疾患・特集

薬を残してしまう糖尿病患者の特徴とは

働く世代の糖尿病患者さんで治療中断が多いと言われています。横浜市立大学の寺内康夫先生は、糖尿病の飲み薬(経口薬)を規則正しく服薬できずに残す患者さんの特徴について研究を実施しています。どのような特徴があるのでしょうか。第13回横浜生活習慣病フォーラムで報告しました。

糖尿病合併症を予防するヘモグロビンA1c値7.0%を達成する患者さんは多くない

最近は、メタボリックシンドロームへの意識の高まりや特定健診・特定保健指導が普及したことで、多くの糖尿病患者さんで血糖コントロールが改善傾向にあると言われています。
一方で、ガイドラインで推奨されている糖尿病合併症を予防するためのヘモグロビンA1c値7.0%を達成している患者さんは多くはないことが指摘されています。
課題の1つとして、治療の中断が挙げられます。たとえば、糖尿病の飲み薬(経口薬)を規則正しく服薬できずに残す患者さんのケースなどが挙げられます。
横浜市立大学大学院分子内分泌・糖尿病内科学教授の寺内康夫先生に、治療を中断する患者さんの特徴について分析した研究結果をふまえたうえで、患者さんに最適なタイミングで治療を開始する、あるいは治療を強化していくことの重要性について解説してもらいました。
2018年6月開催・第13回横浜生活習慣病フォーラム「30~50歳代の治療中断しないためのマネジメント」の講演内容を紹介します。

糖尿病患者さんが積極的に治療を受けるための服薬アドヒアランスを向上が課題

処方された糖尿病の飲み薬を規則正しく服薬できずに残してしまう人の特徴を探ることを検討した研究の対象は、20歳以上で、医師から2型糖尿病の診断がされて通院中であり、かつ飲み薬(経口薬)を服薬中の患者さん2,942例で、アンケートを実施しました。
結果を見ると、糖尿病の飲み薬を残してしまう人の割合は33.1%で、飲み薬を残す理由はおもに以下が挙げられました。

飲み薬を残す理由  
特に理由はないが、ついうっかりと忘れてしまう 56%
外出の際に持って行くのを忘れてしまう 39%
食事のタイミングが不規則で飲むタイミングを逸してしまう 24%
忙しくて飲むタイミングを思い出せない 8%
薬を飲む必要性を感じない 3%

「薬を残してしまう」患者さんの服薬状況を見ると、服薬の困りごとを挙げていた患者さんで多かった回答としては「一度に飲む量が多い」、「服薬回数が多い(1日3回など)」「薬の種類が多い」「タイミングを守ることが難しい」などでした。また、薬を残していることを医療者に伝えていない患者さんもいました。
寺内先生は、患者さんが病状や治療方針などを理解した上で、積極的に治療を受けるためには、「服薬アドヒアランス」を向上させることが重要だとしています。
例えば、治療を中断してしまう患者さんや処方された治療薬を残してしまう患者さんの理由、自己管理の意識が高い患者さんが医療者に求めているニーズなど患者さんの状況を理解したうえで、医療者が適切なタイミングで医療を提供していくことが理想です。
また、患者さんの生活スタイルや性格にも特性についても研究をしています。

公開日:2018/10/24
監修:横浜市立大学大学院分子内分泌・糖尿病内科学教授 寺内康夫先生