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体重2~3kg減で生活習慣病のリスクが改善!知っておきたい「肥満症」とは?

「肥満」とはBMIが25以上ある人のことです。では、「肥満症」とは?「肥満症診療ガイドライン2016」をもとに、「肥満」と「肥満症」について、そしてその対策について、ガイドライン作成委員長の宮崎滋先生に聞きました。現在の体重から3%、つまり2~3kg減らすことで、「肥満」「肥満症」のどちらの人も糖尿病、高血圧、脳血管障害、心臓病、脂質異常症(高脂血症)といった生活習慣病のリスク改善が期待できるようです。

肥満症診療ガイドライン2016委員長・宮崎滋先生に聞く

肥満とは?

BMI(Body Mass Index=肥満の指標)が25以上ある人は「肥満」です。さらに、肥満に関連する糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病などがある人、あるいは内臓脂肪の蓄積がある人は「肥満症」という病気です。日本肥満学会が定めた治療指針である『肥満症診療治療ガイドライン2016』で定義されています。
肥満も肥満症も、「太らない」あるいは「減量」が推奨されており、肥満症の減量目標は現体重から3%減少が求められるようになりました。
ガイドライン作成委員長の公益財団法人結核予防会理事/総合健診推進センター所長 宮崎滋先生に、メタボリックシンドロームもふまえて肥満ならびに肥満症の対策について聞きました。

BMI25以上で生活習慣病がある人は、実は「肥満症」

肥満の人は、糖尿病、高血圧、脳血管障害、心臓病、脂質異常症(高脂血症)などの病気になりやいことがわかっています。
BMI25以上を肥満、さらに肥満に関連する生活習慣病など11の病気もしくは内臓脂肪の蓄積がある場合は肥満症という病気であり、減量治療を受けるべきでしょう。

図:肥満と肥満症 図:肥満と肥満症

出典:日本肥満学会・肥満症診療ガイドライン2016の診断基準をもとに作成

肥満症の診断に用いられる「内臓脂肪の蓄積」とは?

内臓脂肪は皮下脂肪と違って、腹腔内(おなかの腸の周りを指します)に付くものです。腹部CT画像で内臓脂肪が蓄積しているかどうかがわかります。
肥満症の診断では、内臓脂肪が蓄積している基準として、腹部CTによる内臓脂肪面積100cm2以上が提唱されています。CT検査は、あらゆる医療施設で実施できないので、その代わりとなる内臓脂肪面積100cm2に相当するスクリーニングとしては、ウエスト周囲長(男性85cm、女性90cm)があります。つまり、メタボリックシンドロームの判定基準で、特定健康診査・特定保健指導(以下、特定健診・保健指導)で必須の検査項目ともなっています。

日本肥満学会は、2006年に「神戸宣言」として肥満症とメタボリックシンドロームの対策の重要性を提示し、医学会と行政との取り組みを促しました。
その結果、メタボリックシンドロームと内臓脂肪の蓄積に着目して、腹囲(ウエスト周囲長:男性85cm以上、女性90cm以上)を必須項目として、高血糖、高血圧、脂質異常の3項目中2項目ある人に食事・運動などの生活習慣改善指導などを行い、減量を目指す特定健診・保健指導を2008年から開始するきっかけになりました。

「3kgの減量、3㎝のウエスト周囲長の短縮」が肥満症の治療目標

日本肥満学会が2006年に提示した神戸宣言では「3kgの減量、3㎝のウエスト周囲長の短縮」を提案しています。特定健診・保健指導の開始以降、5年間実施した結果では、体重減少や腹囲の縮小により血糖や脂質、血圧などが改善することが示されました。
つまり、内臓脂肪の蓄積によるメタボリックシンドロームや肥満症は体重や内臓脂肪量の減少により改善するという、神戸宣言の「3kgの減量、3㎝のウエスト周囲長の短縮」を提案が正しかったということになります。

体重65kgの肥満症患者が体重2kg減らすだけで生活習慣病が改善するかも

日本肥満症学会が2006年に提唱した神戸宣言「3kgの減量、3㎝のウエスト周囲長の短縮」が特定健診・保健指導で正しいことが証明され、肥満症診療ガイドライン2016では肥満症の減量目標を「現体重からの3%減少」と掲げています。また、肥満、肥満症のどちらも体重を減らすことが推奨されています。なぜなら、体重減少により「肥満」の人は生活習慣病にかかりにくくなること、「肥満症」の人は肥満に関連する生活習慣病などの改善が期待されるからです。
肥満症の診断基準が当てはまる患者が体重を3%減らしただけで、脂質、血糖、血圧などが改善することにより生活習慣病の改善につながることが期待できます。
体重65kgを3%減量するためには、たった2kgを3~6ヵ月で落とせばいいのです。食事と運動療法の工夫を凝らすことなどにより、比較的容易に減らせるのではないでしょうか。

肥満の程度は軽くても内臓脂肪が増えると、糖尿病や高血圧、脂質異常症などを発症しやすくなりますし、心筋梗塞や脳梗塞のリスクも高まります。
内臓脂肪の蓄積に着目し、さらに肥満と肥満症を区別して、肥満症は積極的に治療を受けるようにしましょう。

公開日:2018/08/06
監修:公益財団法人結核予防会理事/総合健診推進センター所長 宮崎滋先生