日本の糖尿病とうつ病を合併した患者さんの実態はどうなのでしょうか。日本人の糖尿病患者さんとうつ病との合併の実態を探る研究として、DIACET研究があります。東京女子医科大学の石澤香野先生に概説してもらいました。
糖尿病とうつ病を合併した患者さんでは、うつ病がセルフケア行動の減少や血糖コントロール悪化といったよくない影響を及ぼし、合併症の発症リスクを高めることなどが海外の研究報告から指摘されています。
そこで、日本ではどうなのでしょうか。糖尿病とうつ病との合併の実態を調査している研究として、DIACET※という現在進行中の前向き研究があります。東京女子医科大学 糖尿病センターの石澤香野先生に概説してもらいました(2018年6月の第39回荒川糖尿病セミナーの講演内容をもとに本記事を作成しました)。
2012年の初回調査からは、日本人の糖尿病患者さんの約3割がうつ症状を合併しており、欧米と同じくらいの高いうつ合併率であることが分かりました。
特に、若い患者さんや女性患者さんでうつが多く、うつ症状が重いことも明らかになりました(図1)*1、*2。なお1型糖尿病と2型糖尿病の病型間では、年齢や性別で補正すると、うつの状態の多さには差は認められませんでした。
糖尿病の合併症とうつ症状(うつの重症度)との関連は、これまで国内外で包括的に調べられていませんでした。
そこでDIACETでは、糖尿病合併症やそれに伴うさまざまな自覚症状とうつ状態の重症度を調べて解析を行いました。
具体的には、PHQ-9の回答をスコア化し、総合得点0~4点のうつがない患者さん、5~9点の軽度のうつ状態を認める患者さん、および10点以上の中等度以上のうつ状態を認める患者さんの3段階に分類し、糖尿病性の合併症に関連した症状との関連を検討しました。
その結果、1型糖尿病患者さん、2型糖尿病患者さんともに、うつが重症であるほど、網膜症、神経障害、自律神経障害、透析に至る末期腎不全といった細小血管障害の合併が、統計学的に有意に多くなることがわかりました*2。
さらに、2型糖尿病患者さんでは、うつの重症度と糖尿病腎症病期の進展が関連しており(図2)*3、うつの重症度が増すにつれて、大血管障害による通院頻度、そして過去1年間の入院の頻度も、有意に上昇することが分かりました(図3)*2。
DIACET研究は一施設の研究ですが、日本人糖尿病患者さんのうつ病が欧米と同じくらい多い可能性があること、そして、うつの重症度が上がるにつれて、糖尿病合併症が増えたり、入院したりするリスクが上昇することを示しています。
では、どのように糖尿病とうつ病の合併に早く気付き、健康管理に取り組んでいけばよいのでしょうか。次回に続きます。
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