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線維筋痛症と眼瞼けいれんは関係ある病気 眼瞼・顔面けいれん友の会講演会から

眼瞼痙攣(がんけんけいれん:以下、眼瞼けいれん)は、目が開けにくい、まばたきしにくいといった症状やドライアイのような症状が特徴で、痛みを訴える患者さんが少なくありません。一方、歌手レディ・ガガさんが全身の激しい痛みために活動休止を宣言した理由で有名になった線維筋痛症と関わりが深いといわれています。東京リウマチ・ペインクリニックの岡寛先生は、線維筋痛症の調査結果などを、患者会の眼瞼・顔面けいれん友の会の講演会で紹介しました。

線維筋痛症の患者さんでドライアイ様の眼瞼けいれんのような症状が多い

2004~2005年の厚生労働省線維筋痛症研究班で住民8000人を対象に、3ヵ月以上続く慢性の痛みを訴える人に線維筋痛症の診断をして分析した報告では、全人口の約1.7%、人数換算すると200万人の患者さんが存在すると推計されています。
この調査で線維筋痛症と診断された患者さんのうち257人を対象に症状を聞いたところ、「まぶしい」と訴えていたのは15%、ドライアイやドライマウスといった乾燥症状を訴えていたのは約49%とかなり多かったのです。
また、眼瞼けいれんの患者さんでは抑うつ症状が多いのですが、線維筋痛症の調査結果では6割が抑うつ症状を訴えていました。
岡先生によると、まぶしさを訴える、あるいはドライアイのような症状を訴える線維筋痛症の患者さんを眼瞼けいれんの専門医に紹介したところ、どちらの病気も合併している患者さんだったというケースが複数例あったという話でした。

2つの病気の発症原因はともに脳の機能異常

眼瞼けいれんと線維筋痛症の患者さんは、脳の機能異常が関係していることが指摘されています。
岡先生によると、線維筋痛症の患者さんのfunctional MRIやPETという高精度に解析できる画像検査の結果からは、特に大脳辺縁系の後帯状回というところに異常が見られるとのことです。
さらに、岡先生らが眼瞼けいれんと線維筋痛症のいずれも症状が見られる患者さんに画像解析をしたところ、脳の帯状回で異変が認められたとのことでした。
これらの結果から、線維筋痛症と眼瞼けいれんはお互いに関係性がある病気であることが考えられます。

線維筋痛症の痛みの評価と治療の実際

眼瞼けいれんの患者さんで全身に痛みがある患者さんでは、痛みの評価をしたうえで専門医を受診することがすすめられます。痛みの評価は、おもに以下の3つがあります。

●過去3ヵ月間における痛みや疲労などの状況を聞くロンドン質問票:London Fibromyalgia Epidemiology Study Screening Questionnaire(LFESSQ)

●米国リウマチ学会の診断基準(1990)

図:米国リウマチ学会の診断基準(1990)

3ヵ月以上続く上半身、下半身を含めた対称性広範囲な疼痛がある。全身18ヵ所の圧痛点のうち、11ヵ所以上に圧痛が存在すると線維筋痛症と診断されます。
11ヵ所を満たさない全身の痛みが有る場合、目安として5ヵ所以上を満たすと慢性広範囲疼痛と考えられます。ある意味で、線維筋痛症は慢性広範囲疼痛の完成/進行型といえます。

提供:東京リウマチ・ペインクリニック・岡寛先生

●米国リウマチ学会診断予備基準(2010)

痛みの治療に関しては、まず専門の医療スタッフによる医療面接を行います。
その際、痛みの程度をPain Visionという機器で客観的評価、あるいは患者さんが痛みを0~10点(痛みが全くないは0、最悪の痛みは10)で点数をつけてもらうNumerical Rating Scale(NRS)という自己評価をしてもらい、患者さんのつらい痛みの状況をお互いに理解します。
次に、リウマチ関連の病気、甲状腺の病気などと鑑別することや、うつ病などもあるかどうかなどについて調べるための問診や血液検査を受けます。
線維筋痛症とわかったら、医師が参照するガイドライン(線維筋痛症診療ガイドライン2017年版)をもとに、症状や状態に応じて治療を受けます(参考記事:全身の痛みを和らげる治療の最前線

治療経過は、前述のPain Vision検査や痛みを10段階評価するNRSなどで診ます。 NRSに関しては、痛みの点数をまず半分にすることが目標になります。

岡先生によると、痛みの程度が半分になれば、家事ができたり、外出したり、散歩ができたり、今までできなかったことがひとつずつできていくので、日常生活ができるようになるイメージを持ちましょう。
最終的には、社会復帰して就労が可能と考えられるNRS0~2点を目指せるようにします(図1)。

図1:患者さんが目指す痛みの治療目標

提供:東京リウマチ・ペインクリニック・岡寛先生

岡先生によると、線維筋痛症は難治の病気ですが、最近は有効な治療選択肢が増えてきたので、早く病気を発見して早く治療を受けること、患者さんがセルフマネージメントを意識することが、よくなるための近道と協調しています。
先生は以下のメッセージで締めくくりました。

治療は長い道のりを走る車を想定してください。標識は医療者、ガソリンは家族や協力する方、薬物療法は車のイグニッションキーの役割です。
しかし、アクセルペダルを踏んで前に進むのは患者さん自身です。病気と向き合っていくことが長い道のりを完走するために重要です(図2)。

図2:患者さんが病気と向き合うセルフマネージメントが重要
図2:患者さんが病気と向き合うセルフマネージメントが重要

提供:東京リウマチ・ペインクリニック・岡寛先生

  • *:患者会の眼瞼・顔面けいれん友の会の主催による第16回「眼瞼・顔面けいれん友の会」例会(2019年3月23日)の講演内容です。

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公開日:2019/06/03
監修:東京リウマチ・ペインクリニック院長 岡寛先生、眼瞼・顔面けいれん友の会