夏はキャンプやバーベキューなど野外での食事が多くなり、それと同時に集団食中毒が発生しやすい季節。調理方法や加熱の時間、調理器具の利用時の注意点などをしっかり守れば食中毒は防げます。正しい知識を学びましょう。 目次 夏のアウトドアは特に注意!食中毒の集団発生 ウシやヒツジには無害な細菌でも、ヒトの身体に入ると… 屋外での調理や食事による食中毒を防ぐには? 夏のアウトドアは特に注意!食中毒の集団発生 キャンプやハイキングなど、アウトドアの絶好のシーズンである夏は、バーベキューのような屋外での食事が多くなります。たとえ山や海へ出かけなくとも、夏祭の縁日で、焼きそばや焼きとうもろこしなどを食べる人は多いでしょう。 そこで気になるのが、食中毒の問題。夏に発生しやすいのは家庭内でも同じですが、屋外では多くの人が同じ料理を食べるため、集団発生となりやすくなります。その結果、残念ながら毎年のように、大きなニュースとして報じられています。 ウシやヒツジには無害な細菌でも、ヒトの身体に入ると… 食中毒を引き起こす病原微生物の細菌類にとって、増殖するのに適した環境だと言えるのが、動物の体温と同じくらいの気温と、じっとりとした高い湿度です。高温多湿の日本の夏は、この条件をちょうど満たしているため、食中毒が起きやすくなります。 細菌類の中でも要注意なのが、O-157やO-111などの腸管出血性大腸菌です。ウシやヒツジの大腸内では害を及ぼさず、ごく普通に存在している細菌ですが、いったんヒトの体に入ると腸管壁に付着し、ヒトにとっては有害なベロ毒素を作り出して、嘔吐や下痢などの症状を引き起こします。 さらに、腸管出血性大腸菌が血管の中に入り込むと、腎臓で毛細血管内皮細胞や赤血球の破壊、溶血、急性腎不全が引き起こされ、体内の老廃物を排泄できなくなる「溶血性尿毒素症候群」を発症することがあります。 屋外での調理や食事による食中毒を防ぐには? 肉類などの生ものは、病原微生物が付着し、繁殖しやすいうえに、温度や清潔さを保つことが難しいです。しかし、病原微生物を食物に付着させない・増やさない・殺すという基本をおさえていれば、屋外で調理や食事をする場面でも、少しの気づかいで食中毒を予防できます。 屋外での食中毒を予防する方法 ●手や調理器具は、洗浄やアルコール消毒などで清潔に保つ 石鹸や洗浄剤でこまめにしっかりと洗う必要があるため、調理や食事の際は、清潔な水場が近くにあることが望ましいです。 ●生の食品と加熱済みの食品とを分ける 生の肉や魚介類と、すでに加熱してある食品とは、準備や調理のときだけでなく、購入や移動の段階から、容器や調理器具を分けます。 ●しっかりと加熱する 汁物は沸騰するまで、肉や魚介類は肉汁などが透明になってから1分以上を目安に加熱します。 ●安全な温度に保つ 作り置きはせず常温で2時間以上放置しない、保冷バックや冷却剤で冷却保存(厳密には5度以下)するなどを心がけます。 ●安全な食材と水を使う 新鮮な食材と清潔な水を、消費期限を必ず守って使用します。 ●自分で調理しない場合も油断は禁物 縁日で買ったものはその場ですぐ食べ、屋台は食材をしっかり管理している清潔な店を選ぶようにします。 食中毒になってしまった場合、治療に抗生物質が用いられることがあります。抗生物質には、細菌類の細胞壁を破壊し、増殖を抑える効果がありますが、種類によっては効かない細菌もあります。腸管出血性大腸菌などの場合、体内である程度増殖した状態で抗生物質を内服すると、細菌自体が破壊され、このときに大量のベロ毒素が放出されてしまいます。そのため、以前に処方された抗生物質が、たとえ手元に残っていたとしても、自己判断での内服は絶対に避けるようにしましょう。 公開日:2012/06/18
過去に食肉の偽装、加工食品の賞味期限改ざんなど発覚したことから「食の安全」がクローズアップされるようになりました。消費者は、自分でも安全を確認できるような厳しい目を持ち、価格だけでなく安全を見極めることが必要です。 目次 食の安全性に関する話題 食品の安全への取り組み 消費者も見極める力を持つことが重要 食の安全性に関する話題 世界中を探しても水道水をそのまま飲むことができる日本のような国は稀ですが、それを当たり前に育ってきた私たちは、自分が口にするものは安全だという安全神話を安易に信じすぎていたのかもしれません。 ところが、食肉に関する偽装、加工食品や外食産業などでの賞味期限改ざん、賞味期限の切れた材料の使いまわしなど、食品偽装事件の発覚が相次いだことから、自分達が食べているものは本当に安全?と、ここ数年で急に「食の安全」というキーワードがクローズアップされるようになったことは、まさにこの安全神話の崩壊にほかならないでしょう。 数々の事件の中でも衝撃的だったのが、中国から輸入された冷凍食品にメタミドホスが混入され、その食品を食べた人が中毒症状を起こした事件です。わが国の食料自給率は40%を下回っており、手軽に活用できると人気の高い冷凍食品も輸入量は年々増加傾向の現状では今後もこのような事件が起こらないとは限らず、自分自身で安全な食材を見極める目が必要な時代になってきたといえます。 食品の安全への取り組み 食の安全を揺るがすさまざまな悪いニュースが流れる中で、消費者に安全で安心な食材を届けるための企業努力に取り組んでいる企業もあります。 例えば、急速に注目を集め、普及も進められているのがバーコードに携帯をかざすとその食材の産地や生産者などの情報を確認できるシステムです。 携帯電話を持つのが当たり前となった現在では、ポケットに入った携帯を使用して手軽に生産ルートなどが確認できるシステムとして実用性が高いようです。 ほかにも、米、野菜などの農産物を中心に生産者の名前や顔写真、生産地の情報などを表示した食材を販売するコーナーを設置する店舗も増えているなど、生産者の顔が見える食材の流通が増え始めています。 安全な食品を購入するにはどの企業、どの店の食品を購入するのが望ましいか消費者自身が情報を集め、考えることも大切でしょう。 消費者も見極める力を持つことが重要 食の安全神話が崩壊し、各企業も食の安全に取り組む姿勢を強化しているとはいえ、実際に購入した食品を口にする消費者が厳しい目を持たなければ本当に食の安全を守ることはできません。まずは、店に陳列された食品を選ぶ時、価格ばかりを気にして1円でも安い物を購入するのではなく、自分が買おうとする食品はどこで、どのように、誰によって作られたのかを考えて購入するようにすることを実践したいもの。 また、インターネットや宅配システムの充実を活用して、市場を通して流通している食品ではなく、独立系の宅配流通団体や、信頼できる生産者から直接購入するといった方法も生産者の顔が見え、食品のバックグラウンドが見えるという店ではおすすめです。 しかし、無農薬野菜が人気を集める中、たとえば「有機農産物」といえば、種まきまたは植え付け前2年以上禁止された農薬や化学肥料を使用していない田畑で栽培され「有機JASマーク」がついたものだけであることはご存知でしょうか?本当に安全な食品を手に入れるためには、紛らわしい表記の食品に間違った安心感を持たないよう、国が基準を設けたJAS法などの食品表示を消費者がしっかり知り、さらに自分の目でも安全を確認できるような厳しい目を持ち、価格だけでなく安全を見極める目を持つことが必要です。 公開日:2009/02/16
食中毒は一年中みられますが、梅雨の時期には、O157をはじめとした大腸菌やサルモネラ菌などによる食中毒が問題になります。予防するには食品の管理はもちろん、しっかり手洗いをすることも重要です。今回は流水で手を洗う方法「スクラブ法」についてご紹介します。 目次 開幕しています!夏の食中毒シーズン戦 食品管理だけで食中毒は防げるか?? スクラブ法をマスターしよう 開幕しています!夏の食中毒シーズン戦 食中毒は一年中みられますが、梅雨明けが待ち遠しいこの時期には、O157をはじめとした大腸菌やサルモネラ菌などによる食中毒が問題となります。O157においては、学校や飲食店などで多くの人が感染し、話題となったことをご存知の人も多いでしょう。 食中毒を防ぐために、わたしたちはどのようなことに気をつければいいのでしょうか。 ■教えて!O157による食中毒ってどんな病気? 感染しても症状の出ない人もいますが、多くの場合は発熱、吐き気、吐く、胃やお腹が痛い、下痢といった胃腸症状がみられます。さらに抵抗力の弱い人では、溶血性尿毒症症候群や脳症などの病気を引き起こし、死亡することもあります。 食品管理だけで食中毒は防げるか?? 食中毒というだけに、食品の管理や調理に気をつかっている人は多いはずです。しかし、人から人への感染を防ぐには「手洗い」が重要だといわれています。もちろん食品管理も大切ですが、いくら新鮮な食材を使っていても細菌がついている手で調理をすれば感染してしまうからです。 では普段、あなたは何秒ほど手を洗っているでしょうか?手を水でぬらしただけで、手洗いをしているつもりにはなっていませんか? 医療施設では抵抗力の弱い患者さんが多いため、感染対策に力を入れています。その現場で手に付いた汚れを十分に落とすためには、流水のもと液体石けんをつかって15秒以上の手洗いをする必要があるといわれています。さらに推奨されている手洗い方法もあることをご存知でしょうか? ■教えて!固形石けんより液体石けんのほうがいいの? 乾燥していない固形石けんは、細菌が増殖しやすい場所のひとつになるため、液体石けんのほうが推奨されています。 スクラブ法をマスターしよう 流水で手を洗う方法をスクラブ法といいます。この方法をマスターし、トイレへ入った後、調理や食事をする前、下痢をしている乳幼児や高齢者の世話をしたときなど、石けんと流水でしっかりと手を洗って食中毒を予防しましょう。 スクラブ法をご紹介 (1)手を流水でよくぬらす (2)液体石けんを手のひらにとる (3)手のひらを洗う (4)手の甲を洗う(反対も同様) (5)指をからませて指の間を洗う (6)片方をじゃんけんのグーの形にし、その手の指の背や爪の部分を洗う(反対も同様) (7)親指をもう片方の手のひらで包み、親指をくるくると回すように洗う(反対も同様) (8)指先、爪の部分 をよく洗う (反対も同様) (9)手首をもう片方の手のひらで包み、手首をくるくると回すように洗う(反対も同様) (10)流水でよく洗い流し、ペーパータオルや乾燥し清潔なタオルで拭く(反対も同様) ■教えて!お湯で手を洗ってもいいの? お湯のほうが水より汚れが落ちやすいため、洗ってかまいません。しかし、皮脂をうばって手あれを起こすことがあります。手あれ部分には細菌が付着しやすいので、手洗いのあとにはハンドクリームなどを使い、手のケアをしましょう。 公開日:2008/06/30
衛生大国・日本。だが油断大敵!高温多湿の風土に加え、生ものを好むお国柄、食中毒事件は後を絶たない。食中毒でもっとも怖いのは、病原大腸菌、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌。とくに腸管出血性大腸菌O157は、重症合併症を発症することも!梅雨時は冷蔵庫の詰めすぎや、常温解凍を避けるなどの配慮が欠かせない。感染してからでは後の祭り。万全の予防を心がけよう。 目次 食中毒の原因菌:病原大腸菌 食中毒の原因菌:サルモネラ菌 食中毒の原因菌:腸炎ビブリオ菌 梅雨や夏だけじゃなく、感染の危険は年中ある ぜひ習慣に!カシコイ予防法 食中毒の原因菌:病原大腸菌 ほとんどの大腸菌は、じつは人間にとって無害なものばかり。むしろ腸内でビタミンや抗生物質、乳酸などを生成し、消化器系に侵入してくるさまざまな細菌を退治してくれる、ありがたい存在なのだ。 ところが、なかには体内に入り込むと腸炎を引き起こすものもある。これが病原大腸菌だ。とくに腸管出血性大腸菌O157は、抵抗力の弱い子どもやお年寄りなどの場合、溶血性尿毒症症侯群や脳症などの重症合併症を発症することも! ■腸管出血性大腸菌O157 感染ルート 食肉、生レバー、食肉加工品、その他の食品、井戸水などの飲用水(保菌家畜の糞便に汚染された食肉のほか、二次感染によりさまざまな食品が原因となる可能性あり!)糞便などの接触による、人から人への感染も 症状の特徴 腹痛、下痢、血便。重症化すると、死に至る場合もある 潜伏期間 3~5日 食中毒の原因菌:サルモネラ菌 サルモネラ食中毒は、「文明病」とも呼ばれている。おもな汚染源は家畜や、鶏・アヒルなどの家禽(かきん)。つまり、豊かな食生活をしている国ほど、多発するのだ。日本でも高度経済成長期を経て、次第に増えるように。 ちなみに昭和40年当時、サルモネラ属菌による食中毒発生事件数は50件。平成14年では465件!(厚生労働省調べ)なかでも手ごわいのがサルモネラ・エンテリティディス。低温や乾燥にも強く、冷凍庫の中でもしっかり生き延びるのでやっかいだ。 感染ルート 食肉・卵類。ネズミ・ハエ・ゴキブリや、ペットから感染することも 症状の特徴 腹痛、吐き気、下痢、発熱など 潜伏期間 6時間~3日 食中毒の原因菌:腸炎ビブリオ菌 寿司、刺身好きの日本人が頭を痛めてきたのが、この腸炎ビブリオ菌。好塩性のため、海産物に発生しやすい。増殖スピードが速く、とくに海水の温度が上がる季節は注意が必要。加熱処理すればさほど心配する必要はないが、問題は魚を処理した後のまな板。よく洗わずにそのまま使うと、二次汚染が起こりやすい。 感染ルート 魚介類や刺身、その加工食品など 症状の特徴 下痢、腹痛、はき気、嘔吐、発熱、血便、頭痛。重症化すると意識障害や、しびれ、虚脱、チアノーゼなど。ごくまれに死亡するケースも 潜伏期間 2~18時間 梅雨や夏だけじゃなく、感染の危険は年中ある ノロウイルス(小型球形ウイルス)は、年間を通して活発だ。生カキの関与が強く指摘されており、冬季を中心に感染者が増える傾向に。潜伏期間は1~2日。下痢、吐き気、腹痛、発熱が起こるが、たいてい3日以内で回復する。糞便により、人から人へ感染しやすい。 ぜひ習慣に!カシコイ予防法 お買い物編 ●肉、魚、野菜などの生鮮食品は新鮮なものを。消費期限はしっかりチェック! ●購入した食品は水分がもれないよう、ビニール 袋などに分けて入れよう ●腐りやすい食品を買うのは一番最後に。購入したら寄り道せず、すぐに帰宅を 保存編 ●帰宅したら、必要なものはすぐに冷蔵・冷凍保存 ●肉や魚などはビニール袋や容器に入れて、汁が漏れないように ●冷えにくくなるので、冷蔵庫や冷凍庫の詰めすぎにも注意を!温度のめやすは、冷蔵庫で10℃以下、冷凍庫は、-15℃以下 ●食品は早めに使いきろう。取り出すときは手指を洗ってから 下準備編 ●石けんで手をよく洗い、できれば殺菌消毒を ●まな板、包丁、タオル、ふきんは清潔に。よく洗って熱湯・薬剤などで消毒を ●生の肉や魚を切った包丁・まな板で、野菜や調理した食品などを切らない ●冷凍した食品は常温解凍を避け、冷蔵庫や電子レンジで 。この際、料理に使う分だけを解凍し、冷凍や解凍を繰り返さない 調理編 ●加熱は充分におこなおう。めやすは、中心部の温度が75℃で1分間以上。電子レンジを使う場合は全体に熱が通るよう、とくに注意を ●途中で調理をやめて放置しない。中断するときは冷蔵庫へ。再調理時には十分に加熱を 食事編 ●食卓に着く前に手を洗おう ●長く放置せず早めに食べよう 食後編 ●残り物は早く冷えるよう、清潔な浅い容器などに小分けして保存を ●時間が経ったもの、少しでも危ないと思うものは、思い切って捨てる! 食中毒を防ぐ3原則は、細菌を「予防」「殺菌」「増やさない」。万が一「感染したかな」と思ったら、すぐ専門医を受診しよう! 公開日:2004年6月21日
おいしい牛肉は誰でも安心して食べたいもの。ところが気になるのが、世間を騒がせているBSE(牛海綿状脳症)。「プリオン」という異常たんぱく質が原因で起こる、牛の脳の病気だ。 目次 BSE騒動の発端は? BSEが発生した理由は? BSEってどんな病気? 人間には影響がある? 安心して牛肉を食べるには? BSE騒動の発端は? 世間を騒がせているBSE。いったいどんな病気なのだろうか? 1980年代半ば、英国のとある農場で飼われていた牛に、奇妙な行動が見られるようになった。まっすぐ歩くことができず、足をもつれさせて座り込んだり、攻撃的になったり…。あきらかに異常な様子から、人々はこの病気を「mad cow disease(狂牛病)」と呼んだ。 病気にかかった牛たちは発症後、ほぼ半年以内に死亡。死んだ牛の脳を調べると、小さな穴がスポンジ状に空いており、これが原因で運動神経に障害が起きていたことがわかった。そこで正式につけられたのが、「牛海綿状脳症(BSE)」という名称。やがてイギリスを発端に、ヨーロッパやカナダ各地で同様の病気にかかった牛が出現し、騒ぎはますます大きくなっていった。 BSEが発生した理由は? この病気の原因となったのは、「プリオン」という異常たんぱく質。プリオンは正常なたんぱく質を異常型に変えてしまう。プリオンによって異常化したたんぱく質が脳に蓄積すると、そのダメージがスポンジ状となってあらわれるのだ。 では、いったいなぜプリオンは牛の脳に発生したのだろうか?一説によると、その原因は、配合飼料に含まれた「肉骨粉」ではないかといわれている。 牛は本来、牧草を食べる動物だが、成長までに長い時間がかかるため、高たんぱくな肉骨粉が牛の配合飼料として広く流通している。英国では羊の肉骨粉がよく使われていたが、この中に「スクレーピー」というBSEによく似た病気に冒された羊肉が混ざっていた、というのだ。しかし、BSE発生の原因は、このほかにも「突然変異説」なども唱えられており、はっきりしたことはわかっていない。 BSEってどんな病気? 特徴は?…潜伏期間が長く、発症すると死に至る 潜伏期間が、2~8年と長期にわたる 次第に進行し、2週間から6ヵ月で死亡する 英国では3~6歳牛に多い 症状は?…元気がなくなり、運動機能が低下。攻撃的になるなど性格も変化する 神経過敏になったり、攻撃的になる、元気がなくなる、乳が減る 体重が減る、異常な姿勢をとる、立ち上がれなくなる 感染ルートは?…現在調査中 有力な説は、病気に汚染された肉骨粉をふくむ飼料が流通し、感染が広がっているとされている。しかし、まだはっきりとしたことはわかっていない。空気や接触による感染は起こらない。 人間には影響がある? 心配されているのが、クロイツフェルト・ヤコブ病(異型クロイツフェルト・ヤコプ病)の発症だ。クロイツフェルト・ヤコブ病とは、BSEと同様、異常なプリオンたんぱくが原因で起こる脳の疾患だ。以前から存在する病気で、平均発症年齢は60歳以上。発症率も100万人に1人ときわめて低かった。ところが、BSE騒ぎの渦中となった英国で、1994~1995年にかけ、若者を中心とする10人の患者が出現。そのため、BSEに感染した牛を食べたためではないか、という疑いが広まったのだ。 クロイツフェルト・ヤコブ病とは 初めは抑うつ、不眠、記憶・判断力の低下、行動異常が見られる。そのうち、認知症状が進み、音や刺激に敏感になるなどの変化も。やがて四肢の筋力低下、震え、歩行障害が起こりやがては昏睡状態に陥り、発症から1~2年以上で死に至る。 安心して牛肉を食べるには? 「牛肉を食べるとクロイツフェルト・ヤコブ病にかかる」と考えるのはやや早まった考えだ。理由は次の3つ。 ●理由その1:危険なのは「特定部位」 サルや人間に比べ、感染に弱いとされるマウスを使い、繰り返し実験をおこなったところ、危険とされる「特定部位」は脳、脊髄、目玉、回腸遠位部(小腸の先端部分)であることがわかった。そのほかの部分を食べても、感染する可能性はきわめて低いとされる。 ●理由その2:牛と人間の間の「種の壁」 人間が牛の異常プリオンを食べたとしても、感染の危険性は牛同士の場合にくらべるときわめて低い。牛と人間の間には、遺伝子上の障害「種の壁」があるため。 ●理由その3:日本では「全頭検査」をおこなっている 日本では、食肉処理されるすべての牛を対象にした「全頭検査」をおこなっている。 さらに牛乳、乳製品もWHOにより安全が確認されている。また、食用牛脂も危険な部位以外の原料により、食品衛生法に基づく許可を得た施設でつくられているため、問題はないというのが厚生労働省の見方だ。今後、安心して牛肉を食べるために、ニュースなどの情報はきちんとチェックしたいもの。あまり過敏にならず、冷静な対処を心がけよう。 参考サイト:厚生労働省「牛海綿状脳症(BSE)関係」 農林水産省「牛海綿状脳症(BSE)関係」 公開日:2004年2月16日
食品表示の仕方を知っているようで、じつはその裏には隠された事実があります。知っていると食品選びの時の判断材料になることをクイズにしました。ホントかウソか、わかりますか? Q1「国産牛」とは「和牛」のことである。 ホント ウソ Q2「合びき肉」は「牛ひき肉」と同様に、生鮮食品である。 ホント ウソ Q3 外国から輸入したウナギを浜松で蒲焼きにしたものは「浜松産ウナギの蒲焼き」との表示が可能である。 ホント ウソ Q4 肉類のパックに記載されている日にちは「肉を解体した日」である。 ホント ウソ Q1「国産牛」とは「和牛」のことである。 「国産牛」すべてが「和牛」と思ったら大間違い。現在、和牛と呼べる牛の種類は、「黒毛和種」「褐色和種」「日本短角種」「無角和種」の4種類。しかもほとんどが黒毛和牛である。たとえ日本で生まれ育ったものでも、この種類以外のものは「国産牛」表示しかできないのだ。 では、国産牛はどんな牛なのかというと、乳用飼育牛肉や乳牛と肉牛の交雑種など。つまり、「和牛」という表示がなければ、たいていは「国産牛」(乳牛)なのである。 「和牛」は品種名、「○○牛」は商品名(ブランド名)なのだ。和牛が食べたいのなら、「和牛」と表示のあるものを選ぼう。 というわけで、正解は「ウソ」 Q2「合びき肉」は「牛ひき肉」と同様に、生鮮食品である。 肉類はそのまま売られることはなく、ほとんどが部位ごとのブロックやスライスに切り分けられている。単純に切り分けられた肉は、もちろん生鮮食品。そして、ひき肉も生鮮食品なのであるが、それは牛のみ、あるいは豚のみのひき肉の場合。これが、合びき肉になるとなんと「加工食品」扱いになるのだ。 生鮮食品には原産地表示が義務付けられているが、加工食品には原産地表示の義務はなく、代わりに加工食品に関する表示が義務付けられる。 というわけで、正解は「ウソ」 Q3 外国から輸入したウナギを浜松で蒲焼きにしたものは「浜松産ウナギの蒲焼き」との表示が可能である。 「原産地表示」の義務があるのは、あくまでも生鮮食品に限られている。加工食品には、この義務はない。つまり、ウナギを蒲焼きにした、ということは加工食品であり、原産地表示の義務がない。 この場合、「浜松産ウナギの蒲焼き」と書いてあるのは、ウナギの原産地が浜松なのではなく、蒲焼きが浜松産である、ということなのだ。 「浜松産ウナギの蒲焼き」というだけでは、ウナギの産地は分からないものである。 というわけで、正解は「ホント」 Q4 肉類のパックに記載されている日にちは「肉を解体した日」である。 パックに記載されている加工日は「パックした日」のこと。だから、その肉が冷凍肉の解凍物なのか、本当の冷蔵なのか、いつ解体されたものなのかは、日にちからは分からない。 おいしい肉を選びたいなら、肉に霜があるかないかで冷凍物かどうかを見極める。次に、ドリップ(肉汁)が少ないものを選ぶこと。ただし、最近は吸湿シートを敷いてドリップをなくしているものが多い。 また、カット肉で肉同士が重なり合った部分が黒ずんでいることがあるが、これは酸化していない証拠。空気に触れるとどんどん酸化して味が落ちる。このあたりがおいしい肉を選ぶポイントだ。 というわけで、正解は「ウソ」
食品に表示されている日にちには、「賞味期限」「消費期限」「品質保持期限」など異なった表現がされています。どれも同じと思いがちですが、実は微妙に意味が違います。 目次 「賞味期限」「消費期限」「品質保持期限」の違い 食品鮮度を保つために添加物が使われる 食品添加物ってどのくらいある? 「賞味期限」「消費期限」「品質保持期限」の違い 安全な食品を食べたくて、食品表示をチェックする中で、一番気になるのが食品の期限表示。 「1日くらい過ぎていたって、食べても大丈夫じゃないの?」って思うこともあるし、「心配だから捨てちゃえ!」って思うことも。さて、食べても大丈夫なのだろうか? 食品に表示されている日にちには、「賞味期限」「消費期限」「品質保持期限」など異なった表現がされている。どれも同じと思いがちだが、実は微妙に意味が違うのだ。 期限表示の微妙な違い ●消費期限 あまり日持ちのしない、ナマモノと言われる加工食品に対して表示されるもの。生鮮食品には期限表示の義務はない。多くは5日以内に消費するべきものに対してつけられる。「購入後は冷蔵庫で保存」などの保存方法が同時に記入されている。 この日にちはギリギリではなく、多少安全策をとって期限表示を短めに設定してあるので、1日過ぎたからといってすぐ食中毒を起こすわけではないが、日にちの過ぎたものを食べて何かあれば、それは食べた人に責任があることになる。ただし、ナマモノなので傷みは早い。また、保存方法が悪ければ、消費期限以内でも悪くなることも。 ●賞味期限、品質保持期限 この2つの意味はほぼ同じ。一般的に6日以上日持ちのする食品に使われる。保存方法も同時に書かれており、その保存方法を守った場合、おいしく食べられかつ食べきって欲しい日にち、という意味である。かなりゆとりのある期限日なので、多少過ぎても、品質は落ちるかもしれないが食べられるものが多い。 製造日から3ヵ月以上日持ちがする食品については、年月表示だけでも可。 食品鮮度を保つために添加物が使われる 食品表示をよく見ると、原材料のところで「保存剤」という言葉を目にする。これは食品添加物の一種で、食品を長持ちさせるために、さまざまな添加物が使われている。 鮮度を保つために使われる添加物 ●保存剤 ソルビン酸など。食品中の微生物の増殖によって引き起こされる腐敗、変敗などの変質を防ぎ、食中毒を防止する目的で用いられる。 ●防カビ剤 オルトフェニルフェノールなど。レモン、グレープフルーツ、オレンジなどの柑橘類に対し、収穫後、表皮の腐敗を防ぐために使用されている合成保存剤。 ●酸化防止剤 エリソルビン酸など。脂質や色素などが空気中の酸素によって酸化、変色することを防ぐ目的で用いられる。 食品添加物ってどのくらいある? ところでこの食品添加物はどのくらい種類があるのだろうか? 食品添加物には、天然物質と化学合成物質がある。化学合成物質は、健康に対して不安があるため、天然物質の使用が増加している。その数、およそ約1,000種類。また、化学合成物質は約350種類ほどある。 化学合成添加物は、現在のところ安い経費で食品を流通させるためには必要不可欠になっている。しかし、「発がん性物質」もあると問題視されているのも事実。やはりできれば添加物の入っていない食品を選びたいものだ。 ●食品の製造、加工に必要なもの 豆腐を固める時のにがり(凝固剤)、パンやケーキをつくる時のふくらし粉(膨張剤)、ラーメンに含まれるカンスイなど ●腐敗・酸化を防ぎ、保存性を高めるもの 保存料、殺菌剤、防腐剤、酸化防止剤など ●食品の美しさ・おいしさを向上させるもの お菓子などに含まれる着色料、甘味料、着香料、漂白剤、発色剤など 公開日:2002年3月4日
「有機」や「無農薬」と書いてあると、農薬を使っていないから体にいい!と思い、少しくらい値段が高くても購入する方も多いかもしれません。でも、一見似ているようでちょっと違いがあります。 目次 そもそも「有機農産物」って? 「有機JASマーク」を確認 有機農産物の加工食品もOK そもそも「有機農産物」って? スーパーで売られている野菜や果物に「有機農産物」「無農薬」などの表示があるものと、表示のないもの。あなたならどちらを購入するだろうか。 「有機」や「無農薬」と書いてあると、農薬を使っていないから体にいい!と思い、少しくらい値段が高くても購入する方も多いだろう。でも、一見似ているようでちょっと違いがある。 そもそも、農薬や化学肥料を使わない農法を日本では「有機農法」という。アメリカやヨーロッパでは、オーガニックと呼ばれる。 しかし、農産物の表示を見ると、「無農薬」「減農薬」などの表示があるものがある。これらは、「有機」とはどう違うのだろう? 以下に、そのガイドラインをまとめた。 どこが違う? ●無農薬栽培農産物 化学合成農薬を使用せずに栽培して収穫した農産物 ●無化学肥料栽培農産物 化学肥料を使用せずに栽培して収穫した農産物 ●減農薬栽培農産物 化学合成農薬の使用回数が当該地域で使用されている回数のおおむね5割以下の栽培方法によって生産された農産物 ●減化学肥料栽培農産物 化学肥料の使用回数が当該地域で使用されている回数のおおむね5割以下の栽培方法によって生産された農産物 つまり、「有機」「オーガニック」は、農薬も化学肥料も使っていないが、「無農薬」は化学肥料を使ってもいいし、「無化学肥料」は化学合成農薬を使ってもいい、ということになる。これらから判断すると、「有機」「オーガニック」という表示がいちばん安全で健康によいような気がする。 でも、この表示だけでは「本当にそうだろうか?」と疑ってしまうこともある。そこで、もっと安心できる表示が欲しい!という方のためにあるのが「JASマーク」なのだ。 「有機JASマーク」を確認 このようなマークをみたことはないだろうか。 これは、「有機JASマーク」と言われるもの。農林水産大臣に登録した登録認定期間による検査を受けて「認定」された農産物に限り、はじめて許可されるマークである。 どのような検査基準があるのか?というと、新JAS法の中で有機農産物は、 「化学的に合成された肥料および農薬の使用を避けることを基本として、播種または植付け前2年以上(多年生作物なら最初の収穫前3年以上)の間、堆肥などによる土づくりを行ったほ場において生産された農産物」と定められている。つまり、3年以上農薬や化学肥料を使わなかった畑や田んぼでつくった農産物、ということだ。 つまり、このマークがついている農産物は、かなり厳しい検査をクリアしてきたものだけ、ということになる。このマークは安心のマーク。このマークがないのに「有機」表示のあるものは、法律違反なのだが、「無農薬」「無化学」などの表示はされていることがある。これは違反ではないが、やはりマークがある「有機農産物」を選ぶのが確かだろう。 有機農産物の加工食品もOK 「有機」の表示は、農産物だけでなく、その加工食品にも適用される。その定義は、 「原材料である有機農産物の持つ特性が保持され、化学的に合成された食品添加物や薬剤の使用を避けることを基本として製造された加工食品。食塩および水の重量を除いた原材料のうち、有機農産物以外の原材料が5%以下であること」というもの。 例えば、しょうゆ、みそ、パン、めん、豆腐、ケチャップなど、農産物を原料にした加工食品の場合も、有機農産物以外の原材料が5%以下なら、有機JASマークがつけられるのだ。ただし、加工の工程で食品添加物を使用している場合は、有機表示はできない。 加工食品でも「有機JASマーク」がある食品を選びたいものだ。 公開日:2002年2月25日
夏は、ダニ・カビだけでなく、食中毒という危険もあります。2000年の食中毒発生件数やその病因物質を見てみると、食中毒菌にはかなり注意しなければなりません。 目次 食中毒のピークはいつ? 増殖する細菌の正体は? 食中毒のピークはいつ? 食中毒のピークはいつか、ご存知ですか?梅雨の時期から夏にかけてのイメージが強いですが、実は冬場に患者が増える傾向にあります。 とはいえ、気温・湿度ともに高くなる夏場は、食品の保存や調理の仕方などに注意をしなければなりません。夏は体力が落ち、抵抗力が弱くなってくるとき。しっかりと予防策をとらなければ、下痢・腹痛、吐気などのツライ症状に悩まされるので、用心が必要です。 増殖する細菌の正体は? 食中毒を起こす原因は、90%以上が細菌やウィルスによるものです。「食中毒」と聞くと、すぐに「O-157」が頭をよぎりますが、そればかりではありません。 食中毒菌のいろいろ 1. 病原大腸菌 牛・豚・鶏などの食肉、その他食品、水など多種の原因食品 2. サルモネラ菌 牛・豚・鶏などの食肉、たまごなどが主な原因食品 3. 腸炎ビブリオ菌 魚や貝などの海産物が原因食品 2000年 食中毒・病因物質別(厚生労働省) 公開日:2015年7月21日
「健康食品」を選ぶ際の基準の1つといえるJHFAマーク。どんな審査があるのか、どんな食品についているのかなどを紹介します。 目次 JHFAマークとは? JHFAマークの認定基準は? 目的・種類によって使い分け!食品の認定マーク JHFAマークとは? このマークに見覚えはありませんかか? このJHFAマークは、「財団法人 日本健康・栄養食品協会」が、健康補助食品に対して一定の規格基準を設け、その基準を満たした食品にのみ表示を許可しているマークです。「JHFA」は、「JAPAN HEALTH FOOD AUTHORIZATION」の略称のこと。健康補助食品を選ぶときにはチェックしてみましょう。 JHFAマークの認定基準は? 次の3つの項目について、基準を設け、審査を行っています。 1. 含有成分などの製品規格 指定検査機関において成分分析が行われ、1.外観・性状、2パッケージに記載されている成分の確認、3.安全・衛生の指標(残留農薬、重金属、一般細菌・大腸菌群等)などといった項目について、細かく審査されます。 2. 製造・加工等の基準 原材料、製造工程、加工施設の設備、作業者の衛生管理等について、細かい基準を設定し、安全衛生面について審査を行います。 3. 適正な表示・広告 パッケージなどに記載されている表示についても審査を行い、まぎらわしい表現や不適切な表示がないか、食品衛生法・薬事法、栄養改善法等に適合しているかどうかを厳しくチェックします。 目的・種類によって使い分け!食品の認定マーク 健康の維持・増進を目的とした食品については、今回紹介したJHFAマーク以外にも、「特定保健用食品(トクホ)」「特別用途食品」などの基準があります。 もちろん、バランスが取れた食事を心がけ、必要な栄養成分は日々の食事から摂るのが一番ですが、生活環境や習慣により困難な場合もあります。健康補助食品の目的や種類を理解して、食生活にうまく取り入れてはいかがでしょうか? JHFA 健康補助食品について、含有成分、安全・衛生面、パッケージ表示などについて基準を設け審査を行い、適合した製品にマーク表示を許可しています。(日本健康・栄養食品協会) 特定保健用食品(トクホ) 医学や栄養学の面からある種の保健効果が期待できると認められた食品に対して、その効果の表示を許可しています。(厚生労働省) 特別用途食品 病者・乳幼児・妊産婦など、栄養成分を調整した食事療法が必要な人や健康上特別な状態にある人のための食品です。(厚生労働省)
夏にピークを迎える食中毒。「ただの腹痛だろう」なんて甘く見ていると取り返しのつかないことに…。食中毒を未然に防ぐにはどうしたらいいのでしょうか。 目次 全国各地で発生!夏の食中毒 夏の食中毒の原因は、約8割が「細菌」 弁当で食中毒にならないために 全国各地で発生!夏の食中毒 「ただの腹痛だろう」と甘く見ていると、取り返しのつかないことになりかねないのが、夏の食中毒です。梅雨の時期を迎えると、下痢や腹痛、嘔吐などの症状が全国各地で出たというニュースを耳にすることも多くなるでしょう。届け出のない場合もあるので、実際の食中毒の被害者は、報道されている人数より多い可能性もあります。 夏の食中毒の原因は、約8割が「細菌」 何が原因で食中毒になることが多いかは、時期によって異なります。冬であれば、ノロウイルスをはじめとしたウイルスによる食中毒が多いのですが、夏は細菌が食中毒の原因の多くを占めます。食中毒を引き起こす細菌には、次のようなものがあります。原因食品に挙げられているものを口にする際は、特に注意が必要と言えます。 ●腸管出血性大腸菌[O157、O111] 牛肉・牛レバー刺し・貝割れ大根などが主な原因食品 ●サルモネラ属菌 牛レバー刺し・鶏肉・卵などが主な原因食品 ●腸炎ビブリオ 魚や貝などの海産物が主な原因食品 夏の食中毒の原因物質 (2013年6月~8月:患者数3,008人) 出典:厚生労働省 食中毒統計資料 弁当で食中毒にならないために 食中毒の基本的な対策として重要なのが、手洗い、調理器具の消毒、肉・魚の十分な加熱などです。これに加えて、食べ物が傷みやすい夏は、自宅から学校や職場に持っていく弁当に特に注意して、次のような対策をとることを心がけましょう。 ■水気を十分に切る 細菌は、水分が多い環境で増殖しやすいので、おかずの汁気をしっかりと切りましょう。ご飯やおかずの湯気は、冷えると水になってしまいます。弁当箱に詰める前に、冷蔵庫に入れるなどして冷ますようにしましょう。 ■作りおきしたおかずはなるべく使わない 前日の夕飯のおかずを弁当に詰めることはよくありますが、食中毒のリスクを考えると、夏はなるべく避けたいものです。使いたいときは、冷蔵庫で保管しておき、再び火を通してから冷まして弁当箱に詰めるようにしましょう。 ■冷凍食品もしっかり加熱する 毎日の弁当で重宝する、冷凍食品のハンバーグや唐揚げなどにも、食中毒のリスクはあります。冷凍する前に調理済みだからといって油断せず、しっかりと加熱しましょう。 ■弁当箱はきちんと洗う 弁当箱のふたには、パッキンと呼ばれるゴムが付いている部分があります。ここは汚れが残りやすいので、分解して洗うと良いでしょう。洗った後は、しっかりと乾かしましょう。 公開日:2014年6月30日
栄養的には優秀な果物だけど、最近は農薬の心配も。農薬を取り込まない処理のコツをアドバイス。 目次 果物の下処理の基本は3つ 薄い塩水にひたしてから食べよう「りんご」 「いちご」は流水に5分くらいつけておく 「みかん」は洗ってから食卓へ 果物の下処理の基本は3つ 虫食いを防ぐため、果物に農薬が使われているのはご存知の通り。農薬は果実に直接かけるケースが多く、果皮の部分にたまるので、食べる前によく洗うのが1番のコツだ。 果物の下処理 ●流水で洗う 水は流しっぱなしで洗うこと。いちごなど柔らかい果物はひとつひとつこすり洗いを。りんごは強くこすって洗おう。とくにへたや軸の周辺は念入りに。 ●塩水につける 2%くらいの塩水に5分くらい浸しておくと、塩の浸透性により農薬を引出すことができる。 ●皮やしん、へたは取り除く 農薬は皮のすぐ下に溶け込んでいることが多いので、皮は厚めにむく。芯やへたも切り落とす。 薄い塩水にひたしてから食べよう「りんご」 害虫がつきやすいりんごは多様な殺虫剤が使用されている。また、除草剤や落下防止剤なども使われているそう。 農薬は果皮に残っているので、水をはったボールに入れて水を流しながら5分ほど浸す。さらに流水の下でひとつずつこすり洗いする。 この後皮を厚めにむいて芯を取り除き、薄い塩水に5分くらい浸してから食卓へ。 ジャムやジュースにするときは、塩水にひたした後、もう一度水洗いをしてから調理をすると、塩気が残らない。また、ジャムのときも皮は使わないほうが無難。 「いちご」は流水に5分くらいつけておく 害虫を防ぐため、多種類の殺虫剤、殺菌剤が使用されている。柔らかい果実に直接かけられている農薬を、いかに洗い流すかがポイント。 まず、水をはったボールにいちごを入れ、流水の下に5分くらい置いておく。水洗いは、ひとつひとつ指でそっとこすり洗い。ビタミンCが水に溶け出すのを防ぐため、手早く行おう。 塩水や洗剤は果肉にしみこんでしまうので、水だけで洗うようにする。 「みかん」は洗ってから食卓へ みかんに使用される農薬はほとんどが皮に残っている。皮をむいて食べるので、中味は安心して食べることができる。しかし、皮をむく際に手についた農薬が口に入ってしまうこともあるので、皮をむいた後手を洗ってから食べるか、面倒な場合は、購入後にまとめて水洗いするか乾いた布でふいておくことをおすすめ。 公開日:2001年1月15日
日本人が摂取してしまうダイオキシン類の約98%は、食物を通して体に入ってくると言われています。これは恐ろしい事実ではありますが、工夫次第で摂取を減らせるという点で、わずかに救われているとも言えます。というわけで、食物からのダイオキシン摂取を少しでも減らすコツについて紹介します。 目次 ダイオキシンを避ける工夫:魚介類 ダイオキシンを避ける工夫:肉・卵・乳製品 ダイオキシンを避ける工夫:緑黄色野菜・米 ダイオキシンを体から追い出す方法がある ダイオキシンを避ける工夫:魚介類 魚介類のここが危ない! 食物からの摂取のうち約60%が魚から。日本の沿岸、特に大都市の沿岸に住む魚のダイオキシン類濃度が高いことが調査などでわかっています。 また、市販魚について近海魚と外国産のダイオキシン類(ダイオキシンとポリ塩化ジベンゾフラン)を比較した調査でも、近海魚の汚染が目立つ結果となっています。 ダイオキシンを避ける工夫 魚介類も種類と産地にこだわるようにします。遠い海にいるサンマ、マグロ、カツオなどや、脂肪の少ないイカやタコ、エビなどは比較的汚染が少ないようです。一方、近海の魚で脂肪が多いイワシ、サバ、アジ、ハマチ(ブリ)などは、汚染されている可能性が高いようです。 料理のときの下ごしらえも大切です。うろこ、えら、内蔵は取り除きます。頭も切り取ります。 海の魚は塩水で、淡水魚は水でよく洗うようにしましょう。 外国産の魚も、同様に下ごしらえをした方がいいでしょう。ダイオキシン汚染は少ないものの、添加物などが使われているという指摘もあるからです。 添加物については、仕上げに熱湯をかけたり、湯をくぐらせたりして、化学物質を取り除くといいでしょう。 ダイオキシンを避ける工夫:肉・卵・乳製品 肉・卵・乳製品のここが危ない! 魚介類以外のたんぱく質食品からの摂取も多いようです。乳製品から10.3%、肉、卵から10%といった具合いです。ちなみに、ヨーロッパやカナダなどでは、乳性品や肉、卵からの摂取が60%~70%。日本と逆ですが、これは日本人に比べて魚食が少なく、その分肉類を多く食べているからだと考えられます。 日本でも、魚より肉の方をよく食べるという人が増えています。そういう人は、ヨーロッパなどと同じように、肉類からのダイオキシン摂取が増えているかもしれません。 ダイオキシンを避ける工夫 ダイオキシン類は脂肪にたまりやすいようです。従って、なるべく脂肪を取り除きます。下ゆでをして脂を出してから調理します(ゆで汁は捨てます)。また、レバーなど、内蔵の常食は避けた方がいいようです。 肉類については、このように下ごしらえを工夫することができますが、問題は卵や乳製品です。これだけは、簡単には避けられないのが現状です。 大気や土壌のダイオキシン汚染度が低い地域のものを選べば少しは安心ですが、これはかなり大変な作業です。しかも、そこまでがんばっても確実とは言えません。 牛も鶏も人間と同様、ダイオキシンのほとんどを飼料から摂取しているため、環境がよくても餌が…ということも十分ありうるからです。 このように、産地の汚染度が低いのかわからない場合は、いろいろな産地のものを順繰りに買うという方法もあります。例えば、「卵は○○スーパーの××農場のものしか買わない」人。この卵の汚染度が高い場合もあるかもしれませんが、○○、△△、□□…と複数のスーパーに行っていろいろな産地のものを順々に買っていれば、その分リスクが少なくて済む可能性があるのです。 たんぱく質食品を食べ過ぎないのも工夫のひとつ 外食の多い人は、どうしても肉や魚などを食べる量が増えます。その分ダイオキシンもたくさん摂取していることになります。 普通の生活をしている成人が1日に必要とする肉や魚の量は、男性で120g、女性で100g。ダイオキシンの摂取を避ける上でも、必要以上に肉や魚を食べ過ぎないことが大切です。 ダイオキシンを避ける工夫:緑黄色野菜・米 緑黄色野菜・米のここが危ない! 緑黄色野菜や米を通して体に入ってくるダイオキシン類はそれぞれ6.3%。焼却場などから発生したダイオキシンの粒子が雨と共に畑などに落ち、水分と一緒に農作物に吸収されることによって汚染が起こると考えられます。 また、土壌が汚染されている地域では、野菜の表面についた泥などに混じっている可能性も高いようです。 ダイオキシンを避ける工夫 従って、野菜は流水でよく洗うことが大切。そして、キャベツ、白菜などは外側の葉をむしる、大根やにんじんも皮をとって調理するようにしましょう。トマトの皮もできれば湯むきした方がいいでしょう。 ただし、野菜の中に入ってしまったものまでは取り除けません。野菜や米についても、卵などと同じように産地の違うものを順番に買うなどしてリスクを分散させるくらいしか方法がないのが現状です。 ダイオキシンを体から追い出す方法がある ここまで読んでくださった方は、やるせない気持ちでいっぱいなのではないでしょうか。 どれだけがんばっても、体に入ってくるダイオキシンをゼロにすることはできないと実感されたかもしれません。ですが、あきらめるのはまだ早いようです。いったん体に入ったダイオキシンを追い出す知恵もあるのです。 一度、体に入ったダイオキシンの半分が排出されるのにも5~10年かかると言われていますが、ある食べ物を摂ることで、そのスピードを早くすることができます。それは何でしょうか?知りたい方は「食生活の工夫でダイオキシンは排出できる」をご覧ください。
狭い国土で大量のゴミを燃やしているニッポン。ダイオキシン類による汚染は、ほかの国の10倍は高いと言われています。ゴミ焼却場は近くにないという人も例外ではありません。ダイオキシンが私たちの体に入る経路の約98%は食物からと言われているからです。 目次 ダイオキシン摂取・約60%は魚から ダイオキシンの安全基準はどのくらい? ダイオキシンを食べない出さない工夫が必要 ダイオキシン摂取・約60%は魚から 1990年、大都市地域に住む人が1日に摂取するダイオキシン類の量を調査したところ、ダイオキシンとポリ塩化ジベンゾフラン(ダイオキシンと似た分子構造を持ち、毒性もある物質)の合計は体重1kgあたり3.72pg(ピコグラム。1兆分の1グラム)でした。 ただしこの調査は、やはりダイオキシンと似た構造で毒性もあるコプラナーPCBの摂取量を加えていなかったため批判が多いようです。ある研究者がこのデータにコプラナーPCBの摂取量を加えてみたところ、体重1kgあたり12.45pgという結果が出ています。 ダイオキシンの摂取経路は、約98%が食物だと言われています。では、どのような食物からの摂取が多いのでしょうか。その内訳は円グラフのようになっています。なんと、約60%を魚から摂取しています。ゴミ焼却の煙とともにダイオキシンは、川を流れ雨に混じって近海を確実に汚染しているのです。 沿岸魚と市販魚のダイオキシン類を分析したところ、海岸に近いところに住んでいて、海の水の汚れに強い魚の濃度が高くなっているという報告もあります。 日本とドイツの食物経由のダイオキシンとポリ塩化ジベンゾフランの構成比 ダイオキシンの安全基準はどのくらい? 次の表の「耐容1日摂取量」というのは、一生の間、毎日体に入っても健康に害を与えない摂取量のことです。ダイオキシン類の安全基準として注目されていますが、国や省庁によってもバラバラなのが現状です。 各国のダイオキシン類の耐容1日摂取量 国名など 耐容1日摂取量(pgTEQ/kg/日) 日本 厚生労働省4 日本 環境省4 WHO1~4 アメリカ0.01 イギリス10 ドイツ10(目標値1) イタリア1 出典:厚生労働省資料より(一部抜粋) 問題がある日本の基準 ダイオキシンについてはまだわからないことも多いため、この数字は「当面のものとする」とのことわり付きです。 ところで日本の場合、耐容1日摂取量の対象となっているダイオキシン類は、ダイオキシンとポリ塩化ジベンゾフランのみ。コプラナーPCBは含まれていません。しかし、日本ではコプラナーPCBが環境を汚染している量が特に多いため、研究者の間ではコプラナーPCBも対象に含めるよう求める声があがっています。 ちなみに、WHO(世界保健機構)では、1998年に耐容1日摂取量を10pgから1~4pgに引き下げると同時に、コプラナーPCBも対象に含めるようになりました。 アメリカの基準が厳しいのは、「発がん性」を認めているため 日本やヨーロッパ各国に比べ、アメリカの基準がケタ違いに厳しいのは、ダイオキシン類を「発がん性物質」と評価しているためです。「発がん物質」になると、安全基準の計算の仕方がかなり厳しくなるのです。一方、日本やヨーロッパでは、ダイオキシン類は直接がんを引き起こすのではなく、ほかの物質と一緒になってがんを引き起こすのではないか(助がん作用)としているため、このような違いが出てくるのです。 ダイオキシンを食べない出さない工夫が必要 我々の食生活は安全なのか 1990年の調査では、ダイオキシン類(ダイオキシン+ポリ塩化ジベンゾフラン)の摂取は1日体重1kg当たり3.72pgと推定されています。これなら日本のダイオキシン類の安全基準(耐容1日摂取量)内と、ひとまずほっとしたいところだが、コプラナーPCBを含めると一気に12.5pgになってしまうのです。 しかし、1996年に調査したところ、コプラナーPCBを加えても1日体重1kg当たり約2pgと、ダイオキシン類の摂取量が急減していることがわかりました。減った分のほとんどは、食物からの摂取量です。1990年の調査と比べると、ダイオキシン+ポリ塩化ジベンゾフランが約5分の1に、コプラナーPCBは約10分の1になっているのです。 この理由について、ダイオキシン汚染そのものが減ったというよりは、汚染されていない地域からの輸入食品が増えたせいと考えられています。 将来のことを考えた、真剣なダイオキシン対策が必要 ダイオキシンは簡単には分解しない非常に安定した物質です。しかも、脂肪によく溶けるため、人の体に入ると脂肪組織に蓄積し、なかなか排出されません。1度体内に取り込まれると半分になるまでに5~10年もかかるのです。 だから、最近の調査で摂取量が減ったからと言って、そうそう安心していられません。1990年頃摂取しダイオキシンはしっかり体の中に残っているのです。 また、将来的に食品すべてを輸入に頼れるとは考えにくいし、海洋汚染を広がるに任せておけば、ほとんど魚が食べられないということも考えられます。ダイオキシンについては、我々は被害者でもあり、ゴミを捨てているという点では加害者でもあります。他人事ではなく、自分の問題として考えていかなくてはならないのではないでしょうか。
人間の体にも害を及ぼす可能性が高い? 食品を保存するために使われる食品添加物のことです。保存料の多くは、天然に存在しない化学合成物質で、法律によって規制されています。 もともと工業生産の分野で使われていたものを食品に流用したものが多く、また未知の物質であるがゆえに危険性が高いとされています。 例えば、ソルビン酸と呼ばれる保存料は、細菌やカビなどを殺したり、増殖を抑えるためのものですが、細菌やカビの細胞も人間の細胞も基本的なつくりは変わらないので、人間の体にも害を及ぼす可能性が高いといわれています。 技術の発達で保存料「無添加」も数多い しかし、最近では食品の加熱殺菌やレトルト完全滅菌などの食品保存製造技術、チルド食品や惣菜分野におけるアセプティック(無菌化)技術や氷温保存技術が急速に発達してきました。 このような背景もあって、無添加を「売り」にしている商品も数多く登場しており、危険な保存料の使用は徐々に減っています。
消費者の健康づくりの一つのツール 1995年(平成7年)の栄養改善法の一部改正を受けて、栄養表示基準が96年から変更されました。 これは、ライフスタイルの変化や加工食品の増加などに伴い、食品に含まれる栄養成分について、その名称や含有量を消費者に分かりやすく、かつ適正に表示することが求められてきたことによるものです。 さらに、栄養成分を表示することによって、消費者に健康づくりの一つのツールとして活用してもらうことを目的としています。 加工食品には栄養成分表示が必要 栄養表示基準が適用されるのは、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム、無機質11成分、ビタミン11成分の栄養成分と熱量で、対象となる食品は、一般消費者に販売される加工食品などです。 生鮮食品は対象外ですが、鶏卵については特定の栄養成分を飼料に使い、通常のものに比べて栄養成分に変化を生じさせ、その旨を強調した、いわゆる特殊卵は表示の対象になります。 また、塩などの調味料を加えたり、乾燥させたりして栄養成分が変化している食品は加工食品と見なされ、これも表示の対象になっています。
遺伝子組み替え作物を原料とした食品 1996年(平成8年)から世界中で遺伝子組み換え作物が流通し始めています。 日本にも除草剤耐性(特定の除草剤に強い)を持ったナタネや大豆、害虫抵抗性(虫を殺す成分を含む)を備えたトウモロコシやジャガイモが入ってきました。 これらの作物は、ほぼすべてに微生物の遺伝子が組み込まれており、除草剤をかけても枯れなかったり、その作物を食べた害虫を殺す成分を含むように改造された作物です。 「遺伝子組み換え食品」とは、この遺伝子組み換え作物を原料にしているものです。日本には、ナタネ油をはじめ油や加工食品の形で輸入されています。また、これより以前から組み換えキモチン(凝乳酵素)を使った外国産のチーズが販売されています。 日本は食品への表示を義務付けていない 遺伝子組み換え作物は、やがて訪れるといわれる食料危機対策の本命とされていますが、同時に食品としての安全性や生態系への悪影響も懸念されています。 なかでも論争の焦点になっているのが表示の問題で、わが国では遺伝子組み換え食品にその旨を義務付けていません。 厚生労働省では、表示が必要のない理由として以下の3点をあげて、安全性評価指針に適合しているとしています。 食品衛生法で公衆衛生上必要があるものには表示を義務付けている 組み換え食品は非組み換え食品と何ら変わりなく、公衆衛生上の問題はないので表示を義務付けることはできない 遺伝子組み換えは従来の品種改良を短時間で行っているものであり、品種改良された食物は何の問題もないものとして食べている しかし消費者団体だけでなく、科学者の間からも表示すべきという意見が出されています。
世界初は「日持ち向上トマト」 バイオ野菜とはいわゆる遺伝子組み換え植物(作物)のことです。 世界で最初に作られたバイオ野菜は、アメリカのバイオベンチャーであるカルジーン社が開発した「日持ち向上トマト」なるフレーバー・セーバーです。1995年(平成7年)のことでした。 このトマトは、ある遺伝子のはたらきを抑えて酵素を抑制し、実が熟れて柔らかくなるのを遅らせたものです。つまり日持ちするわけで、普通のトマトより1週間以上持つといわれています。実が柔らかくなりにくければ、十分に熟してから収穫することができるうえに、店頭に置ける期間も長くなります。 日本でもキリンビールがカルジーン社と提携して「日持ち向上トマト」の生食用トマトの生産、販売の権利を獲得しており、厚生労働省にその販売を申請しています。 旬のものと同じ味 さて気になる味の方ですが、このフレーバー・セーバーが登場した時にカリフォルニア州バークレーにある有名なレストラン「シェ・パニッセ」のオーナーが、タイム誌のインタビューに答えて「旬のものと同じ味がするが、自分の店で出すのに十分なほどおいしくはない」とコメントしています。 どうも遺伝子を組み換える前のトマトがおいしい品種のものではなかったようです。
日本では発芽防止にジャガイモだけ 食品の腐敗防止、殺菌、殺虫対策として放射線照射は行われています。 食品照射を実用化しているのは、アメリカ、中国、チリ、フランスなどの27カ国で、対象食品は香辛料、乾燥野菜、鶏肉など24品目(国際原子力機関調べ、1993年12月現在)です。 日本では世界に先駆けて73年(昭和48年)から北海道のJA士幌町でジャガイモの発芽防止に実用化され、現在もジャガイモだけが認められています。 専門家の間では、その必要性と安全性が強調されていますが、消費者からは「内容も不透明で得体の知れない怖いもの」として不安や疑問が起こっています。また、ドイツやスイスなど全面禁止している国もあります。 アメリカでは食中毒対策として牛や豚にも 一方、食品照射先進国・アメリカの食品医薬品局(FDA)は、97年末に病原性大腸菌O-157などによる食中毒対策として牛や豚などの食肉に放射線照射して病原体を殺菌することを認可しています。 同局では、コバルト60のγ線を食肉に短時間照射する方法の効果と安全性に問題はないとしています。しかし、アメリカの消費者団体では「放射線照射は消費者の間では安全性に依然、懸念がある」と指摘しており、今後その必要性と危険性についての議論は続けられそうです。
残留農薬はセロリ、パセリ、アオジソ、イチゴなどに多い 食卓にのぼる化学物質の中で最も危険なものに「農薬」があります。 アメリカ科学アカデミーでは、トマトやジャガイモなどによく使われる除草剤、殺菌剤、殺虫剤によって、がんになるアメリカ人は今後70年間で最大145 万人に達するという警告も出しています。 日本で農薬が広く使われるようになったのは戦後のことですが、現在では有効成分で約380 種類、製品で5500種類あるとされています。 農薬は、市販の野菜や果物からよく検出されますが、東京都衛生研究所や横浜市衛生研究所の調査では、野菜ではセロリ、パセリ、アオジソなどから、果物ではイチゴから多く見つかっています。 水洗いによる除去率とポストハーベスト 水洗いによる残留農薬の除去率は、農薬の種類によってかなり差があり、100%除去できるものもあれば、ほとんど除去できないものもあります。同じ農薬の場合、野菜よりも果物、なかでもブドウ、イチゴの除去率が低いことが分かっています。 近年問題になっているのは、収穫後の農薬の使用であるポストハーベストで、厚生労働省ではこれも含めて161種類の農薬に対して新しい残留基準を定めています。 また、日本茶を除く茶葉の残留農薬についても1991年(平成3年)まで野放し状態でしたが、翌92年から紅茶、ウーロン茶などの健康茶にも基準を新設し、残留農薬許容基準の大幅な見直しを行いました。
食品添加物は水分に溶けていることが多い ハムやソーセージなどの加工食品には、数種の食品添加物が含まれていることが少なくありません。例えば、発色剤には亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウムなどが使われますが、これらは食中毒菌を防ぐ作用があるものの、魚介類に含まれるたんぱく質と反応して発がん性物質を作り出すといわれています。 食品添加物は食品中に含まれている水分に溶けていることが多いので、湯に数秒間通してから使うようにした方が安心です。その時、切れ目を入れておくと、添加物が早く出やすくなります。
有害物質除去に効果的なタレ漬け 肉には農薬、抗菌性物質、投与されたホルモン剤、発色剤が残りやすいものです。 それらを除くには、ゆでたり湯通してして油を取る以外に、タレに漬けておくことも効果的です。そうすれば肉内の有害物質がタレの中に溶け出してくるからです。 みそ漬けの肉を焼く時にも、よくみそを取り除いてから焼くと安全です。みその中に汚染残留物質がたまっている可能性が考えられるためです。
ほとんどが輸入の大豆 納豆や豆腐の原料となる大豆は、食用油になるもの、調味料のみそ、しょうゆになるものを合わせて約500万トンも輸入されています。 日本の大豆自給率はわずが5%程度ですから、大豆製品の原料のほとんどは輸入品なのです。そこで気になるのが残留農薬です。 大豆加工品の残留農薬テスト 1995年(平成7年)に東京都消費者センターが行った大豆加工品の農薬の残留量のテストによると、納豆では16品目中、産地表示のなかったもの12品目中4品目から3.4ppm~1.0ppmの臭素が検出されました。 しかし、検出値は食品衛生法などで決められている残留基準値を超えていたものはありませんでした。とはいえ、市販されている品のすべてをテストしたわけではありません。 一方、害虫をいぶし出すために何度も臭化メチルで蒸されているのは事実なのですから、基準値を下回る結果が出たとはいえ用心するにこしたことはないでしょう。できれば国産大豆を使用したものを購入した方がより安全です。