過活動膀胱は、「急に我慢できないような尿意が起こる」、「トイレが近い」といった症状を示す病気です。この病気が起こる原因としては、脳と膀胱の筋肉を結ぶ神経回路の障害、女性の場合には骨盤底筋のトラブルなどがあります。
妊娠、出産を経験した女性は、骨盤底筋群が弱くなっていることがあり、それが排尿障害につながる場合があります。また、膀胱炎も女性に多い症状です。ここでは、女性特有の排尿障害の症状と原因について詳しく紹介します。 目次 妊娠、出産の影響で起こる場合も 意図せずに尿が出てしまう尿失禁 過活動膀胱 気になる症状があれば早めの検診を 妊娠、出産の影響で起こる場合も 40歳代以降になると、症状に悩む方が増えてくる「排尿障害」。尿の漏れやトイレの回数が多いことが気になり、外出するのがおっくうになってしまうなど、生活の質にも影響が出てきます。 妊娠、出産を経験した女性は、骨盤底筋群が弱くなっていることがあります。このようなとき、子宮や膀胱などを支える力が弱まり、これが下がってきてしまうために膀胱や尿道が圧迫され、排尿障害につながる場合があります。 ここでは女性特有の排尿障害の症状と原因について詳しく紹介します。 意図せずに尿が出てしまう尿失禁 尿失禁とは、尿をしたいと思っていないのに尿が出てしまう状態のことで、大きく分けて「腹圧性尿失禁」と「切迫性尿失禁」の2つのタイプがあります。 「腹圧性尿失禁」は、咳やくしゃみなどでお腹に力が入ったときに尿が漏れてしまうものです。産後や閉経後の女性に多いのが特徴で、原因は骨盤底の筋肉が弱まって、尿道を支える筋肉の力が低下するためです。治療法としては、腟および肛門を意識的に締める、緩めるという動作(骨盤底筋体操)を繰り返すことで骨盤底筋群を鍛えるという方法が中心になります。そのほかにも尿道を引き締めるはたらきがある薬を内服、手術の場合は尿道を吊り上げる方法(尿道スリング手術)などを行うこともあります。 「切迫性尿失禁」は、急に尿がしたくなり間に合わずに漏れてしまうものです。原因としては、神経疾患や骨盤底筋のゆるみなどが考えられます。薬による治療法としては、抗コリン剤によって膀胱の収縮を抑制することが行われます。近年、多くの種類の抗コリン剤が発売され、「切迫性尿失禁」に用いられています。「腹圧性尿失禁」の治療と同様、膀胱訓練や骨盤底筋運動という行動療法が行われることもあります。 過活動膀胱 近年、テレビなどでも多く取り上げられ、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。実際に40歳以上の人の12.4%にこの症状があると言われています(日本排尿機能学会誌:2003年)。その当時の人口に当てはめて患者数は約810万人と推定されていました。女性の過活動膀胱有病率は、年齢と共に増加していきます。現在では高齢化率が高まっているため、計算上1000万人近い患者がいると推定されています。 急に我慢できないような尿意が起こる、トイレが近いといったことを主な症状とし、生活の質にも大きな影響を及ぼします。 過活動膀胱などの女性特有の排尿トラブルを起こす原因として、骨盤底筋のゆるみがあります。年齢的な筋肉の衰えもありますが、女性は特に妊娠・出産後に尿漏れに悩む人が多いそうです。妊娠や出産は女性の骨盤に大きな負担となるため、骨盤底筋にゆるみが生じます。そのため、過活動膀胱と骨盤底筋のゆるみを併発している方も多いといいます。 過活動膀胱になると医療機関では、一般的に最初に問診が行われます。このときに「過活動膀胱スクリーニング質問票」「過活動膀胱症状質問票(OABSS)」といったチェックシートが使われることが多くあります。「朝起きてから夜寝るまでの排尿回数」「我慢できずに尿漏れをしてしまった回数」など、普段の生活での排尿に関する質問項目が設定されています。 そのほか、腹部エコー検査、血液検査、尿検査なども行われます。 気になる症状があれば早めの検診を 排尿障害は、普段の食生活の改善や適度な運動で予防することができます。単なる排尿障害だと思っていたら別の重大な病気のサインということもあるので、日々、尿の量や色などを観察し、排尿に異常がないか気を配っておきましょう。 特に女性は妊娠・出産などを通して、排尿障害になりやすい傾向があります。少しでも気になる症状があるときは、早めに主治医や泌尿器科の診察を受けましょう。 公開日:2016/10/03
頻尿や尿失禁の症状を排尿障害と呼びますが、食生活の見直しや骨盤底筋を鍛えることによって予防できる場合もあります。 目次 多種多様な排尿障害 がんの手術の影響で排尿障害に 日常生活で排尿障害を予防する 過活動膀胱を改善する 危険な病気の症状でもある排尿障害 多種多様な排尿障害 排尿において、その回数が多い、または少ない、そして、困難さを伴う場合などを排尿障害と呼びます。ひと口に排尿障害とはいっても、その症状はさまざまであり、多尿、頻尿、尿失禁、尿閉(排尿できない)、乏尿(1日当たりの尿量が少ない)、無尿、残尿感と、それぞれに症状も異なっています。 頻尿の場合「起床時から就寝までの排尿回数が8回以上」であれば頻尿の症状が起きているといえるでしょう。この症状が起きる原因として、膀胱が必要以上に収縮する過活動膀胱や、男性特有の前立腺肥大、そして心理的影響も考えられます。 また、これとは別に、就寝時に尿意により目が醒めて排尿するものを夜間頻尿といい、夜間に1回以上、加齢を考慮に入れる場合には、夜間に2回以上排尿しなければならない場合、夜間頻尿だと判断されています。 がんの手術の影響で排尿障害に 排尿障害には手術が関わっている場合もあります。特に多いのが直腸がんの術後に現れる症状で、この手術のリンパ節郭清の際に膀胱などの排尿を制御している神経が傷つけられることで、上手く排尿できなくなることがあります。ただ、これも術後半年程度で回復することが期待できるとされています。 日常生活で排尿障害を予防する その症状や原因がさまざまで複合的な要素もある排尿障害ですが、普段の生活で予防のためにできることもあります。頻尿や残尿感が起きる急性膀胱炎では、これを予防するため、下半身を冷やさないようにして、トイレを我慢せず、水分を多めに摂ることが必要です。 そして、残尿感や排尿に時間がかかる、腰痛、下腹部痛、血尿といった症状の原因となる膀胱結石や尿路結石、尿道結石を予防するために、尿が酸性に傾いて結石ができてしまわないように、動物性たんぱく質と塩分などを摂りすぎないようにして、水分を多めに摂るようにしましょう。 また、結石は小さいうちであれば、自然に排出されますので、習慣的な軽い運動もお勧めです。そのほか、排尿障害は薬の飲み合わせなどでも起きるため、何らかの薬を複数服用している場合には、医師や薬剤師に相談して下さい。 過活動膀胱を改善する 女性の場合、尿道が短いため、比較的失禁などが起きやすく、また、それを気にするあまり、トイレに行くほどではないのに、トイレに行ってしまうことが習慣化されてしまっている場合があります。 膀胱に尿の量が少ないのに、排尿を繰り返していると、膀胱の機能が低下したり過敏になったりする過活動膀胱の原因となることがあります。この場合、少しだけトイレに行くことを我慢してみましょう。そして、普段から尿道や肛門、腟を閉める運動を行い、骨盤底筋を鍛えて、過活動膀胱や尿失禁を改善しましょう。 危険な病気の症状でもある排尿障害 排尿障害は普段の生活から予防などの対処が可能な場合もあります。しかし、排尿障害が重大な病気のサインとなっていることもあります。たとえば、男性の前立腺がんには残尿や夜間頻尿の症状があります。そして、膀胱がんでも排尿障害の症状が現れることがあります。 そのほか、命に関わらないとしても、判断の難しい排尿障害では、自身の症状を医師に相談するのが最善の方法であるのは間違いありません。 公開日:2016/03/22
「排尿障害」というと、なにか難しい病気のようですが、「夜何度もトイレに起きる」、「くしゃみなどでお腹に力が入ると尿がもれてしまう」といった症状を指し、身近なものです。排尿障害の特徴について解説します。 目次 「ためる」機能と「出す」機能 尿をためる機能に問題がある場合 尿の排出に問題がある場合 「ためる」機能と「出す」機能 「排尿障害」というと、なにか難しい病気のようですが、「夜何度もトイレに起きる」、「くしゃみなどでお腹に力が入ると尿がもれてしまう」といった症状を指し、身近なものです。 「排尿が正常に行われるには、「尿をためる機能」と「尿を排出する機能」の両方が正常にはたらかなければなりません。この2つの機能は、特に高齢者の方が弱くなってくる傾向にあり、どちらかでもはたらきが弱くなると、排尿障害の症状が現れます。 では、どれくらいだと「正常」だと考えられるのか、具体的にみてみましょう。 1回あたりの排尿時間が20~30秒 1日の排尿量が1000~1500ml 1日の排尿回数が5~7回 排尿間隔が3~5時間に1回 以上の状態とかけ離れている場合には、排尿障害が疑われる可能性があります。 排尿障害の特徴について、「ためる」機能、「出す」機能のそれぞれに問題がある場合にわけて、ご紹介しましょう。 尿をためる機能に問題がある場合 「トイレに行きたくて夜に何度も起きてしまう」、「少し前にトイレに行ったばかりなのにすぐにまた行きたくなる」。このような症状がある場合は、膀胱が尿をためる機能が低下している可能性があります。このような症状が現れる原因としては、前立腺肥大、過活動膀胱などが挙げられます。 前立腺肥大は、現在約100万人の患者さんが治療を受けていて、潜在患者はその4倍ともいわれ、多くの方が悩んでいる病気です。前立腺は膀胱や尿道のすぐ近くにあり、これが加齢や男性ホルモンの影響で大きくなると、頻尿の症状が現れます。 過活動膀胱は、「急に我慢できないような尿意が起こる」、「トイレが近い」といった症状を示す病気です。この病気が起こる原因としては、脳と膀胱の筋肉を結ぶ神経回路の障害、女性の場合には骨盤底筋のトラブルなどがあります。 尿の排出に問題がある場合 尿の排出に関しては、排出しにくい、我慢できずにもれてしまう、といった症状があります。 尿を排出しにくいタイプには「溢流性尿失禁」というものがあり、排尿に勢いがない、残尿感がある、尿意がはっきりしない、といった症状がみられます。また、「神経因性膀胱」という神経の障害で尿が出にくい場合もあります。 我慢できずに尿がもれてしまう場合には、「腹圧性尿失禁」「切迫性尿失禁」などがあります。 「腹圧性尿失禁」は、咳やくしゃみ、スポーツなどでお腹に力が入ると失禁してしまうもので、特に女性の場合は、出産時に骨盤の底を支えている筋肉群がゆるんでしまうことなどが原因となっています。 「切迫性尿失禁」は、急にトイレに行きたくなり我慢ができずにもれてしまう、という症状で、脳からの排尿の指令によるコントロールが、脳血管障害などによりうまく行かなくなる、という原因も挙げられます。しかし、特に原因がないのに膀胱が勝手に収縮してしまうという場合も多いようです。 「仕方のないこと」と諦めていたり、病院に行くのが恥ずかしかったり、といったことで仕方なくこの症状と付き合っている方も多いかもしれません。しかし、医師の診断と治療を受ければ、この症状が改善する場合もあります。排尿障害がなくなれば、生活もよりよいものになりますね。このような症状でお悩みの方は、一度診察を受けてみてはいかがでしょうか。 公開日:2016/03/14
■アンケート対象■ 回答場所:浅草寺前、二子玉川 回答者数:浅草 100名(男性40名・女性60名)、二子玉川 100名(男性17名・女性83名) Q. あなたは、どんなときに急なトイレに困りますか?(複数回答) 浅草 二子玉川 浅草、二子玉川ともに多かったのが「就寝中」「仕事中」という回答。「就寝中」については、年齢とともに回数が増えたという方が多く見受けられました。「仕事中」については、介護職やピアノの出張講師という方から、「公共施設ではなく個人宅をまわる仕事なので、トイレを使わせてくださいとは言いづらい」という意見が寄せられました。 その他の意見としては、「外出中」「移動中」といった意見が多く、乗り物の中で尿意を催して困ったり、トイレがどこにあるか分からず不安な様子がうかがえます。 Q. あなたは、どんな場所でトイレが利用できず困りましたか?(複数回答) 浅草 二子玉川 浅草、二子玉川ともにダントツ1位は「渋滞中」。思いがけない渋滞に、次のパーキングエリアまで脂汗をかきっぱなしの経験をされた方が多いようです。「電車」「長距離バス」は先の設問と同じく、乗り物という特殊な空間の中で急にトイレに行きたくなることへの不安感は強いようです。「花火大会など野外イベント」は、トイレが目の前にあるものの、混雑していて困ったというご意見をいただきました。 いつでも好きなときに行ける自宅のトイレと違って、外出先ではトイレがどこにあるか分からない、いつ行けるか分からないという不便さに、皆さん不安を感じられるのでしょう。
■アンケート対象■ 回答場所:浅草寺前、二子玉川 回答者数:浅草 100名(男性40名・女性60名)、二子玉川 100名(男性17名・女性83名) Q. あなたは、過活動膀胱(OAB)という病気を知っていますか? 浅草 二子玉川 過活動膀胱という病名については、知らない、聞いたこともないという方が圧倒的に多く見られました。 スタッフが過活動膀胱について説明をすると、「もしかして私も?」「友人にそういう人がいる」という声も。「将来自分がそういう病気になったら嫌だ」という方が多く、治療薬があることを紹介すると、皆さん一様に安心の表情を見せておられました。 Q. あなたは、おしっこをする回数が多いですか?(1日に8回以上) 浅草 二子玉川 浅草、二子玉川の両地点ともに、約3人に1人がトイレの回数が多いという結果となりました。街頭での調査だったこともあり、急にはトイレの回数を思い出せないのか目をつむり指折り数えて答えてくださった方も。「日頃から健康チェックのために、トイレの回数は記録しておいた方が良いわね」という意見も聞かれました。 Q. あなたは、急におしっこをしたくなって、我慢をするのが難しいときがありますか? 尿意切迫感について男女別・年代別に回答をみたところ、女性より男性の方が、我慢が難しいという結果となりました。街頭では「突然行きたくならないよう、外出前に必ず自宅でトイレに行く」「長距離バスに乗るときは、必ずトイレを済ませてから」という女性が多く、女性にはトイレに関し計画性をもって行動する人が多い印象を受けました。それが、今回の男女差となって現れたのかもしれません。 さらに年代別でみると、年齢が上がるにつれて尿意切迫感を感じる人が増えることがわかります。 Q. あなたが好きなトイレ、印象に残っているトイレの場所を教えてください。 自由回答のうち、圧倒的に多かったのは「自宅のトイレ」。 男女や年齢の区別なく、「やはり家のトイレが一番落ち着く」という方が多く見られました。トイレの回数が気になる人にとっては、自宅のトイレはいつでもすぐに行けて安心感もあるのでしょう。 その次にデパートやホテルなど、高級感のある施設のトイレという回答が目立ちました。ポイントは広さ、清潔さ。日常を忘れさせてくれる豪華さも、好まれる理由のひとつでしょう。区役所や駅改札近くを挙げる方もいて、「トイレに行くなら、あそこで」と決めているのかも。なかには、海外のホテルの階数まで細かく思い出してくれた方もいました。心地よいトイレは、旅のちょっとした思い出にもなるのでしょう。 また、「和式」V.S.「洋式」では、足腰が楽という点で圧倒的に洋式に軍配が上がりました。一部では「洋式は太腿がつくので不潔感がある」「ボタン操作が分かりづらい」という和式派の声もありましたが、回答者からは「年をとってから足が悪くて」という声が多く聞かれ、高齢化とともに洋式が普及してきた背景が納得できました。 参考データ 実際におしっこの回数が多く突然の尿意にお困りの方は、どのような悩みを抱えているのでしょうか?ファイザー社の調べによると、「睡眠不足」「常にトイレのことを気にかけるのが煩わしい」「外出・旅行がおっくう」など、日常生活に大きな不便を生じ、ストレスを感じていることがわかります。他人に相談しづらい悩みだけに、精神的に大きな負担となっているのでしょう。 ※この調査は、2007年4月に40歳以上の男女900名を対象にしたWEB調査の回答を集計したものです。
healthクリックではこのたび、過活動膀胱に関する生の声を集めるべく街頭調査を実施。 皆さんには、あらかじめ用意した質問票へのご記入をお願いし、快く応えていただいただけでなく、思いもよらぬエピソードやコメントを寄せていただいた方も。 そんな貴重なご意見を、ご紹介させていただきます。 岡本哲郎さん・安子さんご夫妻 浅草雷門近くの商店街でお話を伺いました。ご夫婦ともにとても健康で、活動的な毎日を送られている様子。ご主人の哲郎さんはトイレに関する悩みはなく、これまでに困ったことはないとのこと。一方で、奥様の安子さんは日帰り旅行などで長距離バスに乗ったとき、休憩時間にしかトイレに行けないため、尿意をもよおして困ることが多いそうです。他の回答者でも、高速道路の渋滞や長距離バス、電車などでも「トイレに行きたい!」と思ったときに行けずに困るという方が大勢いらっしゃいました。 また、安子さんは年齢とともに「あっ」とあわてることが増えたとか。とくに運動をしている最中など、ふとした瞬間に少量の尿もれを感じることがあるそうです。アクティブな生活を送っておられるだけに、そうした場面も多いのでしょう。 そして過活動膀胱という病名について、今回の調査ではご存知の方は少なかったのですが、ご主人の哲郎さんは「詳しくは知らないけど…」病名についてはご存知とのことでした。 テレビの健康番組はよくご覧になれるとのことなので、「そこで耳にしたのかも」とも。 お話を伺ったのはお昼前。これから昼食という時間帯に足を止めていただきありがとうございました。 谷津文子さん 浅草雷門近くの商店街で、速足で軽快に歩いていらっしゃるところをお声かけしました。年齢をお伺いしましたが、とてもそのお年には見えない若々しさ。秘訣は、「エレベータを使わないこと」。なんと谷津さん、スタッフが声をかけた商店街の5階にあるあんみつ屋の経営者で、毎日のように階段を使って5階まで行ったり来たりされているそうです。道理で、ひときわ速足が目立っていたわけですね。 足腰を鍛えていらっしゃるせいか健康に関するお悩みはない、とのお答えでしたが、今回の調査では圧倒的に洋式トイレが好きという回答が多かった中、谷津さんに至っては「ぜったい和式」という少数派のご意見。理由は、「洋式は他人の肌が触れていて不潔な感じがするので、もっぱら和式を使う」。高齢の方の中には足腰が痛いので洋式を使うという方が多かったのですが、さすが谷津さん、エレベータを使わない成果がここにも出ていました。 過活動膀胱という病名については「聞いたことがない」とのこと。スタッフが説明を差し上げたところ、周囲のご友人の中にはそれらしき症状の人が数名いらっしゃるそうで、「トイレの悩みは、本人の口から聞かなくても見ていれば分かるわよね」。なるほど、とスタッフもうなずくばかりのインタビューでした。 調査終了後、お礼も兼ねてスタッフ一同、あんみつ屋さんで打ち上げ。残念ながら谷津さんの姿は見えませんでしたが、浅草らしい落ち着いた店内で1日の疲れも解消。そういえばあれほど速足だったのも、お店という目的地があったからこそ。お忙しいところご回答いただき、ありがとうございました。 インタビューを通して 二子玉川では、百貨店やおしゃれな路面店が建ち並ぶ駅近くの通りで調査を実施。さすがニコタマ。年配の女性も皆さんおしゃれで、ハイヒールで颯爽と道を歩き、健康法、美容法についてスタッフにアドバイスをする方も。 みなさん「過活動膀胱」という病気についても興味しんしんで、「膀胱炎とどう違うの?」「トイレの回数が多いのは健康な証拠じゃないの?」など逆に質問されることもありました。 印象的だったのは、健康な人も、現在病気を持っている人も、「おしっこが近くなったり、もれたりするのは嫌だ」という意見が多かったこと。回答者の中には重篤な病気を抱えて通院中の方もいらっしゃいましたが、「それでも、今の病気よりおしっこがもれる方が嫌だわね」というご意見でした。 インタビューを通して2日間にわたる取材を通してスタッフが実感したことがあります。 それは、皆さん頻尿や尿もれなど、トイレの悩みについて真剣に考えていらっしゃるということです。調査開始前には、「街頭で女性にトイレの回数を聞いて、怒られないだろうか…」という不安でいっぱいだったのですが、皆さん驚くほど率直に、そして真剣に応えてくださいました。 たかがトイレの悩みではなく、実際に少しでも悩んでおられる方にとっては、切実な問題であることが分かった調査でした。
healthクリックではこのたび、過活動膀胱に関する生の声を集めるべく街頭調査を実施。 7月23日に浅草、7月25日には二子玉川にスタッフが立ち、多くの方のご協力を得て200名もの声をいただくことができました。 蒸し暑い天気の中、スタッフの呼びかけに足を止めていただき、トイレや排尿というデリケートな問いに快く応えてくださった皆さんにスタッフ一同、感謝致します。 貴重なご意見をリポートとしてまとめましたので、どうぞご一読ください! 浅草 7月23日、朝10時から調査をスタート。さすが浅草、観光地だけあってアジアをはじめ、欧米からの観光客の姿も大勢見受けられました。スタッフが声をかけたら韓国の方だった、なんてことも。日本人ではお元気な高齢者の姿が目立ち、選挙カーや人力車の呼び込みが入り乱れる中、大きな声で調査に答えてくださる姿が印象的でした。 二子玉川 7月25日、こちらも朝10時から調査をスタート。さすが二子玉川、おしゃれに装った女性がベビーカーを押しながら楽しそうにウィンドウショッピングをする姿が目立ちました。海外旅行先でのトイレに関するコメントが多かったのも土地柄?この日は炎天下での調査だったにもかかわらず、小さいお子さんを抱っこした女性も快く調査に答えてくださり、本当に助かりました!
洋服にもひと工夫で、安心して外出を 過活動膀胱の症状があるからといって、一切の外出を控えるというわけにもいかない。しかし、尿もれや尿失禁などの症状がある人にとっては、いつどこで起こるか分からないという不安が常につきまとう。もちろん、尿もれや失禁の治療は病院で行うことになるが、治療と並行して、念には念のひと工夫で、外出時の不安をなくそう。まずは外出時に着る洋服へのひと工夫から。 ●尿もれをしたときにも隠せるように、ヒップの隠れる丈の長い上着を着よう ●ズボンは少し濡れても目立たないような色のものを着用しよう グレーや薄茶などは少しでも濡れるとはっきり分かるので注意しよう。 ●骨盤をしめつけるようなガードルやきつい洋服、タイトなスカートなどは避けよう 骨盤をしめつけるようなガードルは症状を悪化させる可能性もあること、また尿意を感じてトイレに駆け込んだときにすぐに脱げるように。 ●ズボンの股部分に内側から防水スプレーをあらかじめ吹きつけておこう 尿もれがあったときにも、表ににじみ出てくる心配が少なくなるので安心。 外出先での尿もれ、周りの目を気にしないために… ●外出時は、デリケートな部分用のウェットティッシュや、スプレーを携帯しよう もしも尿もれをしてしまっても、ウェットティッシュでふき取れば不快さが減る。 ●生理用のナプキンを尿もれパッドの代用にせず、専用のパッドを使用しよう 専用のものであれば、 1回分の尿量(約200cc程度)を吸収してくれる。またショーツも専用のものを使うことで、パッドがずれにくく安心。 ●外出先や旅行先のトイレの状況を事前に確認しよう 普段買い物で使うお店は、トイレのある場所を把握しておこう。はじめていくお店では、入り口でフロアガイドをもらっておくと、何階のどこに女子トイレがあるかがわかるので便利。また最近は、高速バスを使った旅行も人気だが、トイレ休憩はあっても、車内にトイレがないこともある。事前に車内にトイレがあるか確認するか、いつでもトイレに立てる電車を利用する方がよいだろう。 ●駅やデパートなどでは、できるだけトイレに寄っておこう そのとき行きたいと思っていなくても「今、行ったから大丈夫」という気持ちが安心につながるもの。 ●新幹線や映画館、劇場などの座席を取るときには、通路側を取るようにしよう トイレに行くたびに人を立たせたり、何度も前を通るのは気が引けるもの。通路側なら「いつでも行けるから大丈夫」という安心感がある。 さらに過活動膀胱と快適につき合うコツ! 過活動膀胱による尿もれは、重いものを持ったり、急に走ったりすることで起こることもあるので、できるだけゆとりを持って行動することが大切になる。買い物も、通信販売や宅配などを上手に利用して、なるべく重たいものを持たないようにしよう。 突然尿意が襲う尿意切迫感や、切迫性尿失禁の場合は、ドアノブ症候群などと呼ばれるように、帰宅して玄関のドアノブに触れた瞬間に尿もれを起こしてしまうケースがある。それだけでなく、ヒヤッとするような冷たいものに触ることで、尿もれを起こすことも。また、水の流れる音などが尿意のきっかけになることもあるので、滝や川などが有名な観光地へ行くときには、より一層注意が必要になる。 少しの工夫でも、安心して快適に過ごすことは可能だ。治療を継続しながら、自身が尿もれや尿失禁を起こしやすい状況を覚えておくことで、事前に対処し、過活動膀胱の症状と上手につきあっていこう。悩んでいるのは自分だけではないのだから。 参考文献:「女性婦人科外来へ行こう」(法研) ■関連記事 女性を悩ます排尿障害やデリケートゾーンの疾患「GSM」とは 日本抗加齢医学会セミナー
healthクリックでは、過活動膀胱の実態を把握するため「みんなはどうなの?トイレに関する意識調査」を実施した。期間中にいただいた345名の回答を一挙公開! Q8. 「過活動膀胱」という病名を知っていますか? 「聞いたこともない」が58%でトップ。「聞いたことはあるがよく分からない」(25%)も含め、多くの人がいまだ過活動膀胱という病気について理解がない状況であることがわかる。また、男性に比べ「聞いたこともない」とする女性が多く見受けられた。 なお、この問題についてQ4-6の結果から過活動膀胱が疑われるとした人32人と、それ以外の人とに分けて結果を比較したところ、大きな差は見られなかった。過活動膀胱に該当する症状を有する人であっても、病名に関する認識は、過活動膀胱に該当しない人と同じ状況にとどまっていることがわかる。 過活動膀胱が疑われる人 それ以外の人 Q9.「頻尿」「尿漏れ」「過活動膀胱」など、トイレのお悩みについてどう思いますか? 「重大な問題だ」が半数を超え、「年のせいなので仕方ない」(21%)。ほかの病気に比べたいしたことではない(5%)を大きく上回った。男性56%、女性71%と、女性の方が重大視する傾向にあるようだ。 なお、Q4-6の結果から過活動膀胱が疑われるとした人32人と、それ以外の人とに分けて結果を比較すると、「重大な問題だ」の回答において、過活動膀胱が疑われる人で82%、それ以外の人で49%と、大きな開きが見受けられた。過活動膀胱の症状がある人は、自分が病気であると認識しているか否かにかかわらず、トイレに関する悩みが重大であると捉えていることがわかる。 過活動膀胱が疑われる人 それ以外の人 Q10. トイレに関するお悩みごと、エピソード、要望などを自由にご記入ください ●夜中に3回もトイレに起きるので熟睡できない ●長時間の電車やバスはトイレに行けないので緊張する ●汚いトイレに入るのをガマンして膀胱炎になった ●テストや旅行の前には水分を控える ●パーキングエリアに着くたびトイレに走る ●会社のトイレが快適だと、いい会社だと思う ●電車に乗ったとき、映画を見ているときなど「トイレに行けないとき」ほど行きたくなる ●夜布団に入って寝ようとしても、すぐにトイレに行きたくなって困る ●明るく開放感のある、普通の部屋のようなトイレが欲しい ●介護実習で大人用紙おむつを一晩してその中に尿を出すという経験をした。あらためて、健康な状態でトイレで用を足す、ということはどのような年齢になっても、どのような病気になってもとても大切なことだと実感した。
healthクリックでは、過活動膀胱の実態を把握するため「みんなはどうなの?トイレに関する意識調査」を実施した。期間中にいただいた345名の回答を一挙公開! Q4. トイレには1日何回行きますか? 「1~7回」(59%)、「8~10回」(24%)、「10回以上」(11%)という結果となった。日中に8回以上トイレに行く人が男女ともに3割以上を占める。 Q5. 夜寝てからトイレに行くために起きることはありますか? 「ほとんどない」(28%)、「たまに起きることがある」(37%)、「毎晩1回以上は起きる」(17%)という結果となった。約半数が夜間の尿意が原因で起きることがあると回答している。 Q6. 「トイレがガマンできない!」と感じることはありますか? 「ある」が圧倒的に多く75%、「ない」(21%)という結果となった。 どんなときにガマンができないかという理由については、「長時間トイレに行けないとき」「寒いとき」など、やむを得ない要因によるもののほか、「いつともなく、突然感じる」という回答も目立った。 その他回答の中には「水を触っているとき」「台所で洗い物をしているとき」など、水に関係する回答が多く見受けられた。 ポイント 日本排尿機能学会の調査によると、過活動膀胱の有病率が40代以上男女の12.4%にみられるという。今回、Q4-6の回答結果から過活動膀胱が疑われる(「過活動膀胱の診断基準より」)のは男性12人、女性20人の計32人。そのうち40代以上に絞って抽出したところ、男性9人、女性13人の計22人で12.2%となり、ほぼ同様の結果となった。「40代以上の8人に1人が過活動膀胱」と言われるが、今回、healthクリックで行った調査結果でも同様のことが言えそうだ。 Q7. トイレに間に合わず、「漏らしてしまった」経験はありますか? トップは「一度もない」が63%。しかし「何度かある」(30%)、「たびたびある」(2%)、「よくある」(1%)と、3割以上の人がひんぱんに尿漏れを経験していることがわかった。尿漏れのきっかけは、下記のとおり(自由回答)。 ●冷たい水にさわったとき ●下着をおろしたとき ●ドアノブに触れたとき ●水を見たとき ●重たい荷物を持ったとき ●急に走ったとき、咳・くしゃみをしたとき ●立ち上がったとき ●笑ったとき ●トイレに入ったとき、座る直前に安心して ■関連記事 女性を悩ます排尿障害やデリケートゾーンの疾患「GSM」とは 日本抗加齢医学会セミナー
healthクリックでは、過活動膀胱の実態を把握するため「みんなはどうなの?トイレに関する意識調査」を実施した。期間中にいただいた345名の回答を一挙公開! Q1. 洋式と和式、どちらが好きですか? 「洋式」(86%)、「和式」(12%)で男女ともに洋式を好む人が多かった。その理由として「姿勢が楽だから」「シャワートイレがあるから」などの意見が多く挙げられた。女性に限っては、「和式だとズボンの裾が汚れそうで気をつかう」という意見も。和式が好きな人は「昔から和式だったので慣れているから」「洋式だと他人が座った便座なので躊躇する」という意見が多かった。 Q2. トイレ内で排尿・排便以外に行うことはどれ?(複数回答可) 女性は「化粧直し」、男性は「その他」がトップ。女性も「化粧直し」に次いで「その他」の回答が多く、トイレを個人の自由な空間として活用している人が多いようだ。「その他」の内訳としては、「考えごとをする」「スケジュール確認」「泥酔したときの休憩所」「ストレッチをする」など。なかには「居眠り(10分ほど)」という熟練の技を持った人も。 Q3. あなたがトイレに求めるものは?(複数回答可) 男女ともにダントツで「清潔さ」がトップ。トイレというと何よりもキレイであることが求められているようだ。女性のみ「化粧スペースの充実」という回答も多かった。その他の意見としては「臭いが無いこと」「香り、照明への配慮」「シャワートイレがあること」など快適さを求める内容のものが多かった。
何気ない一言で、外出ができなくなる心のつらさ 尿もれや頻尿といった症状は、なかなか人に相談しにくく、ひとりで悩みを抱え込んでいる人が多い。そんなときに大きな支えになるのが、周囲のさりげないサポートだ。 過活動膀胱に悩む人は、常にトイレや尿もれの不安を抱えており、実際、外出先などではトイレに行く回数も多くなる。しかし、ただでさえつらい症状に悩み、周囲を気にしている人にとって、「トイレばっかり行って…」「またトイレ?」と指摘されるのはつらいものだ。そんな周囲の言葉に傷つき、外出を避けたり、気持ちが沈んでうつ状態になる人も少なくない。 あれ?もしかして…と思ったら 同じ家で生活をしていれば、夜間、頻繁にトイレに行ったり、あわててトイレに行ったりする姿に気づくことも多いはずだ。しかし、本人からはなかなか切り出しにくいデリケートな問題でもある。「あれ?もしかして…」と気づいたときには、家族や周囲の人が理解し、さりげなくサポートしてあげよう。 外出先でトイレを見つけたときや食事の前後など、気づいたときに家族や周囲の人がトイレに寄ることを促したり、一緒に行くように声をかければ、頻繁にトイレに行くことを「恥ずかしい」「申し訳ない」と思わずにすむこともある。周囲を気にするあまり、外出を避けがちになっている人には、そばにいる人の何気ないサポートが、つらい悩みを軽くしてくれるものだ。 周囲の理解と情報提供が重要なカギに 過活動膀胱の症状に悩む人のなかには、それが病気であり、治療によって症状が大幅に軽減されるということを知らない人も多い。このようなケースでは、家族や友人など、周囲が受診を促してあげるのも重要だ。QOLが低下していながらも、泌尿器科の受診をためらう場合には、症状のチェックを勧める、病気であることを知らせる、また女性泌尿器科外来日を調べて教えてあげるなど、できることはいろいろある。そうした情報提供によって「年齢のせい」「仕方ない」という誤解が払拭できれば、それだけで本人が前向きな気持ちになれることがある。つらい悩みをひとりで抱え込んでいる人にとっては、「治療で症状が改善される」ということを知るだけでも、心のあり方に変化がみられ、症状が軽くなる場合もある。 家族や周囲の理解が得られているということは、悩みを抱えている人にとっては大きな支えだ。家族や周囲の人が、「もしかして…?」と思ったら、受診を促すと同時に、心のサポートをしてあげよう。
骨盤底筋体操、実践のコツ 過活動膀胱には、自分でできる治療として「行動療法」と呼ばれるものがある。その代表が「骨盤底筋体操」だ。骨盤の底にある筋肉を意識しながら、膣や尿道を締めたり緩めたりをくり返すだけなので、いつでもどこでもできる。しかし、自己流の間違った方法で続けていても効果はないので、最初に正しいやり方を習得することが必要となる。また、効果が現れるまでには2~3ヵ月かかるが、毎日朝晩、気長に続けることが重要だ。 骨盤底筋体操のやり方はこちら! コツを得るまでは自分でもチェックして! 自分が行っている方法が正しいかどうかは、指を膣の中に入れて、骨盤底筋体操を行ったときに、指に締まるような感覚が得られるかどうかで簡単にチェックできる。 また、膣内にセンサーを入れた状態で骨盤底筋体操を行うことで、膣内の筋肉の活動を調べることができるバイオフィードバック療法(保険適用外)を行っている施設もある。そのほかには下腹部とでん部の4ヵ所に低周波治療器のパッドに似た電極を貼って動かすことで、骨盤底筋や膀胱に低周波の刺激が届く干渉低周波療法というものもある(回数によって保険適用あり)。まずは自分でやってみて、それでも不安を感じるようなら主治医に相談してみよう。 行きたくなっても、一呼吸。膀胱訓練で自信をつけよう そのほかの行動療法には「膀胱訓練」がある。過活動膀胱の場合、膀胱に尿を溜めていられる時間が極端に短くなってしまい、溜めることができる尿量も少ないのが特徴だ。そこで、まず尿意を感じても、そのままトイレに行ってしまうのではなく、時計を見ながら5分我慢してみよう。 また、頻尿や尿失禁の症状が強い場合には、定時排尿という行動療法もある。これは、尿意を感じてから何分我慢するということではなく、たとえトイレに行きたくない状態であっても、常に決めた時間間隔でトイレに行き、排尿するという方法。最初は自分の状況に応じて、短い時間間隔で設定しても良いが、1週間単位で徐々に時間を延ばしていき、最終的には2‐3時間間隔を目標とする。決めた時間内は、骨盤底筋体操を行ったり、リラックスするなどして、できる限りトイレを我慢するようにしよう。とくに骨盤底筋体操を習慣づけておくと、いざ尿意が襲ってきたときにも、尿道や膣を締めることができ、我慢しやすくなる。 ■関連記事 女性を悩ます排尿障害やデリケートゾーンの疾患「GSM」とは 日本抗加齢医学会セミナー
閉経とともに過活動膀胱のリスクが高まる 40代以降の女性に多くみられる尿もれや尿失禁の原因として、最も多いのが腹圧性尿失禁である。重たいものを持ったり、くしゃみをしたときなどに尿もれを起こすのが特徴だ。この腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁をあわせ持つ混合型尿失禁や頻尿、尿意切迫感、切迫性尿失禁が、過活動膀胱の症状である。 頻尿や尿意切迫感、切迫性尿失禁は、その原因が多岐にわたっているのに対し、腹圧性尿失禁は、妊娠・出産による骨盤底筋のゆるみが原因となっていることが多い。骨盤底筋がゆるんでいる状態で閉経を迎えると、骨盤底筋を強くするはたらきがある女性ホルモンの分泌が低下し、より症状が出現しやすくなってしまう。過活動膀胱が40歳代以降の女性に多いのは、閉経を境に腹圧性尿失禁の症状が出やすくなることが、その理由のひとつとなっている。 加齢によって筋肉は弱まり、肥満によって負荷は増す また、年齢を重ねると、筋肉が徐々に衰えてくるという問題もある。閉経によって女性ホルモンの分泌が低下し、加齢によって筋力も低下するということは、自ら進んで鍛えようとしない限り、骨盤底筋は年齢とともに衰えていく運命にあるということ。 しかし、緩んで弱くなった骨盤底筋に対しても、体重は容赦なく負荷をかけ続ける。平成15年度の国民栄養調査によれば、BMI値25以上の肥満の割合は、20歳代までは1割にも満たないが、30歳代以降徐々に高くなり、60歳代女性になるとその3割以上が、肥満状態にあることがわかっている。もちろん、突然肥満になるわけではなく、徐々に負荷が増えていくため、その間ずっと骨盤底筋には負荷がかかり続けることになるのだ。 水分の摂り過ぎも禁物! 最近は健康のためにと積極的に水分を摂るように心がけている人も多い。実際水分が不足することは問題だが、だからといって過剰に飲み過ぎてしまうことは、頻尿の原因となる。飲料のなかでも、カフェインが含まれているコーヒーなどは、利尿を促す作用があるため、注意が必要だ。 そのほかには、女性に多い冷えも、頻尿の原因となる。外出時はもちろん、自宅にいるときにも、ひざかけをかけたり、足元を中心に、温かさを保つよう工夫しよう。 ■関連記事 女性を悩ます排尿障害やデリケートゾーンの疾患「GSM」とは 日本抗加齢医学会セミナー
より安心を得るためにリラックスできる環境づくりを 過活動膀胱の症状があると、常にトイレのことが頭から離れなくなり、外出もままならなくなる人もいる。 治療を行うことによって大幅に症状が軽減されることがわかっても、長い間悩んできた尿もれや尿意への不安に悩まされる人もいるだろう。 そこで、日常生活のなかで、より安心を得るためのさまざまな対策を紹介する。 トイレはゆっくりと時間をかけて トイレが寒いと、なかなかリラックスできないもの。短いトイレタイムでも、足元が暖まるよう、ヒーターを入れたり、リラックスできるラベンダーなどの芳香剤を使うなど、家のトイレをリラックス空間に変える工夫を。 冷えは大敵!ひざかけや厚手の靴下を利用しよう 過活動膀胱の症状がない人でも、冷えは尿意をもたらすもの。とくに足元やお腹の冷えは体全体の冷えとなるので、ひざかけや腹巻、厚手の靴下を履くなどの工夫を。 入浴時は、デオドラント効果の高い石鹸を使って 尿もれがあると同時に気になるのがそのニオイ。神経質になり過ぎる必要はないが、入浴時にはデオドラント効果の高い石鹸を使って体を洗い、清潔を保とう。 尿もれの不安をなくし、快眠を心がけて 夜間の頻尿や尿もれなど、就寝時にも不安の多い過活動膀胱。 就寝前の水分摂取は控え、大きめの尿もれパッドを使用して、もれを気にせずにぐっすり眠ろう。どうしても不安な人はパッドと尿もれ対応のショーツを組み合わせれば、より安心感を得ることができる。 家事のときには、こんな心がけを 日々追われる家事の合間にも、つい尿もれが気になって…という人は、少し意識を変えたり、心がけるだけでも安心できる、こんなノウハウを紹介しよう。 水仕事の前には必ずトイレへ! 切迫性尿失禁や尿意切迫感の症状があると、水で手を洗ったり、水の音を聞くだけで尿もれや失禁を起こすこともある。水仕事をする前にトイレに行っておくだけでも、安心につながる。 掃除や洗濯も、ゆったりした動きを心がけて 急に立ち上がったり、素早く動いたときに尿もれは起こりやすくなる。 掃除や洗濯はテキパキとこなしたいところだが、あせらずにゆっくりとした動きで行うよう意識してみよう。重い荷物を運ぶときは、少し面倒でも何回かに分けるのも手だ。 症状の改善は毎日の食事から!? 過活動膀胱となる原因のひとつが肥満であり、便秘であるといわれている。その原因を一つひとつ解消していくことも重要な過活動膀胱対策だ。 食物繊維の多い食事を心がけて 便秘対策に欠かせないのが、食物繊維をきちんと摂ること。食物繊維は、腸管の動きをスムーズにしてくれたり、水分を含んだやわらかい便にしてくれるはたらきがある。 便秘になるとついついトイレでいきんでしまうが、これは過活動膀胱を引き起こす要因となる行為。毎日のスムーズなお通じを心がけよう。 利尿作用のある飲料はなるべく避けて とくに頻尿の症状が強い人は、利尿作用のある飲料をなるべく避けるようにしよう。代表的なものはコーヒーなどに代表されるカフェインを含む飲料やアルコール。 カフェインは、膀胱括約筋の作用に影響しているアデノシンの働きを抑制してしまうため、尿意を引き起こしやすくなる。 カフェイン飲料やアルコールを飲むこと自体が直接病気を悪化させるということではないが、利尿作用によって、トイレの回数が増えることは、過活動膀胱の症状を持つ人にとっては、QOLを大幅に低下させることにつながるので、出かける前や就寝前には避けたほうがよい。 参考文献:「女性泌尿器科外来へ行こう」(法研)
混合性尿失禁のある過活動膀胱に有効な治療法とは? くしゃみをしたり、重いものを持ったときに起こる腹圧性尿失禁の症状だけでは、過活動膀胱とは言わないが、実はこの腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁を併発する「混合型尿失禁」に含まれる過活動膀胱の人が多い。 切迫性尿失禁は薬物療法が治療の中心となるが、腹圧性尿失禁では、手術によって大幅に症状を改善できることがわかっている。骨盤底筋体操や排尿訓練などの行動療法によっても症状が改善しない場合には、手術を受けることもひとつの選択肢となるだろう。 混合性尿失禁による過活動膀胱によって、つらい毎日を送っている人にとっては、腹圧性尿失禁の症状が改善できるだけで、大幅にQOLが向上する。 体への負担も軽くわずかな入院で症状が大幅に軽減 従来、腹圧性尿失禁の手術には、尿道や膀胱をつり上げる方法が取られていたが、この方法では、逆につり上げ過ぎて、尿が出にくくなってしまうなど、高い技術と微妙なさじ加減が要求されるものであった。しかし、現在はつり上げ式の手術に代わってスリング手術と呼ばれる術式が主流となっている。 ゆるんで骨盤を支えきれなくなっている骨盤底筋の代わりにテープで尿道や膀胱を支える術式である。そのなかでもプロリンテープやメッシュテープを使い、尿道の中ほどを支えるTVT(Tension-free Vaginal Tape)手術は、局部麻酔でできる体への刺激が少ない方法として、有効性、安全性の両面から注目されている。欧米ではすでに日帰り手術として行われているTVT手術。日本でも入院期間は2~3日だが、いずれは日帰り、もしくは1泊程度で済むようになるとみられている。 TVTからさらに進化した手術も登場!欧米ではすでに主流に!? このように現在主流となっているTVT手術だが、テープが膀胱の近くを通ることから、膀胱を誤って傷つけてしまう可能性がわずかながらあることや、まれに骨盤内の血管や腸管を傷つけてしまい、合併症を引き起こす可能性があることが指摘されている。 そこで現在欧米では、TOT(Trans-Obturator Tape)手術という、有効性はTVT手術と同等で、安全性をさらに高めた術式が主流となっている。その方法は、TVTと比べて大きな違いはないものの、骨盤の閉鎖孔と呼ばれる骨のすき間から坐骨の裏にテープを通すため、膀胱や血管、腸管などへの影響がなく、より安全性が向上した術式であるといえる。 日本でもすでにこの術式を取り入れている施設もあり、今後はTOT手術が中心となるとみられているが、現状ではTVT手術が保険適応なのに対し、TOT手術はまだ保険適応となっていない。
トイレの悩みのキーワード「骨盤底筋」とは? 過活動膀胱の症状は40代以上の人に多いといわれているが、そのきっかけは妊娠・出産であることが多い。というのは、過活動膀胱の原因のひとつに、出産による骨盤底筋のゆるみがあるからだ。 そもそも骨盤底筋とは、骨盤の底にある前方の恥骨と後方の尾骨との間にある、ハンモック状の筋肉で、骨盤内の臓器、膀胱、膣、子宮、直腸などを下から支えている。 実はこの骨盤底筋は、その昔人類の祖先が二足歩行をはじめるまで、尻尾を振るために使われていた筋肉だといわれている。二足歩行になり、骨盤底にさまざまな臓器の重みがかかりはじめたことで、それを支える役割をするようになったという。 出産回数2回以上でリスクが高まる 体の前方の骨と後方の骨にハンモック状にまたがる骨盤底筋は、骨盤内臓器を支えるだけでなく、尿道や膣、肛門を締める重要な役割も果たしている。妊娠中は、膣や肛門が大きくなった子宮を支えている。また出産時に産道となる膣は、強い力がかかることもあり、骨盤底筋は大きなダメージを受ける。 多くの女性が、出産後に一時的な尿もれを経験するのは、このダメージが原因だ。 しかし、出産後の尿もれは、年齢的にも回復しやすく、日常生活のなかで自然とおさまるケースが多い。 ただし、出産回数が2回以上になると、将来的に腹圧性尿失禁を引き起こす確率が高くなるといわれている。骨盤底筋へのダメージが出産によって度重なることで、よりゆるみやすくなり、戻りにくくもなってしまう。さらに加齢とともに、筋肉が弱くなることでよりゆるみやすくなり、過活動膀胱のなかで最もQOLを低下させる尿もれ、尿失禁の原因になる。 体を締めつける洋服が過活動膀胱の原因に!? 若い女性が好んで着ているきつめの洋服や腰痛緩和のためのコルセットも、実は骨盤底筋にダメージを与える原因となっているという。とくに出産直後の骨盤底筋がゆるんだ状態のときに、おなかを締めつけてしまうと、骨盤底筋が元に戻りにくくなってしまう。また、出産時に増え過ぎてしまった体重が、なかなかもとに戻らないという人も、出産前からかかっている骨盤底筋への負担がそのまま続いてしまうため、ゆるみの原因となる。出産後は育児に追われて自然と体重が減るという人もいるが、将来の過活動膀胱予防のためにも、体重コントロールは重要なのだ。 そのほかにも持病として喘息や慢性のせきがある人、便秘がちで、トイレで力むことが多いという人も、自分では気づかないうちに骨盤底筋に負担がかかっているので、注意が必要だ。まずは出産後、骨盤底筋体操を日常生活のなかに取り入れて、早いうちに、骨盤底筋を鍛えることが大切。 ■関連記事 女性を悩ます排尿障害やデリケートゾーンの疾患「GSM」とは 日本抗加齢医学会セミナー
「頭のなかにトイレがあるようだった」 取材協力:女性尿失禁・性器脱 元患者の会「ひまわり会」会長 辻村節子さん 現在も薬物治療を続けながら、同じ悩みを抱える方の力になりたいと、女性尿失禁・性器脱、元患者の会「ひまわり会」の会長として活動している辻村節子さん。現在は症状もなく、心も体も晴れやかな毎日を過ごしている。しかし治療前は、誰にも相談できず、つらい日々を過ごしていたという。今回は、同じような思いを抱える方へのエールの意味も込めて、その体験を語ってもらった。 過活動膀胱の症状が年齢のせいではなく、病気であるということを知らなかったり、泌尿器科の受診に抵抗があったり、つらい症状を抱えながらも我慢している人は多い。家族や友人にも相談できず、次第に何をしても楽しめなくなってしまうという心への影響も計り知れない。辻村さんの場合もまた、例外ではなかった。 「悲しくて、悲しくて、情けない気持ちでいっぱいに…」 私の場合、4年ほどは病院へも行かず、生理用のナプキンを使って、尿もれを防いでいました。夜も1時間おきにトイレに起きてしまうので、いつも睡眠不足でした。ほかにもトイレのついていない乗り物に乗るときにはとても不安に感じましたし、どこにトイレがあるかわからないようなはじめて行く場所では、常に目でトイレの場所を探していました。次第に尿もれの症状はひどくなっていったのですが、それに加えて、年齢を重ねるごとに、立ったり座ったりする際に、足の関節が痛むようになってきたのです。相変わらずトイレの回数は多く、その都度立ち上がるのは本当に大変だったのですが、あるときついに我慢できず、もらしてしまったのです。誰にも相談できず、本当に悲しくて、悲しくて、情けない気持ちでいっぱいになりました。 日常生活への支障はもちろん、趣味のゴルフも避けるようになり、好きなお芝居を観に行く際にもいつでもトイレに行けるよう、必ず通路側の席を取るなど、何をするにもトイレのことで頭がいっぱいになっていったという辻村さん。その後、肺炎を患い、入院したときに友人のすすめもあって泌尿器科での問診を受けたものの、当時は女性の尿失禁に対する医師の認識も低く、結局治療を受けることはなかった。 治療を受け、つらい症状からも心の問題からも解放 その後辻村さんは、新聞で見た尿失禁治療剤の治験広告を頼りに、1年間治験に参加。治験終了後も1年ほど通院し、薬物療法を続けていたという。しかし、そんなとき辻村さんは、ある新聞記事を目にする。それは大阪中央病院で行われていたTVT手術を紹介する記事だった。すぐに竹山先生のもとを訪れた辻村さんは、問診を受けてはじめて自分の病気が「混合型尿失禁」であることを知った。TVT手術を受けた辻村さんは、長年にわたるつらい症状からも、心の問題からも解放された。すると退院間際の辻村さんに竹山先生から「ひまわり会」設立の話があったという。 ※TVT手術とは…腹部から細いガイド針でメッシュ(手術用の網)を尿道の下にくぐらせる術式。これによってメッシュが尿道を支え、尿道のぐらつきを抑えるため、尿が漏れにくくなる。 「元・患者会『ひまわり会』を設立」 竹山先生と出会い、TVT手術を受けたおかげで、症状が改善し、本当に心も体も晴れやかになりました。また、同じような病気を抱えながらも誰にも相談できずに苦しみ、悩んでいる多くの女性たちがたくさんいることも知りました。そんな方たちに尿失禁や性器脱に関する情報を発信していくことで、手を差し伸べられたらと思い、2004年9月、同病院で治療を受けた32名の元患者と患者とともに元・患者会「ひまわり会」を発足させたのです。 「薬を飲んでいるから大丈夫」という安心感も大切 すっかり尿もれの症状もなくなり、晴ればれとした毎日を送っていた辻村さんだったが、手術から1年が経過したころ、またあの症状が現われはじめた。 「再び起こった頻尿、尿意切迫感…」 「ひまわり会」の活動として、尿もれ体験に関する講演を行うことになっていた日のことでした。朝から30分おきにトイレに行きたくなってしまったのです。講演前の緊張から来る尿意切迫感でした。すぐに竹山先生に相談し、薬物療法を開始しました。そのほかに先生には体操もやったほうがいいといわれていますが、今は薬だけで十分症状が抑えられているので、ほかにはなにもしていません。心の問題も非常に大きいので、「薬を飲んでいるから大丈夫」という安心感も、症状を軽くしてくれていると思っています。 今でも趣味であるお芝居を観るときには、どんなに良席が空いていても、通路側の席を確保しているという辻村さん。治療前は常にトイレの不安がつきまとい、途中で我慢できずに席を立つこともあったため、心からお芝居を楽しむことができなかった。しかし、今、通路側の席を確保するのはあくまでも「保険」だという。「薬を飲んでいるから大丈夫」「いつでもトイレに行ける」という二重の安心感があるため、途中で席を立つことなく、最後までお芝居を心から楽しむことができるようになったのだ。 「ひとりでも多くの方に、治療できることを知ってもらいたい」 「ひまわり会」の活動の柱のひとつとなっている相談会や電話相談では、過活動膀胱の症状に悩む多くの方の話を聞き、体験者としてのアドバイスもしています。そのなかで若い方でしたが、頻繁にトイレに立てないため、やりたい仕事に就けないという話も聞きました。そんな方にこそ、薬だけで、症状が大幅に改善され、生活も変えられるということを知ってもらいたいと思います。私のように治療を受ければ、長年悩まされた症状からも解放され、心も体も軽くなり、毎日を楽しむことができるのですから。 またその一方でいろいろな方の相談のなかから感じるのは、過活動膀胱が治療できる病気であることを知らないのは、患者ばかりではないということです。泌尿器科や婦人科の先生はもちろんですが、他の診療科の先生にも、もっとこの病気のことを知ってもらい、内科でも治療ができるようになればと思っています。そうなれば、ひとりで悩んで我慢している女性が今よりもっと受診しやすくなると思うのです。 実は症状が残っていたときは、実名で自身の体験を語ることはできなかったという辻村さん。女性にとっては、それほどまでに深刻でデリケートな病気だからこそ、今は体験者・克服者のひとりとして、過活動膀胱に悩む方が少しでも減ることを願い、実名での患者会活動を行っているという。 ■関連記事 女性を悩ます排尿障害やデリケートゾーンの疾患「GSM」とは 日本抗加齢医学会セミナー
過活動膀胱患者の現状とは? 取材協力:健康保険組合連合会 大阪中央病院・女性泌尿器科部長 竹山政美先生 潜在患者数810万人のうち、受診率はわずか3~6%といわれる過活動膀胱。実際、その症状に悩み、つらい思いを抱えながらも、どこへ相談すればよいのかわからず、あきらめている患者さんが大多数である。そこで、多くの過活動膀胱患者さんの治療にあたっている大阪中央病院の竹山政美先生にその現状をうかがった。 過活動膀胱は、婦人科と泌尿器科との境界領域の病気であり、双方の専門知識を持つ医師による治療が必要となる。そこで竹山先生が泌尿器科部長を務めている大阪中央病院では、2002年に女性のための泌尿器外来を開設。2005年にはそれを「女性泌尿器科ウロギネセンター」へと発展させた。「婦人泌尿器科」という分野は、ここ数年でようやく必要性が認識されてきたところだが、過活動膀胱に悩む患者さんの受け皿として、マスコミでも取り上げられる機会が増え、次第に女性専用の泌尿器科外来も増えつつある。 Q. センターを受診する患者さんの現状を教えてください A. 全体の6割が尿失禁を訴える患者さんです 当センターでは、主に各種尿失禁や骨盤臓器脱、骨盤内手術(子宮がん、直腸がんなど)の術後の排尿障害などを中心に治療を行っていますが、なかでも患者さんを疾患別に分類すると、走ったり、咳、くしゃみをしたりしたときに尿もれを起こす腹圧性尿失禁が31%、トイレが我慢できずにもらしてしまう切迫性尿失禁が13%、その両方の症状が出る混合型尿失禁が15%、と患者さん全体の6割が尿失禁です。 Q. 過活動膀胱の受診状況について教えてください A. 受診率はまだ低く、多くの方が我慢しているのが現状です 過活動膀胱は、40歳以上の8人に1人は罹患経験があるといわれるほど、多くの方にみられる病気です。しかし、(1)病院の敷居が高い、(2)加齢による生理現象だとあきらめていたり、治る可能性のある病気だということを知らない、(3)どこの病院にかかればいいのかわからない、といった理由から、その症状に悩みながらも、大多数の方が治療を受けずに我慢しているのが現状です。 簡単で明確な診断が可能になり、安全で有効性の高い薬も登場 過活動膀胱は新しい病気の概念であるため、一般医向けのガイドラインも2005年に発刊されたばかりだというが、実際には過活動膀胱の診断や治療はどのように行われるのだろうか。そのガイドラインのポイントを竹山先生に紹介してもらった。 Q. 過活動膀胱の診断は簡単にできると聞きました A. 過活動膀胱では、自覚症状が優先されます 患者数はきわめて多いにもかかわらず、かつては過活動膀胱の診断・治療は尿流動態検査を要する大変なものでした。しかし、今は患者さんの負担や抵抗感が大きいことに加え、この検査で異常がみられなくても、尿意切迫感や頻尿の症状を訴える人が少なくないこと、また原因を特定しにくい患者さんが多いことから、今は必ずしも尿流動態検査をしなくても、自覚症状を優先し、過活動膀胱と診断できるようになっています。 Q. 問診ではどのようなことを聞かれるのでしょうか? A. 「尿意切迫感」「頻尿」「切迫性尿失禁」の自覚症状についてうかがいます 過活動膀胱が疑われる患者さんには、「症状質問票(OABSS)」に答えていただきます。 (1)「朝起きたときから寝るまでに何回くらい尿をしましたか?」 (2)「夜寝てから朝起きるまでに何回くらい尿をするために起きましたか?」 (3)「急に尿がしたくなり、我慢が難しいことがありましたか?」 (4)「急に尿がしたくなり、我慢できずに尿をもらすことがありましたか?」 という尿に関する4つの質問の回答を点数化して、過活動膀胱の診断と重症度判定をします。 Q. 過活動膀胱の有効な治療法を教えてください A. 薬物治療と行動療法が有効な治療法です 現在、過活動膀胱の薬物治療では、有効性と安全性の面から抗コリン薬が最もよく使われています。抗コリン薬には、過活動膀胱の原因となる排尿筋の不随意収縮を抑制し、膀胱を十分に尿が溜められる状態にする効果があります。口の渇きや便秘といった副作用も考慮しなくてはいけませんが、その問題もほぼクリアした抗コリン薬も出てきましたので、大いに期待しています。 また、行動療法は、トイレ習慣を改善するために排尿日誌をつける、飲水量を減らす、トイレに行く間隔をあけていく膀胱訓練をするといった方法があります。 過活動膀胱のことをもっと多くの方に知ってもらいたい」 多くの方が悩みを抱えながらも、治療を受けず我慢しているという「過活動膀胱」。受診率が上がらない原因、問題点はどこにあるのだろうか。専門医が感じる今後の課題と、取り組みについて聞いた。 Q. 今後の過活動膀胱治療の課題は何でしょうか? A. 治療が可能だと知ってもらうことでしょう 泌尿器科への受診をためらう方が多いので、まず女性泌尿器科外来を増やし、診療を身近にすることが大切です。また、最も重要なことは、過活動膀胱は加齢のせいとあきらめてしまうことなく、適切な治療で症状を大幅に軽減することができるということを多くの方に知っていただくことです。 Q. そのためにはどのような対策が必要でしょうか? A. メディアの力も借り、多くの方に情報を提供することが必要です 当院でも積極的に情報提供を行っており、2002年には月5名に満たなかった患者さんが、2005年度には月100名を超えるようになりました。しかし、全国的には現在もなお、受診率は潜在患者数の3~6%と言われています。もっと多くの方に正しい情報が届くよう、情報提供を行っていく必要があると感じています。とくにメディアを通じての情報提供を行うと受診者が増えるというデータも出ています。女性泌尿器外来を開設する病院は次第に増えてきましたので、メディアの力も借りながら、多くの方に、過活動膀胱についての正しい知識を伝え、この病気で悩んでいる方の受診率向上を目指していきたいと思います。 過活動膀胱の治療は、ここ数年で大きく変わっている。そしてその受け皿はここ数年で確実に増えている。まずはつらさ、悩みをひとりで抱え込まず、私たち患者が、受診の一歩を踏み出すことが大切だ。 ■関連記事 女性を悩ます排尿障害やデリケートゾーンの疾患「GSM」とは 日本抗加齢医学会セミナー
過活動膀胱の診断に必要な検査とは? 問診によって得られた現在の状況と、病歴などをもとに、引き続き身体所見や検尿、超音波検査などが行われる。身体所見では、下腹部の視診と触診、直腸内指診(男性のみ)、外陰部の指診と内診が行われる。検尿は血液の混じりや尿路感染症がないかなど、別の病気が隠れていないかどうかが確認される。 ほかにも残尿量や排尿量、尿もれの程度などの検査が行われる。 主な検査と目的 検尿 尿に血液が混じっていたり、尿路感染症を引き起こしていないかなど、過活動膀胱以外の病気がないか確認する 超音波検査 膀胱を診て、残尿量を調べる検査。前立腺や腎臓の状態を確認する 尿流動態測定 排尿量や勢いをグラフにすることで、排尿障害があるかどうか、またその程度を調べる パッドテスト もれた尿の量を測ることで、尿もれの程度を確認する 検査でみつかるのは過活動膀胱だけじゃない? 過活動膀胱と似た症状を持つ疾患に、尿路感染症や尿路結石、膀胱がん、間質性膀胱炎、心因性反応、排尿障害による残尿、薬の服用による尿量の増加、多量の水分摂取、糖尿病や腎機能障害などがある。身体所見や尿検査を行うことで、ほかの病気の早期発見につながることもある。そのためにも気になる症状があったときには病院へ相談しよう。 過活動膀胱には、どんな治療法があるの? 過活動膀胱の症状改善に最も効果的な方法は、薬の服用と、体操や排尿日誌の継続、水分量の制限といった日常生活における「行動療法」の併用だといわれている。そのほかにも症状が重い場合には外科的な治療が行われるケースもあるが、ここでは一般的な治療法を紹介する。 薬を服用する(薬物療法) 薬物療法の目的は、過活動膀胱を引き起こす原因となる、排尿に影響する筋肉が過剰に動くのを抑え、膀胱で尿が十分溜められる状態をつくること。 過活動膀胱治療に使われる薬の種類 抗コリン剤 過活動膀胱の治療に使われている薬剤の主流は、抗コリン薬で塩酸プロピベリン、塩酸オキシブチニンが代表的。過活動膀胱のために開発された新しい薬としては、酒石酸トルテロジンなどがある。 平滑筋弛緩剤 平滑筋を緩めたり、局所麻酔作用がある。 三環系抗うつ剤 本来は抗うつ剤だが、抗コリン作用があるため、夜間尿失禁に有効という報告がある。 過活動膀胱の治療に使われる抗コリン剤は口が渇く、尿が出にくくなる、便秘、発汗などの症状がみられることもあるが、なかでも過活動膀胱治療のために開発された薬である酒石酸トルテロジンは、こうした副作用が少ない薬として注目されている。 トイレ間隔を伸ばす訓練をする トイレに行く間隔を少しずつ長くするよう意識することで、少しずつ膀胱の容量を大きくすることができるため、オシッコを長く溜められるようになる。受診前につけた排尿日誌を継続してつけることで、自分の排尿間隔が長くなっていることが実感できれば、自信にもつながる。 水分摂取の制限 カフェインを含む飲み物を避け、水分摂取量を調整することで、尿量を適量に調整する。ただし、過度な水分制限は禁物。 骨盤底筋体操 過活動膀胱の頻尿や尿もれの症状には、骨盤底筋体操と2のトイレ間隔を伸ばす訓練の組み合わせが、より効果的だと考えられている。弱くなった骨盤底筋を鍛えることで、尿道の締まりがよくなり、尿もれが軽くなる。肛門と膣を締めたり緩めたりを繰り返すだけの簡単な体操なので、時間をみつけて毎日続けよう。 その悩み、一歩を踏み出せば、こんなに変わる! 今までだれにも相談できずに悩んでいたのが、治療できる病気だとわかるだけで、不安感は解消するもの。治療を続けることで、その効果が出てくれば、また好きな旅行に行ったり、トイレを気にせずに生活を思い切り楽しめる。 それにはまずひとりで悩まずに、病院へ相談に行くことからはじめよう。 そしてあなたの家族や周りにもひとりで悩んでいる人がいるかもしれない。病院へ行くことをためらわず、医師に相談してみることを勧めてみて欲しい。
トイレが我慢できずに、好きな旅行が楽しめなくなった。これは年齢のせい? 外出先でのトイレが心配なため、常にトイレを探してしまったり、水分摂取を控えてしまうなど、気苦労が絶えない。友人たちとお茶を飲んだり、食事をしたりしても落ち着かず、心から楽しめない。夜間に何度もトイレに行くため、熟睡できない。寝ている間に尿もれしてしまうのではないかと心配――。 こんな症状、身に覚えがないだろうか。年齢のせいだと思って我慢したり、人に言えず悩んでいないだろうか。これらの症状は「過活動膀胱」という病気による可能性が高い。我慢できずにひとりで悩んでいたその悩み、解決への第一歩は病院への相談からはじまる。 過活動膀胱とは? 急に強い尿意が起こり、もれそうな感じになる「尿意切迫感」が主な症状。ほかにも「頻尿」や「夜間頻尿」を伴うことがあり、場合によっては我慢できずに失禁する「切迫性尿失禁」を引き起こすこともある、排尿に関する症状症候群のことを「過活動膀胱」という。 恥ずかしくて相談しにくいけど…どこへ行けばいいの? まずはかかりつけ医にあなたの悩みを相談してみよう。もし、かかりつけ医を持っていないなら、専門医である泌尿器科で相談できる。女性の場合、泌尿器科に対して抵抗を感じる人がいるかもしれないが、そんな人のために最近では「婦人泌尿器科外来」を設ける病院も増えてきた。これは、女性がいつまでもはつらつとした毎日を楽しむには、尿トラブルの相談先が必要であるということの証明でもある。ほかにも女性外来を設けている病院では、女性の泌尿器科医が相談に応じる日を設定しているケースもある。 我慢できないトイレの悩みはここで相談! かかりつけ医 泌尿器科 婦人泌尿器科 女性外来(泌尿器専門医のいる)※ …など ※女性外来では、尿失禁外来日など、曜日によって専門医の診察が受けられる日が決まっていることが多いので、電話などで事前に確認しよう 過活動膀胱、病院ではどうやって診断をするの? 過活動膀胱の診断の基本は問診。初診では、これまでにどんな病気や手術をしてきたか、今飲んでいる薬は何かを確認する。これは、頻尿や尿もれが過活動膀胱以外の原因によって引き起こされている場合があるからだ。さらに尿トラブルがはじまった時期やどのようなときに起こったのか、今どんな状態で、どのような悩みがあるのかなど、くわしく話を聞く。 自宅で準備しておこう【受診の前からつける排尿日誌】 現在服用している薬や病歴、いつごろから尿トラブルが起こりはじめたかというのは、受診したその場ではすぐに思い返せないこともあるので、事前にメモにまとめておこう。 また、受診前2日間分の「排尿日誌」をつけておくことで、問診の際に現在の状況を医師に正確に伝えることができる。排尿日誌はとくに決められた書式があるわけではないが、起床、就寝時刻、オシッコをした時刻とその量、尿もれがあったかどうか、その日の体調など気になったことを記入しておこう。 尿トラブルを引き起こすその他の疾患 問診で聞かれる内容のひとつに、病歴やこれまでに受けた手術がある。脳梗塞、脳出血、高血圧、糖尿病、パーキンソン病、椎間板ヘルニアなどの病歴があったり、尿失禁、膀胱瘤、子宮がん、直腸がんなどの手術を受けたことがある場合には、初診の問診時に主治医に伝えよう。
中心となるのは、薬物治療 トイレの不安から、短大の常勤講師をあきらめた北見澤洋子さん(仮名、59歳)。 職場には同世代の女性が多いが、トイレの悩みが話題になったことはない。誰にも理解してもらえないツラさから、しだいにイライラしたり、ふさぎこんだりするようになる。 そんなある日、友人の見舞いで訪れた病院で「女性専用泌尿器外来」の文字が。 泌尿器科の外来診療のうち、火曜と木曜の午後が女性患者限定の日になるという。「治したい!」洋子さんの心に、治療に対する思いが湧きあがる。 翌月から、洋子さんは過活動膀胱の薬物治療をスタート。講義にもよりいっそう熱が入るようになる。 膀胱訓練や日常生活の改善も重要 過活動膀胱(OAB)の治療の中心は、洋子さんの例にあるように薬物治療だが、それと並行して行動療法によって症状を改善することも重要だ。生活習慣を見直すことで、日頃の悩みが軽減されたり、薬による治療をより効果的にすることも可能だ。 日常生活の留意点 □ 余分な水分、カフェインは控えめに 余分な水分摂取やコーヒーなどカフェインを多く含む飲み物は、尿意を催しやすい □ 就寝前の水分摂取は控えめに 寝る前に水分を多く摂ると夜間に目覚めやすいので控えよう □ 膀胱訓練を続けよう 2~3時間を目標にトイレを我慢し、トイレの回数を減らしていこう □ 駅などのトイレの場所の確認 急な尿意に対応できる工夫をしよう □ 肥満は大敵 膀胱を支える骨盤底筋によけいな負担がかかる。太っている人は、ダイエットをしよう □ 便秘を解消しよう 便秘症だと、膀胱の機能が不安定になりやすい □ 冷えに注意 夏野菜など、カラダを冷やす食べ物はなるべく避けた方がよい 排尿日誌で診断もスムーズ トイレに行った回数や尿量、尿もれの有無などについて日誌をつけることも役にたつ。自分の症状を知るだけでなく、受診した際に説明するのに便利だ。排尿記録は、過活動膀胱(OAB)の診断と治療におおいに参考になる。 記録すべき事項は、「起床・就寝時刻」「排尿時刻」「尿量」「尿もれの有無」が必須項目で、あとは気になることがあれば、自分で工夫して記入するようにしよう。
なぜ?10分が待てない突然の尿意 「今日は最後まで授業ができるかしら…」 東京都に住む北見澤洋子さん(仮名、59歳)を襲うのは、トイレの不安だ。 50代半ばで市役所を早期退職した後、短大に非常勤講師として再就職。若くはつらつとした短大生に囲まれ、カラダまで若返ったような気分で短大の門をくぐった。 しかし、授業がスタートして間もなく、洋子さんはがく然とする。 「トイレに行きたい!」 講義中に突然、抑えようのない尿意がわき起こったのだ。授業の残り時間はわずか10分。だが待てなかった。いぶかる学生の視線を痛いほど感じながらも授業を中断、トイレに走った。 この日から、洋子さんの突然の尿意との闘いがスタートする。 人生まで変える、トイレの悩み 以前からトイレの回数は多いと自覚していたが、健康のためとマメに水分を摂る習慣があったし、市役所ではいつでもトイレに行けたため、不自然に感じることはなかった。 「新しい環境でストレスを感じているのかも」 そう考えたが、一向に症状は治まらない。しだいに90分の講義だけでなく、片道45分の通勤でさえ不安に襲われるようになった。電車の乗り換え時にはかならずトイレに寄った。講義の帰り、生徒からお茶に誘われても断るしかなかった。 再就職から半年後、短大側から「非常勤ではなく、常勤の講師へ」との打診が。自分の努力が認められたと喜んだのもつかの間、「常勤になったら今より講義数が増える。トイレの悩みがもっと、増える…」。洋子さんは涙を飲んで、不本意な決断を下さなければならなかった。 より良い生活、人生を求めて 洋子さんを苦しめているのは、じつは過活動膀胱(OAB:Overactive Bladder)という病気だ。 現在、日本でこの病気に苦しんでいる患者は40歳以上の男女のじつに8人に1人、12.4%に当たる約810万人と推定されている。 聞きなれない病名だが、最近になって急に患者数が増えた「現代病」ではない。昔から加齢とともに増える病気ではあったが、「年のせいだから」「人に話すのが恥ずかしいから」と患者の多くが医師に相談するのをためらい、重症以外はほとんど治療されていなかった。 高齢化社会を迎え、病気によってできるだけ支障がない日常生活を送るための、「QOL:Quality of Life(生活の質)」という概念が注目を浴びている。トイレの悩みは、より良い人生を送る上で「避けては通れない問題」なのだ。 ■関連記事 女性を悩ます排尿障害やデリケートゾーンの疾患「GSM」とは 日本抗加齢医学会セミナー
その悩み、解決法があります 前編で登場した、北見澤洋子さん(仮名、59歳)。 短大に非常勤講師として採用されてすぐ、講義中なのに「トイレに行きたい!」という衝動にかられる。 短大側から常勤講師の就任を打診されたが、トイレの不安から断らざるを得なかったほど。 彼女を悩ますトイレの不安、その正体は過活動膀胱(OAB)。一般には認知率が低いが、既に治療法が確立している病気だ。専門医を受診すれば彼女の悩みも解決されるに違いない。 医療機関での過活動膀胱(OAB)の治療の基本は、薬物療法。おもに使われているのは抗コリン薬だ。過活動膀胱(OAB)の原因となるアセチルコリンという神経伝達物質のはたらきを遮断し、膀胱が不意に収縮する事を防ぐ。従来の薬では、口の中が渇いたり便秘になったりといった副作用が多くみられ継続して薬を飲み続けることが難しかったが、このほど、副作用が少ない薬が新たに登場した。 過活動膀胱(OAB)の治療をはじめたいなら、今がいいチャンスだ。 8割が、ただ悩んでいるだけ 過活動膀胱(OAB)は治療できる病気にもかかわらず、受診している人が少ない。ある調査では、過活動膀胱(OAB)で医療機関を受診しているのは全体で22.7%、そのうち女性の受診率はわずか8%にも満たないのが現状だ。 「歳をとっているので、仕方がない」 「トイレが近いぐらいの症状では受診しにくい…」 理由はさまざまだが、トイレの不安を抱えている人の8割が何もせずにいる状況なのだ。 過活動膀胱(OAB)は、家族や友人にも打ち明けにくく、ひとりで悩んでしまいがちな病気だ。思い切って専門医のドアをたたき、快適な生活を取り戻そう。 治療がいちばんの近道 「そうはいっても、医療機関に行くのは恥ずかしい」 そうした患者の悩みを改善するために、受診のハードルを低くしようと努力している病院もある。 過活動膀胱の治療にあたるのは、泌尿器科医だが、「泌尿器科は、男性も一緒の待合室で行きづらい」という声から、ここ数年で女性泌尿器科が各地に誕生。過活動膀胱や尿失禁など婦人科と泌尿器科にまたがる病気の治療にあたっている。 つらい症状を改善し、以前の生活を取り戻すには、専門医を受診するのがいちばんの近道だ。
過活動膀胱(OAB)ってどんな病気? 私たちは常に、「オシッコをしたい」という尿意をコントロールしながら生活している。 膀胱にためられた尿が一定量を超えると尿意を感じるが、排尿は脳によってコントロールされているため、反射的に尿が出ることはない。 過活動膀胱とは、膀胱を形つくる筋肉(排尿筋)が自分の意志とは無関係に、勝手に収縮してしまう異常事態だ。脳卒中やパーキンソン病などの病気が原因となるケースもあるが、ほとんどは明らかな原因もなく、とつぜん膀胱が収縮して内圧が上がり、少量でも「尿がたまった」と感じてしまうのだ。 膀胱の排尿筋が過度に活動することから「過活動膀胱」、英語ではOAB(オーエービー)またはOveractive Bladder(オーバーアクティブ ブラッダー)と呼ばれる。欧米では多くの患者が治療を受けている。 つらいのは、心 過活動膀胱になると突然強い尿意が起こり、もれそうな感覚になる(尿意切迫感)。その尿意はたびたび起こり、1日に何回もトイレに行くようになる(頻尿)。眠っている間でさえ尿意で目が覚めたりする。なかにはガマンができずにもらしてしまう(切迫性尿失禁)ケースも。 過活動膀胱がつらいのは、ふだんの生活がままならなくなってしまう点だ。 夏場でも飲み物を控える。どこへ行くにもトイレの場所を確認しないと落ち着かない。映画や旅行も心から楽しめない。スーパーのレジに並んでいるときでさえ、とつぜんの尿意に襲われる。「なぜ私がこんな状態に」と自尊心を傷つけられ、精神的に参ってしまうこともある。 たかがオシッコの問題と片づけられない、とても深刻な悩みだ。 あなたも過活動膀胱(OAB)? こうした症状を診断するためには、従来、医療機関で「尿流動態検査」が必要とされていたが、現在はドクターの問診が中心だ。「トイレの回数が多いかも…」という自覚症状にもとづいて診断されるので、患者にとっては肉体面でも気持ちの上でも負担が少ないと思われる。 下記の項目のうち、ひとつでも心当たりのある人は過活動膀胱の可能性ありだ。 チェック □ 尿をする回数が多い(日中8回、夜間1回以上がめやす) □ 急に尿がしたくなって、ガマンが難しいことがある(週1回以上がめやす) □ ガマンできずに、尿をもらすことがある 「オシッコの問題なんて、医療機関で真剣にとりあってくれるのだろうか」そんな不安は無用。過活動膀胱をはじめ排尿の問題については治療方法が確立され、つらい症状を改善する手段がある。 ■関連記事 女性を悩ます排尿障害やデリケートゾーンの疾患「GSM」とは 日本抗加齢医学会セミナー