ひざ・関節の痛みに関する記事をご紹介します。ひざ・関節の痛みの正しい知識を身につけることで、予防や改善にお役立てください。
「変形性ひざ関節症」は、軟骨がすり減ることで歩くことや階段の昇り降りなどが困難になる、日常生活への支障が極めて大きい病気です。すり減った軟骨は骨と違って自然に修復できません。そこで、東海大学の佐藤正人先生は、軟骨が擦り減った部位に直接に軟骨細胞シートを貼り付けて、軟骨を再生させる治療の開発を進めています(2018年3月、第17回日本再生医療学会総会の講演をもとに本記事を作成しました)。 目次 すり減った軟骨を修復・再生できる根治療法が望まれています ひざの軟骨損傷部に細胞シートを覆うように直接貼り付けて移植 すり減った軟骨を修復・再生できる根治療法が望まれています 平成28年度の国民生活基礎調査によると、要支援者における「介護が必要になった主な原因」の第1位が関節疾患(約17%)でした。そのなかで最も多いのが「変形性ひざ関節症」と言われています。中高年、なかでも女性や太っている人に起こりやすい傾向があります。 変形性ひざ関節症をはじめとした関節疾患は、関節軟骨の成分で細胞の増殖や分化などに関わるⅡ型コラーゲンやヒアルロン酸、プロテオグリカン、ヒアルロン酸などの細胞外マトリックスが分解されて流出すると、関節のクッション性が低くなって軟骨が減少して発症します。 関節軟骨の重要な成分に「軟骨細胞」がありますが、非常に少なく増殖しないので軟骨の修復・再生が難しいと言われています。 変形性ひざ関節症に対する治療は、痛み止めやヒアルロン酸注射などによる対症療法、O脚矯正の骨切り術、人工関節手術などがありますが、現状ではすり減った軟骨の修復や再生はできないのが課題です。 また、体重のかからない部分の患者さん本人の軟骨組織からわずかな細胞を採取し、増殖・培養を行って損傷部位に注入や移植をする自己細胞(自家細胞ともいいます)を移植する治療法がありますが、現在は変形性ひざ関節症の保険適応がありません。その理由は、十分に体重を支えるだけの強度を持った軟骨(硝子軟骨といいます)が再生できず、質の悪い軟骨だけではすぐに症状が再発するからと言われています。 そこで、荷重に耐えうる強度と、生体が本来持つ粘弾性や滑らかさを兼ね備えた軟骨組織である硝子軟骨を再生させる治療法を開発するために、東京女子医科大学の研究チームが開発した細胞シート工学※1に着目した研究が開始されました。 ※1 細胞シート工学:東京女子医科大学先端生命医科学研究所ホームページ (http://www.twmu.ac.jp/ABMES/ja/cellsheet) ひざの軟骨損傷部に細胞シートを覆うように直接貼り付けて移植 細胞シートは、細胞を特殊な培養皿で増殖・培養するため、細胞自身が作りだす接着因子(のり状のたんぱく物質)を保ったままで作られます。 患者さん自身の細胞を用いて細胞シートを作る際は、まず医療機関で膝関節部位にあっても体重のかからない部分から軟骨細胞と滑膜細胞が採取されます。 次に、細胞シートを作る細胞加工施設に両方の細胞が送られて、数週間かけて増殖・培養して複数の細胞シートが作られ、医療機関に送られて治療が行われます。 なお、移植には軟骨細胞から作られた細胞シートのみが用いられます。滑膜細胞は、細胞シート作製の過程で軟骨細胞の増殖を促すことを目的に使われます。 治療は、ひざの軟骨損傷部に複数枚重ねた細胞シートを覆うように直接貼り付けて移植するため、比較的短時間で済みます。 細胞シート治療の特性としては以下が挙げられます。 移植した軟骨細胞や軟骨の重要な成分であるプロテオグリカンが軟骨の損傷部位から流出することを防ぎます。 修復に悪影響を与える因子が軟骨の損傷部位に進入することを阻止します。 細胞シートには人工物は一切含まれておらず、生体に接着して、細胞シートから成長因子が持続的に供給されます。 図:細胞シート工学を応用した関節軟骨修復・再生 提供:東海大学整形外科学教授 佐藤正人先生 ※自己軟骨・滑膜とは、患者さん自身の軟骨・滑膜のことをさします。自己は自家ともいいます。 ※細胞シート工学の技術を用いることで、接着因子を維持したまま細胞シートを作ります。作った細胞シートを積み重ねたものを損傷部位に移植します。 現在、患者さん本人の細胞からシートを作って移植する治療に関しては、すでに8例の臨床研究に成功しました。 また、新たな臨床研究として研究中の治療としては、より多くの患者さんが治療を受けられるよう、自分以外の人の細胞(乳幼児の手術組織から採取した軟骨細胞)を用いた治療法に関する研究が進められています。 参考情報: 東海大学ホームページ(http://cellsheet.med.u-tokai.ac.jp/) 株式会社セルシード(https://www.cellseed.com/regenerative/012.html) 公開日:2018/08/20 監修:東海大学整形外科学教授 佐藤正人先生 一般社団法人細胞シート再生医療推進機構業務執行理事/ユタ大学薬学・薬剤化学部併任教授・江上美芽先生
現在、変形性ひざ関節症ではひざの患部に細胞シートを移植することにより軟骨を再生させるという治療法が開発されています。東海大学の佐藤正人先生は、患者さん本人から細胞シートを作って移植する治療と、患者さん以外の人から細胞シートを作って治療するという研究を進めています(2018年3月、第17回日本再生医療学会総会の講演をもとに本記事を作成しました)。 目次 変形性ひざ関節症の再生治療 細胞シート移植とO脚矯正手術との併用で安全性と有効性を確認 乳幼児の切除手術後の組織から細胞シートを大量に生産する方法を開発 関節疾患の再生治療は研究がめじろ押し 変形性ひざ関節症の再生治療 変形性ひざ関節症の患者さんは、中高年や女性に多い傾向にあります。これまでの治療法ではすり減った軟骨の修復・再生は難しいことが課題でした。 そこで、細胞シート工学の技術を応用した治療法が開発されています。 現在は、患者さん由来の軟骨細胞から作られた自己細胞シート(自家細胞シートともいいます)を移植する研究と、患者さん以外の人由来の細胞から細胞シートを作って(同種細胞シート、他家細胞シートともいいます)、移植する研究を実施しています。 細胞シート移植とO脚矯正手術との併用で安全性と有効性を確認 自己細胞シートの治療に関しては、O脚などを矯正する骨切り術と細胞シートを損傷部位に貼り付ける手術を併用しています。 曲がった膝を治すために、骨切り術を行った際に関節内の軟骨損傷部を覆うように直接患部に移植します。軟骨細胞シートの移植は短時間に実施可能です。 入院期間に関しては約1ヵ月程度と言われています。これは、骨切り術を実施した患者さんの平均的な入院日数であり、細胞シート移植による入院日数の延長はありません。 自己細胞シートの治療研究は2011年から行われています。変形性ひざ関節症の患者さん8例に実施した結果、3年を経過した後でも安全性と有効性が確認されました。現在、先進医療および企業治験を計画されています。 世界的にも硝子軟骨の再生は極めてハードルが高い研究テーマですので、成功例は見られていません。この臨床研究の成果は世界的にもその成果に注目されています。 乳幼児の切除手術後の組織から細胞シートを大量に生産する方法を開発 より多くの変形性ひざ関節症の患者さんが治療を受けられることを目的に、患者さん以外の人の細胞を用いた他家細胞シートの治療法も研究が行われています。その細胞としては、乳幼児の切除手術後の組織から軟骨を採取します。細胞を増殖・培養した細胞は凍結保存しておきます。 あらかじめ細胞をストックしておくことで、他家細胞シートの作製ならびに迅速に手術できることが期待できます。 この手法に関しては、東海大学医学部付属病院のみならず国立成育医療研究センターとの共同研究により開発が進んでいます。細胞シートの大量生産と保存技術が実現することで、治療の低コスト化が期待できます。 2018年4月時点で患者さん3例に他家細胞シートを移植する臨床研究を実施しており、経過は良好なことが報告されています。 図:細胞シートをより多く作製するための試み 提供:東海大学整形外科学教授 佐藤正人先生 ※同種軟骨細胞は、患者さん自身ではなく他人の細胞のことをいいます。他家軟骨細胞ともいいます。 関節疾患の再生治療は研究がめじろ押し 細胞シート工学のメリットは、患者さん自身の細胞を用いる自己(自家)細胞シート、あるいは患者さん以外の他人の細胞を用いた他家(同種)細胞シートを、患者さんの体内で支障がある部位に貼り付けて再生を促すことができる点です。 変形性膝関節症に関しては早期にみられる部分的欠損と、末期に見られるような全層欠損という2つのタイプの軟骨損傷に治療効果が期待できます。 細胞シートの大きさに関しては、自己細胞シートの臨床研究では軟骨損傷部位が4.2cm2まで適用としていましたが、先進医療や企業治験では大きな損傷部位にも対応できるよう8.4cm2までの適用を検討しているところです。 骨・関節疾患の再生医療に関しては、現在、変形性ひざ関節症の保険適応はありませんが、自家培養軟骨のジャック®が2013年4月から臨床現場に導入されています。 2018年3月21日~23日に再生医療に関する研究成果が発表される第17回日本再生医療学会総会として学術集会が開催されました。 佐藤先生が研究成果を報告したセッションでは、臨床導入が近い開発研究として、滑膜由来の間葉系幹細胞を用いたひざ軟骨再生細胞治療製品や、滑膜の幹細胞を用いた半月板の再生治療など多くの報告がありました。 治らないと言われていた病気でも完全に治すことが期待できる再生治療を、医療機関で受けられる日も近いのではないでしょうか。 参考情報: 東海大学ホームページ(http://cellsheet.med.u-tokai.ac.jp/) 株式会社セルシード(https://www.cellseed.com/regenerative/012.html) 公開日:2018/08/20 監修:東海大学整形外科学教授 佐藤正人先生 一般社団法人細胞シート再生医療推進機構業務執行理事/ユタ大学薬学・薬剤化学部併任教授・江上美芽先生
ロコモティブシンドローム(運動器症候群:通称ロコモ)は、骨や関節、筋肉などの運動器の障害によって、自力での歩行などが難しくなり、要支援・要介護の状態になっている、あるいはそうなる危険性が高い状態を指します。ここではロコモの原因、予防法について詳しく解説します。 目次 メタボの次はロコモティブシンドロームに注意を! ロコモを引き起こす3大要因 ズバリ!ロコモ予防のポイントは運動と食事! メタボの次はロコモティブシンドロームに注意を! 生活習慣病を引き起こすメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群:通称メタボ)に気をつけるべきだという認識は、すっかり定着した感があります。働きざかりにとってのメタボに対して、特に高齢者が気をつけるように呼びかけられているものとして、整形外科の領域におけるロコモティブシンドローム(運動器症候群:通称ロコモ)があります。これは、骨や関節、筋肉などの運動器の障害によって、自力での歩行などが難しくなり、要支援・要介護の状態になっている、あるいはそうなる危険性が高い状態を指します。 ロコモを引き起こす3大要因 ロコモを引き起こす要因は、主に以下の3つに分類されます。 ロコモの主な要因 ●バランス能力の低下 視覚や足の裏の感覚、内耳の三半規管が司る平衡感覚など、さまざまな機能からの情報が脳で処理され、そこからの命令が筋肉に伝わることで、姿勢は保たれます。これらの機能が衰えるとバランス能力は低下し、転びやすくなります。 ●筋力の低下 筋力が低下すると、上記のバランス能力の低下による転倒を招くだけではなく、関節への負担も大きくなります。それによって、ひざに痛みが生じ、歩くのを避けるようになると、結果として骨量が低下して骨折リスクが高まってしまいます。 ●骨・関節の病気 以下のような病気に1つでもかかると、運動器の障害が起こりやすくなります。痛みの症状があると歩くのを避けるようになるため、上記の筋力の低下にもつながります。 変形性膝関節症 変形性股関節症 骨粗鬆症(骨粗しょう症) 関節リウマチ 変形性脊椎症 脊柱管狭窄症 変形性腰椎症 ズバリ!ロコモ予防のポイントは運動と食事! 運動器の障害が起きるのは、主に加齢によるところが大きいようです。若いうちから気をつけておかないと、年齢とともに運動器のはたらきが衰え、やがて座る、立つ、歩くといった動作ができなくなる恐れがあります。そうならないために重要なのが、骨や関節、筋肉などを健康に保てるように、普段から意識をすること。日常生活では、運動と食事がその柱となります。 ロコモ予防のための運動として、スクワットや、つかまるものがある場所での開眼片足立ちなどがおすすめですが、ストレッチやウォーキングなどでも良いでしょう。無理せず、長く続けられるものを選びましょう。 食事で大切なのは、なんと言っても栄養の偏りなく、バランスよく三食きちんととることです。特に高齢になると食欲が低下し、食べる量が減ってしまうため、栄養不足にならないよう気をつけます。 公開日:2013/09/17
ロコモ予防に必要な、歩行や起立に関わるバランス能力や筋肉は、習慣的なトレーニングによって鍛えられます。今は問題なくても運動機能は年齢とともに低下してしまいます。ここでは40代から始めるロコモ予防のための運動方法を紹介します。 目次 歩けなくなる前に!ロコモ予防は40代から ロコモ予防の第一歩は、運動習慣を身に付けること 手軽に始められる「ロコトレ」がオススメ 歩けなくなる前に!ロコモ予防は40代から ロコモティブシンドローム(運動器症候群:通称ロコモ)を予防するには、歩行や起立に関わるバランス能力や、筋肉の維持が必要となります。それらは、習慣的にトレーニングを行うことによって鍛えられます。すでに足腰に痛みを抱えている人にとっては、悪化の防止になるでしょう。たとえ今は問題なく歩行や起立ができていても、運動機能は年齢とともに低下してしまいます。年齢に応じた運動機能を保てるように、骨量や筋肉量の低下が始まる40代から予防を始めましょう。 ロコモ予防の第一歩は、運動習慣を身に付けること ロコモを予防するには、運動習慣を身に付けることが欠かせません。ウォーキングやジョギング、水泳、太極拳、ストレッチなどの手軽に始められるものでも、バランス能力や筋力を維持する効果が期待できます。基礎体力や足腰の状態、好みは一人ひとり異なるので、無理のない範囲内で長く続けられそうな、自分に合った運動を選びましょう。 食事の内容も、ロコモ予防に大きく関わります。筋力の維持に必要なたんぱく質を多く含む肉や大豆製品のほか、骨づくりに欠かせないカルシウムが豊富な乳製品、ビタミンDが豊富な魚、ビタミンKが豊富な緑黄色野菜などを積極的に食べるようにします。太りすぎ、あるいはやせすぎにならないよう注意して、適量をバランス良く食べましょう。 手軽に始められる「ロコトレ」がオススメ 日本整形外科学会はロコモ予防のために、「開眼片足立ち」と「スクワット」の2つを「ロコトレ」(ロコモーショントレーニング)として推奨しています。ただし、無理をすると転倒しかねないので、腰や関節の痛みでこれらを行うのが難しい場合などは、まずは医師に相談を。 「開眼片足立ち」とは? 目を開けたまま、片足が床につかないように浮かせた姿勢を1分間保ち続けます。これを1セットとして、左右の足それぞれで1日3セット行います。 転ばないようにつかまるものがある場所で、支えが必要であれば机や壁などに、手をついて行います。途中で足が床についてもかまわないので、1分間続けます。 バランス能力が養われ、安定した歩行ができるようになることが期待できます。 「ロコトレ」だけでは物足りない場合は… 日常生活に取り入れやすい「爪先立ち」がおすすめです。 やり方は簡単で、必要に応じて壁に手をつき、両足で立った状態でかかとを上げ、ゆっくりと下ろすのを10~20回繰り返します。 これを1セットとして、1日2~3回繰り返します。 これにより、ふくらはぎの筋肉がつくことが期待できます。 起立した状態を保つのが難しい人は、机などに手をつくとやりやすくなります。 反対に、より高い効果を求める人は、壁に手をついた状態での片足の爪先立ちに挑戦しても良いでしょう。自分の状態に応じて行いましょう。 ■関連記事 若いうちにフレイルをチェックして「健幸華齢」を目指そう!キャンサーフィットネス・スマートライフ講座1 骨粗鬆症やロコモを予防して人生100年時代を満喫しよう! 骨折、寝たきりを予防するために「ロコチェック」! 公開日:2013/10/15
中高年のひざの痛みとして知られる「変形性膝関節症」は、関節軟骨や関節液中に含まれるヒアルロン酸が減少することで引き起こされると言われます。 目次 「ひざが痛い!」それは変形性膝関節症かも! 変形性膝関節症は、どのように治療するの? 痛みを和らげる生活を心がけよう! こんな症状があったら、ほかの病気の可能性も… 「ひざが痛い!」それは変形性膝関節症かも! 年齢を重ねて中高年になると、階段の上り下りなどでひざの痛みを感じる人が増えます。この多くが「変形性膝関節症」といい、立ったり座ったりという日常動作でひざに痛みを感じ、そのまま放置すると膝関節が変形して、歩きにくくなる病気です。 ひざは、長い期間負担をかけられることで、関節軟骨や関節液中に含まれるヒアルロン酸が減少し、軟骨の弾力性がなくなったり、膝関節内のうるおいが少なくなったりしてしまいます。その結果、軟骨がすり減って変形し、関節部分に炎症が起こって痛みを感じると考えられています。 この病気は中高年、なかでも女性に起こりやすく、またO脚の人、足の筋力が低下している人、太っている人、スポーツやけがでひざに負担をかけた人にも起こりやすい傾向があります。心当たりのある人は、症状をチェックしてみましょう。 変形性ひざ関節症の主な症状 歩き始めるときに、ひざに違和感や痛みがある 階段の上り下りのときに、ひざに痛みがある 立ち上がるときに、ひざに痛みがある 正座がしづらい ひざに水がたまって腫れる 朝起きたときに、ひざがこわばる ひざの内側を押すと痛みがある 変形性膝関節症は、どのように治療するの? 症状に心当たりがあれば、早めに整形外科を受診して検査を受けることが大事です。病気の進行は、エックス線検査によって、次の4段階に分けられています。 段階 状態 症状 1度:ほぼ健康 上下の関節軟骨が少しすり減っているものの、表面はまだなめらかな状態 自覚症状は、ほとんどない 2度:軽度 関節軟骨のすり減りや、けば立ちが目立ち、骨の間のすきまが狭くなる 動き始めるときに、痛みを感じる 3度:中等度 関節軟骨のすり減りが激しく、骨の一部がむき出しになっている ひざを完全に曲げられない 4度:重度 関節軟骨はほとんどなくなり、上下の骨がぶつかり合う 動かなくても痛みを感じる歩きにくくなる 治療では、主に生活指導、理学療法、薬物療法という3つの「保存療法」が行われます。 まず、生活指導では、減量の指導や杖の使用によって、ひざに負担をかけない生活を促します。 また、理学療法では、ひざを伸ばす筋肉「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」の筋力を鍛える体操を指導します。たとえば、下のような体操です。 「理学療法」の体操 足を伸ばして仰向けに寝た状態で、片方の足首の上に男性で3~4kg、女性で2kg程度の重り(辞書など)を乗せる。 その状態でひざを伸ばしたまま、10度くらい足を上げる、数秒間保った後に下ろす。 反対側の足も同じように行う(1セット20回・1日2回)。 そして、薬物療法ですが、鎮痛・抗炎症薬の内服薬や外用薬の使用のほか、「ヒアルロン酸製剤」の注射があります。先に述べたように、変形性膝関節症は関節軟骨や関節液中に含まれるヒアルロン酸が減少することによって起こりますが、この物質を膝関節内に注入することによってひざの痛みや動きを改善させ、病気の進行を抑制することができます。この療法は、病気があまり進行していない中等度までの人に行うと、効果が期待できます。 こうした保存療法で改善されない場合には、手術療法が検討されます。内視鏡を使ってすり減った軟骨などを切除する「関節鏡視下手術」、O脚になった膝関節を矯正する「高位脛骨骨切り術」、人工の膝関節に置き換える「人工膝関節置換術」が代表的な方法です。 痛みを和らげる生活を心がけよう! この病気の改善には、日常でもひざに負担をかけない生活を工夫することが大事になります。特に、次のようなポイントが有効になりますので、ぜひ検討してみましょう。 ●「和式」より「洋式」の生活を 正座や布団の上げ下ろしなどでひざに負担のかかる「和式」の生活より、椅子やベッドなどを利用した「洋式」の生活に変えます。 ●サポーターでひざを保温する ひざが冷えると痛みを感じやすくなるため、エアコンの効く夏場や冬の就寝時などにはサポーターを使用します。 ●室内に手すりをつける 日常動作によるひざの負担を避けるためにも、階段や玄関、トイレなどへの手すりの設置を検討します。 こんな症状があったら、ほかの病気の可能性も… ひざの痛みを主訴とする病気には、次のようなものがあります。変形性膝関節症との違いをチェックしてみましょう。 ●関節リウマチ 免疫異常によって膝関節に炎症がおこり、関節が破壊される病気です。両ひざに痛みを感じ、早朝は関節がこわばります。また、午後には発熱やだるさなどの全身症状も伴います。安静時にも痛み、動かすとさらに強く痛みます。 ●痛風・偽痛風 関節に尿酸の結晶がたまって炎症を起こす「痛風」。尿酸ではなく、ピロリン酸カルシウムの結晶が炎症を引き起こすのが「偽痛風」。突然、激痛に襲われ、特に夜間に激しい痛みを感じます。痛風の場合は慢性化しやすく、痛みの発作を繰り返すことが多くみられます。 ●化膿性関節炎 関節内に細菌が感染して炎症が起こる病気です。腫れや痛み、発熱などの症状が現れ、進行すると軟骨や周りの骨まで破壊されます。 公開日:2009/07/06
O脚や膝のゆがみは、悪化する前に整形外科を受診して治療することが大切。整形外科での治療法のほか、筋力トレーニング、歩き方、靴の選び方、生活習慣や食生活など、自分でできる予防・克服法についてくわしく解説する。 目次 整形外科ではこんな治療が行われる O脚・膝のゆがみはこうして予防・改善しよう 整形外科ではこんな治療が行われる O脚や膝のゆがみは、悪化する前に整形外科を受診して治療することが大切。整形外科では主に次のような治療が行われる。また重度のO脚には、脛骨を削って湾曲を治す手術が必要になることもある。 変形膝関節症に進行してしまった場合、痛みを除去し、炎症を抑える薬物療法、血行をよくして痛みを緩和する温熱療法、筋力を強くして膝への負担を軽減する運動療法などがあわせて行われる。 ■サポーターで膝を安定させる 膝の揺れを防ぐバーがついたサポーターを当てることで、膝のゆがみを矯正し、安定させる。曲げ伸ばしは自由にでき、保温効果も高い。痛みが軽くなるために歩きやすくなる。■足底板を利用してO脚を補正 O脚補正用の足底板は、外側が7~12ミリほど高くなっているため、靴の中に入れて利用することで重心が外側に移動せず、脚がまっすぐになる。利用する足底板の高さは症状により異なり、また治療の段階で変わるため、医師に相談して自分にあったものを処方してもらうようにしよう。 O脚・膝のゆがみはこうして予防・改善しよう 整形外科の治療だけでは、完全に治すことは不可能。日常生活でも、ゆがみを治す運動を積極的に行い、食事内容や歩き方の習慣などを見直すことで進行を食い止めることが可能になる。ただし、自分だけで治療を行うことは不可能なので、整形外科医と相談しながら行うようにしよう。 太ももと足裏の筋力を増強する O脚や膝のゆがみは、筋力不足も大きな要因。毎日筋力トレーニングを行うことで次第に筋力がアップし、膝への負担も少なくなる。ポイントは、お風呂に入って体が温まったあとに行うこと。新陳代謝が促進されるために痛みを感じにくくなり、関節がやわらかくなっているために膝も曲げやすくなる。最初は回数にこだわらず、できる範囲で無理せずに行うこと。整形外科を受診しているときは、もちろん主治医に相談してから行うことが大切だ。 ●太ももの筋力トレーニング 1. いすの背に腰がつくように深く腰かけ、ゆっくり5つ数えながら太ももとすねがまっすぐになる位置まで上げる。この位置で膝をピンと伸ばし、つま先を立てたのち、同じ時間をかけてゆっくり足を戻す。楽にできるようになったら、500g~1kgのおもりを風呂敷で包み、その袋を足首で持ち上げるようにするとより効果的。両脚各10回を1セットとし、1日3度行う。 2. あお向けに寝た状態で膝を軽く曲げ、両膝の間にクッションか枕をはさんで内ももで強く押し、ゆっくり10数える。数え終わったら力を抜き、2~3秒休憩する。この運動を20回繰り返す。 ●足裏の筋力トレーニング 1. 両足をそろえて立ち、かかとを上げてつま先で立つ。そのままかかとを内側に向けてかかと同士を合わせ、その後、外側に向ける。これを10回1セットで1日3度行う。 2. 足の下にタオルを敷き、端から足の指5本でタオルを引き寄せてつかんで離す運動を行いながら前進していく。立って行うと、より効果的。これを5回1セットで1日3度行う。 膝やかかとに負担をかけずに歩こう! 歩き方もO脚や膝のゆがみに影響する。膝やかかとに負担のかからない歩き方のポイントを紹介するので意識してみて。 ●背筋を伸ばしてあごを引き、おなかを引っ込める ●着地するときには、かかとから先につき、土踏まずの外側から小指のつけ根、親指という順に体重を移動させ、足の指全体で地面を蹴る ●足先はガニ股や内股にもならないよう、まっすぐに保つ ●足はなるべく大きく開き、膝はまっすぐに伸ばして歩く 自分の足に合った靴を! 例えばハイヒールを履いていると、重心が前に移動し、つま先に重力がかかり過ぎてしまう。その結果、つま先立ちをしているような不安定な状態になり、体を安定させようと膝に負担がかかってしまう。また、アキレス腱が縮みきってしまい、靴を脱いだあとでもアキレス腱が縮み気味の状態になる。こうなると膝がよく伸びず、まっすぐ立つことができないなど膝をゆがめる原因に。オシャレをしたい気持ちもやまやまだが、O脚を防ぐためには履き心地を重視したい。 ■膝に負担の少ない靴 ■膝に負担となる靴 ×かかとが6cm以上のハイヒール ×つま先が極端に細い靴 ×重くて底の硬い靴 ×サンダルなどの脱げやすい靴 ×靴底の厚すぎる靴 膝と脚を冷えから守る 膝や脚の血液の循環をよくして新陳代謝を高めると、膝の痛みが和らぎ、筋肉も柔軟になる。医師から止められていない限り、毎日40度前後のぬるめのお風呂に20分以上つかって、膝と脚をゆっくりと温めるとよい。また、膝が痛んだ場合は、ホットタオルや使い捨てカイロを膝に当て短時間温めよう。雨の日や冷え込んだ日には、サポーターをつけて外出し、家では膝かけを利用して寒さから守ることも大切だ。 骨を丈夫にし、肥満を解消する食生活を 骨がもろくなると、体を支える膝や脚にも影響する。特に閉経後は、女性ホルモンの分泌が減ることで骨粗しょう症を引き起こしやすくなる。また、体重が重くなると膝への負担が増す。食生活を見直し、栄養をしっかり補給しよう。 ●1日3食規則正しくとり、間食をやめる ●甘いものや油っこいものなどの高カロリー食は控える ●寝る直前に食べ物を口に入れない ●骨の主成分であるカルシウムを補給。乳製品が最も吸収しやすい ●カルシウムの吸収を助けるきのこや青背の魚などに多く含まれるビタミンDを補給する ●骨のコラーゲン繊維の材料でもあるたんぱく質を補給する 公開日:2003年4月14日
骨粗しょう症は高齢者の病気というイメージが強いと思いますが、むしろ若いうちからのケアが大切。今回は、骨粗しょう症についてご説明します。 目次 壊して作る!?骨の成長のしくみ 圧倒的に女性に多い骨粗しょう症 男性には関係ないの? 骨粗しょう症がコワイ理由 見逃すな!骨粗しょう症サイン 壊して作る!?骨の成長のしくみ 日頃、滅多にお目にかかることのない自分の骨。あなたは骨についてどんなイメージを持っているだろうか。 「骨といえばカルシウム!」と答える方も多いはず。その通り、骨は「カルシウムの銀行」とも呼ばれ、体内にあるカルシウムのなんと99%を貯蔵している。カルシウムはおよそ1兆個もある私たちの体の細胞のはたらきを司るもので、常に血液中に一定の量を保って存在している。カルシウムは体内で合成することができないので、食べ物から摂るしかないのだが、もしカルシウムが体内に入ってこない場合、骨は自らのカルシウムを血液中に溶かしだし濃度を一定に保とうとする。カルシウムが引き出される一方だと、骨はやがてもろくスカスカになってしまう。やはり骨とカルシウムは切っても切れない関係にあるのだ。 「身長の伸びが止まったら、骨の成長も終わるんじゃないの?」そう考える方もいるかもしれない。しかし、あなたの骨だって今も新陳代謝を繰り返している。「破骨細胞」が古くなった骨の成分を溶かして破壊し(骨の吸収)、「骨芽細胞」が骨の表面にたんぱく質のコラーゲンを分泌、その上にカルシウムを定着させてゆく(骨形成)。 吸収と形成のバランスがとれている状態が理想だが、何らかの理由で吸収の方のはたらきが強くなると骨の破壊が進み、骨折しやすくなってしまった状態が「骨粗しょう症」なのである。 圧倒的に女性に多い骨粗しょう症 加齢によって変化する骨密度の様子をグラフにしてみると、女性の場合は50歳前後の閉経期の後、急激に下降しているのがわかる。それに対して男性は年齢とともになだらかなカーブを描いて下降している。これは女性の骨と女性ホルモンとが大きく関わっていることを示している。 思春期以降の女性の骨を丈夫にする役割は女性ホルモンであるエストロゲンが担っている。骨密度とエストロゲンはほぼ同じリズムで変化し、40代以降エストロゲンの分泌低下と同時進行で骨からカルシウムがどんどん抜けてもろくなってゆき、閉経でエストロゲンの分泌が決定的に低下すると、骨密度も急速に減少してしまうのだ。この時期に無理なダイエットをすることは骨にかなりのダメージを与えることになる。 さらに、一般的に女性の骨は男性に比べて細いことからカルシウム量がもともと少なかったり、食が細かったりするのでカルシウムを十分補えないことや、妊娠してお腹の赤ちゃんにカルシウムを渡したりすることもある。女性の体は男性に比べ、骨にとっては何かと不利なのだ。 閉経期以降の50歳代の女性の3割が、60歳代では5割が、70歳以上では約7割が骨粗しょう症にかかっているという報告もある。 男性には関係ないの? 骨粗しょう症のリスクは女性にばかりあるのだろうか?もちろん、男性も加齢に伴い骨密度は低下してくるので、骨粗しょう症の危険性はないわけではない。「男だから大丈夫」などと安心せず、毎日の生活習慣や食生活に気を配ることが大切だ。 骨粗しょう症がコワイ理由 骨粗しょう症がコワイのは、転倒した場合、寝たきりにつながるような深刻な骨折をおこす可能性があることだ。寝たきりはさらに認知症を招きやすく、そうなると日常生活を自力で行うことすら厳しい状況になってしまう。 骨粗しょう症による典型的な骨折は、腰や背中(脊椎)、足の付け根(大腿骨頸部)、手首などにおこる。 骨粗しょう症による典型的な骨折 ●腰や背中の骨折(脊椎の圧迫骨折) 日本人の場合、骨粗しょう症による脊椎の圧迫骨折の割合が多い。痛みなど自覚症状がないので放置してしまいがち。コルセットで患部を固定し、投薬で治療していく。 ●足の付け根の骨折 一番治すのが大変な部位。歩行困難により、そのまま寝たきりの原因にもなりかねない。手術、リハビリを経て少しずつ歩くことができるようになる。 ●手首 手術をして治すケースと、手術をせずに治すケースがある。 見逃すな!骨粗しょう症サイン 自覚症状がない骨粗しょう症。こんな症状が骨粗しょう症のサインだ。気付いたら早めに対策を立てるべき。 骨粗しょう症のサイン ●背中や腰の痛み ●背骨の曲がり ●身長の低下 ●呼吸困難、食欲不振、胃もたれなど(背骨の変形により、内臓を取り囲む骨格に悪影響を及ぼすため) 公開日:2002年9月24日
30代までは骨の成長期。この期間に骨密度をどれだけ上げておくかが大切なポイントとなります。そのためにも、一度骨密度を測定しておくことをおすすめ。 食事と運動からの骨ケアもご紹介します。 目次 あなたも骨粗しょう症予備軍?骨粗しょう症チェック 骨密度を測ろう! 30代ならまだやり直せる? 食事で骨ケア 運動で骨ケア あなたも骨粗しょう症予備軍?骨粗しょう症チェック 目に見えない骨だが、あなたの生活習慣はそのまま骨に反映されている。また体質的なものも大きく関わってくるので、心当たりがある人は、以下の項目で当てはまるものが多い人は今から骨粗しょう症に備えておこう! 生活習慣 ■たばこ、お酒、カフェインをよく摂る 喫煙はエストロゲンのはたらきを阻害する原因。また、カルシウムの吸収率を妨げたりする。過度のアルコールやカフェインの摂取も尿中のカルシウムの排泄を促進してしまう。 ■偏食・ダイエットを繰り返している 偏食や食事制限によるダイエットはカルシウムの摂取量を減らしてしまう。また卵巣機能に悪影響を及ぼし、エストロゲン分泌の異常の原因にも。 ■運動が嫌い 運動不足だと、骨に十分な負荷がかからず骨へのカルシウムの吸収が妨げられてしまう。 ■インスタント食品をよく食べる インスタント食品に多く含まれているリンを摂りすぎると、尿中のカルシウム排泄を促す作用がある。また、栄養のバランスが崩れ、カルシウム不足を招く結果に。 ■日光に当たる機会が少ない カルシウム吸収に必要なビタミンDが合成されない。 体質・病気 ■家族に骨粗しょう症の人がいる 身内に骨粗しょう症の人がいる場合、もともと骨密度が少なかったり、骨のカルシウムが溶け出しやすい体質を受け継いでいることもある。 ■身長が低く、やせ型 身長が低くやせ型の人は、骨に十分な負荷はかかりにくいので骨粗しょう症になりやすいといわれている。 ■胃腸が弱い 胃腸が弱いとカルシウムを上手に消化吸収できず、排泄分が多くなってしまう。 ■肝臓病・腎臓病 肝臓や腎臓の機能が低下すると、ビタミンDを骨に役立つ形に変えられない。 ■糖尿病 食事制限がある。骨の形成に必要なインスリン様物質が少ない。 ■副腎皮質ホルモン剤の内服 骨の成長を妨げる。 骨密度を測ろう! 骨粗しょう症はほとんど自覚症状がなく、気付いたときにはもう骨がスカスカになってしまった状態。そうなる前に、まずは自分の骨密度を測ってみよう!骨密度測定について、東京都健康づくり推進センター指導科の小野文子氏にいろいろお話をうかがった。 東京都健康づくり推進センターでは、DXA(デキサ)法によって、骨密度を測定している。これは放射線を用いて腰椎の測定を行うもの。現在、最も信頼性の高い骨密度測定方法とされている。ほかにも、SXA法(踵骨または上腕の測定)、MD法(手指の測定)、超音波法(踵骨の測定)などがある。 注)DXA法による放射線被曝量=0.55ミリシーベルト 胸部レントゲン写真=0.3ミリシーベルト、1年間で自然に浴びる放射線被曝量=2.4ミリシーベルト 30代ならまだやり直せる? DXA機械 超音波法 小野氏によれば、「測定部位、測定方法が違うと、必ずしも同じ結果が得られないこともあります」とのこと。年齢の平均値より多い少ないと気にするよりも、加齢によって下がってゆく骨密度をどれだけ下げ止まらせることができるかが大切だという。 「30代までは骨の成長期にあたるんです。この間にいかにピークを高く持っていくかが大切です。ピーク値が高ければ、年齢とともに骨密度が減っていっても骨粗しょう症の発症年齢をかなり遅らせることができるのですから。骨粗しょう症は高齢者の病気というイメージが強く、20代30代で骨密度を測りにいらっしゃる方はあまり多くないのですが、むしろ若いうちに一度測って、自分の骨の状態を知っておいて欲しいですね。40代、50代で骨密度が低下しているとわかっても、そこから増やしていくのは大変。でも、30代ならまだまだやり直しができるんです!是非一度測りに来てください」。 また、最近の20代の女性の体型がスリムになって、骨密度の平均値がこれまでより下がりつつあることが気になるとも。骨ケアは若いうちから始めてこそ、効果的なのだ。 食事で骨ケア ご存知のように、骨にはカルシウムが欠かせない。成人では1日に600mg以上のカルシウムが必要だが、残念ながらカルシウムはどんな食品にもたっぷり含まれているわけではなく、さらに吸収率もあまりよくない。普段から心してカルシウム摂取につとめよう。 ●やっぱり牛乳 牛乳に含まれる乳糖にはカルシウムの吸収を促進するはたらきがある。カルシウムが最も骨に蓄積されやすいのは夜。夕食後に飲むのが一番効果的。 ●牛乳が苦手なら、チーズやヨーグルトを 牛乳を飲むとお腹がくだってしまうという方には、チーズやヨーグルトがオススメ。 ●小魚+酢で吸収アップ 骨ごと食べられる小魚はつみれにしたり、ふりかけにしたりといろいろアレンジできる。また南蛮漬けやサラダなど、お酢を使って調理するとさらにカルシウムの吸収がアップする。そのほか、カルシウムを多く含む食品については、カルシウムを効率よく摂るためのポイントを参照。 また、食事から摂ったカルシウムはビタミンDのはたらきによって吸収が促進される。ビタミンDは日光(紫外線)によって皮膚下で合成されるが、食事からも摂取できる。ビタミンDの多い食品は、まぐろ、さんま、うなぎの蒲焼、卵、カレイなど。 運動で骨ケア 骨ケアにも運動は欠かせない。運動して骨に負荷をかけることで骨に電気が走り、カルシウムが沈着しやすくなるのだ。また筋肉が強化されて骨を保護し、骨折しにくくなるという面もある。若い頃から運動を続けてきた人や、日常生活で体をよく動かしている人は骨密度が高いというデータもある。 骨ケアには激しすぎる運動でなければ、どんなものでもOK。毎日できるような運動を長続きさせることが肝心。これから何か始めるとしたら、ウォーキングがおすすめ。地球にはたらく重力で、歩くだけでしっかり骨に負荷をかけることができる。1日1時間を目標に、それがムリならせめて30分多めに歩くことを続けてみよう。 公開日:2002年9月24日
だるい、疲れが取れない、イライラする…。更年期のある日、こんな不調に気付いたら、「トシだから…」と諦めたり恥ずかしがったりせず、病院へ行った方が良いようです。その理由とは? 目次 こんなにある更年期障害による不定愁訴 「更年期不定愁訴症候群」と診断されるのは、どんなとき? 更年期不定愁訴症候群とまぎらわしい病気 更年期障害は、なぜ起きる?なにが原因? 行ってみよう!病院へ こんなにある更年期障害による不定愁訴 次のグラフをまず見てみましょう。だるい、疲れが取れない、イライラする…。更年期を迎えた女性が訴える自覚症状はとても幅広く多彩です。 出典:「どうする更年期 2953人の体験から」 女の身体と医療を考える会編 日本婦人会議1997年 分類すると… 血管運動神経症状 ほてり(顔面紅潮)・のぼせ、発汗、手足の冷え 精神神経症状頭痛、頭重感、憂鬱、不安感、イライラ、めまい、無力感、不眠、神経質、記憶力減退、気分不安定、孤独感、興奮、ほか 運動器官系症状肩こり、背部痛、腰痛、関節痛 知覚系症状しびれ、知覚過敏、知覚鈍麻、視力低下 消化器系症状便秘、腹痛、吐き気、腹部膨満感、食欲不振、ほか 泌尿生殖器系症状排尿痛、頻尿、膣乾燥感、性交痛、不感症、冷感症 その他疲労感、胸部圧迫感、耳鳴り、立ちくらみ こうした症状は、感じる強さや頻度には個人差が大きいものの、女性の実に6~7割もの人が経験しているといわれています。でも、そのうち実際に病院を訪れ、治療をするのはなんとわずか1割前後。 ほとんどの人が症状を自覚しながらも「トシだから…」と諦めたり、あるいは「病院へ行くなんて恥ずかしい…」と我慢しているのが実情のようです。 そうなってしまう理由は、誰しも推測できるところでしょう。更年期障害と呼ばれる代物には、「閉経」というデリケートな問題が含まれているからです。でも、そのまま我慢したり諦めたりして良いのでしょうか?そんな視点からも見ていきましょう。 「更年期不定愁訴症候群」と診断されるのは、どんなとき? 最初に「更年期」とされる時期について触れておきましょう。更年期とは、女性の場合、閉経の前後5年、合計10年間を指します。一般には、閉経の平均年齢がだいたい50歳であるため、45~55歳の時期を指して「更年期」とされています。 この時期に、上記のような症状が出てくると、更年期不定愁訴症候群の可能性が疑われるわけです。ただ、更年期に該当する年齢で、不定愁訴があるからイコール「更年期不定愁訴症候群」ではありません。 現在の医学では、まだまだ更年期不定愁訴症候群の定義は確立されていません。このため、病院や医師によって多少の違いが出てくることはありますが、必須条件とされるのは、以下の通りです。 更年期に該当する年齢である さまざまな検査の結果、特定し得る病気が発見されない 上記2点のうえにあって、それでもさまざまな不定愁訴がある つまり、現代の医学では病気と特定される何ものも存在しないことが明らかになってはじめて「更年期不定愁訴症候群」と診断されます。なぜここまでしつこく言うかは、次の表を見るとおわかりでしょう。この年齢は、生活習慣病をはじめとする各種の病気が発生しやすい時期でもあるのです。 更年期不定愁訴症候群とまぎらわしい病気 おりものに異常が現れる カンジタ膣症、膣炎、子宮内膜症、頸管ポリープ、ほか 月経異常・不正出血を伴う子宮筋腫、子宮体がん、甲状腺機能の異常、ほか 頭痛を伴う高血圧症、低血圧症、脳腫瘍、中耳炎、メニエール病、ほか 関節の症状慢性関節リウマチ、五十肩 老眼以外の目の症状白内障、脳腫瘍、ほか 胸の痛みなど狭心症、心臓神経症、ほか 尿や泌尿器の症状膀胱炎、子宮脱、糖尿病、ほか 更年期障害は、なぜ起きる?なにが原因? 更年期不定愁訴症候群の大きな要因は、なんといってもホルモンバランスのくずれにあります。女性の体は、初潮から閉経まで、図のようにホルモンによってコントロールされています。ですが、これは20~30代をピークに、徐々に卵巣機能が低下していくなかでバランスを失っていきます。 この、卵巣機能の低下に伴って劇的に減少していくのが、女性ホルモンのひとつ・エストロゲンです。エストロゲンは、卵巣機能のほかにもさまざまなはたらきを持っているため、脳は一定量のエストロゲンを確保しようと卵胞刺激ホルモンの分泌量を増やし、卵巣を刺激します。でも、機能の低下した卵巣は、脳の要望に応えられず、エストロゲンはますます減少していきます。 こうしたエストロゲンの分泌量の減少と、卵胞刺激ホルモンの増加というホルモンバランスのみだれが、さまざまな症状となって更年期の女性の体に現れてきます。 ただ、原因はこれだけではないと考えられています。というのも、それならばすべての女性にあるわけで、なぜ更年期不定愁訴症候群となり、日常生活にまで影響するほど悪化してしまう人と、ほとんど自覚症状もないまま過ごせる人がいるかがわからないからです。 現在では、上記のようなホルモンバランスのくずれによる身体的要因に、家族の看護や子供の親離れといった社会的要因、ストレスに弱い、几帳面な性格であるといった心理的な要因が組み合わされ、症状の強弱・多少の個人差が出るものと考えられています。 女性ホルモンふたつのはたらき エストロゲン 思春期になると乳房や生殖器の発育、丸みのある女性らしい体への熟成などを促す つやつやとした髪を育てる しっとりとした肌をつくる 精神活動を活発にする 骨量の減少を抑え、骨粗鬆症を抑える コレステロールの増加を抑制する 動脈硬化を抑制する 黄体ホルモン エストロゲンによって増殖した子宮内膜に作用し、妊娠時にはその維持を、妊娠していない場合は月経を促す 脳の体温調節中枢に作用して体温を高くする 行ってみよう!病院へ 更年期と呼ばれる年齢になったある日、疲れがなかなか取れない、あるいは気が滅入りやすい自分に気づいたら迷わず一度、病院へ行ってみましょう。そう勧める理由は、上記のまぎらわしい病気のためばかりではありません。人によって決して行ってはならない治療法も存在するからです。 例えば、近年、更年期不定愁訴症候群の治療として普及してきているホルモン治療は、がんを患ったことのある人には決して施してはならない治療法となります。 これに加え、多岐にわたる不定愁訴の治療には、心理的なアプローチが効果的なのか、薬物投与が良いのか、といった効果の面からの判断も必要になります。今は、「更年期外来」といった専門外来を設置している病院も増えています。 これからは我慢することなく、また恥ずかしいなどの理由で躊躇することなく、積極的に人生を楽しむため、今ある不快な症状を緩和・改善するためのひとつの方法として、受診することを心がけましょう。
女性の更年期をどう過ごし、更年期障害をできるだけラクに乗り切るにはどうしたら良いのでしょうか。食生活や運動のポイントを踏まえて、更年期の対処法をご紹介します。 目次 誰にでもあること、そして必ず終わりがあること 更年期を快適に過ごすための10ヵ条 食生活を見直そう!症状を軽減する食事のコツ 適度な運動と、リラックスいろいろ 相性の良い病院との二人三脚がおすすめ 誰にでもあること、そして必ず終わりがあること 一般的に、45~55歳の10年間を「更年期」と呼ぶと紹介しましたが、この10年の間中、さまざまな不快症状に見舞われるわけではありません。 短い人で約1年、長い人でも約5年で症状は軽減するといわれています。確かに簡単に乗り切れる長さではありませんが、救いは必ず終わりがあるということです。更年期、そして更年期にまつわる不定愁訴はきっとおさまります。 次に挙げる10ヵ条は、更年期不定愁訴症候群の治療の先駆者である野末悦子医師が提唱したものです。 更年期を快適に過ごすための10ヵ条 いい友だちを持つこと 家族との関係改善 いいカッコをするのはやめ、あるがままの自分でいること 体を動かす 生き甲斐を持つ おしゃれをする 健康診断を忘れずに受ける 睡眠をきちんととる バランスの取れた食事を、三食きちんと摂る いつも勉強して、新しいことにトライする気持ちを持つ いかがでしょうか。少しは元気な気分になれたでしょうか。ただ、急に「生き甲斐を持て」とか「いいカッコをするな」と言われても困る、とまどうといった人もいるでしょう。たとえ趣味ひとつでも、いきなり言われて「はい、そうですか」と、今日から趣味が持てるわけではありません。 そんなときは、気持ちのままに楽しんでみる、といった意識づくりからはじめるのはどうでしょうか。例えば、雑誌を見ているうちにガーデニングをしてみたいと感じたら、まずやってみます。昨日と今日で興味の対象がガラリと変わってしまってもいいでしょう。気持ちのままに、好奇心の動くままに。そうして、そのときそのときの楽しいことにトライしながら「QOL=人生の質」を向上させていきましょう。明るく、前向きに。きっと更年期ばかりでなく、その後へと続く長い楽しい時間が醸成されていくはずです。 ただ、ここでも注意が必要ですが、上記のようなことを言ったからといって更年期の不定愁訴を、精神論や気持ちの問題と片づけてしまってはいけません。気持ちも不定愁訴を軽減、あるいは改善する要素のなかのひとつ、と捉えることを肝に銘じておきましょう。 食生活を見直そう!症状を軽減する食事のコツ 女性ホルモンのところでも取り上げましたが、更年期に劇的に減少するエストロゲンは、卵巣機能のはたらきのほかにも、重要なはたらきを担っています。 代表的なのが、コレステロールを抑制する、骨粗鬆症を抑えるといったはたらきです。つまり、エストロゲンが減少するということは、これらのはたらきを食生活などでカバーする必要が出てくるということなのです。具体的に、どんなことを心がければ良いかというと… カルシウムを十分に摂る コレステロールを控えた食事をする 塩分を控え、動脈硬化の予防に努める また、更年期ならではの不快な症状は、表のような栄養素を十分に摂る食事で改善していきましょう。 症状を軽減する食事のコツ 症状 多く摂りたい栄養素 はたらきと効果 肩こり、腰痛、冷えなどには ビタミンE ビタミンEは、血液の循環を促すのに効果的です。 だるい、疲れやすいなどには ビタミンB1 ビタミンB1が不足すると、エネルギー代謝がスムーズに行われなくなり、疲れやすくなります。また、憂鬱になったり、落ち着かない気持ちになることも。 貧血による動悸や息切れには 鉄分 更年期には月経量の増加などから貧血になることもあります。鉄分は十分に補給をしましょう。 肌荒れ、かさつきには ビタミンA 不足すると肌のトラブルに。ビタミンEと一緒に摂ると、いっそう効果的です。 便秘には 冷水と、食物繊維 腸のはたらきが弱まって起こる便秘に効果があります。 眠れないときは トリプトファン アミノ酸の一種で、安眠を誘う物質とされるもの。バナナや牛乳、あんず、プルーン、木の実などで摂るのがおすすめです。 適度な運動と、リラックスいろいろ 軽いウォーキングなどの運動は、骨へのカルシウムの吸着率を促進する、血中コレステロールを減らすなど、有意義な効果がいろいろあります。また、精神的なストレスや疲れには、汗を流す運動がとても良い解消法になります。ぜひ習慣にしていきましょう。 また、気持ちが落ち込む、なんとなく落ち着かないといったときは、アロマテラピーを試したり、ハーブティーを飲んでみたり。好きな音楽を聴いているだけでも違ってくるものです。こうした自分なりの気持ちへの対処法も少しずつ身につけていきましょう。 相性の良い病院との二人三脚がおすすめ 女性が、いわゆる更年期障害だと感じるきっかけは実にさまざまです。強いていえば生理不順や不正出血ですが、なかには「だるくて何もする気になれない」といった状況を家族が見かねて病院を受診させるケースもあるようです。治療面では、症状により個人により、ホルモン療法が良い場合もあればカウンセリングが功を奏する場合もあります。また、そうした更年期障害に似た症状のカゲで、命に関わる病気が進行していることもあります。 更年期にあたる年齢になったら、年に一度は健康診断を受けましょう。そして、どんな症状も我慢や無理は禁物です。更年期においては、「困ったときの医者頼み」ではなく、「何かあったら医者が先」。つまり心得は「先手必勝」が絶対です。大きな病気がなければ安心できますし、何より出てきた症状を緩和・軽減する方法を医師とともに進めていけるのです。ぜひ今から、相性の良い医師や病院を意識的に探しておき、体調に違和感を感じたらすぐ医師に相談しましょう。 参考文献:「明るく乗りきる男と女の更年期」赤塚祝子 講談社現代新書 ■関連記事 更年期チェック!汗、ほてり、痛み、息切れなどがありますか? 男性ホルモン&女性ホルモン 素朴な疑問 更年期にやさしいサプリメント 痛み+疲れ+更年期症状で退職するも社会復帰を果たした患者さんの体験記
骨粗しょう症(こつそしょうしょう)はカルシウム不足によって骨がスカスカになる病気です。高齢者ではちょっと転んだだけでも骨折する場合があり、怖いのは、その結果「寝たきり」になってしまうこと。リスクの高い人は予防を心がけましょう。 目次 「骨粗しょう症」ってどんな病気? どうして「骨粗しょう症」になるの? 「骨粗しょう症」になりやすいのはどんな人? 「骨粗しょう症」ってどんな病気? ご存知の方も多いと思いますが、骨粗しょう症(こつそしょうしょう)はカルシウム不足によって骨がスカスカになる病気です。骨の中が粗くなるので、当然骨が弱くなり、骨折しやすくなります。 加齢とともにその発生率は高くなり、高齢者ではちょっと転んだだけでも骨折する場合があるくらいです。特に怖いのは、大腿骨頸部(骨盤にいちばん近い部分の足の骨)を骨折し、その結果「寝たきり」になってしまいます。 年齢別にみた骨粗しょう症の発症頻度 出典:「貯骨でふせぐ骨粗鬆症」家庭栄養研究会編集食べもの通信社 どうして「骨粗しょう症」になるの? カルシウム不足が招く病気だけど、原因はそれだけではありません。 骨粗しょう症になる原因は? ●加齢 普通の健康な人でも、骨量は45歳くらいから減り始めます。 ●遺伝・体質による 家族に骨粗しょう症の人がいる場合、なりやすいともいわれています。また、体重の多い人ほど骨の量が多いといわれます(小柄な人より大柄な人のほうがなりにくいようです)。 ●女性ホルモンの不足による 閉経後の女性がなりやすいようです。女性ホルモン「エストロゲン」が減少すると骨量が減少すると考えられています。 ●カルシウム代謝調節ホルモンによる 人の体のはたらきを調節するカルシウム代謝調節ホルモンのはたらきにより、骨の吸収と形成が調節されていますが、これがなんらかの原因でバランスが崩れ、吸収が形成を上回ると骨粗しょう症になります。 ●栄養不足による カルシウムの摂取が不可欠ですが、その吸収率を高めるのに必要なのがビタミンDやビタミンKなどです。これらが不足していては、カルシウムが吸収されにくくなります。 ●運動不足による 骨にはある程度負荷をかけたほうが強くなります。激しい運動でなく、ウォーキングでもOKです。また、太陽光を浴びるのも必要です。 ●喫煙・飲酒による たばこの吸いすぎは胃腸を荒らし、カルシウム吸収率を悪くします。また、過度の喫煙や飲酒は、体のバランスを崩してホルモンの異常をきたすので注意しましょう。 「骨粗しょう症」になりやすいのはどんな人? 次のような条件に当てはまる人は要注意です。とくに骨粗しょう症は、知らない間に骨のスカスカ度が進行していて、気がついたときには骨折!ということになりかねません。 こんな人は骨粗しょう症が迫っているかも!? 女性 高齢者 やせた人 運動をあまりしない人 牛乳を飲まない人 日光にあまり当たらない人(北国の人) 公開日:2000年12月25日
年齢を重ねると多くの人が悩まされる、ひざの痛み。「ちょっと痛いかも」という程度であっても、寒さが厳しくなっていくこの時期は、痛みを感じやすくなる。痛みへの対処法や、自分でできるオススメの予防法について、ひざの痛みを訴える多くの患者さんを診られてきた五反田西口クリニック院長・長屋憲先生にお話を伺った。 ひざの痛みは早めの対処が大切! ――ひざの痛みは、なぜ起きるのでしょうか? 主な原因として、まずは加齢が挙げられます。年をとると、関節の動きに関連する筋力が低下する、バランス能力が衰える、関節の軟骨がすり減るといったことなどが起きます。これらによって、ひざに負担がかかりやすくなり、やがて痛みが生じるようになります。 ――痛みを放っておくと、どうなりますか? ひざに痛みを感じると、歩くことや階段の上り下りを避けるようになりがちです。そうすると、使われなくなった筋肉はさらに衰えてしまいます。それに、運動不足になって体重が増えると、やはりひざへの負担が大きくなります。ひざに痛みを感じ始めたら、そのまま放っておくのではなく、早めに対処することが大切です。 痛みの急性期は冷やす! 慢性期は温める! ――ひざの痛みを感じ始めたときの対処法には、どのようなものがあるでしょうか? 原因や痛む段階によって、対処法は異なります。たとえば急性期の痛みであれば、冷やすのが効果的です。野球のピッチャーは、投げ終えた後に氷などで肩を冷やすアイシングをしています。これは、冷やすと血管が収縮して、血漿(けっしょう)という血液の成分が外に出ることで筋肉痛が起きるのを防ぐために行われます。ひざの痛みも同じ原理で、痛みを感じ始めたその日は、まず冷やすことが勧められます。 ――何日も続くような、慢性的なひざの痛みの対処法はいかがでしょうか? 慢性的な痛みは、反対に温めるようにしてください。温めると血行が良くなり、痛みを発生させる体内物質が排出されやすくなります。どれくらいの強さの刺激を受けると痛みを感じるようになるのかという範囲を閾値(いきち)と呼びますが、温めることでこの閾値を上げる、つまり痛みを感じにくくする働きも期待できます。ただし、痛みが続くような場合は、リウマチや痛風など他の原因も考えられるため整形外科などで医師に相談しましょう。 神経機能の維持にはビタミンB1、B6、B12 ――毎日の食事で気をつけることはありますか? 体重が増えるとそれだけひざにかかる負担が大きくなるので、食べすぎないように気をつけましょう。肥満の方は、減量をこころがけてください。痛みは神経の働きとの関わりが大きいので、神経機能や神経細胞を正常に保つことも大切です。具体的な栄養素として挙げられるのは、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12などです。すでに痛みがあるような場合には特にしっかりと摂ることが必要です。ひざの痛みを改善させるために、これらを含む医薬品を利用するのもよいでしょう。 ひざの痛みの改善に関わる主な栄養素 ●ビタミンB1 神経の働きを支えるのに欠かせない栄養素。白米やパン、麺類などの炭水化物が分解されてできるブドウ糖を、神経細胞のエネルギーに変える。豚肉やウナギなどに多く含まれる。●ビタミンB6 ある神経から、ほかの神経や臓器へと情報を伝える「神経伝達物質」の生成に関わる栄養素。不足すると、神経機能に支障を及ぼす恐れがある。サンマや牛レバーなどに多く含まれる。 ●ビタミンB12 神経細胞の修復に関わる栄養素。神経細胞を構成する神経線維が、部分的に壊れたのを修復するのに役立つ。牛レバーやシジミなどに多く含まれる。
年齢を重ねると多くの人が悩まされる、ひざの痛み。「ちょっと痛いかも」という程度であっても、寒さが厳しくなっていくこの時期は、痛みを感じやすくなる。痛みへの対処法や、自分でできるオススメの予防法について、ひざの痛みを訴える多くの患者さんを診られてきた五反田西口クリニック院長・長屋憲先生にお話を伺った。 ひざの痛みを改善する医薬品とサプリメントの違いは? ――医薬品とサプリメントはどう違うのでしょうか? 医薬品は、品質や安全性などについて、厚生労働省の厳しい審査に合格し、承認されたものです。特定の症状に対する効能・効果を明示することが認められています。サプリメントは健康補助食品などと呼ばれるとおり、あくまでも食事の偏りを補うための食品です。 ――含まれる成分に違いはありますか? 医薬品は成分の含有量にきちんとした基準があり、品質も一定に保たれています。一方、サプリメントにはこのような基準がありません。 足の筋力を高めて、ひざの痛みを予防しよう! ――ひざの痛みを予防するには、どうしたら良いでしょうか? 関節の働きに関わる筋肉を鍛え、筋力を高めることが、ひざの痛みの予防へとつながります。トレーニング方法にはいくつかあるので、無理のない範囲内で、長く続けられるものを選びましょう。 ひざの痛みを予防する運動の例 ●イスに座った状態での片足上げ イスに座った状態で片足ずつ伸ばしながら、座面(イスの腰を下ろす部分)と平行になるまでゆっくりと上げる。その後、同じようにゆっくりと地面に下ろす。これを左右の足で繰り返すことで、ひざの関節の働きに関わる太もも、すね、ふくらはぎなどの筋肉が鍛えられる。 ●相撲の四股(しこ) 足を広げて腰を落とし、片足を10秒かけて横に上げ、10秒かけて地面に下ろす。力士がやるように、ドシンと力強く踏む必要はない。左右の足で繰り返すことで、上記のイスに座った状態での片足上げと同様、ひざの関節の働きに関わる筋肉が鍛えられる。 ●スクワット 立った状態で足を肩幅に開き、ひざの曲げ伸ばしをして、ゆっくりとしゃがんだり立ち上がったりする運動。曲げたときに、ひざがつま先よりも前に出ると、ひざを痛める恐れがあるため、前に出ないように注意する。筋力や痛みの状況などに応じて、イスに腰掛けた状態から立ち上がったり、机に手をついたりしても良い。 ●足の裏でのタオルたぐり寄せ 床にタオルを敷き、手を握るのと同じ要領で、足の指でタオルをたぐり寄せる。歩き方に影響する足の裏の筋肉が鍛えられ、きれいな土踏まずが形成されることで、ひざの負担が軽減される。立った状態でも座った状態でも、どちらで行っても良い。 パソコンを使う姿勢が、ひざの痛みと関係ある!? ――日常生活で気をつけることがあればお教えください。 パソコンや携帯電話を使う人が多くなっていますが、気になるのはその姿勢です。姿勢が悪いと体がゆがみ、ひざにかかる負担が大きくなってしまいます。パソコンを使うときの姿勢でポイントとなるのが、キーボードの高さです。キーボードがひじより高くならないように、机やイスの高さを調節しましょう。 ――IT化と同様、現代の住宅環境やファッションも痛みと関係はありますか? 住まいが欧米化したのは、実は関節にとっては良いことです。畳では正座をしますが、この姿勢はひざの関節に負担がかかってしまいます。これは、和式トイレにも同じことが言えます。畳のある家で暮らしている方も、関節のことを考えれば、できればイスを利用することをお勧めします。ファッションに関して、女性がヒールの高い靴を履き続けるのは関節には良くないのですが、まったく履かないというのはおそらく無理でしょう。その分、運動をして足の筋力を高めたり、食事で意識的に栄養素を摂取したり、医薬品でケアをするようにしましょう。
関節の構造はどうなっているの? 私たちが体を動かすためには欠かせない部分、「関節」。骨と骨をつないでいる部分のことだが、実は関節では直接骨と骨はぶつかっていないのだ。 関節の骨と骨のすき間を埋めているのは、やわらかくて弾力性のある「関節軟骨」と、「滑膜(かつまく)」という薄い膜から分泌される「関節液」。これが、潤滑油の役割を果たし、私たちは関節をスムーズに動かすことができるのだ。 関節痛の原因とは? 関節の中でも、特に痛みを起こしやすいのが膝。体重を支えながら、立ったり歩いたり、階段を昇ったり降りたりするので、大きな負担がかかるからだ。 とはいえ関節痛を引き起こす原因はいろいろある。痛む場所や、痛み方、年齢によってもその症状はさまざまだ。もし関節に痛みを感じたら、まずは安静にし、早めに専門医である整形外科で受診しよう。 関節痛を起こす代表的な病気 病名 症状や特徴 変形性関節症関節の軟骨がすり減ったために、痛みが生じる病気で、一番多いのは膝(変形性膝関節症)。膝が痛む病気としては最も多い。 慢性関節リウマチ免疫反応の異常により、全身の関節が炎症を起こす病気。関節の滑膜に炎症が起こり、そこから出る物質が関節軟骨や骨を破壊するため、関節が変形する。朝に手や指がこわばって動かしにくいのが症状の特徴。 肩関節周囲炎一般的な呼び名は「五十肩」。老化などにより、腕を支える筋肉が衰えて炎症を起こす。特に腕を上げる動作などで痛みを感じる。 化膿性関節炎関節に細菌が入り込んで化膿し、炎症を起こす。関節が赤く腫れて熱をもち、痛みも徐々に強くなる。 大腿骨顆骨壊死膝の上側の骨(大腿骨顆骨)の一部が壊死して、強い痛みが起こる。50歳以上の女性に多く、症状が変形性膝関節症に似ている。 痛風関節に尿酸が溜まることで炎症を起こす。まず足の親指の付け根に起こることが多い。中高年の男性に多い病気。 コラム:膝にかかる負担はどのくらい? 特に痛みを起こしやすいのは膝。それもそのはず、膝関節は、歩行時には約60度、しゃがむ動作は約100度、正座では約140度と広い範囲の曲げ伸ばし運動を行っている。また、かかる負担も大きい。平地歩行時には体重の約2~3倍、階段昇降では約4倍、走ったりするときには約6倍もの力が膝にはかかっている。
関節痛を起こしやすい人はこんな人 関節痛が起こる病気の中でも、特に多い変形性膝関節症。膝の痛みを抱えている人の多くが変形性膝関節症といわれるほどだ。軟骨がすり減って起こるこの病気は、なりやすい人がわかっているので、当てはまる人は注意しよう。 中高年(50歳以上) 女性 肥満 O脚 若いころに激しいスポーツを続けていた ひざの筋肉が弱い 足に合わない靴やハイヒールをよく履く 変形性膝関節症では、こんな症状が 実は、軟骨には神経が通ってない。だから、軟骨が減っただけでは関節を動かしたときに違和感を感じても、痛みは感じないのだ。つらい痛みの原因は、軟骨がすり減ることで、骨どうしが直接ぶつかり合ったり、すり減ったカケラが周囲を刺激して炎症が起きることだ。 変形性膝関節症の主な症状 ●動かしたときに痛む(動作時痛) 立ち上がる、歩く、階段を上下するなど体重がかかった動きをすると特に痛む。 ●曲げ伸ばしがつらい(可動域制限) 膝を曲げ伸ばしできる範囲が制限される。膝をまっすぐ伸ばしたり、正座したりといった動作がしにくくなる。 ●水が溜まる(関節水腫) 関節内に炎症が起きると、滑膜から関節液が多量に分泌される。その結果関節のなかに関節液が溜まる。 関節痛の治療法は? つらい関節の痛み。では、どのように治療していくのだろう。 関節痛の治療は、症状や進行度や痛みの程度によって違うけれど、基本はリハビリテーションや薬物療法を行う保存療法と手術療法。保存療法で効果が得られない場合に、手術療法が選択される。 リハビリテーションのメリット 無理をして関節に負担をかけてしまえば、効果も台無し。リハビリテーションを始めるときには、必ず医師とよく相談してから行うようにしよう。 ●筋力を鍛える 筋力をつけることで、関節への負担を減らせる。 ●体重のコントロール 肥満による関節への負担を減らせる。 ●血行をよくする 関節へ栄養分がいきわたり、老廃物も排泄される。 ●関節の動きをよくする 関節の曲げ伸ばしの機能を回復できる。 ●軟骨の修復を促進する 新陳代謝がよくなることで、細胞が活性化し、軟骨が再生されやすくなる。 関節痛の治療に使われる薬 よく使われるのは痛み止め。外用薬は、塗り薬や貼り薬などいろいろな形態の薬があるので、医師や薬剤師と相談しながら自分の好みにあったタイプを選ぼう。 ●非ステロイド性消炎鎮痛薬(飲み薬、坐薬) いわゆる「痛み止め」。痛みをとるだけでなく、炎症を抑えるはたらきもある。胃腸を荒らしやすい。 ●非ステロイド性消炎鎮痛薬(外用薬) 塗り薬には、塗りこむことでマッサージ効果も期待できる。貼り薬には、温熱タイプと寒冷タイプがある。 ●注射 軟骨の成分であるヒアルロン酸の注射や、炎症を強く抑えるステロイド剤の注射などがある。 ちょっと気になるQ&A Q. 関節は温めた方がいいの?冷やした方がいいの? A. 関節痛は冷えると悪化することが多いので、温めるのは効果的。入浴時は体の芯から温まるようにしたり、蒸しタオルや使い捨てカイロを患部にあてるなど、日常生活の中でも工夫してみよう。ただし、急激な痛みや関節に腫れや熱っぽさがあるときなど、場合によっては冷やしたほうがよい場合も。 Q. 関節にたまった水(関節液)を抜くとクセになる? A. 関節にたまった水(関節液)が大量にたまっている場合は、それがもとで関節が動かしづらかったり、痛みが起こることも。この場合、水を抜く治療は効果的だ。クセになるということはないが、水がたまる原因は解決されていないので、しばらくするとまた溜まってしまうことが多い。
まずは日常生活から改善しよう 関節に負担をかけないためには、日常生活の改善が最も大事。早速始めよう! 肥満を解消する 軽い運動で筋肉を鍛える 体を冷やさない 入浴で血行をよくする 長時間立ち続けない 正座をしない(イスや洋式トイレを使用) 重い荷物を持たない サポーターを利用(関節の保護&保温) 負担がかからない靴を履く 関節によい成分はコレ! 痛み止めを使わずにいると、しばらくするとまた関節が痛くなってくる…そんな経験を持つ人も多いのでは?これは薬で痛みや炎症を抑えていても、軟骨がすり減っている、という根本的な原因が解決されていないから。 ここで注目したいのが、最近話題のグルコサミンやコンドロイチン、MSM(メチルスルフォニルメタン)など。軟骨の成分でもあるこれらには、軟骨細胞の再生を促す作用があるのだ。 グルコサミン はたらき:軟骨の原料となる物質を作る。 特徴:アミノ糖の一種。生体内に広く分布しているが、特に軟骨細胞に多い。若いうちは体内でスムーズに作られるが、加齢とともに生成量が減り不足気味に。 サプリメントで摂るなら?:食後ならいつでもOK。 コンドロイチン はたらき:細胞に水分を補給し、栄養を与えて老廃物を排出する。 特徴:ムコ多糖の一種。骨や軟骨、皮膚など広く生体内にある。加齢とともに生成量が減り不足気味に。また、目の角膜や水晶体の透明感や弾力性の維持のはたらきもある。 サプリメントで摂るなら?:1日分をまとめて飲んでも、分けて飲んでもOK。 MSM(メチルスルフォニルメタン) はたらき:たんぱく質やコラーゲンの生成に不可欠。 特徴:有機イオウ化合物の一種で、人間を含むほとんどの動植物にとって必須の成分。調理により大部分が失われるので通常の食事だけでは不足しがち。 サプリメントで摂るなら?:朝食後、夕食後と分けて飲むとよい。 家でもできる、簡単体操 これからの季節は、寒くて家に閉じこもりがち。でも、じっとしているだけでは関節は弱る一方だ。家でもできる簡単な体操で、関節痛を予防・解消しよう。 ●お風呂の中で、曲げ伸ばし 関節を伸ばすときに力を入れながらゆっくりと ●イスに座って、足を伸ばす 5秒くらいかけてゆっくり伸ばし同様にゆっくりおろす ●仰向けに寝て、足を上げる 片足は膝をまげたままもう一方の足をゆっくり上げる ●横向きに寝て、足を上げる 股を開けるようにゆっくりと足を上げる上げない方の足は曲げていてもよい ●太ももで、ボールやまくらをはさむ 関節を伸ばすときに力を入れながらゆっくりと このようにすわって軽く足を曲げながらやってもよい
転んだだけで骨折してしまう子供や、骨粗しょう症の患者が増えています。カルシウム不足がひとつの大きな原因のようです。実際、国民栄養調査でも、カルシウムは日本人に唯一不足している栄養素となっています。どうすればよいのでしょうか。 目次 骨が弱い日本人 カルシウムが不足するとどうなる? 骨が弱い日本人 成人の1日あたりのカルシウム所要量は、600mgです。しかし、実際には、日本人の約70%の人はこれだけの量を摂取できていないといわれます。カルシウム摂取率は、先進国の中でも最下位です。 昔は、日本人の食事といえば、カルシウムたっぷりの小魚や野菜中心のバランスのとれたメニューでした。しかし昭和30年代頃を境に日本人の食生活は大きく変わり、肉料理や加工食品(特にインスタント食品)中心になってきました。また、そもそも日本の土壌にはカルシウムが少ないために、野菜や水などに含まれるカルシウムも少ないようです。こうしたことも、今日の日本人のカルシウム不足の大きな原因でしょう。 ご存知の通り、カルシウムは骨や歯をつくる大事な原料となります。しかしそれだけではありません。筋肉の伸び縮みをコントロールする、刺激に対する神経の感受性を鎮める、アレルギーなどの過剰な反応を抑える、というように、体のあちこちでいろいろなはたらきをしているのです。 カルシウムが不足するとどうなる? カルシウム不足は、骨や歯がもろくなるだけでなく、いろいろな症状を引き起こします。イライラ怒りっぽくなるのもそのひとつです。 主な症状は次のとおりです。 歯がもろくなる 骨がもろくなり、骨折や変形がおこりやすくなる 骨粗しょう症や骨軟化症を引き起こす 高血圧症や動脈硬化、糖尿病を促進させる 出血したとき血が止まりにくくなる 心臓の筋肉の収縮異常により心筋梗塞の原因となる 神経過敏になり、イライラする では、たくさん摂れば摂るほどいいのかというと、そういうわけでもありません。 例えばダイエット中にカルシウムを補助食品で補うなど、ほかの栄養素に比べてカルシウムを摂りすぎた場合、ミネラルバランスが崩れて貧血になりやすくなります。また尿中にカルシウムが多量に排泄されることで、尿路結石になることもあります。 目安は1日600mgで(成人の場合)、これは牛乳600mlに相当します。上のような過剰症がでやすくなるのは2000mgといわれていますが、それ以下でも補助食品で摂る場合はミネラルバランスが崩れやすいので注意が必要です。 それでもカルシウム不足が心配であれば、カルシウム剤を利用するとよいでしょう。食品よりも効率よくカルシウムが摂れます。ただし、手軽に飲める分、取りすぎには注意しましょう。
腰痛とスイミング 腰痛の改善を対象としたスイミング教室では次のような指導をしています。 ストレッチング(背部伸筋群、大たい屈筋群、下たい屈筋群など) 水中歩行(腰痛にもかかわらず、水中での運動が苦痛を伴わないことを経験する) 各種姿勢での「浮き身」の習得(平衡感覚を身に付ける) それらを習得したらクロールや背泳ぎにチャレンジします。腰痛には背泳ぎが適していますが、胸を張り過ぎて背中を反らせないように注意します。 クロールと背泳ぎを交互に行うバックロールは体の不必要なひねりも少なく、背浮きができれば比較的強度も調節しやすい泳ぎです。 変形性ひざ関節症とスイミング 体重オーバーでひざに余分な負担が掛かること、加齢によりひざの関節が老化していること、ひざを支える大たい四頭筋が弱くなっていることなどが、ひざ関節症の原因と考えられます。 治療として大たい四頭筋を鍛えるには、やはり浮力を受ける水中運動が適切です。クロールでも背泳ぎでも、ばた足を必要とする泳法が適しています。泳げない人は水中歩行だけでも効果が期待できます。 変形性ひざ関節症や腰痛は、急性期には安静が必要ですが、回復期に入ったら早くから運動療法を始めることが大切です。
肩から背中が凝ったときに 40代後半から増加するのが、変形性ひざ関節症です。 ひざの関節にある半月板というクッションや関節面の軟骨が老化のため弾力性を失って、少しずつ摩耗していきます。 これがひどくなったのが変形性ひざ関節症で、若いころの過度の運動も原因で起こります。痛みが出る前に下のようなストレッチングなどを行い、日頃からケアを心掛けておくといいでしょう。 ひざを伸ばす筋肉のストレッチング うつ伏せになって、ストレッチする方のひざを曲げます。この時、お尻は浮き上がらないよう注意しましょう。左右10~15回ずつ繰り返します。 今度は、足を投げ出して座り、ストレッチする側のひざを曲げ、反対側はそのままにして、両手で上体を支えながら後方に倒して5秒間静止。左右7、8回行いましょう。曲げたひざが床から浮き上がらないようにするのがポイント。 (1)ひざを曲げる筋肉のストレッチング 床に両足を投げ出して座り、片方の足を曲げ、足の裏を反対の足のひざ辺りに付け、両手を伸ばして伸ばした足の先を触るようにして、8~10秒間静止。この動作を5~8回ほど繰り返します。
骨の健康には活性型ビタミンDの助けが必要 骨そしょう症とは、骨からカルシウムが溶け出し、骨がすかすかになって軽石状態となり、日常生活に支障をきたすほどもろくなった状態をいいます。 骨そしょう症の治療薬としては、ビタミンDや女性ホルモンなどの薬が用いられますが、日本では、ビタミンDの有効性をより高めた活性型ビタミンD剤がよく使われています。体内でも、腎臓などでビタミンDは活性型に変えられます。 体内の活性型ビタミンDは、カルシウムを吸収する小腸のはたらきを助けたり、骨の新陳代謝をつかさどるなど、重要な役目をしています。 つまり、骨の健康のためには、カルシウムの摂取とともに活性型ビタミンDの助けが不可欠なのです。 普段からカルシウムやビタミンDを多く取る 加齢に伴う肝臓や腎臓の機能の低下などにより、体内でビタミンDを活性型ビタミンDに変える能力が低下すると、カルシウムの腸管での吸収が悪くなり、骨が弱くなります。 このように、体内でビタミンDを活性型ビタミンDに変える力が弱くなった人には、活性型ビタミンD剤が最も有効な治療薬なのです。 普段からカルシウムやビタミンDを多く含む食品を取ることを心掛け、軽い運動を行うことが骨そしょう症の予防になるといわれます。 カルシウムを大人は1日に600mg、骨そしょう症患者や妊婦、子供は800~1000mg摂取するようにします。 日焼けする程の日光浴は皮膚がん発生の危険性がありますが、1日30分くらい日光浴をすると皮膚内のプロビタミンDからビタミンDが形成され、腎臓や肝臓で活性型に変わり、カルシウムの腸管での吸収を促進したり、骨の形成を高めます。