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パーキンソン病に長く悩んでいる人にはDAT外来に相談 順天堂大学

パーキンソン病の治療歴が長いけど、薬の効く時間が短く生活に困っている。今の治療法について誰かに相談したい。そんなかたのために、順天堂大学順天堂医院では2019年9月から「DAT(Device Aided Therapy)外来」を開設しました。脳神経内科医、外科医、精神科医や看護師、心理士、薬剤師など多職種のスタッフがサポートして、最新治療の選択肢を含め、患者さん個人に最適な治療を提供することを目指しています。

脳内でドパミンが減って手足の震えや体の動きがぎこちなくなって生活に困る病気

パーキンソン病は運動障害疾患の1つで、脳内の神経間で情報を伝達する物質のドパミンが減ることで手足の震えや体の動きがぎこちなくなるなどの症状に悩まされる病気です。
治療法は、薬や手術、リハビリなどがあります。
薬に関しては、ドパミン補充を目的としたL-ドパ(レボドパ製剤)が中心で、L-ドパは脳内に移行したときにドパミンに変化することを応用したものです。おもに血管内でドパミンに変わることを防ぐドパ脱炭酸酵素阻害薬との合剤(レボドパ・カルビドパ合剤)として使用されます。
ドパミン補充とは別の作用をする薬は、ドパミンと同様の作用を持つドパミンアゴニスト、ドパミンが体内や脳内に分解されることを防いで脳内にドパミンが移行されやすいようにする作用を持つ薬〔MAOB阻害薬(MAOBはモノアミン酸化酵素B)、COMT阻害薬(COMTはカテコール-O-メチル基転換酵素)〕などもあります。

ウェアリング・オフ現象、ジスキネジアが課題

ドパミンを補充する薬を長く服用し続けていくと、薬が効いている時間が短くなるときや、逆に効きすぎるときがあります。下記のような運動合併症が現れることがあります。

  • ウェアリング・オフ現象:薬が効く時間が短くなることで、1日の中で症状が悪化する時間帯が出てくる症状です。
  • オン・オフ現象:薬が突然効かなくなって動けなくなるオフ状態、効果が突然あらわれるオン状態を繰り返します。
  • ジスキネジア:薬が効きすぎていることにより、自分の意思とは関係なく勝手に動いてしまいます。

上記の運動合併症や、L-ドパの副作用に悩まされて、薬の調整が難しくなる患者さんがいます。こうした問題に対し、薬の量を増やす、薬の回数を増やす、飲み薬から貼り薬にするほか、デバイス(機器)を用いた治療法(Device Aided Therapy:DAT)があります。

デバイス治療の経腸療法や脳深部刺激療法の選択も有用

デバイスを用いた治療は大きく2つの方法があります。1つは脳深部(のうしんぶ)刺激療法(DBS:Deep Brain Stimulation)です。
脳に細い電極を入れ、胸に埋めた装置とつないで刺激を与え続けて脳の神経情報の伝達を調整する治療法で、世界で10万人以上が受けています。国内では保険診療で受けられます。運動障害疾患のジストニアやトゥレット症候群などにも有効な治療法です。
もう1つは、内視鏡で胃に穴をあけて、腸までチューブを挿入し、体外式ポンプ機器につないで薬を24時間持続的に注入する経腸療法です。
国内では、レボドパ・カルビドパ製剤を持続的に服用する経腸療法は2017年から保険診療で受けられます。現在、国内で受けている患者さんは500人ほどです。
L-ドパの効果を途切れさせずに持続的に服用できるので、ドパミンを安定的に補充することにつながります。薬が効かない時間帯があるウェアリング・オフ現象や効きすぎてしまうジスキネジアが現れにくく、1日中よい状態を保つことができる可能性があります。
現在は、経腸療法以外に皮下注射で持続注入する方法も開発され、治験(関連記事:治験は新薬の誕生にかかせない社会貢献、正しく理解しよう!)が行われています。

図1:デバイス治療の経腸療法(左)、脳深部刺激療法(右) 図1:デバイス治療の経腸療法(左)、脳深部刺激療法(右)

出典:順天堂大学プレスリリース(https://www.juntendo.ac.jp/news/20190905-02.html)
イラスト出典:パーキンソンスマイル.net(アッヴィ合同会社)

写真:経腸療法のデバイスを装着した状態 写真:経腸療法のデバイスを装着した状態

DAT外来は外来、多職種のスタッフがサポートして患者さんにベストの治療を提供

2019年9月、順天堂大学順天堂医院(東京都文京区)の服部信孝先生、大山彦光先生らは、進行期のパーキンソン病や運動障害疾患の患者さんがよりよい日常生活を送ってもらうことを目的に、DAT(Device Aided Therapy: デバイス治療)外来を開設しました。

DAT外来の特徴は大きく2つ。1つはDATです。順天堂医院はDATを意味する新たな治療選択肢(脳深部刺激療法や経腸療法)を受けられる国内でも数少ない医療機関の1つです。
もう1つは、脳神経内科医、外科医、看護師、リハビリスタッフ、精神科医・心理士、薬剤師、研究者など多職種のスタッフが、外来、入院、退院後も含めて患者さん個人にベストの治療を提供できることを目指してサポートしていることです(図)。

相談に関しては、受診に関係なく全国どこからでも受け付けます。チームで検討し、いまの治療法よりもよい治療選択肢などがあれば提案するようにしています。

図2:DAT外来の多職種スタッフによるサポートの仕組み 図2:DAT外来の多職種スタッフによるサポートの仕組み

出典:順天堂大学プレスリリース(https://www.juntendo.ac.jp/news/20190905-02.html)

パーキンソン病は国内では10万人あたり約150人といわれており、高齢になるほど発症しやすいので、将来も問題視されている病気です。
さまざまな治療法をうまく組み合わせて、患者さん個人に応じた最適な治療法を提供できれば、パーキンソン病をコントロールしてよりよい日常生活をおくることが可能です。
すでにデバイス治療を受けているけど他の医療機関に相談したい人、治療内容を巡ったトラブルに悩んでいる人、薬の福作用に悩んで服用中断を考えている人は、最新治療も含めて患者さん個人にベストな治療法を考えてくれるDAT外来に相談できます。

■参考

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公開日:2019/12/25
監修:順天堂大学順天堂医院(東京都文京区) 脳神経内科 服部信孝先生、大山彦光先生