大麦に多く含まれる、水溶性食物繊維をご存じですか?野菜や豆類に含まれる食物繊維とは違い、水に溶けやすく血糖値の急激な上昇を防ぐ効果が期待されています。 目次 野菜や豆類だけでは十分に摂れない食物繊維がある!? 2種類の食物繊維の違い 「大麦β(ベータ)-グルカン」で期待できる、生活習慣病の予防&ダイエット効果 忙しい朝は、クラッカーやスープで手軽に大麦を!「セカンドミール効果」に期待 野菜や豆類だけでは十分に摂れない食物繊維がある!? 食物繊維が健康の維持に欠かせないことは、常識と言ってもよいほど広く知られています。そのため健康に気をつけている方は、食物繊維の摂取を目的の一つとして、普段から意識的に野菜や豆類を食べているかもしれません。野菜や豆類が、食物繊維が豊富だということは確かです。しかし、実はそれらを食べるだけでは、食物繊維の摂取が十分ではないことをご存じでしょうか? ほとんどの野菜や豆類に多く含まれているのは、2種類ある食物繊維のうちの1種類「不溶性食物繊維」(水に溶けにくいタイプ)です。もう1種類の「水溶性食物繊維」(水に溶けやすいタイプ)は、あまり含まれていません。水溶性食物繊維には、生活習慣病の予防やダイエットをサポートするはたらきがありますが、野菜や豆類だけでは水溶性食物繊維を十分に摂取できません。そこでおすすめの食品が、水溶性食物繊維が豊富な大麦です。 2種類の食物繊維の違い ●不溶性食物繊維 水に溶けにくいタイプで、野菜や豆類などに多く含まれます。 胃の中で水分を吸うと膨張して、満腹感が持続させます。 また、便の量を増やしたり、便を正常な硬さにしたりするはたらきもあります。 ●水溶性食物繊維 水に溶けやすいタイプで、大麦に多く含まれます。 胃の中で水分を吸うと粘り気が増して、消化・吸収を遅らせて食後血糖値が急激に上がるのを抑えます。 また、余分な塩分やコレステロールを体外に排出するはたらきもあります。 大麦は、古くは紀元前6000年頃のメソポタミア文明を発祥とするイネ科の植物で、麦ごはんや麦茶などに用いられる六条大麦や、ビール・焼酎・ウイスキーなどに用いられる二条大麦といった種類があります。日本では稲作が始まった弥生時代に中国から伝わり、昭和の頃は家庭でよく食べられていました。野菜や豆類とともに、市販の麦ごはんや大麦入りの雑穀ごはんなどを食べることで、2種類の食物繊維をバランスよく摂ることができます。 「大麦β(ベータ)-グルカン」で期待できる、生活習慣病の予防&ダイエット効果 By Craig Nagy (originally posted to Flickr as Barley) [CC BY-SA 2.0], via Wikimedia Commons 大麦に含まれる水溶性食物繊維「大麦β(ベータ)-グルカン」には、食後に血糖値が急上昇するのを抑えるはたらきがあります。血糖値が急激に上がると、血糖値を下げるインスリンというホルモンが分泌されます。インスリンは、糖や脂肪を内臓脂肪としてためこむはたらきがあるので、食後の血糖値の上昇を抑えることで、内臓脂肪がつきにくくなります。さらに、大麦β-グルカンには内臓脂肪を減らす作用もあり、ダイエット効果が期待できます。そのため大麦は、肥満や動脈硬化、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病が気になる方やその家族、ダイエットを考えている方にうれしい食品だと言えるでしょう。 食べてうれしい大麦パワー! ●食後の血糖値の上昇を抑える ●心臓病のリスクを下げる ●コレステロール値を低下させる ●内臓脂肪を減らす ●腸のはたらきを正常に保つ ●便秘を改善させる …など 忙しい朝は、クラッカーやスープで手軽に大麦を!「セカンドミール効果」に期待 食物繊維を1日の最初の食事(ファーストミール)で摂ると、次にとった食事(セカンドミール)の後の血糖値の上昇を抑えることは、「セカンドミール効果」として知られています。食後の血糖値の上昇を抑える大麦のはたらきをより効果的に生かすには、セカンドミール効果を期待して、できれば朝食として食べるのがおすすめです。それにより昼食、さらには夕食後の血糖値の上昇をやわらげることができます。大麦を含んだクラッカーやスープ、グラノーラなどを利用すれば、忙しい朝でも手軽に大麦を食事に取り入れることができます。毎日の朝食に、香ばしくておいしい大麦を、ぜひ取り入れてみましょう。 公開日:2015/09/14
食物繊維自体は、エネルギーとして利用できないし、栄養もあまり期待できません。そういった意味では、ビタミンなどのように「1日○g食べなさい!」という摂取目安量は決まっていませんが、食物繊維が不足していると、便で分かるようです。 目次 食物繊維、摂っていますか? 食物繊維のはたらき 食物繊維はどんなものに含まれる? 食物繊維、摂っていますか? かつて、日本人の食事は麦飯にみそ汁と漬物、煮物くらいの献立だったが、戦後の高度成長のもと、肉や魚、卵、乳製品などが大幅に取り入れられ、食の欧米化が進んだ。 そのなかで食物繊維は、栄養価も低く、消化・吸収も悪いため、不要なものだと思われてきたのだが、1970年代になって、イギリスのバーキット博士により、肥満や糖尿病、心臓病、大腸がんなどの病気は食物繊維不足から起こるのではないか、と発表されたのである。 それ以来、食物繊維を見なおす動きが高まったのだ。 1日に必要な量は、どのくらい? 食物繊維自体は、エネルギーとして利用できないし、栄養もあまり期待できない。そういった意味では、ビタミンなどのように「1日○g食べなさい!」という摂取目安量は決まっていないが、ただ食物繊維が不足していると、便で分かる。 食物繊維が足りている便は? 太くて柔らかく、水に浮き、においもあまりしない便が出ていれば大丈夫。硬くてコロコロした便が出るようでは、食物繊維は足りない。 ちなみに、生活習慣病にかかる人が少ないアフリカ人は食物繊維を豊富に摂るため、その便は理想的なようだ。 ■食物繊維を多く摂っているアフリカ人と、都会に住み欧米風の食事を摂っているイギリス人の便の比較 イギリス人 アフリカ人 1回の量 約100g約450g 形状 硬くて細く、くさい太くて柔らかく、におわない 排泄するまでの時間 平均3日平均1日 食物繊維のはたらき 食物繊維は消化されない成分。つまり、口から入ってもそのまま便になって体外に排出されるだけである。一見不要に思われがちだが、それが体内ですばらしいはたらきをするのである。 食物繊維の主なはたらき ●便の量を増やして、腸内の通過を早める 便は腸内で長時間留まると、大腸がんなどの原因になる。食物繊維は便のかさを増やし、排便をスムーズにする役割がある ●余分なコレステロールを排出する 食物繊維は、コレステロールが体内で吸収されるのを防ぎ、また消化液の胆汁酸を抱き込んで体外に排泄されるため、血中コレステロール値が改善される ●胃内で膨らんで満腹感をもたらす 繊維が水を吸収して膨らむので、満腹感をもたらし、胃内の滞留時間も延びるので腹もちがよく、食べ過ぎを抑えることができる 食物繊維はどんなものに含まれる? 食物繊維というと、セロリやごぼうのようになにか筋のようなものが浮かびやすい。でも、必ずしも繊維ではなくもっとミクロなレベルでの食物繊維までみると、水溶性・不溶性などさまざまな種類があり、はたらきも違う。 なかでも海藻に含まれる繊維・アルギン酸は水溶性で、塩分を体外に排出したり、血中コレステロールを低下させるはたらきがある。そのほかの食品を以下にまとめた。 食物繊維のはたらきと含まれる食品 ■不溶性繊維 主な食物繊維の種類 含まれる食品 主な作用 セルロース 穀類、豆類、いも、野菜、果物大腸内で水分を吸収して、便のかさを大きくして柔らかさを保ち、腸内の通過時間を早めて便秘を解消する。 ヘミセルロース 穀類、豆類、野菜 リグニン 穀類、豆類、根菜類他の食物繊維に影響を与え、食べ物の消化率を下げる。胆汁酸を吸着するほか、便の腸内通過を早めるはたらきもする。 ■水溶性繊維 主な食物繊維の種類 含まれる食品 主な作用 ペクチン 果物、野菜、いも、豆類小腸内で栄養素やコレステロールの吸収に影響を及ぼし、胆汁酸を吸着して再吸収を防ぐので、血中コレステロールを下げるはたらきがある。 グルコマンナン こんにゃく、さといも アルギン酸 こんぶ、わかめなどの海藻類 公開日:2002年3月18日
食物繊維を豊富に含むため、りんごには整腸作用があると言われています。 おいしくて、お腹にやさしい「りんご」の食べ方は? 目次 食物繊維ペクチンが腸を整える 便秘、下痢のときに効果的な食べ方は りんごの酸っぱさは、疲労回復の元になる 食物繊維ペクチンが腸を整える りんごは食物繊維の一種ペクチンが豊富に含まれている。この食物繊維には腸を整える作用があり、便秘にも下痢にも効くといわれている。 また、食物繊維は余分なコレステロールや食品添加物などを吸着させ、便と一緒に体外に排出する作用もある。このおかげで、動脈硬化や大腸がんなど生活習慣病を防ぐこともできる。 糖質を含むので、食べ過ぎには注意しないといけないが、忙しい朝、朝食代わりに活用することができる果物だ。 便秘、下痢のときに効果的な食べ方は 食物繊維ペクチンは、皮に多く含まれているため、できれば皮ごと食べたいもの。皮を利用するときは、無農薬、減農薬のものを選び、たわしでよく洗う。それでも心配な場合は、芯の周りの皮は取り除くようにしよう。 下痢のときはそのまま半分くらいを、すりおろして食べる。便秘のときは丸かじりしてもOKだが、即効性を考えるならやはり、すりおろしたほうが効果的だ。 りんごの酸っぱさは、疲労回復の元になる りんごの酸っぱさの元は、リンゴ酸やクエン酸という成分。この成分には代謝機能を促進するはたらきがあり、りんごに含まれる糖分とともに、疲労を回復させる作用がある。 また、リンゴは口臭予防にも効果的。果汁で歯をみがいてみよう。 最後に、りんごにはビタミンCを破壊する酵素が含まれているので、サラダなどに利用する際は、レモン汁を振り掛けてから混ぜるようにしよう。 公開日:2001年1月15日
年齢は若くてもお腹の中は老化していませんか?お腹の健康は、腸内ビフィズス菌によって決まってきます。悪玉菌を増やすのは、生活習慣に問題があるようです。 目次 あなたも「ご腸内のお年寄り」? ビフィズス菌が減っていく原因 生活改善+ヨーグルトで若返ろう! あなたも「ご腸内のお年寄り」? ヒトは一生の中で、腸内ビフィズス菌などの善玉菌を失いながら年をとっています。つまり腸内ビフィズス菌の元気さが「お腹年齢」と言うことができるでしょう。お腹の老化をすすめてしまうのが、生活習慣です。下に挙げたような生活習慣のために、年齢は若くてもお腹の中は老化しているという「ご腸内のお年寄り」が増えています。 ビフィズス菌が減っていく原因 赤ちゃんは、母親の体内にいる間、安全な無菌状態です。そして産まれて初めての「オギャー!」から、体の中には細菌がやってきます。初めに入ってきて増えるのが悪玉菌です。しかしその後、善玉菌である腸内ビフィズス菌が、生後3日ほどで腸内で増殖を始め、一気にお腹の中での勢力を伸ばして、悪玉菌から体を守ってくれます。その勢力たるや、ほぼ100%にまでなります。だから赤ちゃんのうんちは、大人ほど強烈な臭いはしないのです。 食生活の乱れ 食事時間のリズムの乱れ、栄養バランスの乱れ。つまり不規則な生活を続け、栄養の偏った食事を続けると、悪玉菌の勢力が拡大します。てきめんにビフィズス菌は減っていきます。 ▼ 肉が多い食事 悪玉菌は肉が大好物です。特に、完全に胃で消化されなかった肉類は、腸で腐敗便となり、悪玉菌の格好のエサになります。たんぱく質やアミノ酸を分解し、悪臭のする有害物質を作り出します。便秘や下痢、肌荒れ、腸炎はもちろん、これらの物質が体中に運ばれ、動脈硬化、高血圧、がんなどの病気の原因にもなります。 ▼ 食物繊維が少ない食事 食物繊維は、お腹の中の腐敗物を吸着し、早く外に出してくれるはたらきをします。それだけではなく、善玉菌が腸内で発酵をおこない、酸を作り出すときの基質となるのです。摂らないでいると善玉菌は減ってきます。 ▼ ストレス さらに影の大敵となるのが、ストレスです。ストレスが自律神経に影響を及ぼすと、胃酸の分泌がおさえられてしまいます。本来、胃はかなりの酸性度で、有害な細菌などを寄せつけないようにしてくれています。また肉などのたんぱく質も消化をよくしてくれます。しかし、それがストレスのせいで阻まれてしまうのです。すると危険な悪玉菌が増えてきます。 人間は年をとってくると、赤ちゃんのような善玉菌いっぱいの腸から、悪玉菌が多い腸になってきます。ビフィズス菌はかなり減少しています。人間の老化と腸内細菌の関係もろいろと研究されていますが、加齢で悪玉菌が増えるのなら、逆に言えば、悪玉菌を増やさないことで腸の老化は遅らせることができるかもしれません。 生活改善+ヨーグルトで若返ろう! 脱・ご腸内のお年寄りの基本が、生活改善なのは言うまでもありませんが、肉食中心など食生活が欧米化した結果なら、欧米風に対処する食品の方も取り入れましょう。それがヨーグルトです。肉だけではなく、善玉菌を増やすはたらきのあるヨーグルトも摂ってこそ、上手な欧米風の食生活と言えます。もちろん、和食中心の人もヨーグルトをプラスすることで、さらに若々しい腸になるでしょう。
食物繊維が約34%含まれているココア 食物繊維には吸着力があり、小腸で胆汁酸をくっつけて体外に排出してくれます。胆汁酸が減ると、肝臓は不足した分のコレステロールを血液中から集めます。それを胆のうに送り胆汁酸をつくるのです。その結果、血液中のコレステロールが減少します。 ココアには、リグニンとよばれる食物繊維が約34%も含まれています。他の食品と比べてかなり高い含有量です。また、ココアの場合、お茶やコーヒーのように煮立てて飲むのではなく溶かして全部飲むので、食物繊維を丸ごと摂取できます。 従って、たくさんの食物繊維を摂取することができ、血液中のコレステロールを減少させるので、動脈硬化を予防するといわれています。 精神をリラックスさせ集中力を高めるテオブロミンも含む また、ココアにはテオブロミンという成分も含まれています。テオブロミンは精神のリラックスや集中力を促進させる作用を身体にもたらします。さらにテオブロミンは、「健脳効果」も発揮するという報告もあります。 日本医科大学生理学教室の品川嘉也氏の調査では、女子大生200人を被験者として、チョコレートを食べた場合と食べない場合の英単語の記憶実験をしたところ、チョコレートを食べたグループの方が解答率が高いという結果が出ています。
SDFの高い粘ちゅう性が結果的に血糖の上昇を抑える SDF(水溶性食物繊維)である、ペクチンやグアーガムなどを多く含む食事を摂取すると、その後の血糖の上昇が抑制されます。また同時にインシュリンの分泌も抑えられます。 動物実験では、SDFを投与すると胃から十二指腸への食物の移動速度、でんぷんの分解速度および、グルコースの吸収速度が低下することが認められました。 SDFの持つ高い粘ちゅう性によって加水分解酵素とでんぷんの接触が妨げられ、でんぷんの分解速度が遅くなるとともに、分解により生じたグルコースの拡散が低下します。このため小腸上皮細胞でのグルコースの吸収が遅くなり、血糖の上昇が抑えられるというわけです。 糖尿病の食事療法に好適 糖尿病患者の場合、血糖の上昇が抑制されるのが理想的なので、食物繊維によるこの効果は、食事による血糖の管理上とても大切なこととなります。 同じカロリーの食品を取っても、食物繊維を多く含んでいれば、糖の吸収が抑えられるので好都合です。 例えば100kcalのスパゲティとパンを食べた場合、SDFの多い前者の方が血糖の上がり方は低いのです。 各食品について、食後血糖値の上昇の程度を見た研究もあります。 「グリセミック・インデックス」と呼ばれ、糖尿病の栄養指導に使われています。
善玉菌と悪玉菌 腸には、100種類100兆個といわれる腸内細菌が住んでいます。体に良いはたらきをする善玉菌といわれるのは乳酸菌群のビフィズス菌、乳酸桿菌(にゅうさんかんきん)。逆に、大腸菌、クロストリジウムなどは悪玉菌と呼ばれています。 食物繊維には善玉菌であるビフィズス菌を増やすはたらきがあります。 乳酸菌群は腸内を酸性にし、外からの有害な菌をシャットアウトしてくれたり、免疫力を高めてくれるほか、食物中のたんぱく質を分解し、インドール、フェノール、アンモニアなどの有害物質を産生させる悪玉菌を微妙なバランスで抑えています。 また、SDF(水溶性食物繊維)は、細菌による発酵の基質として使われます。発酵によって生成する短鎖脂肪酸は、大腸の上皮細胞の重要なエネルギー源になっており、大腸の機能維持に重要だと考えられています。
そしゃく回数を増やし、ゆっくり食べると満腹感 穀物や野菜、海藻類など食物繊維の豊富な食品は硬く、かみ砕かなければならないものが多くあります。そのため、必然的にそしゃくの回数が多くなり、早食いを防止することができます。ゆっくり食べることで満腹感を感じることができます。またそしゃく回数が増えるとだ液の分泌も盛んになり望ましい状況となります。 かさ効果 加えて、食物繊維には「かさ効果」というものがあります。 食物繊維は、人間の消化酵素では加水分解されない食品中の難消化性成分の総体、と定義されています。つまり、体内でほとんど消化されずに便とともに排せつされるわけです。従って、裏ごしやジュースにすると、食物中の繊維成分を取り除くことになり、当然食物繊維の量も減ってきます。つまり、かさの減少とともに食物繊維は減ってしまうのです。 満腹感との関連で考えてみます。例えば、リンゴを生で食べた場合と、裏ごししたもの、及びジュースにしたものの3種類で試してみます。すると満腹感はジュースより裏ごしが、裏ごしよりは生で食べたほうが高いのです。このように食物繊維の含有量が高まるにつれて、満腹感は増大する傾向にあります。 これを利用して肥満者の減量などに食物繊維の多い食べ物を利用することが多くあります。
微量栄養素の吸収率低下 昔から食物繊維の取り過ぎは有害だと考えられてきました。現在もさまざまな議論が行われていますが、次のようなマイナス効果も考えられます。 食物繊維は栄養素を吸着し、吸収を阻害します。そのため、食物繊維の過剰摂取は微量栄養素の無機質やビタミンの吸収率を低下させます。 特に、鉄・銅・亜鉛などは影響を受けやすく、実際に全粒穀物を食べている中近東地域の人には亜鉛欠乏症が報告されています。 大人の場合は極端に過度の食物繊維摂取をしない限り問題はありません。 ただ、幼児や成長期の子供あるいは高齢者で、もともとの鉄・カルシウム・亜鉛などの無機質の摂取が少ないにもかかわらず食物繊維の摂取が多い場合は注意が必要です。 栄養素の消化率低下 食物繊維は栄養素の消化率を低下させることが知られています。食物繊維を多量に摂取すると、脂質やたんぱく質が便中に多く排出されてしまうわけです。 消化率の低下といえどもそのエネルギーの損失はわずかなので、普通の食生活では問題はありませんが、エネルギー摂取量が極端に少ない場合は問題です。
腸内細菌のはたらき 食物繊維の定義は「人の消化酵素では加水分解されない食品中の難消化性成分の総体」です。 しかし摂取した食物繊維が体内で全く分解されないわけではありません。消化酵素によって分解されなかった食物繊維もその一部は、大腸で腸内細菌によって発酵させられます。 繊維の種類によってはその後かなり分解されるものもあります。 例を挙げると、グルコマンナンでは84~99%、ペクチンは70~90%、寒天は21~28%、セルロースの粉末では23%が腸内細菌によって分解されます。 発酵の産物として、酪酸やプロピオン酸などの短鎖脂肪酸が生成し、また生成した二酸化炭素、水素、メタンなどが腸内ガスとなります。 これらの成分は腸の機能に直接影響を与えるだけではなく、一部は吸収され、エネルギー源として利用されるのです。 海藻などがノンカロリーとして扱われる訳 糖質の利用エネルギーは約4kcalといわれますが、難消化性多糖類については消化率が正しく算定できないため、その利用エネルギーは明らかにされていません。 食物繊維を多く含む海藻などがノンカロリーとして扱われるのはこのためです。 腸内で発酵され、その生成物が吸収されてエネルギー源となる繊維も、摂取利用が少ないのでその利用エネルギーはあまり問題にされません。
繊維量の測定法 同じ食物中でも食物繊維量と粗繊維量が異なることで分かるように、今までにさまざまな繊維量の測定法が検討されてきました。 AOAC(Association of Official Analytical Chemists)の定量法 食品を1.25%の硫酸と水酸化ナトリウムの溶液で順次分解処理した後に残った有機物量を測ります デタージェント・ファイバー(DETERGENT FIBER )法 ラウリル硫酸ナトリウムを主剤とした溶液で食品の細胞内容物を洗い流して測定する方法(NDF法)と、酸性デタージェントと溶液を用いて沸騰させ、残渣を測定する(ADF法)があります。 多糖類分別定量法 食品中の多糖類を分別し各区分の個々の糖について測定するという、分別と定量を組み合わせた方法です。 酵素重量法 脱脂した食品を糖質分解酵素とたんぱく質分解酵素によって処理し、残った有機成分の量を定量する方法です。 従来は1.の方法が世界共通の方式として採用されていましたが、現在公定法として広く使われている方法は4.の酵素重量法です。この方法によって測定された結果が日本食品食物繊維成分表にまとめられています。
100g中に含まれる食物繊維の多い食物 1位 キクラゲ黒(74.2g) 2位 干しヒジキ(54.9g) 3位 干しシイタケ(43.4g) 4位 乾燥もののカンピョウ(25.8g) 5位 インゲン豆(19.8g) 6位 乾燥ものの切り干し大根(17.9g) 7位 きな粉(17.1g) 8位 乾燥ものの小豆(16.0g) 9位 乾燥ものの大豆(15.0g) 10位 干し柿(10.8g) (カッコ内は100g中の食物繊維の量) 常用量から見た場合 しかし、キクラゲや干しヒジキなどどんなに食物繊維が多いとしても、食べられる量には限界があります。日常の食生活で食べる常用量から換算すると、最も食物繊維を含む食べ物のベスト10は以下のようになります。 1位 糸引き納豆(50g中4.8g) 2位 干しソバ(100g中4.7g)/おから(50g中4.7g) 4位 甘栗(60g中4.2g) 5位 インゲン豆(19.8g) 6位 トウモロコシ(200g中4.0g)/インゲン豆(乾燥)(20g中4.0g) 8位 オートミール(50g中3.8g) 9位 小豆(乾燥)(20g中3.2g) 10位 ポテトチップ(90g中3.1g) (注)カッコ内は一人分の一日に食べる目安量の中の食物繊維量を示しています。
成長を遅らせる物質の毒性を抑制 大量の水溶性色素(赤色2号)や、グルコアスコルビン酸やサイクラミン酸ナトリウムなどをラットに投与すると、成長が遅れたり、成長が抑制されます。 しかし、同時に食物繊維を与えると成長が回復します。これは食物繊維が、ラットの成長を遅らせる物質の毒性を抑制していると考えられます。 この効果は水溶性でも非水溶性食物繊維でも同様に見られます。 効果がない場合もある しかし、食物繊維のすべてが有害な物質の毒性を抑制するわけではありません。全く効果がない場合もありますし、少量でも吸収されて毒性を示すような物質には食物繊維の毒性抑制効果は見られません。 抑制効果が見られるのは、それ自身の毒性が低く、比較的大量に与えた場合にのみその毒性を示す物質に限られます。 また吸収されてしまった後では、食物繊維の毒性抑制効果は表れません。 吸着作用が抑制効果を発揮? これらのはたらきについての原理はまだ明らかではありませんが、消化管内で食物繊維がこれらの有害物質を吸着することによって、その毒性を抑制しているのではと考えられています。 私たちの食生活に入り込んでくる化学物質に対しても、食物繊維はその吸着作用で有害物質を抑制していると想像されます。
食物繊維とコレステロールの関係 食物繊維を多く摂取している人は、その摂取量が少ない人と比べ、血清コレステロール値が低いことが疫学的に知られています。 ペクチン、グアーガム、コンニャクマンナン、大麦のβ-グルカンなどのSDF(水溶性食物繊維)は血清コレステロールの上昇を抑制する効果を持っています。このような性質を持つ食物繊維には「水溶性で水に溶けると大きな粘性を示す」という共通性があり、セルロースなどのIDF(不溶性食物繊維)にはこのような効果はありません。 また、高コレステロール飼料にSDFを添加して動物に与えると、胆汁酸やコレステロールの排泄量が多くなり、コレステロール系の胆石の減少が見られます。これはSDFが胆汁酸と結合することでコレステロールのミセル化を阻害するからです。 SDF(水溶性食物繊維)のはたらき また、肝臓から十二指腸に放出された胆汁酸が、腸で再び吸収されることを「腸肝循環」と呼びますが、SDFは胆汁酸の腸肝循環を阻害するはたらきもあります。血清中コレステロールの上昇を抑制する詳しい原理はまだ明らかではありませんが、この作用は動脈硬化や虚血性心疾患の予防に望ましいことです。
消化管各部における食物繊維の影響 1. 口と胃 食物繊維の多い食物を摂取すると、長くかむ必要があり、その結果だ液の分泌が多くなります。 だ液の分泌が多いと口腔内の食物が希釈され、歯こうが形成されにくくなって虫歯が減ります。 また、多量に出ただ液と胃液によって、胃の中の内容物が増え、満腹感がもたらされます。そのため食べる量が減り、エネルギーの過剰摂取が予防できます。 2. 小腸 食物繊維を多く摂取すると、胃から小腸への食物の移動速度が遅くなります。これは食物繊維が消化管内で吸水してふくらみ、体積を増すためです。これにより、摂取した栄養素が希釈されることになります。 SDF(水溶性植物繊維)のような粘着性を持つものは、消化管内で栄養素の拡散を抑制し、コレステロールや胆汁酸のような物質を吸収します。 こうしたことが重なり、結果的に栄養素の吸収が遅くなると考えられています。 3. 大腸 食物繊維を多く摂取すると、食物の消化管の通過時間が短くなるとともに、便の量が増加します。 また、食物繊維によって腸内細菌が増殖されたり、大腸の細胞のエネルギーを作り出す手伝いもします。さらに、便の水分を保持し容積を増やして便秘を予防する作用もある上、それらの相互作用で大腸の病気や大腸がんを防ぐという効果もあります。 消化管各部における食物繊維の影響 部位 消化機能に対する影響 口 だ液分泌の促進 胃 内容物の希釈、滞留時間の延長 小腸 内容物の希釈、吸収の遅延、胆汁酸の吸着 大腸 内容物の希釈、腸内細菌の増殖、発酵の基質(有機酸の生成材料)、水分の保持、陽イオンの結合、便の軟化、便容積の増加、便の滞留防止
食物繊維の8つのはたらき 食物繊維は消化管全般に作用しますが、その作用は食物繊維の状態、特に水溶性の食物繊維(SDF)か、非水溶性の食物繊維(IDF)かでも異なってきます。 さまざまなはたらきをする食物繊維ですが、そのはたらきを簡単に整理すると、 そしゃくの回数を増やす 消化管運動を活発にする 食物の腸内通過時間を短縮する 食物成分の消化吸収能を低下させる 腸肝循環する胆汁酸を減少させる 腸内細菌を変動させる 便容量を増大させる 腸内圧および腹圧を低下させる などとなります。 食物繊維の4つの性質 それらのはたらきを起こす元となる食物繊維の性質には主に以下の4つのものがあります。 保水性 食物繊維がその組織のなかにどれだけの水分を含むことができるかを示します。 粘ちゅう性 ペクチンやカラギーナンのような水溶性食物繊維(SDF)は、水を含むと極めて粘着度の高い溶液になる性質を持っています。 吸着性 IDF、SDF共にイオン結合や疎(そ)水結合などによって、胆汁酸を始めとするさまざまな物質を吸着する性質を持っています。 イオン交換能 分子中にウロン酸を持つペクチンや硫酸基を持つ海藻多糖類のような多糖では、これらの基が多価の陰イオンとなっているので、カルシウムのような陽イオンと交換能を持ちます。
食物繊維が少ないと便秘になる 食物を体内で消化していった残りが便として排出されます。この残りの元となるのが、消化液で分解されない繊維質(食物繊維)です。そのため、繊維分を多く含んだ食物を食べると、便の量も増えることになります。 また、食物繊維には保水性とゲル形成能という特性があります。これが便の量を増やし、便の硬さを正常にし、腸管内通過時間を短くするはたらきを持っています。 従って、繊維の多い食物を食べれば、便の形が大きく柔らかくなります。 反対に繊維の少ない便は保水力がないために、硬くコチコチになります。 そのため大腸でもスムーズに便を押し出せず、停滞が起こって便秘になってしまうわけです。 痔(じ)と大腸がん 便秘になると、 いぼ痔(直腸と肛門の境目の静脈がうっ血して拡大し、静脈りゅうになる) 切れ痔(便が固すぎて排便のときに肛門の出口に近い所が切れてしまう) などの痔を引き起こしたり、発がん物質が腸の中に長くとどまり、大腸がんなどを引き起こす原因になるともいわれています。 便の状態には気をつけたいものです。 アフリカ原住民の一日の大便量は500g 摂取する食物の中に食物繊維が少ないと、結腸がんや憩室症など大腸の病気が発生しやすくなるということは、疫学的に明らかになっています。 これらの病気はアフリカの農村に住む原住民には極めてまれな病気ですが、北欧人や北米人には普通に見られる病気です。 アフリカの原住民は食物繊維の摂取量が多く、1日の便の量はおよそ500g。一方、北欧人や北米人の便は1日100g程度です。 これらの事実は食物繊維の摂取量と大腸の病気の発生とに強い相関関係があることを示しています。 このため便の量は多い方が大腸の病気になる確率が低くなるので良いと考えられています。
日本人の摂取畳は減少傾向 食物繊維とは、つまりは消化されないもの。 消化されないものを多く食べるというのは非効率と考えてしまいがちですが、実はそうではありません。 まず、食物繊維を取ると、適度な水分に富んだ便が大量にできます。腸の中で不必要に滞することなく、食べた物は約24時間で体外へ排出されます。 この間にコレステロールや余分な糖、発がん物質などを吸収し、体内に吸収されるのを防ぎます。 生活習慣病の予防には理想的な役割を果たすのです。 しかし、最近では食生活の欧米化で、肉や乳製品の摂取が増え、食物繊維の摂取量は減ってきています。 ちなみに日本人の1日当たりの食物繊維摂取量は、昭和30年(1955年)に22g、昭和60 年には17.3gと23%も滅少し、現在では15g程度まで減っていると言われています。 食物繊維の目標摂取量は20~25g 食物繊維の所要量はまだ決定されていませんが、目標摂取量は1日当たり20~25g、カロリーでいうと1,000kcal当たり10gという計算です。 ただ、年齢や摂取する食物繊維の種類、他の食物の種類と量、排便習慣、生活習慣の違いによっても摂取量は異なって来ます。 アメリカでは便量や消化管通過時間を正しく保つために、1,000kcal当たり10~18g、1日当たり20~30gが望ましいとされています。 私たちがよく口にする食べ物で考えますと、ヒジキ、ゴボウ、ホウレンソウ、グリンピース、リンゴなどに繊維が多く含まれています。
2つのタイプの特徴 食物繊維は、水に溶けにくいタイプと、溶けるタイプに分かれます。 不溶性食物繊維 IDF (water-insoluble dietary fiber) 植物の細胞壁をつくっている成分、主に穀物では「リグニン」「セルロース」「ヘミセルロース」など「糖」がたくさんつながった構造で、水に溶けません。 水溶性食物繊維 SDF(water-soluble dietary fiber) 植物の細胞の中に貯蔵されたり、植物が分泌する成分に含まれ、果物や、ニンジンなどの野菜に多く含まれる「ペクチン」やコンニャクに含まれる「マンナン」、海藻類に含まれる「アルギン酸」などが知られています。 やはり「糖」がたくさんつながっていますが、構造の違いで水溶性という特徴があります。 食物繊維の分類と主な成分 タイプ 分類 主な成分 主な起源 不溶性 細胞壁構成物質 セルロース β-D-グルカン 植物性食品一般 ヘミセルロース(非セルロース多糖) キシラン マンナンガラクタン 植物細胞壁 ペクチン(不溶性) ガラクツロナン 未熟野菜、果実 リグニン 芳香族炭化水素 植物性食品一般 キチン ポリグルコサミン エビ、カニの外皮キノコ類の細胞壁 水溶性 非構造性物質 ペクチン ガラクツロナン 野菜、果実 植物ガム ポリウロニド アラビアガム 粘質多糖類 ガラクトマンナングルコマンナン グアーガム種子 コンニャク 海藻多糖類 アルギン酸カラギーナン コンブ、アラメ 紅藻類 化学修飾多糖類 カルボキシメチルセルロースポリデキストロース 増粘剤 出典:「食品指導の ABC」日本医師会刊 SDFの方が効果が大きい IDFは水分を吸収して便を柔らかくし、消化管を通過する時間を短くします。 SDFはIDFよりさらに水を吸収して膨らむうえ、保水力が優れているためさらに強い効果を示します。 また、SDFは胃内滞留時間が長く、耐糖能の改善、インシュリン分泌の節約、コレステロール吸収の低下、体内コレステロール濃度の正常化をもたらす作用があるため、IDFよりもさらに多く取ることが望ましいとされています。
食物繊維とは? 「食物繊維」は、糖質やたんぱく質のように一定の構造を持った物質に対して与えられた名称ではありません。 脂質と同じようにある共通の性質を持つ物質に与えられた言葉です。 定義としては、「人の消化酵素では加水分解されない食品中の難消化性成分の総体」となります。 代表的なものとしては、植物に含まれるセルロース、ペクチン、動物に含まれるキチンなどがあります。 老化したでんぷんも食物繊維 でんぷんは消化されやすい糖質として知られています。アミラーゼによって分解されるため、普通は食物繊維に含めません。 しかし、老化したでんぷんなどはアミラーゼによる消化に強い抵抗性を示すため、難消化性の食物繊維とみなされます。 ほかにも脂質のロウ、食品の加工や保存中に起きるアミノカルボニル反応によって生じる成分なども難消化性の成分です。 甘味料としてよく使われるオリゴ糖なども同じ難消化性の食物繊維に含まれます。 このように食物繊維というとかなり広い範囲にわたりますが、人の消化酵素では分解されないというのが共通の性質です。
昔は無用、今は優れもの 昔、食物繊維は消化吸収されないので何の価値もないと思われていました。 しかし、食物繊維は心臓疾患だけでなく、糖尿病などの予防にも効果があることが分かっています。 糖尿病、心臓疾患を予防 1日の食物繊維摂取量が30gの人は、15gの人に比べて、心臓発作に悩む率が3分の1という調査結果もあります。 糖尿病の予防にも効果があります。食物繊維は胃の中に滞留する時間が長いので、消化吸収のスピードが遅くなり、血糖値の変動幅を少なくするからです。 心臓疾患の予防にもなるという食物繊維をもっとたくさん摂取する必要があります。
崩れた常識「エネルギー・ゼロ」 食物繊維は人間の体内では消化・吸収されないことから、エネルギー量はゼロというのが常識となっています。 食品に含まれる各種の栄養素が消化・吸収された後に残った繊維質は、そのまま体外に排出されるだけというのがこれまでの通説でした。しかし最近、わずかでもエネルギー源になっているのではないかという研究が注目を集めています。 大腸菌の栄養源が食物繊維 食物は胃から小腸を通過して大腸にたどり着くまでに、大半の栄養成分は消化・吸収されています。残った食物(カス)の中から水分を吸収し、大便として排出するのが大腸の役割ですが、その時のエネルギー源として活躍するのが、大腸菌が作る酢酸やプロピオン酸、酪酸などです。 従って、大腸菌が活発であれば便秘は起こらないということですが、この大腸菌が栄養源としているのが食物繊維なのです。 食物繊維は大腸菌によって分解・発酵しますが、この発酵物(酢酸や酪酸など)が吸収され、代謝されてエネルギーを作り出しているというのです。これまでの研究結果によると、1~2kcal/gと見られています。 食物繊維が私たちの体にどんな作用を及ぼしているのか、まだまだ分かっていないことがたくさんありそうです。
LDLコレステロールを減少させる 食物繊維の多い食品はがん、心臓疾患、糖尿病などの予防に役立つほか、血中コレステロールを下げる作用もあります。 食物繊維を摂っても、体内では消化も吸収もされず、そのまま腸の中へ排出されます。その時に、コレステロールや胆汁酸を吸着します。それらを一緒に排出するため、LDLコレステロールが減少するのです。 食物繊維には水溶性と不溶性がありますが、血中コレステロールの降下には水溶性食物繊維が優れています。特に水溶性のペクチンが有効です。セルロースなどの多いゴボウやセロリより、ペクチンが多いミカンなどを取る方が効果があります。 そこで、血中コレステロールの上昇を抑える食品として注目されているのが、大豆及びその加工品、魚類、植物油、ごまやクルミなどの種実類の外、食物繊維を多量に含む穀物、野菜、芋、きのこ、果実などの食品です。
未消化の効用 便秘に効く、ダイエットに良い、さらには発がん物質や余分な脂肪を体外に排出してくれるといったことから、食物繊維がブームになっています。 長い間、邪魔物扱いをされて来たのに、急に人気が出てきたのは、食物繊維にはさまざまな効果があることが分かったからです。 便秘に効くというのは、大腸内で未消化の食物繊維が便の量を増やし、腸壁を刺激することから便通を良くするためです。 また、食物繊維は人間の体内では消化吸収されないために、胃の中の滞留時間が長くなります。当然、腹もちがいいわけですから、過食が避けられます。 同時に、胃の中のpHが低下し、食物繊維に結合している鉄やカルシウムなどが小腸で吸収されやすくなります。 さらに食物繊維は血液中のコレステロールを低下させるはたらきを持っていることも確認されています。 食物繊維の多くは、腸内細菌の栄養源となりますが、その際に、体に有用なビフィズス菌を増やすということも分かっています。 何回もかむ効用 食物繊維の効用として見逃せないのが、そしゃくを繰り返すことによって歯や歯茎、あごの力が強くなるという点です。何回もかむことで、だ液の分泌量が増えることから虫歯予防にもなります。 さらに、そしゃくは脳の血流を増やし、脳代謝が活発になります。健康な食生活にとって、食物繊維の役割がいかに大きいかが分かります。
必要量の半分も摂取できていない! 食物繊維はどれくらい摂取したらいいのでしょうか。ある調査によると、日本人の食物繊維の摂取量は、60歳以上で平均1日当たり11g、若年成人で約8gでしかありません。 1日に必要とされるのは20~25gといわれていますから、何と半分も摂取できていないというわけです。 豆、芋は食物繊維の宝庫 食品100g中に含まれる食物繊維の量は、精白米に対して、玄米は4倍以上の食物繊維を含みます。食物繊維を多く取るのであれば、ご飯(精白米)よりも食パンです。 ごまにも大量の食物繊維が含まれています。豆類で食物繊維を多く含むのは、いんげん豆、納豆、大豆などです。 芋・デンプン類では、シラタキの3.6g、サツマイモの2.3gが特に目立ちます。 果物では、干しブドウ4.1g、バナナ1.7g、キウイ2.9g、リンゴ1.3gです。 野菜では、ニンジン根3.5g、オクラ4.9g、ホウレンソウ4.3gとなっています。 1日に必要な食物繊維は20~25gですから、食品を上手に組み合わせれば、そう難しいことではありません。