パーキンソン病は、今後も高齢の患者さんが増えていきます。在宅または介護施設では、専門医のサポートを受けて患者さんをケアすることが課題となっています。そこで、順天堂大学脳神経内科と介護施設「PDハウス」を運営する株式会社サンウェルズとの協働により、情報通信技術(ICT)を駆使して、遠方にいる専門医が患者さんや家族、かかりつけ医や介護スタッフをサポートする在宅医療の研究講座が2019年10月に開設されました*1。
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長期にわたって専門的な治療が必要なパーキンソン病ですが、重度化する患者さんや、介護施設に入居すると通院が困難になる患者さんが増えてきます。
さらに、病院では長期入院が難しくなっている現状もあり、専門医と患者さんや家族のかたとの関わりが薄くなってしまいます。
また、病気が進行すると、手足の震えや体の動きのぎこちなさといった症状に悩まされるので、都市部に比べて専門医が少ない地方では、在宅医療や介護施設を専門医がサポートできるようにすることが課題です(図1)。
図1:これまでのパーキンソン病診療の課題
出典:順天堂大学の記者会見(2019年12月6日開催)「順天堂大学がICT制御に基づく在宅医療開発講座を開設~ICTを駆使した未来のパーキンソン病ハウスを目指して~」資料
そこで、患者さんや家族のかたに、遠方にいる専門医と介護施設や往診医(かかりつけ医)とつなぐ仕組みづくりとして、順天堂大学順天堂医院脳神経内科と、国内初となるパーキンソン病専門の介護施設「PDハウス*3」を運営する株式会社サンウェルズ(https://sunwels.jp/)と共同で「ICT制御に基づく在宅医療開発講座」を2019年10月に開設されました*2。
共同研究講座は、都内の順天堂大学の専門医による協力のもと、複数のセンサーでモニターし、遠方のパーキンソン病ハウスに入所する患者さんの生活上の課題を洗いだし、QOLを改善していくことを目的にしています。
たとえば、患者さんの転倒や転倒による骨折を防ぐために、患者さんの歩行をはじめとした生活状況について、情報通信技術(ICT)を駆使したマルチセンサー・遠隔モニタリングなどによりデータを収集して、日常生活内でのリスクを解析します。
その結果をもとに、住宅のハード面・ソフト面から改善するホームアダプテーションにより、患者さんのQOL向上を目指します。
図2:専門施設パーキンソン病ハウスにおける遠隔ICTを駆使した患者さんのサポート
将来構想としては、全国どこにいても最先端かつ患者さん個人に最適な医療・介護を受けられる時代が来る可能性があります。たとえば、拡張現実を用いた3D空間のクリニックで、遠くにいる専門医による診療を受けられることができるかもしれません。
順天堂大学の在宅医療開発講座は近未来の診療と介護のあるべき姿として、専門医が終末期まで患者さんに寄り添い続けることが課題です。
そのために、患者さんや家族のかたにもご協力いただいたうえで、専門医を通じたICTモニタリングでリアルワールドデータを蓄積することは、進行期~終末期の患者さんの生活の質(QOL)が向上するためのより良い方法の発見、さらには人生100年時代を満喫できることにもつながるといえるのではないでしょうか。
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