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夜間に血圧が上がってしまう隠れ高血圧は脳卒中に注意しよう

夜になっても血圧が下がらない夜間高血圧をはじめとした隠れ高血圧(仮面高血圧)、ふだんは正常血圧でも医療者の前で血圧があがってしまう白衣高血圧は、しっかりと血圧を測定しないと見逃されやすいので注意が必要です。オムロン ヘルスケア・メディア向けオンラインセミナー(2020年9月3日)で、帝京大学衛生学公衆衛生学講座の浅山敬先生が講演した内容を紹介します。

早朝や夜間に血圧が高くなる仮面高血圧、医療者の前で血圧が上がる白衣高血圧

浅山先生の講演によると、高血圧になると血管に本来不要な圧が長くかかり続けることで血管の壁が傷つけられ、血管の弾力性がなくなって固くなる動脈硬化などの障害が起こりやすくなります。放置すると脳卒中や心筋梗塞、狭心症、心不全、腎不全、認知症などを発症しやすくなります。
高血圧を早く見つけることが重要ですが、測定場所や方法によって基準が異なります。診察室と家庭内で測定した血圧の基準は違いますし、昼間と夜間でも違います(表)。

表:血圧の測定方法別の高血圧の診断基準 表:血圧の測定方法別の高血圧の診断基準

  • 家庭血圧は、朝の起床時や就寝前など毎日同じ時間帯を決めて、安定した状態で測定します。日間の血圧値の違いや白衣高血圧・仮面高血に関して詳しい情報を把握できます。
  • 自由行動下血圧は、24時間自由行動下血圧ともいわれます。医師の指導により自動血圧計を身につけて睡眠時も含めて24時間の血圧変動を詳細に記録する方法です。

出典:2020年9月3日開催「夜間高血圧」メディア向けオンラインセミナーでの浅山先生の講演資料

高血圧そのものはきわめて高くならない限り、通常は自覚症状・苦痛をもたらしません。だからこそ、見逃がしを防ぐために血圧をしっかりと測定することが大事です。また、診察室血圧と家庭血圧の組み合わせで、白衣高血圧と仮面高血圧を見付けることができます。
白衣高血圧は、ふだんの血圧は正常でも診察室や検診など不慣れな場所で血圧が高くなることをいいます。医師や看護師などが着ている白衣が病名の所以です。
仮面高血圧は隠れ高血圧として知られており、早朝高血圧、昼間高血圧、夜間高血圧のタイプ別にリスク因子が挙げられています(図1)。

図1:仮面高血圧(早朝・昼間・夜間高血圧)の病態とリスク因子

出典:2020年9月3日開催「夜間高血圧」メディア向けオンラインセミナーでの浅山先生の講演資料

男性では飲酒はリスク、起床直後の血圧が上げる可能性あり

早朝高血圧に関してですが、1980年代に鉄道の運転士さんを対象とした研究結果では、朝一番では運転中も血圧が高いことが指摘されています(佐藤牧人ら.脈管学.1988)。
また、男性では飲酒直後は血管が拡張するので血圧が下がる一方、翌朝の起床直後では血圧が上昇することを指摘する研究結果があります(図2)

図2:飲酒と血圧との関係 図2:飲酒と血圧との関係

出典:2020年9月3日開催「夜間高血圧」メディア向けオンラインセミナーでの浅山先生の講演資料

夜間の血圧が高いと脳卒中による死亡率が高いので注意しよう

夜間の血圧は、健康な人では昼間よりも10%~20%低いのですが、下がる度合いによって4タイプに分かれます。研究結果では、就寝中の血圧が高い人は脳卒中による死亡率が高いと指摘されています(図3)。

図3:夜間降圧度と脳卒中による死亡率との関連(大迫研究) 図3:夜間降圧度と脳卒中による死亡率との関連(大迫研究):相対危険度 図3:夜間降圧度と脳卒中による死亡率との関連(大迫研究):夜間の高血圧レベル

出典:2020年9月3日開催「夜間高血圧」メディア向けオンラインセミナーでの浅山先生の講演資料(研究論文:Am J,Hypertens.1997;10:1201)

脳・心血管の病気のリスクとして高血圧に注意すべきです。脳卒中(脳梗塞・脳出血など)は死亡率が近年はそれほど高くなくなった一方、患者さんの数自体は増えています。
つまり、脳卒中の後遺症に苦しむケースが多くなっているのです。要介護の原因では、脳卒中が多くを占め、入院が長くなって費用負担も増大するなど、経済的にも多くの問題が生じています。
最後に繰り返しとなりますが、早朝や夜間に血圧が上がる仮面高血圧は、医療機関に受診したとき以外のところで知らず知らずのうちに発症するので、早く発見するためにもふだんから血圧測定を心がけましょう。

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公開日:2020/10/28
監修:帝京大学衛生学公衆衛生学講座准教授兼University of Leuven客員教授 浅山敬先生