STD(性感染症)に関する記事をご紹介します。STD(性感染症)の正しい知識を身につけることで、予防や改善にお役立てください。
エイズ感染の感染経路は主に性的接触によるものとされており、性器ヘルペス感染症も同様です。性器ヘルペス感染症になると、エイズに感染する危険性が高まり、さらに、エイズ感染者が性器ヘルペス感染症を伴っている場合、ほかの人に対し感染させやすくなります。 目次 エイズの発生動向 ヘルペスとエイズに関連性は? 予防して安心な生活を エイズの発生動向 厚生労働省エイズ動向委員会によると2014年の全国の新規感染報告件数は455件とのことです。前年の報告件数は484件で29件少なくなっています。年齢でいうと、エイズ患者は20歳以上に幅広く分布し、特に30歳代、40歳代に多い傾向が続いています。 また、エイズ感染の感染経路は主に性的接触によるものとされています。同委員会の2014年のエイズ患者報告例の中で、異性間・同性間を合わせると性的接触は感染経路別内訳の83.1%を占めています。 ヘルペスとエイズに関連性は? ヘルペスは、大きく分類すると、単純ヘルペスと帯状ヘルペスに分けられますが、性器ヘルペス感染症はその単純ヘルペスウイルスによって引き起こされる病気であり、主に性交渉によって感染するものです。 エイズ患者がヘルペスウイルスに感染すると、エイズウイルスによって免疫力が低下しているため、ヘルペスを発症しやすくなるだけでなく、危険度も増します。逆に、性器ヘルペスが何度も再発を繰り返すことでエイズウイルスに感染するリスクが高くなることもあります。性器ヘルペスに感染すると、粘膜に傷やただれが生じ、皮膚が弱まってしまうので、エイズウイルス以外の感染症にもかかりやすくなってしまいます。 体内にある単純ヘルペスウイルスをすべて消してしまうような治療法はまだ存在しませんが、症状の期間短縮や予防ができる有効な抗ウイルス剤があります。基本的には、抗ウイルス薬の外用薬や内服薬で治療を行いますが、ヘルペスが悪化し、全身症状、免疫不全などの重症例が出た場合には、入院しながら抗ウイルス薬の点滴静脈治療を行います。また、現在ではエイズウイルスに感染しても、エイズ発症を抑え、健康を維持することが可能になっています。 単純ヘルペスウイルスに感染しているかどうか自分で気づいていない人たちも多く、そのため性交渉におけるヘルペスとエイズの相互的な関係は複雑化しています。 予防して安心な生活を ヘルペスの感染能力は非常に高いため間接的な接触でも感染してしまう場合もあります。手指などを介しての感染や、タオルや便座・食器などを介しての感染もありえます。つまり、感染源は「患部に触れたものはすべて」ということです。 しかし、タオルや食器などを介する際における感染能力の持続性は低いため、洗浄・洗濯後に感染能力は消滅します。発症が確認された場合には、タオルなど患部に触れるものの共有はしないようにしましょう。 性器ヘルペス感染症やエイズに感染する可能性を低くするためには、性交渉時にコンドームを正しく使用することが大切です。もし感染したとしても、処置が早ければ早いほど、症状は軽く済みます。少しでも症状が出た場合には、すぐに医師に相談しましょう。 ■関連記事 要注意!新生児のヘルペス もしヘルペスにかかったらどうしよう? 原因は、症状は?ヘルペスはこんな病気 公開日:2016/10/31
HIVウイルスに感染すると、免疫機能が低下し、さまざまな病気を発症するようになります。HIVウイルスへの感染と関係が深いといわれているのが、「単純ヘルペス2型」ウイルスです。お互いに感染しやすくなるといわれています。 目次 HIVウイルスって?ヘルペスウイルスとの関係性もある? 互いに影響しあうHIVウイルスとヘルペスウイルス 予防・早期発見を心がけよう HIVウイルスって?ヘルペスウイルスとの関係性もある? 世界中で多くの死者を出しているAIDS。この病気は、「HIV」ウイルスに感染することで発症します。 「HIV」とは、「Human Immunodeficiency Virus(ヒト免疫不全ウイルス)」を指し、このウイルスがリンパ球やマクロファージ(ともに白血球の1種)に感染すると、免疫機能が低下し、さまざまな病気を発症するようになります。この病気の状態が「AIDS(Acquired Immuno-Dediciency Syndrome)」(後天性免疫不全症候群)です。 近年では、治療薬の開発が進み、早期に服薬治療を受ければ、免疫力を落とすことなく、通常の生活を送ることもできるようになってきています。しかし、いまだに深刻な感染症のひとつであることに変わりはなく、感染の予防は重大な課題となっています。 このHIVの主な感染経路には、「性的感染」「血液感染」「母子感染」が挙げられます。 「性的感染」で最も多いのは、性行為による感染です。「血液感染」は、輸血や注射器、医療現場での針刺し事故などから、感染者の血液が他者の血管中に侵入することにより起こります。「母子感染」は、母親がHIVに感染している場合、出産時の産道からの感染、母乳による感染、胎内感染が考えられます。 互いに影響しあうHIVウイルスとヘルペスウイルス HIVウイルスへの感染と関係が深いといわれているのが、「単純ヘルペス2型」ウイルスです。 「単純ヘルペス2型」ウイルス(HSV-2)は性器ヘルペスの原因となるウイルスで、主に性交渉により感染し、極めて高い感染力を持っています。同じ「ヘルペス」ウイルスでも、帯状疱疹を発症させるウイルス(VZV)とは種類の異なるものです。 そして、HSV-2とHIVは互いに影響を与えあうことが分かっています。 HSV-2は、HIV感染者の60~90%が感染しており、HSV-2に感染すると、HIVへの感染率も高くなります(WHO Herpes simplex virus Fact sheet N400 2015より)。これは、性器ヘルペスを発症していると、性器の炎症部分からHIVウイルスに感染しやすくなるため、と考えられます。 また反対に、HIVへの感染がHSV-2の発症の原因となることもあります。HIV感染したことによる免疫不全が原因で、性器ヘルペスの再発のサイクルが短くなり、頻繁に発症するようになります。 予防・早期発見を心がけよう HIV(エイズウイルス)、ヘルペスウイルスのどちらに感染していても、お互いに感染しやすくなってしまいます。HIVはコンドームなしの性行為で感染することが多いと言われています。そして、性器ヘルペスも主に性行為で感染します。セックスの相手の性器にできていたヘルペスだけでなく、口唇ヘルペスのウイルスがオーラルセックスなどで性器に感染し、性器ヘルペスを発症することもあります。 現在では、体の中にあるHIVを完全に取り除くことはできません。ただ、さまざまな治療薬の開発により、体内にいるHIVの増殖を抑え、免疫力を維持することは可能になっています。たとえ感染しても、適切な治療を継続して行えば、普通の生活を送ることもできるようになっています。ただし、これには、早期発見することが大切です。エイズ発症後では、治療はかなり難しくなります。HIVの検査は、全国の保健所で「匿名」「無料」で受けることができるので、少しでも疑いがあったら、検査を受けるようにしましょう。 ■関連記事 要注意!新生児のヘルペス もしヘルペスにかかったらどうしよう? 原因は、症状は?ヘルペスはこんな病気 公開日:2016/08/29
ヘルペスは性器に現れることがあり、その性器ヘルペスは男女によって症状が異なります。また、ほとんどの場合は性交渉により感染しますが、性交渉以外で感染するケースも存在します。性器ヘルペスの症状や予防法について詳しく解説します。 目次 ありふれたヘルペスウイルスが性器にも 男性と女性で症状が異なる 性交渉により感染する性器ヘルペス 性器ヘルペスに感染しないためには タオルや便座からも感染 症状に気づいたら泌尿器科や婦人科へ ありふれたヘルペスウイルスが性器にも 寝不足や疲れがたまっている時などに現れるヘルペス。ヘルペスは口の周りなどに現れるありふれた病気です。このヘルペスは単純ヘルペスウイルスに感染したことにより発症するもので、その症状は体力が低下している時などに現れやすくなります。 そしてそのヘルペスが性器に現れることがあります。単純ヘルペスウイルスには1型と2型があり、口の周りに現れる口唇ヘルペスは1型の場合が多く、性器ヘルペスは2型が多いものの、1型が原因の性器ヘルペスもあります。 男性と女性で症状が異なる 性器ヘルペスは男女によってその症状が異なります。男性の場合は亀頭や陰茎、大腿部、臀部、直腸粘膜や肛門周辺で、痛みやかゆみ、赤い発疹や水ぶくれができたり、発熱することもあります。そして、女性の場合は外陰部や膣入り口付近の場合が多く、ほかに臀部や子宮頚部にも赤い発疹や水ぶくれ、ただれなどの症状が現れることがあります。 そして、一般にヘルペスは初めての感染時に強い症状が現れ、性器ヘルペスの場合、男性では尿道にも症状が現れることがあり、また、倦怠感、リンパ節の膨張が見られることもあります。 女性では排尿困難、歩行困難になってしまうこともあり、妊娠時であれば、胎児が新生児ヘルペスになってしまう危険性もあるので、注意が必要です。 性交渉により感染する性器ヘルペス 性器ヘルペスのほとんどは性交渉により感染します。性器ヘルペスに感染していると、相手にうつしてしまうことになります。したがって、自分に性器ヘルペスの症状がある時には性交渉を控えなければなりませんが、ヘルペスの場合、感染していても必ずしも症状があるとは限りません。 性器ヘルペスに感染しないためには 多くの性感染症はコンドームなどの使用により、その感染を予防することができますが、性器ヘルペスではコンドームに覆われていない部分の感染を防ぐことは不可能です。そのために、性器ヘルペスを完全に予防する方法はありません。 しかし、性交渉の相手が特定の人のみならば、その可能性を下げることは可能です。特定のパートナーの異変には気がつきやすく、それに気がつけば、患部に触れない、触れた場合はよく手を洗うなどの対処を行うことが可能になります。 タオルや便座からも感染 性器ヘルペスで注意しなければならないのは、原因となるのが2型の単純ヘルペスウイルスに限らないという点です。1型でも性器ヘルペスになるため、自分の口唇ヘルペスからパートナーが感染、性器ヘルペスになってしまう可能性がありますので、あらゆる性交渉に注意しましょう。 また、タオルや便座を介して感染することもありますので、同居人にその症状がある時にはタオルを共有しない、便座とお尻の間にタオルやガーゼなどを挟んでもらい、直接便座に触れないようにしてもらう必要があります。 症状に気づいたら泌尿器科や婦人科へ 男女で症状が違う性器ヘルペスは、男性の場合、治療は泌尿器科で行われることが一般的です。そして、女性の場合は婦人科が多いようです。また、皮膚科や性病科でも診療が可能です。 ヘルペスは再発しやすく、体内のヘルペスウイルスを完全に撲滅することは困難ですが、抗ウイルス薬により、その増殖を抑制することは可能です。性器ヘルペスは自分だけの病気ではありません。体内でウイルスが猛威を振るう前に、異変に気づいたらできる限り早く、これら医療機関の診察を受けてください。 ■関連記事 要注意!新生児のヘルペス もしヘルペスにかかったらどうしよう? 原因は、症状は?ヘルペスはこんな病気 女性を悩ます排尿障害やデリケートゾーンの疾患「GSM」とは 日本抗加齢医学会セミナー 公開日:2016/06/20
12月1日は「世界エイズデー」です。治療薬の進歩などのおかげで、欧米の先進諸国では、新たにエイズを発症する患者や死亡者が減少しています。エイズは、正しく予防をすれば発症を防げる病気。知識を身につけ、しっかり予防対策を行いましょう! 目次 エイズとHIVの違いって? どんなときに感染するの?3つの感染経路 エイズの治療法はあるの? クイズ:HIVに感染するのはどんなとき? エイズとHIVの違いって? エイズ(AIDS)とは、Acquired Immuno-deficiency Syndrome(後天性免疫不全症候群)の略です。その原因となるのがHuman Immuno-deficiency Virus(ヒト免疫不全ウイルス)、すなわちHIVです。つまり、エイズとはHIVに感染したために起こる病気を指します。よく混同されるのは、「HIV感染者」と「エイズ患者」。HIV感染者は、体内にHIVを持っているものの、病気が発症していない状態の人のことです。これに対し、エイズ患者はHIVの感染がもとで体を病気から守る免疫系が破壊され、体の抵抗力が弱まってさまざまな病気を発症している人を指します。それではいったいどうして、HIVが体内に入ると、エイズが発症されるのでしょうか。 人間には、カビやウイルスなどの病原体と戦う「免疫(抵抗力)」というものがあります。HIVは免疫のひとつ「ヘルパーT細胞」に入り込み、その中で増殖していきます。増殖したHIVはヘルパーT細胞を破壊して外に飛び出し、また別のヘルパーT細胞に侵入します。ヘルパーT細胞は、抵抗力を司る、いわば司令官のようなものです。それが次々と破壊されていくのですから、体全体の免疫がはたらかなくなってしまうのも無理はありません。 その結果、健康なときにはなんでもない細菌・ウイルス・カビなどの攻撃に耐えられず、さまざまな感染症にかかり、神経障害やカポジ肉腫、悪性リンパ腫など悪性腫瘍に侵されることになります。 世界エイズデーにちなんで~「レッドリボン」とは?~ レッドリボン(赤いリボン)はもともとヨーロッパに古くから伝わる風習のひとつで、病気や事故で亡くなった人に対し追悼の気持ちを表すものです。エイズが社会問題化し始めた1980年代の終わりごろから、エイズに苦しむ人々への理解と支援を意思表示するシンボルとして使われはじめ、今ではUNAIDS(国連合同エイズ計画)のシンボルマークにも採用されています。レッドリボンは、エイズに偏見をもっていない、エイズとともに生きる人々を差別しないというメッセージ。レッドリボンを身につけ、エイズをみんなで考えていきましょう。 どんなときに感染するの?3つの感染経路 HIVは、血液、精液、膣分泌液、母乳のいずれかによって感染します。したがって、感染経路は以下の3つです。 感染経路1:性行為による感染 膣の中や性器、尿道、肛門の中などの粘膜は、傷などもつきやすく、ウイルスが侵入しやすい状態になっています。また、性交時は摩擦などで皮膚が傷ついたり、炎症を起こしたりすることがあり、HIVに感染しやすいようです。性感染症にかかっているときは、性器や粘膜に炎症が起こっている可能性が高く、さらに感染リスクが上がります。 感染経路2:血液による感染(輸血、非加熱製剤、針刺し事故・注射器の回し打ち) HIVが入り込むヘルパーT細胞は、血液成分のひとつです。したがって、血液による感染の危険度はとても高くなります。使用ずみの注射器には、HIVの含まれた血液が残っている場合があるため、回し打ちなどはしてはいけません。また、HIV検査目的で献血をすれば、輸血による感染が広がる可能性があります。絶対にやめましょう。 感染経路3:母子感染 抵抗力の弱い赤ちゃんは、母親の血液、母乳により、HIVに感染してしまうことがあります。危険な段階は3つ。まずは子宮内にいるときです。赤ちゃんに母親の胎盤を経由してHIVが感染します。次に出産時。産道を通るときに血液から感染します。また、母乳にもHIVが含まれるため、母乳をあげることで感染しやすくなります。 もっとも危険度が高いのは出産時です。したがって、母親がHIV感染者の場合は、帝王切開で出産をおこなうと感染確率を抑えることができるとされています。 エイズの治療法はあるの? HIVを体内から完全になくす治療法は現在まだありませんが、HIVの増殖を抑えてエイズの発症を遅らせることで、長期にわたり問題なく生活することはできます。HIVに感染していないか調べるには、HIV抗体検査を行います。感染していた場合、複数の抗HIV薬を投与する多剤併用療法(HAART)によって、HIVの増殖を抑えます。 日本では、新たにエイズを発症する患者が増加傾向にありますが、これは欧米の先進諸国ほどHIV抗体検査が普及していないため、治療が遅れることが原因だと考えられます。検査は、全国の保健所で匿名で受けられ、料金もかかりません。早期発見・早期治療のために、HIV抗体検査の普及が急がれます。 クイズ:HIVに感染するのはどんなとき? HIVは感染力が弱く、感染経路も限られているため、予防は可能です。日常生活では、性行為以外に感染することはまずありません。だからといって、HIVを甘く見てはいけません!正しい知識を身につけて、適切な対応をするようにしましょう。 さて、以下の行為は感染するでしょうか?YES、NOで答えてください。 問題 YES NO 1. 握手やキスでは感染しない Yes No 2. 同じ食器や便器を使うと感染する Yes No 3. 蚊やダニがいる場所に一緒にいると感染する Yes No 4. 1回や2回のセックスなら大丈夫 Yes No 5. セックスの際、経口避妊薬ピルやペッサリーを使えば大丈夫 Yes No 6. かみそりを共有すると場合によっては感染することもある Yes No 7. 歯ブラシを共用すると感染する危険もある Yes No 8. お風呂やプールに一緒に入ってもかまわない Yes No 回答:1.YES 2.NO 3.NO 4.NO 5.NO 6.YES 7.YES 8.YES コンドーム(男性用)は絶対なの? 感染を防ぐためにも、セックスの際はかならずコンドームを着けるようにしましょう。ただし、それだけで完璧に予防できるわけではありません。コンドームに亀裂や穴があれば、そこから感染しないとも限らないからです。使用前には必ず明るい場所で確認しましょう。また女性は性交時に接触する(膣と子宮頸部の)粘膜の表面積が広いため、男性よりも感染しやすくなります。男性まかせにせず、女性向けコンドームを使うことをおすすめします。 公開日:2005年11月28日
性感染症はかつては「性病」といわれ、遊んでいる人がかかる特殊な病気というイメージが強かったのですが、今日ではありふれた感染症のひとつにすぎません。危険な性行為をしないから「自分だけは大丈夫」などと安易に構えず、ぜひ正しい知識を持っておきましょう。 目次 性感染症(STD)って何? 性感染症(STD)の患者数が増加中! 女性の方が感染しやすい? どうする予防?どうなる治療? あなたは大丈夫!?性感染症(STD)の症状をチェック 性感染症(STD)って何? あなたは「STD」という言葉を聞いたことがありますか?「性感染症(STD=sexually transmitted diseases)」のことで、セックスによってうつる病気全般をいいます。かつては「性病」と呼ばれ「遊んでいる人の病気」というイメージが強かったのですが、現在はインフルエンザなどと同じ感染症のひとつと考えられ、セックスをしたことのある人なら誰でもかかる可能性のある病気となっています。 性感染症の範囲はとても広く、クラミジア、性器ヘルペス、淋菌感染症、毛じらみ・疥癬(かいせん)、子宮頸がんの原因になる尖形(せんけい)コンジロームやウイルス性肝炎(B型・C型肝炎)などがあり、さらにHIV感染症(エイズ)や白血病の一種(ATL)まで含まれます。 「新宿さくらクリニック」院長・澤村正之氏によると、「性感染症とはもともと感染力が弱い病原体が、濃密な接触によって感染していくもの」だといいます。 「概念的には性感染症の病原体は特定の『誰か』に寄生するのではなく、セックスという『行為』に『寄生』することによって、古来から今日まで生き残り、世界中に広まってきたともいえるのです。人類存続にかかわる行為に寄生する病気だと考えると、恐ろしいですよ」。 危険な性行為をしないから「自分だけは大丈夫」などと安易に構えず、ぜひ正しい知識を持っておきましょう。 性感染症(STD)の患者数が増加中! 性感染症の罹患者のピークは女性では20代前半で人口の2.6%、男性では20代後半で人口の1.8%となっており、この世代では「ありふれた病気のひとつ」と言われています(罹患者とは医療機関を訪れて診断のついた人。無症状の感染者はこれの5倍に相当すると推定されます)。 性感染症が増え続けている原因は次のことが考えられます。 複数のパートナーを持つ男女が増えていることやオーラルセックスの一般化 避妊法や性感染症の予防について無関心or知識を持っていない 感染しても症状が現れないため(クラミジアなど)知らないうちに感染者を増やしたり、自分の病状を進行させたりしてしまう 出典:2001年度STD・センチネル・サーベイランス報告 注:統計にでているのは調査医療機関で診断がついた患者のみ。無症状の感染者はこれの約5倍に相当すると推定される。 女性の方が感染しやすい? 2001-2002年の全国統計によると、全年齢層で性感染症の男女比は女性が男性の1.2倍、クラミジアについては1.9倍。20代に限れば、全STDで1.5倍、クラミジアは2.4倍でした。さらに10代では男女差がもっと顕著で、全STDで1.8倍、クラミジアは4.1倍にものぼります。女性は性器の内側が感染経路となる粘膜で覆われているため、感染しやすくなっています。さらに性器が体の奥の方にあるため感染に気づきにくく、進行しやすいこともあります。男女ともに性感染症を放置しておくと不妊症や果てはガンの一因ともなり、問題は深刻です。女性の場合は特に流産の危険性もあります。 出典:2001年度STD・センチネル・サーベイランス報告 注:統計にでているのは調査医療機関で診断がついた患者のみ。無症状の感染者はこれの約5倍に相当すると推定される。 どうする予防?どうなる治療? 性感染症はとにかく予防が肝心。そのためには「コンドームを使用すること!」につきます。妊娠を望まないセックスなら、インサート時だけでなく最初から最後までコンドームを装着しておきましょう。 また、セックスパートナーが複数いたり、出血を伴うセックスをすることは、リスクの高い行為と心しておきたいところです。 最近の性感染症の検査は痛くなく簡単に済む方法も普及してきていますし、もしも陽性と診断されても専門医によってきちんと処方された薬を服用することでほとんどの性感染症は治せます。「症状が軽いから」とか「恥ずかしいから」という精神的な抵抗感から病院に行かずに病気を進行させてしまうことだけは避けましょう。 あなたは大丈夫!?性感染症(STD)の症状をチェック 以下の点に心当たりがあるなら、迷わず専門医に診せることをおすすめします。 ●男女ともに 性器付近がかゆい、痛みがある ⇒ 毛じらみ・疥癬、性器ヘルペス 性器付近に水疱やイボ、しこりがある ⇒ 尖形コンジローム、性器ヘルペス 発熱や喉の痛みが繰り返し起こる ⇒ 淋菌やクラミジアの咽頭感染 足の付け根にぐりぐりがある ⇒ 梅毒、ヘルペス、エイズ 性器に痛みかゆみのない湿疹ができてすぐ消えた ⇒ 梅毒 ●特に男性 排尿時に痛む、尿道から膿が出る ⇒ クラミジア、淋菌感染症 ●特に女性 おりものの色や量、においが普段と違う ⇒ クラミジア、淋菌感染症、カンジダ性膣炎(※厳密にはカンジダ性膣炎は性感染症とはいえないが、性感染症があるとかかりやすい) 膀胱炎を繰り返す ⇒ クラミジア、淋菌感染症 公開日:2002年6月24日
性感染症(STD)の病気の範囲はとても広いものですが、今回は特に流行して問題の多い病気に絞ってご紹介します。 目次 クラミジア 尖形(せんけい)コンジローム 淋菌感染症 性器ヘルペス 毛じらみ・疥癬(かいせん) HIV感染症(エイズ) クラミジア クラミジアとは、セックスによりクラミジア・トラコマティスという病原体に感染する病気です。潜伏期間は数日ですが、感染した病原体が少ないと1ヵ月ぐらい後に発病することもあります。 男女とも症状が軽いため気づかないことも多く、そのため感染を拡げてしまいます。特に女性の場合は症状が出にくいために、はじめは子宮の頸管部に起きた炎症(子宮頸管炎)が子宮内膜、卵管、腹腔内へと体の奥へ奥へ広がる恐れがあります。女性に比べると男性は症状が出やすいのですが、放っておいても自覚症状が消えてしまうので、治療を受けなかったり勝手に中断してしまう人が多く、これも体の奥に入り込み、前立腺に膿を持ったり、睾丸に感染して不妊症の原因になったり、周囲に感染を拡げる原因となっています。 ●クラミジアの治療法 感染初期であれば、適切かつ十分な抗生物質の飲み薬で通常2週間ほどで治療可能です。ただし、パートナーが一緒に治療しなければ、治ってもすぐうつされてしまうので要注意です。また、複数のパートナーがいる場合は、「性行為をするグループ全員」の治療をしなければなりません。自覚症状が消えても投薬の中止は専門医の判断にゆだねることが大切です。勝手に治療を中止してはいけません。 尖形(せんけい)コンジローム セックスによってヒトパピローマウイルス(HPV)に感染して発症します。男女ともに性器から肛門にかけて先の尖った白~ピンク色の細かいイボができます。痛みやかゆみはありませんが、増殖するとイボが群がってカリフラワー状になります。ほかの性感染症と合併しやすいのも尖形コンジロームの特徴です。 悪性型のHPVは女性の場合子宮頸がん、男性の場合陰茎がんの原因に関わるともみられており、きちんと治療することが大切です。 ●尖形(せんけい)コンジロームの治療法 患部を電気で焼いたり、凍結させて取り除いたりする外科的手術による方法と、患部に軟膏を塗る方法があります。日本では軟膏の保険認可がないことと効果が不確実なのでレーザー照射を含む外科的手術や冷凍凝固が主流となっています。再発しやすいので根気よく治療を続けることが大切です。 あなたは大丈夫?尖圭コンジローマセルフチェック 淋菌感染症 淋菌と呼ばれる細菌によって感染、1回のセックスでうつる確率は50%とも言われ、かなり強い感染力を持つ性感染症が淋菌感染症です。女性の場合、症状が出にくいので感染が進みやすく、炎症が子宮の奥や卵管に進むと不妊の原因になります。感染したまま出産すると産道で赤ちゃんに感染し、失明させることもあります。 抗生物質の普及で一時は減りましたが、1998年頃から男女ともに増加の傾向が見られます。オーラルセックスの一般化により、咽頭感染が目立ってきているようです。中年以降の男性の淋菌感染症のほとんどは風俗店での感染といっても過言ではありません。 ●淋菌感染症の治療法 適切かつ十分な抗生物質を4-7日投与するが、治癒の判定は専門医にゆだね、自己判断で投薬の中止をしてはいけません。筋肉注射が有効な場合もあります。近年抗菌剤が効かない耐性淋菌も増加していて、有効な治療薬が短い期間で変わってしまうため、たとえ大学病院といえども対応しきれないこともあります。第一線の経験豊富な専門医を選びたいものです。 性器ヘルペス 性器ヘルペスとは、単純ヘルペスウイルスによって感染するクラミジアに次いで多い性感染症です。症状の出方は2通りあり、激しい痛みと発熱を伴う「急性型」と、感染後再発を繰り返す「再発型」があります。再発の場合には自覚症状が軽いので、知らず知らずのうちにウイルスを放出している恐れがあります。自分の手についたものが目に入ると角膜炎などを起こす危険があります。 ●性器ヘルペスの治療法 高熱や激痛などの重症のものには抗ウイルス剤の注射や飲み薬を、水ぶくれや潰瘍には軟膏が処方されます。通常は1-2週間のうちに症状が治まりますが、体からウイルスがなくなるわけではないので完治は難しく、体力が落ちているときに再発しやすいようです。 原因は、症状は?ヘルペスはこんな病気 毛じらみ・疥癬(かいせん) いずれも寄生虫によって感染します。毛じらみは吸血虫で、陰毛や腋毛などの体毛について吸血・産卵し激しいかゆみを引き起こします。減少していたものの、90年代半ばから再び増加の傾向にあります。疥癬はヒゼンダニというダニによるもので、陰部に限らず全身に激しいかゆみがあらわれます。 ●毛じらみ・疥癬(かいせん)の治療法 毛を剃ることが治療の第一歩となります。成虫は肌から離れると数時間で死んでしまいますが、卵は生き続けます。駆虫剤を使うが、とにかく根気強い治療が必要です。下着やシーツなど、洗濯して乾燥機にかけたり、寝具はよく干して掃除機を何回もかけるようにします。 HIV感染症(エイズ) HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染して起こる病気です。発病するとカリニ肺炎、カポジ肉腫という腫瘍などに侵され、全身が衰弱していきます。1回のセックスでうつる確率は0.1~1.0%と感染力はさほど強くはないものの、感染後約10年間の潜伏期は症状が出ないため、見逃してしまうことも多いようです。 日本に上陸したときは同性愛者の病気という偏見があり、その後薬害エイズの事件が話題になりましたが、エイズは異性間のセックスで感染していく「性感染症のひとつ」でもあることを忘れてはいけません。こうした認識の欠如からか、欧米諸国でのエイズ感染者数は年々減少しているのに、日本ではいまだに増加し続けています。 保健所などで無料無記名の検査が受けられるので、結果を怖がって検査しないことがもっとも危険です。積極的に抗体検査を受けましょう。HIV感染症と合併しやすい性感染症は梅毒、尖形コンジュローム、性器ヘルペス、クラミジア性尿道炎の順に多いとされています。逆にいえばこれらの病気にかかったら、HIV感染の危険も考えてHIV抗体検査をするよう心がけましょう。 ●HIV感染症(エイズ)の治療法 感染しているかどうかは血液検査でわかります。現在特効薬はありませんが、抗ウイルス剤を飲むことで発症を遅らせることができます。いい薬も開発されているので根気よく治療を続けながら特効薬の開発を待つことも可能です。 ストップ!エイズ「感染しない・させない」基礎知識 公開日:2002年6月24日
実際に治療に当たっている澤村正之先生に、医療現場から見た性感染症(STD)の実態についてうかがってきました。近年流行の性感染症や、検査や治療の方法、治療に保険が使えるかどうかなど具体的なアドバイスをご紹介します。 目次 性感染症(STD)からあなたとパートナーを守るために Q. 性感染症全般の患者数が年々増加していると聞きましたが? Q. 最近特に注目されている性感染症(STD)ってありますか? Q. 性感染症(STD)について、つい他人事だと思ってしまうのですが… Q. 性感染症(STD)から自分自身とパートナーを守るために知っておくべきことと実行すべきことを教えてください! Q. 性感染症(STD)の検査や治療ってどんなことをするのでしょうか? Q. 性感染症(STD)の検査や治療に保険は使えるんですか? 性感染症(STD)からあなたとパートナーを守るために 澤村正之先生 「今そこにあるSTD」。新宿さくらクリニック院長で北里大学医学部泌尿器科非常勤講師も勤める澤村正之先生に、最前線の医療現場から見たSTDの実態についてうかがって来ました。厳しくもほんわかしたムードの澤村先生、とても気さくにお話してくれました。 Q. 性感染症全般の患者数が年々増加していると聞きましたが? 「若い女性の間で急増しています。例えば20代前半の女性患者の割合は10万人に2600人、まだ症状に現れていない予備軍はその5倍の13,000人にのぼるという計算があります。症状が出ている人、出ていない人を合わせると15%を超えてしまいますね。 10代女性の感染率増加も深刻です。STDは生殖年齢に関係ある病気だと考えれば、やっぱり女性の方がませているということでしょうか。その一方、予防に対する意識&知識を持たないので、感染してはうつしていくということをあちこちで繰り返しているのです。STDは放置しておくと不妊症や、場合によってはがんの原因になったり、HIVとの合併症の危険性もあり、社会的に大変重要だと思っています。 またあまり知られていないことですが、1993年に男性機能補助剤の使用が解禁になって以降、実は55歳以降の男性のSTD感染率もアップしているのです。高齢者の性生活は重要な問題ですが、STD感染についてももっと注意を払って欲しいと思います。」 Q. 最近特に注目されている性感染症(STD)ってありますか? 「ひとつは耐性淋菌の感染者が増加していること。淋菌の学術名はナイセリアゴノレアといいます。淋菌の親戚菌・ナイセリア属はもともと喉にいる常在菌なのですが、風邪薬等でもともと薬剤耐性を身につけていたんですね。そこへオーラルセックスの一般化で淋菌のフィールドが喉にも広がり、ナイセリア属の薬剤耐性遺伝子を受け取ってしまったと考えられています。このため薬剤を投与してもなかなか除菌できなくなっているのが現状です。菌はどんどん進化していますので、教科書に書いてあるとおりに治療しても効かない事がありますので、医療現場としても厄介な問題です。さらに尖形コンジロームの原因、ヒトパピローマウイルス(HPV)の蔓延です。放っておくと女性の場合、子宮頸がんの誘引になり、危険です。」 Q. 性感染症(STD)について、つい他人事だと思ってしまうのですが… 「治療を受けに来た方でさえ、そうなんですよ。『自分はうつされた、自分は悪くないのに』という、被害者意識が強いんです。困るのは自分ですけどね。とにかく性教育の徹底から意識改革をするしかありません。熊本悦明先生(性の健康医学財団会頭)によると今でも若い女の子たちは、彼の要求でコンドームをつけないことが多い。自分から『コンドームつけて』って言えないんだそうです。きっと彼に嫌われちゃうとか、遊んでるヤツだと思われるのが怖いんですね。まだまだ男尊女卑の意識が根強いんだなあ、と思いますよ。欧米の男の子はセックスの際、自分の身を守るために当然コンドームをつけるのが常識になっているというのに。STDに対するこの認識の差は大きいですよ。この国でも生きた性教育をして行かないと、とても将来が不安ですね。」 Q. 性感染症(STD)から自分自身とパートナーを守るために知っておくべきことと実行すべきことを教えてください! 「大切なのはまず予防です。そのためには何しろコンドームを使うこと!インサートだけがセックスだと思っていたら大間違い。一緒にべたべたすることがセックスなんだから(笑)、最初から最後までコンドームをしてください。コンドームなしのセックスは、ハイリスクだと心しておくべきです。 もし病気にかかったら、必ず専門医に診せ、セックスパートナー(達)と一緒に治療を受けてください。STDのウイルスたちは本当に狡猾なやつらで、感染後早い時期に自覚症状を消して潜伏するんです。そのため治ったと思って治療をやめてしまい、また感染者を増やしてしまう人が多いのです。絶対に治療を途中でやめないこと!」 Q. 性感染症(STD)の検査や治療ってどんなことをするのでしょうか? 「患者さんのプライバシーに配慮して、診断・治療を進めますから安心してください。検査も意外なくらい簡単にすみますよ。治療法や見通しを最初に伝えますし、顕微鏡所見を患者さんと一緒に見ながら説明したりもします。」 Q. 性感染症(STD)の検査や治療に保険は使えるんですか? 「STDの治療には保険がきかないと誤解している人がいます。確かに今の健康保険が完璧とはいえませんが、健康保険の範囲内でほぼ必要な検査と治療は受けられます。 まずは受診から 『いくらかかるかわからないから怖いので病院にこなかった』と言う人がいますが、健康保険を使えば治療費の3割だけ払えばいいので負担は軽くてすみます。こじれてからではかえって治療費は高くなります。それに、健康保険を使っても患者さんの情報が外部に漏れることはない仕組みになっていますので、そのような心配をすることもありません。事前に医療機関に問い合わせて、大まかな治療代を聞いておくのもよいでしょう。そうすれば親切かどうかもわかるし。 ただし、一流の薬や検査を使えばそれなりになります。安ければいいってものでも ありません(笑)。それからもうひとつ。後で保険証を持ってこられても、清算はできないんです。ですから、必ず!保険証持参で来院してくださいね!」 「STDを放置しておくことは、遺伝子に対する罪です。子孫を根絶やしにしてしまう可能性をはらんだ、民族の問題なんですよ」という澤村先生。日々たくさんの患者さんを診て、最新の治療のあり方を研究し続けています。 STDについて知りたい、もしかしたら…?という時は、一度クリニックを訪ねてみてはいかがでしょうか。 監修:新宿さくらクリニック(皮膚科・泌尿器科・内科)院長 澤村正之 公開日:2002年6月24日
「尖圭コンジローマ」というちょっと耳慣れないこの病気。実は、性感染症(STD)のひとつで、性交渉によって感染する可能性があり、性器や肛門のまわりにイボができる病気です。 病気の正体は? 尖圭コンジローマの原因は、主に性交渉によって感染するヒトパピローマウイルス(HPV/ヒト乳頭腫ウイルス)という名前のウイルスにあります。皮膚や粘膜のほんの小さな傷口から侵入して感染してしまうのです。 また、この病気は潜伏期間が長いうえに、その期間も人によってバラバラ。感染してから症状がでるまでに、3週間から8ヵ月かかるといわれています。そのため、病気に気づいたときには、誰から感染したかわからないなんて困ったこともあります。 気になる症状は? 尖圭コンジローマの症状は、性器や肛門のまわりに白~ピンクまたは褐色のイボができることです。このイボの形にちょっと特徴があります。イボは、例えていうなら、乳首(乳頭状)やカリフラワー、鶏のトサカのような、先端が少し尖っている形をしています。そのため、名前に「尖圭(せんけい)」とついたようです。 やっかいなことに、この病気は潜伏期間が長い上に、イボ以外の痛みやかゆみといった自覚症状がほとんど出ません。だから、感染に気がつきにくく、放っておかれることが多いようです。でも放っておくと、イボが増えたり大きくなったりすることもあります。また、まれに悪性型のウイルスが見つかることもあります。 患者数は、年々増加傾向 日本で年間10万人あたり30人程度発症しているといわれている尖圭コンジローマ。医療機関を受診して見つかるケースは年々増加する傾向にあります。ただ、自分が感染していることに気づいていない人も多いと考えられており、患者数は報告されている人数よりも、ずっと多いと推測されています。 出典:国立感染症研究所 感染症情報センター・感染症発生動向調査 尖圭コンジローマ 定点(医療機関)当たり報告数の推移 過去10年間との比較グラフ(月報)より2000年1月から2004年9月までのグラフに改変 あなたは大丈夫?尖圭コンジローマセルフチェック
尖圭コンジローマの症状はイボがあるかどうかです。ですから、尖圭コンジローマにかかっているかは、自分でも確かめることができます。「自分は大丈夫」と思っているあなたも一度はチェックしておきましょう。 病気に気づくために、尖圭コンジローマチェック 予防と治療の第一歩は、病気に気づくことです。当てはまる項目がないかどうか、チェックしましょう。 性器の周りにイボがある 肛門の周りにイボがある 白 ピンク色 褐色(黒っぽい茶色) 先が尖っている 乳首に似ている 鶏のトサカに似ている カリフラワーに似ている それぞれの項目に当てはまっていたなら、尖圭コンジローマを疑ってみた方がよさそうです。 病院で診てもらう場合、女性なら婦人科、男性なら泌尿器科で診てもらうことができます。また、皮膚科や性病科でも診てもらうことができます。 放っておくとどうなる? 痛くもかゆくもないから、放っておかれることも多い尖圭コンジローマ。だからといって、この病気をあなどらないように! 尖圭コンジローマの原因となるヒトパピローマウイルスは、ほとんどの場合良性型ですが、極めてまれに悪性型のウイルスが見つかることがあります。悪性型のウイルスは子宮頸(けい)がんや陰茎がんとの関係が疑われています。 さらに女性の場合、感染したまま出産すると産道で赤ちゃんに感染してしまうこともあります。症状がなく気がつきにくい病気だからこそ、放っておかずに治療をしっかりしておきましょう。 尖圭コンジローマにかかったかも…どうする?
「もしかして、尖圭コンジローマにかかったかも」、そう心配になってもまわりに相談するのは勇気がいることですね。でも、尖圭コンジローマは相手にとてもうつりやすい病気。この病気は誰にでもかかる可能性があるということを忘れないでください。 どんな治療をするの? 検査は? 尖圭コンジローマは専門医がイボを見ただけで診断できるため、特別な検査は行われません。ただ、まれに悪性の可能性があるため、イボを切り取って確認する場合もあります。 治療法は? 尖圭コンジローマの主な治療法は、手術と塗り薬です。イボのある場所や数、大きさ、また妊娠中かどうかなどによって、それぞれに適した治療法が行われます。 ●手術でイボを取り除く方法(一般的) メスで切り取る(外科的切除) 液体窒素(-190℃)で何回か凍らせてイボを取り除く(冷凍療法) 電気メスでイボを焼く(電気焼灼) レーザー光線でイボを取り除く(レーザー蒸散) ●塗り薬による方法 2004年10月現在、日本には、尖圭コンジローマの薬として正式に認可されたものはありません。医師の判断で、抗がん剤の塗り薬が使われているのが現状です。ただ治験中の薬もあり、その有効性と安全性が検証されているところですので、日本で治療薬が登場するのも、そう先の話ではないでしょう。 度重なる再発に注意! 現状では、尖圭コンジローマの原因となるウイルスを、体内から完全になくすことは難しいようです。手術でイボを取り除いても、そのまわりにまだウイルスが残っていたりすると、再発してしまいます。治療には根気がいりますが、症状が出たときには、そのつど対処することが大切です。さらにイボを取り除いてから少なくとも3ヵ月間は、再発がないかチェックすることもお忘れなく! パートナーとの関係について考えよう 「尖圭コンジローマのことを相手に打ち明けると、2人の関係がギクシャクしてしまうかも」と不安に思う人もいるかもしれません。でも、尖圭コンジローマは相手にとてもうつりやすい病気です。感染がわかったら、大切な人を守るためにも病気のことをきちんと伝え、相手にも必ず検査・治療を受けてもらうようにしましょう。
「ヘルペス」とは、「ヘルペスウイルス」というウイルスが皮膚や粘膜に感染して、水ぶくれができる病気のことです。帯状疱疹、口唇ヘルペス、性器ヘルペスがよく知られています。実は、ヘルペスウイルスはごく一般的なウイルス。気になるその正体や症状について紹介します。 目次 ヘルペスの正体はウイルス ヘルペスの気になる症状:帯状疱疹 ヘルペスの気になる症状:口唇ヘルペス ヘルペスの気になる症状:性器ヘルペス 再発しやすい病気 ヘルペスの正体はウイルス 「ヘルペス」は、「ヘルペスウイルス」というウイルスが皮膚や粘膜に感染して、水ぶくれができる病気のこと。これだけ聞くと、なんだか少し怖い気もしますが、実はヘルペスウイルスはごく一般的なウイルスです。くちびるのまわりに水ぶくれができる口唇ヘルペスの場合、2012年には、世界人口の67%がウイルスに感染していたというデータ もあるほどです。しかし、そのほとんどは症状がなく、大半が感染していることに気付いていません。※参考:単純ヘルペス、性器ヘルペス(ファクトシート) 2017年1月 WHO(厚生労働省検疫所FORTH) ヘルペスウイルスは、感染すると症状が治った後も人の細胞の中にじっと隠れていて、普段は症状が出てこないのが特徴です。ところが風邪や疲れなどで体の抵抗力が落ちると、突然出てきて暴れ出してしまいます。例えば「帯状疱疹」は、子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルスが長い間体内に隠れていた後、突然暴れだしてしまう病気です。 ただ、一口に「ヘルペス」といっても症状はいろいろあります。ヘルペスウイルスはいくつかの種類があり、それによって引き起こされる病気も違ってきます。 主なヘルペスウイルスと病気 ●水痘・帯状疱疹ウイルス 水痘(水ぼうそう)、帯状疱疹 ●単純ヘルペスウイルス1型 口唇ヘルペス、ヘルペス性歯肉口内炎、ヘルペス性角膜炎、カポジ水痘様発疹症、性器ヘルペス、ヘルペス性脳炎など ●単純ヘルペスウイルス2型 性器ヘルペス、臀部ヘルペス、ヘルペス性髄膜炎 参考サイト:Herpes.jp ヘルペスの気になる症状:帯状疱疹 「帯状疱疹」は文字通り、お腹から背中にかけて帯状に水ぶくれが現れる病気です。一般的には体の左右どちらか一方に出ますが、病気などで免疫力が低下しているときには帯状のものに加えて水ぼうそうのような水ぶくれが全身に出る場合があります。さらにウイルスは神経を通って皮膚に出てくるため、激しい痛みを伴うことが多いのも特徴のひとつ。 はじめの症状はチクチクした痛み。数日するとその部分が赤くなって、水ぶくれができてきます。体のどこにでも症状は出ますが、胸から背中にかけてが一番多く、顔や手足、お腹やおしりの下などにも現れることもあります。 痛みが始まってから、かさぶたになって治るまで約3週間~1ヵ月くらいかかり、痛みもその頃に消えることが多いようです。しかし、たまに「帯状疱疹後神経痛」といって、皮膚の症状が治った後もかなり長期間痛みが続くことがあるので注意しましょう。 なお、2016年には水ぼうそうワクチン(水痘ワクチン)を「50歳以上の者に対する帯状疱疹の予防」を目的に接種することが認められました。このワクチンを接種すると、帯状疱疹になる恐れが低くなり、発症しても症状が軽くなります。ただし、免疫機能に明らかな異常のある人や免疫を抑制する治療を受けている人はワクチンを接種できません。水ぼうそうにかかったことのある50歳以上の方は、元気なときにワクチンを接種しておくとよいでしょう。 ヘルペスの気になる症状:口唇ヘルペス 「口唇ヘルペス」という名前は知らなくても、風邪で体調を崩したときや疲れがたまったときなどに、くちびるの辺りにできるデキモノに悩んでいる人は多いのではないでしょうか?「風邪の華」や「熱の華」ともよばれるこの症状が、実は「口唇ヘルペス」です。日本人の10人に1人が経験したことがあるといわれるほど一般的な病気です。 はじめ、くちびるや口の周りが赤くなり、数日後小さな水ぶくれができます。ムズムズとしたかゆみや、皮膚のほてり、ピリピリとした痛みを感じることもあります。大抵、水ぶくれは2週間くらいでかさぶたとなって治ることが多いようです。 ヘルペスの気になる症状:性器ヘルペス 性器やお尻の周辺の皮膚に赤いブツブツや水ぶくれ、ただれができる病気です。通常、性交渉などで感染してから2日~12日で発症します。はじめてかかったときには強い痛みや発熱をともなう場合がありますが、再発の場合は小さな水ぶくれやただれができるだけの、軽い症状ですむことが多いようです。また、感染しても症状の出ない人や症状に気づいていない人もいるため、自分では気づかないまま人にうつしてしまうこともあります。 再発しやすい病気 帯状疱疹は、一度かかったら、再発することはまれ。しかし、口唇ヘルペス・性器ヘルペスの厄介なところは、なんといっても再発しやすいこと。治ったと思っても、ウイルスは神経細胞のなかにひっそりと隠れていて、再び暴れだす機会をじっと待っています。再発を防ぐためには、日ごろから体調管理や心身のリフレッシュを心がけ、ウイルスに負けない体をつくることが必要です。 もしヘルペスにかかったら?何科に行くの? ヘルペス関連記事の一覧はこちら ヘルペスによって引き起こされる?ヘルペスとエイズの関係 HIVウイルスって?ヘルペスウイルスとの関係性もある? ヘルペスの母子間での感染について 要注意!新生児のヘルペス ヘルペスは身近に!食べ物で予防してみませんか? 性器ヘルペスとは?男女別の症状と予防法 かかったら一生完治しない!?ヘルペスの予防方法 公開日:2004/08/23更新日:2018/05/14
もしヘルペスにかかってしまったら、何科に行けばいいのでしょうか?通常、ヘルペスは皮膚科が得意とする病気です。患部が性器周辺のときは、男性なら泌尿器科、女性なら婦人科でもよいでしょう。口唇ヘルペスや性器ヘルペスでは、患部を自分自身で触ることで他の部位にうつしてしまう危険もあります。ピリピリ、チクチク、ムズムズといった前兆を感じたら、早めに受診して治療することが大切です。 目次 ヘルペスにかかったら、何科に行けばいいの? 治療法の現状 日常生活ではこんなことに注意しよう 抑制療法とは ヘルペスにかかったら、何科に行けばいいの? ヘルペスも早めの治療が大切です。早い時期に治療を始めるほど、軽い症状ですみますし治りも早くなります。通常、ヘルペスは皮膚科が得意とする病気です。患部が性器の周辺のときは、男性なら泌尿器科、女性なら婦人科でもよいでしょう。 ところで帯状疱疹の症状では神経痛に似た痛みが伴うこともあるため、初期の段階では整形外科や内科にかかる人も多いようです。しかし、帯状疱疹は、普通は一生に一度しかかからないですし、水ぶくれが出ていないと診断が難しいものです。早期に効果的な治療が受けられるように、私たち患者自身が病気の知識をきちんと身に付けておくことも大切といえそうです。 治療法の現状 ヘルペスの治療には、ウイルスの増殖を抑えるはたらきがある「抗ヘルペス薬」が使われます。抗ヘルペス薬には塗り薬と飲み薬がありますが、症状がひどい場合は入院して点滴注射をすることもあります。 ヘルペスは体内に潜んでいたウイルスが逆戻りをして症状が起きるため、飲み薬で体のもとからヘルペスウイルスの増殖を抑えることが有効といわれています。口唇ヘルペス・性器ヘルペスの再発の場合、ピリピリ、チクチク、ムズムズといった前兆を感じたら、早めに受診して治療を受けることが、早く治すための近道となります。 強い痛みに対しては、鎮痛剤などを投与することもあります。ただ、皮膚の帯状疱疹が治った後に残る帯状疱疹後神経痛の場合は少し状況が違っています。 実は、帯状疱疹後神経痛はヘルペスウイルスによって神経が破壊されてしまうことが原因です。抗ヘルペス薬はヘルペスウイルスが増えるのを抑える薬なので、ヘルペスウイルスが活動していないこの時期の痛みをとることはできません。一旦、傷ついた神経を治療するのは困難ですし、長期間の治療が必要になってしまうこともあります。だから帯状疱疹後神経痛が残らないように、できるだけ早く皮膚科で診てもらいましょう。 抗ヘルペス薬 ●バラシクロビル ●アシクロビル ●ビダラビン など 日常生活ではこんなことに注意しよう 口唇ヘルペスや性器ヘルペスでは、患部を自分自身で触ることで他の部位にうつしてしまう危険もあります。ムズムズやピリピリ感が気になって、無意識に触ってしまうこともあるため注意しましょう。 ●患部に触れた後や、外用薬を塗った後にはしっかり手を洗おう ●患部に触れた指で目を触らないこと ●コンタクトレンズを唾液で濡らして装着しないこと(目に感染して発症する角膜ヘルペスは、失明する危険性があり要注意) ●水ぶくれは破らないこと 抑制療法とは 性器ヘルペスは再発しやすく、年に6回以上再発を繰り返す人には「抑制療法」と呼ばれる治療も認められています。抑制療法とは、頻繁にヘルペスの再発を繰り返す場合に、再発を抑えるため、症状が出ていないときにも抗ヘルペス薬を使用し続ける方法です。度重なる再発は身体的苦痛に加え、人にうつすことへの不安など精神的にもさまざまな苦痛を伴います。このような苦痛や悩みを軽減することもできますので、再発に悩んでいるようであれば医師に相談しましょう。 タオルやお風呂でうつる?ヘルペスQ&A 公開日:2004/08/23更新日:2018/04/23
ヘルペスを他人には相談しにくい人も多いのではないでしょうか。今回は、あなたのヘルペスに対する不安や悩みについてお答えします。 目次 Q. 私のヘルペスはどこからきたの? Q. 再発を繰り返すけど、治らないの? Q. タオルやお風呂でうつるの? Q. ヘルペスウイルスに対抗する力が弱く、特に気をつけたい人は? 私のヘルペスはどこからきたの? 口唇ヘルペスや性器ヘルペスを引き起こす単純ヘルペスウイルスは、主に直接接触することで感染します。しかし感染力が強く、直接患部に触れてなくても、単純ヘルペスウイルスがついたタオルや食器で感染するケースも。したがって、家族、恋人など、ごく身近で感染するケースが多く見られます。 一方、帯状疱疹は子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルスが原因です。帯状疱疹を人にうつすことはごくまれ。ただ発症しているときに、水ぼうそうになったことがない人と接触すると、相手が水ぼうそうになってしまうことがあるので注意が必要です。 再発を繰り返すけど、治らないの? 一般に、口唇ヘルペスや性器ヘルペスは時間の経過とともに再発の回数や症状の程度が軽くなるといわれています。口唇ヘルペスや性器ヘルペスは体の抵抗力が落ちたときに再発しやすいのが特徴なので、日ごろからバランスのよい食事をとり、疲れやストレスをためないことが大切です。また症状が出た場合は早めの治療で症状を軽くすることができます。 再発に注意! ●風邪などの病気 ●疲労 ●紫外線 ●アルコール ●ストレス タオルやお風呂でうつるの? 症状が出ている時期は、皮膚の水ぶくれや唾液中にヘルペスウイルスが存在しているため、注意が必要です。ウイルスがついたタオルや食器などを介して感染することもあるので、共用は避けましょう。お風呂でうつる心配はほとんどありませんが、性器やおしりの周囲に症状がある場合は、まれに洋式便座でうつることがあります。 ただ、そんなに神経質にならなくても大丈夫のようです。人から離れたヘルペスウイルスは、熱やアルコール、乾燥、日光(紫外線)などに弱いため、タオルや食器はよく洗い、便座はアルコールを含んだ布で掃除しましょう。 ヘルペスウイルスに対抗する力が弱く、特に気をつけたい人は? ヘルペスウイルスに対する免疫を持っている人は、感染しても症状がでないか、発症しても軽症ですむことが多いです。しかし次のような人はヘルペスに感染すると、重症化しやすいので要注意。ヘルペスを発症しているときは、接触をできるだけ避けましょう。 ●免疫を持っていない人や新生児 ●アトピー性皮膚炎の人 ●白血病、悪性腫瘍、移植手術後など病気で、体の免疫力が落ちている人 まとめ ヘルペスは、みんながもっているウイルスが原因で起こる、ごく一般的な病気です。ただ、人によって感染後すぐに発症する場合や、一生発症しない人もいます。日ごろから心身を健康に保ち、発症したときには早めの治療を開始することで、上手に付き合っていける病気なのです。それに症状が現れたということは、「あなたの体は疲れているよ」という、ヘルペスウイルスからのサインと捉えることもできるのではないでしょうか。 こんなところにイボ?尖圭コンジローマはこんな病気 公開日:2004/08/23更新日:2018/04/23
標的にされるヘルパーT細胞 エイズは、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染によって起こります。エイズウイルスが標的とするのは、免疫の中で最も重要なはたらきをするヘルパーT細胞(CD4陽性Tリンパ球)です。エイズウイルスは、ヘルパーT細胞のDNAに紛れ込んで、自分の遺伝情報を伝えていきます。 ヘルパーT細胞は、エイズウイルスの増殖により死滅し、体の免疫システムは崩れます。その結果、感染抵抗力が弱くなり、普通の人ならかからない弱い微生物にも抵抗できず、致死的な疾患への日和見感染を起こしてしまいます。 進むエイズ治療薬の開発 エイズという病気、HIVという病原体の最も恐ろしいところは、人間の体を守るために重要なはたらきをする免疫機構を破壊する点です。 最近は発症を抑えるなど、エイズ治療薬の開発も進んでいますが、根本的な治療法は確立されていません。その一番の理由は、HIVが免疫の中枢であるヘルパーT細胞に潜んでしまうからなのです。 HIVに感染しているかどうかの診断にも、このヘルパーT細胞が指標になります。血液を採り、HIV抗体検査を行ってヘルパーT細胞の減り具合を調べます。