がん治療後の後遺症で、リンパ浮腫というむくみ(漢字で浮腫みといいます)を生じることがあります。太りすぎ(肥満の例としてBMI30以上)の患者さんはむくみを生じやすいので、体重管理のために食生活の改善や運動などがすすめられます。食生活に関しては、がん研究会有明病院管理栄養士の伊丹優貴子先生が、栄養バランスを考えた食事献立の考え方やコンビニ利用時の工夫などについて、第3回日本リンパ浮腫学会総会市民公開講座*1で講演した内容を紹介します。
がん治療に伴うリンパ節郭清や放射線照射などによって、体内のリンパ液の流れが悪くなって、、リンパ浮腫というむくみ(漢字で浮腫みといいます)を発症することがあります。
リンパ浮腫対策の診療ガイドラインでは、太りすぎ(肥満)は危険因子で、自分にとって適正な体重を理解したうえで食生活の見直しや運動などが推奨されています。
伊丹先生によると、普通の食事で必要な栄養素を摂取しながら無理なくできる減量は1ヵ月に2~3㎏と言われています。急激なダイエットを個人の判断で行うことは危険です。一気にやせるというのは体調も崩れやすくなります。
がん治療中であれば、1ヵ月に1kgを目標にしてゆったり目に減量することをお勧めしています(参考記事:がん治療後の後遺症「リンパ浮腫(むくみ)」の敵は太りすぎ(肥満)、適正体重の管理が対策に)。
1ヵ月あたり1kgのゆったり目の減量は難しくありません。というのは、計算上、カロリー量だと月に7000kcal減らすと達成できます。1日だと約230kcalです。
230kcalは、ごはん茶碗1杯分(150g)程度、チョコクッキーだと5枚程度、ビールジョッキ1杯(500mL)程度です。なお、運動だと体重50kgの方であればウォーキング1時間30分程度です*2。
がん患者さんは体力を消耗しやすいので、栄養バランスをうまくとることが重要です。
そこで、伊丹先生が患者さんに栄養指導をするときに、患者さんの食生活状況を理解するために念頭に置いている項目と、栄養バランスを考えた献立の目安を提示してくれました。
心当たりはありませんか?当てはまる項目が多い人は注意が必要です。
☆上記4つから選択・足し算して1.5を目安にする
例:朝食は卵1個(1)とウインナー2個(0.5)=1.5、昼食は魚一切れ(1)と豆腐一切れ(0.5)入り味噌汁=1.5
ただし、魚や肉の部位や調理法方によってエネルギー量(カロリー量)は変化するので注意が必要です。
☆海草、きのこは低カロリーですが、油料理やドレッシングに気をつける。
じゃがいもなどイモ類、レンコン、カボチャなど糖質が多く含まれる野菜の量が多い場合、主食を減らす必要があります。
牛乳コップ1杯、果物はにぎりこぶし1個を目安(みかん2個、小さいバナナ1本など)
カロリー量が多い(エネルギーが高い)場合、エネルギーが高いものを残すようにする、あるいはエネルギーの低いものを選ぶという2つの方法があります。下記に例です。
仕事が忙しい人では、家庭で料理を作らずにコンビニで3食を済ますことも多くなります。ただ、コンビニの食品はカロリー量や栄養成分を明示しているので、利用の仕方によっては自炊するよりも簡単に3食1400kcalにおさえることができます。
以上から、がん治療後の後遺症としてのリンパ浮腫(むくみ)対策は、適正体重を理解して、太りすぎの肥満の患者さんでは体重を減らすことが大切とされています。そのために、食生活の見直し、運動などがすすめられます。
自分の適正体重を理解したうえで、1ヵ月当たり1kg、1日当たり230kcalを目安に、ゆっくり時間をかけて体重管理に取り組むとよいでしょう。
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