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子供が「うつ」になったら…大人はどうする?

子供もうつ病になることがあります。なかには、不登校、AD/HD(注意欠陥/多動性障害)、摂食障害などの陰に隠れていることもあるのです。今回は、子供のうつについて考えてみましょう。

子供のうつ病が増加中!?

テレビや新聞、雑誌などでここ数年、うつ病がひんぱんに取り上げられるようになりました。
そのおかげで、うつが誰でもかかり得る病気だと知られるようになりました。しかし、子供でもうつ病になる、と知って驚く人は多いのではないでしょうか。北海道大学の傳田健三先生による約2万人の小中学生に対する調査では、2.6%(小学生1.6%、中学生4.6%)がうつ病と推定されています。病院によっては、明らかに児童精神科に通う子供が増加し続けているところもあります。うつが不登校、AD/HD(注意欠陥/多動性障害)、摂食障害などの陰に隠れていることもあります。今回は、この「子供のうつ」について考えてみましょう。

子供のうつの症状

子供のうつの症状

では、どんな症状をうつと判断するのでしょうか。
80年代以降、精神疾患の治療効果や統計的処理のため、アメリカで作られた行動を基準とするDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)という診断の評価方法が用いられるようになりました。DSMによると、抑うつ気分や興味または喜びを感じにくくなったり、イライラ、焦り、集中力の低下、自分を無価値だと思う、自殺を考えるなどの精神的な症状で現れることが多いのですが、不眠や睡眠過多、疲労感などの身体症状が加わることもあります。
子供の場合も基本的には同じです。しかし、心身共に発達過程にある子供は、落ち込んだ気分を大人のように言葉で表現できないことが多く、行動や身体症状として現れることが多いようです。不安や行為障害、多動、学習障害などと関連して起こることもあります。

【身体症状】

  • ●体重減少 (または成長に伴い増えるはずの体重が増加しない)
  • ●食欲不振
  • ●吐き気
  • ●頭痛
  • ●腹痛
  • ●めまい など

【行動の現れ方】

  • ●イライラ
  • ●注意力低下、集中困難
  • ●寡黙
  • ●不登校、引きこもり
  • ●成績が落ちる

うつかどうかをどう見分ける?

イライラしたり、注意力が低下したり、誰でもそんなときはあります。でも、普段より過度に出ているなら、その背後にうつが隠れていることも。基本的には症状が2週間以上続いているなら、うつの可能性があります。身体症状を訴える場合、まずは小児科などを受診し、その結果、身体的には異常が発見されなければ児童精神科へ。その結果、うつと診断される場合があります。素人判断は控えるようにしましょう。
まれに脳腫瘍などの神経疾患が隠れている場合もあるので、知能検査、頭部のCT、MRIなどさまざまな検査が必要になります。うつと分かった場合は、症状が治まるまで少なくとも数ヵ月から1年はかかります。1年以内の再発率も40%とかなり高いので、長期的にじっくり取り組むつもりで構えよう。再び学校に通えるようになる、落ちた成績が上がるといった目に見える成果を焦らないことが大切です。

周囲の大人はどうすればよい?

うつの難しいところは、病気の研究自体がまだ発展途上という点です。昔と比べて研究が進んだことにより、理解が進んだともいえるし、周囲が病気というレッテルを貼っている場合もあります。「普通」かどうかを決めるのに絶対的な基準はないからです。基本的には、本人を温かく見守り、様子がおかしいと思えば専門家に相談するのがよいでしょう。

うつの原因はよくわかっていませんが、本人の体質や長期にわたるストレスが引き金になるといわれています。家庭の環境に問題がある場合はうつも長期化する傾向がありますが、家庭そのものが原因かどうかはわかりません。気をつけたいのは、親が「自分の育て方が悪い」と過度に反省をしたり、周囲が家族を責めることです。

周囲の大人はどうすればよい?

うつの治療は、最近では薬物療法が主ですが、子供に関しては議論が分かれています。
子供本人が病院に行けず家族が相談に行くケースも多いが、それも状況を改善する有効な手段のひとつです。家族が医師に相談することで突破口が開け、環境が改善されて子供の症状がよくなる場合も多いからです。親が元気になることで、子供にかかっているストレスが軽くなり病気が改善されたり、実は親の取り越し苦労だと明らかになる場合もあります。
子供のうつも大人と同じく十分な休養が必要です。周囲は「がんばれ」など励ますのではなく、焦らずゆっくり治すことを考えましょう。

相談先としては、児童精神科以外にも、保健所での児童発育相談や精神相談の窓口、かかりつけの小児科医などが考えられます。大切なのは家族だけで悩まず信頼できる誰かに相談することです。

取材協力:九州大学大学院医学研究院 医療ネットワーク学講座 稲津佳世子先生

公開日:2005年9月5日