「肝臓病」と言っても、その種類はたくさんあります。それを原因で分類するなら、「ウイルス性」「薬剤性」「アルコール性」「自己免疫性」「先天性」などに分けられます。そのなかでも代表的な肝臓病の原因は「ウイルス性」と「アルコール性」です。 目次 肝臓ってどんな機能? 肝臓は無症状!? 肝臓病ってどんなものがある? 急性肝炎の原因の「ウイルス」とは? 生活習慣と密接な関係のある肝臓病 肝臓ってどんな機能? 肝臓は人の体の右上腹部にあり、肋骨に守られるように囲まれている。人体の臓器としては一番大きなもので、重さは体重の1/50ほど。成人男性なら1.2kg~1.6kg程度ある。 また、肝臓は自己再生能力が高く、肝臓の75~80%を切り取っても、約4ヵ月後にはもとの大きさと機能を回復しているのだ(ちなみに胃を切除しても胃そのものは再生しない)。 肝臓の主なはたらきは、代謝、解毒、胆汁の分泌などがある。 肝臓のはたらき ●代謝 口から入った食べ物から消化吸収した栄養素を処理して、糖分や脂肪分をエネルギーとして蓄えたり、たんぱく質を「リポたんぱく」という体にあった形に作り変えたりする。 ●解毒 アルコールや薬剤などの有害物質が体内に入ってきた時や、体内で発生するアンモニアなどの有害物質を酸化、還元、抱合(他の物質で包み込む)などして水や脂に溶けやすい形に変え、尿や胆汁の中に排泄する。 ●胆汁の分泌 胆汁とは、脂肪の消化を助ける液。肝臓で処理したいろいろな物質を材料にして胆汁は作られるが、その後いったん胆嚢に蓄えられて濃縮されてから十二指腸に分泌される。 肝臓は無症状!? 肝臓は約3000億個以上の肝細胞が集まってできている。肝臓病になるとその肝細胞が次々に壊れていくが、なにせもともと余力のある臓器なので、少々悪くなっても自覚症状は出にくい。裏を返せば、自覚症状が出た時には肝細胞の大部分が壊れてしまっているのだ。 実際、自覚症状のひとつ黄疸が出てはじめて肝臓病に気がつくケースは全体の3割。一方、日頃健康だと思っていたのに、健康診断などの機会に偶然発見されるケースが7割を占めているのだ。 これが「肝臓は沈黙の臓器」と言われる理由である。 症状が進行した場合の自覚症状は? 体がだるい、食欲がない、吐気がする、尿の色が濃い、体が黄色になる、体がかゆい、手のひらが赤い、お腹が張る、足がむくむ、(男性で)お乳が張って痛い、かび臭い口臭がする、など 肝臓病ってどんなものがある? 一言で「肝臓病」と言っても、その種類はたくさんある。それを原因で分類すると、「ウイルス性」「薬剤性」「アルコール性」「自己免疫性」「先天性」などに分けられる。また、肝臓の状態、つまり病名で分類すると、「肝炎」「肝硬変」「脂肪肝」などが主なものだ。 そのなかでも代表的な肝臓病の原因は「ウイルス性」と「アルコール性」である。 主な肝臓の病気 ●ウイルス性の肝障害って? 急性肝炎、劇症肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝がんなど ●アルコール性の肝障害って? 脂肪肝、肝炎、肝繊維症、肝硬変、肝がんなど 急性肝炎の原因の「ウイルス」とは? 慢性肝炎が通常6ヵ月以上肝炎が続いている状態をいうのに対し、急性肝炎とはこれまで正常に機能していた肝臓に突然肝炎が起こり、たくさんの肝細胞が破壊される病気。その主な原因は肝炎ウイルスだ。 日本で一番多い肝炎はB型やC型。これは、過去にたくさんの感染者が出たためなのだ。しかし、現在ではこれらの肝炎ウイルスの感染をなくす努力がされており、新しい感染はほとんど見られなくなっている。 肝炎ウイルスにはこんなものがある! ウイルスの種類 感染経路 慢性化 A型肝炎ウイルス食べものや飲料水からなし B型肝炎ウイルス血液や体液子供では高率、大人ではまれ C型肝炎ウイルス血液や体液70%が慢性化 D型肝炎ウイルス血液や体液あり E型肝炎ウイルス食べものや飲料水からなし G型肝炎ウイルス血液や体液あり TT型肝炎ウイルス血液や体液あり 急性肝炎になると発熱や吐気、だるさ、など風邪に似た初期症状が出て、3~4日すると濃い色の尿、皮膚や目の黄疸などの症状が見られる。 急性肝炎でコワイのは劇症肝炎や慢性肝炎になること。劇症肝炎になる確率は急性肝炎の1%程度だが、一度劇症化すると死亡率は70%以上もあるのでかなり危険である。 生活習慣と密接な関係のある肝臓病 日本で現在、病院にかかっている肝臓病で最も多いのは、肝炎ウイルスによる肝炎や肝硬変、肝がんなどだが、もうひとつ重要な肝臓病がある。それが、前述のアルコール性の肝障害だ。 お酒をたくさん飲む人はちょっと心当たりがあるかもしれないが、軽いものでは脂肪肝やアルコール性肝繊維症、重症ではアルコール性肝炎やアルコール性肝硬変などがある。日本では、アルコール性肝障害は軽症も含めると人口の約2%強、300万人ほどいるといわれ、そのうち5万人ほどが肝硬変だと推定されている。 一般的に、飲酒の量と飲酒期間に比例して肝臓病の症状が進行しているのだ。 公開日:2002年7月1日
肝臓障害を調べるGOT・GPT 細胞内酵素であるGOT・GPTが血中で増加した場合、肝臓障害、心筋梗塞、溶血などの診断の手がかりになります。GPTは特に肝細胞の変性・壊死に反応します。また、疾患によってGOT・GPTの比率が一定傾向を示すことも診断の目安になります。 正常値はGOTが5~35KU/dl、GPTが5~25KU/dlです。ただし、飲酒後や運動後は上昇傾向があるので検査前には避けましょう。体重増加やステロイド剤服用にも影響されます。 アルコール性肝障害の指標に有用なγ-GPT GOT・GPTと同じくたんぱく質を分解する酵素の一つです。肝臓に毒性のあるアルコールや薬剤などが肝細胞を破壊した時や、結石・がんなどで胆管が閉塞した時に血中に出てきます。 肝臓や胆道に病気があると外の酵素よりも早く異常値を示します。特にアルコール性肝障害の指標に有用です。正常値は成人で40単位以下です。 こう質反応を調べるTTT・ZTT 肝臓の異常でγ-グロブリンの上昇やアルブミンの低下が起きると、こう質反応(コロイド反応)を起こします。これを調べるのがZTT(硫酸亜鉛混濁試験)です。正常値はTTT0~クンケル単位、ZTT2~14クンケル単位です。
復元力のある「沈黙の臓器」 肝臓は横隔膜の真下やや右寄りにある、暗赤色をした体内最大の臓器です。その重さは約1200g(体重の1/45~1/50)。20~30歳代で最も重くなり、その後は徐々に軽くなります。 予備能力が大きく、少々の障害を受けても症状が現れないため「沈黙の臓器」と呼ばれます。80%程度が障害されて初めて機能不全になるほどの強さです。しかも、その7割近くを切り取ることができるほど復元力の高い臓器です。 肝臓は「生体の化学工場」 肝臓はいわば血管の固まりで、2ヵ所から血液の供給を受けています。その5分の1は心臓から送られる酸素を含んだ血液、5分の4は栄養素を含んだ小腸からのものです。 主に消化・吸収作業のまとめ役として栄養素の処理を行います。それ以外にも、生命活動を維持する上で重要な役割を持っています。 胆汁の生成 栄養素の貯蔵と加工 解毒作用 生体防御作用 血液凝固作用物質の産生 造血・血液量の調節 など、その役目は数十種類にも及びます。 まさに「生体の化学工場」です。
自覚症状のない脂肪肝 脂肪肝はアルコール性肝障害の第一段階です。脂肪肝は肝細胞の中に脂肪が沈着した状態です。ところが、この脂肪肝になっても自覚症状はほとんどありません。 脂肪肝の目安としては、血液検査の肝機能検査の中のGOTやγ-GTPの上昇が参考になりますが、超音波検査をすればよく分かります。 脂肪肝の原因 大量にアルコールを飲むと肝臓のはたらきに障害が生じ、脂肪の消費が間に合わなくなってしまいます。その結果、肝臓に脂肪がだぶついてそのまま居座ってしまうことが、アルコール性脂肪肝の原因と考えられます。 さらに、お酒を飲むときに一緒に食べる高たんぱく、高脂肪の食べ物も、脂肪肝への道を進めていると考えられます。一方、アルコールばかり飲んでいて食べ物を食べずに、栄養障害を起こし低たんぱく状態であることも、脂肪肝を引き起こす可能性があると考えられています。 一般には、アルコール性脂肪肝は、お酒をやめると回復するようです。ただし、食事などにも気を付ける必要があります。