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偏食・肥満や運動不足による酸化ストレスで老け顔や感染症、骨粗しょう症などに注意

偏った食事やタバコ、運動不足、ストレスなどが積み重なっていくと、年の割に老けやすくなり、病気になりやすいといわれています。体内で活性酸素が過剰に溜まって酸化ストレス状態になり、細胞にダメージを与えて劣化させることが原因の1つです。スリーワンクリニック名誉院長の板倉弘重先生に酸化ストレスについて解説してもらいました。

体内にもともとある「抗酸化力」が20代をピークに加齢とともに低下

酸化」とは、呼吸で取り込まれた酸素のほとんどがエネルギーに変えられ、使われない酸素は活性酸素に変えられることをいいます。
活性酸素には、体内に侵入した異物(細菌、ウイルス、アレルゲンなど)を攻撃して排除する免疫機能といったはたらきがあります。
活性酸素が体内で増えすぎると正常な細胞も攻撃するようになります。そのために、抗酸化物質がバランスよく代謝・処理するという「抗酸化力」が体内に備わっています。

しかし、抗酸化力は20代をピークに加齢とともに低下していき、食生活の乱れや喫煙、運動不足、ストレスなども抗酸化力を弱めます。そうなると、体内で活性酸素が増え過ぎて処理しきれなくなり、細胞などを傷つけて酸化ストレス状態になります。

板倉先生によると、「酸化」は体内に取り込まれた酸素の代謝作用なので本来は悪い意味ではありません。体内のバランスが崩れて酸化ストレス状態になることが問題です。

免疫のバランスが崩れて抵抗力が弱くなって感染症やがん、アレルギーになりやすい

酸化ストレス状態が長く続くと、金属が錆びるように体内の細胞が傷つけられていくので、シミやシワが増えやすくなって老化が進みやすくなり、病気になりやすくなります。
たとえば、免疫に関わる血液中の白血球が酸化ストレスによるダメージを受けると、免疫のバランスが崩れて抵抗力(免疫力)が弱くなって感染しやすくなります。
がんに関しては、抵抗力が弱い状態だとがん細胞が正常な細胞を攻撃しやすくなることが発症や悪化に関わるといわれています。アレルギー性の病気にも関わっています。
認知症との関わりでは、脳内の神経細胞や神経伝達物質を傷つけることが考えられます。

酸化LDLは動脈硬化や非アルコール性脂肪肝炎のリスク因子

動脈硬化に関しては原因の1つとして、悪玉のLDLコレステロールが酸化ストレス状態で活性酸素により劣化した酸化LDLに変わってしまいます。さらに過剰に増えて、体内で処理しきれなくなくなることが発症や悪化に関わることが考えられます。
体内で処理しきれなくなった酸化LDLは、血管組織の血管内皮細胞や血管平滑筋細胞などに入り込んで傷つけてしまい、血管内皮の機能障害を起こします。そうすると、血管の拡張作用や弛緩作用が弱まっていき、動脈硬化を発症してくるのです。
また、コレステロールの処理は肝臓の代謝が関わります。代謝が良ければ、古いコレステロールは分解・処理されて胆汁酸になって排泄されます。
しかし、老化や生活習慣の乱れ、運動不足などにより脂肪肝になって肝臓の代謝機能が弱くなると、胆汁酸を処理する能力が低下します。そうすると、処理しきれなくなったコレステロール(酸化LDLなど)が体内の細胞を傷つけるようになるのです。
脂肪肝が悪化することにも酸化ストレスが関わります。そのため、最近は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が問題視されています。

糖尿病の悪化や合併症の発症に注意。AGEsと酸化はお互いに悪の相乗効果を生みだす

糖尿病に関しては、高血糖の状態では活性酸素が多く作られてしまいます。体内でタンパク質や脂質が糖と結びついて糖化という現象が起こり、老化促進物質のAGE(糖化最終生成物)を作り出す過程(過去記事を参照)のなかで活性酸素が多く作られるようになります。
たとえば、糖化によってAGEsがつくられる際に、活性酸素のスーパーオキシドが発生すると、酸化ストレスにより血管系の障害を起こしてしまいます。その結果、合併症の動脈硬化の発生や進行、さらには心筋梗塞や脳梗塞の発症に至ることが問題視されています。
つまり、糖化と酸化はお互いに関わりあい、悪の相乗作用が体内で起こってしまうので、糖尿病の悪化や合併症の発症に関与することが考えられます*1

骨粗しょう症の人も注意、骨が弱くなる可能性あり

酸化ストレスは、骨にも影響を及ぼします。骨強度(骨の折れにくさで骨密度と骨質によって表されます)の低下には、骨質の骨コラーゲンが脆弱になることが関係します。
具体的には、コラーゲンの分子と分子同士をつなぎ止めるコラーゲン架橋(つなぐ橋という意味)が、酸化ストレスの影響により悪玉化した架橋(AGEs架橋)が増えます。そうすると、骨の本来のしなやかさが奪われて折れやすくなるのです*2
骨をつくる骨芽細胞や骨を壊す破骨細胞との骨代謝バランスが崩れていくことも含め、酸化ストレスにより骨折リスクが高くなることがいわれています。

酸化ストレス状態が長く続くと、まだ若いのにシミやシワが多く老けやすくなることや、病気の発症・悪化につながりやすくなります。
酸化を抑える「抗酸化力」を持つようにすることが重要です。その手段として食生活を改善し、抗酸化物質を多く含む栄養素を摂取しましょう。

板倉先生よりワンポイントアドバイス

新型コロナの影響で自宅にこもっていると食生活や運動不足に注意

2020年春は、新型コロナウイルス感染症の影響により、自宅にいることが多くなりました。問題は運動不足です。肥満やメタボに拍車をかけて、活性酸素が過剰になって酸化ストレス状態に陥りやすくなることが考えられます。
酸化ストレス状態かつ基礎疾患を持つ人では抵抗力(免疫力)が落ちているので、新型コロナウイルス感染症になりやすいと考えられます。食生活や運動に注意していきましょう。

  • *1:糖尿病における酸化ストレス生成機構に関する参考文献は「酸化ストレスと健康」:生物試料分析 2009;32(4):247-256
  • *2:骨質とコラーゲン代謝、酸化ストレスに関する参考文献:日本老年医学会雑誌.2013;50:213-217、治療学.2010;44:736-742

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公開日:2020/04/28
監修:スリーワンクリニック名誉院長 板倉弘重先生