脳梗塞は、元気な人が突然たおれたり、後遺症として麻痺(まひ)やしびれなどが残ってしまい、寝たきりや要介護になってしまうことが問題です。いきなり発症してしまうことも多いですが、時には前兆のような症状があることもあります。特に、薬を飲んでいる人は前ぶれ症状に気を付けましょう。(公財)心臓血管研究所所長の山下武志先生に解説していただきました。
目次
脳梗塞には、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、不整脈などが原因の心原性脳塞栓症と3タイプあります(血栓は、血のかたまりという意味です)。
まず、ラクナ梗塞は脳の細い動脈で起こり、パーキンソン症候群や認知症の原因になります。
次に、アテローム血栓性梗塞は、脳に向かう太い動脈が動脈硬化でつまってしまうことでおこります。動脈硬化の原因疾患の高血圧、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病などに注意すべきです。心筋梗塞や下肢閉塞性動脈硬化症も合併しやすいと言われます。
そして、心原性脳塞栓症は不整脈のひとつである心房細動がきっかけで心臓がふるえて、血液がよどみやすくなった結果、心臓内に血栓がつくられ、血流にのって流れて脳の血管をつまらせることでおこります。
長嶋茂雄さんや、サッカー・元日本代表監督のオシムさんなどが突然たおれたことが報道されたことで注目されています。
脳梗塞は、元気な人がある日突然、発症する印象がありますが、脳梗塞を発症する前に一過性脳虚血発作(いっかせいのうきょけつほっさ、以下TIA:Transient Ischemic Attack)という、一時的な運動障害(麻痺:まひ)や言語障害 (ろれつが回らなくなる)、感覚障害(手足のしびれなど)、ふらつき、めまい、痙攣といった、前ぶれのような症状が現れることがあります。
1999年に全国156施設、約1万7000人の脳梗塞やTIAの患者さんを対象にした調査から、TIAをおこした1091人の症状として、多いものから以下が挙げられています。
出典:脳卒中2010;32:719–724、Cerebrovasc Dis 2004;18: 47–56
これらの前ぶれのような症状の多くは、早ければ30分ほどでなくなります(TIAの定義は24時間以内)。前ぶれ症状があるのに医療機関を受診せずに放置すると、いきなり脳梗塞がおこって倒れるような事態になりかねません。
脳梗塞の再発の予防、要介護の予防のために、血管のつまりを防いで血の流れをよくする薬が欠かせません。 不整脈などが原因の脳梗塞に対しては、血のかたまりをできにくくするための抗凝固薬(凝固は血液が固まるという意味)があります(表)。
製品名 | 一般名 |
---|---|
ワーファリン | ワルファリン |
プラザキサ | ダビガトラン |
イグザレルト | リバーロキサバン |
エリキュース | アピキサバン |
リクシアナ | エドキサバン |
一度脳梗塞を起こしている人や、抗凝固薬を飲んでいる人は、自分の判断で薬をやめるようなことはせず、毎日継続することが不可欠です。
最後になりますが、一時的に手足に力が入らないやしびれといったTIAのような症状、不整脈(脈が速い、動悸、胸が苦しい、呼吸困難など)に注意しましょう。特に、薬を飲んでいる人は継続するよう工夫することが大切です。
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