脂質異常症(高脂血症)とは血液に含まれる脂肪の量が異常に多い状態のこと。2,000万人以上が患っている生活習慣病のひとつです。脂質異常症(高脂血症)で血液がドロドロになると、動脈硬化を起こし心臓病、脳血管疾患まで引き起こしかねません。脂質異常症(高脂血症)の原因や症状や、予防のための気になる情報をご紹介します。
脂質異常症は、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患になりやすい生活習慣病です。動脈硬化性疾患を予防するために、医師が診療の際に参考にする「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」が日本動脈硬化学会から公表されています。そのなかで、リスクの程度を評価して脂質異常症を改善するための治療指針が提示されています。 目次 脂質異常症の改善目標となる低リスク、中リスク、高リスクを判定 糖尿病、慢性腎臓病、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患があれば高リスク 高リスクのかたはLDLコレステロールとnon-HDLコレステロールの改善が必須です 脂質異常症の改善目標となる低リスク、中リスク、高リスクを判定 医師が診療の際に参考にする「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」(日本動脈硬化学会)では、動脈硬化性疾患を予防するための脂質異常症を診断する基準として、血液検査の総コレステロール値に含まれる悪玉のLDLコレステロール、善玉のHDLコレステロール、および中性脂肪(トリグリセライド)、non-HDLコレステロールのうち、1つでも異常値があれば治療を受けることが推奨されています(「リスク指標が刷新! 脂質異常を再確認」参照)。 10年以内に冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症など心臓に関わる病気です)を発症する確率がわかる評価ツールがあります。 そこで、脂質異常症を改善するための管理目標を設定するために、LDLコレステロールとHDLコレステロール、病歴や家族歴から低リスク、中リスク、高リスクを判定するフローチャートがあります(図1)。 図1:冠動脈疾患予防からみたLDLコレステロール管理目標設定のためのフローチャート(危険因子を用いた簡易版) ■脂質異常症のスクリーニング(LDLコレステロール120mg/dL以上) 冠動脈疾患の既往があるか? 「あり」の場合▼二次予防 「なし」の場合▼▼▼ 以下のいずれかがあるか? 糖尿病(耐糖能異常は含まない) 慢性腎臓病(CKD) 非心原性脳梗塞 末梢動脈疾患(PAD) 「あり」の場合▼高リスク 「なし」の場合▼▼▼ 以下の危険因子の個数をカウントする 喫煙 高血圧 低HDLコレステロール血症 耐糖能異常 早発性冠動脈疾患家族歴(第1度近親者かつ発症時の年齢が男性55歳未満、女性65歳未満 中:家族歴など不明の場合は0個としてカウントする) 性別 年齢 危険因子の個数 分類 男性 40~59歳 0個 低リスク 1個 中リスク 2個以上 高リスク 60~74歳 0個 中リスク 1個 高リスク 2個以上 高リスク 女性 40~59歳 0個 低リスク 1個 低リスク 2個以上 中リスク 60~74歳 0個 中リスク 1個 中リスク 2個以上 高リスク 出典:日本動脈硬化学会(編): 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版. 日本動脈硬化学会, 2017 *日本動脈硬化学会では、冠動脈疾患発症予測アプリWeb版を掲載しています。 糖尿病、慢性腎臓病、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患があれば高リスク 図1のフローチャートでは、まずLDLコレステロール値120mg/dL以上なのかどうか、冠動脈疾患の既往があるかどうかを評価します。 冠動脈疾患がある場合は、生活習慣の是正とともに薬物療法を実施する再発予防(二次予防といいます)の治療が行われます。 次に、糖尿病、慢性腎臓病、非心原性脳梗塞、および末梢動脈疾患の有無があるかどうかを評価します。ある場合は「高リスク」になります。 上記の病気がない場合、喫煙、高血圧、低HDLコレステロール血症、耐糖能異常、早発性冠動脈疾患家族歴のうち危険因子がいくつあるかを評価します。危険因子の数と年齢層別のリスク分類に照らし合わせて、生活習慣の改善を行ったうえで薬物療法の適用を考慮する初発予防(一次予防といいます)という治療管理が行われます。 下記は、低リスク、中リスク、高リスクにもとづいて初発予防(一次予防)ならびに再発予防(二次予防)の治療を行うための脂質管理目標値です(図2)。 図2:リスク区分別脂質管理目標値 治療方針の原則 管理区分 脂質管理目標値(mg/dL) LDLコレステロール non-HDLコレステロール 中性脂肪(トリグリセライド) HDLコレステロール 一次予防まず生活習慣の改善を行った後、薬物療法の適用を考慮する 低リスク 160未満 190未満 150未満 40以上 中リスク 140未満 170未満 高リスク 120未満 150未満 二次予防生活習慣の是正とともに薬物治療を考慮する 冠動脈疾患の既往 100未満(70未満)* 130未満(100未満)* *家族性高コレステロール血症、急性冠症候群の時に考慮する。糖尿病でも他のリスク病態(非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患、慢性腎臓病、メタボリックシンドローム、主要危険因子の重複、喫煙)を合併するときはこれに準ずる。 一次予防における管理目標達成の手段は非薬物療法が基本であるが、低リスクにおいてもLDL-Cが180mg/dL以上の場合は薬物療法を考慮するとともに、家族性高コレステロール血症の可能性を念頭においておくこと。 まずLDL-Cの管理目標値を達成し、その後non-HDLの達成を目指す。 これらの値はあくまでも到達努力目標値であり、一次予防(低・中リスク)においてはLDL-C低下率20~30%、二次予防においてはLDL-C低下率50%以上も目標値となり得る。 高齢者(75歳以上)については、ガイドライン第7章を参照。 出典:日本動脈硬化学会(編): 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版. 日本動脈硬化学会, 2017 高リスクのかたはLDLコレステロールとnon-HDLコレステロールの改善が必須です LDLコレステロールとHDLコレステロールの検査値と、病歴や家族歴を加味して危険因子の数と年齢層に照らし合わせて、動脈硬化によって病気になるリスクを判定できるツールです。 60~74歳でLDLコレステロール値が120mg/dL以上のかたは中リスク以上となります。まずLDLコレステロールの改善目標となる検査値を達成すること、次にnon-HDLコレステロールの管理目標値を目指すことがガイドラインで推奨されています。 また、LDLコレステロール値が120mg/dL以上で冠動脈疾患の既往(病歴という意味です)があるかたは、LDLコレステロールの改善目標値は100mg/dL未満、non-HDLコレステロールの目標値は130mg/dL未満ですが、さらに高リスク病態の糖尿病、慢性腎臓病、非心原性脳梗塞、および末梢動脈疾患がある場合は、LDLコレステロールは70mg/dL未満、non-HDLコレステロールは100mg/dL未満と厳格な改善目標が推奨されました。 ■関連記事 リスク指標が刷新!脂質異常を再確認 10年以内の心筋梗塞などを発症する確率を予測 公開日:2018/11/19 監修:芝浦スリーワンクリニック名誉院長 板倉弘重先生
脂質異常症は、動脈硬化性疾患という心筋梗塞や狭心症など心臓にかかわる病気(冠動脈疾患といいます)や脳梗塞などになりやすい生活習慣病です。診療の際に医師が参考にする「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」(日本動脈硬化学会)では、10年以内に冠動脈疾患を発症する確率をチェックできる「吹田スコア」という評価ツールが推奨されています。 目次 大規模な住民調査の吹田研究から吹田スコアが作成されました 健診データや生活習慣など8項目をスコア化してリスクを評価します 吹田スコアは健康診断の結果でセルフチェック、中リスク以上のかたは要注意です 大規模な住民調査の吹田研究から吹田スコアが作成されました 診療の際に医師が参考にする「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」(日本動脈硬化学会)では、血液検査の脂質値を用いた診断基準(記事1)のほか、10年以内に冠動脈疾患を発症する確率をチェックできる「吹田スコア」が提示されています。 吹田スコアは、吹田研究という大阪府吹田市の市民を対象に10年以上にわたって冠動脈疾患や脳卒中などの病気になった人を10年以上にわたり追跡調査した大規模な集団研究*(コホート研究ともいいます)の結果をもとに作成されたツールです。 *大阪府吹田市の住民で、国立循環器病研究センターで1989年9月~1994年3月に定期健診を受診した30~79歳のうち、冠動脈疾患や脳卒中の既往(病歴という意味です)のある人や検査データに不備のある人などを除いて、冠動脈疾患や脳卒中などの病気が起こるかどうかについて10年以上にわたって追跡調査をしました。 健診データや生活習慣など8項目をスコア化してリスクを評価します 吹田スコアの計算方法は、悪玉のLDLコレステロール、善玉のコレステロールのほか、年齢、性別、喫煙、血圧、耐糖能異常、早発性冠動脈疾患の家族歴の8項目を点数化します。合計点数から冠動脈疾患を10年以内に発症する確率がどのくらいかを知ることができます(図)。 図:吹田スコアを用いた冠動脈疾患の発症予測モデル 以下の危険因子1~8について、あてはまるものを選んでください。「計算する」を押すと合計点が表示されます。 危険因子 変数 点数 1. 年齢 35~44歳 30 45~54歳 38 55~64歳 45 65~69歳 51 70歳以上 53 2. 性別 男性 0 女性 -7 3. 喫煙※1 喫煙者 5 喫煙なし 0 4. 血圧※1(mmHG) 至適血圧:収縮期血圧 120未満 かつ 拡張期血圧 80未満 -7 正常血圧:収縮期血圧 120-129 かつ/または 拡張期血圧 80-84 0 正常高値血圧:収縮期血圧 130-139 かつ/または 拡張期血圧 85-89 0 Ⅰ度高血圧:収縮期血圧 140-159 かつ/または 拡張期血圧 90-99 4 Ⅱ度高血圧:収縮期血圧 160以上 かつ/または 拡張期血圧 100-109以上 6 5. HDLコレステロール 40mg/dL未満 0 40~59mg/dL -5 60mg/dL以上 -6 6. LDLコレステロール 100mg/dL未満 0 100~139mg/dL 5 140~159mg/dL 7 160~179mg/dL 10 180mg/dL以上 11 7. 耐糖能異常 あり 5 なし 0 8. 早発性冠動脈疾患家族歴※2 あり 5 なし 0 ※1:高血圧で現在治療中の場合も現在の数値を入れる。 ただし高血圧治療の場合は非治療と比べて同じ血圧値であれば冠動脈疾患のリスクが高いことを念頭に置いて患者指導をする。 禁煙者については非喫煙として扱う。冠動脈疾患のリスクは禁煙後1年でほぼ半減し、禁煙後15年で非喫煙者と同等になることに留意する。 ※2:第1度近親者かつ発症時の年齢が男性 55歳未満、女性 64歳未満 (1)~(8)の点数の合計 得点 10年以内の冠動脈疾患発症確率 発症確率の範囲 発症確率の中央値 分類 最小値 最大値 35以下 1%未満 1.0% 0.5% 低リスク 36~40 1% 1.3% 1.9% 1.6% 41~45 2% 2.1% 3.1% 2.6% 中リスク 46~50 3% 3.4% 5% 4.2% 51~55 5% 5% 8.1% 6.6% 56~60 9% 8.9% 13% 11% 高リスク 61~65 14% 14% 20.6% 17.3% 66~70 22% 22.4% 26.7% 24.6% 71以上 28%より大きい 28.1% 28.1%以上 出典:日本動脈硬化学会(編): 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版. 日本動脈硬化学会, 2017 吹田スコアは健康診断の結果でセルフチェック、中リスク以上のかたは要注意です 吹田スコアは、冠動脈疾患の発症率を追跡している吹田研究をもとに作成されました。 この研究では、LDLとHDLのコレステロール値を用いて病気の発症について分析しているうえ、LDLコレステロールに関しては100 mg/dL未満、100~139mg/dL、140~159mg/dL、160~179mg/dL、180mg/dL以上の5つに分けて病気の詳細を分析しています。 その研究成果から、10年間において冠動脈疾患を発症する可能性が高いのかどうかを判定するための評価ツールとして、医師が診療で参考にするガイドラインで推奨されています。 吹田スコアは、健康診断の血圧や脂質の検査値を用いてチェックできます。チェックの結果、中リスク以上と判定されたかたは食事や運動など生活習慣の改善や、医療機関に受診するなど注意すべきです。ガイドラインでは、以下のような生活習慣の改善のためのポイントがまとめられています。 ■動脈硬化性疾患予防のための生活習慣の改善 禁煙し、受動喫煙を回避する 過食と身体活動不足に注意し、適正な体重を維持する 肉の脂身、動物脂、鶏卵、果糖を含む加工食品の大量摂取を控える 魚、緑黄色野菜を含めた野菜、海藻、大豆製品、未精製穀類の摂取量を増やす 糖質含有量の少ない果物を適度に摂取する アルコールの過剰摂取を控える 中等度以上の有酸素運動を、毎日合計30分以上を目標に実施する 出典:日本動脈硬化学会(編): 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版. 日本動脈硬化学会, 2017 ■関連記事 リスク指標が刷新!脂質異常を再確認 あなたの動脈硬化のリスクをチェックしよう! 公開日:2018/11/16 監修:芝浦スリーワンクリニック名誉院長 板倉弘重先生
脂質異常症は、血液中のコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)といった脂質のバランスが崩れている状態をいいます。日本動脈硬化学会が公表している動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版では脂質異常症を診断する基準があります。心筋梗塞や狭心症など心臓に関わる病気や、脳梗塞などになりやすいので、健康診断の結果からご自身の状態を把握できるので再確認しましょう。 目次 心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などの動脈硬化性疾患という病気になりやすい脂質異常症 脂質異常症を早期に発見して動脈硬化性疾患のリスクをチェックしよう LDLコレステロール値が正常でもHDLコレステロール値のみが低い患者さんもいます 悪玉のLDLコレステロール:糖尿病や脳卒中、慢性腎臓病などがある人は注意 善玉のHDLコレステロール:減りすぎると脂質異常症が悪化します non-HDLコレステロール:総コレステロール値からHDLコレステロール値を引いた検査値 中性脂肪:増えただけでも動脈硬化のリスクが高くなります LDLコレステロールの改善が最重要 心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などの動脈硬化性疾患という病気になりやすい脂質異常症 脂質異常症はその名のとおり、血液中に溶け込んでいる脂質のうち、からだに良くない悪玉のコレステロールが異常に増えてしまうこと、からだに良い善玉のコレステロールが少なくなることや、中性脂肪(トリグリセライドともいいます)が増えている状態です。 脂質異常症は、冠動脈疾患の心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などの動脈硬化性疾患という病気になりやすい問題のある生活習慣病です。 脂質異常症を早期に発見して動脈硬化性疾患のリスクをチェックしよう 医師が診療する際に参考にする「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」(日本動脈硬化学会)では、動脈硬化性疾患を予防するための脂質異常症を診断する基準として、血液検査の総コレステロール値に含まれる悪玉のLDLコレステロールと善玉のHDLコレステロール、および中性脂肪(トリグリセライド)から判定することが推奨されています。 下記のチェック表で、健康診断の血液検査を用いてセルフチェックができます。 ■脂質異常症の診断基準(空腹時採血)* LDLコレステロール 140mg/dL以上 高LDLコレステロール血症 120~139mg/dL 境界域高LDLコレステロール血症** HDLコレステロール 40mg/dL未満 低HDLコレステロール血症 トリグリセライド 150mg/dL以上 高トリグリセライド血症 Non-HDLコレステロール 170mg/dL以上 高non-HDLコレステロール血症 150~169mg/dL 境界域高non-HDLコレステロール血症** *:10時間以上の絶食を「空腹時」とする。ただし水やお茶などカロリーのない水分の摂取は可とする。 **:スクリーニングで境界域高LDLコレステロール血症、境界域non-HDLコレステロール血症を示した場合は、高リスク病態がないか検討し、治療の必要性を考慮する。 LDLコレステロールはFriedewald式(総コレステロール-HDLコレステロール-トリグリセライド/5)または直接法で求める。 トリグリセライドが400mg/dLや食後採血の場合はnon-HDL(総コレステロール-HDLコレステロール)かLDLコレステロール直接法を使用する。ただしスクリーニング時に高トリグリセライド血症を伴わない場合はLDLコレステロールとの差が+30mg/dLより小さくなる可能性を念頭においてリスクを評価する。 出典:日本動脈硬化学会(編): 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版. 日本動脈硬化学会, 2017 LDLコレステロール値が正常でもHDLコレステロール値のみが低い患者さんもいます 脂質異常症は、動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版の診断基準ではLDLコレステロールやHDLコレステロール、non HDLコレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)の各脂質の検査値のうち1つでも当てはまると診断されます。 LDLコレステロール値が正常でもHDLコレステロール値のみが低い患者さん、トリグリセライド値が高い患者さん、すべて当てはまる患者さんなどがあります。 悪玉のLDLコレステロール:糖尿病や脳卒中、慢性腎臓病などがある人は注意 LDLコレステロールに関しては、増えすぎると体のすみずみに運ばれるコレステロールが増えてしまうことにより、全身の血管壁の内側にコレステロールがたまってしまい、プラーク(血管内壁の垢)ができます。 血管が狭くなることによって全身をめぐる血液の流れが悪くなることにより、動脈硬化性疾患を起こしやすくなるので、「悪玉コレステロール」と呼ばれています。 小型化して血管内の壁の隙間に入りやすくなるような超悪玉化したLDLコレステロールが増えると、プラークが多くできて血管壁が厚くなります。 そうすると、血液の流れがますます悪くなり、動脈硬化性疾患になりやすくなります。診断基準は下記です。 LDLコレステロール値 140ml/dL以上 高LDLコレステロール血症 120~139mg/dL 境界域高LDLコレステロール血症 境界域高LDLコレステロール血症の診断基準に関しては、糖尿病や脳卒中、慢性腎臓病などの病気がある患者さんに、脂質異常症の治療を早く受けてもらうことを目的に設定された目安値となります。 善玉のHDLコレステロール:減りすぎると脂質異常症が悪化します HDLコレステロールは血管壁にたまったコレステロールを回収して肝臓に運ぶ役割を持ちます。減りすぎると、血管の壁の内側にたまったコレステロールが回収されなくなり、脂質異常症が悪化していくのです。 だから、善玉コレステロールといわれているのです。診断基準では、HDLコレステロール値40mg/dL未満は低HDLコレステロール血症という脂質異常症になります。 non-HDLコレステロール:総コレステロール値からHDLコレステロール値を引いた検査値 ガイドライン2017年版では、新たに「non-HDLコレステロール」の基準値が提唱されました。総コレステロール値から善玉のHDLコレステロール値を差し引いた値です。 non-HDLコレステロールは、LDLコレステロールだけでなく、血液中でコレステロールや中性脂肪を運ぶリポタンパクなども含まれているので、総合的に病気のリスクを予測するのに有用とされています。 診断基準値はLDLコレステロールと同様に、高non-HDLコレステロール血症と境界域高non-HDLコレステロールがあります。 non-HDLコレステロール値は、LDLコレステロールの基準値マイナス30mg/dLで設定しています。境界域non-HDLコレステロール血症に該当する場合、糖尿病や脳卒中、慢性腎臓病などの病気といったほかのリスクを含めて介入の必要性を考慮することになります。 下記は、non-HDLコレステロールとLDLコレステロールの診断基準です。 Non-HDLコレステロール 170mg/dL以上 高non-HDLコレステロール血症 150~169mg/dL 境界域高non-HDLコレステロール血症 LDLコレステロール 140mg/dL以上 高LDLコレステロール血症 120~139mg/dL 境界域高LDLコレステロール血症 中性脂肪:増えただけでも動脈硬化のリスクが高くなります 中性脂肪はトリグリセライドといわれています。血液中の中性脂肪が増えることにより、善玉のHDLコレステロールが減少して、悪玉のLDLコレステロールは小型化して超悪玉のLDLコレステロールが増えていくことになります。 つまり、中性脂肪が多くなると、動脈硬化を悪化させてしまう可能性があります。 診断基準では、150mg/dL以上の場合は「高トリグリセライド血症」としています。 また、ガイドライン2017年版では、動脈硬化性疾患の包括的なリスク評価・管理に必要な診療指針が推奨されています。次の記事で具体的に紹介します。 LDLコレステロールの改善が最重要 以前は高脂血症という病名が使われていました。 健康診断の検査値で総コレステロール値がありますが、構成する成分の悪玉のLDLコレステロール、ならびに中性脂肪の検査値が高いことに着目したのが高脂血症という病名です。 最近、善玉のHDLコレステロールが少なくなると、中性脂肪が増えていくことや、LDLコレステロールが小型化して血管の壁の内に入りやすくなる超悪玉化したものが増えることが問題視されるようになりました。現在は、脂質異常症という病名が使われています。 また、治療においてはLDLコレステロールの改善が最も重要ですが、その次にnon-HDLコレステロールの改善が重要になります。 公開日:2018/11/14 監修:芝浦スリーワンクリニック名誉院長 板倉弘重先生
生活習慣病と呼ばれるものには、高血圧、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症などがあります。これらは自身の生活習慣の偏りによって引き起こされますが、そのなかから、生活習慣病と関連する「酸化ストレス」についてご紹介します。 目次 生活習慣病と関連する、酸化ストレスについて 生活習慣病の主体は動脈硬化 肥満によって酸化ストレスが高まる 日々の生活習慣を見直す 生活習慣病と関連する、酸化ストレスについて 生活習慣病は、現代に流行している疾患のひとつです。生活習慣病と呼ばれる代表的なものには、高血圧、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症などがあります。これらは自身の生活習慣の偏りによって引き起こされる疾患です。偏食や運動不足、喫煙や飲酒の習慣、日々のストレスなどのさまざまな要因が関与しています。 そのなかでも生活習慣病に大きく関与しているものに、酸化ストレスというものがあります。生活習慣病と関連する、酸化ストレスとは一体どんなものなのでしょうか。 生活習慣病の主体は動脈硬化 生活習慣病の主な病態は、実は動脈硬化です。動脈硬化を発症する危険因子は、高血圧や糖尿病、脂質異常症のような疾患なのです。これらの疾患は一般的に「生活習慣病」と呼ばれている疾患です。 生活習慣病は日々の生活のなかにさまざまな要因があります。生活習慣だけでなく、遺伝によって発症しやすい人もいます。ですが、生活習慣病の大きな要因として考えられるのはやはり肥満なのです。 動脈硬化の発症には、酸化ストレスと呼ばれる活性酵素による脂質過酸化が主な機序とされています。そこで、この酸化ストレスが生活習慣病の発症に大きく関与している肥満と、何か関係があるのではないかという研究がなされました。 肥満によって酸化ストレスが高まる 研究の結果から、肥満によって活性酵素による脂質過酸化が増加しているということがわかりました。これは、酸化ストレスの高まりを示しているということになります。 また、この研究結果ではBMIのほかにも血圧、血糖、尿酸に関しても酸化ストレスに関与していることがわかりました。すなわち、肥満は血圧、血糖、尿酸のような要因とともに酸化ストレスを高めることで、動脈硬化の発症に大きく影響している可能性があるという結果が得られたのでした。 日々の生活習慣を見直す 生活習慣病と呼ばれている疾患は、初期の自覚症状が気付きにくいものが多いです。症状に気付いたときには、すでにかなり進行していることも珍しくはありません。 食生活の偏りや運動不足に心当たりがある人は、今日から少しずつでも自身の体のことを考えてみるとよいでしょう。また、禁煙や禁酒を希望している人は思い切って病院に相談してみることで、生活習慣の見直しに一歩近づけるかも知れません。 公開日:2016/05/16
自分の血液が「サラサラ」か「ドロドロ」か、意識したことありますか?血液がドロドロと粘っていると体内でスムーズに流れにくくなり、体のあちこちで異常を生じてしまいます。取り返しがつかなくなる前に、手を打ちましょう! 目次 ドロドロ血はなぜ悪い? ドロドロ血の犯人は「脂肪」 血液ドロドロ度チェック ドロドロ血はなぜ悪い? 人の体には血液が流れている。そして、その血液はサラサラなら体のすみずみまでスムーズに流れるのだが、ドロドロと粘っていると流れにくくなる。血液はうまく循環しなくなると、体のあちこちで異常を生じてしまう。その代表が生活習慣病と言われる動脈硬化などだ。 血液には重要な役割があり、どこかに異常が生じたら大変なことになる恐れがあるのだ。 「酸素や栄養素を全身に運ぶ」役割 血液にはさまざまな重要な役割があるが、そのひとつが肺で酸素を取り入れてからポンプ役の心臓に押し出され、全身に酸素や栄養素を運ぶ、というもの。同時に体で不要になった老廃物や二酸化炭素を回収する役割がある。 血液の主な成分 ●血球 赤血球、白血球、血小板などの細胞成分。赤血球は全身に酸素を運搬する役目、白血球は体内に侵入してきた細菌や異物などを処理したり、免疫や抗体をつくるなど、主に体の防衛軍としての役目、血小板は血管が破れた時に止血する役目がある。 ●血漿(けっしょう) 液体成分。90%は水分、あとはたんぱく質や糖質、脂質、無機物質などが含まれる。この脂質に含まれるのが、コレステロールや中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪産、脂溶性物質など。 血管の長さは地球2周半!? 一般的に、血液は体重の13分の1程度あると言われている。体重60kgの人なら4.6リットルもの血液が流れていることになる。そして、全身をめぐっている太い血管や毛細血管をすべてつなぎ合わせると、地球を2周半するほどの長さになるとか。この長さをスムーズに流れるためには、血液はサラサラでなくてはならないのだ! ドロドロ血の犯人は「脂肪」 サラサラ血液をドロドロにしてしまう主な正体は、ご存知の通り「脂質」。血漿に含まれる脂質が、普通より多くなり過ぎる病気を「脂質異常症」と呼んでいるが、なぜドロドロ血がいけないと言われているのだろうか。 いちばん恐れられているのは「動脈硬化」に進行してしまうこと。血液中のコレステロールや中性脂肪が血管の内壁に蓄積し、内壁がドロドロとした粥状に腫れ、血液の流れを悪くしたり、血栓ができて血液の流れを止めてしまう病気だ。動脈硬化はさらに、致命的な病気を引き起こす可能性がある。 動脈硬化が引き起こす病気 脳梗塞 脳の動脈に動脈硬化が起こると脳梗塞を起こす可能性がある。重症になると脳の一部が死んでしまい、意識障害や言語障害などの後遺症を残したり、場合によっては死亡することもある。 狭心症、心筋梗塞 心臓の冠状動脈に動脈硬化が起こり、血液がスムーズに流れなくなったり、一時的に流れが止まるのが狭心症。さらに、冠状動脈が完全に詰まってしまった状態が心筋梗塞で、死亡する恐れが高くなる。 腎臓病 腎臓の血管に動脈硬化が起きると、腎臓の機能が低下する。腎臓は、血液の老廃物をろ過するはたらきがあり、機能が低下すると尿毒症を引き起こしてしまう。 間欠性跛行(かんけつせいはこう) 歩いているときに足が痛くなる病気。進行すると血液が詰まり、足の細胞が死ぬ「壊疽(えそ)」になり、足を切断することになる。 ちなみに、血液をドロドロにするのは脂質以外にも「糖質」などがある。脂だけが要注意物ではないのだ! 血液ドロドロ度チェック こんな生活が血液ドロドロを招く。あなたは大丈夫?チェックしてみよう。当てはまるものが多い人は生活習慣の見なおしを! CHECK! 肉類が好き 早食いである ケーキなどの甘い物が好き 野菜をあまり食べない 朝ご飯を抜くことが多い ラーメンのスープは飲み干してしまう 運動不足である たばこを吸う 睡眠不足の日が多い ストレスが多い 公開日:2001年12月17日
サラサラ血液になるためには、どのような生活を送るといいのでしょうか?日常生活でのポイントをまとめました。健康な体を保ち、生活習慣病予防のためにも、今日からはじめてみましょう。 目次 心得1 食べ過ぎないようにしよう 心得2 脂肪分を少なくする食事の工夫をしよう 心得3 コレステロールの高い食品を控えよう 心得4 糖質の摂り過ぎに注意しよう 心得5 お酒は控えよう 心得6 食物繊維を毎日食べよう 心得7 血液サラサラ食品を摂ることを心がけよう 心得8 適度な運動をしよう 心得9 この機会にぜひ「禁煙」にチャレンジ 心得10 ストレスをためず、十分な睡眠をとろう 心得1 食べ過ぎないようにしよう 食べ過ぎ、飲み過ぎによるエネルギーの摂り過ぎは、どうしても余分な脂肪分や糖分を体内に溜めがちで血液をドロドロにし、肥満のもとにもなる。お腹いっぱい食べず、腹8分目を心がけて。 1日の適正エネルギー(kcal)=標準体重※1×25~30※2 ※1 標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22 ※2 25~30:生活活動強度が中程度の場合。生活活動強度が軽い場合には20~25、やや重い場合には30~35、重い場合には35~をかけてください。 (例)身長170cmの人の場合、 標準体重=1.7×1.7×22=63.6kg 適性エネルギー=63.6×25~30=1,590~1,910kcal 心得2 脂肪分を少なくする食事の工夫をしよう 動物性脂肪でもとくに飽和脂肪酸と呼ばれる肉類の摂り過ぎは、悪玉コレステロールを増やす原因に。肉を選ぶときには、バラやロースより脂肪分の少ないヒレ肉を選んだり、調理するときにも揚げ物より網で焼いたりゆでる、などして油を少なくする工夫をしよう。 心得3 コレステロールの高い食品を控えよう 高コレステロール食品といえば、鶏卵(とくに卵黄)、魚の卵(かずのこ、たらこ、すじこなど)、レバーなど。バターなどの乳製品にもコレステロールは多く含まれている。 卵は良質なたんぱく質なので、まったく食べないと栄養のバランスが悪くなる。食べるなら1日1個以下(高コレステロールの場合は、1日1/2個以下)までにすること。 卵のコレステロールは善か悪か?卵とコレステロールの気になる関係 心得4 糖質の摂り過ぎに注意しよう 甘い清涼飲料水や洋菓子には、糖質がたっぷり含まれている。糖質の摂り過ぎは、血液中の中性脂肪を増やすため、ドロドロ血液のもと。 また、果物はビタミンなどが豊富でいいのだが、やはり糖質が多く、しかも体内に吸収されやすい単糖類。食べ過ぎには注意したい。 心得5 お酒は控えよう アルコールも血液中の中性脂肪を増やす。しかも、アルコール1gあたり約7kcalのエネルギーがあるため、油断すると過剰なエネルギーを摂取しがち。くれぐれも飲み過ぎには注意しよう。 なお、「適量」には個人差があるが、だいたいビールなら中ビン2本、日本酒なら2合、ワインならグラス4杯程度と言われている(脂質異常症の場合は、禁酒したほうがいいこともある)。 お酒の適量はどのくらい?適正飲酒量を計算してみよう 心得6 食物繊維を毎日食べよう 食物繊維は、体内のお掃除係。腸でコレステロールの吸収を抑え、その結果、血液をサラサラに保つことができる。1日にとりたい食物繊維の量は、20~25g程度と言われている。野菜、海草類、キノコ類、いも、こんにゃく、豆類などを毎日食べるように。 食生活を見直して!もっと摂りたい食物繊維 ひじきハンバーグ(2人分) ■作り方 ひじき(30g、乾)を水で戻し、水気を切ってみじん切りにする。そこへ合びき肉(250g)とネギのみじん切り(大さじ4)、しょうが汁(小さじ1/2)、卵(1個)、塩(小さじ1/3)、しょうゆ(小さじ1)を混ぜてよくこねる。 1を2等分して丸め、フライパンを熱してサラダ油をひき、中火で蒸し焼きにする。レモンを添えて。 心得7 血液サラサラ食品を摂ることを心がけよう 血液をドロドロにする食品があるのと同様にサラサラにする食品がある。特に、青魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)には、血液ドロドロを防止し、血栓ができるのを防ぐ効果あり。また、大豆・大豆製品も不飽和脂肪酸が含まれていてオススメ。 血液サラサラ食品 魚(とくに青魚) サバ、イワシ、サンマ、ブリ、アジ、マグロなどはDHA、EPAが豊富。 大豆・大豆製品 大豆たんぱくにはコレステロールを下げる効果がある。また、食物繊維も豊富。大豆、豆腐、納豆など。 心得8 適度な運動をしよう どんなに食生活に気を使っても、まったく運動をしないのはダメ。運動して摂取したエネルギーを消費すると体の脂質代謝もよくなり、余分な体脂肪や血液内の脂質を減らすことができる。さらに、運動には心肺機能を高め血行をよくし、体内の老廃物を取り除く効果あり。 手軽にできるウォーキングからはじめてみよう。 心得9 この機会にぜひ「禁煙」にチャレンジ たばこはやっぱりよくない。たばこのニコチンや一酸化炭素は、脂質異常症や動脈硬化を引き起こす誘因があるだけでなく、さまざまな病気の引き金になっている。ニコチンには中性脂肪や悪玉コレステロールの合成を促し、善玉コレステロールを減らすはたらきがあるし、一酸化炭素にも中性脂肪や悪玉コレステロールを増やして血栓をつくりやすくするはたらきがある。 「百害あって一利なし」のたばこはぜひ禁煙を! 心得10 ストレスをためず、十分な睡眠をとろう ストレスがたまると交感神経が刺激され、副腎からアドレナリンなどのホルモンが多量に分泌される。すると、心拍が速くなり、血管が収縮してしまう。さらに、血液中のコレステロール値も上昇させると言われ、ドロドロ血のもとになる。ストレスはため込まず、十分な睡眠をとって心身をリラックスさせよう。 ■関連記事 リスク指標が刷新!脂質異常を再確認 10年以内の心筋梗塞などを発症する確率を予測 あなたの動脈硬化のリスクをチェックしよう! 公開日:2001年12月17日
ひとつ間違えば命に関わる動脈硬化。どこの血管が詰まるかによって症状が違うのだ。違いについて、わかりやすく表にまとめてみた。 目次 動脈硬化とは? 粥状(じゃくじょう)動脈硬化の過程は? 動脈硬化が原因の主な病気と症状 脂質異常症って若い人でもなるの? 動脈硬化とは? 動脈硬化とは動脈の壁が硬く、もろくなること。種類は3つある。 ●粥状(じゃくじょう)動脈硬化=アテローム動脈硬化 脂質異常症で起こる「動脈硬化」といえばこれ。心筋梗塞、脳硬塞を招く。大動脈、脳動脈など太くて重要なはたらきをする動脈ほど起こりやすい。 ●細動脈硬化 脳やじん臓の動脈に見られる。高血圧との関係が強い。 ●中膜硬化 糖尿病患者に見られる動脈硬化。 粥状(じゃくじょう)動脈硬化の過程は? 血中のコレステロールが増えると、血管の内皮細胞の傷付いた部分から、LDLが内膜に入り込む。 LDLは活性酸素によって酸化され、マクロファージ(* 異物や老廃物を食べる細胞)にどんどん取り込まれ、泡沫細胞(* 細胞の中に脂の成分が白く泡状に見える)になる。 さらに、血管の中膜の平滑筋細胞も増え、内膜に侵入して泡沫細胞になる。 泡沫細胞はやがてパンクして、コレステロールの結晶が死んだ細胞のかすがたまってコブを作る。 コブの中はどろどろの粥状となっている。 動脈硬化が原因の主な病気と症状 心臓に栄養や酸素を運んでいる血管に動脈硬化が起こり血流が悪くなって起こる障害を「虚血性心疾患」といい、狭心症・心筋梗塞が代表的な病気である。 狭心症と心筋梗塞の見分け方 ■痛み 状態 狭心症 心筋梗塞 どんなときに起こりやすいか ・階段を昇るときなど何かしているとき ・明け方トイレに起きたとき ・アルコールを飲んだときの早朝 安静時・動作時に関係なく起こる 発作の感じ、痛さ ・締めつけられている感じ ・重い痛み とても激しい痛み 持続時間 5~15分程度 30分以上 安静にすると 治る 治らない ニトログリセリンの錠剤で(舌下錠) 治る(1分から数分) 治らない ■その他の症状 状態 狭心症 心筋梗塞 嘔吐・冷や汗 なし あり 顔色 蒼白にはならない 蒼白になる 血圧 上昇する 降下する 参考:「専門医がやさしく教える中性脂肪(トリグリセライド)」西崎統著 PHP研究所発行 また、脳の血管が破れたり詰まったりして起こる病気の総称を「脳卒中」という。 このうち動脈硬化が原因のものが「脳硬塞」。「脳出血」は動脈硬化と全く関係がないわけではないが、主たる原因は高血圧。脳の血管が破れて、脳の中に血液が流れ出した状態のことである。 脳硬塞には「脳血栓(血管そのものが動脈硬化等で閉塞する。大半はこちら)」と「脳栓塞(ほかの部位から、異物(栓子)が飛んできて血管が閉塞する)」がある。 脳硬塞の識別症状 脳血栓 脳栓塞 発生 徐々に進行する 突然起こる 進行過程 一過性の頭痛、めまい、言語障害、手足のしびれなど 半身のマヒ、昏睡 活動中、または起床直後に急に発作。手足のマヒ、けいれんなど 頭痛はあっても軽い 意識障害 比較的軽い あまりない 顔色 蒼白になることが多い 蒼白になる 参考:「専門医がやさしく教える中性脂肪(トリグリセライド)」西崎統著 PHP研究所発行 脂質異常症って若い人でもなるの? 「脂質異常症なんて、若者がなる病気じゃないよ!?」なんて思っている人もいるかもしれない。しかし、コンビニやファーストフード店が発達して、コレステロールが多い食事を口にしやすくなっている昨今、若者の脂質異常症が増えている。スナック菓子・インスタント食品類も、摂り過ぎるのは要注意!また、体を動かす機会が極端に減ったことも大きな原因となっている。 公開日:2002年4月1日
高脂血症は健康診断などの血液検査で発見することができる。基準値をまとめてみたので、健康診断などの血液検査の結果から自分でチェックしてみよう! 目次 血液検査の仕方 基準値を知ろう 検査を受ける際に心掛けること 血液検査の仕方 脂質異常症の疑いがあるかどうかは、血清の中の脂肪成分がどれくらいあるかを調べればわかる。 健康診断や人間ドックの血液検査では、「コレステロール値」、「中性脂肪値」、「HDLコレステロール値」を測定する。この3つの数値があれば、大抵の脂質異常症の診断はできるのである。 基準値を知ろう 脂質異常症は血液中の中性脂肪(トリグリセライド)値、コレステロール値を、基準値に照らし合わせて診断される。 血清コレステロール 基準値以上になると「高コレステロール血症」 血清総コレステロール(mg/dl) LDL-コレステロール(mg/dl) 適正域200未満120未満 境界域200~219120~139 高コレステロール血症220以上140以上 血清トリグリセライド 基準値以上になると「高トリグリセライド血症」 空腹時トリグリセライド(mg/dl) 高トリグリセライド血症150以上 HDLコレステロール 基準値未満だと「低HDLコレステロール血症」 HDL-コレステロール(mg/dl) 低コレステロール血症40未満 参考:日本動脈硬化学会高脂血症診療ガイドライン1997年 LDLコレステロール値 コレステロール値・中性脂肪値・HDLコレステロール値から求めることができる。130(mg/dL)以下であれば正常。 LDLコレステロール値 =総コレステロール値-HDLコレステロール値-(中性脂肪値×1/5) 参考:「気になる検査値食事で治そう1 肥満度・コレステロール値・中性脂肪値・血圧」中村丁次監修 NHK出版協会発行 検査を受ける際に心掛けること 血液検査は空腹時、一般的には朝食を抜いた午前中に行う。正確な診断を受けるためにも、以下のことを心掛けよう。 ●12時間以上、空腹にしてから検査を受ける 食事は、トリグリセライドやHDLコレステロールに影響を与えるため。検査前日の午後9時以降は食事を摂らないこと。脂っこいものをたくさん食べるのもNG。 ●前日の飲酒を避ける 飲酒のために高トリグリセライド血症を来すことがあるため。 公開日:2002年4月1日
高脂血症は日頃の生活習慣を見直していくことで、予防・改善できるのだ。まずは何かひとつ、変えてみては? 目次 脂質異常を予防する食事は? 脂質異常症のタイプ別食事療法のポイント 脂質異常症の運動のポイント 薬に頼ってもいい? 生活習慣を見直そう 脂質異常を予防する食事は? 積極的に摂りたいもの 穀類(米や麦など) 食物繊維(海藻類、豆腐や納豆などの大豆加工品、キノコなど) 緑黄色野菜(にんじん、ピーマン、ブロッコリー、トマトなど) 魚の脂 EPA(エイコサペンタエン酸)DHA(ドコサヘキサエン酸)はコレステロール値を下げ、中性脂肪を減少させる ジアシルグリセロール(植物油に含まれる成分。普通の食用油に比べて体に脂肪がつきにくい) 調理法もひと工夫 ゆでる、蒸す、焼くといった方法で、なるべく油を使わない 味付けを薄めにして塩分を摂りすぎないようにする 脂質異常症のタイプ別食事療法のポイント ●トリグリセライド値が高い時…糖質を制限する 砂糖類、菓子類、果物類などやアルコールは制限する ●コレステロール値が高い時…コレステロールの摂取量を抑える 食物繊維を多く摂り、コレステロールの吸収抑制をはかる 脂質異常症の運動のポイント 自分のペースで行える有酸素運動が適している。無理なく気長に続けよう。 ●ウォーキング 歩くことは手軽な全身運動。まずは普段自分が歩いているペースで2~3キロ歩くことから始めよう。次第に慣れてきたらペースを速め、距離を延ばしていく。 ●ジョギング 心肺機能を高める効果も。ウォーキングで体を慣らしてから行うこと。まずは5分くらい走ることを目安に始める。足の筋肉や関節を痛めないように、適したシューズで走ること。 ●水泳 水圧の作用で内臓のはたらきを高める効果も。1分間30~40mのペースで5分間泳ぐことから始める。疲れたら無理せずに休むこと。慣れてきたら、10分、20分と時間を延ばしていく。 ほかにも、なわとび、サイクリング、エアロビクスなどがおすすめ。 激しすぎる運動はかえって危険。頑張り過ぎず、気持ちよく汗ばむ程度で行おう! 薬に頼ってもいい? 血清脂質の値が高すぎる場合、食事や運動療法を続けても効果が現れないなら、薬に頼ることもある。しかし、食事や運動療法も同時に続けないと、薬の効果が十分に発揮されないことも。必ず医師と相談しながら、自分自身で治すという姿勢が大切だと言えるだろう。 生活習慣を見直そう ●まず禁煙! 喫煙はLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪を増やし、HDL(善玉)コレステロールを減らしてしまう。 また、喫煙によってLDLコレステロールの変性が促進されると、変性したLDLが血管壁のマクロファージ細胞に取り込まれ、動脈硬化を引き起こす原因にもなる。とりあえず、本数を減らすことから始めてみよう。 ●アルコールを控えめに アルコールを飲みすぎると、肝臓での中性脂肪の合成が促進され、VDLD、LDLコレステロールを増やしてしまい、脂質異常症や動脈硬化の原因に。「アルコール+つまみ=カロリー摂取過剰」で肥満を呼び、さらには脂質異常症へ…。「酒のつきあい」が多い人は、つまみに酢の物を選ぶ、夜12時以降は飲まない、週に3日は休肝日を設ける、などを心がけたい。 ●ストレスを溜めない 食欲をコントロールする機能は脳の視床下部にあるとされる。感情の揺れがあまりに激しいと、 視床下部の食欲調節中枢機能が影響を受けてしまう。そのため、つらい、悲しいという刺激が加わると一層食欲に拍車がかかってしまうという説もある。脂質異常症対策の運動や食事がストレスにならないよう、自分のペースで気長に取り組もう。 公開日:2014年7月7日
脂質異常症とおおいに関係あるのが、おなじみ善玉&悪玉コレステロール。でも悪玉コレステロールは、本当に「悪」なのだろうか?その実態をもう一度確認しておこう。 目次 脂質異常症とは? コレステロール 中性脂肪(トリグリセライド) リン脂質 遊離脂肪酸 脂質異常症とは? 「脂質異常症」は血液の中に溶けている脂質(血清脂質という)が異常に多い状態のこと。血清脂質にはコレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)、リン脂質、遊離脂肪酸などがある。特に自覚症状もなく、日常生活に不都合なこともないため見過ごされがちで、健康診断などの血液検査で発見されることが多いようだ。 コレステロール 悪玉と思われるコレステロール、実は体の中ではとても重要なはたらきをしている。でも過剰になると体に蓄積されて困った存在になるのだ。 ■コレステロールのはたらき 細胞膜をつくる ホルモン(副腎皮質ホルモンや性ホルモン)の原材料となる 胆汁酸の原材料となり、消化作用を助ける 「善」か「悪」か、それが大問題だ! 一般的に「善玉コレステロール」と「悪玉コレステロール」の2つの名前で呼ばれることが多いため、コレステロールには「善玉」と「悪玉」の2種類あると思われがちだが、実はコレステロール自体には善も悪もない。血液中での「コレステロール+中性脂質+アポたんぱく質+リン脂質」の結合の割合により、「善玉」と「悪玉」に振り分けられているのだ。 では、水が主成分の血液にどのようにして脂質が混ざっているのか? 脂質は脂肪なので、そのままでは水が主体である血液の中を移動できない。そこで「アポたんぱく」と呼ばれるたんぱく質が、リン脂質といっしょにコレステロールや中性脂肪を包んで「リポたんぱく(質)」となり、血液中でコレステロールや中性脂肪を運んでいるのだ。 リポたんぱく質は大きく4つにわけられる。 リポたんぱくの種類とはたらき 種類 合成臓器 おもな脂質 はたらき 善玉 or 悪玉 カイロミクロン 小腸 約85%が中性脂肪 ●食物から吸収した脂質を肝臓に運ぶ ●コレステロールの合成を調節する ●脂溶性ビタミンを運ぶ 悪玉 超低比重リポたんぱく(VLDL) 肝臓 約55%が中性脂肪 ●肝臓で合成された脂質を末梢組織に運ぶ ●コレステロールを調節する 悪玉 低比重リポたんぱく(LDL) 血液中 約45%がコレステロール ●コレステロールを末梢組織に運ぶ 悪玉 高比重リポたんぱく(HDL) 肝臓・血液中 約50%がコレステロール ●末梢組織から余分なコレステロールを肝臓に回収する ●中性脂肪を分解する 善玉 参考:「専門医がやさしく教える中性脂肪(トリグリセライド)」 西崎統著 PHP研究所発行 「中性脂肪が高い人が読む本」 中條やえ子著 主婦と生活社発行 ■善玉コレステロール、悪玉コレステロールのそれぞれのはたらき 善玉コレステロール 体の中の余ったコレステロールを回収し、肝臓へ戻す。「回収屋」 悪玉コレステロール 肝臓からコレステロールを運んで各組織の細胞に届ける。「配達屋」 イメージのよくない「悪玉コレステロール」にも、体にとって大切な役割があるのだ! ただ、コレステロールの量が多すぎると血管の中にたまり、「悪」となってしまう。 善玉コレステロールと悪玉コレステロールのバランスに気をつけることが大切なのだ。 中性脂肪(トリグリセライド) グリセロールに3つの脂肪酸が結合した物質。 体の中の脂質のひとつで、食物を通して体内に取り入れるものと、体内(肝臓)で合成されるものとがある。 ■中性脂肪のはたらき 体温を一定に保つ 皮下に貯えて外部から受ける衝撃から内臓を守る 体を動かすエネルギー源となる 中性脂肪はエネルギー源 中性脂肪が体内で完全燃焼すると、1g当たり約9kcalのエネルギーになる。一方、たんぱく質と糖質はともに1g当たり約4kcal。つまり中性脂肪は単位量当たりのエネルギー生産量が高いということになる。 ちなみに体重60kgの人の体内には平均9kgの中性脂肪がある。仮にこれがすべて完全燃焼しエネルギーに変わるとしたら単純計算で81,000kcal。50日分の食事に匹敵するカロリーである。 リン脂質 細胞膜の構成成分。 リン脂質のはたらき…体内の脂質などの水に溶けない性質の物質を水になじませる。 遊離脂肪酸 そのまま体内で使えるエネルギーになる。 公開日:2002年4月1日
脂質異常症にはいくつか種類があり、それぞれ治療法が異なる。きちんと治すためには、自分がどのタイプかを知っておくことが大切だ。 目次 こんな人が危ない!脂質異常症になる原因について 脂質異常症の種類 脂質異常症を放っておくとどうなる? 脂質異常症の人は献血できるの? こんな人が危ない!脂質異常症になる原因について あなたも心当たりはないだろうか? 「甘いものが好きで間食が多い」「脂っこいものばかり食べている」「食事時間が不規則だ」「お酒を飲み過ぎる」「運動不足である」 偏った食生活、運動不足による肥満、アルコールの飲み過ぎが脂質異常症の代表的な原因である。 加齢によって血清脂質も上昇するってホント? 肝臓機能が衰えてLDL(悪玉)コレステロール受容体の動きが低下、コレステロールや中性脂肪などの血清脂質が血液中に増えてくるケースがある。男性の場合、30歳くらいから急に血清脂質の値が上昇してくる。 また女性の場合、閉経後に急に血清コレステロール値が高くなってくる。これは女性ホルモンのはたらきが低下するため。女性ホルモンにはLDL受容体を増やすはたらきがあるのだ。 体質(遺伝的素因)が原因の時もある? 脂質異常症や動脈硬化の中には遺伝的な要因が大きいケースもある(原発性脂質異常症)。ただし、これは「なりやすい体質」ということ。食事&運動など、生活習慣を見直すことで改善できるようだ。 脂質異常症の種類 脂質異常症はいくつかのタイプに分類できる。代表的なものを紹介しよう。 ●LDL(悪玉)コレステロール値が高い場合:「高コレステロール血症」 食生活の変化やライフスタイルの欧米化によって、日本でも高コレステロール血症の人が急増中。国民の5人に1人は高コレステロール血症の疑いがあるとさえ言われている。 ●中性脂肪(トリグリセライド)値が高い場合:「高トリグリセライド血症」 日本人男性の脂質異常症に多いタイプ。アルコールと肥満の影響が大きいと考えられる。 ●LDL(悪玉)コレステロール値と中性脂肪(トリグリセライド)値、両方が高い場合:「複合型脂質異常症」 早発性の冠動脈硬化症を合併する恐れがある。 ●HDL(善玉)コレステロール値が低い場合:「低HDLコレステロール血症」 中性脂肪によってHDLコレステロールが減らされるという説がある。動脈硬化にかかる危険性が高まる。 同じ脂質異常症でも、中性脂肪値が高いタイプかコレステロール値が高いタイプかで、治療法も異なるのだ。自分がどのタイプか知っておくことが大切である! 脂質異常症を放っておくとどうなる? 脂質異常症自体は、自覚症状がなく「SILENT DISEASE(沈黙の病気)」といわれている。しかし、脂質異常症を放っておくと、動脈硬化が進行し、狭心症や心筋梗塞などの心臓病、脳血栓・脳梗塞、足などの閉塞性動脈硬化症などの原因になっていくのだ。 脂質異常症→動脈硬化→虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞) →脳卒中(脳出血、脳硬塞) →腎臓病 →閉塞性動脈硬化 etc… 命に関わる大問題につながりかねない! 脂質異常症の人は献血できるの? 脂質異常症の治療(服薬)をしているかどうかで献血できるかどうかが決まる。服薬を必要としない程度の脂質異常症であれば献血はでき、その血液は他に異常がなければ有効に活用される。服薬をしている場合は「薬剤を服用中との申告があれば、その目的、薬品名を確認し、疾病の内容、献血者本人の疾病に注意して、採血の適否を判断する」ことになる。 参考:新潟県赤十字血液センター資料 公開日:2002年4月1日
この答えはNO。コレステロールの摂り過ぎは健康の大敵と言われるようになって久しいですが、卵やイカなどコレステロールを多く含む食べ物を避けさえすれば大丈夫というわけではありません。コレステロールはどのようにして体内に取り込まれるのでしょうか?また、体内でどんなはたらきをしているのか見てみましょう。 目次 コレステロールの70%は体内で合成される 体内で重要なはたらきをするコレステロール コレステロールの70%は体内で合成される 卵やイカはコレステロールを多く含む食品ですが、そのすべてが体内に吸収されるわけではありません。また、成人の体が1日に必要とするコレステロールの量は1~1.5g程度ですが、そのうち食品から摂るのは20~30%です。残りは、人間の体内で合成されています。 体内には、卵やイカなどの食品から多くのコレステロールが摂取されたとき、体内で合成する量を減らす機能があります。しかし、これには個人差があります。また、高齢になるにしたがって低下することもあるため、コレステロールを多く含む食品を食べ過ぎないように注意することは大切です。 しかし、コレステロールは砂糖や脂肪からも合成されます。つまり、コレステロールを多く含む食品だけを食べないようにしても、砂糖や脂肪分の多い食生活を送っている限り、コレステロール過剰は治らないのです。 体内で重要なはたらきをするコレステロール 「いろいろな病気の原因になる」と、危険性ばかりが注目されていますが、コレステロールは細胞膜やホルモンの原料になる、体になくてはならない物質です。極端に避けるとかえって悪影響を及ぼすことにつながります。 コレステロールの3つのはたらき 1. 細胞膜や生体膜の材料になる 人間の体がたくさんの細胞からできています(なんと約60兆)。そのひとつひとつが中味がもれないような袋に入っています。コレステロールはこの袋にあたる細胞膜や生体膜の材料になっています。 2. ホルモンの材料になる 人間の体の機能を周りの環境に合わせて調節するはたらきをするホルモンです。コレステロールはこの材料のひとつでもあります。特に、いろいろな栄養素を体内で利用するときの助けになる副腎皮質ホルモンや男性ホルモン、女性ホルモンの材料として重要です。 3. 胆汁酸の材料になる 食物中の脂肪やたんぱく質の消化、吸収に大きな役割を果たしているのが胆汁酸という消化液です。この胆汁酸もコレステロールを材料として作られています。ただし、胆汁に含まれるコレステロールの量が多すぎると、胆石を作ってしまい、胆汁の流れを悪くしたり、胆石症や胆のうがんの原因になることがあります。
この答えはNO。血液中には、動脈硬化などの原因になる悪玉コレステロール(LDL)と悪玉コレステロールの悪さを防ぐ善玉コレステロール(HDL)が存在します。魚類に含まれる脂肪はこの善玉コレステロールを増やすはたらきがあると言われています。善玉・悪玉コレステロールとそれぞれに関わりのある食品について紹介します。 目次 善玉・悪玉コレステロールを理解しよう 善玉・悪玉コレステロールの構成 コレステロールには2つの概念がある 魚の脂肪は善玉コレステロールを増やす!? 善玉・悪玉コレステロールを理解しよう コレステロールは血液によって体の各部分に運ばれます。しかし、コレステロールも脂肪の一種、そのままでは血液と分離したまま、運搬どころではありません。それで、コレステロールをはじめ、中性脂肪やリン脂質など脂質の仲間は、たんぱく質(アポたんぱく)に覆われた形で血液と混じり合っているのです。これは「リポたんぱく」と呼ばれ、主なものは4種類あります。 このうちの2つが有名な善玉コレステロールと悪玉コレステロールです。 善玉・悪玉コレステロールの構成 HDL(善玉コレステロール) コレステロールの他リン脂質を多く含む、比重が高い(High)リポたんぱくです。肝臓や小腸で合成されます。 全身の細胞膜から過剰なコレステロールを抜き取り、肝臓に運搬するはたらきがあります。血液中にHDL(善玉コレステロール)が多いと動脈硬化などにかかりにくいことが明らかになっています。 LDL(悪玉コレステロール) コレステロールを多く含みます。HDL(善玉コレステロール)より大きく、比重は低い(Low)です。体のすみずみの細胞に運ばれて 細胞膜などの原料になります。また、血管の表面の細胞膜を作るはたらきもありますが、増えすぎると動脈硬化などの原因になります。 このほか、リポたんぱくには、その他のリポたんぱくを作る素となる「カイロマイクロン」、中性脂肪を多く含む「VLDL」があります。それぞれ、血液中に存在する量が多くなると動脈硬化など深刻な病気の原因になります。 コレステロールには2つの概念がある 動脈硬化など生活習慣病に大きく関与するのは、上で紹介したHDL(善玉コレステロール)とLDL(悪玉コレステロール)になります。この2つは、「コレステロールを多く含むリポたんぱく」です。一方、コレステロールそのものが原因になる病気もあります(コレステロール胆石など)。このように、一般的にコレステロールと呼ばれるものには、「コレステロールそのもの」と「コレステロールを多く含むリポたんぱく」という2つの概念があることを覚えておきましょう。 魚の脂肪は善玉コレステロールを増やす!? 肉や魚に含まれる脂肪。ひと言に脂肪といってもいろいろな種類があり、体内でのはたらきもそれぞれ微妙に異なります。この違いの素が脂肪酸です。皆さんがよく耳にするリノール酸、オレイン酸、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)などのことです。脂肪酸は大きく下の3つに分類されます。それぞれの特徴をまとめました。 飽和脂肪酸 代表的な脂肪酸 パルミチン酸、アラキジン酸など 特徴 とりすぎると肝臓でコレステロールの形成を促進し、悪玉コレステロールを増加させます。 多く含む食品 パーム油(植物油の一種)、豚や牛の脂肪分、バターなど 多価不飽和脂肪酸 代表的な脂肪酸 リノール酸、EPA、DHAなど 特徴 悪玉コレステロールを減らして、動脈硬化の原因となる血栓の生成を防ぐぎます。しかしリノール酸をとりすぎると、悪玉だけでなく善玉コレステロールまで減らしてしまいます。 多く含む食品 リノール酸=サフラワー・ひまわり・サラダ油など多くの植物油、ごま・松の実など種実 EPA=すじこ、はまち、いわし、にしん、さばなど DHA=本マグロ脂身、すじこ、まだい、ぶり、さばなど 一価不飽和脂肪酸 代表的な脂肪酸 オレイン酸など 特徴 多価不飽和脂肪酸同様に悪玉コレステロールを減らすが、善玉コレステロールは減らさないという実験報告がなされ、最近注目を浴び始めている 多く含む食品 オリーブ油、なたね油、調合サラダ油、ヘーゼルナッツ、マカダミアナッツ、牛、豚、鶏肉の脂肪分 オレイン酸を含む食品ならたくさん食べても大丈夫? これは大きな誤解なので、注意しましょう。例えば牛や豚の脂肪ですが、オレイン酸だけでなく飽和脂肪酸も含んでいるのです。また、マカダミアナッツを食べ過ぎればコレステロールは増えなくても、中性脂肪は増えてしまいます。 体にいいと言われている脂肪でも摂りすぎ、偏りはダメということです。摂取量を守った上で、飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸をバランスよく摂るよう、いろんな食品を組み合わせて調理することが大切です(飽和:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸=1:1.5:1の比率が望ましいようです)。
この答えはNO。10%でも「多い」と感じますがそれどころではありません。30歳以上の男性の約29%、女性の約34%が高コレステロールではないかと思わせるデータが存在します。ここではコレステロールに関する検査と、高コレステロールになりやすい生活について紹介します。 目次 高コレステロールは血液検査で診断される 高コレステロールになりやすい生活チェック 高コレステロールは血液検査で診断される 高コレステロールは、動脈硬化や心筋梗塞など致命的な病気の原因になる深刻な事態ですが、それだけでは自覚症状もなく、日常生活に差し支えはありません。このため、高コレステロールかどうかは、主に血液検査によって診断されます。 血液検査の結果による診断と治療方法は以下のとおりです。ただし、これはあくまでも目安なので、数値にまどわされず、専門家の指導に従ってください。 血液中の総コレステロール量・中性脂肪値の測定結果と診断結果・治療法 総コレステロール基準値(220mg/dl)以上の人基準値付近の人基準値未満の人 中性脂肪値基準値(150mg/dl)以上の人基準値付近の人基準値未満の人 HDLコレステロール基準値(40mg/dl)未満の人基準値付近の人基準値未満の人 脂質異常症の危険は? 脂質異常症の疑いあり。さらに詳しい検査で、動脈硬化などの危険性を調べます ・12時間絶食した上での血液検査により、LDLコレステロール値を算出することもあります ・医師による問診(自分や家族がこれまで動脈硬化などにかかったことがあるかなど) 血液中の脂肪の量は正常値 その他の病気の危険は? 動脈硬化などの危険性が高い、または糖尿病などほかの病気にかかっています。 動脈硬化などの差し迫った危険はありません。 ここで油断せず、脂肪のたまらない生活を送るようにしましょう。 治療方法 食事療法と並行して薬物療法などを行います。運動療法は禁止されるケースが多いようです。 まず、食事療法と運動療法を指導されることが多いようです。ストレスを避ける、禁煙など生活指導も行われます。3ヵ月後ぐらいに再検査し、変化がない場合、薬物療法を提案されることが多いようです。 通常の検査では、LDL(悪玉コレステロール)値まで出さないことが多いのですが、次の計算式で求めることができます。 LDL(悪玉コレステロール)コレステロール値 =総コレステロール値-HDL(善玉コレステロール)コレステロール値-0.2×中性脂肪値(中性脂肪値が400mg/dl以下) LDL(悪玉コレステロール)の値が140mg以上の場合は「高コレステロール血症」と診断されます。 高コレステロールは「脂質異常症」の一形態 「脂質異常症」とは、LDLコレステロール値や中性脂肪値が基準より高い、もしくはHDLコレステロール値が低い状態を総称したものです。コレステロール値が高い「高コレステロール血症」は、脂質異常症の一形態です。脂質異常症にはこのほか、HDL(善玉コレステロール)値が低いタイプや中性脂肪値だけが高いタイプなどがあります。 高コレステロールになりやすい生活チェック 1~2年に1度血液検査を受けることは大切ですが、総コレステロール220mg/dl未満だからと言って、安心ばかりはしていられません。「高コレステロール血症」の診断基準は、これを超えると動脈硬化などになる確率が高くなるというデータをベースに決められたものです。国によっては200mg/dl以上を診断基準にしているところもあるくらいなのです。したがって、検査の数字に一喜一憂するだけでなく、日ごろからコレステロールをためない生活をするように心がけるのが一番となります。 また、高コレステロールもなりやすい人となりにくい人がいます。次のチェックであてはまるものがある場合は要注意です。 高コレステロールになりやすい人チェック 家族や親類にコレステロール値の高い人がいる 肥満気味、特に中年になって太ってきた人 更年期を迎えた人 糖尿病、腎臓病、ホルモンの病気にかかっている人 高コレステロールになりやすい生活チェック 肉や魚など脂っこいものが好き。から揚げやスナック菓子もよく食べる お酒を1日2合以上飲む 卵を1日2個以上食べる(コレステロールを多く含む食品をよく食べる) 仕事が忙しく、生活も不規則でストレスがたまりやすい 喫煙の習慣がある
この答えはNO。コレステロールが高いだけでは特に自覚症状がないケースが大半で、日常生活にも支障はありません。でも、実は高コレステロールの次の段階、さらにその次の段階が怖いのです。コレステロールが高いと動脈硬化という状態に陥りやすく、さらに進むと、心筋梗塞や脳出血など、死に直結する深刻な病につながりやすくなります。 目次 動脈硬化ってどんな病気? LDL(悪玉コレステロール)が原因?アテローム硬化 極悪コレステロール・Lp(a)にも注目 動脈硬化ってどんな病気? 動脈硬化とは、血管の内側の壁面に脂質、繊維、カルシウムなどが蓄積して、血管が固くなってしまう状態をいいます。これが進むと、さまざまな成分が付着することで血管の壁面が盛り上がり、血管が細く、もろくなってしまいます。最終的には、血液の流れが悪くなったり、血管が破裂したりします。その場所によっては命にかかわる深刻な事態になります。 動脈硬化には3つのタイプがあります。 ●アテローム硬化(粥状動脈硬化) 脳や心臓などの太い動脈内にコレステロールなどが沈着し、お粥状のかたまりができて血管内が細くなり、血流が悪化。血管が完全にふさがってしまうこともあります。 ●細動脈硬化 脳や腎臓などの細い動脈が狭くなり、血管の壁に傷が付いてしまいます。 ●中膜硬化 腕や太ももの動脈壁の内層(中膜)が石灰化します。 LDL(悪玉コレステロール)が原因?アテローム硬化 動脈硬化の中でもっとも代表的なアテローム硬化の原因になっているのが、LDL(悪玉コレステロール)とHDL(善玉コレステロール)です。 アテローム硬化がどのようにして起こるのか簡単に紹介します。 1. 血液中のHDLとLDLがバランスがとれた状態 血管の内膜の一番内側にある、内膜上皮細胞にすき間があいたり傷がついたりすると、LDL(悪玉コレステロール)が集って傷口を防ぐはたらきをします。HDL(善玉コレステロール)は余分に集ったLDL(悪玉コレステロール)を肝臓に運ぶはたらきをします。 2. LDLが増え、HDLが減ると… 内膜上皮細胞のすき間や傷口から、HDL(善玉コレステロール)が運びきれないLDL(悪玉コレステロール)が血管内の内膜に入り込み、血管の奥の壁を傷付けたりします。 3. 血管壁がコブのようになる 内幕上皮細胞のすき間からは、LDL(悪玉コレステロール)だけでなく、カルシウムや血小板も内膜に入り込んできます。血管奥の傷からも細胞が入り込んで、内幕の中はドロドロごちゃごちゃのお粥状態に。コブのように膨れ上がります。最終的にそのすきまは血小板によってふさがれますが、これが血管をふさぐ栓のようになってしまうこともあります。 極悪コレステロール・リポたんぱくLp(a)にも注目 コレステロールと動脈硬化に深いつながりがあること、おわかりいただけましたか?ところで、Lp(a)というリポたんぱくが注目されています。 体内には、血液が凝固したときに血液中でこれを溶かすシステム(線溶系)があります。Lp(a)はこのシステムを低下させ、血液を固まりやすくしてしまうことが、わかりました。このため、LDL(悪玉コレステロール)以上に動脈硬化を進行させる力があるのではないかと言われています。 ただし、このリポたんぱくはまだまだ未知数の部分が多く、今後の研究の動向が気になるところです。
この答えはYES。高コレステロールと深い関係がある動脈硬化。喫煙などによってさらに動脈硬化を進め、最終的には命にかかわる病気にかかってしまう可能性があります。 目次 動脈硬化の先には、こんな病気が待っている 虚血性心疾患 脳血管障害 動脈硬化を進める主な要因 動脈硬化の先には、こんな病気が待っている 動脈硬化も最初のうちは特に自覚症状がありません。しかし、そのまま放っておくとどんどん進み、ある日突然発作を起こして倒れてしまうことも多いようです。動脈硬化が原因となる深刻な疾患を紹介しましょう。 虚血性心疾患 心臓を動かす筋肉(心筋)に血液を送る動脈(冠状動脈)が、動脈硬化を起こした状態のことです。 ●狭心症 冠状動脈の血流が悪くなり、心筋に十分血液が供給されなくなるのが原因です。運動や仕事中に強い胸の痛みを感じるなどの発作が起こることが多く、死亡するのはまれのようです。 ●心筋梗塞 冠状動脈がふさがって心筋に血液が送れなくなり、心筋の一部が壊死します。寝ているときなどに突然、強い胸の痛みに襲われます。死亡するケースも多いです。 危険信号は、運動や興奮したりすると、心臓や上復部あたりが重苦しくなること。前胸部が痛むこともあります。 脳血管障害 脳内の動脈が動脈硬化を起こした状態です。このために脳に血液が送られなくなると、体のマヒ、失語などの後遺症が残ることが多いようです。このような症状を総称して「脳卒中」といいます。 ●脳出血 脳の動脈の一部が破れて脳の中に血腫ができます。活動中に急に頭痛や倒れるなどの発作が起きます。半身マヒ、昏睡に陥ることもあります。脳卒中の中でも死亡率が高いようです。高血圧のある人に起こりやすいようです。 ●脳梗塞 脳の動脈が詰まり、一部に壊死が起こる状態です。脳血栓と脳塞栓に分けられます。脳血栓は一過性の頭痛やめまいなどが繰り返され徐々に症状が重くなります。高脂血症、糖尿病、高血圧の人に多いと言われています。逆に、脳塞栓は急に発作が起こり、虚血性心疾患などが原因になることがあります。 危険信号としては、物忘れが増える、ぼんやりする、感情の起伏が激しくなる、頭痛やめまい、足のしびれ感がある、話そうとすると舌がもつれることが多いなどが挙げられます。 上記で紹介したのは、コレステロール値の高い人がかかる可能性の高い疾患です。このほか動脈硬化が原因で起こる病気には、腎疾患(腎硬化症など)、末梢動脈の動脈硬化、目の動脈硬化(眼底出血)などがあります。 動脈硬化を進める主な要因 動脈硬化を進める条件は、高コレステロールだけではありません。実際には次の表の諸条件がそれぞれ影響しあっています。思い当たることが多い人は要注意です。できるところから少しずつ改善していきましょう。 なお、思い当たることが多いものの、ここしばらく検査を受けていない場合は、まずは健康診断や血液検査を受けることをおすすめします。 動脈硬化を進める主な要因 高血圧 動脈の内壁に常に高い圧力がかかるため、内壁が損傷されやすいです。特に脳や腎臓の動脈硬化が多くなります。 高脂血症 LDL(悪玉コレステロール)が多い高コレステロール血症は、動脈の内壁にコレステロールが染み込みやすく、アテローム硬化(粥状動脈硬化)を促進します。特に狭心症や心筋梗塞などを起こしやすいです。 糖尿病 糖尿病の人は、中性脂肪や総コレステロール値の高い人が多いです。また、HDL(善玉コレステロール)が低くなる傾向もあります。 喫煙 1日1箱以上たばこを吸う人は、狭心症や心筋梗塞になる確率が吸わない人の約2倍という調査結果があります。たばこのニコチンは血液の粘性を高め、動脈壁内の中膜を傷つける作用があるためです。 肥満 肥満度が高くなると、LDL(悪玉コレステロール)が増えてHDL(善玉コレステロール)が減るといわれています。 ストレス ストレスが増えると血液中のコレステロールが増えてしまいます。また、高血圧や糖尿病なども 誘発しやすいようです。 運動不足 運動不足が続くと、血液中の中性脂肪やコレステロールが増えてしまいます。 甘い物または飲酒 大量の飲酒は中性脂肪を増やし、脳卒中の危険性が高まってしまいます。また、甘い物の摂り過ぎも中性脂肪を増やしてしまいます。
この答えはYES。コレステロールが高いと、がんにかかりやすいと言われていますが、コレステロールががんを引き起こすメカニズムについては、まだはっきりわかっていないことが多いようです。コレステロール値が高い人がかかりやすい病気をまとめました。 目次 高コレステロールが引き起こすさまざまな病気 糖尿病 脂肪肝 胆石症 急性膵炎 がん 高コレステロールが引き起こすさまざまな病気 糖尿病 食事から摂った砂糖などは消化されてブドウ糖となり、体内に吸収されます。そして、血液中に溶けて血糖という形で全身に運ばれています。これを筋肉細胞などがエネルギーとして利用するためには、インスリンというホルモンが必要です。このインスリンの作用が低下したり、分泌量が少なくなるのが「糖尿病」です。血糖がうまく使われなくなり、血液中の量が増え、血管を傷めてしまいます。特に腎臓や眼など毛細血管が重要なはたらきをする器官に悪影響を与えます。 糖尿病を放置していると、LDL(悪玉コレステロール)が増え、HDL(善玉コレステロール)が減ってしまい、動脈硬化にかかる可能性が高くなります。 脂肪肝 肝臓の肝細胞の中に脂肪が蓄積した状態です。長い間放置すると肝硬変などの危険な病気になることが多いようです。アルコールの飲み過ぎや糖尿病などが原因で起こることがあります。 胆石症 体内には、コレステロールが多くなると胆汁酸に作り変えて排出するはたらきがありますが、胆汁の通り道である胆道(胆のう、胆管など)に、コレステロールや胆汁成分などが固まって、石のようになってたまる病気です。突然、激しい上腹部痛にみまわれて発覚することが多いようです。しかし、ほとんど無症状で本人が気づかない場合も少なくありません。 急性膵炎 膵臓で作られる膵液という消化液のはたらきが活発になり過ぎ、膵臓の組織が消化されて(溶けてしまう)起こる病気です。胆石症に続いて起こるケースが多いです。 がん 日本人の食生活が肉中心に変わって、大腸がん、膵がん、乳がんなどが増加しているため、コレステロールとがんとの関係が研究されています。胆石症同様、コレステロールを排出するために過剰に作られ、腸内に排出された胆汁酸が、腸内細菌の作用で発がん物質に変わるのではないかと考えられています。ただし、詳しいメカニズムについてはまだわかっていないことが多いようです。
この答えはNO。コレステロールが高い人でも、1日に必要な量、たんぱく質はしっかり摂らなくてはいけません。ただし、摂りすぎは禁物です。では、どのくらいの量ならいいのでしょうか?コレステロールが多い人のための食生活をまとめました。 目次 1日の摂取カロリーの目安量を決めてしまおう コレステロールを多く含む食べ物に注意 そのほかの食生活の工夫 1日の摂取カロリーの目安量を決めてしまおう バランスのとれた食事をしながらダイエットを心がければ、同時にコレステロール値も少なくなっていきます。そこでまず大切なのが、1日の摂取カロリーです。 1日の摂取カロリーの目安 = 標準体重{(身長-100)×0.9}× 25 ~ 30kcal 例えば身長170cmの場合、 {(170-100)×0.9}×25~30kcal=1,575~1,890kcal つまり、約1,600kcal~1,900kcalになる。 身長150cm以下の人は0.9をかけなくてもよい。従って、 (150-100)×25~30kcal=1,250~1,500kcal 1,600kcalをとるか1,900kcalをとるかは、日頃どのくらい体を動かしているかで決めるのが一般的です。デスクワーク中心で通勤時間も短いという人なら低い方の値になります。ただし、突然大幅な食事制限に挑戦すると挫折してしまうことも多いため、最初は無理のないところから少しずつ試してみましょう。 コレステロールを多く含む食べ物に注意 当然ながら、コレステロールを多く含む食品には注意が必要です。次の表のように、コレステロールは主に卵や魚肉類(特に内臓)の脂肪に含まれています。 コレステロール値の高い人は、1日に摂る量を300mg以下に抑えたいところです。それなら卵を食べなければよさそうですが、卵は良質のたんぱく質やビタミンA、B2が豊富に含まれる食品。1日に小さめのM玉1個くらいは食べたいものです。どうしても量が気になるなら、うずらの卵(5~6個で鶏卵1個分)で調節することをおすすめします。 コレステロールを多く含む食品の例 食品名 1食あたりの使用量 コレステロール量 卵黄約22g(1個分)286mg 子持ちシシャモ(輸入)50g(3~4匹分)170mg いか刺し身50g150mg するめいか25g(1/4枚程度)245mg 車えび(養殖)50g(約1匹分)95mg うなぎ50g120mg しらす干し5g(大さじ1杯程度)12.5mg 鶏レバー50g185mg 若鶏もも肉(皮付き)50g47.5mg たらこ15g51mg すじこ15g76.5mg バター10g21mg マヨネーズ10g20mg カステラ50g95mg そのほかの食生活の工夫 高カロリー食品はなるべく避ける 摂取エネルギーを減らすためにまず見直さなくてはならないのは、肉類、油脂類、糖類(ごはんなどの穀類やお菓子ジュースなど)の摂りすぎです。食べる量を少なくするのはもちろん、同じ肉類でも赤身の部分を多く食べるようにするなど、質の改善も必要です。油脂類については、バター、マーガリン、ドレッシング、マヨネーズなど調味料を控えることを考えましょう。特に間食やジュースなど、決めた以上に摂らないことが大切です。 野菜、特に食物繊維の多い食品をたくさん摂る 野菜に含まれるビタミンやミネラルは、体の代謝を活発にするなどの重要な役目を担っています。また、血管の老化を防ぐなど、動脈硬化の予防にもつながる栄養素です。 海藻類やきのこ、乾物などに多く含まれる食物繊維は、生活習慣予防のために注目されています。腸内でコレステロールや中性脂肪、糖質を吸着して一緒に排せつさせてしまうはたらきもあります。 1日に食べたい野菜の量は300g。淡色野菜・緑黄色野菜・食物繊維が多い野菜…とバランスよく食べるようにしましょう。 1週に3~4回は魚類のメニューにする 同じ脂肪でも、魚類に含まれる脂肪は善玉コレステロール(HDL)を増やすはたらきがあります。このほか、オリーブオイルなどに含まれているオレイン酸に、悪玉コレステロールを減らし善玉コレステロールを増やすはたらきがあるとして注目されています。 豆製品を見直してたんぱく質をしっかりとる 腎臓の機能に障害がない限り、たんぱく質をむやみに避ける必要はありません。例えば肉や魚の動物性たんぱく質なら、男性120g、女性100gぐらいが1日の目安です。といっても、これまでの食生活から考えると「これは少ない」と思う人が大部分でしょう。足りない分は豆腐などの大豆製品で補いましょう。大豆製品に含まれるたんぱく質は良質であるだけでなく、コレステロールを下げるはたらきがあることも確認されています。
脂質異常症は血液中の中性脂肪(トリグリセライド)値、コレステロール値が下の基準を超えているかどうかで診断されます。診断基準をご紹介します。 目次 脂質異常症の診断基準 脂質異常症のタイプを知ろう 1. 中性脂肪値が特に高いタイプ 2. 中性脂肪値と悪玉コレステロール(LDL)値が高いタイプ 3. 善玉コレステロール(HDL)が少ないタイプ 脂質異常症の診断基準 脂質異常症は血液中の中性脂肪(トリグリセライド)値、コレステロール値が下の基準を超えているかどうかで診断されます。これは統計的に、この値を超えると動脈硬化や心筋梗塞などになる人が多いということで定められました。 総コレステロール220mg/dL以上 LDL(悪玉)コレステロール140mg/dL以上 中性脂肪(トリグリセライド)150mg/dL以上 HDL(善玉)コレステロール40mg/dL未満 HDLには余分なコレステロールを肝臓に戻すはたらきがあり、HDLが減ってしまうとコレステロールが血管にたまって、動脈硬化の危険が増すと考えられています。 なお、これは日本の基準であり、総コレステロール200mg/dL以上という厳しい基準を適用している国もあります。動脈硬化などは実際に、200mg/dLを境に急上昇するという統計もあります。 脂質異常症は肥満や高血圧と同様、ほかの深刻な病気を引き起こすことがあります。基準値ギリギリで「症」がつかなくても、「脂質異常」の状態であることにに変わりはありません。特に、普通より動脈硬化になりやすい生活習慣がある人(ストレスを感じることが多い、喫煙習慣があるなど)は、生活を改善することが望ましいといえます。 脂質異常症のタイプを知ろう 脂質異常症はいくつかのタイプに分類できる。代表的なものを紹介しましょう。 1. 中性脂肪値が特に高いタイプ 脂質異常症の中でもっとも出現頻度が高いタイプです。甘い物やアルコールの摂りすぎなど生活習慣が原因になることが多いようです。 ■併発する恐れのある病気 膵炎(アルコール多飲者に多い)、脂肪肝、胆石症。また、動脈硬化の原因になるという説も多いです。 ■治療法 原因となる食習慣の改善。運動療法。それでも効果がない場合、薬物療法を行うこともあります。 2. 中性脂肪値と悪玉コレステロール(LDL)値が高いタイプ 日本人の脂質異常症のうち約20%を占めています。肉類やスナック菓子に含まれる脂肪(飽和脂肪酸)やコレステロールを摂りすぎ、食物繊維を含む食品を摂らないと起こることがあります。 ■併発する恐れのある病気 動脈硬化や心筋梗塞、狭心症など虚血性心疾患を起こす率が高いです。 ■治療法 原因となる食習慣の改善。全体的な食事のカロリー制限。運動療法。それでも効果がない場合、薬物療法を行うこともあります。 3. 善玉コレステロール(HDL)が少ないタイプ 糖質、脂肪、アルコールを摂りすぎると、中性脂肪やLDLが増え、HDLが少なくなることがわかっています。運動不足、喫煙も同様。また、極端なダイエットでたんぱく質を極端に減らした場合も善玉コレステロールは減ってしまいます。 ■併発する恐れのある病気 HDLは動脈硬化を防ぐはたらきをするため、減ってしまうことにより動脈硬化の危険度が増すとされています。 ■治療法 原因となる生活習慣の改善。 「原因」については、生活習慣的なもののみ紹介しましたが、このほかに遺伝的なもの、病気が原因になるケースもあります。基準値より高い場合はもちろん、基準値ギリギリの場合も医師に相談してみることが大切です。 公開日:2014年7月7日
脂肪とヒトコトで言っても種類はさまざまです。悪玉コレステロールになりやすい脂肪、善玉コレステロールを増やす脂肪があります。これらの食品を覚えてバランスよく食べるようにすることで、血液中のコレステロール値を下げることができます。 目次 コレステロールを多く含む食べ物は? 「飽和脂肪酸」の摂りすぎに注意! 食物繊維はコレステロールの摂りすぎも防ぐ コレステロールを多く含む食べ物は? コレステロールを多く含む食品の例 食品名 1食あたりの使用量 コレステロール量 卵黄約22g(1個分)286mg 子持ちシシャモ(輸入)50g(3~4匹分)170mg いか刺し身50g150mg するめいか25g(1/4枚程度)245mg 車えび(養殖)50g(約1匹分)95mg うなぎ50g120mg しらす干し5g(大さじ1杯程度)12.5mg 鶏レバー50g185mg 若鶏もも肉(皮付き)50g47.5mg たらこ15g51mg すじこ15g76.5mg バター10g21mg マヨネーズ10g20mg カステラ50g95mg 上記のように、コレステロールは主に卵や魚肉類(特に内臓)の脂肪に含まれています。 コレステロール値の高い人は、1日に摂る量を300mg以下に抑えるようにしましょう。それなら卵を食べなければよさそうですが、卵は良質のたんぱく質やビタミンA、B2が豊富に含まれる食品です。1日に小さめのM玉1個くらいは食べたいもの。どうしても量が気になるなら、うずらの卵(5~6個で鶏卵1個分)で調節することをおすすめします。 「飽和脂肪酸」の摂りすぎに注意! 脂肪には脂肪酸という物質が含まれています。皆さんがよく耳にするリノール酸、オレイン酸、 EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)などのことです。脂肪酸は大きく次の3つに分類されます。それぞれの特徴をまとめました。 代表的な脂肪酸 特徴 多く含む食品 飽和脂肪酸 パルミチン酸など 摂りすぎると肝臓でコレステロールの形成を促進し、悪玉コレステロールを増加させます。 パーム油(植物油の一種)、豚や牛の脂肪分、バターなど 多価不飽和脂肪酸 リノール酸、EPA、DHAなど 悪玉コレステロールを減らして、動脈硬化の原因となる血栓の生成を防ぎます。 しかしリノール酸を摂りすぎると、悪玉だけでなく善玉コレステロールまで減らしてしまいます。 リノール酸:サフラワー・ひまわり・サラダ油など多くの植物油、ごま・松の実など種実 EPA:すじこ、はまち、いわし、にしん、さばなど DHA:本マグロ脂身、すじこ、まだい、ぶり、さばなど 一価不飽和脂肪酸 オレイン酸など 多価不飽和脂肪酸と同様に悪玉コレステロールを減らすが、善玉コレステロールは減らさないという実験報告がなされ、最近注目を浴び始めています。 オリーブ油、なたね油、調合サラダ油、ヘーゼルナッツ、マカダミアナッツ、牛、豚、鶏肉の脂肪分 表を見て「オレイン酸を含む食品ならたくさん食べても大丈夫」とは誤解しないでください。例えば牛や豚の脂肪ですが、オレイン酸だけでなく飽和脂肪酸も含んでいます。また、マカダミアナッツを食べ過ぎれば、コレステロールは増えなくても、中性脂肪は増えてしまいます。 体にいいと言われている脂肪でも摂りすぎ、偏るのはよくありません。摂取量を守った上で、飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸をバランスよく摂るよう、いろんな食品を組み合わせて調理することが大切です(1:1.5:1の比率が望ましい)。 食物繊維はコレステロールの摂りすぎも防ぐ 食物繊維は腸の中で、中性脂肪だけでなくコレステロールも吸着し排出させてくれる優れものです。ひじきや大豆、ごぼうなどに多く含まれています。ひじきと大豆の煮物や根菜類の煮物なども積極的に食卓に取り入れていくといいでしょう。 食物繊維を多く含む食品はこちら コレステロールを下げる献立作りのコツはこちら
脂質異常症を防ぐ第1歩は、食生活の改善です。面倒なくできるコツをご紹介します。最初のうちは、食事のたびにチェックするようにしましょう。そのうち、それぞれの数字が頭に入ってメニュー選びも楽になるはずです。 目次 1日に食べるものの割り振りを簡単に決める 外食のカロリー表 1日に食べるものの割り振りを簡単に決める 下に示す表は、4つの食品群をもとに作成した朝・昼・夕の献立の献立の目安です。総カロリーは約2,000~2,200kcal(女性約1,600~1,800kcal)です。普段あまり体を動かさない人は少なめ、体を動かす人は多めに、自分に合った量を設定しましょう。 「昼食・夕食」は、外食がちの人のために総量を示しています。昼・夜の総量が、この範囲内におさまるように意識しましょう。家庭料理が多い人は、自分の生活に合わせて、昼の分・夜の分を振り分けておくと便利です。 ※男女で摂取量が違う食品は( )内を女性の摂取量としました。 食品群 朝食 昼食 夕食 間食 乳製品 牛乳1杯(150g) - チーズ約20g 卵・魚介肉・豆類 卵 1個 肉または魚 120g(100g)、納豆40gまたは豆腐100g - 野菜・果物 120g(2口分×4種類を目安に) 例:トマト・きゅうり1/4切れ、ブロッコリー30g(3房ぐらい)、玉ねぎ約1/4個ぐらい 180g(5種類以上を目安に) 根菜類や乾物など食物繊維の多い野菜を使うおかずを一品 例:きんぴらごぼう、切り干し大根、ヒジキの煮物、筑前煮など 果物200g程度 芋類 100g分をどこかで。 穀類 6枚切食パン1~2枚(1枚) ごはんのみの場合茶わん4杯程度=約540~約590g(2~3杯=約320~約430g) ごはん+めん類の場合茶わん2杯程度=約300~350g(0.5杯~1杯程度=約80~190g)+めん類1食分 - 砂糖(おやつ) 1日20gが目安。 右の間食を摂る場合は15g。 ※15gの目安は大さじ1.5杯 クッキー2枚程度(16g) コーヒー(砂糖2g入) 油脂 バターまたはマーガリン小さじ1杯=5g 20g(10g)、間食を摂る場合は15g(5g) ※15gの目安は大さじ1杯+小さじ0.5杯 ポテトチップス10枚程度(14g) この表の振り分けは、あくまでもひとつの例です。朝は忙しくて野菜が摂りにくい人は、昼食や夕食の量を増やしてもかまいません。また、朝食にごはんと魚の干物、昼食にパンと卵というように、日によって入れ替えてバリエーションをつけてもいいでしょう。 野菜のうち1/3は、緑黄色野菜(ほうれん草、にんじん、かぼちゃなど)にします。 1日1食、少なくとも2日に1食は魚を摂るようにします。 カロリーの調整は、穀類と油脂を中心に行います。魚・肉は激しい労働をする男性でも1日150g摂れば十分です(油脂の上限は男性40g、女性30g)。 外食のカロリー表 昼食が外食になりがちの人ために、人気外食メニューのカロリーなどをまとめました。昼食にボリュームのある食事をしたら、夕食は軽くするなど総量が多くなりすぎないように心がけましょう。 ※表中のカロリー表示はひとつの例です。同じメニューでもお店によって異なることがあります。 ファーストフード バーガー類は400~500kcal台が多いようです。比較的カロリーが低いのは、ライスバーガー類、鶏の照焼きをそのままはさんだチキンバーガー、シンプルなハンバーガー、チーズバーガーなど。サラダは、グリーンサラダなどドレッシングの量を自分で調節できるものがいいでしょう。 メニュー カロリー てりやきバーガー480kcal てりやきチキンバーガー320kcal ポテトSサイズ270kcal チキンナゲット5個260kcal ポテトサラダ232kcal コールスロー139kcal お弁当・定食類 お弁当や定食は、付け合わせとして野菜類が摂れるのが魅力です。しかし、から揚げやコロッケなど揚げ物中心のメニューはカロリーも脂質も大。揚げ物メニューは週に2回くらいなど、自分で制限量を決めておきましょう。 メニュー カロリー 幕の内弁当771kcal からあげ弁当1034kcal ロースかつ定食1016kcal 和風ハンバーグ定食949kcal さしみ定食713kcal さわらの味噌煮定食759kcal ホイコーローセット729kcal 酢豚セット850kcal 一品メニュー 1品メニューは、揚げ物が入らない限りそれほどカロリーは高くありませんが、野菜類が足りないのが問題です。「600kcalくらいまでのもの」+「野菜サラダ」など、摂り方を考えましょう。サラダはドレッシングを別にしてもらい、自分でかけましょう。 メニュー カロリー スパゲティミートソース599kcal 和風ツナおろしスパゲティ493kcal チキンドリア1016kcal ミックスピザ758kcal ビーフカレー約650kcal オムライス896kcal チャーハン490kcal とんこつラーメン552kcal 天丼808kcal うな丼790kcal まぐろのたたき丼616kcal 中華丼512kcal 牛丼528kcal きつねうどん382kcal
ご存じの通り、コレステロールというのも脂肪の一種。中性脂肪と同じように、体に貯まりすぎると害になると言われているモノです。それでは、コレステロールと中性脂肪、どこが同じでどう違うのか、お互い何か関係あるのか、簡単にまとめてみましょう。 目次 体内には4種類の脂肪が存在する -脂肪酸・中性脂肪・コレステロール・リン脂質- コレステロールには善玉コレステロールと悪玉コレステロールがある 中性脂肪が増えると善玉コレステロールを減らしてしまう 体内には4種類の脂肪が存在する-脂肪酸・中性脂肪・コレステロール・リン脂質- 人間の体内には下の表のように、4種類の脂肪が存在します。中性脂肪は3つの脂肪酸とグリセロールという物質が結びついたものです。つまり、脂肪酸はすぐに使えるエネルギー、中性脂肪は貯蔵用のエネルギーということになります。一方、同じ脂肪でもコレステロールは体内の細胞膜やホルモンの材料なのです。 脂肪酸 生きていくために、また、活動するために必要なエネルギーとして利用されます 中性脂肪 別名、トリグリセライド。脂肪細胞の中に貯えられています。必要に応じて脂肪酸になり、エネルギーとして使われます コレステロール 細胞膜の構成成分。ステロイドホルモンの材料、胆汁酸の材料にもなります リン脂質 細胞膜の構成成分。疎水性物質の親和性を保たせます コレステロールには善玉コレステロールと悪玉コレステロールがある コレステロールには善玉といわれるHDLと、悪玉といわれるLDLがあります。 LDLは食物から取り入れられたり肝臓で合成され、血液中を通って全身に運ばれて細胞膜やホルモンの合成に使われます。 ところが、血液中のLDLが増えすぎると血管壁の傷ついたところなどに付着し、結果的に血管を細くして、動脈硬化の原因になってしまいます。 一方、HDLは血管に付着したLDLを取り去って肝臓に運ぶはたらきをします。だから、体内に多ければ多いほどいいのですが、現代の日本人は逆パターンの人が多いようです。 コレステロールを増やす食品としては肉類が代表的。現代の肉中心の食生活で、LDLは増える一方のようです。 中性脂肪が増えると善玉コレステロールを減らしてしまう 最近、血液中の中性脂肪が増えると、善玉であるHDLコレステロールを減らし、悪玉コレステロール(LDL)が増えてしまうことがわかってきました。つまり、中性脂肪の増加によって動脈硬化を促進させてしまう可能性があります。 これが「脂質異常症(高脂血症)」といわれる病気。血液中の中性脂肪や悪玉コレステロールが基準値を超えてしまった状態のことです。 高脂血症には中性脂肪値が高い「高トリグリセライド症」とコレステロール値が高い「高コレステロール症」があります。いずれも、この時点では自覚症状はほとんどなく、動脈硬化が起こって初めてわかるケースも多いようです。
HDL40mg/dl以下が低HDL血症 コレステロールを体の末端組織から肝臓に運んで動脈硬化を予防するHDLが40mg/dl以下になるのを、低HDL血症といいます。 動脈硬化を予防する善玉コレステロールが減るために、動脈硬化が促進されてしまいます。HDLを増やすのは、脂肪の中では多価不飽和脂肪酸(n-3系)のエイコサペンタエン酸(EPA)や一価不飽和脂肪酸のオレイン酸です。 適量のアルコールはHDLを増やす 低HDL血症の時の献立例としては、イワシのペッパー焼き、アサリの白ワイン蒸し、アボガドサラダ、ミネストローネスープ、ご飯はいかがでしょうか。イワシなど青い魚の脂肪にはEPAが多く含まれます。 イワシのペッパー焼きは、手開きにし中骨も取ったイワシに塩・コショウし、パン粉と刻んだパセリとオリーブ油を混ぜたものをまぶし、スライスしたマッシュルームを散らして、薄く油をひいた180度のオーブンで7、8分焼きます。 アサリなど貝類やイカ、タコにはタウリンが多く含まれています。タウリンにはコレステロールを下げるはたらきもありますが、血圧を下げたり不整脈の改善や強心作用など動脈硬化を予防するはたらきもあります。 サラダにはスライスしたアボガドにフレンチドレッシングをかけていただきます。アボガドにはオレイン酸が多く含まれます。 ミネストローネスープは、カロチンや食物繊維をたっぷり含んだ野菜スープです。 また、適量のアルコールはHDLを増やしますので、献立にワインを付け加えても良いでしょう。
野菜・魚中心の献立で成功 50代の主婦A子さんは健康診断で、コレステロール260mg/dl、中性脂肪は163mg/dlと言われました。お菓子や牛乳が好きな上に、ちょうど更年期でコレステロールが上昇しやすくなっていました。 食事療法で今までの生活を見直し、魚中心で、豆、野菜、海藻を増やし、お菓子は和菓子に変え、ウォーキングなど軽い運動も始めました。6ヵ月後に総コレステロールが183mg/dlまで下がりました。 同世代でやはり洋菓子好きでコレステロールが283mg/dlと高かったB子さんは、EPAを多く含む魚を週に10切れ以上取り、お菓子の代わりに食事の豆、野菜、海藻を増やし、1日1万歩のウォーキングも実行、20ヵ月後に総コレステロールを221mg/dlまで下げることに成功しました。 コレステロール値が下がることが自炊の楽しみ 30代のサラリーマンのCさんは検診で高脂血症と診断されました。総コレステロールが363mg/dlもあり、30%の肥満もありました。 朝食なし、昼食はラーメンや天どんなどの店屋物、夕食は焼きそばとご飯に買ってきた惣菜、夕食後にスナック菓子といった調子で、糖質と脂肪分が過剰になっていました。 この男性は父親と2人暮らしだったので、コレステロールが高いと指摘されてからは交代で自炊することにしました。不足しがちな魚、野菜、豆類、緑黄色野菜、海藻を食卓に欠かさないようにし、夕食では脂っこいものは控え、食後のスナック菓子もやめました。 コレステロール値が下がることが自炊の楽しみにもなり、8ヵ月後には総コレステロール217mg/dl、肥満度も20%に下がりました。
糖尿病によって動脈硬化は急速なスピードで進む 高脂血症と診断された場合、別の病気があって二次性か、ほかに病気のない原発性かを調べる必要があります。 糖尿病、腎臓病、内分泌疾患が原因で、血液中の中性脂肪やコレステロールの値に異常が出る場合があるからです。 特に二次性では動脈硬化が加速したり、病気が急激に悪くなるため注意が必要です。 糖尿病があると、動脈硬化は急速なスピードで進みます。血糖が増えるとLDLが変性しやすくなるなど、脂質代謝異常が引き起こされます。 インシュリンの作用の低下(インシュリン抵抗性)があると、すい臓はインシュリンが不足していると考えて、インシュリンを分泌します。このために生じる高インシュリン血症は血圧を上げたり、血管壁にコレステロールが蓄積されやすい状態をつくったりします。 慢性腎不全に陥る可能性がある高脂血症 慢性腎炎の経過中に起きるネフローゼ症候群では、尿中に排出されたたんぱく質の代わりに血液中のコレステロールが上昇し、動脈硬化を促進します。 また、糖尿病や高血圧を合併した高脂血症は動脈硬化を促進し、慢性腎不全に陥る可能性があります。 内分泌疾患の甲状せん機能低下症になると、脂質の代謝に影響します。甲状せんホルモンは、血液中のコレステロールを低下させるはたらきがあるからです。 甲状せん機能が低下すると動脈硬化を促進します。
肉類の脂肪は血液中のコレステロールを上げる 肉類の脂肪には飽和脂肪酸が多く含まれています。 飽和脂肪酸は化学的に安定していて酸化しにくく、血液中のコレステロールを上げるはたらきがあります。 飽和脂肪酸によって肝臓で合成されたコレステロールは、細胞膜やホルモンなどの成分として重要な役割を果たします。 コレステロールが少な過ぎると脳出血が起こりやすくなるという報告もあります。 魚類の脂肪は動脈硬化を防ぐ 魚類の脂肪には不飽和脂肪酸が多く含まれています。イワシ、サバ、マグロなどに多く含まれる不飽和脂肪酸、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)は化学的に不安定で酸化しやすい性質がある反面、血液中のコレステロールや中性脂肪を下げて、動脈硬化を防止するはたらきがあります。 肉類と魚類とどちらの脂肪もバランス良く取ることが大切です。
EPA、オレイン酸はHDLを増やす 摂取する脂肪のタイプで、HDLを上げたり、LDLを下げたりできます。 高脂血症には低HDL血症、高LDL血症と呼ばれるものがありますが、これらの高脂血症では、摂取する脂肪のタイプのバランスを調整することが食事療法の一環となっています。 HDLを上げるはたらきがあるのは、多価不飽和脂肪酸(n-3系脂肪酸)のエイコサペンタエン酸(EPA)や一価不飽和脂肪酸のオレイン酸などです。 新鮮な青魚の脂肪を摂取 EPAはイワシ、サバ、サンマなど青い魚の脂肪に多く含まれており、HDLを上昇させるだけでなくLDLを減らす作用があります。 従って、これらの魚を料理する時は、焼き魚のような脂肪を捨ててしまう調理法よりも、新鮮な魚の脂肪も一緒に食べられるような鍋、ムニエル、煮付けなどの調理法が適しています。 オリーブ油などに多く含まれているオレイン酸にも、HDLを高く保つだけでなく、動脈硬化を促進するLDLを下げるはたらきがあります。適量であれば、アルコールもHDLを上昇させるはたらきのあることが分かっています。また適度な運動や飲酒もHDLコレステロールを上昇させます。
総摂取エネルギーを適正に LDLは動脈硬化を促進する悪玉コレステロールです。LDLを減らすには、肝臓で合成されるコレステロールを減らすため、まず総摂取エネルギーを適正化することが大切です。総摂取エネルギーは標準体重に仕事量の軽重を考慮して求めます。 また、3大栄養素のうち総脂肪は30%以下に制限します。具体的には脂質20~25%、タンパク質15~20%、糖質55~65%です。 1日の総コレステロールを300mg以下に 次に、1日の総コレステロール摂取量は300mg以下に制限します。ちなみに卵には1個当たり250mgのコレステロールが含まれています。 摂取する脂肪の中身では、飽和脂肪酸を多く含む動物性脂肪を取り過ぎると、肝臓でのコレステロールの合成が高まるとともに、動脈硬化を促進するLDLを取り込んで処理する、肝臓のLDL受容体のはたらきが悪くなります。その結果、LDLを上昇させますから、取り過ぎないよう注意が必要です。
食物繊維は血液中のコレステロールを下げる 肝臓で合成されたコレステロールは、胆汁液の原料である胆汁酸になります。 胆汁液は十二指腸で消化液として分泌されて脂肪の消化・分解を助け、小腸で吸収されて再び肝臓に運ばれます。 これは胆汁酸の腸肝循環と呼ばれていますが、食物繊維は小腸で胆汁酸を吸着して脂質やコレステロールが再吸収されるのを防ぐはたらきがあります。その結果、血液中のコレステロールが下がることになるのです。 水溶性の食物繊維の方が効果が高い 食物繊維にはグルコマンナン、ペクチン、グアガムなどや、玄米などの穀類、豆、海藻、果物に含まれる水溶性繊維と、セルロース、ヘミセルロース、キチン、リグニンなど野菜に含まれる不溶性繊維の2種類があります。 どちらも胆汁酸の吸着作用がありますが、特に前者の水溶性食物繊維の方が吸着作用は大きいといわれています。高コレステロール血症の場合は治療上、1日20~30gの食物繊維を取ることが望ましいとされています。
肉の脂肪は落とす 高脂血症の原因としては、遺伝や不適切な食事や運動不足があげられます。後者が原因の高脂血症は、肉や魚の調理方法や調理器具を工夫することで予防できます。 肉の動物性脂肪には、取り過ぎると高脂血症の原因となる飽和脂肪酸が多く含まれています。そのため、シチューやすき焼きのように肉の脂肪を丸ごと使う調理方法より、ゆでる、蒸すといった調理方法がおすすめです。熱を通す間に脂肪を落とせます。 肉と魚、脂肪を含むものの調理法の違い 焼く場合は、肉の油を生かすフライパンや鉄板を使うより、網焼きの方が脂肪を落とすことができてベターです。 煮る場合は、すき焼きよりもしゃぶしゃぶの方が食べる脂肪が少なくて済みます。ただし、しゃぶしゃぶの最後のスープは残すようにします。 魚の場合、特にイワシ・サバなど青い魚の脂肪、マグロのトロの部分には、高脂血症を予防するエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)といった不飽和脂肪酸が多く含まれています。そのため、肉料理とは逆に脂肪を逃がさない刺身、酢漬け、煮付け、鍋、フライパンを使ったムニエル、ホイル焼きなどの調理方法がおすすめです。 ちなみに厚切りより薄切りの方が、熱を通した時、脂肪が落ちやすいといわれます。 肉は薄切り、魚は厚切りの調理が良いといえます。
魚・野菜の多い料理を選ぶ 動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸を取り過ぎると、肝臓でコレステロールの合成が活発になり、動脈硬化を促進するLDLが増えます。動物性脂肪に偏りがちの外食では、脂肪の量を少しでも減らせるメニューを意識して選びます。 まず、動物性脂肪の多い肉料理よりも、魚料理、野菜の多い料理です。 どうしても肉料理になる場合は、霜降りステーキ、ロースカツ、ハンバーグよりも、脂肪の少ないヒレカツです。 またモツ鍋、タン、ハツなどの焼き肉や、あんこうの肝などの内臓類には脂肪やコレステロールが多く含まれますので注意しましょう。 調理法や、ドレッシングにも注意 調理法も、できるだけ肉の脂肪を落とせるようビーフシチュー、すき焼きなどより、しゃぶしゃぶ、網焼きなどが良いのです。 また、例え魚料理であっても洋食にはバターが使われることも多いので、ソースは残すか、もしくは和食を選びます。 サラダは、マヨネーズよりもオリーブ油のドレッシングを選びます。
バランス良いメニューを 惣菜店は調理済みの料理を必要な量だけ買うことができて便利ですが、自分の好みのものだけに偏りがちです。主食(ご飯など)、主菜、副菜をバランスよく買うようにします。 コレステロールや動物性脂肪の取り過ぎを控えるために避けた方が良いメニューは、たっぷりの油を使ったギョウザ、トリの唐揚げ、ハンバーグ、肉団子、春巻き、酢豚、マヨネーズを使ったマカロニサラダなど。 また、ニラレバいため、モツ煮込み、だし巻き卵などもコレステロールが高い内臓類の肉や卵を使っています。
動脈硬化を引き起こし、さまざまな生活習慣病をもたらす 血液中の脂質のうち、コレステロール(LDLまたはHDL)、中性脂肪(TG)、リン脂質などのいずれかが標準値より高い値であれば、高脂血症と診断されます。高脂血症には、高コレステロール血症、高中性脂肪血症、高HDL血症などがあります。 遺伝性、もしくは不適切な食事や運動不足が原因で、血中の脂質が過剰となり、動脈硬化を引き起こして虚血性心疾患などのさまざまな成人病をもたらします。 診断基準については、虚血性心疾患などの動脈硬化性疾患の発生率と血漿(けっしょう)脂質の値の相関についての疫学調査から検討されています。 日本動脈硬化学会の診断基準では、コレステロール値220mg/dl、中性脂肪150mg/dlが採用されています。いずれかがこの値以上なら高脂血症と診断されます。 食事、運動、薬物などの治療法 治療には食事療法・運動療法の他、薬物療法があります。食事療法・運動療法の効果が期待できるのは、不適切な食事や運動不足を原因とする高脂血症の軽度から中等度のものといわれています。また動脈硬化の危険因子(たばこ、ストレスなど)や合併症などがあれば、薬物療法が行われます。 コレステロール値・中性脂肪値と高脂血症(単位:mg/dl) 正常域 高脂血症 総コレステロール 120~219 220以上 LDLコレステロール 70~139 140以上 HDLコレステロール 40以上 39以下 中性脂肪(トリグリセリド) 50~149 150以上
脂肪の摂り過ぎはエネルギーの過剰を招き、血中の中性脂肪やコレステロールを増加させ、やがて動脈硬化になる可能性を高めます。動脈硬化はさまざまな病気の原因となる生活習慣病発生の原因となります。 目次 やがて動脈硬化につながるコレステロールや中性脂肪の増加 さまざまな病気を誘発する動脈硬化 やがて動脈硬化につながるコレステロールや中性脂肪の増加 脂肪を摂取し過ぎると、第一にエネルギー過剰のために肥満となり、生活習慣病を誘発しやすくなります。また血液中の脂肪が増えて最終的にコレステロール、中性脂肪が高くなり動脈硬化の発生を促進します。動脈硬化は、 高血圧、高脂血(脂質異常症と言います)、過酸化物質などによる血管壁の内皮の障害 体の隅々にコレステロールを運ぶ低比重リポタンパク(LDL)が白血球の一種のマクロファージに食べられ内皮へ侵入 血管壁内に大量にコレステロールが取り込まれる コレステロールの沈着・蓄積による血管内腔の狭まりや硬化 という順番で起こります。動脈硬化の予防には、コレステロールを下げてLDLを増やさないようにすることが大切です。 さまざまな病気を誘発する動脈硬化 動脈硬化を原因とする生活習慣病には狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患、脳梗塞などの脳血管障害、大動脈瘤や末梢動脈硬化症があります。 糖尿病では、高脂血症を合併すると心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなります。 コレステロールを下げるはたらきがあるといわれる不飽和脂肪酸の多い植物油、魚油の摂り過ぎでも、過酸化脂質の過剰な生成を招き、かえって動脈硬化の誘因になる可能性もあります。 ■関連記事 リスク指標が刷新!脂質異常を再確認 10年以内の心筋梗塞などを発症する確率を予測 あなたの動脈硬化のリスクをチェックしよう!
エネルギーの過剰摂取や運動不足で起きる高脂血症 高脂血症は遺伝もしくはエネルギー摂取の過剰や運動不足が原因で、血液中のコレステロールや中性脂肪が過剰となった状態です。総コレステロールが220mg/dl以上、中性脂肪が150mg/dl以上の場合、高脂血症と診断されます。 コレステロールは血液の中で低比重リポタンパク(LDL)と高比重リポタンパク(HDL)に含まれて存在しています。LDLは肝臓から末しょう組織へコレステロールを運びます。HDLは末しょう組織で余ったコレステロールを抜き取って肝臓へ運びます。 コレステロールを蓄積させ、動脈硬化の原因に 高脂血症になると、末しょう組織にコレステロールを運ぶLDLが増加します。過剰になったLDLは血管壁に取り込まれ、コレステロールを蓄積させます。 変性したLDLが白血球の一種であるマクロファージに取り込まれ、そのマクロファージが血管壁内に入り込んでコレステロールを沈着させるのです。 その結果、動脈硬化が起こり血管は狭くなったり詰まったりします。 動脈硬化は、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、脳高速などの脳血管障害、大動脈りゅうや末梢動脈硬化症など生活習慣病の原因となります。
生命維持に重要なコレステロール 両方とも体の中の脂質の一種ですが、コレステロールは体内の構造脂質、中性脂肪は貯蔵脂質です。 コレステロールは細胞膜の成分として、あるいはステロイドホルモン、性ホルモン、胆汁酸、ビタミンDの材料として生命維持に重要な役割を果たしています。 コレステロールは血液中では高比重リポタンパク(HDL)や低比重リポタンパク(LDL)に包まれて存在します。 体内のコレステロールのうち、食べ物から摂取されたものは約3割に過ぎません。残りの7割は糖質や脂肪酸を材料に、主として肝臓のほか皮膚、腸粘膜、副腎、腎臓、卵巣、精巣などで合成されます。 エネルギー源として活用される中性脂肪 一方、中性脂肪は、摂取した糖質、たんぱく質、脂質のうち、余分なものが貯蔵脂質として皮下の脂肪組織や肝臓に蓄えられたものです。 血液中では、カイロミクロンや超低比重リポタンパク(VLDL)と呼ばれるリポタンパクが運搬役を果たしています。 食物が不足すると、中性脂肪は脂肪酸とグリセロールとに分解され、脂肪酸は各臓器でエネルギー源として、グリセロールは肝臓のエネルギー源として活用されます。
コレステロールを運ぶリポタンパクのHDLとLDL 血液中のコレステロールは、たんぱく質と複合体を形成してリポタンパクとして存在しています。リポタンパクは、比重の重さによってhigh density lipoprotein(HDL、高比重リポタンパク)、low density lipoprotein(LDL、低比重リポタンパク)、very low density lipoprotein(VLDL、超低比重リポタンパク)、cylomicron(カイロミクロン、乳び脂球)の、4種類に分けられます。 その内、コレステロールを主に運んでいるのがHDLとLDLで、HDLに運ばれているコレステロールをHDLコレステロール、LDLに運ばれているコレステロールをLDLコレステロールと呼んでいます。 悪玉のLDLと善玉のHDL 2つのリポタンパクはまったく逆のはたらきをしており、HDLが体の隅々の血管壁にたまったコレステロールを抜き取って肝臓に運ぶのに対して、LDLは肝臓のコレステロールを体の隅々に運んでいます。 LDLコレステロールが増えると、体の隅々に運ばれるコレステロールが増えて動脈硬化を促進する方向に傾くため、LDLは「悪玉コレステロール」と呼ばれています。 逆にHDLコレステロールは、体の隅々の余分なコレステロールを肝臓に運び、動脈硬化の防止につながるため「善玉コレステロール」と呼ばれています。
変性したLDLを食べるマクロファージ たばこなどのフリーラジカルが原因で、肝臓から体の各部へコレステロールをせっせと運搬しているLDLが変性すると、白血球の一種であるマクロファージに食べられてしまいます。脂肪を取り過ぎてLDLが過剰になると、変性LDLも増えますからマクロファージは、どんどんLDLを取り込みます。 そのマクロファージが動脈硬化の原因を引き起こす 変性したLDLを始末してくれるマクロファージですが、LDLを取り込んでしまうと、今度は自身が炎症などを起こして広がった血管壁の内皮細胞のすき間に入り込んで、動脈硬化の原因になってしまいます。 血管壁に入り込んだマクロファージが、LDLと一緒に取り込んだコレステロールを抱えたまま泡末細胞になって壊れると、血管壁内にコレステロールを沈着させたり血管壁を内側に膨れさせてしまったりして、血管を狭めたり、時には血流を完全にふさいでしまうことがあるのです。 このような形で進行した動脈硬化をアテローム性動脈硬化、アテローム病変、またはアテローマと呼んでいます。
コレステロールは血管内にたまる コレステロールは細胞膜、ホルモンなどの材料となるために、肝臓から体の各部へ、各部から肝臓へと行ったり来たりしています。HDLは、余分になって末しょう臓器の細胞の表面に表れたコレステロールを取り込んで、肝臓へ運ぶリポタンパクです。 コレステロールが悪いといわれるのは、体の隅々へ運ばれたコレステロールが、血管壁内に取り込まれたり沈着したりして血管の内腔を狭め、血管の壁を硬化させたり、血液の流れを悪くしたり、止めてしまったりするからです。これを動脈硬化と呼びます。 HDLはコレステロールを肝臓に戻す しかし、余分なコレステロールを血管壁から抜き取って肝臓に戻すHDLが運ぶHDLコレステロールは、動脈硬化とは逆のはたらきをすることになります。 HDLの値が低くなりすぎると虚血性心疾患や脳こうそくなどの発生率が上がることが分かっています。 だからHDLコレステロールは「善玉」と呼ばれるのです。HDLコレステロールの値の正常域は40mg/dl以上です。
LDLは肝臓から各部へコレステロールを運ぶ HDLがコレステロールを末しょう組織から肝臓に運搬するのに対して、LDLは肝臓から末しょう組織へコレステロールを運搬するという逆のはたらきをします。 LDLが大量にあると、コレステロールが沈着した血管壁にさらにせっせとコレステロールを運搬し、動脈硬化を促進する方向にはたらくことになります。 コレステロール値を見るときは、善玉・悪玉のチェックも LDLコレステロールの値が高いと、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患や脳こうそくなどの脳血管障害、大動脈りゅうや末しょう動脈硬化症などの発生率が増加することが明らかになっています。 だから、LDLコレステロールは「悪玉」と呼ばれるのです。LDLコレステロールの正常域は170mg/dl以下です。 コレステロールの値を見る時は、総コレステロールの値(正常域は220mg/dl以下)のみならず、悪玉コレステロールLDLが正常域以下かどうか、善玉コレステロールHDLが正常域以上かどうかを合わせてみる必要があります。
食物繊維の多い緑黄色野菜、海藻 食物繊維は小腸内で、コレステロールが原料となっている胆汁酸を吸着して、再吸収(腸肝循環)される量を減らし、血液中のコレステロールを下げるはたらきがあります。 緑黄色野菜や海藻は食物繊維を多く含んでいます。 イカ、タコ、貝類、イクラ、ウニなどはコレステロールが多く含まれる食品ですが、コレステロールを下げるアミノ酸、タウリンも多く含まれているので相殺効果があります。 タウリンはマグロ、カツオの血合い肉にも多く含まれています。 脂肪ではオリーブ油 オリーブ油に多く含まれる一価不飽和脂肪酸、オレイン酸には、動脈硬化を促進する低比重リポタンパク(LDL)を下げ、動脈硬化を予防する高比重リポタンパク(HDL)を上げるはたらきがあります。 イワシ、サバなど青い魚に多く含まれるn-3系の多価不飽和脂肪酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)には中性脂肪を減らすはたらきがあります。さらに、EPAにはHDLを上げるはたらきが、DHAにはコレステロールを下げるはたらきがあります。 また、紅花油、サフラワー油に多く含まれるn-6系の不飽和脂肪酸、リノール酸はLDL、中性脂肪を下げますが、同時に動脈硬化を防止するHDLも下げる作用がありますので摂取には注意が必要です。
中性脂肪やコレステロールに影響 1日の適正脂肪摂取量は50~70gで、摂取する総エネルギーの20~25%に抑えるのが良いといわれています。 ただし、動物、植物、魚類それぞれに異なった脂肪が含まれていますので、摂取する脂肪の種類のバランスを考えることが大切です。摂取した脂肪の種類のバランスで、体内の中性脂肪やコレステロールの量が影響を受けます。 さまざまな種類の脂肪酸のバランスも大切に 日本人の栄養摂取の現状から、現在は飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸を1:1.5:1の割合で摂取するのが望ましいとされています。 飽和脂肪酸は肉、バターなどに、一価不飽和脂肪酸はオリーブ油、サラダ油などに、多価不飽和脂肪酸はイワシ、マグロなどの魚類に多く含まれています。 多価不飽和脂肪酸にはn-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸がありますが、この2種類の脂肪のバランスも大切で、n-3:n-6が1:4であることが望ましいとされています。 n-3系脂肪酸はイワシ、マグロなどの魚類に多く含まれ、n-6系脂肪酸は紅花油、サフラワー油などに多く含まれています。
LDLコレステロールを減少させる 食物繊維の多い食品はがん、心臓疾患、糖尿病などの予防に役立つほか、血中コレステロールを下げる作用もあります。 食物繊維を摂っても、体内では消化も吸収もされず、そのまま腸の中へ排出されます。その時に、コレステロールや胆汁酸を吸着します。それらを一緒に排出するため、LDLコレステロールが減少するのです。 食物繊維には水溶性と不溶性がありますが、血中コレステロールの降下には水溶性食物繊維が優れています。特に水溶性のペクチンが有効です。セルロースなどの多いゴボウやセロリより、ペクチンが多いミカンなどを取る方が効果があります。 そこで、血中コレステロールの上昇を抑える食品として注目されているのが、大豆及びその加工品、魚類、植物油、ごまやクルミなどの種実類の外、食物繊維を多量に含む穀物、野菜、芋、きのこ、果実などの食品です。