ヤンセンファーマ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:關口修平、以下「ヤンセン」)は、全国50歳代一般男女1236人(男女各618人)を対象に実施した「健康意識およびがん・前立腺がんに関する意識調査」(以下、本調査)の結果を発表しました。調査結果では、50歳代男性は「人生100年時代」の中盤で、自身の健康に対する意識が低く、また、前立腺がんに対する認知不足も明らかとなりました。 目次 前立腺がんは50歳以上に多く見られ、「日本人男性が一番罹患しやすいがん」 調査結果概要 『HALF TiME PROJECT』キックオフイベント登壇者の声 前立腺がんは50歳以上に多く見られ、「日本人男性が一番罹患しやすいがん」 ヤンセンファーマ株式会社は、全国50歳代一般男女1236人(男女各618人)を対象に実施した「健康意識およびがん・前立腺がんに関する意識調査」(以下、本調査)の結果を発表しました。調査結果では、50歳代男性は「人生100年時代」の中盤で、自身の健康に対する意識が低く、また、前立腺がんに対する認知不足も明らかとなりました。 前立腺がんは50歳以上に多く見られ、「日本人男性が一番罹患しやすいがん」です。近年患者数の増加が著しく、男性では2017年に胃がんを抜いて、第1位*1となっています。しかし、初期の前立腺がんはほとんど自覚症状がなく、そのため発見が遅れるケースがあり、急増する前立腺がんに対する認知不足が課題となっています。 そのため、ヤンセンは、50歳代からの男性を中心とする一般の方を対象に、前立腺がんについての正しい理解を促し、早期診断や早期治療の重要性を啓発することを目的とした『HALFTiMEPROJECT』キックオフイベントを2022年3月15日(火)に開催し、トークセッションにて本調査の結果を発表しました。 調査結果概要 ■50歳代男性は「人生100年時代」の中盤で、自身の健康に対する意識が低い 本調査では、50歳代男性の悩みや不安が高いのは、「ご両親の健康(75%)」「ご両親の老後の介護(68%)」「自身の老後の介護65%)」「今後の収入や資産の見通し(65%)」であり、「人生100年時代」の中盤における特有の悩みや不安が多く、それらと比べると「自分の健康(56%)」に対する悩みや不安は高くないことが明らかとなりました。 ■50歳代男性で前立腺がんが「男性が一番罹患しやすいがん」と認知しているのは33% 50歳代男性が将来不安な疾患のなかでは、「がん(38%)」が第2位となっています。一方で、前立腺がんについて聞いたところでは、「前立腺がんは男性が一番罹患しやすいがんである」ことを認知している50歳代男性は 33%でした。また、「前立腺がんは、初期には自覚症状がほとんどない」ことの認知は 40%、「前立腺がんは進行すると、転移する」は 39%、「前立腺がんの患者数は50歳代から増え始める」は 36%となりました。さらに、PSA検査の認知・受診状況について聞くと、1回以上受診したことがある人は 19%となりました。PSA検査を知っていて受診しない人は人は 18%おり、受診しないおり、受診しない理由としては「特に体の不調を感じないから」が理由としては「特に体の不調を感じないから」が 46%となりました。 ■女性特有がんに対する女性の意識に比べ、前立腺がんに対する男性の意識の課題が明らかに 性別特有がんに対する認知を比較すると、50歳代女性の女性特有がんの詳細に関する認知は「乳がん」で70%、「子宮がん」で63%となっている一方で、50歳代男性の「前立腺がん」の詳細に関する認知は 38%となりました。また、がんの発見のために早期にがん検診を受けたいかを聞いたところ、早期に検診を受けたい方が50歳代女性では「乳がん」で 68%、「子宮がん」で 62%に対して、50歳代男性は「前立腺がん」で 55%となっており、性別特有がんに対する認知および検診意向において男性の方が低い結果となりました。このことから、女性特有がんに対する女性の認知と比較して、前立腺がんに対する男性の男性の認知不足に課題があり、前立腺がんの社会的な啓発の必要性が改めて明らかとなりました。 ■50歳代男性が歳代男性が今後の人生で最も重要と考えているのは「健康」 今後の人生を楽しむために重要なものを聞いたところ、上位5つにあげた項目のうち、「健康」が 65%で第で第1位となりました。しかし、今後のご自身の健康に対する自信について聞いたところ、「今の健康状態をしばらく(5年くらい)維持すること」は 32%、「大きな病気にかからずに(罹患せずに)健康に過ごすこと」は 30%にとどまっており、健康を重視してはいるものの、健康に対する見通しに不安感をもっており、人生後半戦をより充実させるためにも、健康に対する意識変容が必要とされていることが分かりました。 『HALF TiME PROJECT』キックオフイベント 『HALF TiME PROJECT』キックオフイベントでは、横浜市立大学附属市民総合医療センター 泌尿器・腎移植科 診療教授 上村 博司 先生より、前立腺がんやその検診、確定診断後の治療や日常生活への影響などについて、専門的な視点からご講演いただきました。さらに、上村先生、NPO法人腺友倶楽部 理事長 武内 務 氏とともに、青山学院大学 陸上競技部 長距離ブロック監督 原 晋 氏を特別ゲストとしてお迎えし、”HALF TiME”で考える男性のカラダとココロの向き合い方をテーマに、本調査結果を踏まえてトークセッションを実施しました。 登壇者の声(当日行なわれた講演およびトークセッションより抜粋) ■横浜市立大学附属市民総合医療センター 泌尿器・腎移植科 診療教授 上村 博司 先生 「50歳代から罹患リスクが高まる前立腺がんは、初期には自覚症状がほとんどないため、発見が遅れるケースがあります。だからこそ、50歳代からはマインドセットを切り替えることが重要です。50歳代以降でPSA検査を受けたことがない方は、一度は検査を受けることをお勧めします。また、症状を感じていながら先送りにすると重症化する懸念もあります。コロナ禍でも、体に異変を感じたら躊躇せずに、医療機関を受診してほしいと思います」 ■NPO法人 腺友倶楽部 理事長 武内 務 氏 「50歳代男性は仕事で忙しくて自身の健康を見つめ直す余裕がないかもしれませんし、まだまだ元気だから大丈夫と思っている方も多いかもしれません。だからこそ、一度、自分のカラダを見つめ直す時間を大切にしてほしいと思います。50歳代からは前立腺がんについてきちんと理解し、意識して過ごしてゆくことが大切です。もし、気になる症状があった場合には、なるべく早く医療機関を受診し、相談してほしいと思います」 ■青山学院大学 地球社会共生学部 教授 陸上競技部 長距離ブロック監督 原 晋 氏 「人生の折返し地点で、50歳代男性は様々な悩みや不安も抱えていると同時に、実現したい夢や目標もあると思います。これまで人生を突っ走ってきたからこそ、これからどう生きたいのか、『今何をすべきか』を一度立ち止まって考えみてください。そのためには、健康を意識することが何より重要です。まずは、自分のカラダの現状を把握することからはじめましょう。自ら健康を管理することで、充実した人生後半戦に向かうことができると思います」 2022年3月16日プレスリリース(ヤンセンファーマ株式会社) https://www.janssen.com/japan/press-release/20220316 全調査結果詳細は以下をご参照ください。 https://www.janssen.com/japan/sites/www_janssen_com_japan/files/20220316.pdf ■前立腺がんについて 日本では2018年の罹患数が9万2,021人であり、男性にとって最も罹患の多い癌のひとつです2。新規に前立腺がんと診断される患者の約10~20%は前立腺全摘除術後も再発リスクのある局所進行性前立腺癌であり3、約5~10%は骨又は内臓等への遠隔転移を有する進行性前立腺癌であると報告されています*3, *4。 ■前立腺がんの啓発を目的としたウェブサイト「HALF TiME PROJECT」について ヤンセンは前立腺がんの啓発を目的としたウェブサイト「HALF TiME PROJECT」(https://www.zenritsusenganjanssen.jp/)を2022年1月に開設しました。前立腺がんの発症が増える50歳代は「人生100年時代」の中間地点であり、これから始まる後半戦へのスタート地点でもあります。「素敵な後半戦を迎えるために一緒に頑張ってきた自分の身体にも目を向けてあげよう」という想いから、本ウェブサイトを「HALF TiME PROJECT」と名付けました。前立腺がんの発症が増える50歳代以降の男性とそのご家族や周囲の方、また、広く一般の方を主な対象とし、「立ち止まって自分のカラダにも目を向けよう」をキーメッセージに、前立腺がんの正しい理解を促し、検診に基づく早期診断や早期治療の重要性も併せて啓発していきます。 ■ヤンセンについて ヤンセンが目指すのは、病が過去のものになる未来をつくることです。 治療が困難な病を過去のものとするために、科学の力で病に打ち克ち、画期的な発想力で多くの人々に薬を届け、真心を持って癒し、希望をお届けします。私たちはがん、免疫疾患、精神・神経疾患、ワクチン・感染症、代謝・循環器疾患、肺高血圧症の分野で貢献ができると考え、注力しています。 ヤンセンに関する詳しい情報はwww.janssen.com/japan/をご覧ください。 www.facebook.com/JanssenJapan/をフォローしてください。 ヤンセンファーマ株式会社は、ジョンソン・エンド・ジョンソンの医薬品部門であるヤンセンファーマグループの一員です。 参考文献: *1:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」(全国がん登録) https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/excel/cancer_incidenceNCR(2016-2018).xls *2:国立がん研究センターがん情報サービス がん登録・統計[homepage on the Internet].国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター; [update 2021年7月1日]. がん種別統計情報 前立腺. https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/20_prostate.html : accessed on September 1, 2021 *3:Winter A, Sirri E, Jansen L, et al. Comparison of prostate cancer survival in Germany and the USA: can differences be attributed to differences in stage distributions? BJU Int. 2017;119:550-559. *4:Onozawa M, et al. Recent trends in the initial therapy for newly diagnosed prostate cancer in Japan. Jpn J Clin Oncol. 2014;44(10):969-81 公開日:2022/05/27
2000年に登場した、手術支援ロボット「ダヴィンチ」。前立腺がんの治療法として「ダヴィンチ」を用いたロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術は、2012年には前立腺がんの保険適用となって以降、この手術法を選択する患者さんは増えています。ダヴィンチの機能やダヴィンチ手術の効果などをご紹介します。 目次 保険適用となって以降、ダヴィンチによる前立腺がん手術が増加 出血量が少なく、がん細胞を取りきる効果は開腹手術と同等 ダヴィンチ手術の費用は?手術を受けられる年齢や医療施設は? 保険適用となって以降、ダヴィンチによる前立腺がん手術が増加 前立腺がんは、65歳前後から多く発見されるようになる、男性特有のがんです。発症には、加齢や家族歴(家系)、アンドロゲンという男性ホルモンなどが関係していると考えられています。早期のうちは自覚症状がありませんが、進行すると残尿感や頻尿などが現れるようになり、骨や肺などに転移することもあります。 進行状況や高齢であることなどを考慮し、積極的な治療を行わない場合は、血液検査でPSA値などを確認する経過観察するPSA監視療法(待機療法)が行われます。積極的な治療が必要な場合は、手術による前立腺の摘出や放射線治療、内分泌療法や化学療法などの薬物療法が行われます。 前立腺がんの主な治療法 ●PSA監視療法(待機療法) ●手術(外科治療) ・開腹手術 ・腹腔鏡下手術 ・ダヴィンチ手術 ●放射線治療(陽子線治療、重粒子線治療) ●内分泌療法(ホルモン療法) ●化学療法(抗がん剤治療) 前立腺を摘出する手術の方法はかつて、下腹部を切開する開腹手術のみでした。後に、腹部にあけた小さな穴から内視鏡や電気メス、鉗子(かんし:物をつかんだり圧迫したりするハサミ状の手術器具)などを挿入し、モニターを見ながら切除する腹腔鏡下手術が行われるようになりました。これらに加わる形で2000年に登場したのが、手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いたロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術です。「ダヴィンチ手術」「ロボット手術」などと呼ばれ、2012年には前立腺がんの保険適用となって以降、この手術法を選択する患者さんは増えています。 ダヴィンチ手術の様子 出血量が少なく、がん細胞を取りきる効果は開腹手術と同等 鉗子の操作の様子 ダヴィンチ手術のがん細胞を取りきる効果は開腹手術と同等でありながら、傷口の小ささは腹腔鏡下手術と同等で、出血量はさらに少なく抑えられます。ダヴィンチを使用した手術は通称「ロボット手術」と呼ばれますが、ロボットが自動的に手術を行うわけではありません。ダヴィンチ、すなわちロボットを操作して手術を行うのは医師であり、ロボットは医師をサポートする役割を担っています。 ダヴィンチは、次の3つから成ります。 (1)患者から離れた場所に配置される操作盤「サージョンコンソール」 (2)患者の側に配置されるアーム部「ペイシェントカート」 (3)画像処理装置を格納した「ビジョンカート」 医師は、ペイシェントカートの内視鏡カメラが撮った体内の3D画像を見ながら、サージョンコンソールでアームの操作を行います。ビジョンカートは、最適な画質に処理された3D画像をサージョンコンソールに映し出すだけでなく、モニターにも2D画像として映し出します。これにより、手術を行っていない医師や看護師も、手術の様子を同時に把握できます。モニターに取り付けられたマイクによって、サージョンコンソールで手術を行っている医師と、音声でコミュニケーションをとることも可能です。 サージョンコンソール ペイシェントカート ダヴィンチにはロボットならではの、次のような機能が備わっています。 ダヴィンチの主な機能 ●高解像度の立体画像として体内を見られる3Dカメラ ●拡大して見ることができるズーム機能 ●人間の手より多い3本のアーム(内視鏡を取り付けたカメラアームを含めると計4本) ●2回転以上まわるリスト(人間における手首) ●人間の手指のようにつかむ、はがすといった動作が可能な鉗子 ●繊細な動きをサポートする医師の手ぶれ防止機能 ●手術する医師が、長時間立ったままの無理な姿勢でいる必要がない、座った姿勢での手足による遠隔操作 ダヴィンチ手術の費用は?手術を受けられる年齢や医療施設は? ダヴィンチ手術の選択を検討する患者さんの多くが懸念する点として、次のようなものがあります。疑問に思うことや不安なことがあれば、医療施設に問い合わせて確認し、納得したうえで治療を受けることが大切です。 Q. 手術の費用は? A. ダヴィンチを用いた前立腺の摘出手術は健康保険が適用されます。3割負担の場合、一般的に約40~50万円とされています。高額療養費制度(限度額を超えた分の医療費が払い戻される、公的医療保険における制度)も適用されるので、最終的な負担はさらに軽減されます。手術を受ける医療施設で、事前に確認しましょう。 Q. 手術を受けられる年齢は? A. 高齢者でも、開腹手術や腹腔鏡下手術を受けられる人であれば、受けることが可能です。ダヴィンチ手術は、開腹手術よりも体の負担が少ないと考えられています。ただし、前立腺がん以外の病気にかかっていると受けられないこともあるので、医師と相談して決める必要があります。 Q. 手術を受けられる医療施設は? A. ダヴィンチを導入している国内の医療施設は限られています。そのため、お住まいの地域の医療施設でダヴィンチ手術を受けられるかどうか、事前に問い合わせて確認しておく必要があります。日本では、100を超える施設がダヴィンチを導入しています。世界の医療施設で導入されている約3,100台のダヴィンチのうち、日本の導入数は約180台です。 前立腺がん以外の腎臓がん、子宮頸がん、大腸がんなどのほか、がん以外では心臓外科の領域でも、ダヴィンチ手術は行われています。しかし、これらの手術では健康保険適用は認められていないため、全額が自己負担となります。前立腺がん以外でも保険適用がされることが、患者側の立場からは望まれます。 ダヴィンチ手術の難点として、受けられる医療施設が限られていることがあります。ダヴィンチの登場当初は1台約3億円とされ、多くの医療施設はなかなか導入できませんでした。近年ではダヴィンチ手術の実績が認められてきたのとともに、価格も約2億5千万円に引き下げられたり、アームが1本少ない1億円台のタイプも発売されたりと、依然として高額ではあるものの、導入のハードルはいくらか下がったと言えます。 ダヴィンチは元々、遠隔地の兵士を治療するという軍事的な目的もあり、米国で開発が進められたと言われています。長距離間での遠隔操作など、今後の技術的な開発にも期待が高まります。 画像提供:インテュイティブサージカル合同会社 公開日:2014/10/14
患者さんが増えていることから注目されている「前立腺がん」。とくに中高年男性にとっては、他人ごとではないでしょう。自覚症状が出にくいため、積極的にPSA検査を受けて早期発見しましょう。 目次 前立腺がんが増えている 50歳を過ぎたら、PSA検査を受けよう 術後の後遺症を軽減する新しい治療法 前立腺がんが増えている 天皇陛下が手術を受けられたことが報道されたり、患者さんが増えていることから注目されている「前立腺がん」。とくに中高年男性にとっては、他人ごとではないでしょう。 国立がんセンターがん対策情報センターの統計によれば、その罹患率は、1975年の4.4%から、2002年にはおよそ10倍の47.1%に上昇。2001年の統計では、男性の罹患者数が多い部位の5番目となっています。 前立腺がんの主な原因には、(1)平均寿命が延びて高齢男性人口が増えた、(2)食の欧米化、(3)PSA検査の普及 などが挙げられますが、まだはっきりとわかっていない要因も多いです。 同じように中高年男性に多い前立腺の病気に「前立腺肥大症」が挙げられます。しかし、前立腺肥大症が、尿道の近くで起こるため、排尿障害などの自覚症状が出やすいのに対し、前立腺がんは、前立腺の外側に発生しやすいがんであるため、自覚症状が出にくいといわれています。 50歳を過ぎたら、PSA検査を受けよう そこで、もっとも重要なのが、早期発見です。現在は、PSAと呼ばれる腫瘍マーカーによって早期発見できる可能性が高くなっています。自覚症状が出にくいがんだからこそ、積極的にPSA検査を受けたいもの。早期発見のメリットとしては、治癒できる可能性が高まることはもちろん、年齢や、本人の希望なども踏まえたうえで、治療法を選択することができるところにもあります。 PSAとは? 前立腺の組織に対し、特別に反応するタンパク質である前立腺特異抗原のこと。血液検査によって調べることができるため、スクリーニングに使われています。 術後の後遺症を軽減する新しい治療法 前立腺がんの主な治療法 ●手術療法…前立腺を手術で摘出する ●放射線療法…外部から放射線を当てる ●内分泌療法…前立腺がんが大きくなるときに働く男性ホルモン(テストステロン)の分泌を抑える 紹介したように前立腺がんには、大きく分けて3つの治療方法があります。しかし、手術の場合、ほかのがんと同様に体への負担も大きく、男性機能への影響や、尿失禁といった後遺症がしばしば問題となっています。 まずは、医師から提示された治療の選択肢のメリット、デメリットを確認し、自分が今後どのような生活を送りたいかといったことを踏まえて治療法を選びましょう。 そのほかにも、腹腔鏡(内視鏡)を使った手術や、直接前立腺に針を刺し、放射線を照射する(小線源療法)方法など、男性機能への影響が少ない治療方法も開発されており、選択肢の幅も広がっています。また、最近では、前立腺肥大症の治療に使われているHIFU(高密度焦点式超音波療法)を応用し、超音波でがんを焼く方法も開発が進んでいるといわれています。 しかし、これらの新しい治療法を選択肢に加えることができるかどうかは、発見されたときのがんの進行度によって大きく変わってきます。そのためにも年に1度はPSA検査を受け、早期発見に努めましょう。 公開日:2008/12/01
前立腺とは男性にしかない器官で、生殖に不可欠な重要な臓器です。排尿時のトラブルなどから前立腺の病気の可能性がわかります。 目次 前立腺って何? 前立腺の病気とは? 前立腺の健康度チェック 前立腺って何? 糖尿病や高血圧、心筋梗塞といった生活習慣病や肥満など、中高年になるといくつか気がかりな病気が出てくる。男性にとってはそのひとつに「前立腺の病気」があるのではないだろうか。 前立腺は男性にしかない器官で、精液の一部である前立腺液を分泌している。生殖に不可欠な重要な臓器なのだ。 男性の膀胱のすぐ下(出口付近)に位置し、成人では約20グラム程度、クルミくらいの大きさで尿道をぐるりと取り囲んでいる。前立腺の中には精子の通り道である射精管が通っていて、すぐ後ろには直腸がある。前立腺の内部構造は、前立腺の内側にあり尿道をとりまいている内腺と、外側にある外腺に分かれている。 前立腺の病気とは? 特に50歳以上の男性で、排尿について何かトラブルがあるなら前立腺の病気を疑ったほうがいい。夜間に何度もトイレに起きる、人より排尿に時間がかかる、残尿感があるなどの症状に併せて、高熱が出た、血尿が出たといった場合には前立腺の病気の疑いが強い。 前立腺の病気は「前立腺肥大症」と「前立腺がん」に大きく分けることができる。なかでも多いのが前立腺肥大症。年齢とともに症状のある人が増えていて65歳では全体の35%とも言われている。また、前立腺がんは近年日本でも急激に増加中で、高齢男性にとっては今後要注意の病気と言えるだろう。そのほか、「前立腺炎」という前立腺に炎症が起こる病気もある。 こうして解決!前立腺の病気 前立腺の健康度チェック 排尿時の自覚症状から前立腺の病気をチェックするために、現在広く用いられているものが「国際前立腺症状スコア(IPSS)」だ。特に前立腺肥大症の重症度の判定に優れていると言われている。気になる症状のある人は早速チェックしてみよう。 またこれはあくまでチェック項目に過ぎない。排尿時のトラブルを抱えているなら、必ず専門医に診せることが大切だ。 国際前立腺症状スコア(I-PSS) 質問 まったくなし 5回に1回の割合 2回に1回の割合 2回に1回の割合未満 2回に1回の割合以上 ほとんど常 最近1ヵ月間、排尿後にまだ尿が残っている感じがありましたか? 0 1 2 3 4 5 最近1ヵ月間、排尿後2時間以内にもう一度行かねばならないことがありましたか? 0 1 2 3 4 5 最近1ヵ月間、排尿途中に尿が途切れることがありましたか? 0 1 2 3 4 5 最近1ヵ月間、排尿を我慢することがつらいことがありましたか? 0 1 2 3 4 5 最近1ヵ月間、尿の勢いが弱いことがありましたか? 0 1 2 3 4 5 最近1ヵ月間、排尿開始時にいきむ必要がありましたか? 0 1 2 3 4 5 最近1ヵ月間、床に就いてから朝起きるまでに普通何回排尿に起きましたか? 0 1 2 3 4 5 1~7の合計点 ⇒ QOLスコア 質問 大変満足 満足 大体満足 満足・不満のどちらでもない 不満気味 不満 大変不満 現在の排尿の状態が今後一生続くとしたらどう感じますか? 0 1 2 3 4 5 6 総合判定 I-PSS QOL 軽症 0~70、1 中等症 8~192、3、4 重症 20~355、6 ■関連記事 がん10年生存率は56.3%、80%以上は前立腺、甲状腺、乳房、子宮体など 国立がん研究センター/全国がんセンター協議会 公開日:2003年1月27日更新日:2020/09/25
前立腺の病気には高齢者に割合の高い前立腺肥大症、近年増加傾向にある前立腺がん、前立腺炎などがあります。それぞれの治療法、検査法をまとめました。 目次 前立腺肥大症 前立腺がん 前立腺炎 どんなことをするの?前立腺の検査 前立腺肥大症 前立腺肥大症は、どんな病気? 前立腺は思春期から急激に大きくなり、その後45歳くらいまではほぼ横ばいの状態が続く。その後40代後半からさらに大きくなる人と、ほとんど変化しない人に分かれる。加齢とともに前立腺が大きくなり過ぎると尿道を圧迫して排尿障害になったり、尿道を不自然に刺激するため尿道の不快感や頻尿の原因ともなる。 前立腺肥大症は、どんな症状? 前立腺肥大症は病状から3つの病期(段階)に分けて考えられる。 ■肥大症の病期 第1病期 刺激期 夜間の排尿回数が増える(2回以上)。尿道の不快感や頻尿。すぐに出ない、時間がかかるといった排尿困難の自覚。 第2病期 残尿発生期 排尿後に残尿が生じる。さらに排尿困難が悪化する。飲酒後に急に尿が1滴も出ない急性閉尿をおこすこともある。 第3病期 膀胱拡張期 残尿が多くなり、膀胱や腎臓のはたらきも低下してくる。この段階では手術が必要。 前立腺肥大症の治療法は? 初期症状であれば薬でOK。αブロッカー、抗男性ホルモン剤、生薬・漢方製剤などを用いる。 前立腺がん 前立腺がんは、どんな病気? 前立腺がんは中高年以上に多い病気で、ほとんどの患者は60歳以上、70歳くらいが発症のピークになっている。日本での発生率が近年急激に増えてきている原因として、人口の高齢化や、北米で前立腺がんにかかる率が際立って高いことから食生活を含めたライフスタイルの欧米化が考えられている。 また、前立腺肥大症と前立腺がんは別の病気。肥大症が進行してがんになるわけではない。 前立腺がんは、どんな症状? 前立腺がんの初期には、多くの場合自覚症状が現れにくい。がんの進行にしたがって尿の出が悪い、尿線が細いあるいは途絶している、頻尿(特に夜間)、血尿あるいは精液中に血液がみられる、腰背部・臀部あるいは骨盤部のしつこい痛みなどの症状がみられる。がんが外腺にできることが多く、前立腺の真ん中を通っている尿道への影響がそれほど強くないため、肥大症に比べて症状を感じにくい。 前立腺がんの治療法は? 前立腺がんの治療は、がんの広がりによって変わってくる。一般的には手術(摘出)、放射線治療、ホルモン治療などがある。 前立腺がんの発生そのものを確実に予防する方法は、今のところはっきりとはわかっていない。だが、早く発見して適切な治療を施せば、がんが早期であれば完治する場合もあるし、晩期でもがんの進行を遅らせる可能性もある。 前立腺炎 前立腺炎は、どんな病気? 前立腺炎には、尿道から入った細菌が原因で炎症を起こす場合と、原因不明の慢性前立腺炎がある。 細菌性の前立腺炎は38℃以上の高熱が出るが、抗生物質で比較的短期間に治療できる。 一方、慢性前立腺炎の場合は陰のうと肛門の間辺りの不快感、残尿感などの不定愁訴のような症状が続き、若者~中年の男性に多い。原因が不明なため、完治が難しい。 どんなことをするの?前立腺の検査 早期発見のために、いざ前立腺の検査へ…。その前に、検査ではどんなことをするのか簡単にご紹介。 ■前立腺の検査 検査名 目的 検査の方法 直腸診 前立腺の病気を診断する最もポピュラーな検査。前立腺の肥大状況が確認できる。 医師が手袋をつけ人差し指にゼリーをつけて肛門に挿入し、触診する。 超音波断層検査 前立腺全体の大きさや形、前立腺がんなどの疑いがわかる。 超音波発信器を下腹部にあてたり、肛門から直腸に入れて前立腺や膀胱の断層画像を得る。 血液検査(PSA) PSAとは前立腺に特有のたんぱく質のことで、前立腺特異抗原という。血液中にPSAが多くなると前立腺がんの可能性が高いといわれている。 血液検査なので、たいていの病院で受けられる。集団検診の中でPSAを実施している自治体もあるので自分の住む自治体が実施しているかどうか確認してみては? 公開日:2003年1月20日
尿に異常があった場合、腎臓・膀胱・前立腺などの病気の疑いが考えられます。代表的なものをまとめてご紹介します。 目次 腎臓に関係する病気 尿路に関する病気 前立腺に関する病気 尿検査で早期発見! 腎臓に関係する病気 急性腎炎 腎臓に炎症の起こる病気。腎臓内部で血液の老廃物をろ過する器官のはたらきが低下する。 血尿、たんぱく尿、尿量の減少、むくみなど。場合によっては、発熱や咽頭痛を伴う場合も。 慢性腎炎 急性腎炎の発病後、尿たんぱくや高血圧が1年以上続いているものか、急性腎炎でなくても尿の異常が1年以上続く病気。 高血圧、むくみ、たんぱく尿など。進行すると徐々に腎不全に陥るので要注意。 ネフローゼ症候群 腎糸球体(血液の老廃物を濾し取る機能のある腎臓内の器官)の障害によって起こる病気。 高度のたんぱく尿、低たんぱく血症、高脂血症、むくみなど。慢性化しやすく、症状も軽くなったり重くなったりする。 腎不全 腎機能が急激に低下した状態。慢性腎不全と急性腎不全があり、大半の慢性腎不全は慢性腎炎や糖尿病性腎症などから移行する。 皮膚の紫斑やかゆみ、けいれん、呼吸困難、心不全、嘔吐、など。腎機能が低下すると、尿毒症になる恐れがあり、透析が必要になる。 尿路に関する病気 尿路感染症 尿路(腎臓の腎盂、尿管、膀胱、尿道)の器官に炎症を起こすのが尿路感染症。とくに女性は尿道が短く、菌が入りやすいためかかりやすい。 腎盂炎は、高熱、腰や背中の痛みが特徴。膀胱炎の場合は、頻尿、残尿感、排尿後の不快感が特徴。 腎・尿路結石 腎臓、尿管、膀胱、尿道の尿路に石のようなかたまり(結石)ができる病気。 腎結石より尿管結石のほうが激しく痛む。特に側腹部や腰から背中にかけての部分が激しく痛み、血尿が起こる。結石が尿管にひっかかった場合には、手術が必要。 前立腺に関する病気 前立腺肥大症 男性だけにある前立腺は、尿道を取り囲むような位置にある。その前立腺が加齢とともに肥大して尿道を圧迫してさまざまな障害が起こる病気。 尿道が圧迫されると、尿がちょろちょろとしか出ず、排尿回数が増え残尿感がある。さらに進行すると尿閉といって尿がまったく出なくなることもあり、その場合には手術が必要。 尿検査で早期発見! 日本では、検尿のシステムがかなり確立されており、集団検診のときに検尿が行われる。腎臓病などは自覚症状がないまま進行してしまい、吐き気などの症状が出てきた時にはかなり悪化していることもあるからだ。 現在、腎臓病が進行すると透析以外の治療がなく、莫大な医療費がかかるだけでなく本人の心理的苦痛を増やすことにもなりかねない。そこで、この検診を受けて早期発見することがとても重要なのである。 検尿が行われるのは? 新生児のときの検診 幼児のときの検診 学校での検診 職場での検診 地域での検診 老人の検診 ■関連記事 腎臓は沈黙の臓器、慢性腎臓病(CKD)かどうかチェックしよう 徳島県民に愛される「金時豆入りバラ寿司」を低たんぱくアレンジ 病院おすすめ・ご当地食材で腎臓にやさしいレシピ(5) 健診で見逃されて腎不全や透析?糖尿病性腎臓病(DKD)に注意 公開日:2001年5月7日
前立腺がんの治療には、とても長い期間にわたる受診や検査が必要です。その間、患者さんと医師との間で上手なコミュニケーションを取り続けることが、より良い治療や、患者さん自身のQOL向上につながります。いつ、何を、お互いにどうやって伝えれば良いかを考えてみましょう。 目次 前立腺がんの治療は、「病気と上手く付き合う」ことから どんなに小さな変化でも、しっかり伝えていくことが大事 医師も感じている「患者さんの状況が理解できているか?」という不安 自分の体調や気持ちの変化を、上手く伝えるポイントは? 前立腺がんの治療は、「病気と上手く付き合う」ことから 前立腺がんの治療は、手術、放射線治療などの治療法があります。また、前立腺がんは男性ホルモンがその発症に関係していることから、内分泌療法(ホルモン療法)を行うことがあります。内分泌療法(ホルモン療法)は男性ホルモンを抑えることによって効力を発揮しますが、数年くらい経つと、男性ホルモン量を抑えているにもかかわらず、再び前立腺がんが増殖することがあります。この状態を去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)といいます。 去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)と診断された後は、医師と治療法を相談しながら、お薬を変更し数週間~数ヵ月ごとの定期的な受診や検査が必要になります。患者さん自身と医師は、長い治療期間の間、上手くコミュニケーションを取りながら、お互いに信頼できる関係を続けていく必要があります。 どんなに小さな変化でも、しっかり伝えていくことが大事 一般的に、前立腺がんの患者さんに対する診察時間は、1回あたり3~10分と言われています。その短い時間で、上手に自分の体調を伝えられるか、検査の結果を理解・納得できるか、不安に感じている患者さんも多いのではないでしょうか。 例えば、次のような情報は、患者さん自身の生活を振り返ることができるだけではなく、医師がよりよい治療方針を導き出す手掛かりになることもあります。 伝えたほうがよい情報 ●自分が感じている体調の変化 ●漠然とした焦りやイライラ感、不安感など、気持ちの変化 ●QOL(生活の質)に対する変化 ●検査結果に対する思いや、感じたこと また、排尿や性機能に関する変化だけではなく、倦怠感や関節痛、発熱、食欲の変化、下痢などのような症状があったか、あるいは日常生活に不便さを感じること(QOLに対する変化)はあったかという情報など、どんな小さなことでも医師が患者さんの全身状態を把握するためには必要な情報です。 しかし、前立腺がんの患者さんは、比較的高齢であることが多く、医療機関での待ち時間や検査時間が長くなれば、それだけ疲労感が強くなります。さらに、「前回受診日以降のことを時間の経過を追って話すのが難しい」こともありますし、副作用と考えられる症状を「きっと歳を取ったせいだ」と自己判断してしまうこと、「先生にこんなこと言っても良いのか」と遠慮することもあります。 また、医師からの「検査結果」の説明に対し、その場で100%理解することも、難しいかもしれませんが、患者さんは、なぜこのような結果になったのか、その原因は何かなど、医師と一緒に考えていくことも必要なのです。 医師も感じている「患者さんの状況が理解できているか?」という不安 では、医師はどう感じているのでしょうか。 前立腺がんの治療は、症状や病期によりいくつかの選択肢があります。例えば、最初はホルモン療法を行って、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)へ移行したら抗がん剤治療などのお薬に変更する方法もあります。治療法やお薬によって起こり得る副作用は異なるため、治療中の患者さんの変化は、医師にとって非常に重要な情報となります。 しかし、短い診療時間の中で、「患者さんの全身状態を把握し、日常の症状の変動をすべて理解する」ことは、医師であっても「難しいケースが多い」と感じているようです。特に前立腺がんは、男性患者さんしかいないため、女性患者さんと比較すると口数が少ない傾向があります。また、排尿障害や性機能低下など、男性同士でも話しにくい内容となることが少なくありません。結果的に医師の方でも、「しっかりと患者さんの状態や状況が把握できているのだろうか?」という不安や、「患者さんの訴えと、医師の認識のギャップ」などを、感じることがあるようです。 自分の体調や気持ちの変化を、上手く伝えるポイントは? このような特徴のある前立腺がんの患者さんに対して、医師は「患者自身の経過を記録したメモがあれば、時間の流れに沿った変化が分かる」、あるいは「ご家族が診察に同行していれば、客観的な変化も把握することができる」などと、感じていることが多いようです。さらに、お薬を飲んでいる患者さんに対しては「毎日きちんと服用できているか」も、医師にとっては大事な情報です。ポイントは、患者さんが感じている、自分自身の体調や気持ちの変化をコンパクトにまとめ、短い診察時間の中で効率よく医師に伝えていくこと。こうすることで、お互いの信頼関係を深めることにつながります。 例えば、パソコンやスマートフォンのアプリには、毎日の服薬の状況、一言では伝えにくい体調や行動の変化、過去の検査値や体重などの変化などを簡単に記録し、分かりやすいレポートを作成できるものもあります。 レポートは、いつでも患者さん自身の振り返りとして活用でき、家族と情報を共有しておくことができます。医師の方でも、時間の流れに沿った変化を確認することで、患者さんの状況を短時間で的確に把握することができます。 こういったツールを上手に活用し、患者さん、ご家族、医師とのコミュニケーションを深めていきましょう。 公開日:2016年12月26日
美と健康の救世主!?…女性の場合 肌のうるおいやハリを保ち、美しさを保つとされ、化粧品にも使われている大豆イソフラボン。実際、大豆イソフラボンを摂ると、メラニンの生成を抑える効果があるなど、美しさへの貢献度は高いようだ。 また、健康面でも注目度は高い。更年期障害による顔のほてりといった諸症状の改善をはじめ、閉経後の女性に多い骨粗しょう症の緩和、さらには乳がんの発生を抑制するはたらきがあるとされ、熱い期待を集めている。 なかでも乳がんについては、日本女性2万人を対象にした調査で、大豆イソフラボンを多く摂ったグループの乳がん発生率は、他のグループに比べて約54%も少なかったという驚くべき結果も報告されている。 通風や男性特有のがんにも効果!?…男性の場合 女性の美と健康への効能が大きく取り沙汰され、女性だけのものといったイメージが強いが、男性の健康に対しての効果が今、見直されてきている。 そのひとつが、前立腺肥大・前立腺がんの抑制効果だ。これはご存知の通り、男性特有の病気で、ホルモン依存性のがんといわれている。これに対して、女性ホルモンと似たはたらきをする大豆イソフラボンが効果を発揮し、発生を抑制するというのだ。 また、患者の90%以上が男性とされる痛風も、大豆イソフラボンを積極的に摂ることで抑制されるのではないかといわれている。 生活習慣病の分野でも熱い期待 高血圧、動脈硬化、がん…。男女の別なく増え続ける生活習慣病の治療と予防の現場でも今、注目を集めているのが大豆イソフラボンだ。 このキッカケとなったのは、日本では女性の更年期障害や骨粗しょう症などが比較的軽く、心筋梗塞などの心臓疾患も少なく、世界一の長寿国であることから、欧米の医学者が日本の伝統食を研究しはじめたことにあるとされている。そして1999年には、米国のFDA(食品医薬品局)が『大豆たんぱく質は心臓病の予防に役立つ』という健康表示を承認。大豆の、ひいては大豆イソフラボンの健康への効果が脚光をあびることになったのだ。 その後、高血圧やコレステロールなどに関するさまざまな研究成果が発表され、生活習慣病の予防のためにも、大豆イソフラボンを積極的に摂る生活が薦められている。なかでも現段階で、効果のほどが着目されているのが、コレステロールと血圧に対する影響。 脂質などの摂り過ぎによって、血液中のコレステロール値が高い状態が長く続くと、動脈硬化などの疾患を招きがち。ところが、大豆イソフラボンを1日約40mg摂る生活を4週間続けたところ、グラフのようにコレステロール値を低く抑えることができたと実験でも実証されている。 また、同様の実験では、血圧も変化。血圧を低く抑えることができることがわかっている。 今後ますます研究がすすめば、さらに大豆イソフラボンの生活習慣病への好影響が実証されていくのかもしれない。
これまでの研究により、多くの場合、がんは日常の生活習慣が原因となって発生することが明らかにされています。なかでも、喫煙や肥満、飲酒などは、確実に関連していることがわかっています。がんの原因となる、周辺環境や生活習慣をまとめました。 目次 がんの発生と生活習慣の関連をチェック! がんを予防する食事とは? がんの発生と生活習慣の関連をチェック! 国立がん研究センターは、WHO(世界保健機関)による食事関連要因に関する評価に、IARC(国際がん研究機構)によるたばこに関する評価の結果を加えた概要として、予防効果の確実性についてランク分けされた下記の表を公表しています。これをもとにして生活習慣を見直し、がんを予防しましょう。 リスクを下げるもの 関連の強さ 要因 関連するがんの種類 確実 身体活動結腸がん 可能性大 野菜・果物口腔がん、食道がん、胃がん、結腸がん、直腸がん 身体活動乳がん 可能性あり / データ不十分 食物繊維、大豆、魚、N-3 系脂肪酸、カロテノイド ビタミンB2、B6、葉酸、B12、C、D、E カルシウム、亜鉛、セレン非栄養性植物機能成分(例:アリウム化合物、フラボノイド、イソフラボン、リグナン) リスクを上げるもの 関連の強さ 要因 関連するがんの種類 確実 喫煙口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、胃がん、肺がん、膵臓がん、肝臓がん、腎臓がん、尿路がん、膀胱がん、子宮頸部がん、骨髄性白血病 他人のたばこの煙肺がん 過体重と肥満食道(腺がん)、結腸がん、直腸がん、乳がん(閉経後)、子宮体部がん、腎臓がん 飲酒口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肝臓がん、乳がん アフラトキシン肝臓がん 中国式塩蔵魚鼻咽頭がん 可能性大 加工肉腸がん、直腸がん 塩蔵品および食塩胃がん 熱い飲食物口腔がん、咽頭がん、食道がん 可能性あり / データ不十分 動物性脂肪 ヘテロサイクリックアミン 多環芳香族炭化水素 ニトロソ化合物 WHO technical report series 916. Diet, nutrition and the prevention of chronic diseases (2003), IARC monograph on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans, Volume83, Tobacco Smoke and Involuntary Smoking (2004) 出典:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター がんを予防する食事とは? WCRF(世界がん研究基金)とAICR(米国がん研究協会)による評価報告書「食物・栄養・身体活動とがん予防」では、食品や栄養素のがん発生リスクがまとめられています。このなかで、赤肉(牛、豚、羊などの肉)や加工肉(ソーセージ、サラミ、ベーコン、ハムなど)は、大腸がんの発生リスクを上げることが「確実」と判定されています。それらの摂取を控えることが、大腸がんの予防になると言えます。 食物関連要因とがんとの関連(まとめ)WCRF/AICR 2007 リスクを下げるもの 関連の強さ 食物関連要因 関連するがんの種類 確実 運動結腸がん 授乳乳がん 可能性大 肥満乳がん(閉経前) 運動乳がん(閉経後)、子宮体部がん 果物口腔・咽頭・喉頭がん、食道がん、胃がん、肺がん 非でんぷん野菜口腔・咽頭・喉頭がん、食道がん、胃がん アリウム野菜(にんにく、玉ねぎなど)胃がん にんにく、食物繊維、牛乳、カルシウムのサプリメント大腸がん 食物に含まれる葉酸膵臓がん 食物に含まれるカロテノイド口腔・咽頭・喉頭がん、肺がん 食物に含まれるβ-カロテン、食物に含まれるビタミンC食道がん 食物に含まれるリコピン、食物に含まれるセレン、セレニウムのサプリメント前立腺がん リスクを上げるもの 関連の強さ 食物関連要因 関連するがんの種類 確実 肥満食道がん(腺癌)、大腸がん、乳がん(閉経後)、子宮体部がん、腎臓がん、膵臓がん 内臓脂肪大腸がん 高身長大腸がん、乳がん(閉経後) 赤肉・加工肉大腸がん アルコール口腔・咽頭・喉頭がん、食道がん、大腸がん(男性)、乳がん アフラトキシン肝臓がん 飲料水中の砒素肺がん β-カロテンのサプリメント肺がん 可能性大 肥満胆嚢がん 内臓脂肪膵臓がん、乳がん(閉経後)、子宮体部がん 成人期の体重増加乳がん(閉経後) 出生時過体重乳がん(閉経前) 高身長膵臓がん、乳がん(閉経前)、卵巣がん アルコール肝臓がん、大腸がん(女性) 塩蔵食品・塩分胃がん 中国式塩蔵魚鼻咽頭がん 飲料水中の砒素皮膚がん マテ茶食道がん 食事からのカルシウム前立腺がん World Cancer Research Fund/American Institute for Cancer Research. Food, Nutrition, Physical Activity, and the Prevention of Cancer: a Global Perspective. AICR, Washington DC (2007) 出典:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター このほかに、特定のがんの原因となるウイルスや細菌もあります。例として、C型肝炎ウイルスが肝臓がんを、ヒトパピローマウイルスが子宮頸がんを引き起こすことがあります。 また、ダイオキシンやアスベストなどの環境汚染物質や、環境ホルモンと呼ばれる物質にも発がん性があると言われています。