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抗酸化物質を多く含むコーヒーやチョコレートは老化を防ぐ

歳をとることや、運動不足、肥満、メタボリックシンドロームなどにより、体内で活性酸素が増えて酸化ストレス状態になると老けやすくなることや、感染症や糖尿病、動脈硬化、非アルコール性脂肪肝炎、感染症などを発症して悪化しやすいといわれています。抗酸化物質を多く含む食事をすることを習慣づけ、抗酸化力をつけることが重要です。スリーワンクリニック名誉院長の板倉弘重先生に解説してもらいました。

抗酸化力は20代をピークに低下、生活習慣病、認知症、感染症、がん、アレルギーに注意

酸化ストレスは、体内で活性酸素が過剰に蓄積されることが原因です。 活性酸素は、細胞の伝達や体内に侵入した異物(ウイルス、アレルゲンなど)の排除など良いはたらきを持ちますが、活性酸素が増えると酸化ストレス状態を招きます。 活性酸素をバランスよく代謝・処理する「抗酸化力」がはたらくのですが、20代をピークに弱まります。食生活の乱れや運動不足、喫煙、肥満、メタボなども弱める原因です。 活性酸素が過剰に増えてくると酸化ストレス状態になり、その状態が長く続くと細胞にダメージを与えて金属が錆びるように細胞が傷つけられます。 若くてもシミやシワが多く老けやすくなり、高血圧や糖尿病,脂質異常症、非アルコール性脂肪肝炎、心筋梗塞や脳梗塞、感染症、認知症、アレルギー、がんなどに注意が必要です。

体内のミトコンドリア機能が抗酸化力を高めるのに重要

そこで、身体の機能を低下させずに抗酸化力を高めるために、抗酸化物質を多く含む食品を食べる習慣をつけることが重要です。

■抗酸化物質を多く含む食品

抗酸化物質 栄養素 おもな食品
ポリフェノール フラボノイド類 レスベラトロール赤ワイン、ブドウ
アントシアニン赤ワイン、ブルーベリー、ブドウ
イソフラボン大豆
カテキンお茶
ケルセチンタマネギ
非フラボノイド類 クロロゲン酸コーヒー
セサミンゴマ
クルクミンカレー粉
ビタミン ビタミンC柑橘類(みかん等)、野菜
ビタミンEナッツ、穀類
カロテノイド βカロテン緑黄色野菜
リコピントマト
アスタキサンチンサケ

※表は板倉弘重先生の取材内容をもとに作成

抗酸化物質の代表はポリフェノールです〔分子内にフェノール性水酸基(-OH)を複数(ポリ)持つ植物成分の総称です〕。 コーヒーのクロロゲン酸、大豆のイソフラボン、お茶のカテキン、タマネギのケルセチン、赤ワイン、ブルーベリーに含まれるアントシアニン、カレー粉のクルクミンなどもポリフェノールの仲間です。 ポリフェノール以外にもビタミンCやE、カロテノイドなどがあります。 コーヒーは、あまり聞きなれないかもしれませんが、赤ワインと同じくらい多くのポリフェノールが含まれています。糖尿病や肝臓病の発症リスクが低くなるとの報告があります。 酸化したLDLの発生を防いで動脈硬化にならないようにする、抗酸化物質がインスリン分泌を高めて糖尿病の発症や悪化を防ぐこと、神経細胞の再生に関わる脳由来神経栄養因子を増やすことなどの研究結果もあります*1

板倉先生よりワンポイントアドバイス

喫煙、運動不足などにも注意して生活環境の改善に努めましょう

酸化ストレス対策としてポリフェノールなどの抗酸化物質も摂取は重要ですが、ポリフェノールが良いといっても、チョコレートに含まれる砂糖の摂りすぎには注意しましょう。 タンパク質が糖化してAGEs(終末糖化産物)ができやすくなりましすし、酸化と糖化の相乗作用により血管を劣化させることや、さまざまな病気の発症・悪化につながります。 抗酸化物質以外では、紫外線、喫煙、車の排ガス、電磁波、環境ホルモン、農薬、ストレスなどにも注意しましょう。そして、新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響で外出自粛を要請されているので運動不足に陥りがちです。体を動かすよう工夫しましょう。

  • *1:ポリフェノール、抗酸化作用に関するおもな参考文献
    ・日本老年医学会雑誌. 2001;38:372-376
    ・「特集ポリフェノールの疾病リスク低減作用に関する最近の話題」.日本ポリフェノール学会雑誌. 2014;3:1-10
    ・Lancet. 1994;344(8930):1152.
    Biomed Res Int.2017;2017:202954
     https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28261618
    J. Clin. Med.2018;7(10):329
     https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30301188
    Neurochem Res. 2011;36(5):761-5
     https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21221775
  • *2:脳内のミトコンドリア機能を改善させる栄養素について
    体内のエネルギー代謝は、おもにミトコンドリアでブドウ糖が分解されてエネルギーが作られます。しかし、アルツハイマー型認知症などでは脳内のミトコンドリアがブドウ糖をうまく取り込めないことが発症要因と言われています。
    そこで、ブドウ糖以外の脳のエネルギー源としてミトコンドリアに直接働くケトン体などが注目されています。ミトコンドリアを活発化させて神経細胞を保護して脳の機能を改善することが期待されるからです。
    MCTオイルなどに含まれている中鎖脂肪酸(Medium Chain Triglyceride:MCT)はケトン体を産生するので、アルツハイマー型の認知症やパーキンソン病などの神経の病気に対して、ミトコンドリア機能改善を目的としたケトン食の有用性を検討した研究が数多くあります。

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公開日:2020/04/28
監修:スリーワンクリニック名誉院長 板倉弘重先生