疾患・特集

雨の日の頭痛にはワケがある

天候に左右される心身!?

雨が近づくと、古傷がうずいたり、頭が痛くなる人がいる。花粉症や夏バテ、冬季うつ病など、季節の変化によって症状が出るものもある。私たちの体や心は、実はけっこう天候・気候の影響を受けている。
気象と健康の関係については、世界各国で古い昔から研究されていた。日本でも、有名な貝原益軒の『養生訓』で、夏は人肌のきめが開き汗も出やすくなるので、風に当たり過ぎるとよくないなど、現代人の私たちが聞いても納得の知恵を述べている。
20世紀の前半に、自然環境と心理学の関係を研究する地心理学や、季節の変化と感染症発生の関係を研究していたドイツで発達したのが、生気象学である。これは、大気の現象が、生物に及ぼす物理的・化学的・生理学的な影響を研究するもの。20世紀後半には、科学として国際的にも認知された。例えば温泉療法や森林浴なども、生気象学を採り入れた療法の例だ。ドイツでは、天気予報の際、「乱気流をともなう前線が通過しますので、体の痛みや不安、イライラなどが起こりやすくなります」などと体調予報も実際に行われている。

気象と体の変化

では、気象の変化は、体にどんな影響を与えるのだろうか。暑さ寒さを例にとって説明してみよう。
大気の気温がある程度以上高くなったり、低くなったりすると、私たちは不快感を覚える。この不快感により、体温が極端に上がったり下がったりしないよう体が調節を始める。例えば気温が上昇すると、血管が拡張し、皮膚の温度が上がって熱が放散される。そして、汗をふきださせることによって、皮膚の熱は気化熱として空中に奪われることになる。
逆に、気温が下がってくると、血管が収縮して熱が皮膚から放散しないようにする。四季の気候の変化がある日本で暮らす私たちの体は、夏の暑さと湿度、秋から冬にかけての乾燥、冬の寒さ、春の暖かさ、梅雨の湿度など複雑に変化する季節に対応するリズムができ上がっている。でも、その変化が激しすぎたり、病気のあるときは対応しきれずに、症状が出やすくなるのである。

夏から秋への変化と体調

気象による体の変化を予測し、体調を整えていくことができれば、より健康的に過ごせるというもの。そこで、季節や天候によって、具体的に体がどう変わるか、今の時期に合わせて紹介しておこう。

長雨のときの体

●うつ

雨が続くと、日照不足になりがち。そんなときは体内のメラトニン分泌量が増え、うつになりやすいと考えられる。日中なんとなく眠くなったり、無性に炭水化物が食べやすくなったりする。
対策:晴れたときはできるだけ太陽に当たるようにする、部屋を明るくするなどの工夫をしよう。

●頭痛

悪天候により急に寒くなったり気圧が低下すると、血管が収縮し、頭痛が起きやすくなる。冷たいものを食べ過ぎると頭が痛くなったりするのも同じ現象だ。
対策:頭痛になりやすい人は、肌寒い雨の日は体を冷やさないよう気をつけよう。

●アレルギー(アトピー性皮膚炎、喘息など)

雨で、高温多湿の状態が続くとカビやダニが発生しやすくなるため、アレルギー症状が出やすくなる。
対策:掃除をまめにする、衣服をまめに取り替えるなどの工夫をしよう。

夏の体

●夏バテ

夏は基本的に汗を上手にかく体作りが必要になる。冷房のよく効いた部屋でばかり過ごすと、なかなか汗が出ないために、体内に熱がこもりやすくなり、夏バテしやすい体になる。
対策:自分で冷房をコントロールできる環境にある人は、たまには冷房を止めて扇風機にする、風のあるときはそれも止めてみる。冷房の効いたビルで過ごさなければならない人は、ときどき冷房の弱い場所へ行って体を休めよう。

●冷房病

冷えすぎた屋内では、血行が悪くなり、神経痛、頭痛、腹痛、生理痛などを招きやすくなる。屋外の温度差が激しすぎると体が適応できず、めまいやだるさを感じたり、軽い貧血を起こすこともある。
対策:夏バテと同じ。なるべく冷房を避けて、体を休めるようにしよう。

●熱中症

気温が30度を超えるとさまざまな機能障害を招く。33度以上になると、高齢者や子どもで病院に運ばれる人が急増する。子どもはあまりの暑さに汗腺の分泌能力が追いつかず、高齢者はのどの渇きの感覚が鈍っているので、脱水症状を起こしやすい。
対策:気温が30度を超えるような日は、涼しい所で過ごす(ただし冷房は強くしすぎない)ことを心がける、水分をまめに補給するなどしよう。

秋の晴天の体

●坐骨神経痛・喘息・風邪

爽やかな季節だが、この時期は、日中と夜の寒暖差が激しい時期でもある。急激な冷え込みは、血管が収縮して血圧が上昇し、体が変調をきたす原因となる。
対策:夜は上着を羽織る、暖かい布団で寝るなど体を冷やさないよう気をつけよう。

●食中毒

秋に食中毒と言うと意外に思う人もいるだろうが、夏の過酷な暑さの後で自律神経の乱れが弱った体に大量の菌が入り込むと、体の防御機能がうまく作用せず中毒にかかりやすくなる。
対策:刺身や寿司などを食べるときは、いつも以上にわさびやガリを摂る、最後にお茶を飲むなどの予防を心がけよう。

●シミ・そばかす・白内障

秋の紫外線は3月、4月と変わらない。空気が澄んでいるこの時期はむしろ直接肌に降り注ぐ。目に注ぐ紫外線は水晶体を構成するたんぱく質に変化を生じ、白内障の原因にも。
対策:夏に引き続き、出かけるときは日焼け止めをお忘れなく。また、目を紫外線から守るサングラスもおすすめ。

公開日:2006年8月28日