疾患・特集

息切れ対策は高脂肪食を食べよう!呼吸リハビリテーションでよりよい呼吸(3)

息切れを起こしやすい人、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者さんは「痩せ型」が多いといわれています。呼吸するのに筋力・体力を多く使い、エネルギーを消耗しやすいので栄養不足になりがちだからです。第23回J-BREATH(日本呼吸器障害者情報センター)講演会「~よりよい呼吸のために~」(2018年10月28日)で行われた関東学院大学の田中弥生先生が「呼吸リハビリと栄養」をテーマに講演した内容から、上手に栄養をとるコツを紹介します。

息苦しい人は痩せ型が多い?

息切れを起こしやすいCOPDの患者さんは痩せ型が多いのは、どうしてでしょうか。
田中先生によると、体重が減少する理由は、呼吸をするのに健康の人の10倍もエネルギーを使うからとのことです。
健康な人が1日の呼吸で消費するエネルギー量はバナナに換算すると1本の半分くらいです。それに対し、COPDの患者さんでは呼吸のためにバナナ5本分のエネルギーを消費していることになります。
栄養が不足して痩せると筋力が低下します。筋力が低下すると、息切れや倦怠感も増加するので体を動かすことが少なくなります。体を動かさないと、さらに筋力も低下しますし、食欲も減退していきます。こうなると、ますます「痩せ」が進みます。
さらに、COPDの患者さんは嚥下筋(のみ込むための筋肉)が弱くなって飲み込みが難しくなるケースや、誤嚥(ごえん)を起こすケースが多くみられます。
栄養不足と筋力・体力低下の悪循環が起こると、病気がますます重症化してしまいます。そこで、痩せと低栄養の悪循環を断ち切る第一歩は、食べやすい食事でしっかりと栄養をとりながら、運動で筋力をつけて食力をあげることが大切です。

呼吸に重要な栄養素は脂肪

息苦しい人は痩せ型が多い?

呼吸のためにより多くの栄養をとらないといけません。基本的には3大栄養素をとりましょう。3大栄養素とは脂質(脂肪)、糖質(糖)、タンパク質です。
糖は、エネルギーとして消費されますが、副産物として水と二酸化炭素が産生されるので、COPDなど呼吸不全の患者さんでは二酸化炭素が体内に溜まることに注意が必要です。
3大栄養素のなかでCOPDの患者さんに最も摂取を心がけて欲しいのは脂肪です。
脂肪(脂質)は、3大栄養素のなかでもっとも高エネルギーかつ効率的なエネルギー源です。さらに、高脂肪食は二酸化炭素の産生と貯留を抑制する効果もあるので、栄養状態の改善に最適の栄養素と言えます。筋肉を保つためには高タンパク質も不可欠の栄養素です。
良質の脂肪をとることが重要です。脂肪が分解されて得られるケトン体という物質は脳のエネルギー源になります。良質な脂肪としてココナッツオイルや中鎖脂肪酸(MCT)オイルには、ケトン体が多く含まれています。

筋力、体力がおとろえて転倒骨折の原因になるサルコペニアに注意

咳や息切れなど呼吸が苦しい状態が頻繁になると、食事を摂りにくくなりますし、呼吸するのに筋力、体力、エネルギーを多く使うので、筋力や体力が落ちてきますし、低栄養状態に陥りやすくなります。
高齢になると、筋肉量の減少にともない身体機能も低下するので、日常生活で動かなくなり、転倒骨折が多くなる病気のサルコペニアになりやすいことが問題です。
栄養を十分に摂取して体重を維持しながら、筋力や体力がおとろえにようにしないといけません。次回は、家庭の料理をカロリーアップさせるレシピの工夫について紹介します。

■関連記事

公開日:2019/03/06
監修:関東学院大学 田中弥生先生