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食道がん公開セカンドオピニオンで悩み解決、専門医・薬剤師・患者会がコラボライブ

食道がんは罹患率、死亡率とも国内トップ10に入りますが、2019年夏まで食道がんに特化した患者会がありませんでした。そこで、患者さんや家族、健康に気をつけたい人が正しい情報にアクセスできるよう専門医や患者会などの有志が患者会を立ち上げ、2020年3月にオンラインのコラボライブ動画で公開セカンドオピニオンが開催されました。

バリウム検査と内視鏡検査の違い、在住地域で医療機関を探すコツなどを伝授

食道がんは男性に多い疾患(男女比5:1)で、本邦では約2万人が罹患し、1万人が亡くなっています。男性が罹患するがんのなかでは、罹患率、死亡率とも6番目に多い病気です。
しかし、2019年夏の時点で食道がんに特化した患者会がありませんでした。患者さんの声を拾い上げるには、患者会の立ちあげが重要と考え、慶應義塾大学病院腫瘍センター准教授・浜本康夫先生の呼びかけで賛同する医師、および食道がんの患者さん、ご家族、「食道癌のブログ(https://furuhata.exblog.jp/)」を通じて、2019年12月に第1回食道がん患者さんの集いが開催されました。
さらに、2020年3月にYouTubeチャンネル「がん治療の虚実」で、慶應義塾大学医学部腫瘍センター/スキルス胃がん患者会・希望の会/NPO法人宮崎がん共同勉強会の3つの組織の共催により、がん専門医・薬剤師・患者会とのコラボライブ「慶應義塾大学医学部第6回市民講座&第56回NPO法人宮崎がん共同勉強会東京支部会(食道特集)」として、食道がんのリスクや治療に関する正しい最新情報が紹介されるとともに、公開セカンドピニオンのセッションが開催されました。(Youtube動画:https://www.youtube.com/watch?v=mKyzU99bQac&t=5834s)*1
公開セカンドオピニオンでは、食道がんになった時にどうするのか(検査など)、転移のこと、ニボルマブ(オプジーボ、進行・再発がんで保険適用)などの抗がん剤、放射線治療、副作用、術後の経過なども多くの質問がありました(参考記事:⾷道がんに注意、お酒1杯で⾚ら顔になる⼈や⼝の奥に⿊いシミがある⼈は検査を受けよう)。下記は内容の一部です。

Q:バリウム検査を定期的に受けていましたが、喉の違和感で内視鏡検査を受けると食道がんと診断されました。

A:バリウム検査は、おもに胃がんの早期発見を目的とした検査のため、食道がんを早期に発見できることはまれです。また、喉の入り口など(咽頭)や食道の入り口を撮影しませんのでバリウムしか受けていないかたは,咽喉頭がんを見落とす可能性があります。
内視鏡検査(胃カメラと言われるものです)は、鼻から入れるので苦痛が少なく、のどの入り口も含めて、食道~胃~十二指腸まで広範囲を観察できます。お酒やたばこを好むかたは特に検査時には「のども食道も見てください」と先生に伝えましょう。

Q:父が食道がんだったので私も検査を受けたいのですが、どこで受ければいいの?

A:選ぶべき医療機関は件数が多いこと(手術が10~20件を目安)、さまざまな治療を受けられること、チーム医療で薬剤師などに相談できること、医学会認定、最新機器があること、大学や大きな病院と関わりあることなどが挙げられます。

「どこの医療機関に行けばいいの?」という質問ですが、地域で大学やかかりつけ医、悪化時の入院施設など医療連携を聞いてみましょう。遠方から都内に受診する患者さんの例では、主治医に紹介状を書いてもらい、在住地域で医療機関を探すという例があります。
また、受診したときは自分の病状や治療内容を主治医や薬剤師へ遠慮せずに聞くこと(自分のことなので当然です)や、お薬手帳で調べること、別の医療機関などに相談したときでも説明できること、あるいはメモを渡すようにすべきとのアドバイスがありました。

体重減少やダンピング症候群の悩みは徐々に回復するので無理に食べ過ぎない

公開セカンドオピニオンでは高額な民間療法や、体重減少・ダンピング症候群の悩み相談もありました。下記に簡潔にまとめています。

Q:高額な民間療法が奏効率50%、信用していいの?

A:臨床試験として国に届け出があり、病気の進行度や病状の別に検証した治療経過データは信用できます。病状に関係なく過去の治療経過を単純にまとめたデータは信用できません。法律違反の可能性があるので通報しましょう。ネットは広告やPR、信ぴょう性のないスーパードクターやゴッドハンドなどに注意しましょう。

Q:術後から数年たちますが体重が減少していて、いっこうに増えません。

A:術後、体調は徐々に回復すると考えましょう。数年かかることがあります。あせらず無理して食べないこと、検査値が安定していればおいしいものをゆっくり食べるようにしましょう。

Q:ダンピング症候群(食事が腸に流れることで腹痛や下痢などの症状があります)に悩んでいます。

A:食べすぎに注意して、1回に食べる量を控えめにすることや間食をうまく利用すること、少量で栄養価が高い食材を選び、よく噛んでゆっくり食べる(1口で30回、1食30分)ことを心がけましょう。
食後30分~1時間で起こる早期ダンピング症候群は糖質の少ない食事と水分を控えること、数時間たって起こる後期ダンピング症候群は低血糖に注意しましょう。スキルス胃がん患者会から甘いものを持っておくべきとのアドバイスがありました。

周りが見えなくなってフェイク情報や都市伝説などに惑わされる事態をなくしたい

公開セカンドオピニオンで質問を寄せてくれた患者さんから、「相談したことで、気分が落ち着き、冷静になれた」との話がありました。いいかえると、病気のことで必死なので周りが見えなくなり、フェイク情報や都市伝説などを信用するケースが後を絶ちません。
また医師や薬剤師からは、公開セカンドオピニオンで患者さんが病気とどのように向き合って悩んでいるのかリアルな情報をもらえることは、非常にありがたいとの話がありました。つまり、医療者と患者さんとのつながりをさらに深めていくことが必要なのです。
悩んでいるかたは、信用できる医療機関でのセカンドピニオンだけでなく、「がん治療の虚実」や「食道癌のブログ」、患者会などは気軽に相談できるので活用しましょう。
次回はみなさんに役立つじょうずな服薬方法を中心に紹介します。

  • *1:押川勝太郎先生(宮崎善仁会病院消化器内科・腫瘍内科、NPO宮崎がん共同勉強会理事長)のYouTubeチャンネル「がん治療の虚実」(https://www.youtube.com/channel/UCVX2pB43fTkQVd3x_Ss5Jwg)で、がん専門医・薬剤師・患者会とのコラボライブ」が開催されました。
    医師・薬剤師・患者会とのコラボライブ・がん公開セカンドオピニオンは、慶應義塾大学腫瘍センター(会場)で開催しており、Youtubeでも発信しているものですが、今回の2020年3月の第6回目となる公開セカンドオピニオンは残念ながらコロナの影響で会場開催はできず、Youtube公開生放送で開催しました。
    公開セカンドピニオンでは、押川先生、慶應義塾大学病院腫瘍センター・浜本康夫先生、東京医科歯科大学・川田研郎先生、長野県立信州医療センター薬剤部の松原重征先生、スキルス胃がん患者会の轟浩美さんがアドバイスをしてくれました。大腸がん、すい臓がん、スキルス胃がんの患者さんからの相談内容も紹介されました。
    また、患者会や支援団体はオンライン交流会を開催しています。2019年に公開セカンドオピニオンを共催で開催したグリーンルーペプロジェクト(https://greenloupe.org/)では、YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/channel/UCsiwnbbMzV9yc6v4GHCrjsQ/videos)でがん経験者さんや家族から寄せられたメッセージや、病気のことを知ってもらうためのアイドルグループとのコラボライブなどを閲覧できます。

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公開日:2020/06/24
監修:宮崎善仁会病院消化器内科/腫瘍内科 押川勝太郎先生(NPO宮崎がん共同勉強会理事長)、慶應義塾大学病院腫瘍センター副センター長 浜本康夫先生