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症状改善のカギは「脳」!?パーキンソン病の治療方法

パーキンソン病は、抗パーキンソン病薬を投与する薬物療法や、脳に直接はたらきかける手術療法、リハビリをはじめとした作業療法などで治療します。

パーキンソン病はどうやって治療する?

手足のふるえ

ドパミンという脳内の神経伝達物質の減少で手足のふるえなどが起きるパーキンソン病は、抗パーキンソン病薬を投与する薬物療法や、脳に直接はたらきかける手術療法、リハビリをはじめとした作業療法などで治療します。薬物治療を基本として、これらの中から病気の進行度にあわせた方法がとられます。いずれの方法もパーキンソン病を根本から治すことはできませんが、進行の抑制や症状の改善が期待できます。

早期は薬物療法が中心

パーキンソン病を治療するおもな薬は8種類に分類されます。症状がそれほど重くない早期は、薬物療法が治療の中心となります。病気の進行度や患者の年齢などにあわせ、必要に応じて複数の異なる種類を組み合わせて投与することもあります。

おもな抗パーキンソン病薬の分類

1. レボドパ

ドパミンに変化する物質を服用することで、不足したドパミンを補います。

2. ドパミンアゴニスト

ドパミン受容体を刺激して、ドパミンの受け渡しが正常に行われている状態にします。

3. 抗コリン薬

ドパミンの減少に伴って増加したアセチルコリンという神経伝達物質を減らして、ふるえの症状を抑制します。

4. 塩酸アマンタジン

大脳にある線条体(せんじょうたい)で、ドパミンが放出されるのを促進します。また、ジスキネジアを抑えるはたらきもあります。

5. ドロキシドパ

歩くときに一歩が踏み出せず立ちすくんでしまう「すくみ足」と呼ばれる症状などに関係する、ノルエピネフリンという神経伝達物質の不足を補います。

6. MAO-B阻害薬

ドパミンが分解されるのを防ぎます。

7. 末梢性COMT阻害薬

レボドパと併用して、レボドパが効きやすくなるように作用します。

8. ゾニサミド

パーキンソン病の症状を抑えますが、はっきりしたメカニズムはわかっていません。
てんかんを治療するのに使用されていた薬で、レボドパと併用することが多いようです。

参考:難病情報センター パーキンソン病関連疾患(3)パーキンソン病

これらの薬は、種類によって効果が続く時間や副作用が異なります。レボドパの場合、投与期間が長くなると、意思に関係なく体がくねくね動くジスキネジアという症状が現れたり、症状が良くなるのと悪くなるのを1日の間に繰り返したりすることがあります。そのため、病気が早期の段階では特に、薬の投与時期などを医師とよく相談しながら治療を進める必要があります。

抗パーキンソン病薬のほかにも薬を服用している場合は、薬の飲み合わせにも気をつけなくてはなりません。期待どおりの効果を得るためにも、薬物治療を受ける前に、服用中の薬を医師に伝えて相談しましょう。

進行期には脳の手術をすることも!

パーキンソン病の患者の脳は、必要以上に活発になったり、まわりの神経に通常は送らない信号を送ったりするなど、特定の部分に異常がみられます。薬物療法では進行が抑えられない進行期には、この異常な部分を活動させなくする手術で、症状の改善を目指すことがあります。その手段として、定位脳手術が行われます。これは、外からは見えない脳の位置関係を立体的にとらえ、手術が必要な位置を正確に突き止めて、頭蓋骨に開けた小さな穴から入れた医療器具で手術する方法です。

この定位脳手術には、以下の2つの方法があります。

●凝固術(ぎょうこじゅつ)

脳に入れた細い電極で異常な組織に熱を加えて固め、はたらかなくさせる手術方法です。組織を固めた後に、電極は抜き出されます。

●脳深部刺激治療(のうしんぶしげきちりょう)

DBS(Deep Brain Stimulation)とも呼ばれます。脳に細い電極を入れ、胸に埋めた装置とつないで刺激を与え続ける手術方法です。刺激された神経細胞ははたらかなくなります。手術後も電極は脳に入れたままで、胸の刺激装置は3~5年の間隔で電池を交換します。

定位脳手術を行うには特殊な技術が求められるため、現状では、パーキンソン病の手術ができる施設は限られています。また、病気が進行して重度になっている場合は、手術で得られる効果への期待より、脳へのダメージが心配される場合もあります。手術を希望する場合は、薬物療法を行っている主治医とよく相談する必要があります。

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公開日:2010/04/12