「依存性があるのでは?」などあまりよいイメージのない睡眠薬。だが最近では安全性の高い薬剤も登場、医師の診断のもとに使えば、不眠症の心強い味方になる。また、厚生労働省が示した睡眠障害の12の対処法も紹介。
健康成人の睡眠パターン
睡眠には2種類あるのをご存知だろうか。体は眠っているのに脳が起きている状態のレム睡眠(Rapid Eye Movement:REM)と、脳が眠っている状態のノンレム睡眠(Non-Rapid Eye Movement:Non-REM)だ。さらにノンレム睡眠にも深い時期と浅い時期がある。
一般的には入眠してから最初のレム睡眠出現までは60~120分。その後ノンレム睡眠とレム睡眠をおよそ90分周期で繰り返している。
夢を見るのはレム睡眠のとき。レム睡眠は睡眠中枢のはたらきで全身の筋肉を緩め、外部の昼夜リズムに合わせて運動器を休めるための睡眠。その一方、脳は活発に動き、交感神経も緊張している。レム睡眠中には脳の記憶から情報がランダムに呼び出され、頭の中で合成されて瞬間瞬間にできている映像を見ている状態が「夢」であると考えられている。
かたやノンレム睡眠は、主に脳を休ませるための睡眠。ノンレム睡眠中は骨格筋の緊張は目覚めているときよりも低下するが、レム睡眠時のように完全に弛緩することはない。ノンレム睡眠の深さは睡眠の質とも関係しており、熟睡感に影響すると考えられている。
睡眠障害があると、しばしば正しい睡眠パターンで眠ることができず、心身を休めることができない。特に深いノンレム睡眠状態を得にくく、そのため日中にしばしば眠気に襲われることがある。
日本ではまだまだなじみの薄い「睡眠薬」。「大量に飲むと死んでしまうのでは?」「強い依存性があるのでは?」など心配する声も聞かれる。だが、ご心配なく。最近では依存性や耐性を克服した睡眠薬が開発されている。
確かに昔使われていたバルビツール酸系と呼ばれる睡眠薬は効果が強く、一方で依存性などの問題も見られたが、現在ではバルビツール酸系、非バルビツール酸系(バルビツール酸系を改良したもの)の睡眠薬は手術前の麻酔など、特殊な場合を除いてほとんど使われることはなくなった。変わって今日広く使われているものがベンゾジアゼピン系やこれをさらに進化させた非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬。脳の中で作用する部位や構造式がバルビツール酸系のものとはまったく異なり、医師の指示に従えば安全性が高く、依存性も少ないのでやめられなくなるという心配はまずない。
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬(非ベンゾジアゼピン系も含む)は薬の作用時間によって4つに分類されており、睡眠障害のタイプによってこれらの薬が使い分けられる。
耐性や依存症を生じにくい安全な薬剤。
分類 | 一般名 | 販売名 |
---|---|---|
超短時間型 | トリアゾラム | ハルシオン |
短時間型 | ブロチゾラム | レンドルミン |
エチゾラム | デパス | |
ロルメタゼパム | エバミール | |
塩酸リルマザホン | リスミー | |
中間型 | ニトラゼパム | ベンザリン、ネルボン |
ニメタゼパム | エリミン | |
エスタゾラム | ユーロジン | |
フルニトラゼパム | ロヒプノール、サイレース | |
長時間型 | 塩酸フルラゼパム | ベノジール、ダルメート |
ハロキサゾラム | ソメリン | |
クアゼパム | ドラール |
ベンゾジアゼピン系薬剤に比べ、より自然な睡眠を誘導する薬剤として開発された薬剤。ベンゾジアゼピン系の副作用をより軽減させるために開発された。
一般名 | 販売名 |
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ゾルピデム | マイスリー |
ゾピクロン | アモバン |
睡眠薬は医師の指示通り正しく服用することが大切。服用する際にはこんなことに気をつけよう。
体にとって必要な睡眠時間は人それぞれ。一概に何時間眠ればいいとは必ずしも言えないもの。日中スッキリと活動できれば、それがその人にとって快適な睡眠状況なのだ。
もし寝つきが悪い、昼間極度の眠気に襲われる、夜中に何度も目が覚めるなどの睡眠障害の症状が疑われるようなら、医師による適切な治療を受けるとともに、以下の快眠のためのアドバイスを心がけてみてはいかがだろう。早速今夜から、あなたにとっての快眠を目指してほしい。
参考:厚生労働省 精神・神経疾患研究委託費 睡眠障害の診断・治療ガイドライン作成とその実証的研究班、平成13年度研究報告書より