です。

  • リンパ節を取り除く手術(リンパ節郭清術)の術前・術後に、リンパ節に関する説明をよく聞いて理解する
  • リンパ浮腫を予防する生活をおくるようにする
  • 初期のリンパ浮腫の症状に早く気付いて医師に相談する
  • 保存的治療に従う

キャンサーフィットネス・リンパ浮腫患者スクールの詳細:http://cancerfitness.jp/lymph/

  • *:がんには転移という特徴があります。がん細胞が最初に発生した臓器(部位)は原発巣と言われますが、がん細胞が原発巣にとどまらず、血液やリンパ液の流れに乗って別の臓器に移動して定着することを転移(転移巣)と言います。
  • *:リンパ液の流れは、体内の余分な脂肪や蛋白、細菌やウイルスなどが含まれたリンパ液が、全身に張り巡らされているリンパ管に集められ、ところどころにフィルターの役割を持つリンパ節で浄化されて全身を巡ることをいいます。
    しかし、がん転移を防ぐためにリンパ節を取り除く手術や放射線治療などにより体内のリンパ液の流れが悪くなると、細胞組織間の水分バランスが悪くなってリンパ浮腫腫(がん治療後のむくみ)が起こることがあります。
公開日:2020/09/23
監修:がん研究会有明病院健診センター検診部長/リンパ浮腫治療室長/婦人科 宇津木久仁子先生、一般社団法人キャンサーフィットネス