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働きざかりにオンライン診療は有用かどうかを検証

治療を中断する糖尿病患者さんが働く世代で多いことが問題になっています。そこで、関東労災病院の浜野久美子先生らは、就労と治療の両立を支援するために、通院せずにパソコンなどのオンライン上で診療を受けることが有用かどうかについて検証しています。13回横浜生活習慣病フォーラムで、その結果について報告しました。

外来通院代替システムの患者満足度を探る

外来通院代替システム

糖尿病患者さんで治療を中断・放置するケースが多く、重要化を招く要因になっています。受診中断は仕事を持つ男性で多い傾向にありますので、この世代で糖尿病が悪化した人が多くなると、経済損失など社会に悪い影響を及ぼすことが問題視されています。
糖尿病患者さんは自覚症状がないと、治療を受ける意識が低くなりがちです。医療機関を受診するのに時間がかかりすぎることも受診が遠ざかってしまう理由です。そこで、受診を促して患者満足度を向上させることが解決の鍵になります。
関東労災病院糖尿病・内分泌内科部長の浜野久美子先生らは、病院には通院せずに、自己採血キットの検体を郵送してパソコンなどのオンラインで診療を受けることができる外来通院代替システムを導入することによって、就労と治療の両立を支援して患者さんの満足度が高くなるのかどうかを検証しました。
その結果について、2018年6月に開催された第13回横浜生活習慣病フォーラム「30-50歳代の治療中断しないためのマネジメント」で発表しました。講演内容について紹介します。

自己採血の結果をもとにパソコンやスマホの画面上でオンライン診療を受ける

浜野先生らは、糖尿病患者さんが仕事で医療機関に足を運ばなくても医療を受けられる方策として、IT技術を用いてWEB上での教育およびネット上での各医療者とのコミュニケーションを通じた教育、治療の継続が可能かどうか探る研究を実施しました。
具体的には、メールなどで外来通院を代替できるシステム Internet diabetes education and management(以下、iDEM)にオンラインで登録してもらいます。患者さんはパソコンやスマートフォンに血圧や体重などのデータを入力してもらいます。
血液検査に関しては、採血日を登録すると数日後に自己採血キットの DEMECAL®kit packageが自宅に送付されます。自己採血した検体を郵送にて送ります。採血結果は、オンライン上でアップロードされて医療スタッフと患者さんで共有されたうえで、医師による診察や処方箋発行、栄養士などのアドバイスなどがメールなどを介して行われます。

病院には一歩も足を運ばない診療を6ヵ月継続してヘモグロビンA1c悪化なし

そこで、病院に通院して対面診療を受けた患者11例と外来通院代替システムiDEMを介して診療を受けた20例(いずれの患者群も平均年齢は40歳代後半)との間で毎月1回の診療を6ヵ月間実施した治療結果を比較しました。
その結果、ヘモグロビンA1c値は両群とも差はなく、病院に一歩も足を踏み込まずにオンライン診療を受けた群ではヘモグロビンA1c値の悪化はなく、導入前と6ヵ月後に実施した満足度調査の結果でも6ヵ月後のほうが満足度は高いことがわかりました。
オンライン診療に関しては、評価点として通院時間の節約、服薬コンプライアンスの改善、体重管理への取り組み、運動習慣の改善などが挙げられました。課題は、コミュニケーション不足、郵便事情による処方箋送付の遅れなどが挙げられました。
浜野先生によると、オンライン診療を実地診療で行う場合、治療を開始してから6ヵ月後の7ヵ月目からオンライン診療に移行できることや、医師が同一人物であること、3ヵ月に1回は通院診療が必須なことなど、現状ではさまざまな制約があります。本格的に普及するのは先になりそうです。
これらの課題をクリアした上で医療者や患者さんにとってよりよい診療しいステムが構築されることが望まれます。

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公開日:2018/10/15
監修:関東労災病院糖尿病内分泌内科部長 浜野久美子先生