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食道がんに注意、お酒1杯で赤ら顔になる人や口の奥に黒いシミがある人は検査を受けよう

食道がんは中高年男性に多く、お酒やたばこなどが原因です。若いときはお酒を飲むと真っ赤になったけど鍛えられて強くなった人や、口の奥の上(軟口蓋:なんこうがい)に黒いシミのようなもの(メラノーシス)があるとリスクが高いといわれています。ブログ・YouTubeチャンネル「がん治療の虚実」*1の専門医・薬剤師・患者会とのコラボライブ*2から、食道がんを早く見つける鍵について紹介します。

お酒で赤くなる体質でも鍛えられて飲めるようになった人は危険

食道がんは男性に多い疾患(男女比5:1)で、本邦では約2万人が罹患し、1万人が亡くなっています。男性が罹患するがんのなかでは、罹患率、死亡率とも6番目に多い病気です。
しかし、2019年夏の時点で食道がんに特化した患者会がありませんでした。患者さんの声を拾い上げるには、患者会の立ちあげが重要と考え、慶應義塾大学病院腫瘍センター准教授・浜本康夫先生の呼びかけで賛同する医師、および食道がんの患者さん、ご家族、「食道癌のブログ(https://furuhata.exblog.jp/)」を通じて、2019年12月に「第1回食道がん患者さんの集い」が開催されました。
そして、2020年3月にYoutubeチャンネル「がん治療の虚実」で、慶應義塾大学医学部腫瘍センター/スキルス胃がん患者会・希望の会/NPO法人宮崎がん共同勉強会の3つの組織の共催により、がん専門医・薬剤師・患者会とのコラボライブ「慶應義塾大学医学部第6回市民講座&第56回NPO法人宮崎がん共同勉強会東京支部会(食道特集)」として、食道がんのリスクや治療に関する正しい最新情報が紹介されるとともに、公開セカンドピニオンのセッションが開催されました。(Youtube動画:https://www.youtube.com/watch?v=mKyzU99bQac&t=5834s)。
コラボライブから、東京医科歯科大学消化管外科学の川田研郎先生の講演内容を中心に紹介します。
先生によると、中高年男性に多い食道がんは、おもに以下が発症リスクです。

■食道がんになりやすい人

  • 中高年の男性
  • 飲酒歴:1日2合以上
  • タバコ
  • 野菜や果物を食べない
  • 熱いものや、辛いものを好む
  • やせている
  • 過去に頭頸部がんの発症歴、口腔・咽頭メラノーシス(口の上部の奥に黒いシミがあることをメラノーシスといいます)

「若いときは酒を飲むと赤くなっていたけど、鍛えられて飲めるようになった」人は、アルコールを分解する力が弱い遺伝子をもともと持っている可能性が高いといわれています。アジアではそのような体質の人が多いとの指摘があります。

食道だけでなく喉や口にも多発しやすいので早期発見が重要

公開セカンドオピニオンでは、食道がんリスクが高い人を早く発見する方法に関する質問が医療者から寄せられました。川田先生によると、リスクが高い人を見つけるために、ピロリ菌(胃がん関連)を確認したうえで以下を確認します(セルフチェックできます)。

■食道がんリスクが高い人を早く発見する方法

*2つのチェック方法とも国立病院機構久里浜医療センター臨床研究部部長の横山顕先生らの研究成果によるものです。

食道がんは喉(のど)や口のあたり(中咽頭や下咽頭、喉頭、口腔底、舌など〕に多発しやすいことが問題です。2009~16年の東京医科歯科大学の食道がん患者さんの重複がんを検討した結果によると、下咽頭がん、胃がん、中咽頭がんの順に多いとのことでした。
食道がんの原因となるアルコールが分解され、代謝産物のアセトアルデヒドが唾液にたまるので、胃や喉、口のあたりに発症しやすいといわれています。

バリウム検診では発見されにくい

食道がんの特徴として粘膜がんの段階で転移が生じます。早期発見できた場合、内視鏡治療だけですみますが、症状のないステージⅠの段階でも手術、放射線、抗がん剤、あるいは複数の治療になるので、患者さんの負担が大きくなります。最近は、5㎝を超える腫瘍も内視鏡治療で切除可能なことや、外科手術においてはロボット支援下手術で傷口が小さくて済む方法など、身体への負担が少ない治療法が導入されています。2020年春には、免疫チェックポイント阻害剤のニボルマブ(オプジーボ)が進行・再発食道がんへ、標準的な抗がん剤が効かない場合の二次治療として認可されました。
また、看護師や薬剤師、理学療法士、歯科医や歯科衛生士など多職種によるチーム医療により、患者さんに寄り添ったサポートが受けられます。
しかし、公費で受けられる食道がん検診がないこと、胃がん検診のついでに食道がんの検診を受けることや、バリウム検診で見つかりにくいことなどが問題です。放置していると進行します。そうすると、食道のまわりにある心臓や肺大動脈など重要な臓器に悪影響を及ぼすので、患者さんは「食事が取れない」、「息が苦しい」、「大出血して命を落とす」という極めてきつい状況に陥る危険があります。

早く病気を発見しよう、鼻から入れる内視鏡検査はつらくない

治療法は進歩していますが、早く病気を発見して病院に来てもらわないといけません。
内視鏡検査を早く受けることがおすすめですが、口から入れる方法は「つらい。苦しい」という患者さんが多いようです。そこで最近は、鼻から入れる内視鏡検査がよく使われています。口から入れる方法ほどつらくないとの意見が多いです。
以前は画質が悪く、口からの内視鏡よりも見えにくいために、医師からは敬遠されがちでしたが、最新型の経鼻内視鏡は口からの内視鏡と遜色ない画質を備え、がんの発見精度も変わらないため、ほぼ全例に鼻からの内視鏡をお勧めしています。
メリットとしては、喉の入り口や食道の入り口をじっくり観察できるので、食道癌と重複しやすい頭頸部がんの早期発見にもつながります。

食道がんを早くみつけるには、セルフチェックが重要です。自分の体質(ビール1杯で赤ら顔になりやすいなど)や、口の上部の奥に黒いシミがあるかどうかを鏡で調べるなど、リスクを早く発見して、医療機関を受診しましょう。

  • *1:YouTubeチャンネル「がん治療の虚実」(https://www.youtube.com/channel/UCVX2pB43fTkQVd3x_Ss5Jwg)は、正確な情報にアクセスしてもらうために、がん専門医の押川勝太郎先生(宮崎善仁会病院消化器内科・腫瘍内科、NPO宮崎がん共同勉強会理事長)が立ち上げました。ブログ:https://ameblo.jp/miyazakigkkb/
  • *2:医師・薬剤師・患者会とのコラボライブ・がん公開セカンドオピニオンは、慶應義塾大学腫瘍センター(会場)で開催しており、Youtubeでも発信しているものですが、今回の第6回目は残念ながらコロナの影響で会場開催はできず、Youtube公開生放送で開催しました。
    公開セカンドピニオンでは、押川先生、慶應義塾大学病院腫瘍センター・浜本康夫先生、東京医科歯科大学・川田研郎先生、長野県立信州医療センター薬剤部の松原重征先生、スキルス胃がん患者会の轟浩美さんがアドバイスをしてくれました。
    また、患者会や支援団体はオンライン交流に取り組んでいます。以前に公開セカンドオピニオンを共催で開催したグリーンルーペプロジェクトはYouTubeチャンネルで啓発しています(https://www.youtube.com/channel/UCsiwnbbMzV9yc6v4GHCrjsQ/videos)。がん経験者さんや家族から寄せられたメッセージや、病気のことを広く知ってもらうためのアイドルグループとのコラボライブなどを閲覧できます。

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公開日:2020/06/17
監修:東京医科歯科大学消化管外科学 川田研郎先生