社会不安障害(SAD)に関する記事をご紹介します。社会不安障害(SAD)の正しい知識を身につけることで、予防や改善にお役立てください。
ADHDは Attention-deficit/hyperactivity disorderの略号で、日本語の正式病名は注意欠如・多動性障害です。その名の通りで、ADHDの患者さんは不注意で多動で衝動的な行動を採るのが特徴です。以前は子どもに特有の発達障害の一種と考えられてきましたが、今では大人の患者さんも存在することがわかっています。 目次 大人のADHDには不安障害やうつ病などが併存することが多い 個別化された介入を行うことが効果的 板倉先生ワンポイントアドバイス 大人のADHDには不安障害やうつ病などが併存することが多い Googleで「Adult ADHD」を検索すると、1億1,400万のサイトがヒットしました。因みに、COVID-19の57億サイトに比べればぐっと少なくなりますが、糖尿病(diabetes mellitus)が3,850万サイトですので、その3倍ですから大人のADHDに対する関心の高さがうかがわれます。 さて、皆さんはこの病気の正式名称をご存じでしょうか。ADHDは Attention-deficit/hyperactivity disorderの略号で、日本語の正式病名は注意欠如・多動性障害です。その名の通りで、ADHDの患者さんは不注意で多動で衝動的な行動を採るのが特徴です。以前は子どもに特有の発達障害の一種と考えられてきましたが、今では大人の患者さんも存在することがわかっています。 新規にADHDと診断された189人の患者さん(平均年齢35.2歳)を対象にスウェーデンで行われた研究では、約半数に不安障害やうつ病の併存が認められたと報告されています*1。また、健康関連QOLが低下している成人ADHD患者さんは、うつ病の症状が重い、女性である、学歴が低い、収入が少ないことと明らかな関係があることがわかったことから、この研究グループは精神疾患を伴う成人ADHD患者さんには、不安障害やうつ病が併存しないケースとは異なる特別なケアやサポートが必要と結論づけています。 個別化された介入を行うことが効果的 では、特別なケアやサポートとは具体的にはどのようなものでしょう。そのことに示唆を与えてくれる研究が、米国のコロンビア大学で行われました。この研究グループは、ADHDと診断された成人女性を対象に、7週間に亘る個別化されたプログラムでの介入の有効性について検討しています。このプログラムは、 睡眠と起床、食事の準備と食事、学校の仕事の完了、翌日のバックパックの梱包、洗濯などの毎週のタスクの完了のための一貫した時間割を作成する 環境(自宅、職場、学校、車、ハンドバッグなど)を整理するための時間を設定する 日常活動に優先順位を付けし、活動に必要な時間を正確に予測し、電子的なリマインダーを使用して活動のon/offを明確化する 内部および外部からの刺激を調整してストレスを回避する 5〜10分の計画的な休憩、毎日のレクリエーションとリラクゼーションをスケジュールし、呼吸法、歩行、瞑想などを使用して多動や落ち着きのなさを減らす ことで効果的なストレス管理スキルを身につけるというものです。この研究では、個別化介入を始めて1週後にはADHD患者さんのストレスと症状が軽減し、仕事におけるパフォーマンスと満足度が向上したと報告されています*2。 自分のやりたい仕事のパフォーマンスの向上や生活の満足度を高めることは、生きがいを感じる大切なことであり、その障害の一因であるADHDは、気が付かないでそのままにされていることも多いと思われます。周囲の人のサポートも大きな支えになるでしょう。 ■参考文献 *1:Ahnemark E, et al. BMC Psychiatry 2018; 18:223 *2:Gutman SA, et al. Am J Occup Ther 2020; 74(1): 7401205010p1-7401205010p11 公開日:2021/06/02 監修:板倉弘重先生
初対面の人との会話や職場でのプレゼンなどは誰でも緊張するもの。普通なら場数を踏んで慣れていくものですが、いつまでも慣れなかったり、緊張を超えて不安や恐怖を覚えるなどの場合は、社会不安障害(SAD)の可能性も。SADの主な症状や原因、対処法を解説します。 目次 あまりに不安で、人づきあいを避けがち 心臓バクバク、汗はダラダラ、吐き気や息切れも… 不安から逃れるための一歩を踏み出そう! あまりに不安で、人づきあいを避けがち 初対面の人との会話や、学校や職場でのプレゼンテーション、結婚式のスピーチなどは、程度の差こそあれ、誰もが緊張するもの。性格にもよりますが、これらは一般的に、場数を踏むことで徐々に慣れていくと考えられています。 ところが、いつまでも慣れず、緊張を超えて強い不安や恐怖を覚えるケースもあります。この場合、社会不安障害(SAD)の可能性が考えられます。これは、人と接するときや、人前に出て注目を浴びるときに不安や恐怖を感じる精神障害で、社交不安障害とも呼ばれます。約7人に一人がかかっているという調査報告があり、決して珍しい病気とは言えません。多くの場合、本人はほかの人より不安感が強いことを自覚していて、特に次のような状況で、不安や恐怖を感じやすいようです。 どんな状況で不安を感じる? ●上司など権威のある人と話す ●よく知らない人と話す ●人前で電話をする ●会議で発言する ●公共の場で食事をする ●誰かを誘おうとする ●人前で字を書く ●試験を受ける ●パーティーに出席する ●少人数でグループ行動をする …など 心臓バクバク、汗はダラダラ、吐き気や息切れも… 緊張を強いられる場面では誰しも、汗をかいたり、脈が速くなったりした経験があるでしょう。社会不安障害(SAD)も多くの場合、不安や恐怖による身体的な症状がみられ、日常生活にも支障をきたすようになります。社会不安障害(SAD)の原因は不明ですが、脳の神経伝達物質のバランスが崩れていることと関係があると考えられています。 体に出るのは、こんな症状 ●顔が赤くなる ●動悸がする、脈が速くなる ●息切れがする、息苦しくなる ●胸や腹が苦しい ●多量の汗をかく ●手足や声が震える ●吐き気がする ●口が渇く ●トイレが近い、または尿が出ない ●めまいがする、ふらつく …など 不安から逃れるための一歩を踏み出そう! 社会不安障害(SAD)の診断を受けると、薬物療法や精神療法などによる治療が行われます。治療せずに放置していると、精神的なストレスが積み重なり、やがてうつ病やパニック障害を併発することもあります。不安を覚える状況や症状など、上述の内容に思い当たる場合は、メンタルクリニックや心療内科、精神科などを一度受診してみましょう。 ■関連記事 うつ病、統合失調症など精神疾患が生活習慣改善により予防できるケースも 公開日:2014/04/21
本態性振戦が起こるメカニズムはまだ未解明だが、症状の改善に有効な薬がある。それがβ遮断薬「アロチノロール」だ。なぜこの薬が本態性振戦の症状の緩和に有効なのだろうか? 目次 本態性振戦の発生のカギは「交感神経」にあり!? 治療の要は「β2受容体」の遮断 リラックスすることが治療への近道 本態性振戦の発生のカギは「交感神経」にあり!? 「交感神経」は、自律神経(代謝や呼吸、消化や循環など、自分の意志とは関係なくはたらく末梢神経)のひとつ。自律神経には「交感神経」「副交感神経」の2種類があり、体を活動モードに導く神経が「交感神経」。一方、体をリラックスモードに導く神経が「副交感神経」と呼ばれている。 人は外からのストレスを受けると「交感神経」がより活発になり、体が外部からの攻撃に備えるための準備をする。 そして、交感神経から全身の器官に緊張を知らせる神経伝達物質を放出し、器官は「受容体」(レセプター)という受け皿を通じてその物質をキャッチするのだ。 受容体には、「α受容体」と「β受容体」の2種類がある。 β受容体の中には、さらに「β1受容体」と「β2受容体」があるが、β1受容体は心臓の刺激に、β2受容体は末梢血管や気管支などの拡張に関わっている。 さて、本態性振戦がどうして発生するのかは、まだよくわかっていない。しかし、何らかの原因で中枢性、末梢性の脊髄運動神経が過剰に興奮したり、交感神経の情報を受けた骨格筋の「β2受容体」が過剰に興奮し、筋肉の運動のバランスが乱れることでふるえが引き起こされると考えられている。 また、ふるえに悩む人には、「人前に出たり、緊張すると激しくなる」と訴える人が多い。これは、ストレスが加わることで、腎臓上の副腎にある「副腎髄質」という器官から交感神経を通じて「アドレナリン」という物質が放出されることにより、骨格筋のβ2受容体が刺激されてふるえが強くなるためと言われている。 治療の要は「β2受容体」の遮断 ふるえを伴う病気の治療は主に神経内科が専門。本態性振戦の場合は、薬物療法が主な治療法だ。現在では、「β遮断薬」という薬を使用して、骨格筋にあるβ2受容体にアドレナリンが到達するのを防ぐことが最も有効な治療のひとつであると考えられている。 ちなみに、本態性振戦の治療に保険が適用されるのは、「アロチノロール」のみ。 リラックスすることが治療への近道 心身を緊張に導くのが交感神経。ふるえには、この交感神経の亢進(たかぶり)が大きく関わっているため、日常生活では過度な緊張を避け、リラックスする時間を増やすことが大切だ。 人は緊張状態に長く身をおくと交感神経がはたらき過ぎ、心身をリラックスに導く副交感神経が十分に機能しなくなってしまう。その結果、交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、ふるえが起きると考えられているのだ。 毎日十分にリラックスする時間をもち、心身の緊張を解いてあげることが、ふるえを少なくするヒケツだということを覚えておこう!
近年「心の病」の治療では、特に「薬」はめざましい発展を遂げ、確実に成果を上げています。 目次 今どきの「心の病」の治し方 心と体は分けられない 主な向精神薬と、その用法・目的 今どきの「心の病」の治し方 近年「心の病」は、単に本人の性格や生い立ちだけの問題としてとらえることはほとんどなくなりました。それとともに体(脳など)にはたらきかける治療、特に「薬」はめざましい発展を遂げ、確実に成果を上げています。現在、主に行われている治療方法は以下の通りです。 精神療法 精神分析や行動療法など。主に信頼関係に基づいて「話をする」ということで治療を行います。 自らが不安感をコントロールしていく認知療法なども、最近特に注目されています。 薬物療法 ここ数十年で飛躍的な発展をとげた療法で、現在の精神医療には欠かせません。 専門医が、ドーパミンなど脳内神経伝達物質の活動や解剖学的変化について、想像をはたらかせ薬を処方します。 作業療法 ダンスやお芝居、音楽、美術など、さまざまな活動を通して、社会復帰へのリハビリを行います。 また病状を将来に向け安定させ、再発を予防します。 心と体は分けられない ところでなぜ、薬で「心」を治すことができるのでしょうか? 心も「脳」という体の一部のはたらきであることを前提として、脳生物学が発展し、向精神薬の種類は増加、そのメカニズムの解明も進みました。 うつ病患者の不安感が脳内物質のはたらきであるなら、それを薬でやわらげ、最悪の事態も避けることができます。 しかし、薬は基本的に対症療法となります。増大する不安感を抑えることはできても、不安に感じる原因そのものは取り除けません。そういった意味で、不安の原因を自ら見つめ直したり、上手に不安感を回避する方法を身につけたりする精神療法が大切となります。 しかしさらに考えると、確かに心は体の一部で、誰でも体調の悪い時には不安になるし、病気になれば落ち込みます。心の病が生活習慣病のひとつと言われるようになったのは、生活習慣の乱れの蓄積が体にも心にも病をもたらすからです。 病気になってしまった場合、不安感や焦り、無気力に取りつかれたままでは前に進めません。ときには薬という防具を身につけ、新たな生活習慣を獲得していきましょう。 主な向精神薬と、その用法・目的 心の病に処方する「向精神薬」は、機能異常(ズレ)の症状を改善・正常化するために使われるものです。 抗不安薬 ベンゾジアゼピン系 主に神経症的症状の治療に用いられる。不安、緊張、抑うつ、焦燥、睡眠障害など。うつ病の抗うつ剤と併用されることも多い。 抗精神病薬 フェノチアジン系、ブチロフェノン系、ベンザミド系など 主に精神分裂病的症状の治療に用いる。薬剤によって、鎮静効果、幻覚・妄想の改善。投与量によって、自発性を高める、引きこもりを改善する作用を有するものがある。 抗うつ薬 イミプラミン系など 意欲を高め、気分を明るくし、不安を軽減する効果がある。脳内伝達物質のノルエピネフリンやセロトニンのはたらきを高める。 抗躁薬 炭酸リチウム 高揚した気分や興奮、それにともなう誇大妄想などの症状を安定化する。抗てんかん剤にも同様の効果があるため、そちらが使われることもある。 睡眠薬 ベンゾジアゼピン系など 単独で使用する他、睡眠障害をともなっている元の病気や状態により、抗うつ薬や抗精神病薬と同時に使用することもある。 公開日:1999年3月27日
「心の病」になった時、どんな病院の何科を受ければいいのでしょうか?神経科?精神科?精神病院?クリニック?医療機関の違いを紹介します。 目次 どんな病院の何科に行けばいいの? こんな時には、この科へ! ご存じでしたか?保険証について どんな病院の何科に行けばいいの? 心の病もこじらす前に、なるべく早く専門医に診てもらわなければ、病状は重くなってゆき、治すのも大変になります。うつ病などの場合、自殺してしまう危険もあります。 しかし神経科や精神科など、普段あまり馴染みのない人も多いことでしょう。実際に行ってみると、来ているほかの患者さんも普通の内科などと特に変わりはありませんが、なんだかよく分からないままだと不安なものです。いざという時、一体どんな病院の何科に行けばいいのかもピンとこないかもしれません。 そんな不安を解消するために、具体的な治療や医療機関などをご紹介します。 こんな時には、この科へ! 心の病の病状などによって、受診する科は以下のように主に4つに分かれています。患者さんの受診のしやすさなどを考え「内科・心療内科」などと看板を出しているところも多いようです。また、神経科と精神科はほとんど同じ意味に使われているところもありますので、初めて受診する場合は、あらかじめ電話で症状を伝え、実際に何科の専門医がいるのか確認を。 ●精神科:うつ病や統合失調症などの精神病 ●神経科:ノイローゼや自律神経失調症など神経症 ●心療内科:胃潰瘍や気管支ぜんそく、高血圧、心身症など ●神経内科:脳卒中後遺症やパーキンソン病など、純粋な神経の病気 では、どんな病院・医療機関を訪ねたらいいのでしょう?各医療機関の違い、活用方法は以下の通りです。 診療所・クリニック 身近で気楽に入りやすい医療機関。入院施設がほとんどなく、通院で治療します。診療時間も、サラリーマンが通いやすいよう、夜間・休日にも行っているところも多くあります。 病院 20床以上の入院施設を持ち、外来も入院診療も行います。入院してゆっくり休むことができるようです。 保健所 国民のさまざまな健康問題に応じるため、都道府県および政令指定都市が設置している公的機関。心の病であっても同様に応じてくれます。相談は無料なので、まずは気軽に保健所を利用するのもいいでしょう。 精神保健福祉センター 各地区保健所を支援するためのもので、地区により名称は違う場合もあります。保健所と同様の機能とともに、医療費の公費負担制度など、活用できる福祉制度を教えてもらうこともできます。こちらも相談は無料です。 心理相談機関 専門の臨床心理士やソーシャルワーカーなどによるカウンセリングや相談を行っている民間機関。時間をかけた個人面接などを行います。保険が適用されず自費となり、料金もそれぞれ異なりますので、受診前に相談費用の確認を。 ご存じでしたか?保険証について 保険証を使って診療を受けると、会社にも精神科へ行ったことが分かってしまうのでは?と危惧する人もいるかもしれません。ご安心を。診断名は会社に分からないようになっています。町の小さい診療所であっても、秘密はきちんと守られます。また総合病院などで知り合いに出会っても、具体的に何科を受けに来ているのか?などということは、人には分かりません。 公開日:1999年3月27日