脂質異常症は、動脈硬化性疾患という心筋梗塞や狭心症など心臓にかかわる病気(冠動脈疾患といいます)や脳梗塞などになりやすい生活習慣病です。診療の際に医師が参考にする「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」(日本動脈硬化学会)では、10年以内に冠動脈疾患を発症する確率をチェックできる「吹田スコア」という評価ツールが推奨されています。
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診療の際に医師が参考にする「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」(日本動脈硬化学会)では、血液検査の脂質値を用いた診断基準(記事1)のほか、10年以内に冠動脈疾患を発症する確率をチェックできる「吹田スコア」が提示されています。
吹田スコアは、吹田研究という大阪府吹田市の市民を対象に10年以上にわたって冠動脈疾患や脳卒中などの病気になった人を10年以上にわたり追跡調査した大規模な集団研究*(コホート研究ともいいます)の結果をもとに作成されたツールです。
吹田スコアの計算方法は、悪玉のLDLコレステロール、善玉のコレステロールのほか、年齢、性別、喫煙、血圧、耐糖能異常、早発性冠動脈疾患の家族歴の8項目を点数化します。合計点数から冠動脈疾患を10年以内に発症する確率がどのくらいかを知ることができます(図)。
得点 | 10年以内の冠動脈疾患発症確率 | 発症確率の範囲 | 発症確率の中央値 | 分類 | |
---|---|---|---|---|---|
最小値 | 最大値 | ||||
35以下 | 1%未満 | 1.0% | 0.5% | 低リスク | |
36~40 | 1% | 1.3% | 1.9% | 1.6% | |
41~45 | 2% | 2.1% | 3.1% | 2.6% | 中リスク |
46~50 | 3% | 3.4% | 5% | 4.2% | |
51~55 | 5% | 5% | 8.1% | 6.6% | |
56~60 | 9% | 8.9% | 13% | 11% | 高リスク |
61~65 | 14% | 14% | 20.6% | 17.3% | |
66~70 | 22% | 22.4% | 26.7% | 24.6% | |
71以上 | 28%より大きい | 28.1% | 28.1%以上 |
出典:日本動脈硬化学会(編): 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版. 日本動脈硬化学会, 2017
吹田スコアは、冠動脈疾患の発症率を追跡している吹田研究をもとに作成されました。
この研究では、LDLとHDLのコレステロール値を用いて病気の発症について分析しているうえ、LDLコレステロールに関しては100 mg/dL未満、100~139mg/dL、140~159mg/dL、160~179mg/dL、180mg/dL以上の5つに分けて病気の詳細を分析しています。
その研究成果から、10年間において冠動脈疾患を発症する可能性が高いのかどうかを判定するための評価ツールとして、医師が診療で参考にするガイドラインで推奨されています。
吹田スコアは、健康診断の血圧や脂質の検査値を用いてチェックできます。チェックの結果、中リスク以上と判定されたかたは食事や運動など生活習慣の改善や、医療機関に受診するなど注意すべきです。ガイドラインでは、以下のような生活習慣の改善のためのポイントがまとめられています。
出典:日本動脈硬化学会(編): 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版. 日本動脈硬化学会, 2017
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