妊娠した女性はお薬をはじめ、アルコールやたばこなどの嗜好品、そして食生活全般に注意が必要だ。胎児に悪い影響を及ぼす食品については、とくに敏感に配慮しなければならない。2005年、厚生労働省より「妊婦は魚に注意」という呼びかけがあったのをご記憶だろうか?マグロなどおなじみの魚に有毒な水銀が含まれており、胎児に悪影響を及ぼすというものだ。 ショッキングな内容だけに専門家から消費者まであらゆる層で議論を呼んだ。 いまあらためて、妊婦とお魚の真実について検証してみよう。 水銀はぜったい悪者? 水銀は私たちの住む地球上に、もともと存在するもの。雨といっしょに降りそそいだ水銀は山や地面、海などに蓄積し、植物や海水、火山などから蒸発しまた雨になるという循環をくりかえしている。水銀には人体に無害なものと、悪影響を及ぼすものがあり、後者を「メチル水銀」という。 自然界に存在する無毒な水銀も、川や海で微生物と接触するとメチル水銀に変化し、食物連鎖にしたがって魚の体内に蓄積されていく。 大人であればメチル水銀をたくさん含む魚を食べても、体外に排出できるため問題ない。 ところが胎児の場合はその機能がなく、体に悪影響を及ぼすのだという。実際に海外の調査で、メチル水銀に暴露された胎児は神経発達に影響があると指摘する報告がある。音を聞いたときの反応が1000分の1レベルで遅れるというもので、いのちに関わるような問題ではない。 とはいえ、生まれてくる赤ちゃんの健康には最大限配慮してあげたいもの。すでに妊娠している人、これから妊娠を考えている人はふだんの食生活で気にかけるとよいだろう。 望ましい摂食回数 対象 週に1回まで キンメダイ、めかじき、クロまぐろ、メバチまぐろ 週に2回まで キダイ、くろむつ、まかじき、ユメかさご、ミナミまぐろ ※一回あたり食べる量を 80g程度として 妊娠中だけ注意、あとはむしろどんどん食べよう 「妊娠していると気づかずに、マグロをたくさん食べてしまった!」という人も安心して。 上記の魚に注意が必要なのは、「妊娠したかな?」という時点で十分だからだ。 妊娠に気づくのは一般的に妊娠2ヵ月以降だが、胎盤がととのい、胎児に栄養をはこぶために大量の血液が流れるようになるのは妊娠4ヵ月以降。妊娠に気づいた時点で、上記の魚介類に注意すれば十分間に合うという。 摂取した水銀は尿や便から排出され70日で半分に減るため、水銀値の高い魚を食べないようにすれば体内で次第に減っていくので安心しよう。 「胎児がだめなら、小さい子供は?」と思う人がいるかもしれないが、こちらも心配ない。小さいお子さんであっても、大人と同じようにメチル水銀が体外へ排出されるという見解が食品安全委員会(厚生労働省)から出されている。 そもそも魚類は良質なたんぱく質や、DHA(ドコサヘキサエン酸)・EPA(エイコサペンタエン酸)などの不飽和脂肪酸、タウリン、アスタキサンチンを多く含む、優れた健康食材。妊娠中は注意が必要だが、一般的に、バランスのよい食生活を送る上では欠かせない食材だ。無事赤ちゃんが生まれたら、積極的に食卓にあげるようにしよう。 下記に、さらにくわしい情報をQ&A形式で紹介するので、ぜひとも参考にされたい。 妊婦さんのお魚の食べ方 Q&A Q. 上記の表にある「1回あたり食べる量を80gとして」の根拠は? A. お刺身が一人前あたり80g、魚の切り身は一切れあたり80g程度ということから設定された。お寿司、刺身の一貫または一切れは15g程度という。 Q. どんなマグロもすべて危険? A. マグロの中でもキハダまぐろ、ビンナガまぐろ、メジまぐろについては調査での水銀含有量が低いことから、妊婦であっても普通どおり食べて問題ない。 Q. マグロからつくられているツナ缶は? A. 加工食品は一般に、いろいろな食材からつくられている。ツナ缶に含まれている水銀濃度は低いのでだいじょうぶ。 Q. 授乳中も水銀値の高い魚を食べない方がいい? A. 母乳を介して乳児が摂取する水銀量は低い。このため授乳中のお母さんは、今回の注意対象には入っていない。 公開日:2006年3月6日
いまでは見る機会が少なくなった「新巻鮭」ですが、鮭の栄養価は決して侮れません。また、おせち料理には、さまざまな料理があり、土地柄で重箱に詰める中身はさまざまです。お正月ならではの食べ物の栄養を紹介します。 目次 鮭の栄養価に注目!新巻鮭 中身はさまざま!おせち料理 試してみよう!「よめな飯」&「万葉汁」 鮭の栄養価に注目!新巻鮭 かつてはお歳暮の代表選手として広く親しまれた新巻鮭。これがお歳暮の品になったのは、江戸時代、徳川家に献上されたことに端を発しているとか。内臓を取り除いた鮭の腹に塩をたっぷり加え、荒縄で巻く製法から新巻(または荒巻)鮭と呼ばれた。 今では一軒の家で一匹まるごとの鮭を食べ尽くすのはなかなか難しいためか、新巻鮭を見る機会は少なくなっているようだ。だが、ここで注目したいのは鮭の栄養価。決して侮れない特徴があるのだ。 鮭は健康面からも美容の面からも、たくさん摂りたい食品。ぜひ、このお正月には鮭を使った料理も供してみてほしい。 ●カロリーは低く、たんぱく質は高く 可食部100g当たりのカロリーを比べてみると、牛肉(肩ロース)や豚肉(肩ロース)が250kcal前後のところ、生鮭は150kcal程度。また、たんぱく質を比較しても、牛肉や豚肉に含まれるのは18g程度だが、生鮭には20g程度含まれている。鮭はとてもヘルシーな食材なのだ! ●ビタミンDが多い カルシウムやリンの吸収を助け骨を丈夫にするビタミンDが、イワシの約3倍!ほかの魚類に比べても群を抜いている。 ●魚類で唯一!抗酸化物質「アスタキサンチン」を身肉に 抗酸化物質の一種「アスタキサンチン」は、悪玉コレステロールを抑制するはたらきがあるとされる成分。これを含む代表的な食材としてはエビやカニがあげられるが、含有しているのは殻の部分。また、鯛でも皮の部分にしか含有されていない。だが、鮭はこれを身肉に含んでいるのだ。もちろん魚類で身肉に含有しているのは鮭だけ。 ●皮にはコラーゲンが 鮭の皮は、肌のハリと弾力を保つためには欠かせないとされるコラーゲンを含有。つまり、美容にも良い食材なのだ。 中身はさまざま!おせち料理 おせち料理はもともとは「五節供」といって、年に5回ある節句の際に年神様にお供えしたもの。このお供えをさげて家族の幸福を願って食べる習わしが、いつのまにかお正月だけのごちそうをさして「おせち料理」といわれるようになったのだとか。鏡餅も同様に、年神様へのお供え物。大小の餅を重ねるのは、月(陰)と日(陽)を重ねるという意味があるという。 お餅はエライ!おめでたいときにお餅を食べる理由 さて、このおせち料理だが、現在ではさまざまな料理があり、土地柄で重箱に詰める中身はさまざま。そこで代表的なものについて栄養面を見てみよう。ただし、おせち料理は保存のためもあり、味がかなり濃いのが難点。食べる量は控えめに。 黒豆 「マメに暮らせるように」などと言うように、これは家族の健康を願った食材のひとつ。黒豆は大豆の一種で、肌を美しくする良質なたんぱく質を含む。また、コレステロールや脂肪酸の増加を抑えるリノール酸やリレイン酸、疲労回復に効果的なビタミンB群を多く含む。さらに皮の部分には食物繊維も多い。 数の子 アイヌ語でニシンのことを「カド」ということから「カドの子」=数の子と呼ばれるようになったなど、名前の由来には諸説があるが、子孫繁栄を願う食材のひとつだ。コレステロールが多いことで知られるが、血液の流れをよくするエイコサペンタエン酸(EPA)や脳のはたらきをよくし、視力を向上させるドコサヘキサエン酸(DHA)も含まれている。 昆布巻き 「養老昆布」と書いて「よろこぶ」と読ませるなど、さまざまなめでたい説のある昆布巻き。この昆布には、ヨードが多く含まれ、体内の代謝を活発にする。また、利尿作用を促して塩分を排泄するカリウムの含有量は食物のなかでも最高を誇る。食物繊維も豊富で、ごぼうの2倍以上含まれている。 ごまめ(田作り) 「五万米」とも書き、五穀豊穣を祝う食材。これは、カタクチイワシの稚魚を塩水で洗って干した物で、カルシウムやミネラルが豊富。15g程度で1日に必要なカルシウム量600mgの3分の1を摂取できるというのだから驚きだ。 紅白なます 紅白の彩りがおめでたさを演出する縁起もの。にんじんはビタミンA、B、Cを多く含む野菜の優等生。特にカロチンを多く含んでいる。また、大根はでんぷん消化酵素のジアスターゼなどが多く、消化を助けるはたらきがある。 ちなみに、にんじんと大根を混ぜると、にんじんのビタミンC分解酵素がはたらき、せっかくのビタミンCが破壊されてしまう。これを回避するのが仲介役の「酢」。酢が分解酵素のはたらきを抑えるので、ビタミンCがより多く摂れるのだ。 試してみよう!「よめな飯」&「万葉汁」 宵っ張りの朝寝坊になりやすく、毎日おいしいものを食べ続けがちなお正月。そこで、ときには胃にやさしい食事も取り入れたい。万葉集の時代に愛された料理を現代的にアレンジした、こんな料理はいかが? よめな飯 春を呼ぶ若々しい香りが楽しめる一品。「よめな」とは、万葉集に「ウハギ」とうたわれた植物で、キク科の多年草。その若葉は食用になる。 ■材料 よめな(田ゼリ)、米、だし汁、昆布、塩 ■作り方 よめなをサッとゆがいて水にさらし、かたく絞って細かく切る。 米を水とだし汁、昆布、塩を少し加えて炊きあげる。 炊きあがったら、よめなの刻んだものを加えてできあがり。よめなの代わりに、田ゼリを使ってもいい。 万葉汁 みそ汁と、とろろいもの相性が良く、体の芯から暖まりそうな一品。 ■材料 里芋、かぶ、ねぎ、しいたけ、みそ、とろろいも ■作り方 里芋は厚さ4~5mmに、かぶは4つ割にして厚めの小口切りにする。しいたけは薄切りにしておく。 みそ汁を作る要領で、里芋、かぶ、しいたけをだし昆布と一緒に煮る。 煮えたらみそを加えて味を整え、最後にすったとろろいもを流し入れる。 器に盛り、ねぎのみじん切りを散らしてできあがり。 公開日:2002年12月24日
おいしいサンマを食べるには、まず選ぶことから始めましょう。失敗のないサンマの選び方をご紹介します。また、いつもと一味変えて、七厘での塩焼きにも挑戦してみませんか? 目次 おいしいサンマを選ぶポイント 「新物」と「ヒネモノ」 本格的に七厘に挑戦!炭火での焼き方のコツ おいしいサンマを選ぶポイント 魚屋さんでサンマを買うなら、お店の人に相談することもできるが、スーパーなどに並べられた魚を買う人も多いはず。そこで、失敗のないサンマの選び方を知っておこう。 黒目のまわりが透明で、澄んでいるもの。赤っぽくにごっているものはダメ 小さくても太っているもの。スマートなものは避けて 口先が黄色いもののほうが脂がよくのっている 背が青黒く光っていて張りがあるもの お腹がブヨブヨしていないもの 「新物」と「ヒネモノ」 サンマは冷凍向きだと言われている。実際、旬の季節(秋~12月ごろまで)以外に売られているサンマは、冷凍ものを解凍したものが多い。プロの人はこれを「ヒネモノ」という。最近の冷凍技術はたいへん優れていて、解凍してもギラギラと光って色を失わないため、シロウトでは見分けがつかないこともある。 新物のサンマが出始めたころは、ヒネモノより値段が高いので見分けやすいが、だんだん新物の値が下がってきたころには、パックに「新物」「新サンマ」などの表示がされているものを購入すれば大丈夫。それでも見分けがつかない時には、お店の人に聞いてみよう。 本格的に七厘に挑戦!炭火での焼き方のコツ サンマは、やっぱり塩焼きが定番!いつもは魚焼きグリルで焼いているけど、今年はちょっと趣向をかえて、本格的に七厘(炭火焼)に挑戦してみよう!もちろん、近所迷惑にならないよう、やる場所には注意して。 炭火での焼き方のコツ サンマは塩をふってしばらくおいておく。できればはらわたは取らず、ワタの味を楽しんで。これができればあなたもサンマ通!? 炭を使う時のポイントは「遠火の強火」。たくさんの炭を使って、強火にするのが理想的。炭と魚焼き網が近い場合には、網が高くなるよう台をのせるなどの工夫を。 焼き網を十分に熱してから魚をのせること。こうすると網にくっつきにくくなる。 網にのせた魚は何度もひっくり返さないこと。じっくり片面が焼けてからひっくり返して焼いたほうが熱効率がよく、結果的に早く焼ける。 サンマの脂が落ちて炎が上がった場合には、すばやくうちわであおぎ炎をおさえよう。炎で焼くと焼きムラができやすく、せっかくの炭火焼きがダイナシに! 公開日:2001年9月17日
サンマはイワシなどと同様、背の青い魚です。もちろん、栄養はたっぷり!「EPA」や「DHA」が豊富で、血液をサラサラにするといわれています。また、良質なたんぱく質やビタミンも豊富です。 目次 サンマの旬は秋 サンマの栄養:EPA、DHAが豊富 サンマの栄養:良質なたんぱくにも注目 サンマの栄養:意外とビタミンもいっぱい サンマの旬は秋 サンマは漢字で「秋刀魚」と書く。サンマは春、千島列島付近の海域で過ごし、夏の初めごろに北海道の道東や三陸沖にやってきて産卵のための栄養を蓄える。そして、太平洋岸を南下していく回遊魚だ。中には日本海へ入るものもいるが、どちらかといえば太平洋でよく捕れる魚である。 だいたい、8月中旬から下旬に漁獲が解禁になるため、9月からは安くておいしいサンマが食べられるというわけだ。 ※海域によっては7月に解禁になるところもあり、7月初旬ごろの新物のサンマは1匹1,000円前後で売られることも! サンマの栄養:EPA、DHAが豊富 サンマはイワシなどと同様、背の青い魚である。もちろん、栄養はたっぷりだ。 よく耳にする「EPA」や「DHA」。素晴らしい効果のあるEPAやDHAは、脂に含まれている。といっても、豚肉や牛肉などの蓄肉にはほとんど含まれておらず、また、体内でつくりだすこともできない。 つまり、魚の脂から豊富に摂るのが一番効率的なのだ。 ●EPA エイコサペンタエン酸。魚の脂肪分(脂質)に含まれている、不飽和脂肪酸の一種。EPAには、血液をサラサラにするはたらきがあり、脳血栓や心筋梗塞などの血液が詰まってしまう病気を予防するのに効果的。 ●DHA ドコサヘキサエン酸。EPAとともに魚の脂肪分に含まれているもの。EPAと同様、血栓をできにくくするはたらきがあるのと同時に体内の悪玉コレステロール(LDL)を減らす作用もある。また、脳細胞を活発化させ、頭の回転をよくする効果もあるとか。 サンマの栄養:良質なたんぱくにも注目 たんぱく質が豊富な食物といえば、すぐに肉を思い浮かべるが、魚のたんぱくもかなり良質である。魚のたんぱく質は、肉類に比べて消化されやすいものが多く、幼児からお年寄りまで幅広く食べることができるのだ。もちろん、含まれている量も肉類と変わらない。 サンマの栄養:意外とビタミンもいっぱい サンマにもいろいろなビタミンが含まれている。 特に、貧血によく効くと言われているビタミンB12はほかの魚の3倍以上、目に効くと言われるビタミンAは牛肉の12倍とも言われている。また、若返りに効果あり(!)ともされているビタミンEも含まれている。 サンマに含まれるビタミン(可食部100g中) ビタミンA …13μg ビタミンD …19μg ビタミンE …1.3mg ビタミンB2 …0.26mg ビタミンB12…17.7mg 栄養たっぷりのサンマ、旬の今、食べるっきゃない! 公開日:2001年9月17日
栄養満点!とわかっていても、「生臭くていや」「調理が面倒」と敬遠されがちなイワシ。EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富といわれても、実際にはなかなか食べられないことも多いですよね。でも、大丈夫。もっと手軽にイワシを食べることもできます。 目次 イワシが苦手な人に、こんな加工品 調理方法でDHAやEPAはどう変わる? 効率よくDHAやEPAを摂取する方法 イワシが苦手な人に、こんな加工品 イワシがどうしても苦手な人や、生のイワシを買うのが億劫な人は、イワシの加工品をおすすめします。加工品はイワシの価格の安い「旬」の時期、つまり、脂ののったイワシを原料とすることが多いようです。つまり、春先などまだ旬でない時期には、生のイワシを食べるより缶詰めのほうが栄養的にも優れています。最近では、いろいろな味付けの缶詰めなどが登場しているので、きっとあなたの舌にあうイワシが見つかるはずです。 ここで、加工品をいくつかご紹介しましょう。 イワシの加工品はこんなにある! ●素干し 魚を洗ってそのまま干したものです。イワシの稚魚の素干しには「タタミイワシ」があります。 ●塩干し 魚を洗って塩をつけて干したものです。塩を加えることで腐るのを防ぎます。小ぶりのイワシなら「メザシ」として売られています。 ●みりん干し 開いたイワシをしょうゆ、砂糖、水あめ、みりん、酒などの調味料を加えた液に漬けてから乾燥させたものです。 ●煮干し 小さなイワシを煮てから干したものです。みそ汁のだしをとることに使われます。 ●しらす干し イワシの稚魚を塩水からゆでて干したものです。「ちりめんじゃこ」とも呼ばれます。缶詰め 水煮、油漬け、味付け、トマト煮など種類は豊富です。最近ではレトルト食品でもあります。買い置きができ、そのままおかずになるので重宝します。 ●練り製品 イワシの魚肉に塩を加えて練り、のり状になったペーストを加工して固めたものです。かまぼこやつみれとして売られています。 調理方法でDHAやEPAはどう変わる? 料理好きな人や、家でごはんを作ってくれる人がいる場合には、ぜひ生のイワシを調理することをおすすめします。なるべくなら効率よくDHAやEPAを摂りたいものですが、調理の仕方でどう変わるのでしょうか。 そこで、調理方法によるイワシの脂質の変化をまとめたのが、次の表になります。DHAやEPAは魚の脂質部分に含まれているため、焼き魚にすると脂がぽたぽたと落ちてしまって脂質量が少し減少したり、素揚げするとイワシの脂が溶け出してしまうようです。 いずれの場合も熱によってDHAやEPAの脂肪酸組成に変化がないため、なるべくイワシの脂が減らないように調理するとDHAやEPAがたくさん摂取できます。 調理法で魚の脂質はどう変わる? 調理方法 脂質残存率 EPA残存率 DHA残存率 煮る100%100%100% 焼く89%87%89% 素揚げ113%45%37% 衣揚げ131%81%82% 電子レンジ100%92%97% つみれ98%91%94% 酢漬け93%91%94% 資料:エフジージー総合研究所 効率よくDHAやEPAを摂取する方法 イワシを調理するときには以下の点に気をつけましょう。こうすれば、効率よくDHAやEPAを摂取できます。 なるべく脂ののったイワシを選ぶこと。旬のイワシはとくに脂がのっているので、DHAやEPAが豊富です。 煮物の場合には、煮汁に溶け出しているので、煮汁も一緒に食べましょう。このとき、冷たい煮汁に入れてはいけません。煮あがるまでの時間が長ければ長いほど脂質分が溶け出してしまうので、必ず煮立てた汁の中に入れます。 揚げ物の場合は、揚げるときに使った油がイワシの肉にどんどん入り、反対にイワシの脂が溶け出してしまいます。なるべく避けたほうがよいでしょう。 焼く場合には、ホイル焼きにしましょう。そのとき、野菜を一緒に入れておけば、溶け出した脂質を野菜が吸収しているので、その野菜を食べれば大丈夫です。また、ムニエルにすれば小麦粉の衣が溶け出した脂質を吸ってくれます。 酢を上手に使えば、骨まで食べられてカルシウムも摂取できます。 なんといっても刺身です。生で食べればまるごと摂取できます。血合肉も食べるとなおよいでしょう。
いわゆる生活習慣病といわれる病気は、どの病気も食生活と深い関係があるといわれています。食事がその病気の原因にもなりますが、食事によって病気が治ることもあるといわれています。とくにDHAやEPAには、これらの病気を予防・改善するはたらきがあるといいます。そのはたらきを見てみましょう。 目次 血液をサラサラにして血栓予防 気になるコレステロール値を下げてくれるDHA DHAで頭がよくなる! 妊娠中の女性はとくに魚を食べよう 老化やボケも予防できる! 血液をサラサラにして血栓予防 EPAには血液を固まりにくくする作用があるといわれています。 血液が血管で固まったものを血栓といいますが、この血栓で血管が詰まると血液が流れなくなり、脳に血栓ができれば脳血栓、脳卒中などを起こす可能性があります。同様に、心臓の筋肉に酸素や栄養を与える動脈の一部が硬化や血栓によって狭くなったりふさがったりすると心筋梗塞を起こしやすくなります。 これらの血栓ができるのを防ぐ効果がEPAにはあるといわれています。 気になるコレステロール値を下げてくれるDHA コレステロールと聞くと悪いものだと思う人も多いのですが、必ずしも悪いものとは限りません。コレステロールには善玉コレステロール(HDL)と悪玉コレステロール(LDL)と呼ばれるものがあり、この二つのバランスが崩れ、悪玉コレステロールが増えすぎると血管壁にコレステロールがたまって動脈硬化が進む原因となります。 DHAには、この悪玉コレステロールを減らす作用があります。 また、中年になると気になる皮下脂肪の主成分である中性脂肪を減らすはたらきもあるのです。 DHAで頭がよくなる! 実は、DHAは脳に大きな影響を与えるといわれています。脳には約140億個の細胞があるといわれていますが、この細胞にはニューロンという突起した神経細胞があり、このニューロンから伸びた突起とほかの神経細胞が結合している部分をシナプスといいます。このシナプスは電話局や放送局のようなはたらきがあり、ここでさまざまな情報の伝達が行われています。DHAはこのシナプスにも入ることができ、このシナプスの情報処理能力の良し悪しに関係しているといわれています。つまり、DHAが多いほど、シナプス膜を柔らかくすることができ、情報伝達もスムーズに行くと考えられているのです。 「魚をたくさん食べると頭がよくなる」のはあながちうそではないようです。 妊娠中の女性はとくに魚を食べよう DHAを摂取して頭がよくなるのは、生まれた後のことばかりでなく、胎児にも大きく影響を与えていることがわかっています。 脳の神経細胞の数は胎児の脳が形成されるときに決定し、生まれた後では神経細胞の数は増えません。当然胎児は母体からDHAを摂取するわけですから、脳の神経細胞を増やし、十分な発達を促すためには、妊娠中の女性はDHAを多く含んだイワシなどを積極的に食べるべきです。 ただし、過剰摂取による副作用についてはまだ解明されていませんので、錠剤などを摂り過ぎるのは避けて、なるべく魚の形で食べるように心がけましょう。 老化やボケも予防できる! 高齢化社会になるにつれてお年寄りが増え、老年期認知症も増えていますが、これは脳の血管が詰まり、損傷するために起こるものです。こうした脳細胞の破壊が、記憶する役割のある部分で起こると認知症になってしまうのです。 脳の神経細胞は生まれてから増えることはなく、年とともに減っていく一方ですが、DHAを十分に摂り、絶えず脳に刺激を与えると残った神経細胞を活性化させることができます。脳は刺激を与えて鍛えれば鍛えるだけ向上する性質があり、これは年をとっても変わらないため、ボケの防止にもなるのです。
イワシが栄養価の高い魚であることはすでに知られています。DHAやEPAが豊富で、ミネラルも豊富。イワシの栄養価についてご紹介します。 目次 魚を食べると頭がよくなる!? DHA、EPAってなに? 「脂ののった魚」は栄養満点! もちろん、カルシウムもたっぷり 魚を食べると頭がよくなる!? イワシが栄養価の高い魚であることはすでに知られていますが、とくにここ数年、見直されてきているのは、ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)が豊富ということです。 イギリスのマイケル・クロフォード教授らは、「日本人の子供が欧米人の子供に比べて知能が高いのは、日本人が魚を多く食べてきたことがその理由の一つである」と発表しています。 また、デンマークのダイヤベルグ博士が行った調査によると、「グリーンランドのイヌイット達は、脳血栓や心筋梗塞といった病気にほとんどかからない」といいます。それは、イヌイットが常食としているアザラシや魚に含まれるEPAのはたらきによるものとの見方があるのです。 日本でも千葉大学の調査によると、千葉県内の漁業中心の海岸地域の住人は内陸地域の住人に比べて血中のEPA濃度が高く、心臓病による死亡率は内陸地域の人の半分程度だったといいます。 本当に魚にそれほどの効果があるのでしょうか。 DHA、EPAってなに? よく耳にする、DHAやEPA。これって何か、知っていますか? DHA、EPAはともに魚の脂肪分(いわゆる脂質)に含まれているものです。脂質は、たんぱく質、糖質と並ぶ三大栄養素のひとつで、人の体には欠かせません。 脂質を構成している脂肪酸には、炭素の二重結合のない飽和脂肪酸と二重結合が一つの一価不飽和脂肪酸と二重結合が二つ以上の多価不飽和脂肪酸があります。DHAやEPAは二重結合が五つ以上ある多価不飽和脂肪酸です。 ただし、飽和脂肪酸は、血中コレステロール濃度を上昇させ、動脈硬化を促進する恐れがあるので、摂り過ぎに注意する必要があります。多価不飽和脂肪酸のうち、サフラワー油などの植物油に多く含まれているリノール酸やリノレイン酸などは人間の体内で合成することができないため、「必須脂肪酸」と呼ばれ、食物から摂取しなければなりません。このリノール酸やリノレイン酸が不足すると、皮膚の状態が悪くなったり、成長が止まったりします。またリノール酸には血清脂質改善作用があるといわれています。 多価不飽和脂肪酸であるEPAやDHAには、このリノール酸以上の血清脂質改善作用があるといわれているのです。 DHA、EPAのはたらきとは? 「脂ののった魚」は栄養満点! DHAやEPAは豚肉や牛肉などの蓄肉にはほとんど含まれていません。必須脂肪酸であるリノレン酸は、体内でEPAやDHAに変換されますが、もともと植物油には少ししか含まれていないため、体内でEPAやDHAはたくさんつくられません。 DHAやEPAが豊富なのはなんといっても魚介類です。特に、イワシ、サバ、アジ、サンマなどの背の青い魚とウナギに豊富です。 また、同じイワシでも、普通の肉の部分と血合肉(赤褐色の部分)とを比較すると、血合肉のほうが何倍も多くDHAやEPAを含んでいます。 魚の脂肪は季節による変動が大きく、「旬」の時期がいちばん脂質が多くなります。いわゆる「脂ののった魚」ほどDHAやEPAの含有量も多くなるのです。 EPA、DHAを多く含む魚 資料:日本食品脂溶性成分表(化学技術省資源調査会編) もちろん、カルシウムもたっぷり イワシの栄養はDHA、EPAだけではありません。ミネラルも豊富です。 なんといっても多いのが、カルシウム。「泳ぐカルシウム」といわれるほどです。イワシには、可食部100g中に70mgのカルシウムが含まれていますが(生イワシ)、丸干しにすればなんと100g中1,400mgにもなります。さらに、煮干しなら100g中2,200mgも含まれており、吸収率こそかないませんが、煮干し10gには牛乳200ml以上に相当するカルシウムが含まれていることになるのです。 また、カルシウムの吸収を助けるビタミンDも豊富。ビタミンDはほとんどの野菜や肉類には含まれておらず、しいたけなどの菌類と魚に含まれているものです。ビタミンDは日光に当たれば、体内でも作られるものですが、実際にはなかなか日光浴ができない人が多く、イワシのビタミンDが強い味方となります。
栄養価を考えると、「土用の丑の日」に夏バテ防止としてこの時期にうなぎを食べるのには意味があります。ぜひ、うなぎを食べましょう。うなぎを使った料理を紹介します。 目次 「土用の丑の日」効果は本当だった! 家庭でおいしく!簡単うなぎ料理 うなぎの肝にも栄養がたっぷり 「土用の丑の日」効果は本当だった! 「土用の丑の日」とは、江戸時代に平賀源内がうなぎ屋を繁盛させるために、「うなぎ」とおなじ「う」がつく「うし」の日にうなぎを食べようと宣伝したのが始まりと言われています。でも、栄養価を考えると、夏バテ防止としてこの時期にうなぎを食べるのには意味があるのです。ぜひ、うなぎを食べましょう! 家庭でおいしく!簡単うなぎ料理 うなぎといえば、家庭で食べるより、外で食べることのほうが多いようです。街角であの香ばしいにおいを嗅ぐとついふらっと立ち寄りたくなるものです。うな丼にして食べることが多い食べ物ではありますが、ここではそれ以外の料理法を紹介しましょう。 うなぎの卵とじ 簡単にできてしかも主菜にもなるこの一品。好みでねぎなどを加えてもいいでしょう。 ■材料(4人分) うなぎの蒲焼串1本、たまご2個、ごぼう1本、三つ葉適量、だし汁1/4カップ、砂糖大さじ2、しょうゆ小さじ1/2 ■作り方 ごぼうはささがきにして水につけ、アクを抜きます。鍋にだし汁、砂糖、しょうゆを入れて煮立て、ごぼうを入れて少し煮ます。 うなぎを2cm幅に切り、1に加えます。卵を溶きほぐして加えてさっと混ぜ、半熟状になったらざく切りの三つ葉を散らして火を止めます。 うなぎとかぼちゃの炒め物 野菜を一緒にとるなら、緑黄色野菜のかぼちゃを。粉山椒に含まれるピリリとした辛味や柑橘系の香りでうなぎの脂っこさや臭いが消されて食欲増進につながります。 ■材料(4人分) うなぎの蒲焼串2本分、かぼちゃ1/4個、さやえんどう10枚、粉山椒少々、しょうゆ大さじ1、酒大さじ2、みりん大さじ3 ■作り方 かぼちゃはわたと種を取り除き、幅3cm、厚さ5mmのくし型にします。さやえんどうはさっとゆでておきます。うなぎは縦半分に切り、幅3cmに切ります。 中華鍋に油をひき、中火で熱したらかぼちゃを入れて炒めます。かぼちゃに焼き色がついたらうなぎ、さやえんどうを加えてさっと炒めます 調味料を加え、汁けがなくなるまで炒めます。器にもって粉山椒をふります。 豆腐のうなぎのせ 電子レンジで10分でできる簡単なお惣菜です。加熱時間は様子を見ながら加減しましょう。 ■材料(4人分) うなぎの蒲焼串2本、木綿豆腐2丁、蒲焼についているたれ、だし汁1カップ、片栗粉小さじ1、しょうがのすりおろし少々、万能ねぎの小口切り少々 ■作り方 豆腐は半分に切り、ペーパータオルを敷いた耐熱皿にのせ、そのまま電子レンジで2分加熱してざっとくずして水けを切ります。うなぎは幅2cmに切ります。 耐熱皿に豆腐を置き、うなぎをのせてラップをふんわりとかけ、電子レンジで2分30秒~3分加熱します。軽く混ぜてお皿に盛ります。 耐熱容器に蒲焼のたれ、だし汁、片栗粉を入れ、ラップをかけて電子レンジで3分ほど加熱し、取り出したらすぐに勢いよく混ぜ、とろみがついたら2にかけます。うなぎの上にしょうが、万能ねぎを散らします。 うなぎの肝にも栄養がたっぷり ふつうのうなぎに比べて3倍もビタミンAを含むのが肝です(肝100gにはビタミンAが15,000IU含まれる)。肝1個は約5g程度。つまり、肝1個にはビタミンAが約750IU含まれています。肝吸いの栄養もあなどれないものです。 ただし、ビタミンAは体内に蓄積されるため、摂りすぎには注意が必要です。とくに妊婦はビタミンAが欠乏しても過剰でも奇形児出産の可能性があるので注意しましょう(妊娠中及び授乳中の許容量は、10,000IU/日。例えば、うなぎの蒲焼き200gで10,000IUとなります)。
ビタミンが豊富なうなぎですが、ビタミンCは含まれていません。食べる時には一緒にビタミンCを摂るように心がけましょう。うなぎと梅干の食い合わせも注意しましょう。 目次 うなぎにはビタミンCがない! これでOK!夏バテ解消の付け合わせメニュー うなぎと梅干の食い合わせが悪いのはホント? うなぎにはビタミンCがない! ビタミンA、B群、D、Eなどが豊富なうなぎですが、残念ながらビタミンCはまったく含まれません。ビタミンCには、毛細血管・歯・骨などの結合組織を強固にして、免疫機能を高め、鉄分の吸収を促進するはたらきがあります。不足すると疲れやすい、だるい、うつ、興奮しやすい、貧血、食欲不振、歯周病などの症状が現れます。夏バテを避けるにはうなぎと一緒にビタミンCも摂るようにしましょう。 これでOK!夏バテ解消の付け合わせメニュー ブロッコリーとトマトのサラダ ブロッコリーにはレモンの約3.5倍のビタミンCが含まれています。ただ、ビタミンCは加熱すると栄養損失が大きいので、ゆで過ぎないことがポイントです。ドレッシングは好みのものでどうぞ。 ■材料(4人分) ブロッコリー1株、トマト1個、ドレッシング(レモン汁大さじ3、しょうゆ大さじ3、砂糖小さじ1と1/2) ■作り方 ブロッコリーは小房に分けて、塩をいれたお湯でゆでます。トマトはくし型に切ります。 1をお皿に盛り、ドレッシングの材料を混ぜてかけます。 きゅうりの酢のもの きゅうりにはほてりを冷ます効果があるので、強壮硬化のあるうなぎと組み合わせると夏バテで弱った身体を元気にしてくれる。生でたくさん食べると冷えが強くあらわれがちだが、酢やしょうがなどの温性の食品で和らげれば大丈夫。 ■材料(4人分) きゅうり2本、塩少々、しょうが少々、二杯酢(酢・しょうゆ・みりん各大さじ2) ■作り方 きゅうりは塩をまぶして板ずりし、塩がなじんだら水で洗い、薄い小口切りにします。塩で軽くもみ、しんなりしたら水けをきります。 二杯酢で1をあえ、器にもってしょうがの千切りをのせます。 うなぎと梅干の食い合わせが悪いのはホント? 昔からうなぎと梅干は一緒に食べないほうがいいと言われていますが、本当のところはどうなのでしょうか。ある本によると、 「梅干のすっぱさはクエン酸で、体内にたまった乳酸を分解して疲労回復作用があり、また殺菌作用をもっていて下痢、腹痛、中毒によいとされています。酸味こそ強いのですがアルカリ性食品で、多少は胃液の酸と中和するので胃の消化能力を落とします。 江戸時代には夏に「う」の字のつくものを摂ると夏負けしないと信じられていました。うなぎも梅干も「う」のつく食べ物で、こうしたものを食べ合わせると体に刺激が強すぎると考えられていたようです。これらがまとめて胃に入ると、浸透性が高くなり胃壁を通して胃の水分が絞り出される刺激を受けるので、胃の弱い人は下痢を起こすことがあります。」(参考文献:「体をダメにする食べ合わせ・ナガセブック」 )とある。 一概には言えないが、あまりよくはないのかもしれません。
土用の丑の日にはうなぎを食べると言われていますが、うなぎはビタミンが豊富で、夏バテにはもってこいの食べ物です。ビタミンが欠乏すると体のいろんなところに不調がでてしまいます。 目次 ビタミン、不足していませんか? 「うなぎ」にはこんなにビタミンがあった! DHAやEPAも豊富! ビタミン、不足していませんか? 「何となくイライラする」「夜眠れない」「食が進まない」「体がだるい」「肌が荒れる」 「病院に行くほどじゃないんだけどちょっと調子が悪い」。こんなことはありませんか?これは、ビタミンが不足していると起こりがちな症状です。ビタミンにはA、B群、C、Dなど全部で13種類ありますが、どれも大切な栄養素となります。 「うなぎ」にはこんなにビタミンがあった! そして、意外に思うかもしれませんが、実はうなぎはビタミンが豊富な魚です。 ビタミンA 「目のビタミン」と呼ばれるほど、視覚の主要な部分を担当しているビタミンA。 また、がんを抑制するはたらきもあると言われています。 ビタミンAが不足すると起こる症状 目が疲れる、まぶしい、薄暗いところが見えにくい、肌が荒れる、疲れやすい、など ビタミンB群 ビタミンB1は脚気(足がむくんだりしびれたりする病気)を予防するビタミンです。また、ビタミンB2は成長促進作用があると言われています。 ビタミンB群が不足すると起こる症状 ビタミンB1…だるい、疲れやすい、無気力、消化不良、食欲不振、イライラ、など ビタミンB2…めまい、疲れやすい、スタミナがない、弱い光でもまぶしい、目が疲れる、肌が脂ぎる、小鼻の横が脂っぽいなど ビタミンD カルシウムやリンの吸収を助け、骨を強くするビタミンです。 ビタミンDが不足すると起こる症状 骨軟化症、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、虫歯など ビタミンE 細胞の老化をおさえ、生殖機能を正常に保つはたらきのあるビタミン。手足などの血行もよくします。 ビタミンEが不足すると起こる症状 老化が進む、しみ・しわができやすい、心臓が弱る、免疫機能が低下するなど DHAやEPAも豊富! DHA(ドコサヘキサエン酸)は、必須脂肪酸のひとつであり、脳細胞を形成するのに重要な役割を果たしているものです。 そのため、頭がよくなる、学習能力が高まる、などと言われています。胎児の脳が形成される時期の母体には欠かせないものであり、認知症などの老化防止にも役に立ちます。また、がんの進行をおさえたり予防したりするとして注目を浴びています。 また、EPA(エイコサペンタエン酸)はコレステロールや中性脂肪を減らすはたらきがあり、脳梗塞や心筋梗塞といった血液の病気の予防に効果があります。
注目成分・スクワレンとは? 深海にすむアイザメなどの肝臓からは「スクワレン」という不飽和炭化水素がとれ、注目を集めている。不飽和炭化水素とは、炭素と水素からできた物質のことで、ほかの物質に変化しやすい性質がある。酸素とも結合し、そのはたらきによって体内の各器官の機能を調節し、元気をつけるといわれている。 スクワレンが発見されたのは、大正時代のこと。辻本満丸という日本人の化学博士が、小田原でとれたサメから発見したのがはじまりだとか。ツノザメ科の深海サメの一種・アイザメに多く存在していたことから、辻本博士はツノザメ科を意味する「スクアリデー」という言葉をもじって「スクワレン」と命名したという。 その後もスクワレンの研究が進み、血液をサラサラに保つはたらきや、細胞膜の原料となったり、副腎皮質ホルモンを合成するコレステロールの素となることがわかっている。 スクワレンには、高水圧、低酸素、光が届かないという厳しい自然環境で、4億年も深海ザメが生き抜いてこられたヒミツが凝縮しているのだ。 コレステロールは悪者じゃない! 血中コレステロールが増加し過ぎると、動脈硬化を促進し、高脂血症などの生活習慣病の原因となることから、「コレステロール=減らすべきもの」というイメージが強いが、体にとって不可欠な成分であることをまず覚えておいて欲しい。 コレステロールには細胞膜や血管を強くするはたらきがあり、欠乏すると貧血を起こしやすくなったり、脳出血のリスクが高まるともいわれている。 また、ストレスを受けたときには副腎皮質ホルモンが分泌され、ストレスをうまく受け止めようとするのだが、副腎皮質ホルモンを合成しているのもコレステロール。コレステロールが不足すると、体がストレスによるダメージを受けやすくなってしまう。 食事制限によるダイエットや加齢による食欲低下などから、案外低コレステロールになっている人も多いそう。栄養不足になりがちな人は、コレステロールの素となるスクワレンを上手に利用してみるのもいいかもしれない。 さらに、お肌しっとり効果も! スクワレンは人間の皮膚にも含まれる物質で、無色・無味・無臭で肌になじみやすく、殺菌作用やうるおいを与える作用があることから、スキンケアにも利用されている。 世界で最初にスクワレンを化粧品の原料として使ったのはやはり日本で、大手百貨店・三越がハンドクリームに使用したのがはじまりといわれ、現在でも高級化粧品の原料に使われている。 ちなみに、スクワレンには不凍性があることから、戦時中には戦車や航空機の潤滑油としても使われていたこともあるとか……!
サメに捨てるところなし!? 普段は滅多にお目にかかることのないサメだが、じつは日本の近海には、世界のサメの種類の約3分の1が集まっているとか。私たちの身の回りにも、サメ由来の意外な製品が多くある。 まずはサメの肉。昔からはんぺんやかまぼこなどの練り製品の材料として、また、歯ごたえをいかして珍味として利用されたりしている。精肉はアンモニア臭がするため、好き嫌いがわかれるところ。中華料理の高級食材として、すでに定番のフカヒレもお忘れなく。 次に皮。ハンドバッグなどの皮革製品に使われるほか、特有のザラザラを利用してヤスリやおろし金にも利用されている。浮世絵版画の摺り師が、刷毛の毛先を滑らかにするのにも使っていたとか。 そして歯までも、きれいに細工されてアクセサリーに変身している。まさにサメに捨てるところなし! 医療品にも!?サメの健康パワー さらに注目したいのは、サメの内臓や骨などからとれる成分。サプリメントなどですでにおなじみのものもあり、私たちの元気をサポートしてくれている。 アイザメなどの深海鮫の肝臓に多く含まれる成分。酸素とも結合し、それによって体内の各器官の機能を調節し、元気をつけたり、血液をサラサラに保つといわれている。さらに、細胞膜の原料となる、副腎皮質ホルモンを合成するコレステロールの素となる、などのはたらきも。そしてスクワレンはヒトの皮膚に含まれる油脂成分と同じであるため、加齢による油分減少を補う。殺菌作用やうるおいを与える作用もあることから、高級化粧品の原料になるなど、スキンケアにも幅広く利用されている。 美肌系の成分として名高いコラーゲンは、フカヒレに豊富に含まれている。ちなみにフカヒレスープは、トムヤムクン、ブイヤベースと並んで世界三大スープのひとつ。 たんぱく質の一種で、体を構成するたんぱく質の30~40%を占め、細胞と細胞をつなぐ接着剤としてはたらき、酸素や栄養を補給し、不要物を取り除く経路となる。 肌のハリやみずみずしさを保つだけでなく、髪の毛をツヤツヤにする、骨を丈夫にする、軟骨を強くする、血管の弾力性を保つなどなど、全身で大活躍。水晶体や角膜にも含まれていて、目の健康を守っている。不足すると、あらゆる所で老化が進んでしまう。 医療の現場でも、手術の際の止血剤や縫合用の糸、薬のカプセルなどにも使われているそう。 ギリシア語で「軟骨」という意味のコンドロイチン。その名のとおりサメ軟骨からとれ、私たちの体内ではたんぱく質と結びついた形で、各臓器や皮膚、骨、血管壁、軟骨、じん帯、関節、眼球、粘液などに広く分布。細胞が正常に機能するように保水性や弾力性を高めたり、栄養分の消化・吸収・代謝を促したり、血液中のコレステロールや過酸化脂質を排除するなど、さまざまなはたらきをしている。成長期には私たちの体内でも産生されるが、加齢とともに量が減ってしまうことがわかっている。 腎炎、リウマチ、神経痛、腰痛、肩こりなどを適応症とする医薬品にも利用されている。 深海鮫の肝臓から発見されたスクアラミンという物質には、強い殺菌力と抗がん作用が期待されている。がん細胞はあるホルモンを分泌し、自分につながる血管を作らせるように周辺の健全な血管にはたらきかけるが、スクアラミンは新しい血管を作らせないようにはたらきかけ、酸素や栄養素の補給路を断ってがん細胞を兵糧攻めにしてしまうという。 ただ人間に応用した場合の未知の部分も多く、現在も研究が続いている。
海面を近づいてくる、三角の黒い背びれ。 ギザギザにとがった鋭い歯…。かなりコワイけれど、ちょっと気になるサメは、独特の生態を持った興味深い生物でもある。 まずはサメ知識の基本を、クイズ形式でご紹介しよう! Q1サメは恐竜よりも前の時代から地球上に存在していた? ○ホント:最も古いサメの歯の化石は、4億5千万年前のものといわれている。 巨大化した恐竜たちが我が物顔で地上をのし歩いていたジュラ紀は、今から2億600万~1億4400万年前のこと。最古のサメの歯の化石は、4億5千万年前の古生代オルドビス紀からシルル紀のものとされ、圧倒的に古い。 現在のサメの直接の祖先にあたるサメが現れたのは、ジュラ紀から白亜紀(1億4400万年~6500万年前)と考えられている。たかだか数百万年の人類の歴史に比べ、サメははるかに長い時間を海の中で生き抜いてきたことがわかる。 Q2サメの骨の半分は軟骨である? ×ウソ:サメの骨はすべて軟骨でできている。 魚は大きく硬骨魚類と軟骨魚類に分けられる。硬骨類はマグロやサンマといった、ほとんどの魚が該当し、軟骨魚類にはサメやエイなどが分類されている。 軟骨魚類は、全身の骨格が軟骨でできている、浮き袋がない、などの特徴を持つ。 ちなみに人間の体は硬骨で支えられ、骨と骨の間や、耳、鼻などの骨に軟骨が使われている。 Q3サメには浮き袋がない? ○ホント:肝臓につまっている脂質(肝油)が、浮き袋として機能している。 体の組織は水の比重よりも重いが、サメは浮き袋を持っていないので、そのままだと海底に沈んでしまう。そこで活躍しているのが肝臓だ。サメの肝臓は硬骨魚に比べてかなり大きく、中にはたくさんの脂質が含まれているが、脂質は水よりも軽いため、浮き袋替わりにちょうどいいというわけ。特に水面下300メートルから1,000メートルの深海に生息するサメの中には、体重の3割ほどを肝臓が占め、スクワレンという脂質が80%前後も含まれている種類がある。スクワレンは比重が0.86と低く、浮力の確保に役立っているのだ。 Q4サメには"第六感"がある? ○ホント:頭部の器官が磁場を感じ取っている。 視る、聴く、嗅ぐ、味わう、触るという5つの感覚を五感という。人間の場合は、直感や霊感(?)を指して「第六感」といっているが、サメには第六感を感じるれっきとした器官が備わっている。頭部にいくつも空いた小さな孔で、イタリアの解剖学者・ロレンチーニが発見し、形がビンに似ているため「ロレンチーニびん」と呼ばれている。 ロレンチーニびんのはたらきは、磁場や磁力線を感じ取ること。生きている動物の体内には微弱な電流が流れ、周囲に磁場を作っているので、ロレンチーニびんは獲物を発見するレーダーとして機能していたり、羅針盤として方向感覚を保つために役立っているという。
この答えはNO。血液中には、動脈硬化などの原因になる悪玉コレステロール(LDL)と悪玉コレステロールの悪さを防ぐ善玉コレステロール(HDL)が存在します。魚類に含まれる脂肪はこの善玉コレステロールを増やすはたらきがあると言われています。善玉・悪玉コレステロールとそれぞれに関わりのある食品について紹介します。 目次 善玉・悪玉コレステロールを理解しよう 善玉・悪玉コレステロールの構成 コレステロールには2つの概念がある 魚の脂肪は善玉コレステロールを増やす!? 善玉・悪玉コレステロールを理解しよう コレステロールは血液によって体の各部分に運ばれます。しかし、コレステロールも脂肪の一種、そのままでは血液と分離したまま、運搬どころではありません。それで、コレステロールをはじめ、中性脂肪やリン脂質など脂質の仲間は、たんぱく質(アポたんぱく)に覆われた形で血液と混じり合っているのです。これは「リポたんぱく」と呼ばれ、主なものは4種類あります。 このうちの2つが有名な善玉コレステロールと悪玉コレステロールです。 善玉・悪玉コレステロールの構成 HDL(善玉コレステロール) コレステロールの他リン脂質を多く含む、比重が高い(High)リポたんぱくです。肝臓や小腸で合成されます。 全身の細胞膜から過剰なコレステロールを抜き取り、肝臓に運搬するはたらきがあります。血液中にHDL(善玉コレステロール)が多いと動脈硬化などにかかりにくいことが明らかになっています。 LDL(悪玉コレステロール) コレステロールを多く含みます。HDL(善玉コレステロール)より大きく、比重は低い(Low)です。体のすみずみの細胞に運ばれて 細胞膜などの原料になります。また、血管の表面の細胞膜を作るはたらきもありますが、増えすぎると動脈硬化などの原因になります。 このほか、リポたんぱくには、その他のリポたんぱくを作る素となる「カイロマイクロン」、中性脂肪を多く含む「VLDL」があります。それぞれ、血液中に存在する量が多くなると動脈硬化など深刻な病気の原因になります。 コレステロールには2つの概念がある 動脈硬化など生活習慣病に大きく関与するのは、上で紹介したHDL(善玉コレステロール)とLDL(悪玉コレステロール)になります。この2つは、「コレステロールを多く含むリポたんぱく」です。一方、コレステロールそのものが原因になる病気もあります(コレステロール胆石など)。このように、一般的にコレステロールと呼ばれるものには、「コレステロールそのもの」と「コレステロールを多く含むリポたんぱく」という2つの概念があることを覚えておきましょう。 魚の脂肪は善玉コレステロールを増やす!? 肉や魚に含まれる脂肪。ひと言に脂肪といってもいろいろな種類があり、体内でのはたらきもそれぞれ微妙に異なります。この違いの素が脂肪酸です。皆さんがよく耳にするリノール酸、オレイン酸、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)などのことです。脂肪酸は大きく下の3つに分類されます。それぞれの特徴をまとめました。 飽和脂肪酸 代表的な脂肪酸 パルミチン酸、アラキジン酸など 特徴 とりすぎると肝臓でコレステロールの形成を促進し、悪玉コレステロールを増加させます。 多く含む食品 パーム油(植物油の一種)、豚や牛の脂肪分、バターなど 多価不飽和脂肪酸 代表的な脂肪酸 リノール酸、EPA、DHAなど 特徴 悪玉コレステロールを減らして、動脈硬化の原因となる血栓の生成を防ぐぎます。しかしリノール酸をとりすぎると、悪玉だけでなく善玉コレステロールまで減らしてしまいます。 多く含む食品 リノール酸=サフラワー・ひまわり・サラダ油など多くの植物油、ごま・松の実など種実 EPA=すじこ、はまち、いわし、にしん、さばなど DHA=本マグロ脂身、すじこ、まだい、ぶり、さばなど 一価不飽和脂肪酸 代表的な脂肪酸 オレイン酸など 特徴 多価不飽和脂肪酸同様に悪玉コレステロールを減らすが、善玉コレステロールは減らさないという実験報告がなされ、最近注目を浴び始めている 多く含む食品 オリーブ油、なたね油、調合サラダ油、ヘーゼルナッツ、マカダミアナッツ、牛、豚、鶏肉の脂肪分 オレイン酸を含む食品ならたくさん食べても大丈夫? これは大きな誤解なので、注意しましょう。例えば牛や豚の脂肪ですが、オレイン酸だけでなく飽和脂肪酸も含んでいるのです。また、マカダミアナッツを食べ過ぎればコレステロールは増えなくても、中性脂肪は増えてしまいます。 体にいいと言われている脂肪でも摂りすぎ、偏りはダメということです。摂取量を守った上で、飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸をバランスよく摂るよう、いろんな食品を組み合わせて調理することが大切です(飽和:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸=1:1.5:1の比率が望ましいようです)。
脂肪分やカロリーの高い調理法に注意 惣菜店には、肉や、魚、野菜の惣菜が豊富にそろえられています。しかし、健康のためには肉の惣菜よりも魚、野菜の惣菜を選ぶようにします。 魚の惣菜の中にも脂肪の多いものがあります。エビフライ、アジフライなどの揚げ物、ウナギのかば焼き、イカリング、カニ玉などです。 アジやウナギには動脈硬化を促進するLDLを下げるはたらきのあるエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イカにはコレステロールを下げるはたらきのある含硫アミノ酸のタウリンが含まれていますが、脂肪分やカロリーの高い調理法に注意しましょう。カニ玉も同様で、卵や、ふわっとさせるための油をたっぷり使っています。 ブリやアジ、サバはEPA、DHAを含んでいる 魚の惣菜でおすすめなのは、寿司、ブリの照り焼き、サバのみそ煮、アジのマリネなどです。寿司は、LDLを下げるEPAやDHAをたっぷり含む青い魚やマグロのトロなどの脂肪を比較的低いカロリーで取れる料理です。 イクラ、ウニはコレステロールも含みますが、それを下げるタウリンも含まれているので気にせずに食べられます。ブリやサバ、アジにもEPAやDHAが含まれています。
魚を常食にすると脳血栓、心筋梗塞が少ない n-3系脂肪酸は多価不飽和脂肪酸の一種です。α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン(DPA)酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)などがあります。 魚を主食とする日本の漁村や、アザラシや魚などを常食しているイヌイットの人々に、脳血栓や心筋梗塞が少ないのはEPA、DHAのおかげであることが明らかとなりました。EPA、DHAには、HDLの増加(EPA)、コレステロールの低下(DHA)などの作用のあることが分かり、注目されています。 青身の魚に多いEPA、DHA EPA、DHAは白身、赤身の魚よりも青い魚の油に多く含まれています。EPAは、養殖ハマチ、イワシ、マグロ(トロ)、サバの順に多く含まれています。 DHAはマグロ(トロ)、養殖マダイ、ブリ、サバ、養殖ハマチの順に多く含まれています。 魚の脂肪は酸化されやすいので鮮度の高いものを選ぶこと、またEPA、DHAを多く含む魚の油を取れるように、鍋やムニエルなどの調理方法が適しています。 EPA、DHAを多く含む魚 魚名 100g中に含まれる量(mg) EPA DHA 合計 マグロトロ 1288 2877 4165 養殖ハマチ 1545 1728 3273 サバ 1214 1781 2995 養殖マダイ 1085 1830 2915 ブリ 899 1785 2684 イワシ 1381 1136 2517 サンマ 844 1398 2242 ウナギ 742 1332 2074 ハモ 509 1508 2017 タカベ 612 1305 1917 ニシン 989 862 1851 サワラ 480 1189 1669 イボダイ 371 1018 1389 サケ 492 820 1312 アジ 408 748 1156 ニジマス 238 845 1083 出典:日本食品脂溶性成分表(科学技術庁資源調査会編)
EPA、オレイン酸はHDLを増やす 摂取する脂肪のタイプで、HDLを上げたり、LDLを下げたりできます。 高脂血症には低HDL血症、高LDL血症と呼ばれるものがありますが、これらの高脂血症では、摂取する脂肪のタイプのバランスを調整することが食事療法の一環となっています。 HDLを上げるはたらきがあるのは、多価不飽和脂肪酸(n-3系脂肪酸)のエイコサペンタエン酸(EPA)や一価不飽和脂肪酸のオレイン酸などです。 新鮮な青魚の脂肪を摂取 EPAはイワシ、サバ、サンマなど青い魚の脂肪に多く含まれており、HDLを上昇させるだけでなくLDLを減らす作用があります。 従って、これらの魚を料理する時は、焼き魚のような脂肪を捨ててしまう調理法よりも、新鮮な魚の脂肪も一緒に食べられるような鍋、ムニエル、煮付けなどの調理法が適しています。 オリーブ油などに多く含まれているオレイン酸にも、HDLを高く保つだけでなく、動脈硬化を促進するLDLを下げるはたらきがあります。適量であれば、アルコールもHDLを上昇させるはたらきのあることが分かっています。また適度な運動や飲酒もHDLコレステロールを上昇させます。
魚に多く含まれるEPAやDHA 脂肪酸は一方の端にメチル基(-CH3)、他方の端にカルボキシル基(-COOH)が付いた長い炭素の鎖構造を採っています。この炭素の鎖の一部が二重構造となっているものを不飽和脂肪酸と呼んでいます。 不飽和脂肪酸の内、メチル末端の炭素から数えて3つめが最初の二重結合であるものをn-3系脂肪酸といいます。n-3系脂肪酸には、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などがあります。 特に、EPAやDHAは魚油やアザラシなどの海獣油中に多く含まれています。魚を主食とする日本の漁村の人々やイヌイットに、脳血栓、心筋梗塞などが少ないのは、EPAやDHAの摂取が多いためであることが明らかとなりました。 記憶学習能力をアップさせるDHA EPA、DHAに共通するはたらきとしては、「中性脂肪の低下」「血小板凝集の抑制」が報告されています。 さらにEPAには「血液粘度の低下」「HDLの増加」が、DHAには「記憶学習能力の向上」「視力の向上」「抗炎症作用」「血しょうコレステロール低下」が、生理作用としてあげられています。 n-3系脂肪酸は体内では合成されないこともあり、今、たいへん注目されています。