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尿酸値が高いと生活習慣病、痛風だけでなく脳梗塞や心筋梗塞、透析に注意

尿酸値が高くなると、足指のつけ根や関節などに激痛が走る痛風が思いだされますが、問題は痛風だけではありません。高血圧や糖尿病・肥満などの生活習慣病、腎障害、脳・心血管の病気にも関わることが指摘されています。医師が診療時に参考にする「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン改訂第3版(2019年改訂)」をふまえ、尿酸値が高い人の注意点について、スリーワンクリニック名誉院長の板倉弘重先生に解説してもらいました。

痛風の患者数は100万人以上、高尿酸血症は1000万人以上の可能性あり

国民生活基礎調査から推定される痛風の患者数を1990年代後半から最近まで見ると、右肩上がりに上昇しており、2016年は100万人以上とされています
ガイドラインによると、痛風の原因になる高尿酸血症に関しては、痛風患者数の10倍と考えられているので、国内では1000万人以上が存在するといわれています(図)。

図:国民生活基礎調査より推定される痛風の患者数
図:国民生活基礎調査より推定される痛風の患者数

出典:厚生労働省・国民生活基礎調査から算出

日本の死因の多くを占める脳梗塞・心筋梗塞や血液透析の原因となる生活習慣病の1つ

最近は、痛風患者数がますます増加しています。生活習慣の欧米化などによるメタボリックシンドロームとの関わりや、生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病など)との関連、さらには高尿酸血症自体が生活習慣病の1つとして考えられています。
生活習慣病は、脳梗塞や心筋梗塞など日本人で死因の多くを占める病気や血液透析などに関わるものです。となると、高尿酸血症も病気の悪化に関わっている可能性があります。
尿酸値が高いと痛風になるのはよく知られています、高尿酸血症の人で痛風を発症するのは1割です。残り9割の人は生活習慣病として理解し、改善に努めるべきです。

高尿酸血症は尿酸値7.0mg/dL超、8.0mg/dL未満で症状がなくても生活習慣の改善を!

高尿酸血症は、ガイドラインでは尿酸値7.0mg/dL超としています。
高尿酸血症かつ、痛風関節炎や痛風結節(尿酸の結晶がたまってコブのようなものができます)がある場合は、アルコール制限を含めた食事内容など生活習慣の改善と薬剤治療を受けること、尿酸値8.0mg/dL未満で症状がなくても生活習慣の改善が推奨されています。
尿酸値や合併症などによって、どのような治療を受けるのかを示した治療アルゴリズムが「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン改訂第3版発刊のお知らせ」*に掲載されています。
生活習慣の改善に関しては、体内で尿酸を作るもとになるプリン体を含む食品に気をつけることなどが推奨されています(表)。

表:食品中のプリン体含有量(100gあたり)

極めて多い 300mg~ 鶏レバー、干物(マイワシ)、白子(イサキ、ふぐ、たら)、あんこう(肝酒蒸し)、太刀魚、健康食品(DNA/RNA、ビール酵母、クロレラ、スピルリナ、ローヤルゼリー)など
多い 200~300mg 豚レバー、牛レバー、カツオ、マイワシ、大正エビ、オキアミ、干物(マアジ、サンマ)など
中程度 100~200mg 肉(豚・牛・鶏)類の多くの部位や魚類など
ほうれんそう(芽)、ブロッコリースプラウト
少ない 50~100mg 肉類の一部(豚・牛・羊)、魚類の一部、加工肉類など
ほうれん草(葉)、カリフラワー
極めて少ない ~50mg 野菜全般、米などの穀類、卵(鶏・うずら)、乳製品、豆類、きのこ類、豆腐、加工食品など

出典:日本痛風・核酸代謝学会「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン改訂第3版142ページ、表1

尿検査では分からない高尿酸血症のタイプがあります

尿酸はプリン体から作られ、体外に排泄されるときは約3分の2の尿酸が腎臓、残り約3分の1のほとんどが腸から排泄されます。
高尿酸血症は、プリン体から尿酸が多く作られるタイプと、腎臓からの尿酸の排泄が低下するタイプが考えられてきました。2つのタイプは尿検査でわかります。
今回、ガイドラインでは新しい病態として、腸から尿酸が排泄することが低下することで尿酸値が高くなる「腎外排泄低下型」という考え方を記載しています。日本の痛風患者さんでは、このタイプがかなり多いとの指摘があります。
治療に関しては、腎臓から尿酸の排泄を促すことが重要なので、薬剤治療においては腎臓の病気や腎機能が悪い高尿酸血症の患者さんに対して、腎機能の低下を抑制する目的に尿酸降下薬を条件つきで推奨しています。
最後になりますが、高尿酸血症は痛風だけなく、生活習慣病として日本人の死因の多くを占める病気の原因、あるいは病気を悪化させる因子になっている可能性があります。
そこで、日本痛風・核酸代謝学会ではガイドライン2019年版をもとに、痛風がなくても尿酸値が高くなる人に、生活習慣病として啓発することを積極的に推進するとのことです。

板倉先生よりワンポイントアドバイス

高血圧や糖尿病、脂質異常症なども考えて食事や運動など生活習慣を改善すべき

ガイドラインでは、治療を受ける前に生活習慣の改善が推奨されています。
というのは、生活習慣病は日本人で死因の多くを占める病気や血液透析などに関わります。高尿酸血症を生活習慣病の1つと考えられますし、他の生活習慣病、高血圧や糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病などと関わりあい、相乗的に悪化要因や死因になっている可能性があります。
高尿酸血症だけでなく、他の生活習慣病がどのような状態なのかを考えることが重要です。
患者さんが尿酸値や血圧値、血糖値、コレステロール値などを総合的に把握して自分の特性を理解して、生活習慣を改善することや薬剤の治療を受けるといった対策を講じていくことが重要です。
生活習慣を改善するためには、これまでの生活を振り返ったうえで、食事に気をつけることや運動などが重要になります。

公開日:2019/05/10
監修:スリーワンクリニック名誉院長 板倉弘重先生