人生100年時代、エイジフリー社会、1億総活躍社会といわれるなか、骨粗鬆症(骨粗しょう症)や変形性関節症、筋肉の衰えなどにより体を動かす機能が低下する「ロコモティブシンドローム」(以下、ロコモ)の予防が重要です。というのは、ロコモは転倒や骨折、寝たきりや要介護の原因になるからです。毎年10月8日は「運動器の健康・骨と関節の日」、10月20日は「世界骨粗鬆症デー」です。そこで、骨粗鬆症と骨折、ロコモに関する最近の話題を紹介します(2019年9月5日の日本整形外科学会の記者会見をもとに本記事を作成しました)。
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毎年10月8日は「運動器の健康・骨と関節の日」、10月20日は「世界骨粗鬆症デー」です。日本整形外科学会は10月を「骨と関節の啓発月間」としています。
そこで同学会は2019年9月に記者会見を開き、松本守雄先生(同学会理事長、慶応義塾大学)、澤口毅先生(金沢大学、富山市民病院)は、骨粗鬆症で頻度が高い骨折の1つ、足の付け根(太ももの付け根の大腿骨です)の骨折の現状とロコモ予防について講演しました。
講演によると、令和元年版の高齢社会白書では日本の65歳以上は3558万人、高齢化率は28.1%といわれています。将来も高齢化が進むことが想定されています。
それとともに、骨粗鬆症や変形性関節症などの骨、関節、軟骨、椎間板の病気の人、筋肉が衰える(サルコペニアといいます)人、体を動かす機能が低下して外出も難しくなるようなロコモの人、骨折や転倒、寝たきり、要介護の人も増えることが問題になっています。
骨粗鬆症に関しては、国内の調査結果からは腰椎の骨粗鬆症の有病者数は640万人、足(太もも)の付け根<正確には大腿骨の近位部(頚部、転子部など)>の骨粗鬆症は1,070万人との指摘があり*1、骨粗鬆症の患者さんでは大腿骨の骨折が多いといわれます。
大腿骨の近位部の骨折に関しては、同学会の全国調査によると、2017年時点で約20万人、10年後は25万人と推測されています。40歳以降から見られはじめ、70歳以降に多いのが特徴です*2。
問題は、大腿骨の骨折を経験した人は再び骨折しやすく、再骨折の確率は一般人口における大腿骨の骨折が起こる確率より高いとの指摘があることです*3。以下は最近の報告です。
骨折は、患者さんのみならず、介護をする家族にも負担がかかり問題視されています。
2019年に報告されたアステラス・アムジェン・バイオファーマ社の調査結果があります。骨粗鬆症が原因で骨折した50歳以上の患者さんを介護する家族を対象にしたものです。
それによると、骨折患者さんの介護をする以前に働いていたのは2,639人で、そのうち介護者になってから離職または転職となったのが25%、復職希望は半数ですが復職の実現は難しいと考えている人が大半でした。なお、離職した人では現在も無職の割合が約6割でした。
体を動かさず寝たままの状態だと、1日あたり筋力が1~3%低下するといわれています。骨折してから入院、手術までは寝たままの状態になりますが、骨折後に手術に至るまでの日数は全国平均で4.2日と長いのが現状です。
手術前の待機期間が長く、寝たままの状態が長く続くと、患者さんは筋力や体力が損なわれて免疫力が低下するなど、骨・関節以外の内科系の病気も発症しやすくなります。
また、国内の大腿骨近位部を骨折した骨粗鬆症患者さん2,328人を対象に、骨折後の骨粗鬆症の治療状況を聞いた結果、1年後に治療を継続していた割合は約36%と、3人に1人しか骨粗鬆症の治療を受けていないことが推測されるとの報告があります*3。
退院後も骨粗鬆症の治療などを継続できるようにすることや、骨折や転倒を予防することが重要です。患者さんをサポートする骨粗鬆症リエゾンサービスや骨折リエゾンサービスがあるので活用しましょう。
図:骨粗鬆症リエゾンサービスと骨折リエゾンサービス
出典:日本整形外科学会令和元年度記者説明会(2019年9月5日)講演資料
年を重ねて高齢になっても、自由に動けることが理想です。そのために、自分がロコモの状態かどうかをチェックして生活習慣や運動習慣を見直すことが重要です。次の記事で、ロコチェックやロコモ度測定の意義について紹介します。
■参考
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