料理でよく使われる油といえば、サラダ油やオリーブオイル、ラードなどが一般的。そんな中、ヘルシー志向の女性を中心に近年人気が高まっているのが、ココナッツオイルです。一般的な油との違いで特徴的な点として、ココナッツオイルには中鎖脂肪酸が多く含まれることが挙げられます。
中鎖脂肪酸は、ココナッツやパームフルーツに含まれる天然の成分で、母乳や牛乳にも含まれており、私たちも普段から摂取しています。中鎖脂肪酸の分子の長さは、オリーブオイルやラードなどに含まれる長鎖脂肪酸の約半分。肝臓で素早く分解されるため、体脂肪がつきにくく、エネルギーになりやすいことが知られています。
中鎖脂肪酸は、健康オイルに使われたり、ココナッツオイルに含まれていたりすることから、一般的には料理に使われる食用油のイメージをもたれています。しかし、すぐにエネルギーになりやすいという特長から、エネルギーを積極的に必要とする医療現場でも、40年にわたって使われ続けてきました。このことからも、中鎖脂肪酸は安心して利用できる成分であることが分かります。さらに現在は医療現場だけにとどまらず、高齢者の低栄養状態(PEM:たんぱく質・エネルギー欠乏症)を改善するために、介護の現場でも利用されています。
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中鎖脂肪酸には、ケトン体という物質を体内に多く作り出す働きもあります。ケトン体は、脳でブドウ糖が不足したときの、第二のエネルギー源。中鎖脂肪酸のこの働きに注目しているのが、アルツハイマー病をはじめとする、脳機能に関わる医療現場です。アルツハイマー病患者の脳では、ブドウ糖利用が著しく低下してエネルギー不足に陥り、脳が正常に機能しなくなっています。このことから、脳のエネルギー源となるケトン体を作る中鎖脂肪酸が、アルツハイマー病の予防に役立つのではないかという研究が進められています。実際に、中鎖脂肪酸の摂取が記憶力低下を抑制するという研究成果が、アメリカで既に報告されています。
「あぶら」をすべてひとくくりにして、「悪者だから、できるだけ控えよう」と認識されていたのは、ひと昔前までの話。現在では、それぞれの油ごとに、健康に良い機能があることが知られています。中鎖脂肪酸が含まれた健康オイルや、中鎖脂肪酸100%のオイルが、店頭や通販などで手に入ります。毎日の食生活に、うまく取り入れてはいかがでしょうか。